特許第6471811号(P6471811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6471811
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/06 20060101AFI20190207BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20190207BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   H01L29/78 652P
   H01L29/78 652H
   H01L29/78 652S
   H01L29/06 301R
   H01L29/06 301F
   H01L29/06 301V
   H01L29/06 301G
   H01L29/44 Y
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-552637(P2017-552637)
(86)(22)【出願日】2015年11月27日
(86)【国際出願番号】JP2015083404
(87)【国際公開番号】WO2017090183
(87)【国際公開日】20170601
【審査請求日】2018年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大森 寛将
【審査官】 市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−003233(JP,A)
【文献】 特開2014−003200(JP,A)
【文献】 特開2012−142336(JP,A)
【文献】 特開2010−245281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/06
H01L 29/41
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が形成された素子領域及び前記素子領域の周囲に配置された外周領域を有する半導体装置であって、
前記素子領域と前記外周領域にわたって延在する第1導電型の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域との間にpn接合をそれぞれ形成するように前記第1の半導体領域の内部に互いに離間して配列され、前記pn接合が周期的に配置されたスーパージャンクション構造を構成するように、前記素子領域と前記外周領域にわたって前記第1の半導体領域の主面と平行してストライプ状に延伸する第2導電型の第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域の第1主面側に配置された、膜厚方向に沿って前記半導体素子に流れる主電流の電流経路の一方の端部である第1の主電極と、
前記第1の半導体領域の第2主面側で前記素子領域に配置された、前記電流経路の他方の端部である第2の主電極と、
前記第2主面側の前記外周領域の外縁に配置され、前記第1の主電極と電気的に接続された終端電極と、
前記第2の主電極と前記終端電極との間で前記第2主面側に配置された絶縁層と、
前記素子領域から前記外周領域の前記外縁に向かう外縁方向に沿って、前記絶縁層の内部に互いに離間して配列された複数の導電体と
を備え、
互いに隣接する前記導電体の間に形成されるコンデンサを直列接続したコンデンサ群が構成され、前記外縁方向に延伸する前記コンデンサ群によって前記第2の主電極と前記終端電極とが容量結合され
前記終端電極が前記第2主面側のコーナー部に配置され、前記コーナー部を除いた前記外縁には前記終端電極が配置されておらず、
複数の前記導電体のうちの前記終端電極に最近接である導電体が、前記コーナー部において前記終端電極に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記導電体が前記素子領域の周囲を囲んで配置されたリング形状であり、複数の前記導電体によって前記素子領域が多重に囲まれていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
最外周の前記導電体の外側の外縁部が、前記第2の半導体領域の端部よりも前記外周領域の前記外縁の近くに位置していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記コーナー部側における前記第2の半導体領域の端部が、前記コーナー部側以外の前記第2の半導体領域の端部よりも、前記外縁から離間していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記外周領域の前記素子領域に隣接する領域において前記第1の半導体領域の上部に形成された第2導電型のリサーフ領域を更に備え、
平面視で、前記リサーフ領域の外側まで前記第2の半導体領域が延伸していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
平面視で前記導電体の配置されるピッチが一定ではないことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記外周領域において表面電位が前記第1の半導体領域の電位分布と一致するように、前記コンデンサ群に含まれる前記コンデンサの数や配置されるピッチを調整して前記表面電位が前記第2の主電極と前記終端電極との間で分圧されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーパージャンクション構造の半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドリフト領域にpn接合が周期的に形成されたスーパージャンクション(SJ)構造のMOSトランジスタ(以下において、「SJMOS」という。)は、高耐圧且つ低オン抵抗であるという特性を有する。SJMOSでは、例えばn型の不純物濃度を高くしたドリフト領域を電流が流れ、オン抵抗を下げることができる。一方、逆バイアス時にpn接合から伸びる空乏層によってドリフト領域が空乏化されて、高耐圧が確保される。このとき、ドリフト領域を完全に空乏化させるために、p型の不純物総量とn型の不純物総量との比が1近傍に設定される。
【0003】
SJMOSの半導体素子が配置される素子領域においては、例えば直線的に延伸するストライプ状のp型の柱状領域とn型の柱状領域が繰り返し交互に配置される。一方、素子領域の周囲に配置された外周領域では、素子領域の周囲を囲んで柱状領域が環状に配置されることも多い。
【0004】
しかし、素子領域においてストライプ状に柱状領域を配置し、外周領域において柱状領域を環状に配置すると、パターン設計が複雑になる。これは、素子領域と外周領域との境界領域付近での柱状領域の接合部分におけるp型とn型の不純物量バランスが崩れるためである。例えば、環状に配置されたp型の柱状領域の側部に、素子領域から延伸するp型の柱状領域の端部を接合させる。この場合、接合部分でp型の不純物量が増大する。その結果、p型の柱状領域とその周囲のn型半導体領域との不純物量バランスが崩れる。
【0005】
したがって、外周領域においても、ストライプ状にp型の柱状領域とn型の柱状領域が交互に配置されることが好ましい(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3908572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
外周領域の柱状領域をストライプ状にした場合、耐圧を確保するために、外周領域にリサーフ領域を形成することが一般的である。しかし、リサーフ領域は不純物濃度が低いため、外部から侵入する可動イオンの影響を受けてリサーフ領域などの半導体装置の表面電位が変動しやすい。その結果、耐圧が低下するなどして信頼性を確保することが困難である。
【0008】
上記問題点に鑑み、本発明は、高い信頼性を有するスーパージャンクション構造の半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、半導体素子が形成された素子領域及び素子領域の周囲に配置された外周領域を有する半導体装置であって、(ア)素子領域と外周領域にわたって延在する第1導電型の第1の半導体領域と、(イ)第1の半導体領域との間にpn接合をそれぞれ形成するように第1の半導体領域の内部に互いに離間して配列され、pn接合が周期的に配置されたスーパージャンクション構造を構成するように、素子領域と外周領域にわたって第1の半導体領域の主面と平行してストライプ状に延伸する第2導電型の第2の半導体領域と、(ウ)第1の半導体領域の第1主面側に配置された、膜厚方向に沿って半導体素子に流れる主電流の電流経路の一方の端部である第1の主電極と、(エ)第1の半導体領域の第2主面側で素子領域に配置された、電流経路の他方の端部である第2の主電極と、(オ)第2主面側の外周領域の外縁に配置され、第1の主電極と電気的に接続された終端電極と、(カ)第2の主電極と終端電極との間で第2主面側に配置された絶縁層と、(キ)素子領域から外周領域の外縁に向かう外縁方向に沿って、絶縁層の内部に互いに離間して配列された複数の導電体とを備え、
互いに隣接する導電体の間に形成されるコンデンサを直列接続したコンデンサ群が構成され、外縁方向に延伸するコンデンサ群によって第2の主電極と終端電極とが容量結合され、終端電極が第2主面側のコーナー部に配置され、コーナー部を除いた外縁には終端電極が配置されておらず、複数の導電体のうちの終端電極に最近接である導電体が、コーナー部において終端電極に接続されている半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い信頼性を有するスーパージャンクション構造の半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る半導体装置のコンデンサ群の構成を示す模式図である。
図4図2のコーナー部の周辺領域を拡大した模式的な平面図である。
図5】比較例の半導体装置について耐圧をシミュレーションした結果である。
図6】本発明の実施形態に係る半導体装置について耐圧をシミュレーションした結果である。
図7】本発明の実施形態に係る半導体装置と比較例の半導体装置について付与する電荷量と耐圧の変化率の関係をシミュレーションした結果である。
図8】本発明の実施形態に係る半導体装置のリサーフ領域とp型柱状領域の配置を示す模式的な平面図である。
図9】本発明の実施形態の変形例に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
図10】本発明のその他の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
図11図10に示す半導体装置のコンデンサ群の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0013】
また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
本発明の実施形態に係る半導体装置1は、図1に示すように、半導体素子が形成された素子領域101と素子領域101の周囲に配置された外周領域102を有する。半導体装置1は、素子領域101と外周領域102にわたって延在する第1導電型の第1の半導体領域(ドリフト領域10)と、第1の半導体領域の内部に互いに離間して配列された複数の第2導電型の第2の半導体領域(p型柱状領域20)とを備える。
【0015】
なお、第1導電型と第2導電型とは互いに反対導電型である。すなわち、第1導電型がn型であれば、第2導電型はp型であり、第1導電型がp型であれば、第2導電型はn型である。ここでは、第1導電型がn型、第2導電型がp型である。
【0016】
p型柱状領域20は、ドリフト領域10との間にpn接合をそれぞれ形成するように配置されている。つまり、ドリフト領域10とp型柱状領域20とによって、pn接合が周期的に配置されたスーパージャンクション(SJ)構造が構成されている。
【0017】
図2に示すように、p型柱状領域20は、素子領域101と外周領域102にわたって連続的にドリフト領域10の主面と平行してストライプ状に延伸する。更に、p型柱状領域20の中心部の位置の間隔Lは、素子領域101と外周領域102で同じ値になっている。このため、p型の柱状領域を素子領域101においてストライプ状に配置し、外周領域102において環状に配置する場合のような、不純物量バランスの問題が生じない。即ち、素子領域101と外周領域102との境界におけるp型とn型の不純物量バランスは、他の領域と同様である。したがって、半導体装置1では、不純物量バランスが崩れることを抑制するための複雑なパターン設計などが不要である。
【0018】
図1に示したように、ドリフト領域10の第1主面11側に、素子領域101に形成される半導体素子の第1の主電極としてドレイン電極30が配置されている。一方、ドリフト領域10の第2主面12側に、半導体素子の第2の主電極としてソース電極90が素子領域101に配置されている。ドレイン電極30は、膜厚方向に沿って半導体素子に流れる主電流の電流経路の一方の端部であり、ソース電極90は電流経路の他方の端部である。
【0019】
外周領域102の外縁には、ドリフト領域10の第2主面12側に終端電極100が配置されている。ソース電極90と終端電極100との間のドリフト領域10の第2主面12に絶縁層130が配置されており、絶縁層130の開口部において終端電極100がドリフト領域10の第2主面12と接触している。終端電極100とドリフト領域10との境界に不純物濃度の高いn型のコンタクト領域160が形成されており、ドリフト領域10を介して終端電極100がドレイン電極30と電気的に接続されている。
【0020】
図2に示したように、終端電極100は、ドリフト領域10の矩形状の第2主面12のコーナー部にのみ配置されている。即ち、コーナー部を除いた外周領域102の直線状の外縁には終端電極100は配置されていない。コーナー部のみに終端電極100を配置することによって、半導体装置1のサイズの増大を抑制できる。
【0021】
更に、素子領域101から外周領域102の外縁に向かう外縁方向に沿って、絶縁層130の内部に互いに離間して複数の導電体140が配列されている。互いに隣接する導電体140の間には、それぞれコンデンサが形成される。これらのコンデンサを直列接続して構成されるコンデンサ群(以下において、「容量チェーン」という。)が、外縁方向に延伸する。
【0022】
図1に示す半導体装置1では、絶縁層130の内部で上段と下段の2層に分けて導電体140が配列されている。上段に配置された導電体140と下段に配置された導電体140とが、外縁方向に沿って交互に配置されている。図1に示すように、平面視で、下段に配列された導電体140の間の領域が上段に配列された導電体140によって覆われている。
【0023】
図3に示すように、上段に配列された導電体140aと下段に配列された導電体140bとの平面視で重なった領域に、コンデンサ150が形成される。コンデンサ150を形成するために、膜厚方向の導電体140同士の間隔は1μm以下が好ましく、例えば100nm〜500nm程度である。
【0024】
導電体140の材料は、例えばポリシリコンである。或いは、アルミニウムなどの金属材も導電体140に使用可能である。絶縁層130には、例えば酸化シリコン膜などを使用可能である。
【0025】
なお、図2に示したように、導電体140は素子領域101の周囲を囲んで配置されたリング形状である。複数の導電体140によって、素子領域101が多重に囲まれている。図4に、図2のコーナー部の周辺領域Rを拡大した図を示す。導電体140のコーナー部は、電界集中を緩和するために曲線である。図4では、絶縁層130を透過して導電体140が表示されている。なお、下段に配列された導電体140bの端部は、上段に配列された導電体140aの下方であるため、破線で表示している。また。図4では素子領域101に形成される半導体素子の図示を省略している。図1図4のI−I方向に沿った断面図である。
【0026】
図1に示すように、容量チェーンを構成する導電体140のうち、ソース電極90に最近接の導電体140がソース電極90に接続されている。一方、容量チェーンを構成する導電体140のうちの終端電極100に最近接である導電体140が、ドリフト領域10の第2主面12のコーナー部において終端電極100に接続されている。これにより、容量チェーンによってソース電極90と終端電極100とが容量結合されている。
【0027】
終端電極100とドレイン電極30とは電気的に接続されているため、容量チェーンによってソース電極90とドレイン電極30とが容量結合される。その結果、ソース電極90とドレイン電極30との間に所定の電圧を印加した場合に、容量チェーンによってソース電極90と終端電極100間が分圧される。この分圧された電位によって、外周領域102において表面電位が固定される。
【0028】
このため、外部から侵入した可動イオンなどによって表面電位が変動することが抑制される。したがって、半導体装置1では、可動イオンなどから受ける影響が低減され、高い信頼性を得ることができる。
【0029】
図5に、600V〜700V程度の高耐圧を有するように設計され、容量チェーンが形成されていない比較例の半導体装置について耐圧をシミュレーションした結果を示す。シミュレーションは、半導体装置に可動イオンが侵入した場合を想定し、プラス電荷を半導体装置の表面に付与した状態で耐圧を計算した結果である。可動イオンには、人体から発せられたナトリウムイオンなどを想定している。図5の横軸は外縁方向に沿った外周領域の位置であり、縦軸は耐圧である。図5に示すように、比較例の半導体装置では、等電位線に歪みがあり、可動イオンの影響によって耐圧が低下している。
【0030】
一方、容量チェーンを形成した半導体装置1について同様のシミュレーションを行った結果を図6に示す。図6に示すように、比較例に対して耐圧の低下量が抑制され、可動イオンによる影響が低減されていることがわかる。
【0031】
図7に、半導体装置1と比較例の半導体装置について、表面に付与する電荷量を変化させたシミュレーションの結果を示す。図7の横軸は付与する電荷量Qであり、縦軸は耐圧の変化率ΔVBである。なお、特性Aが半導体装置1のシミュレーションの結果であり、特性Bが比較例の半導体装置のシミュレーションの結果である。図7に示すように、比較例に比べて半導体装置1の方が耐圧の変化率ΔVBが小さく、且つ、電荷量Qの変化に対する耐圧の変化率ΔVBの依存性も小さい。つまり、容量チェーンを形成することによって、可動イオンによる耐圧の低下を抑制することができる。
【0032】
なお、外周領域102におけるドリフト領域10の電位分布に整合させて表面電位が分圧されるように、容量チェーンの構成を設定することが好ましい。これにより、電位分布の歪みが抑制され、耐圧の低下が防止される。例えば、ドリフト領域10の電位分布と一致して表面電位が分圧されるように、容量チェーンに含まれるコンデンサ150の数や配置される導電体140のピッチを調整する。シミュレーションの結果や製造条件などに応じて、最適に容量チェーンの構成を選択することができる。
【0033】
終端電極100と最外周の導電体140とを接続させるために、少なくとも最外周の導電体140の外縁部は、p型柱状領域20の延伸方向の端部よりも外周領域102の外縁に近く位置している。更に、図4で示すコーナー部側におけるp型柱状領域20の延伸方向の端部はコーナー部側以外のp型柱状領域20の延伸方向の端部に比べて外周領域102の外縁から離間しており、コーナー部側におけるp型柱状領域20はそれ以外のp型柱状領域20よりも外縁方向において短くなっている。そのコーナー部に終端電極100を設ける。このため、図4に示すように、p型柱状領域20と終端電極100とは接触しない。更に、半導体装置1を小型化することができる。
【0034】
図1に示した半導体装置1は、ドリフト領域10の上部の一部に素子領域101の周囲を囲んで外周領域102に形成されたp型のリサーフ領域120を更に備える。即ち、素子領域101に最近接のp型柱状領域20の上部に接して、p型柱状領域20よりも不純物濃度の高いp型領域110がドリフト領域10の上部に配置されている。p型領域110の不純物濃度は、例えば後述するベース領域50と同じ不純物濃度である。p型領域110は、ソース電極90と接続している。そして、p型領域110から外周領域102の外縁方向に向かってリサーフ領域120が延在している。リサーフ領域120の不純物濃度は、p型領域110よりも低い。リサーフ領域120の不純物濃度は、p型柱状領域20の不純物濃度よりも低い。リサーフ領域120の直下に配置されたp型柱状領域20は、その上端部がリサーフ領域120に達している。なお、図8に示すように、平面視でリサーフ領域120の外側までp型柱状領域20が延伸している。
【0035】
リサーフ領域120を形成することによって、逆バイアス時にpn接合からの空乏層が外側に伸ばされ、空乏層の伸びが外周領域102においてなだらかになる。これにより、電界集中が緩和され、半導体装置1の耐圧が向上する。
【0036】
ところで、素子領域101には、SJ構造を採用した種々の半導体素子が形成される。例えば図1に示したように、主電流が膜厚方向に流れるMOSFETが素子領域101に形成される。以下に、図1に示した半導体素子の構造について説明する。
【0037】
ドレイン電極30上に、高濃度のn型半導体領域40が配置されている。n型半導体領域40は、例えばシリコン(Si)等の半導体基板にn型の不純物であるリン(P)等をドープして形成される。n型半導体領域40は、ドレイン領域として機能する。ドレイン電極30とn型半導体領域40とはオーミック接続されている。
【0038】
n型半導体領域40の上に、n型半導体領域40よりも不純物濃度の低いドリフト領域10が配置されている。ドリフト領域10の内部に形成されたp型柱状領域20の底部は、n型半導体領域40の上面に達している。
【0039】
素子領域101においては、p型柱状領域20のそれぞれの上方に、p型柱状領域20よりも不純物濃度の高いp型のベース領域50が配置されている。隣接するベース領域50は、ドリフト領域10によって離間されている。p型柱状領域20の上端部は、ベース領域50の下面に達している。
【0040】
ベース領域50の内側に、n型のソース領域60が島状に配置されている。ソース領域60の上面は、ベース領域50及びドリフト領域10の上面と同一平面レベルである。
【0041】
ベース領域50上、例えば隣接するソース領域60の上方とソース領域60間のドリフト領域10の上方とにわたって、ゲート電極70が配置されている。ゲート電極70は、例えばポリシリコン膜である。ゲート電極70は絶縁膜80によって覆われており、ゲート電極70と、ソース領域60、ベース領域50及びドリフト領域10とは、絶縁膜80によって電気的に絶縁されている。ゲート電極70とベース領域50との間の絶縁膜80は、ゲート絶縁膜として機能する。絶縁膜80には、例えばシリコン酸化膜などが使用される。
【0042】
更に、絶縁膜80の上面及び側面を覆ってソース電極90が配置されている。ソース電極90は、絶縁膜80が配置されていない領域に露出するソース領域60及びベース領域50とオーミック接続されている。
【0043】
半導体装置1では、ドレイン電極30とソース電極90間に所定の電圧を加えた状態でしきい値以上のゲート電圧をゲート電極70に印加することにより、ベース領域50のゲート電極70に対向する領域にチャネルが形成される。これにより、ドレイン電極30とソース電極90間にドレイン電流が流れる。
【0044】
以上に説明したように、本発明の実施形態に係る半導体装置1では、容量チェーンを形成することによって、ドレイン電極30とソース電極90間に電圧を加えた場合に外周領域102の表面電位が固定される。このため、可動イオンなどに起因して表面電位が変動することが抑制される。その結果、高い信頼性を有するスーパージャンクション構造の半導体装置1を提供することができる。
【0045】
<変形例>
図1では、外縁方向の長さ(以下において、単に「長さ」という。)が同等である導電体140が、外縁方向に沿って等間隔に配列されている例を示した。このため、隣接する導電体140間の平面視での間隔は均等である。したがって、導電体140間に形成されるコンデンサ150は等間隔に配置され、コンデンサ150の配置されるピッチは均一である。
【0046】
しかし、ドリフト領域10の電位分布に合わせて表面電位の分布が設定されるように、コンデンサ150の位置を調整することが好ましい。即ち、平面視でコンデンサ150の配置されるピッチが一定ではなくてもよい。例えば、導電体140の長さを個別に調整して、コンデンサ150の位置を調整できる。これにより、電位分布の歪みが抑制され、耐圧の低下が防止される。
【0047】
長さが互いに異なる導電体140を配列することによってコンデンサ150の位置を調整する例を、図9に示す。図9は、上段に配列された導電体140aの長さを外縁方向に向かって徐々に短くし、下段の導電体140bの間隔を外縁方向に向かって狭くした構成を示す。これにより、コンデンサ150の間隔を、外周領域102の外縁に向かって徐々に狭く設定することができる。一方、ドリフト領域10の電位分布に合わせて、外周領域102の外縁に向かってコンデンサ150の間隔を徐々に広く設定することもできる。或いは、コンデンサ150の間隔を単調に変化させるのではなく、ランダムに変化させてもよい。
【0048】
上記のように、容量チェーンに含まれるコンデンサ150の数や配置されるピッチを調整することによって、表面電位をドリフト領域10の電位分布と一致させることができる。したがって、半導体装置1によれば、外周領域102におけるドリフト領域10の電位が外縁方向に向かって一定の割合で変化するのではない場合においても、耐圧の低下が抑制され、高い信頼性を得ることができる。
【0049】
(その他の実施形態)
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0050】
例えば、上記では導電体140を2つの層に配置した場合を説明したが、図10に示すように導電体140を1つの層に配置してもよい。これにより、半導体装置1の製造工程を短縮することができる。図10に示した半導体装置1においても、図11に示すように導電体140の側面の間に形成されるコンデンサ150を直列接続した容量チェーンが構成されて、ソース電極90と終端電極100とが容量結合される。
【0051】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことはもちろんである。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の半導体装置は、スーパージャンクション構造を採用する半導体装置の用途に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11