(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の方法では、撥水性の皮膜を設けることや送風方向を特定することによる着霜量の低減化が検討されているに過ぎず、着霜量を低減するための熱交換器の表面構造については、なんら検討されていない。
【0008】
本開示は上述した点に鑑みてなされたものであり、本開示は、着霜環境下で用いられる場合であっても、凝縮水を飛散させることで着霜を抑制することが可能な表面構造を有する熱交換器および空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本件では、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、撥水性を備えた表面構造において特定の条件を満たす表面構造を採用することで、凝縮水を飛散させて着霜を抑制できることを見出し、本開示内容を完成させた。
【0010】
第1の観点に係る熱交換器は、表面に撥水性塗膜が設けられた部分を有する熱交換器であって、撥水性塗膜が設けられている表面は、複数の凸部を含む表面構造を有している。当該表面構造は、凝縮水滴同士が合体することによるエネルギによって合体後の凝縮水滴を撥水性塗膜の表面から離脱させることを可能とする構造である。この凝縮水滴の水滴径は、所定の凍結条件下であっても過冷却状態を維持可能な液滴径である。
凸部は、凸部が突出している突出方向に対して垂直な面での切断面の面積が突出方向において少なくともひとつの極小値を含む形状を有している。
【0011】
ここで、凸部は、凸部の突出方向側から見た場合に、円形であってもよいし、矩形であってもよい。
【0012】
ここで、所定の凍結条件としては、特に限定されないが、凝縮水の周囲の雰囲気温度が、水の融点である0℃以下の温度となっていることとしてもよいし、更に低い−1℃以下としてもよいし、−3℃以下としてもよいし、−5℃以下としてもよい。
【0013】
なお、上記表面構造は、撥水性塗膜が設けられている表面の一部のみに設けられていてもよいし全体において設けられていてもよく、一部に上記表面構造を有している場合には当該一部において効果が得られ、全体に上記表面構造を有している場合には全体において効果が得られる。
【0014】
この熱交換器では、撥水性塗膜が設けられることで、凝縮水等が保持されにくく、飛散させやすくすることが可能になっている。
【0015】
そして、撥水性塗膜の表面では、所定の凍結条件下のような低温環境下であっても、撥水性塗膜の表面に存在する凝縮水の水滴径が過冷却状態を維持することができる程度に小さい液滴径である状態では、凍結して氷になることが抑制されるため、液体の状態で維持されやすい。
【0016】
また、上記撥水性塗膜の表面では、このような過冷却状態の微小な液滴径の凝縮水滴同士が合体した場合において、合体により生じるエネルギが撥水性塗膜の表面から離脱できる程十分に生じなかったとしても、その場合には、依然として、合体後の凝縮水は微小な液滴径であることとなり、過冷却状態を維持しやすく、凍結して氷になることが抑制されるものであり、液体の状態で維持されやすい。
【0017】
また、上記撥水性塗膜の表面構造によれば、このような過冷却状態の微小な液滴径の凝縮水滴同士が合体した場合において、合体により生じるエネルギが撥水性塗膜の表面から離脱できる程十分に生じた場合には、仮に、過冷却状態を維持することが困難な程の大きな水滴径になったとしても、合体した液体である凝縮水滴は、当該合体により生じたエネルギによって撥水性塗膜の表面から離脱させることが可能になる。
【0018】
以上のようにして、撥水性塗膜の表面では、霜成長の起点となる氷核の発生を抑制させ、凝縮水が熱交換器表面で凍結する前に飛散させることが可能であるため、熱交換器への着霜による通風抵抗の増大を抑制することが可能になる。
【0019】
なお、この熱交換器は、熱交換器への着霜による通風抵抗の増大をより抑制することが可能になる。
【0020】
第2の観点に係る熱交換器は、表面に撥水性塗膜が設けられた部分を有する熱交換器である。撥水性塗膜が設けられている表面は、
L:凸部の平均ピッチ、
d:凸部の平均径、
rw(全体):表面全体の平均面積拡大率、
rw(凸部):表面凸部の平均面積拡大率、
θw:撥水性塗膜の平滑平面上での水の接触角、
とした場合に、
rw(全体)>0.6/|cosθw|
rw(凸部)>0.6/|cosθw|
0.1<d/L<0.8
L<3.0μm
90°<θw<120°
の全ての関係を満たす表面構造を有している。
【0021】
なお、上記表面構造は、撥水性塗膜が設けられている表面の一部のみに設けられていてもよいし全体において設けられていてもよく、一部に上記表面構造を有している場合には当該一部において効果が得られ、全体に上記表面構造を有している場合には全体において効果が得られる。
【0022】
この熱交換器は、撥水性塗膜が設けられることで、凝縮水等が保持されにくく、飛散させやすくすることが可能になっている。しかも、撥水性塗膜が形成されている箇所において当該表面構造が採用されているため、凝縮水が熱交換器表面で凍結する前に飛散させることが可能になる。このため、熱交換器への着霜による通風抵抗の増大を抑制することが可能になる。
【0023】
第3観点に係る熱交換器は、第1観点または第2観点に係る熱交換器であって、凸部は、凸部が突出している突出方向に対して垂直な面での切断面の面積が、突出方向において異なっている部分を有している。
【0024】
ここでは、凸部は、凸部の突出方向に対して垂直な面での断面の面積が、突出方向において凸部の先端に向かうほど小さくなっている形状のものであってもよいし、凸部の突出方向に垂直な面での断面の面積が、突出方向において凸部の先端に向かうほど大きくなっている形状のものであってもよいし、凸部の突出方向に対して垂直な面での断面の面積が、突出方向において凸部の先端に向かうほど小さくなった後に大きくなっているキノコ型等のくびれ形状のものであってもよい。
【0025】
また、凸部は、凸部の突出方向側から見た場合に、円形であってもよいし、矩形であってもよい。
【0026】
この熱交換器では、熱交換器への着霜による通風抵抗の増大をより抑制することが可能になる。
【0027】
第4観点に係る熱交換器は、第
2観点
または第3観点
に係る熱交換器であって、凸部は、凸部が突出している突出方向に対して垂直な面での切断面の面積が突出方向において少なくともひとつの極小値を含む形状を有している。
【0028】
ここで、凸部は、凸部の突出方向側から見た場合に、円形であってもよいし、矩形であってもよい。
【0029】
この熱交換器は、熱交換器への着霜による通風抵抗の増大をより抑制することが可能になる。
【0030】
第5観点に係る熱交換器は、第1観点から第4観点のいずれかに係る熱交換器であって、複数の伝熱フィンと、伝熱管と、を備えている。伝熱管は、複数の伝熱フィンに固定され、内部を冷媒が流れる。表面構造は、伝熱フィンの表面において設けられている。
【0031】
この熱交換器は、特定の表面構造を伝熱フィンの表面に設けたため、当該特定の表面構造を実現するための加工を容易なものとすることができる。
【0032】
第6観点に係る空気調和装置は、冷媒回路と、制御部と、を備えている。冷媒回路は、第1観点から第5観点のいずれかに係る熱交換器と、圧縮機を有している。制御部は、熱交換器を冷媒の蒸発器として機能させる通常運転と、熱交換器に付着した霜を融解させるためのデフロスト運転と、を冷媒回路において実行させる。
【0033】
この空気調和装置は、熱交換器において特定の表面構造が採用されているため、凝縮水の付着を抑制できるため、霜の付着も抑制できる。これにより、デフロスト運転が行われる頻度を抑えて、通常運転を長く実行することが可能になる。
【0034】
第7観点に係る空気調和装置は、第1観点から第5観点のいずれかに係る熱交換器と、送風ファンと、を備えている。送風ファンは、熱交換器に空気流れを供給する。送風ファンから熱交換器へ供給される空気は、水平方向に送られる。
【0035】
この空気調和装置は、水平方向(凝縮水の自重方向ではない方向)に空気流れを供給する場合であっても、熱交換器の特定の表面構造において凝縮水を飛散させることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る熱交換器である室外熱交換器23および空気調和装置である空気調和装置100について説明する。なお、以下の実施形態は、具体例であって、本開示の技術的範囲を限定するものではなく、開示内容の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0038】
(1)空気調和装置100
図1は、一実施形態に係る空気調和装置100の概略構成図である。空気調和装置100は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことで、対象空間の空気を調和させる装置である。
【0039】
空気調和装置100は、主として、室外ユニット2と、室内ユニット50と、室外ユニット2と室内ユニット50を接続する液冷媒連絡管6およびガス冷媒連絡管7と、入力装置および出力装置としての複数のリモコン50aと、空気調和装置100の動作を制御するコントローラ70と、を有している。
【0040】
空気調和装置100では、冷媒回路10内に封入された冷媒が、圧縮され、冷却又は凝縮され、減圧され、加熱又は蒸発された後に、再び圧縮される、という冷凍サイクルが行われる。本実施形態では、冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒としてR32が充填されている。
【0041】
(1−1)室外ユニット2
室外ユニット2は、液冷媒連絡管6およびガス冷媒連絡管7を介して室内ユニット50と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。室外ユニット2は、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、室外熱交換器23と、室外膨張弁24と、室外ファン25と、液側閉鎖弁29と、ガス側閉鎖弁30と、室外ケーシング2aと、を有している。
【0042】
また、室外ユニット2は、冷媒回路10を構成する配管である吐出管31、吸入管34、室外ガス側配管33、室外液側配管32を有している。吐出管31は、圧縮機21の吐出側と四路切換弁22の第1接続ポートとを接続している。吸入管34は、圧縮機21の吸入側と四路切換弁22の第2続ポートとを接続している。室外ガス側配管33は、四路切換弁22の第3ポートとガス側閉鎖弁30とを接続している。室外液側配管32は、四路切換弁22の第4ポートから室外熱交換器23および室外膨張弁24を介して液側閉鎖弁29まで伸びている。
【0043】
圧縮機21は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。ここでは、圧縮機21として、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示省略)が圧縮機モータM21によって回転駆動される密閉式構造の圧縮機が使用されている。圧縮機モータM21は、容量を変化させるためのものであり、インバータにより運転周波数の制御が可能である。
【0044】
四路切換弁22は、接続状態を切り換えることで、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁30とを接続する冷房運転接続状態(およびデフロスト運転状態)と、圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁30とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態と、を切り換えることができる。
【0045】
室外熱交換器23は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の放熱器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。
【0046】
室外ファン25は、室外ユニット2内に室外の空気を吸入して、室外熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室外ファン25は、室外ファンモータM25によって回転駆動される。
【0047】
室外膨張弁24は、弁開度制御が可能な電動膨張弁であり、室外液側配管32の途中の室外熱交換器23と液側閉鎖弁29との間に設けられている。
【0048】
液側閉鎖弁29は、室外液側配管32と液冷媒連絡管6との接続部分に配置された手動弁である。
【0049】
ガス側閉鎖弁30は、室外ガス側配管33とガス冷媒連絡管7との接続部分に配置された手動弁である。
【0050】
室外ユニット2には、各種センサが配置されている。
【0051】
具体的には、室外ユニット2の圧縮機21周辺には、圧縮機21の吸入側における冷媒の温度である吸入温度センサ35と、圧縮機21の吸入側における冷媒の圧力である吸入圧力を検出する吸入圧力センサ36と、圧縮機21の吐出側における冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力センサ37と、が配置されている。
【0052】
また、室外熱交換器23には、室外熱交換器23を流れる冷媒の温度を検出する室外熱交温度センサ38が設けられている。
【0053】
さらに、室外熱交換器23又は室外ファン25の周辺には、室外ユニット2内に吸入される室外の空気の温度を検出する外気温度センサ39が配置されている。
【0054】
室外ユニット2は、室外ユニット2を構成する各部の動作を制御する室外ユニット制御部20を有している。室外ユニット制御部20は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室外ユニット制御部20は、各室内ユニット50の室内ユニット制御部57と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。また、室外ユニット制御部20は、吸入温度センサ35、吸入圧力センサ36、吐出圧力センサ37、室外熱交温度センサ38、外気温度センサ39とそれぞれ電気的に接続されており、各センサからの信号を受信する。
【0055】
なお、以上の室外ユニット2を構成する各要素は、
図3に示す外観斜視図、
図4に示す上面視配置構成図に示すように、室外ケーシング2a内に収容されている。室外ケーシング2aは、仕切板2cによって送風機室S1と機械室S2に区画されている。室外熱交換器23は、その主面が、送風機室S1において、室外ケーシング2aの背面および機械室S2とは反対側の側面において広がるようにして、鉛直方向に立設された姿勢で設けられている。室外ファン25は、回転軸方向を前後方向とするプロペラファンであり、送風機室S1のうち室外ケーシング2aの背面および機械室S2とは反対側の側面から内部に向けて略水平方向に空気を取りこみ、室外ケーシング2aの送風機室S1における正面に設けられたファングリル2bを介して正面に向けて略水平方向に吹き出す空気流れを形成させる(
図4の二点鎖線の矢印参照)。以上の構成により、室外ファン25によって形成される空気流れは、室外熱交換器23の主面に対して直交するように通過することになる。
【0056】
(1−2)室内ユニット50
室内ユニット50は、対象空間である室内の壁面や天井等に設置されている。室内ユニット50は、液冷媒連絡管6およびガス冷媒連絡管7を介して室外ユニット2と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
【0057】
室内ユニット50は、室内膨張弁51と、室内熱交換器52と、室内ファン53と、を有している。
【0058】
また、室内ユニット50は、室内熱交換器52の液側端と液冷媒連絡管6とを接続する室内液冷媒管58と、室内熱交換器52のガス側端とガス冷媒連絡管7とを接続する室内ガス冷媒管59と、を有している。
【0059】
室内膨張弁51は、弁開度制御が可能な電動膨張弁であり、室内液冷媒管58の途中に設けられている。
【0060】
室内熱交換器52は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の放熱器として機能する熱交換器である。
【0061】
室内ファン53は、室内ユニット50内に室内の空気を吸入して、室内熱交換器52において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。室内ファン53は、室内ファンモータM53によって回転駆動される。
【0062】
室内ユニット50には、各種センサが配置されている。
【0063】
具体的には、室内ユニット50の内部には、室内ユニット50が設置されている空間における空気温度を検出する室内空気温度センサ54と、室内熱交換器52を流れる冷媒の温度を検出する室内熱交温度センサ55と、が配置されている。
【0064】
また、室内ユニット50は、室内ユニット50を構成する各部の動作を制御する室内ユニット制御部57を有している。室内ユニット制御部57は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。室内ユニット制御部57は、室外ユニット制御部20と通信線を介して接続されており、制御信号等の送受信を行う。
【0065】
室内ユニット制御部57は、室内空気温度センサ54、室内熱交温度センサ55がそれぞれ電気的に接続されており、各センサからの信号を受信する。
【0066】
(1−3)リモコン50a
リモコン50aは、室内ユニット50のユーザが空気調和装置100の運転状態を切り換えるための各種指示を入力するための入力装置である。また、リモコン50aは、空気調和装置100の運転状態や所定の報知を行うための出力装置としても機能する。リモコン50aは、室内ユニット制御部57と通信線を介して接続されており、相互に信号の送受信を行っている。
【0067】
(2)コントローラ70の詳細
空気調和装置100では、室外ユニット制御部20と室内ユニット制御部57が通信線を介して接続されることで、空気調和装置100の動作を制御するコントローラ70が構成されている。
【0068】
図2は、コントローラ70の概略構成と、コントローラ70に接続される各部と、を模式的に示したブロック図である。
【0069】
コントローラ70は、複数の制御モードを有し、制御モードに応じて空気調和装置100の運転を制御する。例えば、コントローラ70は、制御モードとして、冷房運転モードと、暖房運転モードと、デフロスト運転モードと、を有している。
【0070】
コントローラ70は、室外ユニット2に含まれる各アクチュエータ(具体的には、圧縮機21(圧縮機モータM21)、室外膨張弁24、および室外ファン25(室外ファンモータM25))と、各種センサ(吸入温度センサ35、吸入圧力センサ36、吐出圧力センサ37、室外熱交温度センサ38、および外気温度センサ39等)と、電気的に接続されている。また、コントローラ70は、室内ユニット50に含まれるアクチュエータ(具体的には、室内ファン53(室内ファンモータM53)、室内膨張弁51)と電気的に接続されている。また、コントローラ70は、室内空気温度センサ54、室内熱交温度センサ55と、リモコン50aと、電気的に接続されている。
【0071】
コントローラ70は、主として、記憶部71と、通信部72と、モード制御部73と、アクチュエータ制御部74と、出力制御部75と、を有している。なお、コントローラ70内におけるこれらの各部は、室外ユニット制御部20および/又は室内ユニット制御部57に含まれる各部が一体的に機能することによって実現されている。
【0072】
(2−1)記憶部71
記憶部71は、例えば、ROM、RAM、およびフラッシュメモリ等で構成されており、揮発性の記憶領域と不揮発性の記憶領域を含む。記憶部71には、コントローラ70の各部における処理を定義した制御プログラムが格納されている。また、記憶部71は、コントローラ70の各部によって、所定の情報(例えば、各センサの検出値、リモコン50aに入力されたコマンド等)を、所定の記憶領域に適宜格納される。
【0073】
(2−2)通信部72
通信部72は、コントローラ70に接続される各機器と、信号の送受信を行うための通信インターフェースとしての役割を果たす機能部である。通信部72は、アクチュエータ制御部74からの依頼を受けて、指定されたアクチュエータに所定の信号を送信する。また、通信部72は、各種センサ35〜39、54、55、リモコン50aから出力された信号を受けて、記憶部71の所定の記憶領域に格納する。
【0074】
(2−3)モード制御部73
モード制御部73は、制御モードの切り換え等を行う機能部である。モード制御部73は、リモコン50aからの入力や運転状況に応じて、冷房運転モードと暖房運転モードとデフロスト運転モードとを切り換えて実行する。
【0075】
(2−4)アクチュエータ制御部74
アクチュエータ制御部74は、制御プログラムに沿って、状況に応じて、空気調和装置100に含まれる各アクチュエータ(例えば圧縮機21等)の動作を制御する。
【0076】
例えば、アクチュエータ制御部74は、設定温度や各種センサの検出値等に応じて、圧縮機21の回転数、室外ファン25、室内ファン53の回転数、室外膨張弁24の弁開度、室内膨張弁51の弁開度等をリアルタイムに制御する。
【0077】
(2−5)出力制御部75
出力制御部75は、表示装置としてのリモコン50aの動作を制御する機能部である。
【0078】
出力制御部75は、運転状態や状況に係る情報をユーザに対して表示すべく、リモコン50aに所定の情報を出力させる。
【0079】
(3)各種運転モード
以下では、冷房運転モード、暖房運転モード、デフロスト運転モード時の冷媒流れを説明する。
【0080】
(3−1)冷房運転モード
空気調和装置100では、冷房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23とを接続しつつ圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁30とを接続する冷房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室外熱交換器23、室外膨張弁24、室内膨張弁51、室内熱交換器52の順に循環させる。
【0081】
より具体的には、冷房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
【0082】
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、吐出管31、四路切換弁22を経て、室外熱交換器23のガス側端に流入する。
【0083】
室外熱交換器23のガス側端に流入したガス冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外側空気と熱交換を行って放熱して凝縮し、液冷媒となって室外熱交換器23の液側端から流出する。
【0084】
室外熱交換器23の液側端から流出した液冷媒は、室外液側配管32、室外膨張弁24、液側閉鎖弁29、および液冷媒連絡管6を経て、室内ユニット50に流入する。なお、冷房運転モードでは、室外膨張弁24は全開状態となるように制御されている。
【0085】
室内ユニット50に流入した冷媒は、室内液冷媒管58の一部を経て、室内膨張弁51に流入する。室内膨張弁51に流入した冷媒は、室内膨張弁51によって冷凍サイクルにおける低圧になるまで減圧された後、室内熱交換器52の液側端に流入する。なお、室内膨張弁51の弁開度は、冷房運転モードでは、圧縮機21の吸入冷媒の過熱度が所定の過熱度となるように制御される。ここで、圧縮機21の吸入冷媒の過熱度は、吸入温度センサ35による検出温度と吸入圧力センサ36による検出圧力とを用いてコントローラ70に算出される。室内熱交換器52の液側端に流入した冷媒は、室内熱交換器52において、室内ファン53によって供給される室内空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室内熱交換器52のガス側端から流出する。室内熱交換器52のガス側端から流出したガス冷媒は、室内ガス冷媒管59を介して、ガス冷媒連絡管7に流れていく。
【0086】
このようにして、ガス冷媒連絡管7を流れる冷媒は、ガス側閉鎖弁30、室外ガス側配管33、四路切換弁22、および吸入管34を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
【0087】
(3−2)暖房運転モード
空気調和装置100では、暖房運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁30とを接続しつつ圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23とを接続する暖房運転接続状態とし、冷媒回路10に充填されている冷媒を、主として、圧縮機21、室内熱交換器52、室内膨張弁51、室外膨張弁24、室外熱交換器23の順に循環させる。
【0088】
より具体的には、暖房運転モードが開始されると、冷媒回路10内において、冷媒が圧縮機21に吸入されて圧縮された後に吐出される。
【0089】
圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、吐出管31、四路切換弁22、室外ガス側配管33、ガス冷媒連絡管7を流れた後、室内ガス冷媒管59を介して室内ユニット50に流入する。
【0090】
室内ユニット50に流入した冷媒は、室内ガス冷媒管59を経て、室内熱交換器52のガス側端に流入する。室内熱交換器52のガス側端に流入した冷媒は、室内熱交換器52において、室内ファン53によって供給される室内空気と熱交換を行って放熱して凝縮し、液冷媒となって室内熱交換器52の液側端から流出する。室内熱交換器52の液側端から流出した冷媒は、室内液冷媒管58、室内膨張弁51を介して、液冷媒連絡管6に流れていく。なお、室内膨張弁51の弁開度は、暖房運転モードでは全開状態となるように制御される。
【0091】
このようにして、液冷媒連絡管6を流れる冷媒は、液側閉鎖弁29、室外液側配管32を介して、室外膨張弁24に流入する。
【0092】
室外膨張弁24に流入した冷媒は、冷凍サイクルにおける低圧になるまで減圧された後、室外熱交換器23の液側端に流入する。なお、室外膨張弁24の弁開度は、暖房運転モードでは、圧縮機21の吸入冷媒の過熱度が所定の過熱度となるように制御される。
【0093】
室外熱交換器23の液側端から流入した冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外空気と熱交換を行って蒸発し、ガス冷媒となって室外熱交換器23のガス側端から流出する。
【0094】
室外熱交換器23のガス側端から流出した冷媒は、四路切換弁22、および吸入管34を経て、再び、圧縮機21に吸入される。
【0095】
(3−3)デフロスト運転モード
以上のように暖房運転モードが実行されている場合において、所定の着霜条件を満たした場合には、暖房運転モードを一時的に中断し、室外熱交換器23に付着した霜を融解させるためのデフロスト運転モードが行われる。
【0096】
なお、所定の着霜条件としては、特に限定されないが、例えば、外気温度センサ39の検出温度と室外熱交温度センサの検出温度とが所定の温度条件を満たしている状態が所定時間以上継続して続いていること、とすることができる。
【0097】
デフロスト運転モードでは、四路切換弁22の接続状態を冷房運転時の接続状態と同様とし、室内ファン53の駆動を停止させた状態で、圧縮機21を駆動させる。デフロスト運転モードを開始した後、所定のデフロスト終了条件を満たした場合(例えば、デフロスト運転モードを開始してから所定時間が経過した場合等)には、四路切換弁22の接続状態を再び暖房運転時の接続状態に戻して、暖房運転モードを再開させる。
【0098】
(4)室外熱交換器23の構造
室外熱交換器23は、
図5の室外熱交換器23の正面概略図に示すように、水平方向に伸びる複数の伝熱管41と、伝熱管41の端部同士を接続する複数のU字管42と、上下および空気流れ方向に広がった複数のフィン43と、を有している。
【0099】
伝熱管41は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等により構成されており、
図6のフィン43の主面の法線方向視の概略外観図に示すように、フィン43に設けられている挿入口43aに貫通するようにして、フィン43が固定されて用いられる。なお、伝熱管41の端部には、内部を流れる冷媒を折り返して流すために、U字管42が接続されている。
【0100】
(5)フィン43の構造
フィン43は、
図7の凸部61が円錐台の形状である場合のフィン43の表面近傍における概略断面図、
図8の凸部61がくびれ形状である場合のフィン43の表面近傍における概略断面図、および、
図9のフィン43の板厚方向視における概略図に示すように、基板62と、基板62の表面に設けられた凸部61と、を有している。なお、凸部61も基板62も、いずれも表層において撥水性塗膜を有している。
【0101】
(5−1)基板62
基板62は、板状部材であり、70μm以上200μm以下であり、90μm以上110μm以下であることが好ましい。また、基板62に用いられる材質としては、アルミニウム、アルミニウム合金、シリコン等が挙げられる。なお、基板62のうち、凸部61が形成されていない箇所の表面は、撥水性塗膜によって構成されている。
【0102】
(5−2)凸部61
凸部61は、基板62の両表面に形成されている。凸部61は、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、シリコン等が撥水性塗膜によって覆われた構造とすることができる。
【0103】
凸部61は、Lを凸部の平均ピッチとした場合に、平均ピッチL<3.0μmを満たすように設けられている。なお、水滴を表面からジャンプさせやすくする観点から、平均ピッチL<1.8μmを満たすことがより好ましく、L<0.3μmを満たすことがさらに好ましい。なお、特に限定されるものではないが、平均ピッチLの下限は、例えば0.01μmとしてもよい。また、10μm×10μmの範囲で観察した場合に、各凸部の間のピッチについて、複数のピッチのうちの80%以上が上記ピッチLの条件を満たしていることが好ましく、90%以上が上記ピッチLの条件を満たしていることがより好ましい。
【0104】
ここで、「平均ピッチ」は、フィン43の任意の表面を観察視野10μm×10μmの範囲で観察した場合に、rw(凸部)>0.6/|cosθw|を満たしている各凸部61(これより小さな突起は除外する)の高さ方向における中心高さ位置での切断面の中心間の距離の平均値をいう(rw(凸部)については後述する)。
【0105】
なお、観察視野を10μm×10μmとするのは、自発的なジャンプが観察される液滴径が120μm程度であり、当該120μmの液滴が接触角175°で固体表面上に存在している際、固体と液滴が接触する範囲が直径10μmとなることに由来する。
【0106】
凸部61は、dを凸部61の平均径とした場合の「平均径d/平均ピッチL」の値が、0.1<d/L<0.8を満たすように設けられている。
【0107】
ここで、d/Lが0.1以下の場合には、フィン43の表面に設けられる凸部61の密度が低く、凸部61同士の間に水滴が入ってしまいがちになり、凸部61同士の間の下方に気泡を含ませることができず、凸部61同士の間の底部分(基板62の表面)まで水滴が入り込んでしまい、液滴の付着力が増大してしまう。なお、水滴が凸部61の間の凹部の底面(基板62)に接することで水滴とフィン43との接触面積が増大すると液滴がジャンプする際に固体表面から受ける拘束力が増大してしまうため、当該拘束力を小さく抑える観点から、0.16<d/Lを満たすことがより好ましく、0.20<d/Lを満たすことがさらに好ましい。
【0108】
また、d/Lが0.8以上の場合には、凸部61同士の間の下方に気泡を確保することは可能になるものの、凸部61同士の間隔が狭く、水滴が保持される箇所の間隔が狭くなるため、水滴に毛管力が作用してしまい、水滴がフィン43に強く保持されてしまう。なお、水滴と凸部61の先端部分との接触面積が増大することで水滴とフィン43との接触面積が増大すると液滴がジャンプする際に固体表面から受ける拘束力が増大してしまうため、当該拘束力を小さく抑える観点から、d/L<0.5を満たすことがより好ましく、d/L<0.36を満たすことがさらに好ましい。
【0109】
ここで、「凸部の平均径d」は、突出方向に垂直な面での切断面の面積が突出方向において極小値を持つような形状以外の形状については、フィン43の任意の表面を観察視野10μm×10μmの範囲で観察した場合に、rw(凸部)>0.6/|cosθw|を満たしている各凸部61(これより小さな突起は除外する)の高さ方向における中心高さ位置での切断面の輪郭長さに相当する円周長さを有する円の直径の平均値をいう(rw(凸部)については後述する)。なお、凸部が、突出方向に垂直な面での切断面の面積が突出方向において極小値を持つような形状(例えば、くびれ形状)である場合には、「凸部の平均径d」は、フィン43の任意の表面を観察視野10μm×10μmの範囲で観察した場合に、rw(凸部)>0.6/|cosθw|を満たしている各凸部61(これより小さな突起は除外する)を対象としつつ、各凸部61の体積を各凸部の突出高さで除して得られる面積に相当する面積を有する円の直径について、各凸部61の値を平均したものをいう。
【0110】
凸部61の形状は、特に限定されず、例えば、
図7に示すような円錐台(円錐を底面に平行な平面で切断して小さい円錐の部分を除いた形状)、角錐台等の錐台(Frustum)、円錐、角錐、四角錐等の錐体(conic solid)、円柱、角柱、四角柱等の柱体(合同な二つの平面を底面および天面として持つ筒状体)、
図8に示すようなくびれ形状(例えば、円柱の側面の一部が取り除かれた形状、角柱の側面の一部が取り除かれた形状、円錐台の側面の一部が取り除かれた形状等のように、凸部61の突出方向に対して垂直な面での切断面の面積が突出方向において極小値を持つ形状)、が挙げられる。なかでも、水滴を表面からジャンプさせやすくする観点から、凸部61の形状は、凸部61の突出方向に対して垂直な面での切断面の面積が突出方向において一様である形状よりも、突出方向において変化している形状であることが好ましく、突出方向の先端に向かうにつれて切断面の面積が小さくなっている形状であることがより好ましく、突出方向において少なくとも1つの極小値を有している形状であることがさらに好ましく、キノコ型であることが特に好ましい。
【0111】
なお、凸部61が錐台や錐体である場合における基板62表面に対する傾斜角度である凸部勾配θg(
図7参照)は、60°以上であることが好ましい。凸部勾配θgが60°未満である場合には、水滴にとってはフィン43の表面の凹凸構造が無く平坦な表面であるかのように扱われてしまう傾向がある。なお、凸部勾配θgの上限は特に限定されないが、製造容易性の観点から90°以下であることが好ましい。当該凸部勾配θgは、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:以下、AFMと略する。)日立ハイテクサイエンス社製AFM5200Sにおいて、観察視野10μm×10μm、測定点数256×256とした測定結果(AFMによる測定について以下同様。)から凸部61の形状の座標を把握し、凸部61の傾斜部分の主面と基板62の平面とが交差して得られる角度として把握することができる。より具体的には、AFMの測定結果から表面形状の座標を特定した場合に、断面プロファイルから把握することができる。
【0112】
なお、凸部61が、くびれ形状のように、突出方向に垂直な面での切断面の面積が突出方向において極小値を持つような形状である場合には(
図8参照)は、当該極小値は、突出方向における中心よりも先端側に位置していてよく、突出方向における先端から30%以内の位置に位置していることが好ましい。また、凸部61の突出方向に垂直な面での切断面の面積のうち、最も大きな面積部分と極小値を有する箇所の面積との比率(大きな面積/小さな面積)の値は、1.5以上4.0以下であることが好ましく、2.0以上、3.0以下であることがより好ましい。なお、凸部61の突出方向に垂直な面での断面積は、例えば、AFMによる測定結果から凸部61の形状の座標を把握し、その断面プロファイルから特定することができる。
【0113】
凸部61の平均高さhは、特に限定されないが、水滴が凹部(基板62)に付着することによる水滴とフィン43との接触面積の増大を抑制する観点から、0.5μm以上であることが好ましく、0.7μm以上であることがより好ましく、1.0μm以上であることがより好ましい。また、凸部61の平均高さhの上限は、特に限定されないが、例えば、8.0μmであり、7.0μmであることが好ましい。
【0114】
(5−3)撥水性塗膜
撥水性塗膜は、凸部61および基板62の表層部分を構成しており、非常に膜厚が薄いため、凸部61によるフィン43の表面構造に影響を与えない。
【0115】
具体的には、凸部61および基板62の表層を構成する撥水性塗膜の膜厚は、例えば、0.3nm以上20nm以下であり、1nm以上17nm以下であることが好ましい。このような撥水性塗膜は、例えば、撥水剤の単分子膜として構成することができる。
【0116】
撥水性塗膜の形成方法としては、例えば、凸部61や基板62と撥水性塗料の分子との結合力が、撥水性塗料の分子間の結合力よりも大きく、凸部61および基板62に対して撥水性塗料を塗布した後に、撥水性塗料の分子間の結合のみを切断させるような処理を行って余分な塗料を排除する方法によって形成することが挙げられる。
【0117】
撥水性塗膜の平滑平面上での水Wの接触角θwは、90°<θw<120°である。これにより、水滴とフィン43との接触面積を小さく抑えることが可能になる。なお、水滴とフィン43との接触面積を十分に小さく抑える観点からは、114°<θw<120°であることがより好ましい。
【0118】
以上の撥水性塗膜は、特に限定されないが、フッ素、シリコーン、炭化水素の少なくともいずれかを含有している有機単分子膜であることが好ましく、なかでも、フッ素を含有している有機単分子膜であることがより好ましい。フッ素を含有している単分子膜としては、従来公知の化合物の中から選択できるが、例えば、種々のフルオロアルキル基、またはパーフルオロポリエーテル基を有するシランカップリング剤を用いることができる。なお、フッ素を含有している単分子膜を形成させるための製品としては、例えば、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製)、オプツールDSX(ダイキン工業(株)製)などが挙げられる。
【0119】
(5−4)フィン43の表面積について
フィン43は、上述のように表面が撥水性塗膜で構成された凸部61と基板62を有しているが、当該表面全体は、フィン43の投影面積(凸部61が形成されていない平滑平面における表面積)に対するフィン43の表面全体の平均面積拡大率rw(全体)は、撥水性塗膜の平滑平面上での水の接触角θwの関数で表した場合に、rw(全体)>0.6/|cosθw|の条件を満たしている。このように、フィン43の表面に形成された凸部61によってフィン43の表面に凸部61が無い場合よりも表面積が拡大されることで、液滴を自発的にジャンプさせやすくすることが可能になる。なお、当該関数は、隣接する凸部61の間と液滴によって囲まれた領域に空気層が含まれている状態と、隣接する凸部61の間に液滴が濡れ広がった状態と、についてそれぞれ表面自由エネルギを計算し、前者の方が表面自由エネルギが低く安定状態となるように決定されている。
【0120】
なお、表面全体の平均面積拡大率rw(全体)は、フィン43の表面の任意の表面を観察視野10μm×10μmの範囲で観察した場合に平坦面の面積(投影面積)に対して表面積が拡大している割合について、観察視野を変えて10回観察した場合の平均値をいう。この表面全体の平均面積拡大率rw(全体)は、AFMの測定結果から表面形状の座標を特定することで把握することができる。
【0121】
なお、表面全体の平均面積拡大率rw(全体)は、凸部61同士の間の凹部において液滴の下方に空気層を形成することが容易であり液滴の自発的なジャンプをより生じやすくできる観点から、rw(全体)>1.0/|cosθw|であることが好ましい。
【0122】
また、フィン43は、表面のうち凸部61が形成されている箇所については、凸部61の投影面積に対する凸部61の表面積の割合である表面凸部の平均面積拡大率rw(凸部)は、撥水性塗膜の平滑平面上での水の接触角θwの関数で表した場合に、rw(凸部)>0.6/|cosθw|の条件を満たしている。このように、フィン43に凸部61を設けることによってフィン43の表面に凸部61が無い場合よりも表面積が拡大されることで、液滴を自発的にジャンプさせやすくすることが可能になる。
【0123】
なお、表面凸部の平均面積拡大率rw(凸部)は、凸部61同士の間の凹部において液滴の下方に空気層を形成することが容易であり液滴の自発的なジャンプをより生じやすくできる観点から、rw(凸部)>1.0/|cosθw|であることが好ましい。
【0124】
なお、表面凸部の平均面積拡大率rw(凸部)は、フィン43の表面の任意の表面を観察視野10μm×10μmの範囲で観察した場合に含まれる各凸部61の面積拡大率の平均値をいう。この表面凸部の平均面積拡大率rw(凸部)は、AFMの測定結果から表面形状の座標を特定することで把握することができる。
【0125】
(6)特徴
本実施形態の室外熱交換器23では、フィン43の表面構造において特定の微細な凹凸形状を採用しつつ、さらに表面に特定の撥水性を備える撥水性塗膜が設けられているため、凝縮水が生じた場合であっても、液滴が大きくなった際に、重力によらず余分な表面エネルギの放出によって自発的にフィン43から液滴をジャンプさせることが可能になっている。
【0126】
このため、室外熱交換器23が着霜環境下で用いられる場合であっても、凝縮水を飛散させることで着霜を抑制し、デフロスト運転が開始されるまでの暖房運転時間を長期化させることが可能になる。また、これによりデフロスト運転が頻繁に行われてしまい、空調対象空間の温度が低下してしまうという快適性の悪化を抑制することが可能になる。
【0127】
また、本実施形態の室外熱交換器23は、室外ファン25から水平方向に流れる空気流れを受けているが(水滴の落下を促進させるために鉛直方向に流れる空気流れを受けているわけではないが)、特定の微細構造および撥水性を備えた構造を採用したことで、水平方向の空気流れが供給されただけでも十分にフィン43表面から水滴を除去することが可能になる。特に、上述の表面構造および撥水性を採用したことで、特段、空気流れが生じていない箇所や空気流れが弱い箇所であっても、水滴を自らジャンプさせることが可能になるため、霜の付着を効果的に抑制することが可能になっている。
【0128】
なお、フィン43の表面で液滴が大きくなった際に、重力によらず余分な表面エネルギの放出によって自発的に液滴がジャンプできるメカニズムは、特に限定されないが、例えば、
図10に示すように考えられる。
【0129】
まず、(a)に示すように、冷媒の蒸発器として機能している室外熱交換器23のフィン43の表面において、核となる微細な液滴(径が数nm程度)が発生する。次に、(b)に示すように、発生した核が成長し、凝縮液滴の粒径が増大する。その後、(c)に示すように、液滴がさらに成長し、フィン43の凸部61同士の間の凹部を液で満たしつつ隣接する凸部61に付着している状態となる。さらに、(d)に示すように、複数の隣接する凸部61の間にまたがるように液滴が成長し、(e)に示すように、隣接する液滴同士が合体する。この液滴の合体の際に表面自由エネルギが変化することで、フィン43表面への液滴の拘束力を上回り、(f)に示すように、液滴が自発的にジャンプする。
【0130】
なお、液滴が自発的にジャンプするための運動エネルギE
kは、mを液滴の質量、Uをジャンプする液滴の移動速度とした場合の力学的関係をモデル化すると、次のように表現できる。
【0131】
E
k=0.5mU
2=△E
s−E
w−△E
h−△E
vis
ここで、△E
sは液滴が合体する際の表面自由エネルギの変化量を示しており、E
wは液滴が固体表面から受ける拘束エネルギを示しており、△E
hは位置エネルギの変化量を示しており(本実施形態のフィン43は鉛直方向に広がっているため実質的に0となる)、△E
visは液体が流動する際の粘性抵抗を示している。
【0132】
以上の関係式において液滴が小さい場合には、合体時に発生する表面自由エネルギが小さいため、自発的なジャンプには至らないことになる。なお、この段階では、液滴の大きさが小さいため、周囲温度が0℃以下となっても、凍結することなく過冷却状態で維持されやすい。また、液滴の自発的なジャンプを促すためには、フィン43における表面の拘束力が小さい表面構造が好ましいことになる。そして、液滴の合体時に生じる表面自由エネルギが表面への拘束力を上回った場合に自発的なジャンプが生じると考えられる。このように、液滴の大きさが大きくなることで液滴が過冷却状態を維持しにくくなり凍結が始まりやすい状況になっても、その場合には、液滴の合体時に生じる表面自由エネルギにより液滴がジャンプして、表面に残りにくく、着霜を抑制できると考えられる。
【0133】
このように、フィン43の表面で生じた液滴は、その温度が徐徐に低下し、凍結し始めるため、フィン43の表面において凍結し始める前にジャンプさせることが好ましい。したがって、凝縮液滴の成長速度も考慮して表面の構造を設計することが求められる。ここで、空調条件(室外熱交換器23が冷媒の蒸発器として用いられる場合)の室外熱交換器23のフィン43表面での液滴の成長速度を考慮しつつ、液滴の凍結が始まる前の成長した液滴径を自発的にジャンプさせることが可能な表面微細構造および撥水特性が求められる。以上の観点から本実施形態のフィン43の表面微細構造および撥水特性が定められている。
【0134】
(7)室外熱交換器23のフィン43の製造方法
室外熱交換器23のフィン43の製造方法は、特に限定されないが、例えば、
図11に示す方法を例に挙げることができる。
【0135】
まず(1)において示すように、表面が平滑な板状の部材である基板62を用意する。当該基板62は、アルミニウム合金等の金属やシリコンで構成される。
【0136】
次に(2)において示すように、基板62の表面に特定の膜厚の層を形成させる。当該層は、アルミニウム合金やシリコン等で構成される。
【0137】
そして、(3)において示すように、(2)で形成した層に対して特定間隔でマスキングを行い、プラズマを照射させる。マスキングの間隔により平均ピッチL、マスキングの形状により凸部61の平均径dをはじめとする凸部形状をそれぞれ制御する。なかでも、凸部61の形状を、凸部61の突出方向に垂直な面での切断面の面積が突出方向において少なくともひとつの極小値を含む形状とする場合には、プラズマの照射量と照射時間をそれぞれ調整することにより、凸部61を形成する柱の形状をそれぞれ制御することになる。
【0138】
次に、(4)において示すように、エッチングを行い、特定形状であって特定のパターンの突出形状を形成させる。ここで、エッチング時間により凸部高さを制御する。
【0139】
なお、凹凸形状の形成においては、プラズマエッチング処理に限られず、例えば、陽極酸化処理、ベーマイト処理、アルマイト処理等の公知の方法を用いることができる。
【0140】
最後に、(5)において示すように、凸部61および凸部61の形成されていない基板62表面に対して、撥水性塗膜を形成する。なお、撥水性塗膜を形成するための撥水性塗料は、凸部61や基板62と撥水性塗料の分子との結合力が、撥水性塗料の分子間の結合力よりも大きいものを選定し、撥水性塗料を塗布した後に表層以外の余分な塗料を洗い流すことで塗布前の凹凸形状を実質的に維持することができる。
【0141】
(8)変形例
上記実施形態は、以下の変形例に示すように適宜変形が可能である。
【0142】
(8−1)変形例A
上記実施形態では、室外熱交換器23のフィン43の表面において特定の微細な凹凸構造および撥水性塗膜を備えさせた場合を例に挙げて説明した。
【0143】
しかし、凝縮水が付着しうる他の箇所においても、特定の微細な凹凸構造および撥水性塗膜を備えさせるようにしてもよい。例えば、室外熱交換器23を構成する伝熱管41の表面や、U字管42の表面においても、上述した特定の微細な凹凸構造および撥水性塗膜を備えさせるようにしてもよい。この場合には、当該箇所における凝縮水の付着を抑制し、凝縮水が凍結することによる霜の付着を抑制することが可能になる。
【実施例】
【0144】
以下、実施例および比較例を示すが、本開示内容はこれらに限定されるものではない。
【0145】
(実施例1)
汎用品である綜研化学社製ナノインプリントモールドPIN70−250を用いて板状部材1を得た。
【0146】
得られた板状部材1の表面に対して、以下のようにして撥水性塗膜を付与した。
【0147】
まず、全体を十分に浸漬させることができる量のアセトンで満たしたガラス容器に板状部材1を入れ、超音波洗浄器にて15分間超音波を照射した。その後、UV/オゾン照射を10分間施した。
【0148】
上記板状部材1を、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン[CF
3(CF
2)
7CH
2CH
2Si(OCH
3)
3]をNovec7200(3M社製)で0.1wt%に希釈した溶液に浸漬した後、恒温乾燥機にて150℃で1時間乾燥させ、その後一昼夜風乾させた。乾燥後の板状部材を、Novec7200に5分間浸漬させることで表面処理に寄与しない余剰の表面処理剤を除去し、撥水性を示す板状部材1である実施例1を得た。
【0149】
(比較例1)
汎用品である綜研化学社製ナノインプリントモールドPIN70−3000を用いて板状部材2を得た。
【0150】
得られた板状部材2に対して撥水性塗膜を付与した点以外は、上記実施例1と同様にして撥水性を示す板状部材2である比較例1を得た。
【0151】
(接触角)
水の接触角(静的接触角)は、接触角計Drop Master 701を用いて、水の液滴体積2μlとし、サンプルに対して5点測定をすることにより行った。接触角がおおよそ150°以上になってくると条件によっては、その液体は自立して基材表面に存在することができなくなる。そのため、そのような場合はシリンジのニードルを支持体として接触角を測定し、その時の得られた値を接触角とした。
【0152】
(結果)
実施例1も比較例1も、撥水性塗膜の平坦面における水の接触角は、114°であった。
【0153】
実施例1では、平均ピッチLが220〜280nm、平均径d(平均直径)が115〜175nm、凸部の平均高さhが220〜280nm、d/Lが0.41〜0.80、表面全体の平均面積拡大率rw(全体)が2.17〜4.67であり、冷媒の蒸発器として機能する室外熱交換器に用いた場合に凝縮水滴のジャンプを視認することができた。
【0154】
また、比較例1では、平均ピッチLが2700〜3300nm、平均径d(平均直径)が1400〜2000nm、凸部の平均高さhが1200〜1800nm、d/Lが0.42〜0.74、表面全体の平均面積拡大率rw(全体)が1.55〜2.79であり、冷媒の蒸発器として機能する室外熱交換器に用いた場合であっても凝縮水滴のジャンプを視認することはできなかった。
【0155】
(実施例2〜7、比較例2)
凸部61の形状が異なる点以外は、上記実施例1、比較例1と同様にして、特定の凸部61の形状を形成させた板状部材1の表面に撥水性塗膜を付与し、実施例2〜7、比較例2を得た。なお、実施例4では他とは異なるピッチとなるようにマスキングを行った。実施例2〜4では、エッチング時間の長さを調節することで平均高さhを調節した。実施例2〜7における各凸部61の形状形成は、プラズマの照射量と照射時間をそれぞれ調整することにより形成した。また、各形状及び寸法は、AFMによる測定結果から凸部61の形状の座標を把握し、その断面プロファイルから特定した。
【0156】
なお、以下の表1において、カッコで記載しているものは、凸部の形状を意味している。ここで、最大直径とは、凸部の突出方向に対して垂直な面での断面における円の直径のうち、突出方向において最大であるものを意味しており、実施例5〜7では凸部の下端部分の円の直径を意味している(なお、実施例7では上端部分の円の直径と下端部分の円の直径とが等しい)。なお、最大直径についても、AFMにおける測定結果から把握される各凸部61の最大直径の平均値を意味している。
【0157】
また、最小直径とは、凸部の突出方向に対して垂直な面での断面における円の直径のうち、突出方向において最小であるものを意味しており、円錐台である実施例5、6では上端部分の円の直径を意味しており、くびれ形状のうちのキノコ型である実施例7では突出方向における中間位置よりも上方の部分(突出方向において上端から15%の部分)における円の直径を意味している。なお、最小直径についても、AFMにおける測定結果から把握される各凸部61の最小直径の平均値を意味している。
【0158】
転落角SA(Sliding Angle)は、表面に置いた水滴が滑り出す時の表面と水平のなす角を意味しており、水滴の落ちやすさを表す指標である。
【0159】
着霜量mfは、各実施例、比較例において共通の所定時間(ここでは120分間)、霜をつける条件で冷凍サイクルを行って試験をした後の着霜量を意味しており、試験前後の板状部材1の試料の重量の差を測定することで算出される値であり、単位はgである。
【0160】
着霜量比率(対無処理)は、比較例2の無処理の表面で発生した着霜量mfを100%とした場合の、実施例2〜7において評価を行ったそれぞれの着霜量mfの比率であり、着霜量比率の値が小さいほど液滴を離脱させることで着霜を抑制できたことを表している。
【0161】
なお、各値の大きさの単位は、nmである。
【0162】
【表1】
【0163】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。