(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6471826
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】電流センサ及びこれに用いるバスバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20190207BHJP
G01R 15/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
G01R15/20 Z
G01R15/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-198715(P2018-198715)
(22)【出願日】2018年10月22日
【審査請求日】2018年11月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】堀 竜麿
【審査官】
島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−170244(JP,A)
【文献】
特開2010−117165(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/133621(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/115238(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/075623(WO,A1)
【文献】
特開2003−329711(JP,A)
【文献】
特開2010−85228(JP,A)
【文献】
特開2015−132516(JP,A)
【文献】
特開2002−318251(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/187733(WO,A1)
【文献】
特表2000−502448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
G01R 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象電流が流れるバスバーと、
前記バスバーから発生する磁界を検出する磁気センサと、を備え、
前記バスバーは、前記測定対象電流の一部が流れる第1の検出配線部と、前記測定対象電流の別の一部が流れる第2の検出配線部と、前記測定対象電流の残りの部分が流れる分岐配線部とを有する金属板からなり、
前記磁気センサは、前記第1の検出配線部に流れる前記測定対象電流の前記一部及び前記第2の検出配線部に流れる前記測定対象電流の前記別の一部によって発生する磁界を検出し、
前記第1の検出配線部は、前記測定対象電流の前記一部が互いに逆方向に流れる第1及び第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分を繋ぐ第3の部分を有し、
前記第2の検出配線部は、前記測定対象電流の前記別の一部が互いに逆方向に流れる第4及び第5の部分と、前記第4の部分と前記第5の部分を繋ぐ第6の部分を有し、
前記バスバーを構成する金属板は、前記第1の部分と前記第4の部分が互いに向かい合い、前記第2の部分と前記第5の部分が互いに向かい合い、前記第3の部分と前記第6の部分が互いに向かい合っていることを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
前記バスバーは単一の金属板からなり、前記バスバーを構成する前記単一の金属板は、前記第1の部分と前記第4の部分が互いに向かい合い、前記第2の部分と前記第5の部分が互いに向かい合い、前記第3の部分と前記第6の部分が互いに向かい合うよう折り曲げられていることを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記バスバーは、前記第1の検出配線部の一端、前記第2の検出配線部の一端及び前記分岐配線部の一端に接続された入力配線部と、前記第1の検出配線部の他端、前記第2の検出配線部の他端及び前記分岐配線部の他端に接続された出力配線部とをさらに有し、
前記第1及び第2の検出配線部は、前記入力配線部及び前記出力配線部の主面に対して垂直に折り曲げられていることを特徴とする請求項2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記第1及び第2の検出配線部は、前記分岐配線部よりも電流経路が長いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記第1の検出配線部、前記第2の検出配線部及び前記分岐配線部は、前記測定対象電流の流れる方向と垂直な断面の形状が互いに等しいことを特徴とする請求項4に記載の電流センサ。
【請求項6】
電流センサに用いるバスバーの製造方法であって、金属板を加工することにより、入力配線部と、出力配線部と、一端が前記入力配線部に接続され、他端が前記出力配線部に接続された第1及び第2の検出配線部と、一端が前記入力配線部に接続され、他端が前記出力配線部に接続された分岐配線部とを有する前駆体を作製し、前記第1の検出配線部と前記第2の検出配線部が互いに向かい合うよう、前記前駆体を折り曲げ加工することを特徴とするバスバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電流センサ及びこれに用いるバスバーの製造方法に関し、特に、大電流の測定に適した電流センサ及びこれに用いるバスバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電流センサは、測定対象電流によって発生する磁界を磁気センサによって検出するタイプが一般的である。例えば、特許文献1には、測定対象電流が流れるバスバーにサブバスバーを並列接続し、サブバスバーに流れる電流によって発生する磁界を磁気センサによって検出するタイプの電流センサが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載された電流センサは、バスバーにサブバスバーを並列接続し、サブバスバーに磁気センサを割り当てていることから、バスバーに流れる測定対象電流が大電流であっても、サブバスバーに流れる電流の電流量が抑えられることから、大電流の測定に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−212307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された電流センサは、バスバーとサブバスバーが別部品であり、リベットを用いて両者を固定する構成を有していることから、部品点数が増大するだけでなく、製造ばらつきに起因する測定誤差も大きいという問題があった。
【0006】
したがって、本発明は、バスバーに流れる測定対象電流を分流させることによって大電流の測定を可能とした電流センサにおいて、部品点数を削減するとともに、製造ばらつきに起因する測定誤差を低減することを目的とする。また、本発明は、このような電流センサに用いるバスバーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による電流センサは、測定対象電流が流れるバスバーと、バスバーから発生する磁界を検出する磁気センサとを備え、バスバーは、測定対象電流の一部が流れる第1の検出配線部と、測定対象電流の別の一部が流れる第2の検出配線部と、測定対象電流の残りの部分が流れる分岐配線部とを有する金属板からなり、磁気センサは、第1の検出配線部に流れる測定対象電流の一部及び第2の検出配線部に流れる測定対象電流の別の一部によって発生する磁界を検出し、第1の検出配線部は、測定対象電流の一部が互いに逆方向に流れる第1及び第2の部分と、第1の部分と第2の部分を繋ぐ第3の部分を有し、第2の検出配線部は、測定対象電流の別の一部が互いに逆方向に流れる第4及び第5の部分と、第4の部分と第5の部分を繋ぐ第6の部分を有し、バスバーを構成する金属板は、第1の部分と第4の部分が互いに向かい合い、第2の部分と第5の部分が互いに向かい合い、第3の部分と第6の部分が互いに向かい合っていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1の検出配線部が第1〜第3の部分からなる迂回構造を有し、第2の検出配線部が第4〜第6の部分からなる迂回構造を有していることから、第1及び第2の検出配線部に流れる電流の電流量が低減される。これにより、大電流の測定が可能となる。しかも、バスバーが金属板からなることから、部品点数が削減されるとともに、製造ばらつきに起因する測定誤差を低減することが可能となる。
【0009】
本発明において、バスバーは単一の金属板からなり、バスバーを構成する単一の金属板は、第1の部分と第4の部分が互いに向かい合い、第2の部分と第5の部分が互いに向かい合い、第3の部分と第6の部分が互いに向かい合うよう折り曲げられていても構わない。これによれば、バスバーは単一の金属板からなることから、部品点数がより削減されるとともに、製造ばらつきに起因する測定誤差をより低減することが可能となる。
【0010】
本発明において、バスバーは、第1の検出配線部の一端、第2の検出配線部の一端及び分岐配線部の一端に接続された入力配線部と、第1の検出配線部の他端、第2の検出配線部の他端及び分岐配線部の他端に接続された出力配線部とをさらに有し、第1及び第2の検出配線部は、入力配線部及び出力配線部の主面に対して垂直に折り曲げられていても構わない。これによれば、単一の金属板を2箇所で折り曲げ加工することにより、バスバーを簡単に作製することが可能となる。
【0011】
本実施形態において、第1及び第2の検出配線部は、分岐配線部よりも電流経路が長くても構わない。これによれば、第1及び第2の検出配線部に流れる電流の電流量をより低減することが可能となる。この場合、第1の検出配線部、第2の検出配線部及び分岐配線部は、測定対象電流の流れる方向と垂直な断面の形状が互いに等しくても構わない。これによれば、電流経路の長さの差に起因する発熱量の差が熱容量の差によって相殺されることから、バスバーの温度差に起因する測定誤差を低減することが可能となる。
【0012】
本発明によるバスバーの製造方法は、電流センサに用いるバスバーの製造方法であって、金属板を加工することにより、入力配線部と、出力配線部と、一端が入力配線部に接続され、他端が出力配線部に接続された第1及び第2の検出配線部と、一端が入力配線部に接続され、他端が出力配線部に接続された分岐配線部とを有する前駆体を作製し、第1の検出配線部と第2の検出配線部が互いに向かい合うよう、前駆体を折り曲げ加工することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、一枚の金属板から前駆体を切り出し、これを折り曲げ加工することによってバスバーを作製していることから、部品点数が削減されるとともに、製造ばらつきも低減される。これにより、製造ばらつきに起因する測定誤差を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によれば、バスバーに流れる測定対象電流を分流させることによって大電流の測定を可能とした電流センサにおいて、部品点数を削減するとともに、製造ばらつきに起因する測定誤差を低減することが可能となる。また、本発明によれば、このような電流センサに用いるバスバーの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態による電流センサの外観を示す略斜視図である。
【
図2】
図2は、バスバー10の形状を説明するための略斜視図である。
【
図3】
図3は、バスバー10を折り曲げ加工する前の前駆体10Aの外観を示す略斜視図である。
【
図4】
図4は、バスバー10をy方向から見た略側面図である。
【
図5】
図5は、領域Aに印加される磁束の方向を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、磁気コア41を有する磁気センサ40を領域Aに配置した例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の好ましい実施形態による電流センサの外観を示す略斜視図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態による電流センサは、測定対象電流Iが流れるバスバー10と、バスバー10に取り付けられたケース20と、ケース20に収容された磁気センサ40とを有している。バスバー10は、銅(Cu)などの良導体からなる金属板であり、厚みが一定の金属板を折り曲げ加工することによって作製される。磁気センサ40の種類については特に限定されないが、フラックスゲートセンサ、MI(磁気インピーダンス)センサ、ホールセンサ、AMRセンサ、GMRセンサ、TMRセンサなどを用いることができる。ケース20は、それ自体が磁気コアであっても構わない。
【0019】
図2は、バスバー10の形状を説明するための略斜視図である。
【0020】
図2に示すように、バスバー10は単一の金属板からなり、xy面を主面とする入力配線部13及び出力配線部14と、入力配線部13と出力配線部14の間に設けられた検出配線部11A,11B及び分岐配線部12A,12Bとを有している。検出配線部11A,11B及び分岐配線部12A,12Bは並列に接続されており、このため、入力配線部13から出力配線部14に測定対象電流Iが流れると、測定対象電流Iの一部である電流Id
Aが検出配線部11Aに流れ、測定対象電流Iの別の一部である電流Id
Bが検出配線部11Bに流れ、測定対象電流Iの残りの部分である電流Ib
A,Ib
Bがそれぞれ分岐配線部12A,12Bに流れる。したがって、I=Id
A+Id
B+Ib
A+Ib
Bである。
【0021】
検出配線部11Aは、z方向に延在する第1及び第2の部分11
1,11
2と、x方向に延在する第3の部分11
3からなり、電流Id
Aは、第1の部分11
1、第3の部分11
3及び第2の部分11
2の順に流れる。したがって、第1の部分11
1に流れる電流Id
Aの向きと、第2の部分11
2に流れる電流Id
Aの向きは互いに逆である。同様に、検出配線部11Bは、z方向に延在する第4及び第5の部分11
4,11
5と、x方向に延在する第6の部分11
6からなり、電流Id
Bは、第4の部分11
4、第6の部分11
6及び第5の部分11
5の順に流れる。したがって、第4の部分11
4に流れる電流Id
Bの向きと、第5の部分11
5に流れる電流Id
Bの向きは互いに逆である。そして、検出配線部11A,11Bは、第1の部分11
1と第4の部分11
4が互いに向かい合い、第2の部分11
2と第5の部分11
5が互いに向かい合い、第3の部分11
3と第6の部分11
6が互いに向かい合うよう、xy面に対して垂直に折り曲げられている。
【0022】
一方、2つの分岐配線部12A,12Bは、いずれもx方向に延在する直線的な形状を有している。したがって、電流経路の長さとしては、分岐配線部12A,12Bよりも検出配線部11A,11Bの方が長い。これにより、検出配線部11A,11Bに流れる電流Id
A+Id
Bがより低減される。本実施形態においては、2つの分岐配線部12A,12Bを並列に設けているが、分岐配線部の本数については2本に限定されず、3以上の分岐配線部を並列に設けても構わない。
【0023】
特に限定されるものではないが、本実施形態においては、検出配線部11A,11B及び分岐配線部12A,12Bの厚み及び導体幅が一定である。このため、検出配線部11A,11Bと分岐配線部12A,12Bの電流方向と垂直な断面形状は互いに等しい。
【0024】
図3は、バスバー10を折り曲げ加工する前の前駆体10Aの外観を示す略斜視図である。
【0025】
図3に示すように、バスバー10を折り曲げ加工する前の前駆体10Aは、z方向における厚さが一定の金属板から切り出されたものである。例えば、銅(Cu)などからなる厚さが一定の金属板を用意し、この金属板に対してパンチング加工を施すことにより、検出配線部11A,11B、分岐配線部12A,12B、入力配線部13、出力配線部14、共通配線部15,16、接続部17,18からなる前駆体10Aを一工程で作製することができる。金属板に対するパンチング加工においては、平面位置によって金属板の厚みや加工幅が異なっていると、平面位置によってパンチング条件に差が生じることから、設計通りの形状に加工することが困難である。これに対し、
図3に示す前駆体10Aは、使用する金属板の厚みが一定であり、且つ、検出配線部11A,11B及び分岐配線部12A,12Bの加工幅が一定であることから、高い加工精度を確保することが可能となる。これにより、加工精度のばらつきに起因する測定誤差を低減することが可能となる。
【0026】
このような前駆体10Aを作製した後、
図3に示す折り曲げ位置B1で検出配線部11Aを約90°折り曲げ、折り曲げ位置B2で検出配線部11Bを約90°折り曲げることにより、
図2に示すバスバー10が完成する。折り曲げ位置B1,B2はいずれも共通配線部15,16に位置し、折り曲げ位置B1については接続部17,18から見て一方側、折り曲げ位置B2については接続部17,18から見て他方側に位置する。特に限定されるものではないが、加工精度を高めるためには、共通配線部15,16、接続部17,18の導体幅についても、検出配線部11A,11B及び分岐配線部12A,12Bと同じとすることが好ましい。
【0027】
図4は、バスバー10をy方向から見た略側面図である。
【0028】
図4に示すように、バスバー10をy方向から見ると、検出配線部11Aと検出配線部11Bが完全に重なり、且つ、分岐配線部12Aと分岐配線部12Bが完全に重なる。そして、
図1に示した磁気センサ40は、検出配線部11A,11Bと分岐配線部12A,12Bに囲まれた領域Aに配置される。
【0029】
領域Aに磁気センサ40を配置すると、模式図である
図5に示すように、検出配線部11A,11Bに流れる電流Id
A,Id
Bによって領域Aには同方向の磁束が印加される。
図5に示す例では、検出配線部11Aの第1の部分11
1及び検出配線部11Bの第4の部分11
4に流れる電流Id
A,Id
Bによって反時計回りの磁束φ1が発生し、検出配線部11Aの第2の部分11
2及び検出配線部11Bの第5の部分11
5に流れる電流Id
A,Id
Bによって時計回りの磁束φ2が発生するため、領域Aに印加される磁束の向きはいずれもy方向となる。したがって、領域Aに磁気センサ40を配置し、磁気センサ40によってy方向における磁界の強度を検出すれば、検出配線部11A,11Bに流れる電流Id
A,Id
Bの合計値を検出することが可能となる。そして、検出配線部11A,11Bに流れる電流Id
A,Id
Bと、分岐配線部12A,12Bに流れる電流Ib
A,Ib
Bの分流比は既知であることから、電流Id
A,Id
Bの検出値に基づいて測定対象電流Iを算出することが可能となる。
【0030】
図6に示すように、磁気センサ40は磁気コア41を備えていても構わない。
図6に示す例では、z方向に開口した環状の磁気コア41を用い、磁気コア41に囲まれた領域に検出配線部11A,11B、可飽和磁性体M及びその周囲に巻回された検出コイルCを配置している。つまり、
図1に示すケース20自体が磁気コア41である場合にこのような構成を得ることができる。このような磁気コア41を用いれば、外乱磁界が磁気コア41をバイパスすることから、外乱磁界の影響を低減することが可能となる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態においては、測定対象電流Iが流れるバスバー10が単一の金属板からなり、これを折り曲げ加工することによって作製していることから、部品点数を削減することができるとともに、製造ばらつきがほとんど生じない。このため、製造ばらつきに起因する測定誤差を低減することが可能となる。また、検出配線部11A,11Bは、分岐配線部12A,12Bよりも電流経路が長いことから、検出配線部11A,11Bに流れる電流Id
A,Id
Bを低減することが可能となる。
【0032】
ここで、本実施形態によるバスバー10は、大電流が流れることを想定して、2つの検出配線部11A,11Bと2つの分岐配線部12A,12Bを用いることによって抵抗値を低減している。本実施形態と同じ抵抗値は、2倍の厚みを有する金属板を用いて1つの検出配線部及び1つの分岐配線部からなるバスバーを切り出すことによっても得られるが、この場合、金属板の厚みが厚くなることからパンチング加工時における加工精度が低下する。これに比べ、本実施形態においては金属板の厚みが半分となることから、パンチング加工時における加工精度を高めることが可能となる。しかも、金属板の厚みが薄いことから、高周波電流が流れた場合の表皮効果に起因する測定誤差も抑制される。また、本実施形態と抵抗値は、同じ厚みを有する金属板を用いて1つの検出配線部及び1つの分岐配線部からなるバスバーを2枚切り出し、これらを重ねることによっても得られるが、この場合、部品点数が増大するとともに、接触抵抗が発生するため、製品の信頼性が低下する。
【0033】
これに対し、本実施形態においては、金属板から前駆体10Aを切り出し、これを折り曲げ加工することによってバスバー10を作製していることから、抵抗値の低いバスバー10を高い加工精度で作製することが可能となる。これにより、加工精度のばらつきに起因する測定誤差が低減されるとともに、部品点数も削減される。さらに、検出配線部11A,11Bと分岐配線部12A,12Bの断面形状を互いに一致させれば、加工精度がよりいっそう向上する。
【0034】
しかも、検出配線部11A,11Bと分岐配線部12A,12Bの断面形状が一定である場合、分岐配線部12A,12Bのそれぞれの長さをLとし、検出配線部11A,11Bのそれぞれ長さをkLとすると、検出配線部11A、検出配線部11B、分岐配線部12A及び分岐配線部12Bの抵抗値の比は、k:k:1:1となり、したがって、検出配線部11Aに流れる電流Id
A、検出配線部11Bに流れる電流Id
B、分岐配線部12Aに流れる電流Ib
A、分岐配線部12Aに流れる電流Ib
Aの比は、1:1:k:kとなる。そして、検出配線部11A,11B及び分岐配線部12A,12Bは互いに同じ断面積を有していることから、検出配線部11A、検出配線部11B、分岐配線部12A及び分岐配線部12Bにおける発熱量の比も、1:1:k:kとなる。
【0035】
ここで、検出配線部11A,11Bは、分岐配線部12A,12Bに対してk倍の長さを有しており、且つ、検出配線部11A,11B及び分岐配線部12A,12Bは互いに同じ断面積を有していることから、検出配線部11A、検出配線部11B、分岐配線部12A及び分岐配線部12Bの体積、つまり熱容量の比は、k:k:1:1となる。このことは、分岐配線部12A,12Bの方が検出配線部11A,11Bよりもk倍速く熱を放出することを意味する。つまり、分岐配線部12A,12Bは、それぞれ検出配線部11A,11Bよりもk倍の熱を発生する代わりに、k倍速く熱を放出することから、検出配線部11A,11Bと分岐配線部12A,12Bの間で温度差が生じにくい。その結果、温度差に起因する抵抗値の変化が抑えられることから、測定対象電流Iを設計通りに分流させることが可能となり、温度差に起因する測定誤差を低減することが可能となる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0037】
例えば、上記実施形態では、単一の金属板から前駆体10Aを切り出し、これを折り曲げ加工することによってバスバー10を作製しているが、バスバー10の一部については、同一の又は別の金属板から切り出された別部材とし、これを前駆体10Aに接合することによってバスバー10を作製しても構わない。単一の金属板からバスバー10の一部を構成する別部材を作成する場合、一度に打ち抜きができ、厚みも同じ厚みになるので、好適である。
【符号の説明】
【0038】
10 バスバー
10A 前駆体
11A,11B 検出配線部
11
1 第1の部分
11
2 第2の部分
11
3 第3の部分
11
4 第4の部分
11
5 第5の部分
11
6 第6の部分
12A,12B 分岐配線部
13 入力配線部
14 出力配線部
15,16 共通配線部
17,18 接続部
20 ケース
40 磁気センサ
41 磁気コア
A 領域
B1,B2 折り曲げ位置
C 検出コイル
I 測定対象電流
M 可飽和磁性体
φ1,φ2 磁束
【要約】
【課題】バスバーに流れる測定対象電流を分流させることによって大電流の測定を可能とした電流センサにおいて、部品点数を削減するとともに、製造ばらつきに起因する測定誤差を低減する。
【解決手段】本発明による電流センサは、測定対象電流Iが流れるバスバー10と、バスバー10から発生する磁界を検出する磁気センサとを備える。バスバー10は、電流Id
A,Id
Bが流れる検出配線部11A,11Bと、電流Ib
A,Ib
Bが流れる分岐配線部12A,12Bとを有する金属板からなる。バスバー10を構成する金属板は、検出配線部11Aと検出配線部11Bが互いに向かい合っている。本発明によれば、バスバー10が金属板からなることから、部品点数が削減されるとともに、製造ばらつきに起因する測定誤差を低減することが可能となる。
【選択図】
図2