(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンの排気ポートに連通した第1排気通路、当該第1排気通路に連通した第1マフラー、当該第1マフラーに連通した第2排気通路、当該第2排気通路に連通した第2マフラー、及び当該第2マフラーに連通した第3排気通路を備えるエンジンの排気装置であって、
排気ポートから第1排気通路及び第1マフラーの第1境界までの排気路長、排気ポートから第2排気通路及び第2マフラーの第2境界までの排気路長、及び排気ポートから第3排気通路及び外部の第3境界までの排気路長は、それぞれ異なる所定の第1エンジン回転数、第2エンジン回転数又は第3エンジン回転数で運転しているエンジンから排出される排気圧力波が第1境界、第2境界及び第3境界のそれぞれで反射することにより生じる負圧波がバルブオーバーラップ期間中に排気ポートに到達する長さであり、
前記第2マフラーの容積は、前記第1マフラーの容積よりも大きく、
前記第2排気通路の断面積は、前記第1排気通路の断面積よりも小さく、
前記第3排気通路の断面積は、前記第1排気通路の断面積及び前記第2排気通路の断面積よりも大きい
ことを特徴とするエンジンの排気装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0016】
図1は本実施形態に係るエンジンの排気装置の概略構成図である。エンジン1は、特に図示しないが、例えば、直列3気筒エンジンであり、3つの気筒を有している。各気筒には、それぞれ点火プラグが配されると共に、吸気ポート及び排気ポートが設けられている。そしてエンジン1は、吸気ポートに接続される吸気マニホールドと、排気ポートに接続される排気マニホールドとを備えている。
【0017】
本実施形態に係る排気装置10は、第1排気通路11、第2排気通路12及び第3排気通路13と、第1マフラー21及び第2マフラー22を備えている。
第1排気通路11は、エンジンの排気マニホールドを介して排気ポートに連通し、排気ポートからの排気を第1マフラー21へ導く配管である。第2排気通路12は、第1マフラー21に接続され、第1マフラー21を通過した排気を第2マフラー22へ導く配管である。第3排気通路13は、第2マフラー22に接続され、第2マフラー22を通過した排気を外部へ導く配管である。
【0018】
また、第1排気通路11の断面積をS1、第2排気通路12の断面積をS2、第3排気通路13の断面積をS3とする。断面積S2は断面積S1よりも小さく、断面積S3は断面積S1及び断面積S2よりも大きい。すなわち、断面積S1、S2、S3は、相対的に中、小、大という大きさになっている。本実施形態では、第1排気通路11、第2排気通路12及び第3排気通路13は、何れも断面形状を円形状としたので、それらの内径φ1、φ2及びφ3も相対的に中、小、大という大きさとなっている。
【0019】
第1マフラー21及び第2マフラー22は、流入した排気を減音させる配管であり、第2マフラー22の容積は、第1マフラーの容積よりも大きくなるように構成されている。このような容積とすることで、マフラーによる減音効果を高めることができる。
第1排気通路11と第1マフラー21との境界を第1境界Aとし、第2排気通路12と第2マフラー22との境界を第2境界Bとし、第3排気通路13と外部(第3排気通路13の排気が外部に放出される開口部)との境界を第3境界Cとする。
【0020】
排気ポートから第1境界Aまでの第1排気路Lとは、排気ポート、排気マニホールド及び第1排気通路11からなる排気の通路をいう。また、排気ポートから第2境界Bまでの第2排気路Mとは、第1排気路L、第1マフラー21、及び第2排気通路12からなる排気の通路をいう。さらに、排気ポートから第3境界Cまでの第3排気路Nとは、第2排気路M、第2マフラー22及び第3排気通路13からなる排気の通路をいう。また、第1排気路L、第2排気路M、及び第3排気路Nの長さを排気路長と称する。
第1排気路L、第2排気路M、及び第3排気路Nの排気路長の始点となる排気ポートの位置は、エンジンの排気ポートにおける排気弁の着座位置(排気ポートが気筒を臨む開口)である。
【0021】
ここで、エンジン1の運転に伴い発生した排気圧力波は、排気ポートから排気装置10の各部に伝播する。伝播した排気圧力波は、第1境界A、第2境界B及び第3境界Cのそれぞれで、位相が反転した負圧波として排気ポート側へ反射される。以後、この負圧波は排気ポートに到達して同位相のまま反射し、さらに、第1境界A、第2境界B及び第3境界Cのそれぞれで位相が反転して反射することを繰り返す。
【0022】
第1排気路L、第2排気路M、第3排気路Nの排気路長は、エンジンの吸気弁及び排気弁がバルブオーバーラップしている期間中に、各第1境界A、第2境界B及び第3境界Cのそれぞれで反射した負圧波が排気ポートに到達するようになっている。
【0023】
バルブオーバーラップ期間中に負圧波が排気ポートに到達すると、気筒内の残留ガスが排気ポート側へ吸引されるため、気筒内の体積効率が向上し、トルクも増大する。この負圧波による体積効率の向上を、エンジンの低回転域〜中回転域において行うことで、その低回転域〜中回転域におけるエンジンの出力トルクを増大させることができる。
【0024】
本実施形態では、極低回転(1300rpm以下)、低回転(1300〜2000rpm)、中回転(2000〜3000rpm)のそれぞれについてエンジンの出力トルクの増大を図る。中回転に含まれる特定の回転数を第1エンジン回転数とし、低回転に含まれる特定の回転数を第2エンジン回転数とし、極低回転に含まれる特定の回転数を第3エンジン回転数とする。
【0025】
第1排気路Lの排気路長は、第1エンジン回転数において排気ポートから伝播された排気圧力波が第1境界Aで反射した負圧波が第1エンジン回転数におけるバルブオーバーラップ期間中に排気ポートに到達する長さに設定されている。換言すれば、第1排気路Lの排気路長は、第1エンジン回転数におけるエンジンの排気開始時を起点として、バルブオーバーラップしたときまでの時間と、排気圧力波が第1境界Aで反射した負圧波が排気ポートに到達するまでの時間とが一致するように設定されている。
【0026】
第2排気路Mの排気路長は、第2エンジン回転数において排気ポートから伝播された排気圧力波が第2境界Bで反射した負圧波が第2エンジン回転数におけるバルブオーバーラップ期間中に排気ポートに到達する長さに設定されている。換言すれば、第2排気路Mの排気路長は、第2エンジン回転数におけるエンジンの排気開始時を起点として、バルブオーバーラップしたときまでの時間と、排気圧力波が第2境界Bで反射した負圧波が排気ポートに到達するまでの時間とが一致するように設定されている。
【0027】
第3排気路Nの排気路長は、第3エンジン回転数において排気ポートから伝播された排気圧力波が第3境界Cで反射した負圧波が第3エンジン回転数におけるバルブオーバーラップ期間中に排気ポートに到達する長さに設定されている。換言すれば、第3排気路Nの排気路長は、第3エンジン回転数におけるエンジンの排気開始時を起点として、バルブオーバーラップしたときまでの時間と、排気圧力波が第3境界Cで反射した負圧波が排気ポートに到達するまでの時間とが一致するように設定されている。
【0028】
ここで、現実の車両構造を無視すれば、負圧波による体積効率の向上効果が最も高くなるような排気路長や第1マフラー21及び第2マフラー22の配置及び容積を採用できる。しかしながら、第1排気路L、第2排気路M、第3排気路Nの各排気路長、第1マフラー21及び第2マフラー22の配置及び容積は、現実の車両構造に合わせて調整されなければならない。現実の車両構造に合わせるとは、例えば、車両の構造や排気装置以外の装置との位置関係により、排気路長の長さを長くせざるを得ない場合や、減音効果を高めるために第1マフラー21及び第2マフラー22の配置や容積を変更する場合などである。
【0029】
現実の車両構造に合わせて排気路長等を調整した結果、排気路長、各マフラーの配置及び容積だけに着目すると、負圧波による体積効率が最も望める構成と比べて、体積効率が低下してしまう構成となっている。
【0030】
しかしながら、本実施形態の排気装置10は、第1排気通路11、第2排気通路12、及び第3排気通路13の内径φ1〜φ3を相対的に中、小、大としている。これにより、第1排気路L、第2排気路M、第3排気路Nの各排気路長は、現実の車両構造に合わせた長さでありながら、上述したようにバルブオーバーラップ期間中に負圧波が排気ポートに到達するような長さとなり、体積効率を向上することができる。
【0031】
以下、排気路長、及び内径φ1〜φ3について詳細に説明する。
【0032】
図2は、第1マフラー21の設置箇所と平均体積効率の関係、及びエンジンの回転数と体積効率との関係を示す図であり、
図3は、第2マフラー22の設置箇所と平均体積効率の関係、及びエンジンの回転数と体積効率との関係を示す図である。
図2(a)の横軸は、排気ポートから第1マフラー21の入口までの距離、すなわち第1排気路Lの排気路長を表し、縦軸は、平均体積効率を表している。
【0033】
第1排気通路11、第2排気通路12及び第3排気通路13の内径φ1、φ2、φ3は何れも同じ大きさであり、第1マフラー21及び第2マフラー22の容量がそれぞれV
0,W
0であるという条件の下、第1排気路Lを構成する第1排気通路11の長さを変更することで第1マフラー21の設置箇所を変化させ、その設置箇所ごとに平均体積効率を求め、設置箇所と平均体積効率との関係を表したグラフが示されている。なお、平均体積効率は、
図2(b)に示すエンジンの回転数が1000〜4000rpmにおける体積効率の平均をとったものである。
【0034】
例えば、第1排気路Lの排気路長がL
0(mm)である場合、平均体積効率はピークとなる約86%となっている。一方、第1排気路Lの排気路長がL
ref(mm)である場合、平均体積効率は約82%である。
【0035】
図2(b)の横軸は、エンジンの回転数を表し、縦軸は体積効率を表している。実線G1は、第1排気路Lの排気路長をL
0で固定し、回転数を変化させ、回転数ごとの体積効率を求め、その回転数と体積効率との関係を表すグラフである。実線G2は、第1排気路Lの排気路長をL
refで固定し、回転数を変化させ、回転数ごとの体積効率を求め、その回転数と体積効率との関係を表すグラフである。
【0036】
実線G1で示すように、第1排気路Lの排気路長をL
0で固定し、回転数を変化させた場合、低中回転域において比較的高い体積効率となっている。ここでは、体積効率が比較的高い約90%程度となる2500rpmを第1エンジン回転数とした。
【0037】
したがって、第1排気通路11、第2排気通路12及び第3排気通路13の内径φ1、φ2、φ3を何れも同じ大きさという条件の下では、第1排気路Lの排気路長をL
0とすることで、第1エンジン回転数である2500rpm付近において、負圧波による体積効率の向上をより高くすることができる。
【0038】
参考までに、第1排気路Lの排気路長をL
refとした場合、実線G2に示すように、第1エンジン回転数である2500回転付近においては、体積効率は約65%程度となっている。すなわち、トルク向上を図りたい回転数の一つである第1エンジン回転数(2500回転)においては、排気路長をL
0とすることで、実線G1に示すように、より高い体積効率を得られることが分かる。
【0039】
一方、第2排気路Mの排気路長は次のように決定する。
図3(a)の横軸は、排気ポートから第2マフラー22の入口までの距離、すなわち第2排気路Mの排気路長を表し、縦軸は、平均体積効率を表している。
【0040】
第1排気通路11、第2排気通路12及び第3排気通路13の内径φ1、φ2、φ3は何れも同じ大きさという条件の下、第2排気路Mを構成する第2排気通路12の長さを変更することで第2マフラー22の設置箇所を変化させ、その設置箇所ごとに平均体積効率を求め、設置箇所と平均体積効率との関係を表したグラフが示されている。なお、平均体積効率は、
図3(b)に示すエンジンの回転数が1000〜4000rpmにおける体積効率の平均をとったものである。
【0041】
例えば、第2排気路Mの排気路長がM
ref(mm)である場合、平均体積効率はピークとなる約84%となっている。一方、第2排気路Mの排気路長がM
0(mm)である場合、平均体積効率は次に大きなピークとなる約79%となっている。
【0042】
図3(b)の横軸は、エンジンの回転数を表し、縦軸は体積効率を表している。実線G3は、第2排気路Mの排気路長をM
0で固定し、回転数を変化させ、回転数ごとの体積効率を求め、その回転数と体積効率との関係を表すグラフである。実線G4は、第2排気路Mの排気路長をM
refで固定し、回転数を変化させ、回転数ごとの体積効率を求め、その回転数と体積効率との関係を表すグラフである。
【0043】
実線G3で示すように、第2排気路Mの排気路長をM
0で固定し、回転数を変化させた場合、低中回転域において比較的高い体積効率となっている。ここでは、体積効率が比較的高い約95%程度となる1500rpmを第2エンジン回転数とした。
【0044】
したがって、第1排気通路11、第2排気通路12及び第3排気通路13の内径φ1、φ2、φ3を何れも同じ大きさという条件の下では、第2排気路Mの排気路長をM
0とすることで、第2エンジン回転数である1500rpm付近において、負圧波による体積効率の向上をより高くすることができる。
【0045】
参考までに、第2排気路Mの排気路長をM
refとした場合、実線G4に示すように、第2エンジン回転数である1500回転付近においては、体積効率は約70%程度となっている。すなわち、トルク向上を図りたい回転数の一つである第2エンジン回転数(1500回転)においては、排気路長をM
0とすることで、実線G3に示すように、より高い体積効率を得られることが分かる。
【0046】
なお、
図3(a)に示すように、排気路長がM
refである場合のほうが、M
0に比べて平均体積効率が高い。しかしながら、排気路長をM
refとすると、第2マフラー22が第1マフラー21よりも排気ポートに近い配置となってしまう(
図2(a)参照)。減音効果を得るために、容量の大きな第2マフラー22は、容量の小さな第1マフラー21よりも下流側に配置しなければならないという制約上、第2排気路Mの排気路長をM
refとすることはできない。
【0047】
そして、特に図示しないが、第3排気路Nの排気路長についても、第1排気路L及び第2排気路Mと同様に決定する。第3エンジン回転数(例えば1200rpm)において体積効率がピークとなるような第3排気路Nの排気路長をN
0とする。
【0048】
上述したように、第1エンジン回転数においては、第1境界Aで反射した負圧波により体積効率が約90%となり、第2エンジン回転数においては、第2境界Bで反射した負圧波により体積効率が約95%となり、第3エンジン回転数においては、第3境界Cで反射した負圧波により高い体積効率となるように、第1排気路L、第2排気路M及び第3排気路Nの排気路長が決定される。
【0049】
これらの排気路長は、現実の車両構造を無視した場合に採用できるものであり、実際には、現実の車両構造に対応して排気路長を調整したり、第1マフラー21及び第2マフラー22の配置及び容量を調整しなければならない。
【0050】
例えば、
図2(a)及び
図3(a)に示すように、第1排気路Lの排気路長をL
0よりも長いL
1とし、第2排気路Mの排気路長をM
0よりも長いM
1とし、特に図示しないが第3排気路Nの排気路長をN
0よりも長いN
1としなければならない場合がある。この場合、平均体積効率としても低下するし、第1エンジン回転数、第2エンジン回転数及び第3エンジン回転数における体積効率も低下してしまう。
【0051】
しかしながら、第1排気通路11、第2排気通路12及び第3排気通路13の内径φ1〜φ3を相対的に中、小、大とすることで、体積効率を向上させることができる。
【0052】
図4は、第2排気通路及び第3排気通路の内径と平均体積効率との関係を表す図である。
図4(a)及び(b)の縦軸は平均体積効率を表し、
図4(a)の横軸は第2排気通路の内径(mm)を表し、
図4(b)の横軸は第3排気通路の内径を表している。
【0053】
先に、第1排気通路11、第2排気通路12及び第3排気通路13の内径φ1、φ2、φ3は何れも同じ大きさという条件で排気路長や平均体積効率等を計算したことを述べた。このときの内径を例えばD
1(約31.6mm)とする。
【0054】
図4(a)には、第1排気路L及び第2排気路Mの排気路長を、現実の車両構造に合わせたために調整したL
1及びM
1とし、第1排気通路11の内径φ1をD
1とした条件において、第2排気通路12の内径φ2を変化させ、その内径φ2ごとに平均体積効率を計算したグラフが示されている。
このグラフによれば、D
1よりも小さなD
2(約29.0mm)で平均体積効率がピークとなる上方に凸となる特性があることが分かる。
【0055】
図4(b)には、第1排気路L、第2排気路M及び第3排気路Nの排気路長を、現実の車両構造に合わせたために調整したL
1、M
1及びN
1とし、第1排気通路11の内径φ1をD
1、第2排気通路12の内径φ2をD
2とした条件において、第3排気通路13の内径φ3を変化させ、その内径φ3ごとに平均体積効率を計算したグラフが示されている。
このグラフによれば、D
1よりも大きなD
3(約32.5mm)で平均体積効率がピークとなる上方に凸となる特性があることが分かる。
【0056】
したがって、第2排気通路12の内径φ2をD
1より小さなD
2とし、第3排気通路13の内径φ3をD
1より大きなD
3とすることで、平均体積効率を向上させることができる。平均体積効率が向上するので、第1エンジン回転数、第2エンジン回転数及び第3エンジン回転数における体積効率についても向上する。
【0057】
このように第1排気路L、第2排気路M及び第3排気路Nの排気路長をL
0、M
0、N
0からL
1、M
1、N
1とすることで現実の車両構造に適合させる一方、これにより減少する体積効率の減少を、第1排気通路11、第2排気通路12及び第3排気通路13の内径を相対的に中、小、大とすることで補うことができる。
【0058】
このような排気路長と内径との関係は、ヘルムホルツの原理に基づいている。ヘルムホルツの原理は、空洞の箱体と、箱体内部に連通するように取り付けられた筒状部材とを備えた構造において、音速をc、箱体内部の容積をV、筒状部材の長さをl、筒状部材の断面積をS、共鳴周波数をf
0としたとき、以下の関係が成り立つとする原理である。
【0060】
箱体内部の容積Vは、第1マフラー21又は第2マフラー22の容積に相当し、lは第1排気路L、第2排気路M又は第3排気路Nの排気路長に相当し、Sは第1排気通路11、第2排気通路12又は第3排気通路13の断面積(内径)に相当するものである。共鳴周波数f0は、第1エンジン回転数、第2エンジン回転数又は第3エンジン回転数に相当するものである。
【0061】
例えば、筒状部材の長さl、すなわち第2排気路Mや第3排気路Nの排気路長がM
0からM
1、N
0からN
1に伸長し、かつ、所望の共鳴周波数、すなわち第2エンジン回転数又は第2エンジン回転数とするならば、他のパラメータのV又はSに相当する第2排気通路12や第3排気通路13の断面積(内径)を変化させればよい。
図4に示した例では、このようなヘルムホルツの原理に基づいて、平均体積効率がピークとなる第2排気通路12及び第3排気通路13の内径を特定した。
【0062】
また、第1マフラー21及び第2マフラー22の容積は、負圧波による体積効率の向上に影響する。
図5は、第1マフラー21及び第2マフラー22の容積と平均体積効率との関係を示す図である。横軸は第1マフラー21の容量であり、縦軸は第2マフラー22の容量である。
【0063】
第1排気路L、第2排気路M及び第3排気路Nの排気路長をL
1、M
1、N
1とし、第1排気通路11、第2排気通路12及び第3排気通路の内径φ1、φ2、φ3をD
1、D
2、D
3とした条件の下、第1マフラー21及び第2マフラー22の容量を変化させ、その容量ごとの平均体積効率を計算した。平均体積効率は、82.5〜87.5までの範囲を0.5刻みで区分し、各区分について同色を配して表示してある。
【0064】
排気路長及び内径を決定する際に前提としていた第1マフラー21及び第2マフラー22の容量であるV
0、W
0においては、平均体積効率は86.5〜87.0の間である。一方、第1マフラー21の容量が1.5〜2.0の範囲であり、第2マフラー22の容量が8〜10の範囲である場合、例えば、その範囲に含まれるV
1、W
1とすることで、平均体積効率は、87.0〜87.5の範囲となる。このような平均体積効率が得られる、第1マフラー21の容積に対する第2マフラー22の容積の比率は、1:4〜1:6である。
【0065】
第1排気路L、第2排気路M及び第3排気路Nの排気路長、並びに、第1排気通路11、第2排気通路12及び第3排気通路の内径を固定した条件のもとで、第1マフラー21の容積に対する第2マフラー22の容積の比率を1:4〜1:6とすることで、さらに平均体積効率を向上させることができる。
【0066】
以上に説明したように、第1排気通路11、第2排気通路12及び第3排気通路13の内径を同じ大きさとした条件の下、第1エンジン回転数、第2エンジン回転数及び第3エンジン回転数のそれぞれで負圧波による体積効率の向上が最適となるように排気路長を設定することもできる。しかし、そのような排気路長は、現実の車両構造を無視したものとなり、必ずしも採用できるとは限らない。
【0067】
本発明の排気装置によれば、第1排気路L、第2排気路M及び第3排気路Nの排気路長を現実の車両構造に適合させたL
1、M
1、N
1とする一方、これにより減少する体積効率の減少を、第1排気通路11、第2排気通路12及び第3排気通路13の内径を相対的に中、小、大とすることで補うことができる。
【0068】
すなわち、本発明の排気装置は、単に、第1排気路L、第2排気路M及び第3排気路Nの排気路長を現実の車両構造に適合させたL
1、M
1、N
1とし、第1排気通路11、第2排気通路12及び第3排気通路13の内径を同一径とした場合よりも、負圧波による体積効率をより大きく向上させることができる。
【0069】
特に、第1エンジン回転数〜第3エンジン回転数として、低中回転域のものを設定したので、低中回転域における体積効率を向上させ、トルクの出力を増大させることができる。
【0070】
なお、第1エンジン回転数〜第3エンジン回転数は、低中回転域から選択する場合に限定されず、トルク向上を図りたい任意のエンジン回転数に定めてもよい。また、本実施形態では、第1排気通路11、第2排気通路12及び第3排気通路13は、内径φ1〜φ3を有する断面が円形状であるとしたが、断面はこのような形状に限定されず任意の形状とすることができる。この場合、第1排気通路11、第2排気通路12及び第3排気通路13の断面積が相対的に中、小、大となるようにすればよい。