特許第6471862号(P6471862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6471862
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】導電性ボールの搭載装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20190207BHJP
   B23K 3/02 20060101ALI20190207BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   H01L21/92 604H
   B23K3/02 T
   H05K3/34 505A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-63140(P2015-63140)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-184608(P2016-184608A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082108
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】英 貴善
(72)【発明者】
【氏名】橋場 直浩
(72)【発明者】
【氏名】谷内 彰
【審査官】 加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0111508(US,A1)
【文献】 特開2000−106378(JP,A)
【文献】 特開2009−49334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
B23K 3/02
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引室が形成された筐体と、該筐体に形成されて上記吸引室に連通する第1接続孔と、該第1接続孔を介して上記吸引室を真空源に連通させる吸引通路と、上記筐体に設けられて上記吸引室に連通するとともに、導電性ボールが通過せず気体が通過可能なボール吸着体と、上記吸引室と真空源との連通を開閉制御する真空切換手段とを備え、
上記真空切換手段により上記吸引室を真空源に連通させて上記ボール吸着体に導電性ボールを吸着保持させた吸着保持状態で、上記筐体を被搭載物上の所定位置に位置させ、かつ上記真空切換手段により上記吸引室と真空源との連通を遮断した非吸着状態に切り換えて上記ボール吸着体に吸着保持した導電性ボールの吸着保持を解放して、上記被搭載物上の所定の搭載箇所に導電性ボールを搭載させるようにした導電性ボールの搭載装置において、
上記筐体に、上記吸引室を筐体の外部に連通させる第2接続孔を設け、上記真空切換手段は、第1位置で上記第1接続孔を閉鎖するとともに第2接続孔を開放し、かつ第2位置で上記第1接続孔を開放するとともに第2接続孔を閉鎖する閉鎖部材と、該閉鎖部材を上記第1位置と第2位置とに移動させる駆動手段とを備えることを特徴とする導電性ボールの搭載装置。
【請求項2】
上記筐体に上記真空源に常時連通された予備真空室が設けられており、上記第1接続孔は予備真空室に開口されて上記真空源に連通していることを特徴とする請求項1に記載の導電性ボールの搭載装置。
【請求項3】
上記第1接続孔と第2接続孔とは直線上に配置されており、上記閉鎖部材は上記第1接続孔と第2接続孔との間で上記直線上を移動されて、上記第1位置と第2位置とに移動されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導電性ボールの搭載装置。
【請求項4】
上記搭載箇所に対応したパターンの貫通孔を有する配列マスクが上記被搭載物上に保持されており、上記ボール吸着体に吸着保持された多数の導電性ボールはその吸着の解放によってランダムの状態で上記配列マスク上に落下されて、該配列マスクの複数の貫通孔によって上記被搭載物上の所定の搭載箇所に搭載されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の導電性ボールの搭載装置。
【請求項5】
上記筐体は、複数の整列された筒状のボールカップ列を備えており、各ボールカップは上記吸引室に連通されるとともに各ボールカップ内にそれぞれ上記ボール吸着体が設けられ、かつ上記ボールカップ列は少なくとも3列以上並列して設けられて、各ボールカップ列毎に上記真空切換手段が設けられ、内側に配置されたボールカップ列の真空切換手段は、外側に配置されたボールカップ列の真空切換手段よりも遅く、非吸着状態から吸着状態に切り換えられることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の導電性ボールの搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ボールの搭載装置に関し、より詳しくは、筐体に設けた吸引室内に真空を導入することによりボール吸着体に導電性ボールを吸着保持し、吸着保持した導電性ボールを被搭載物上で解放して、該被搭載物上の所定の搭載箇所に導電性ボールを搭載させるようにした導電性ボールの搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性ボールの搭載装置として、吸引室が形成された筐体と、該筐体に形成されて上記吸引室に連通する第1接続孔と、該第1接続孔を介して上記吸引室を真空源に連通させる吸引通路と、上記筐体に設けられて上記吸引室に連通するとともに、導電性ボールが通過せず気体が通過可能なボール吸着体と、上記吸引室と真空源との連通を開閉制御する真空切換手段とを備え、
上記真空切換手段により上記吸引室を真空源に連通させて上記ボール吸着体に導電性ボールを吸着保持させた吸着保持状態で、上記筐体を被搭載物上の所定位置に位置させ、かつ上記真空切換手段により上記吸引室と真空源との連通を遮断した非吸着状態に切り換えて上記ボール吸着体に吸着保持した導電性ボールの吸着保持を解放して、上記被搭載物上の所定の搭載箇所に導電性ボールを搭載させるようにしたものが知られている(特許文献1、特許文献2)
【0003】
上記特許文献1の導電性ボールの搭載装置においては、上記ボール吸着体にはランダムの状態で導電性ボールが吸着保持されるようになっており、他方、上記被搭載物上には、上記搭載箇所に対応したパターンの貫通孔を有する配列マスクが設けられている。そして上記ボール吸着体に吸着保持された導電性ボールはランダムの状態のままその吸着保持が解放されて落下され、上記配列マスクの貫通孔内に進入して該貫通孔のパターンに応じた上記被搭載物上の所定の搭載箇所に搭載されるようになっている。
他方、上記特許文献2の導電性ボールの搭載装置においては、上記ボール吸着体には上記搭載箇所に対応したパターンの吸着孔が形成されており、該吸着孔のパターンに従ってボール吸着体に導電性ボールが吸着保持されるようになっている。そして所定のパターンでボール吸着体に吸着保持された導電性ボールは、被搭載物上の所定位置に位置されてその吸着保持が解放され、それによって上記被搭載物上の所定の搭載箇所に搭載されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5553234号公報
【特許文献2】特開2003−188511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の導電性ボールの搭載装置においては、上記吸引室と真空源との連通を開閉制御する真空切換手段は、上記第1接続孔と真空源とを連通する吸引通路の途中に設けられており、上記吸引室と真空源との連通を遮断した非吸着状態では、吸引室を第1接続孔と吸引通路および真空切換手段とを介して大気に開放させている。
そして吸着状態に切り換える際には、真空切換手段により吸引室側の吸引通路を真空源側の吸引通路に連通させ、真空切換手段の位置から吸引通路および第1接続孔を介して真空を上記吸引室に導入するようにしている。
このように従来の導電性ボールの搭載装置においては、真空切換手段の位置が吸引室から遠いため、導電性ボールの吸着状態と非吸着状態との切換の応答性に限界があり、特に特許文献1のような吸着状態と非吸着状態との切換によって繰り返しボールを落下させて搭載する方式では装置の動作時間(タクトタイム)を短縮できないという問題点があった。
本発明はそのような事情に鑑み、導電性ボールの吸着状態と非吸着状態の切換の応答性を、簡易な構造によって高めることができる導電性ボールの搭載装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、吸引室が形成された筐体と、該筐体に形成されて上記吸引室に連通する第1接続孔と、該第1接続孔を介して上記吸引室を真空源に連通させる吸引通路と、上記筐体に設けられて上記吸引室に連通するとともに、導電性ボールが通過せず気体が通過可能なボール吸着体と、上記吸引室と真空源との連通を開閉制御する真空切換手段とを備え、
上記真空切換手段により上記吸引室を真空源に連通させて上記ボール吸着体に導電性ボールを吸着保持させた吸着保持状態で、上記筐体を被搭載物上の所定位置に位置させ、かつ上記真空切換手段により上記吸引室と真空源との連通を遮断した非吸着状態に切り換えて上記ボール吸着体に吸着保持した導電性ボールの吸着保持を解放して、上記被搭載物上の所定の搭載箇所に導電性ボールを搭載させるようにした導電性ボールの搭載装置において、
上記筐体に、上記吸引室を筐体の外部に連通させる第2接続孔を設け、上記真空切換手段は、第1位置で上記第1接続孔を閉鎖するとともに第2接続孔を開放し、かつ第2位置で上記第1接続孔を開放するとともに第2接続孔を閉鎖する閉鎖部材と、該閉鎖部材を上記第1位置と第2位置とに移動させる駆動手段とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、吸引室が形成された筐体に、吸引室に連通する第1接続孔と筐体の外部に連通する第2接続孔とが設けられており、上記閉鎖部材は、第2位置で上記第1接続孔を開放しかつ第2接続孔を閉鎖するようになっている。これにより第1接続孔まで導入されていた真空圧は、直ちに第1接続孔を介して吸引室に導入されるようになり、これと同時に吸引室を筐体外部に連通させていた第2接続孔が閉鎖されるので、吸引室内の真空圧を応答性良く高めることができる。
他方、上記閉鎖部材を第1位置に切り換えた際には、該閉鎖部材は記第1接続孔を閉鎖しかつ第2接続孔を開放するので、第1接続孔から吸引室への真空圧の導入が遮断され、他方、吸引室は第2接続孔を介して筐体の外部に、例えば大気に連通されるので、吸引室内の真空圧を応答性良く低下させることができる。
したがって導電性ボールの吸着状態と非吸着状態の切換の応答性を従来よりも高めることができ、それによって導電性ボールの搭載装置のタクトタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施例を示す平面図。
図2図1のII−II線に沿う半断面図。
図3図2のIII−III線に沿う断面図。
図4】本発明の第2実施例を示す要部の断面図。
図5】本発明の第3実施例を示す要部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図2において、導電性ボールの搭載装置1は、被搭載物2が載置されるステージ3と、被搭載物2の上面を覆う配列マスク4とを備えている。
上記被搭載物2は、例えば半導体ウエハ、電子回路基板、或はセラミック基板などであり、それらの表面に導電性ボールの搭載箇所としての電極が多数形成されている。上記被搭載物2は、図1の想像線で示すように、本実施例では半導体ウエハで円板状となっている。
上記ステージ3は、図示しない駆動手段により水平面での直交するX−Y方向と鉛直Z方向とに移動可能となっており、さらに鉛直方向に対して揺動可能となっていて、上記被搭載物2を所定の位置に正確に位置決めすることができるようになっている。
【0010】
上記配列マスク4は、上記搭載箇所に対応したパターンの貫通孔(図示せず)を形成した本体4aと、該本体4aの周囲に設けた方形のマスクフレーム4bとを備えており、上記本体4aは張設された状態でその周囲が上記マスクフレーム4bに固定されている。
上記搭載装置1は上記マスクフレーム4bと略同形状のフレーム4cと、該フレーム4cの上面に固定した方形平板状の枠体4dとを備えており、上記マスクフレーム4bは枠体4dの上面に載置された状態で、図示しないクランプによってフレーム4cに固定されている。
上記本体4aに形成した所定パターンの貫通孔は、上記被搭載物2の搭載箇所(電極)に対応したパターンとなっており、上記配列マスク4のマスクフレーム4bが上記枠体4dの所定位置に載置されて固定された状態では、本体4aに形成したそれぞれの貫通孔は、被搭載物2のそれぞれの搭載箇所の位置に一致するようになっている。
この状態で、後に詳述するように、多数の導電性ボールがランダムの状態で上記配列マスク4上に落下されて該配列マスク4の複数の貫通孔内に侵入し、上記被搭載物2に塗布されたフラックスによってそれぞれの搭載箇所に保持されるようになっている。
【0011】
上記配列マスク4の上方周辺部には、多数の導電性ボールをランダムの状態で配列マスク4上に落下させた際に、該導電性ボールが配列マスク4の外方に拡散するのを防止する気体噴射手段8を設けてある。
上記気体噴射手段8は、上記配列マスク4のマスクフレーム4bよりも内側で該配列マスク4の周囲を囲む方形の枠部材9と、この枠部材9の内部に形成した気体通路10と、該気体通路10に連通して枠部材9の内側に向けて気体を噴射する多数の噴射孔11とを備えており、上記気体通路10は可撓性を有する配管12を介して圧力気体供給源13に連通している。
上記枠部材9はブラケット15を介して昇降手段としてのエアシリンダ16に連結されており、該枠部材9は配列マスク4を交換する際には上記エアシリンダ16によって上昇され、また配列マスク4が交換された後はエアシリンダ16によって降下されて、上記枠体4dに載置されている配列マスク4の本体4aの上面に密着されるようになっている。
【0012】
上記噴射孔11は、図示実施例ではそれぞれ枠部材9の下面に形成された溝から形成されており、枠部材9の下面が配列マスク4の上面に密着された際に、該配列マスク4の上面によって溝の下面が閉鎖されるようになっている。
この状態で上記配管12に設けた図示しない電磁開閉弁を開放すると、上記圧力気体供給源13から配管12を介して気体通路10に供給された圧力気体は、各噴射孔11から枠部材9の内方に向けて噴射されるようになり、ランダムの状態で配列マスク4上に落下された多数の導電性ボールのうち、枠部材9の外部に拡散しようとする導電性ボールは、その噴射された気体により配列マスク4の外方に拡散されるのが防止されると同時に、枠部材9の中央側に向けて押し返されるようになる。
【0013】
上記導電性ボールの搭載装置1は、多数の導電性ボールを吸着保持するとともに、その吸着を解放して多数の導電性ボールをランダムの状態で上記配列マスク4上に落下させるボール吸着保持解放手段21を備えている。
上記ボール吸着保持解放手段21は、図1図3に示すように、全体として直方体形状の筐体22を備えており、この筐体22内に、図示実施例では多数の吸引室23を3列(図1図3参照)で整列させた状態で設けてある。
図3に示すように、上記筐体22は、上方から下方にかけて順次積層して相互に連結固定した第1筐体22a、第2筐体22bおよび第3筐体22cを備えており、第1筐体22a内には各列毎の吸引室23にそれぞれ連通するように3列の真空通路24を形成してある。
上記第2筐体22bは直方体形状に形成されてその内部に、上記各吸引室23のそれぞれに個別に連通する吸引室23と同数の真空通路25を形成してあり、各真空通路25の上端部は上記3列の真空通路24のいずれかに連通している。
【0014】
上記第3筐体22cは、第2筐体22bの下端面に取り付けた方形の板状部材22dと、この板状部材22dの下面に固定した多数のボールカップ22eとを備えており、各ボールカップ22e内にそれぞれ上記吸引室23を形成してある。図示実施例では、上記各ボールカップ22eは水平断面が円形となるような筒状に形成してあり、各吸引室23は真空通路25を介して上記真空通路24に連通している。なお、上記ボールカップ22eの水平断面は円形に限定されるものではなく、方形など適宜の形状とすることができる。
上記各ボールカップ22e内の下方寄りの位置には、導電性ボールが通過せず、気体が通過可能なステンレスメッシュ等の金網で製作されたボール吸着体26を設けてあり、上記吸引室23に真空が導入された際には、上記ボール吸着体26に多数の導電性ボールをランダムの状態で吸着保持させることができるようにしてある。
【0015】
上記3列の真空通路24のそれぞれの両側には、図2に示すように、各真空通路24と真空源31との連通を開閉制御する真空切換手段32を設けてある。つまり真空切換弁32は、図示実施例では合計6箇所に設けてある。
上記真空切換手段32はすべて同一構成を有しており、図2に示す実施例では、筐体22および真空通路24を、各列で最も外側となるボールカップ22eよりも更に外側となるように両側にそれぞれ延長して形成してあり、最も外側となるボールカップ22eと上下方向に重合しない位置に各真空切換手段32を設けている。
各真空切換手段32は、最も外側となるボールカップ22eと上下方向に重合しない位置で第1筐体22aに形成した第1接続孔33を備えており、各第1接続孔33はそれぞれ真空通路24に開口してこれに連通している。また上記第1筐体22aの上面両側には、それぞれ内部に予備真空室34を形成した2つの第4筐体22fを設けてあり、図2の左側に設けた3つの第1接続孔33は左側に設けた1つの予備真空室34内にそれぞれ連通し(図3参照)、右側に設けた3つの第1接続孔33は右側に設けた1つの予備真空室34内にそれぞれ連通している。
そして各予備真空室34に連続して筒状の第2の予備真空室34’を連設してあり、これら予備真空室34、予備真空室34’は、吸引通路としての可撓性を有する配管35を介して常時上記真空源31に連通している。換言すれば、各予備真空室34、34’内には、常時真空圧が導入されている。
【0016】
上記各真空切換手段32は、それぞれ上記第2筐体22bと第3筐体22cとを貫通させて設けた第2接続孔36を備えており、上記真空通路24は第2接続孔36を介して筐体の外部となる大気に連通するようになっている。このとき、上記第2接続孔36は、上述した合計6個の第1接続孔33のそれぞれに対して、上記真空通路24を挟んで鉛直方向の直線上となる位置にそれぞれ形成してある。
上下に配置した各一対の第1接続孔33と第2接続孔36とは、それぞれ真空切換手段32を構成する弁手段41によって開閉されるようになっており、各弁手段41は、図2で示す実施例では、第4筐体22fに設けた駆動手段としてのエアシリンダ42と、各エアシリンダ42のピストンロッド43の先端部に設けた閉鎖部材44とを備えている。
【0017】
上記閉鎖部材44は、それぞれ上下一対の第1接続孔33と第2接続孔36との中間位置に配置してあり、エアシリンダ42の非作動状態では図示しないばねによって上方の第1位置に保持されている。
この状態では、第1接続孔33は閉鎖部材44によって閉鎖されているので、真空通路24と真空源31との連通が遮断されており、また第2接続孔36は開放されているので、真空通路24内には第2接続孔36を介して大気が導入されている。
他方、エアシリンダ42が作動されて上記閉鎖部材44が下方の第2位置に移動された際には、上記第1接続孔33が開放されるのと同時に、第2接続孔36が閉鎖されるようになる。
これにより、真空通路24と大気との連通が遮断されるのと同時に、上記真空源31から予備真空室34内に導入されていた真空は、第1接続孔33を介して真空通路24に導入されるので、各吸引室23内に直ちに真空が導入されて、ボール吸着体26に導電性ボールが吸着保持されるようになる。
【0018】
上記ボール吸着保持解放手段21は、図3に示すように、ブラケット47および昇降手段48を介してX移動フレーム49に取り付けられており、上記昇降手段48によってX移動フレーム49に対して昇降自在となっている。
また上記X移動フレーム49は、図1に示すように、Xモータ50と該Xモータによって回転されるXねじ軸51とによってX方向に移動されるようになっており、これらX移動フレーム49、Xモータ50およびXねじ軸51を支持するY移動フレーム52は、Yモータ53と該Yモータによって回転されるYねじ軸54とによってY方向に移動されるようになっている。
これによって、上記ボール吸着保持解放手段21をX方向、Y方向および上下方向に移動させることができるようになっている。
【0019】
図1に示すように、上述した気体噴射手段8の枠部材9を超えた外側位置(図1の下方位置)には、多数の導電性ボールを貯溜するボール貯溜手段61を設けてあり、上記ボール吸着保持解放手段21を該ボール貯溜手段61まで移動させることによって、ボール吸着保持解放手段21に多数の導電性ボールを吸着保持させることができるようにしてある。上記ボール貯溜手段61は、内部を図示しない仕切板によって区画したトレイ状に形成してあり、多数の導電性ボールをある程度の範囲で拡散した状態で載置することができるようにしてある。
また、上記ボール吸着保持解放手段21のボール貯溜手段61とは反対側位置に、導電性ボールの搭載作業後に、配列マスク4上に散乱した導電性ボールを回収するボール回収手段62を設けてある。
上記ボール回収手段62は直方体形状の箱型に形成してあり、下面が開放されるとともに、可撓性を有する配管63および図示しない電磁開閉弁を介して上記真空源31に接続してある。そしてボール回収手段62が真空源に31に連通された際は、気体噴射手段8の枠部材9内で配列マスク4上に散乱した導電性ボールを真空圧によって吸引回収することができるようにしてある。
【0020】
上記ボール回収手段62は、図3に示すように、ブラケット64および昇降手段65を介して上述したX移動フレーム49に取り付けてあり、上記昇降手段65によってX移動フレーム49に対して昇降自在となっている。
上記ボール吸着保持解放手段21とボール回収手段62とは、それぞれ昇降手段48、65によって別個に昇降されるようになっており、かつそれぞれの昇降時に相互に干渉することがないように設けられている。
【0021】
以上の構成において、導電性ボールの搭載装置1によって被搭載物2上に導電性ボールを搭載する際には、予め被搭載物2と配列マスク4とが所定位置にセットされている。
またボール吸着保持解放手段21の閉鎖部材44は第1位置に保持されていて、真空通路24は大気に開放されている。
さらに、上記気体噴射手段8の噴射孔11は圧力気体供給源13に連通されており、噴射孔11からは気体噴射手段8の枠部材9の内側に向けて所要の圧力で圧力気体が噴射されている。
【0022】
この状態において、導電性ボールの搭載作業が開始されると、先ずボール吸着保持解放手段21がボール貯溜手段61の直上位置まで移動されるとともに、ボールカップ22eの下端面がボール貯溜手段61内に貯溜されている導電性ボールに近接した所定の高さ位置まで降下される。
この状態となると、各真空切換手段32のエアシリンダ42が作動され、各閉鎖部材44が第1位置から第2位置に移動されて3列の真空通路24内に真空が導入され、これにより各真空通路24内の真空はそれぞれ真空通路25を介して各吸引室23内に導入される。すると、上記ボール貯溜手段61内の導電性ボールは各ボールカップ22e内に吸い上げられて、ボール吸着体26にランダムの状態で吸着されるようになる。
【0023】
この際、3列の真空通路24のうち、中央側の真空通路24を開閉する2つの真空切換手段32は、これよりも外側となる真空通路24を開閉する4つの真空切換手段32よりも遅れて開作動させるように設定してある。
すなわち3列の真空切換手段32を同時に開作動させると、中央の真空通路24に連通する一列のボールカップ22eは、その手前一列のボールカップ22eと奥一列のボールカップ22eとが吸引しようとしている導電性ボールをも吸い込んでしまうため、中央列のボールカップ22eによる導電性ボールの吸着量は、その外側の列のボールカップ22eによる導電性ボールの吸着量よりも多くなってしまう傾向がある。
特に、配列マスク4上で導電性ボールの吸着と解放とを多数回繰り返すと徐々に各列の吸着量に大きな偏りが生じるようになるが、ボール貯溜手段61内の導電性ボールを各ボールカップ22e内に吸い上げる作業は1回で終了するので、この際には大きな問題とはならない。したがって、ボール貯溜手段61内の導電性ボールを吸着する際には全ての真空切換手段32を同時に作動させるようにすることも可能である。
【0024】
上記各ボールカップ22e内のボール吸着体26にそれぞれ導電性ボールを吸着保持したら、上記ボール吸着保持解放手段21は図1の実線で示す位置まで移動される。すなわち、図1に示す実施例では、3列の吸引室23およびボールカップ22eのうち、中央の吸引室23およびボールカップ22eの列が被搭載物2の一方の最外側位置(図1の上側の端部)にかかる位置に移動される。
この状態でボール吸着保持解放手段21が降下されてボールカップ22eの下端面が配列マスク4の上面に近接した位置となると、各真空切換手段32のエアシリンダ42の作動が一斉に切り換えられ、各閉鎖部材44は第2位置から第1位置に復帰される。
これにより第2接続孔36を介して真空通路24内に大気が導入されるので、ボール吸着体26に吸着保持されていた導電性ボールはランダムの状態で配列マスク4上に落下され、該配列マスク4の複数の貫通孔内に侵入して上記被搭載物2に塗布されたフラックスによってそれぞれの搭載箇所に保持される。
【0025】
ボール吸着保持解放手段21に吸着保持していた導電性ボールを配列マスク4上に落下させたら、3列の真空切換弁32は上述した順番で作動されて、配列マスク4上に落下された導電性ボールを再び吸着保持する。この際、所定の搭載箇所にフラックスによって保持された導電性ボールは、フラックスによる密着力によって再びボール吸着保持解放手段21に吸引されることはない。
本実施例では、同一位置で導電性ボールの解放と吸着とを2回繰り返したら、上記ボール吸着保持解放手段21は、上記一方の最外側位置から他方の最外側位置に向けて所定距離だけ、例えば3列の吸引室23間のピッチP(図1参照)の1/2だけ移動される。
そして、その新たな位置で上述したのと同様に導電性ボールの解放と吸着とが2回繰り返されたら、再び同一距離だけ他方の最外側位置に向けて移動され、以後、中央の吸引室23およびボールカップ22eの列が被搭載物2の他方の最外側位置にかかる位置に移動されるまで、同一作業が繰り返される。
【0026】
上記導電性ボールの搭載作業が終了したら、ボール吸着保持解放手段21は残存していた導電性ボールをボール貯溜手段61に戻すようになる。
その後、ボール吸着保持解放手段21はボール回収手段62と共に図1に示す最初の位置に移動され、その位置でボール回収手段62は真空源31に連通されて配列マスク4上に残存している余剰の導電性ボールを吸引回収する。ボール回収手段62が上述した他方の最外側まで移動されたら、該ボール回収手段62によって吸引回収された導電性ボールも上記ボール貯溜手段61に戻される。
【0027】
上記導電性ボールの搭載作業中、上記気体噴射手段8の噴射孔11から枠部材9の内側に向けて所要の圧力で圧力気体が噴射されているので、ボール吸着保持解放手段21で吸着されずに配列マスク4上を転動して配列マスク4の外方に散逸しようとする導電性ボールは、上記気体によって配列マスク4の内側に向けて押し戻されるようになるので、ボール吸着保持解放手段21によって再び吸着され易くなる。
これはボール回収手段62によって配列マスク4上に残存している余剰の導電性ボールを吸引回収する際にも同様であって、余剰の導電性ボールも上記気体によって配列マスク4の内側に向けて押し戻されるので、ボール回収手段62によって回収され易くなる。
【0028】
また、上記導電性ボールの搭載作業では、真空切換手段32の切り換え作動により頻繁に吸引室23内に真空圧と大気圧とが交互に導入されるが、本実施例では導電性ボールの吸着状態と非吸着状態の切換の応答性を、従来に比較して高めることができる。
すなわちボール吸着体26によって導電性ボールを吸着する際には、真空切換手段32から吸引室23に亘って真空が導入される必要があるが、従来の導電性ボールの搭載装置では、真空切換手段32は一般に吸引室23から離れた配管35の途中に設けられているので、その離れた距離分だけ吸着に要する時間がかかっていた。
これに対して本実施例においては、筐体22に真空切換手段32を設けているので、配管35に真空切換手段32を設ける場合に比較して吸着に要する時間を短縮することができる。1回の吸着に要する時間の差は僅かであるが、上述したように導電性ボールの搭載作業では多数回の真空切換手段32の切り換え作動が必要なので、全体として装置の動作時間(タクトタイム)を有効に短縮できるという効果が得られる。
【0029】
さらに本実施例においては、真空源31に連通する第1接続孔33側に予備真空室34、34’を設けてここに常時真空を導入するようにしているので、第1接続孔33が開かれた際には予備真空室34、34’内に導入されていた真空を、第1接続孔33を介して直ちに真空通路24および吸引室23に導入することができる。
これによって、速やかに真空通路24および吸引室23の圧力を低下させることができるので、この点においても導電性ボールの吸着状態と非吸着状態の切換の応答性を高めてタクトタイムの短縮を図ることができる。
【0030】
図4は本発明の第2実施例を示したもので、上記第1実施例では真空切換手段32の弁手段41を構成する1つの閉鎖部材44を第1接続孔33と第2接続孔36との中間位置に配置しているが、本実施例では2つの第1閉鎖部材44Aと第2閉鎖部材44Bとをそれぞれ第1接続孔33と第2接続孔36との外側位置に配置したものである。
すなわち、第1接続孔33を開閉する第1閉鎖部材44Aは、予備真空室34内に配置して上記ピストンロッド43に固定してあり、また第2接続孔36を開閉する第2閉鎖部材44Bは、第2接続孔36よりも大気側に配置して上記ピストンロッド43に固定してある。
本実施例では、エアシリンダ42の非作動状態では図示しないばねによって各閉鎖部材44A、44Bは図4に示す下方の第1位置に保持されている。
この状態では、第1接続孔33は第1閉鎖部材44Aによって閉鎖されているので、真空通路24と真空源31との連通が遮断されており、また第2接続孔36は開放されているので、真空通路24内には第2接続孔36を介して大気が導入されている。
他方、エアシリンダ42が作動されて上記閉鎖部材44A、44Bが上方の第2位置に移動された際には、上記第1接続孔33が開放されるのと同時に、第2接続孔36が閉鎖されるようになる。
これにより、真空通路24と大気との連通が遮断されるのと同時に、上記真空源31から予備真空室34、34’に導入されていた真空が第1接続孔33を介して真空通路24に導入されるので、各吸引室23内に真空が導入されて、ボール吸着体26に導電性ボールが吸着保持されるようになる。
【0031】
また上記第1実施例においては各噴射孔11を枠部材9の下面に形成した溝から形成しているが、図4に示すように、本実施例では各噴射孔11Aを枠部材9の内部に形成した通路から形成してある。
上記第2実施例におけるその他の構成は第1実施例と同様に構成してあり、第1実施例と同等もしくは相当部分のうち主要な部分には、第1実施例と同一の符号を付して示してある。
このような構成を有する第2実施例においても、第1実施例と同様な作用効果を得ることができる。
【0032】
図5は本発明の第3実施例を示したもので、本実施例においては、真空源31に連通する第1接続孔33と大気に連通する第2接続孔36とを平行となるように形成している。
上記第1接続孔33は筐体22の上部に形成されて、これに連設した予備真空室34’および配管35を介して上記真空源31に連通しており、また第2接続孔36は筐体22の上部に形成されて真空通路24を大気に連通させている。
本実施例における閉鎖部材44Cは板状に形成されて、上記第1接続孔33と第2接続孔36とを水平方向に横切ってそれぞれの接続孔を閉鎖するようになっている。そして該板状の閉鎖部材44Cには連通孔44dが形成されており、エアシリンダ42の非作動状態では、上記閉鎖部材44Cは図5に示す第1位置に保持されており、この状態では、閉鎖部材44Cは上記第1接続孔33を閉鎖するとともに上記連通孔44dが第2接続孔36に重合されて該第2接続孔36を開放するようになっている。
したがってこの状態では、第1接続孔33は閉鎖部材44Cによって閉鎖されているので、真空通路24と真空源31との連通が遮断されており、また第2接続孔36は連通孔44dを介して大気に開放されているので、真空通路24内には第2接続孔36を介して大気が導入されている。
【0033】
これに対し、上記エアシリンダ42が作動されてそのピストンロッド43により上記閉鎖部材44Cが図5に示す第1位置から左方の第2位置に移動された際には、上記閉鎖部材44Cが第2接続孔36に重合されて真空通路24と大気との連通を遮断するとともに、閉鎖部材44が第1接続孔33から左方に離脱されて、該第1接続孔33を開放するようになる。
これにより上記真空源31から予備真空室34’内に導入されていた真空が第1接続孔33を介して真空通路24に導入されるので、各吸引室23内に真空が導入されて、ボール吸着体26に導電性ボールが吸着保持されるようになる。
上記第3実施例におけるその他の構成は第1実施例または第2実施例と同様に構成してあり、それら実施例と同等もしくは相当部分のうち主要な部分には、それら実施例と同一の符号を付して示してある。
このような構成を有する第3実施例においても、上述した実施例と同様な作用効果を得ることができる。
【0034】
なお、上記第3実施例の変形例として、上記閉鎖部材44Cを図5に示す第1位置に保持した際に、連通孔44dを第1接続孔33に重合させて該第1接続孔33を開放するとともに、閉鎖部材44Cで第2接続孔36を閉鎖するようにしてもよい。
また上記実施例では、上記ボール吸着保持解放手段21による導電性ボールの搭載作業中とボール回収手段62による余剰の導電性ボールの回収作業中とのいずれにおいても上記気体噴射手段8の噴射孔11から一定の圧力で圧力気体を噴射するようにしているが、これに限定されるものではない。上記搭載作業時は圧力気体を噴射させず、回収作業時のみ圧力気体を噴射させるようにしてもよく、或は、搭載作業時は比較的弱い圧力で圧力気体を噴射させ、回収作業時には搭載作業時よりも強い圧力で圧力気体を噴射させるようにしてもよい。
さらに、上記実施例においては配列マスクを利用して導電性ボールを所定の搭載箇所に搭載させるようにしているが、上記特許文献2の導電性ボールの搭載装置にも本発明を適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 導電性ボールの搭載装置 2 被搭載物
4 配列マスク 21 ボール吸着保持解放手段
22 筐体 22e ボールカップ
24、25 真空通路 26 ボール吸着体
31 真空源 32 真空切換手段
33 第1接続孔 34、34’ 予備真空室
35 配管(吸引通路) 36 第2接続孔
41 弁手段 42 エアシリンダ(駆動手段)
44、44A、44B、44C 閉鎖部材
44d 連通孔
図1
図2
図3
図4
図5