(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6472007
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】水溶性金属加工油剤用防黴剤、それを含有する水溶性金属加工油剤組成物及びク−ラント
(51)【国際特許分類】
C10M 141/08 20060101AFI20190207BHJP
C10M 173/02 20060101ALI20190207BHJP
C10M 135/36 20060101ALN20190207BHJP
C10M 133/06 20060101ALN20190207BHJP
C10M 133/08 20060101ALN20190207BHJP
C10N 30/16 20060101ALN20190207BHJP
【FI】
C10M141/08
C10M173/02
!C10M135/36
!C10M133/06
!C10M133/08
C10N30:16
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-201340(P2017-201340)
(22)【出願日】2017年10月17日
【審査請求日】2018年4月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207399
【氏名又は名称】大同化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤瀬 高文
(72)【発明者】
【氏名】岩本 啓嗣
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 均
【審査官】
安川 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−105244(JP,A)
【文献】
特開平10−298012(JP,A)
【文献】
特開2008−189714(JP,A)
【文献】
特開平08−193015(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/129747(WO,A1)
【文献】
特開平04−214796(JP,A)
【文献】
特開平09−316482(JP,A)
【文献】
特許第6176376(JP,B2)
【文献】
特開2005−015617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00−177/00
C10N 10:00− 80:00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)N−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンおよび
(B)N−ベンジルエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、2−((1−メチルプロピル)アミノ)エタノ−ル、N−メチルヘキシルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、3,3−イミノビス(プロピルアミン)、ビス(2(ジメチルアミノ)エチル)エ−テル、N,N−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル、シクロヘキシルアミンエチレンオキサイド付加物、メタキシレンジアミンエチレンオキサイド付加物、メタキシレンジアミンプロピレンオキサイド付加物からなる群から選択される少なくとも1種を含有していることを特徴とする水溶性金属加工油剤用防黴剤。
【請求項2】
(A)の添加量に対する、(B)の添加量の重量比率が1:1〜1:400である請求項1に記載の水溶性金属加工油剤用防黴剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水溶性金属加工油剤用防黴剤を含有する水溶性金属加工油剤組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の水溶性金属加工油剤組成物を水により希釈してなるク−ラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水溶性金属加工油剤のカビの繁茂を抑制するための防黴剤、それを含有する水溶性金属加工油剤組成物及びク−ラントに関する。
本発明の水溶性金属加工油剤とは、水に希釈して使用される切削・研削油剤、塑性加工油剤、防錆・洗浄油剤、焼き入れ油剤などを示す。
【背景技術】
【0002】
金属を加工する際に使用される水溶性加工油剤には、ソリュ−ション型、ソリュブル型、エマルション型等がある。これらはいずれも水、アルカリ性物質(無機アルカリ、有機アミン化合物等)、鉱油(鉱物油等)、油脂、有機酸、有機酸エステル、極圧添加剤、界面活性剤、消泡剤、金属防食剤、酸化防止剤、防腐・防黴剤(殺菌剤等)等を組成成分として含んでいる。これ等の添加剤は加工対象被加工材、加工条件その他の条件に応じて適宜配合して製造される。一般に、水溶性加工油剤は、これを原液として、通常、水で2〜100倍程度に希釈して使用される。以下、この水希釈された状態の液を、ク−ラントと言う。
【0003】
ク−ラントでは、油剤成分中に含まれている有機物(窒素化合物を含む)や加工用機械から混入してくる作動油・潤滑油などを、細菌類・真菌類が栄養源とすることで、悪臭を発生し周囲の作業環境を悪化させるという問題がある。また、ク−ラントタンク壁面や配管内にカビが繁茂するとノズル詰まりが生じる、切屑に絡み付きク−ラント汚れの原因となる、電気系統にカビが付着することで短絡を引き起こす。このようなカビの発生は工作物の品質低下や、配管内のカビの除去や電気系統の修理のために作業を中断せざるを得ないため、生産性の低下が生じている。
【0004】
配管等におけるカビの繁茂を防ぐ観点から、ク−ラントには防黴剤、有機アミンの添加やその他成分によって防黴処理されていた。防黴剤にはトリアジン系化合物,イソチアゾリン系化合物,モルホリン系化合物がこれまで利用されてきた。一般的に防黴剤は分解や不活性化により効果が時間とともに減少していく。しかしながら、トリアジン系化合物を除く、これらの防黴剤は高価であることと、防黴に必要な十分量を使用し続けると、肌荒れの等人体への影響の観点からあまり多く使用できなかった。また、同一の防黴剤を使用し続けるとカビが耐性を獲得し、防黴効果が低下してしまうため、更に大量の防黴剤を使用しなければならなくなる。
【0005】
イソチアゾリン系化合物である、N−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンは一般的に防黴剤として従来から使用されてきた。しかしながら、N−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンは高価であり、金属加工油剤組成物及びク−ラントに多量添加すると、製造コストが高くなるという難点を抱え、防黴対策の大きな障害となっている。
【0006】
有機アミンにはシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、N−アミノプロピルピペラジンなどのアミン化合物がこれまで利用されてきた。しかしながら、従来の有機アミンを用いる場合は細菌類に対して一定の効果は有しているものの、カビに対しては抗菌性が弱く、カビの繁茂に対しては満足する結果を得ることができなかった。有機アミンを大量に含有すればカビの繁茂を抑制し得る一方、刺激性が増大することになり好ましくない。
【0007】
有機アミンを含有する先行技術文献は、水溶性金属加工油剤としては特許文献1にアルキルアミンとしてイミノビスプロピルアミンを含有することを、特許文献2にアルカノ−ルアミンとしてN,N−ジメチルエタノ−ルアミンを含有することを、特許文献3にビス(2−ジメチルアミノエチル)エ−テルを含有することを特徴とする金属加工油剤の開示がある。しかしながらこの有機アミン、水溶性金属加工油剤を使用した場合、特許文献1及び2には優れた腐食防止性を発揮できるとの記載があり、特許文献3には優れた防錆性を発揮できるとあるが、カビの繁茂を抑制するかどうか記載も示唆もない。特許文献4〜6にイソチアゾリン系化合物とトリアジン化合物またはモルフォリン化合物またはピリジン化合物の併用により優れた防腐効果を示すことが記載されている。しかしながらモルフォリン化合物はホルムアルデヒド供与体化合物であり人体へ悪影響をおよぼす恐れがあり、多量使用することは困難である。トリアジン化合物とピリジン化合物はク−ラント変色の原因となる。特許文献7,8にN−ベンジルエタノ−ルアミン、N−エチルエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミンは細菌類の防腐効果に優れていると記述があるが、N−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンと併用することにより、カビの繁茂を抑制するかどうか記載も示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2001−507724号公報
【特許文献2】特許第3550214号公報
【特許文献3】特許第5081879号公報
【特許文献4】特許第5858290号公報
【特許文献5】特許第5291292号公報
【特許文献6】特許第5107496号公報
【特許文献7】特開2002−302406号公報
【特許文献8】特開2003−160412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記問題点を解決するためになされたものであり、高価かつ人体に影響のある防黴剤の使用量を低減し、カビによる作動不良や生産性の低下を防止するものである。ク−ラントのカビの繁茂を抑制でき、更にク−ラント寿命を延長できる水溶性金属加工油剤用防黴剤、それを含有する水溶性金属加工油剤及びク−ラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、カビ対策として防黴剤N−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンと、所定の有機アミン化合物を併用することで、著しくカビの繁茂を抑制し、上記目的を達成し得ることを見出し、これに基づいて更に種々検討して、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、以下に示す、水溶性金属加工油剤用防黴剤、それを含有する水溶性金属加工油剤及びク−ラントを提供するものである。
【0012】
1.(A)N−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンおよび(B)N−ベンジルエタノ−ルアミン、N−エチルエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、2−((1−メチルプロピル)アミノ)エタノ−ル、N−メチルヘキシルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、3,3−イミノビス(プロピルアミン)、ビス(2(ジメチルアミノ)エチル)エ−テル、N,N−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル、シクロヘキシルアミンエチレンオキサイド付加物、メタキシレンジアミンエチレンオキサイド付加物、メタキシレンジアミンプロピレンオキサイド付加物からなる群から選択される少なくとも1種を含有していることを特徴とする水溶性金属加工油剤用防黴剤。
【0013】
2.(A)の添加量に対する、(B)の添加量の重量比率が1:1〜1:400である上記項1に記載の水溶性金属加工油剤用防黴剤。
【0014】
3.上記項1または2に記載の水溶性金属加工油剤用防黴剤を含有する水溶性金属加工油剤組成物。
4.上記項3に記載の水溶性金属加工油剤組成物を水により希釈してなるク−ラント。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、(A)N−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンおよび(B)N−ベンジルエタノ−ルアミン、N−エチルエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、2−((1−メチルプロピル)アミノ)エタノ−ル、N−メチルヘキシルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、3,3−イミノビス(プロピルアミン)、ビス(2(ジメチルアミノ)エチル)エ−テル、N,N−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル、シクロヘキシルアミンエチレンオキサイド付加物、メタキシレンジアミンエチレンオキサイド付加物、メタキシレンジアミンプロピレンオキサイド付加物からなる群から選択される少なくとも1種を併用し、含有している水溶性金属加工油剤組成物を水希釈したク−ラントを、金属加工において使用する場合に、そのカビの繁茂を顕著に抑制することができる。従って、カビの繁茂による生産性の低下を効果的に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の水溶性金属加工油剤用防黴剤は、(A)N−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンおよび(B)N−ベンジルエタノ−ルアミン、N−エチルエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、2−((1−メチルプロピル)アミノ)エタノ−ル、N−メチルヘキシルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、3,3−イミノビス(プロピルアミン)、ビス(2(ジメチルアミノ)エチル)エ−テル、N,N−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル、シクロヘキシルアミンエチレンオキサイド付加物、メタキシレンジアミンエチレンオキサイド付加物、メタキシレンジアミンプロピレンオキサイド付加物からなる群から選択される少なくとも1種を併用し、含有していることによって、特徴付けられる。
【0017】
水溶性金属加工油剤用防黴剤として(A)N−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンと(B)N−ベンジルエタノ−ルアミン、N−エチルエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、2−((1−メチルプロピル)アミノ)エタノ−ル、N−メチルヘキシルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、3,3−イミノビス(プロピルアミン)、ビス(2(ジメチルアミノ)エチル)エ−テル、N,N−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル、シクロヘキシルアミンエチレンオキサイド付加物、メタキシレンジアミンエチレンオキサイド付加物、メタキシレンジアミンプロピレンオキサイド付加物からなる群から選択される少なくとも1種との重量比率は、(A):(B)が1:1〜1:400程度であるのが好ましく、1:3〜1:350程度であるのがより好ましく、1:5〜250程度であるのが更に好ましい。
【0018】
水溶性金属加工油剤組成物に添加するN−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの含有量は、本発明の水溶性金属加工剤組成物全体を100重量%とした場合、0.02〜2.0重量%程度であるのが好ましく、0.05〜1.5重量%程度であるのがより好ましく、0.1〜1.0%重量%程度であるのが更に好ましい。N−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンが0.02重量%未満である場合は防黴効果が十分ではなく、一方、2.0重量%を越える場合は、肌荒れが生じるおそれがあるため何れも好ましくない。
【0019】
本発明の水溶性金属加工油剤組成物は水希釈しク−ラントとして使用するが、場合により、既に水溶性金属加工油剤を希釈したク−ラント中に添加してもよい。
【0020】
本発明の水溶性金属加工油剤組成物を水希釈し、ク−ラントとして使用するときの希釈倍率は2〜100倍が好ましい。2倍希釈未満では臭気が生じるおそれがあり、100倍希釈以上では金属加工性能が現れないため、何れも好ましくない。
【0021】
上記有機アミン(防黴剤)成分以外の含有成分
本発明による水溶性金属加工油剤には、本発明の防黴剤のほか、金属加工油剤の種類に応じて常套の添加剤、例えば、有機酸類、有機アミン、界面活性剤が配合され、さらに必要に応じて、無機アルカリ物質、鉱物油、油脂、極圧添加剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、防腐剤などの添加剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量は、金属加工油剤の種類に応じて、適宜、決定される。有機酸類としては、カルボキシル基を有する有機酸、およびその誘導体が包含される。有機酸類としては、C
8〜C
36の有機酸類が一般的である。有機酸類は、有機アミンと有機酸アミン塩を形成し、アニオン乳化剤として作用し乳化安定性を高めるとともに、防錆性、潤滑性を高めて、水溶性金属加工油剤としての一次性能及び二次性能を向上させる効果がある。
【0022】
C
8〜C
36の有機酸類としては、モノカルボン酸・ジカルボン酸が挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、オクチル酸、ペラルゴン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、リシノ−ル酸、メリシン酸等;天然物としてヤシ油脂肪酸、ト−ル油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸等が挙げられる。また、ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などが挙げられる。
【0023】
有機酸類の炭素数が7以下だと金属を腐食する可能性があり、一方炭素数が36より大きいと発泡しやすいという問題があるので、何れも好ましくない。
【0024】
有機酸類の配合量は、本発明の水溶性金属加工剤組成物全体を100重量%とした場合、1.0〜30重量%程度であることが好ましい。
【0025】
有機アミンは、組成物のpHを上げることによる、アルカリ的防錆・耐腐敗性の観点から配合されるものである。有機アミンとしては、第1級有機アミン、第2級有機アミン、第3級有機アミン等を、一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
第1級有機アミンとしては、例えば、モノエタノ−ルアミン、ジグリコ−ルアミン、モノイソプロパノ−ルアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノ−ルなどが挙げられる。第2級有機アミンとしては、例えば、ジエタノ−ルアミン、ジイソプロパノ−ルアミンなどが挙げられる。また、第3級アミンとしては、例えば、トリエタノ−ルアミン、トリイソプロパノ−ルアミン等が挙げられる。
【0027】
有機アミンは、得られた水溶性金属加工剤組成物を水希釈して、ク−ラントとして使用するにあたっての希釈液濃度と用途、防錆性、耐腐敗性を考慮して、その配合量が決定される。通常、有機アミンの配合量は、本発明の水溶性金属加工剤組成物全体を100重量%とした場合、0.5〜50重量%程度であることが好ましい。有機アミンの総量が50重量%を越えると肌荒れやコストの面で好ましくなく、一方、有機アミンの総量が1重量%未満では、防錆性や耐腐敗性が認められないため好ましくない。
【0028】
界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等を、用いることができる。これらの内、非イオン界面活性剤を用いるのが、好ましい。
【0029】
非イオン界面活性剤としては、例えば、一般的なものとして、
HO−(EO)
m(PO)
n(EO)
m−H、R−O(EO)
n−H、R−(AO)
n−H、グリセリンのEOPO付加物などを挙げることができる。これらの各式中、Rはアルキル基(直鎖状でも分枝状でもよく、又環状構造、二重結合、3重結合等を保有するものであってもよい)を示し、AO(アルキレンオキサイド)は、EO(オキシエチレン基)及びPO(オキシプロピレン基)の1種または2種の混合物であり、混合物である場合の配列はランダムでもブロックでもよい。また、各式において、n及びmは、1〜500程度の整数を示す。
【0030】
界面活性剤の配合量は、本発明の水溶性金属加工剤組成物全体を100重量%とした場合、1.0〜50.0重量%程度であることが好ましい。
【0031】
本発明の水溶性金属加工油剤組成物には、水が配合される。水の配合量は、通常、水溶性金属加工油剤組成物全体を100重量%とした場合、1〜70重量%程度であることが好ましい。使用する水は、水道水、工業用水、イオン交換水、蒸留水などいずれでもよく、その水は硬水であるか軟水であるかを問わない。
【0032】
金属腐食防止剤としては、例えば、イミダゾリン、ベンゾトリアゾ−ル、ポリマ−酸誘導体等が挙げられる。
【0033】
防腐剤としてはトリアジン系化合物,イソチアゾリン系化合物,ベンゾイソチアゾリン系化合物、モルホリン系化合物が挙げられる。
【0034】
ク−ラント
本発明のク−ラントは、本発明の水溶性金属加工油剤組成物を原液として、これを水で希釈して、金属加工におけるク−ラントとして用いられる。水溶性金属加工油剤組成物を、水希釈して実使用するに際しては、原液を濃度1.0〜10.0重量%程度になるように水で希釈し、ク−ラントとして用いるのが好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって、何ら限定されるものではない。
【0036】
水溶性加工油剤に対する防黴効力試験
18mL容試験管に塩酸でpH5.6に調整したサブロ−デキストロ−ス培地(表1)8mLを入れ、高圧蒸気滅菌した。この培地に表2に示す成分を配合した加工油剤を調製し、実施例1〜13では(A)N−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンが500重量ppmになるように且つ、(B)N−ベンジルエタノ−ルアミン、N−エチルエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、2−((1−メチルプロピル)アミノ)エタノ−ル、N−メチルヘキシルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、3,3−イミノビス(プロピルアミン)、ビス(2(ジメチルアミノ)エチル)エ−テル、N,N−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル、シクロヘキシルアミンエチレンオキサイド付加物、メタキシレンジアミンエチレンオキサイド付加物、メタキシレンジアミンプロピレンオキサイド付加物のいずれかが200mMになるように添加した。
実施例14〜26では(A)成分が250重量ppmになるように且つ、(B)成分のいずれかが200mMになるように添加した。
実施例27〜39では(A)成分が250重量ppmになるように且つ、(B)成分のいずれかが100mMになるように添加した。
比較例1〜13では(A)成分を添加せず、(B)成分のいずれかが200mMになるように添加した。
比較例14〜16では(A)成分を500重量ppmになるように且つ2−(ジメチルアミノ)−2−メチル−1−プロパノ−ル、トリエタノ−ルアミン、N−メチルエタノ−ルアミンが200mMになるように添加した。
比較例17では(A)成分を500重量ppmになるように添加し、(B)成分は添加しなかった。
実施例および比較例の加工油剤を滅菌したサブロ−デキストロ−ス培地8mL入った18mL容試験管に1mL添加した。カビの胞子液は、分光光度計で波長530nmにおける濁度を測定し、0.5のO.D.(光学密度)を与えるようにサブロ−デキストロ−ス培地で希釈した。試験管に胞子液1mLを添加し懸濁後、30℃で4日間静置培養した。4日後、試験管内の液を1mL採取し、サブロ−デキストロ−ス寒天培地に塗布後、30℃でさらに4日間培養し、4日後のカビの発育を観察した。
【0037】
表1に、サブロ−デキストロ−ス培地の組成、表2〜表5に本発明及び比較用の水溶性金属加工油剤組成物の配合組成を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
表6に本発明及び比較用の、水溶性金属加工油剤組成物を水希釈したク−ラントの防黴効果を評価した。判定は肉眼によりカビの発育が認められないものを−、数点のカビの発育が認められたものを+、培地全体を覆っているものを++とした。
【0044】
【表6】
【0045】
判定結果より、本発明の水溶性金属加工油剤組成物を水希釈したク−ラントが、防黴効果について、比較用の組成物を水希釈したク−ラントよりも著しく優れていることは、明白である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の水溶性金属加工油剤用防黴剤を含有する水溶性金属加工油剤組成物は、それを水希釈したク−ラントを、金属加工において使用する場合に、カビの繁茂を顕著に抑制することができ、ノズル詰まりによる生産性の低下を、効果的に防止できるので、金属加工産業及びその関連産業上、極めて有効に利用できる。
【要約】
【課題】ク−ラントにおけるカビの繁茂を抑制できる水溶性金属加工油剤用防黴剤とそれを含有する水溶性金属加工油剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A)N−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンおよび(B)N−ベンジルエタノ−ルアミン、N−エチルエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、2−((1−メチルプロピル)アミノ)エタノ−ル、N−メチルヘキシルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、3,3−イミノビス(プロピルアミン)、ビス(2(ジメチルアミノ)エチル)エ−テル、N,N−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル、シクロヘキシルアミンエチレンオキサイド付加物、メタキシレンジアミンエチレンオキサイド付加物、メタキシレンジアミンプロピレンオキサイド付加物からなる群から選択される少なくとも1種を含有する水溶性金属加工油剤用防黴剤、それを含有する水溶性金属加工油剤組成物。
【選択図】なし