特許第6472015号(P6472015)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472015
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】移動式燻蒸車
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/00 20060101AFI20190207BHJP
   A01M 13/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   B60P3/00 Z
   A01M13/00
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-181183(P2014-181183)
(22)【出願日】2014年9月5日
(65)【公開番号】特開2016-55670(P2016-55670A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】514226497
【氏名又は名称】三共アメニテクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174791
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 敬義
(72)【発明者】
【氏名】隈元 高正
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−542117(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第2430158(GB,A)
【文献】 特開2009−143444(JP,A)
【文献】 特開平9−249288(JP,A)
【文献】 実開昭49−90524(JP,U)
【文献】 特開平3−79478(JP,A)
【文献】 特開2002−276360(JP,A)
【文献】 特開2003−193722(JP,A)
【文献】 米国特許第6513282(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 17/00,13/00,
B60P 1/00, 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象試料を搬入するための開口部を有し,前記開口部を閉じることによって内部を密閉状態に保持することが可能な燻蒸庫と,
前記燻蒸庫が内部に設置され,着脱可能な排気管を備えた車両コンテナと,
前記燻蒸庫内のガス濃度を計測するガス濃度計測機構と,
を備えた少なくとも文化財の燻蒸を可能とするための移動式燻蒸車であって,
前記車両コンテナと車両は一体となって構成されており,
前記開口部には,1つの縁部を回転軸として開閉する扉が設けられているとともに,前記扉の開閉には油圧ロック方式が採用されており,指紋認証により開閉が解除されるセキュリティ機構を備え,
前記燻蒸庫内は,温度を管理する温度管理機構を備え,燻蒸庫内の温度の計測が,燻蒸庫内に設けられた温度センサによって行なわれるとともに,燻蒸庫内の温度の調節が,前記車両コンテナに備えられたエアーコンディショナによって行なわれ,
前記燻蒸庫内において,さらにガス吐出管,ガス吐出口,ガス排出口,ガス吸着器を備え,ガス吐出管には複数のガス吐出口が設けられるとともに,ガス排出口を通して排出される燻蒸ガスがガス吸着器を通して排出され,前記排気管に連結されていること,
を特徴とする少なくとも文化財の燻蒸を可能とするための移動式燻蒸車。
【請求項2】
前記燻蒸庫内に,折り畳み棚をさらに備える請求項1に記載の少なくとも文化財の燻蒸を可能とするための移動式燻蒸車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ガス燻蒸を行なうことが可能な燻蒸庫を備えた移動式燻蒸車に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス燻蒸とは,対象試料を,薬剤を含むガスで充満させた密閉空間内に一定時間置き,当該対象試料の殺虫や殺卵,殺菌などを行なう技術である。
【0003】
ガス燻蒸は,文化財や歴史的資料(以下「文化財等」という)の殺虫・殺菌等を目的として行なわれてきた。
すなわち,文化財等は,希少性が高く,代替性を有しないことが通常である。そのため,文化財等そのものが変質することがないよう,長期間に渡り,安全に保存・保護する必要がある。しかしながら,文化財等は,経年劣化のみならず,その環境によっては,カビや害虫等により変質していくおそれがある。特に,文化財等の展示を専門とし,比較的近時に建設された博物館などでもない限り,文化財等が置かれている場所は,古い建築物が多い。そのため,現代建築物と比較すると,温度や湿度の管理を効果的に行なえるわけではなく,カビや害虫等の発生を十分に防止できる環境とはいえない。このような,カビや害虫等による文化財等の劣化を防止することを目的として,ガス燻蒸が用いられ,種々の技術が提案されている(特許文献1から4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000―212006号公報
【特許文献2】特開2004―067686号公報
【特許文献3】特開2004―329140号公報
【特許文献4】特開2005―073659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1等には,文化財等についてガス燻蒸を行なう技術が開示されている。特許文献1等を含む従来技術は,文化財等が置かれている建屋の密閉処理を行なって,当該文化財等のガス燻蒸を行なうものがほとんどであり,一部には,建屋近傍にテントのような一時的な仮施設を建築し,その中でガス燻蒸を行なうものもある。
いずれにせよ,これら従来技術は,建屋の密閉処理や仮施設の建築など,手間と時間がかかる点において課題を有するものである。
【0006】
上記事情を背景として,本発明では,従来技術とは異なり,簡便かつ安全にガス燻蒸を行ない得る技術の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は,鋭意研究の結果,ガス燻蒸を行なうことが可能な燻蒸庫を備えた車両の開発に想到し,さらに,効果的なガス燻蒸を達成すべく,燻蒸庫内の温度管理が可能な移動式燻蒸車の発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明に係る移動式燻蒸車は,以下の構成からなる。
本発明の第一の構成は,文化財等の対象試料を搬入するための開口部を有し,前記開口部を閉じることによって内部を密閉状態に保持することが可能な燻蒸庫と,前記燻蒸庫が内部に設置された車両コンテナと,を備えたことを特徴とする移動式燻蒸車である。
【0009】
本発明の第二の構成は,前記燻蒸庫内の温度を管理する温度管理機構をさらに備えたことを特徴とする第一の構成に記載の移動式燻蒸車である。
本発明の第三の構成は,前記温度管理機構において,前記燻蒸庫内の温度の計測が,前記燻蒸庫内に設けられた温度センサによって行なわれることを特徴とする第二の構成に記載の移動式燻蒸車である。
本発明の第四の構成は,前記温度管理機構において,前記燻蒸庫内の温度の調節が,前記車両コンテナに備えられたエアーコンディショナによって行なわれることを特徴とする第二又は第三の構成に記載の移動式燻蒸車である。
【0010】
本発明の第五の構成は,前記燻蒸庫内に,ガス吐出口とガス排出口を有することを特徴とする第一から第四の構成に記載の移動式燻蒸車である。
本発明の第六の構成は,前記燻蒸庫内に,ガス吐出管が設置され,前記ガス吐出管に複数の前記ガス吐出口が設けられていることを特徴とする第五の構成に記載の移動式燻蒸車である。
本発明の第七の構成は,ガス吸着器をさらに備え,前記ガス排出口を通して排出される燻蒸ガスが,前記ガス吸着器を通して排出されることを特徴とする第五又は第六の構成に記載の移動式燻蒸車である。
本発明の第八の構成は,前記燻蒸庫内のガス濃度を計測するガス濃度計測機構をさらに備えたことを特徴とする第一から第七の構成に記載の移動式燻蒸車である。
【0011】
本発明の第九の構成は,前記燻蒸庫内に,折り畳み棚をさらに備えたことを特徴とする第一から第八の構成に記載の移動式燻蒸車である。
本発明の第十の構成は,前記車両コンテナに着脱可能な排気管をさらに備えたことを特徴とする第一から第九の構成に記載の移動式燻蒸車である。
本発明の第十一の構成は,セキュリティ機構をさらに備えたことを特徴とする第一から第十の構成に記載の移動式燻蒸車である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により,従来技術とは異なり,簡便かつ安全にガス燻蒸を行ない得る技術の提供が可能となった。
すなわち,本発明の移動式燻蒸車によれば,文化財等を燻蒸庫に入れてガス燻蒸を行なうことが可能であり,建屋の密閉作業や仮施設の建築等を行なう必要がないため,燻蒸作業にかかる手間や時間を節約することができる。加えて,専用の燻蒸庫を用いてガス燻蒸を行なうことができることから,ガスが漏洩等する可能性がほとんどなく,安全性を飛躍的に向上させることが可能となる。さらに,温度管理を行ないながらガス燻蒸を行なうことができる構成を備えることにより,温度が低下してガス燻蒸の効率が落ちる冬場でも,温度を一定温度以上に保ちながら,効果的なガス燻蒸を行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の移動式燻蒸車の外観の一例を示す写真画像
図2】本発明の移動式燻蒸車における,折り畳み棚を開いた場合の燻蒸庫内の様子を示す写真画像
図3】本発明の移動式燻蒸車における,折り畳み棚を畳んだ場合の燻蒸庫内の様子を示す写真画像
図4】本発明の移動式燻蒸車における,着脱式の排気管を車両コンテナに取り付けた状態を示す写真画像
図5】本発明の移動式燻蒸車におけるセキュリティ機構(指紋認証)の構成を示す写真画像
図6】本発明の一実施の形態における移動式燻蒸車の構成要素である車両コンテナの内部構造を示す図((a)は平面断面図,(b)は側面断面図)
図7図7(a)は,図6(b)のA−A線矢視断面図,図7(b)は,図6(b)のB−B線矢視断面図
図8図8(a)は,図6(b)の矢印Cの方向から見た背面図,図8(b)は,図8(a)のD−D線矢視断面図
図9図6(b)のE−E線矢視断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,好適な実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し,下記の実施の形態は本発明を具現化した例に過ぎず,本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
[移動式燻蒸車の概要]
本発明の移動式燻蒸車は,燻蒸庫と車両コンテナを必須の構成要素として備える車両である。
【0016】
車両は,車両コンテナを搭載し得る限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものを採用することができる。車両として,例えば,図1に示すようなトラックが挙げられる。また,車両コンテナは,車両と一体に構成されていてもよく,車両と分離可能に構成されていてもよい。
車両は,トラックであることが好ましい。この好ましい構成によれば,耐荷重性が大きくなるため,比較的大きい燻蒸庫やこれに関連する機器等を多く積載することが可能となる。その結果,移動式燻蒸車の性能を向上させることができるという効果が得られる。
【0017】
燻蒸庫は,文化財等をガス燻蒸する部位であり,文化財等を搬入するための開口部ならびに文化財等を置くための内部スペースを必須の構成要素とする。
開口部は,文化財等を燻蒸庫内に搬入することが可能であり,かつ,閉じることによって燻蒸庫の内部を密閉状態に保持することが可能である限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものを採用することができる。典型的には,開口部は扉のような構成を採用すればよく,開閉には油圧ロック方式を採用することができる。
【0018】
本発明においては,燻蒸庫内に,折り畳み棚をさらに備えていることが好ましい。この好ましい構成によれば,文化財等を置くことができる面積を確保することが可能になるとともに,大きな文化財等の場合には,折り畳み棚を畳んで内部スペースの容量を大きく確保することが可能となる。その結果,対応できる文化財等が増えるとともに,多くの文化財等を一度にガス燻蒸することができるという効果が得られる。
図2に,折り畳み棚を開いた場合の燻蒸庫内の様子を,図3に,折り畳み棚を畳んだ場合の燻蒸庫内の様子を示す。図2に示すように,折り畳み棚が開かれた場合には,燻蒸庫の床面のみならず,棚自体にも文化財等を置くことが可能であり,例えば,本などの文化財等の場合に,折り畳み棚を開いた状態でガス燻蒸を行なえば,多くの文化財等のガス燻蒸を行なうことができる。また,図3に示すように,折り畳み棚が畳まれた場合には,比較的大きな文化財等を置くことが可能であり,例えば,比較的大きめの木製の像などのガス燻蒸を行なうことができる。
【0019】
本発明においては,燻蒸庫内の温度を管理する温度管理機構をさらに備えていることが好ましい。この好ましい構成によれば,燻蒸庫内の温度管理を行ない,一定温度以上の温度を確保することにより,温度が低下してガス燻蒸の効率が落ちる冬場でも,効果的なガス燻蒸を行なうことできるという効果が得られる。
温度管理機構としては,燻蒸庫内の温度を計測する温度計測機構,ならびに,燻蒸庫内の温度を調節する温度調節機構が必要である。
温度計測機構は,燻蒸庫内の温度を計測し得る限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものを採用することができる。温度計測機構としては,例えば,温度センサを燻蒸庫内に設けるなどすればよい。
温度調節機構は,燻蒸庫内の温度を調節し得る限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものを採用することができる。温度調節機構としては,例えば,熱伝導方式や水循環方式の温度調節機構,あるいは,エアーコンディショナなどが挙げられる。
温度調節機構としては,エアーコンディショナを採用することが好ましい。エアーコンディショナを車両コンテナに備えることにより,簡易かつ効果的に燻蒸庫内の温度を調節することができ,移動式燻蒸車の構成を簡易かつ経済的なものにすることができるという効果が得られる。
通常,冬場のガス燻蒸では,その温度が20℃未満となってしまうため,48時間のガス燻蒸が必要であるが,本発明の移動式燻蒸車を用いれば,温度管理機構により燻蒸庫内を20℃以上に保つことが可能となる。そのため,本発明の移動式燻蒸車を用いて燻蒸庫内の温度を20℃以上に保つことにより,24時間のガス燻蒸を行なえば,十分な燻蒸効果を得ることができる。その結果,温度管理が行えない燻蒸方法と比較して,特に冬場において,ガス燻蒸時間を短縮することができるという効果が得られる。
【0020】
本発明においては,燻蒸庫内に,ガス吐出口とガス排出口を有することが好ましい。この好ましい構成によれば,これらガス吐出口とガス排出口を開閉することにより,燻蒸ガスを容易に燻蒸庫内に流入させることが可能となるため,移動式燻蒸車の安全性を向上させることができるという効果が得られる。
【0021】
ガス吐出口は,燻蒸庫内への燻蒸ガスの吐出が可能である限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものを採用することができる。ガス吐出口については,燻蒸庫内に設置されたガス吐出管に複数のガス吐出口を設ける構成とすることが好ましい。この好ましい構成によれば,燻蒸庫内の隅々まで燻蒸ガスが行き渡りやすくなり,燻蒸効果を高めることができるという効果が得られる。
【0022】
ガス排出口は,燻蒸庫外への燻蒸ガスの排出が可能である限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものを採用することができる。
ガス排出口については,ガス排出口を通して排出された燻蒸ガスが管を通り,ガス吸着器を通過して,排気される構成とすることが好ましい。この好ましい構成によれば,燻蒸ガスをガス吸着器に吸着させ,所定濃度以下にして車両コンテナの外部に排出することが可能となり,移動式燻蒸車の安全性を向上させることができるという効果が得られる。
かかる場合,車両コンテナに着脱可能な排気管をさらに備えた構成とすることが好ましい。この好ましい構成によれば,排出される所定濃度以下の燻蒸ガスを,効果的に拡散しながら排出することが可能となり,移動式燻蒸車の安全性を高めることができるという効果が得られる。加えて,移動式燻蒸車が移動する際には,排気管を取り外すことにより,走行における高さ制限などの問題も回避することが可能となる。
図4に,着脱式の排気管を車両コンテナに取り付けた状態を示す。この着脱式の排気管により,処理後の燻蒸ガスが外気中に廃棄される。廃棄された燻蒸ガスは,所定濃度以下で排出されるため,安全性に問題はなく,また,分解され無毒化される。
【0023】
本発明においては,燻蒸庫内のガス濃度を計測するガス濃度計測機構をさらに備えていることが好ましい。この好ましい構成によれば,燻蒸庫内の燻蒸ガスのガス濃度の確認を行ないながら燻蒸作業を行なうことが可能となり,燻蒸作業を効果的かつ確実に行なうことができるという効果が得られる。
ガス濃度計測機構は,燻蒸庫内のガス濃度の計測が可能である限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものを採用することができる。ガス濃度計測機構としては,例えば,燻蒸庫内のガスをサンプリングできるサンプリングポートなどが挙げられる。
【0024】
車両コンテナは,その内部に燻蒸庫やこれに関連する機器等を備える役割を有する。車両コンテナは,これらの役割を果たし得る限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものを採用することができる。
【0025】
本発明の移動式燻蒸車においては,ガス燻蒸に関連する一連の機器操作を行うに際し,セキュリティ機構を備えることが好ましい。文化財等は非常に高額なものも多いため,このセキュリティ機構を備えることにより,文化財等の盗難を防止することができるという効果が得られる。セキュリティ機構としては,種々の構成のものを採用することができ,例えば,図5に示すような,指紋認証によるセキュリティ機構が挙げられる。
【0026】
[実施の形態]
本発明の一実施の形態における移動式燻蒸車の構成について,図6から図9を参照しながら説明する。
【0027】
図6は,本発明の一実施の形態における移動式燻蒸車の構成要素である車両コンテナの内部構造を示す図((a)は平面断面図,(b)は側面断面図),図7(a)は,図6(b)のA−A線矢視断面図,図7(b)は,図6(b)のB−B線矢視断面図,図8(a)は,図6(b)の矢印Cの方向から見た背面図,図8(b)は,図8(a)のD−D線矢視断面図,図9は,図6(b)のE−E線矢視断面図である。
【0028】
図6図8に示すように,本実施の形態の移動式燻蒸車は,文化財等の対象試料を搬入するための開口部1を有し,当該開口部1を閉じることによって内部を密閉状態に保持することが可能な燻蒸庫(燻蒸処理空間)2と,車両(トラック)と一体に構成され,燻蒸庫2が内部に設置された車両コンテナ3と,を備えている。ここで,開口部1は,燻蒸庫2の背面に設けられており,扉4によって開閉することができるようになっている。
扉4の開閉には油圧ロック方式が採用されている。
図8に示すように,扉4の右側縁部は,複数の多軸蝶番5を介して燻蒸庫2の開口部1の外縁に連結されており,扉4の左側縁部には,当該扉4を閉じた状態でロックするためのロックハンドル6が設けられている。これにより,扉4を閉じて,燻蒸庫2の内部を密閉状態に保持することができるようになっている。
また,扉4の外面の,右側縁部を除く3つの縁部には,縁線と直角な状態で複数の油圧シリンダ7が固着されており,燻蒸庫2の開口部1の外縁には,各油圧シリンダ7に対応させて複数のローラ8aが設けられている。ここで,ローラ8aは,燻蒸庫2の開口部1の外縁に固着された水平部材8bの先端に回動可能に軸支されている。また,油圧シリンダ7は,ピストンロッド7aと,当該ピストンロッド7aの先端に設けられ,ローラ8aの燻蒸庫2側の周面に接触可能な係合部材7bと,を備えており,係合部材7bの,燻蒸庫2側と反対側の面は,斜に形成されている。このため,油圧シリンダ7のピストンロッド7aが伸びる際に,係合部材7bがローラ8aの燻蒸庫2側の周面に接触して扉4が押され,これにより,扉4の密閉度が上がるようになっている。なお,図8(b)中,参照符号9はパッキンを示している。
【0029】
図6図7図9に示すように,燻蒸庫2の,前側(操作室15側)の内壁面(燻蒸庫2内)には,温度センサ10が設けられており,これにより,燻蒸庫2内の温度を計測することができるようになっている。また,車両コンテナ3には,エアーコンディショナ11が備えられており,これにより,燻蒸庫2内の温度を調節することができるようになっている。そして,温度センサ10とエアーコンディショナ11を用いて燻蒸庫2内の温度管理を行ない,一定温度以上の温度を確保することにより,温度が低下してガス燻蒸の効率が落ちる冬場でも,効果的なガス燻蒸を行なうことが可能となる。
なお,図7(b)中,参照符号32は配電盤を示しており,当該配電盤32には,温度センサ10による監視のための計器やエアーコンディショナ11を制御するためのスイッチ等が設けられている。また,参照符号33は充電器を示している。
【0030】
図6図7図9に示すように,燻蒸庫2内の上部には,ガス吐出管12が設置されており,当該ガス吐出管12には複数のガス吐出口が設けられている。
車両コンテナ3の前部には,バイケーン(登録商標;フッ化スルフリル)を封入したバイケーンタンク20が設置されており,当該バイケーンタンク20は,バイケーン吸入ポート21を介してガス吐出管12に接続されている。また,車両コンテナ3の前部には,エキヒューム(登録商標;酸化エチレン+フロンガス)を封入したエキヒュームタンク22が設置されており,当該エキヒュームタンク22は,気化器23を介してガス吐出管12に接続されている。
また,燻蒸庫2内には,ガス排出管13a,13bが設置されており,当該ガス排出管13a,13bは,それぞれ排気吸込み口14a,14bを有している。
ガス排出管13aは,操作室15に設けられたブロワファン16を介して,車両コンテナ3の天井の排気出口17まで延びている。また,ガス排出管13bは,操作室15に設けられたガス吸着器24とブロワファン18を介して,車両コンテナ3の天井の排気出口19まで延びている。排気出口17,19には,着脱式の排気管を取り付けることができる。なお,図6(a),図7(a)中,参照符号29はブロワファン16に対応する吸気口を示し,参照符号30はブロワファン18に対応する吸気口を示している。
本実施の形態の移動式燻蒸車によれば,以上の構成を備えることにより,燻蒸ガスを容易に燻蒸庫2内に流入させることが可能となるので,移動式燻蒸車の安全性を向上させることができる。また,燻蒸ガスをガス吸着器24に吸着させ,所定濃度以下にして車両コンテナ3の外部に排出することが可能となるため,移動式燻蒸車の安全性をさらに向上させることができる。
【0031】
図7(a)に示すように,燻蒸庫2の,前側(操作室15側)の壁面には,上中下の3つのガス濃度サンプリングポート25a,25b,25cが設けられている。そして,燻蒸庫2内の燻蒸ガスを,操作室15側から当該ガス濃度サンプリングポート25a,25b,25cを通してサンプリングすることにより,燻蒸庫2内のガス濃度を計測することができるようになっている。
また,燻蒸庫2の,前側(操作室15側)の壁面には,圧力センサ27が設けられている。そして,当該圧力センサ27により,燻蒸庫2内のガスの圧力を計測することができるようになっている。なお,図7(a)中,参照符号28は圧力センサ接続ポートを示している。
本実施の形態の移動式燻蒸車によれば,以上の構成を備えることにより,燻蒸庫2内の燻蒸ガスのガス濃度と圧力の確認を行ないながら燻蒸作業を行なうことが可能となり,燻蒸作業を効果的かつ確実に行なうことができる。ただし,圧力センサ27は必ずしも必要でなく,燻蒸庫2内の燻蒸ガスのガス濃度の確認を行ないながら燻蒸作業を行なうだけであってもよい。
【0032】
図6図9に示すように,燻蒸庫2内には,左右の側壁に複数の折り畳み棚26が設けられている。また,燻蒸庫2の床面2aは,すのこ敷きとなっている。
本実施の形態の移動式燻蒸車によれば,以上の構成を備えることにより,文化財等を置くことができる面積を確保することが可能になるとともに,大きな文化財等の場合には,折り畳み棚26を畳んで内部スペースの容量を大きく確保することが可能となる。その結果,対応できる文化財等が増えるとともに,多くの文化財等を一度にガス燻蒸することができる。
なお,図6(a)中,参照符号31はLED照明を示している。また,図9中,参照符号34はケーブル出口を示している。
【符号の説明】
【0033】
1 開口部
2 燻蒸庫(燻蒸処理空間)
3 車両コンテナ
4 扉
10 温度センサ
11 エアーコンディショナ
12 ガス吐出管
13a,13b ガス排出管
14a,14b 排気吸込み口
24 ガス吸着器
25a,25b,25c ガス濃度サンプリングポート
26 折り畳み棚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9