(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472028
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】避難誘導システム
(51)【国際特許分類】
G08B 23/00 20060101AFI20190207BHJP
G08B 27/00 20060101ALI20190207BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20190207BHJP
G08B 5/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
G08B23/00 530C
G08B27/00 C
G08B17/00 F
G08B5/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-182529(P2015-182529)
(22)【出願日】2015年9月16日
(65)【公開番号】特開2017-58899(P2017-58899A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2017年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001074
【氏名又は名称】クロイ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 浩一郎
【審査官】
加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−352337(JP,A)
【文献】
特開昭55−097690(JP,A)
【文献】
特開昭60−093588(JP,A)
【文献】
特開2015−056138(JP,A)
【文献】
特開2003−009397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 23/00
G08B 5/00
G08B 17/00
G08B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災検知信号の受信時に移報信号を出力する自動火災報知設備と、
前記自動火災報知設備に接続され、前記移報信号を受信していない時は所定の電圧の点滅停止信号電圧を出力し、前記移報信号の受信時には前記点滅停止信号電圧よりも十分に低い電圧の点滅信号電圧を出力する誘導灯用信号装置と、
前記誘導灯用信号装置に接続され、前記点滅停止信号電圧の受信時には消灯し、前記点滅信号電圧の受信時には点滅発光する点滅装置を含む誘導灯装置と、を備え、
前記自動火災報知設備、前記誘導灯用信号装置及び前記誘導灯装置のそれぞれは、非常時に商用電源のバックアップを行う蓄電池を備え、
前記誘導灯装置は、受信電圧の変化を検出し、該受信電圧が前記点滅停止信号電圧から前記点滅信号電圧に変化したときに、そのときの前記受信電圧の変化が一気に変化していると判断した場合は、前記点滅装置を点滅発光させ、そのときまでの前記受信電圧の変化が前記点滅停止信号電圧から徐々に低下して前記点滅信号電圧に変化していると判断した場合は、前記点滅装置の消灯状態を維持することを特徴とする、避難誘導システム。
【請求項2】
前記誘導灯装置は、
定期的に前記受信電圧の変化の傾きを検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の避難誘導システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火災などの災害発生時に建物内から人を出口に安全に誘導するために用いられる避難誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、非常口の場所や避難経路等を表示する避難誘導システムが広く一般に普及している。このような避難誘導システムでは、常時において、商用電源からAC電源を得るとともに、そのAC電源により蓄電池を充電している。そして、AC電源からの電力供給が受けられない非常時(火災発生時)には、その蓄電池からDC電源をシステムに供給している。
【0003】
避難誘導システムは、一般には、外部からの火災検知信号受信時に火災発生や避難誘導を示す移報信号を出力する自動火災報知設備と、前記自動火災報知設備に接続され、前記移報信号を受信していない時は所定の電圧の点滅停止信号電圧を出力し、前記移報信号の受信時には0V等、点滅停止信号電圧に比して十分に低い電圧の点滅信号電圧を出力する誘導灯用信号装置と、前記誘導灯用信号装置に接続され、前記所定の電圧の点滅停止信号電圧の受信時には消灯し、前記点滅信号電圧の受信時には点滅発光する点滅装置を含む誘導灯装置と、を備えている。
【0004】
上記システムでは、自動火災報知設備と誘導灯用信号装置とは、常時には商用電源で駆動されるが、火災などにより商用電源の供給が停止した非常時には蓄電池で駆動されるようになっている。また、蓄電池は、常時においてトリクル充電されるようになっていて、常に満充電状態にされている。
【0005】
しかし、強制的に商用電源をオフするメンテナンス時などの停電時においては、誘導灯用信号装置は蓄電池で動作をする。そこで、もし停電時間が長くなるなど蓄電池による動作時間が長くなると、蓄電池の電圧が徐々に低下してきて、誘導灯用信号装置の出力電圧も低下する。そして、出力電圧が0V等の点滅信号電圧まで低下すると、誘導灯装置が火災発生と誤判断して点滅発光する。すなわち、火災などが発生していないのに、点滅発光することになる。
【0006】
このような不具合を解決するため、煙感知器連動端子を使用する(特許文献1)システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−352337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記の先行例の構造では、点滅発光を防ぐために事前にスイッチ操作をする必要があるため、意図しない停電発生時には誘導灯装置が点滅発光してしまう。又は、煙感知器連動端子への配線が必要になるため高コストになる問題があった。
【0009】
この発明の目的は、停電時において蓄電池の電圧低下に起因する誘導灯装置の誤点滅動作を自動的に禁止する制御を行うようにして、低コストで特別な操作も不要な避難誘導システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の避難誘導システムは、
火災検知信号の受信時に移報信号を出力する自動火災報知設備と、
前記自動火災報知設備に接続され、前記移報信号を受信していない時は所定の電圧の点滅停止信号電圧を出力し、前記移報信号の受信時には前記点滅停止信号電圧よりも十分に低い電圧の点滅信号電圧を出力する誘導灯用信号装置と、
前記誘導灯用信号装置に接続され、前記点滅停止信号電圧の受信時には消灯し、前記点滅信号電圧の受信時には点滅発光する点滅装置を含む誘導灯装置と、を備え、
前記自動火災報知設備、前記誘導灯用信号装置及び前記誘導灯装置のそれぞれは、非常時に商用電源のバックアップを行う蓄電池を備え、
前記誘導灯装置は、受信電圧の変化を検出し、該受信電圧が前記点滅停止信号電圧から前記点滅信号電圧に
変化したときに、そのときの前記受信電圧の
変化が一気に変化
していると判断した場合は、前記点滅装置を点滅発光させ、
そのときまでの前記受信電圧の変化が前記点滅停止信号電圧から徐々に低下して前記点滅信号電圧に変化
していると判断した場合は、前記点滅装置の消灯状態を維持することを特徴とする。
【0011】
外部からの火災検知信号は、建物の所定の箇所に設置されている火災報知器から発せられる。自動火災報知設備は、上記火災検知信号を一つでも受信すると、火災発生や避難誘導を示す移報信号を誘導灯用信号装置に出力する。誘導灯用信号装置は常時所定の電圧(点滅停止信号電圧)を誘導灯装置に出力しているが、前記移報信号を受信すると点滅停止信号電圧に比して十分に低い電圧(0V等)の点滅信号電圧を誘導灯装置に出力する。
【0012】
誘導灯装置は、0V等の点滅信号電圧を受信すると内蔵の点滅装置を点滅発光させる。
【0013】
ここで、前記誘導灯装置は、受信電圧の変化を常時検出していて、該受信電圧が前記所定の電圧の点滅停止信号電圧から0V等の点滅信号電圧に一気に変化した場合は、火災発生とみなして前記点滅装置を点滅発光させ、該受信電圧が前記点滅停止信号電圧から徐々に低下して0V等の点滅信号電圧に変化した場合は、停電とみなして前記点滅装置の消灯状態を維持する。蓄電池は放電時の電圧が徐々に低下するため、点検時などにおいて、誘導灯用信号装置が蓄電池を電源として作動しているときは、蓄電池の電圧の低下が緩やかである。このため、停電時においては、誘導灯用信号装置の蓄電池の電圧が0V等の点滅信号電圧まで放電しても、停電とみなして前記点滅装置は消灯状態を維持する。
【発明の効果】
【0014】
この発明では、蓄電池の放電特性が徐々に下降することを利用して、誘導灯用信号装置からの出力が0V等の点滅信号電圧になった原因が、火災発生によるものなのか停電によるものなのかを判断するようにしているため、メンテナンス時に誘導灯装置のバックアップ用の蓄電池を外す作業が不要で、また、煙感知器連動端子への配線や、煙感知器連動システムが利用できなくなる問題も発生しない。そして、誘導灯用信号装置の点検作業が容易に行え、また、意図しない停電発生時に、誘導灯装置の誤発光を防ぐことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の実施形態の避難誘導システムのブロック図である。
【
図2】誘導灯用信号装置の出力電圧変化を示す図である。
【
図3】点滅型誘導灯装置5における制御部の点滅有無判定フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、この発明の実施形態の避難誘導システムのブロック図である。
【0017】
火災報知器1は、建物の複数個所に設置されており、いずれかの火災報知器で火災を検知すると火災検知信号を自動火災報知設備2に出力する。自動火災報知設備2は、商用電源から分岐した100Vの防災システム用専用電源3で作動し、火災検知信号を受信すると移報信号(火災発生・避難誘導信号)を誘導灯用信号装置4に出力する。誘導灯用信号装置4は、移報信号を受信すると複数の点滅型誘導灯装置5に点滅信号電圧を出力する。点滅型誘導灯装置5は、内部に点滅装置を備え、点滅信号電圧を受信すると点滅装置を点滅発光させる。点滅信号電圧はこの実施形態では0Vとしている。なお、誘導灯用信号装置4は、移報信号を受信していない時はDC24Vの点滅停止信号電圧を出力し、点滅型誘導灯装置5は、DC24Vの点滅停止信号電圧を受信しているとき点滅装置を消灯状態としている。
【0018】
点滅信号電圧はこの実施形態では0Vとしているが、DC24Vの点滅停止信号電圧に比して十分に低い電圧あれば良い。
【0019】
前記自動火災報知設備2、誘導灯用信号装置4、点滅型誘導灯装置5は、常時は商用電源から分岐した防災システム用専用電源3で作動し、また、これらは内部にトリクル充電されている蓄電池(二次電池)20、40、50を備えていて、停電時にはこの蓄電池で作動するようになっている。
【0020】
誘導灯用信号装置4からの出力は、常時はDC24Vの所定の電圧に設定されており、火災発生時に0Vとなる。この0Vが点滅信号電圧となる。
【0021】
また、誘導灯用信号装置4は、常時は100Vの防災システム用専用電源3で作動し、出力をDC24Vに設定するが、停電時では蓄電池で作動するため、停電時間が長くなるに従ってDC24Vが低下していき、最後には0Vまで低下する。従来では、火災が発生していないにもかかわらず、0V等の点滅信号電圧まで低下すると、点滅型誘導灯装置5は点滅信号と誤判断してしまい、誘導灯を点滅発光させるが、本実施形態では、以下のように作動することで、上記誤判断を避ける。
【0022】
図2は、誘導灯用信号装置4の出力電圧変化を示している。
【0023】
同図(A)は、100Vの防災システム用専用電源3で作動している状態で移報信号を受信したときの変化を示し、同図(B)は、蓄電池で作動している時の誘導灯用信号装置4の出力電圧変化を示している。
【0024】
図2(A)に示すようにタイミングt0で火災検知信号が自動火災報知設備2に入力すると、自動火災報知設備2から誘導灯用信号装置4に移報信号が出力され、誘導灯用信号装置4からの出力電圧は、所定の電圧であるDC24Vから0Vに低下する。これにより、各点滅型誘導灯装置5は点滅発光をする。
【0025】
一方、
図2(B)に示すように、停電が発生すると、誘導灯用信号装置4の蓄電池40の放電特性は一定の時間(例えば20分程度)DC24Vの点滅停止信号電圧を維持するが、その後徐々に低下していく。そして、そのまま停電状態が復帰しないと、DC24Vが点滅信号電圧である0Vとなる。
【0026】
しかし、本実施形態のシステムでは、点滅型誘導灯装置5において、誘導灯用信号装置4からの受信電圧の変化の傾き(dV/dt)を検出し、この傾き(dV/dt)に基づいて0Vになった原因が、火災によるものなのか停電によるものなのかを判定している。すなわち、
図2(A)のように傾き(dV/dt)が大きい場合は、0Vに変化した原因が火災によるものであり、
図2(B)のように傾き(dV/dt)が小さい場合は、0Vに変化した原因が停電によるものだと判定する。そして、前者の場合は、点滅型誘導灯装置5は火災発生と判断して点滅装置を点滅発光させるが、後者の場合は、停電と判断しての消灯状態を維持する。
【0027】
図3は、点滅型誘導灯装置5における制御部の点滅有無判定フローを示す。
【0028】
点滅型誘導灯装置5の制御部は入力電圧Vを監視しており、入力電圧Vが0Vになると、そのときの変化の傾き(dV/dt)、及び0Vになったときまでの傾き(dV/dt)が一定の大きさk以上かどうかを判定する。0Vになったときの傾き(dV/dt)がk以上であれば、0Vになった原因が火災発生と判定して誘導灯を点滅発光させる。また、0Vになったときまでの傾き(dV/dt)がk未満で推移していれば、Vになった原因が停電によるものと判定して、消灯を維持する。
【0029】
このような制御で、停電時に誘導灯が点滅発光するのを防止する。
【符号の説明】
【0030】
1−火災報知器
2−自動火災報知設備
4−誘導灯用信号装置
5−点滅型誘導灯装置