【実施例】
【0014】
図1から
図3を用いて本発明の一実施例に係るグラビア印刷機の詳細を説明する。
【0015】
図1から
図4に示すように、本実施例に係るグラビア印刷機は、グラビア版胴1と、当該グラビア版胴1の周面に対向して設けられたスクレーパー2及びドクターブレード3とを備えている。
【0016】
グラビア版胴1は、凹部としての配線パターンの溝(例えば、幅:約1〜100μm、深さ:約1〜100μm)を形成された図示しないスリーブ型の凹版(グラビア版)を外周に装着しており、フレーム4に回転可能に保持されている。
【0017】
スクレーパー2は、グラビア版胴1の軸方向に沿って長手方向を向けて配設され、その先端部がグラビア版胴1の周面に対して対接離反可能となっている。すなわち、スクレーパー2は、その両端が第一の支持部材21を介して板状をなす第一のレバー22の長手方向一端側に固定されている。第一のレバー22は補助フレーム6に固定された第一の固定軸23に当該第一の固定軸23を支点として揺動自在に支持されているとともに、その長手方向他端側が第一のエアシリンダー24の駆動ロッド24aに揺動可能に連結されている。そのため、第一のエアシリンダー24の駆動ロッド24aの伸縮に伴って第一のレバー22が第一の固定軸23を支点として揺動することにより、第一の支持部材21を介してスクレーパー2の先端部をグラビア版胴1の周面に対して対接離反移動させることが可能となっている。なお、第一のエアシリンダー24の基端部は補助フレーム6に揺動自在に支持されている。
【0018】
なお、スクレーパー2の先端部がグラビア版胴1に近接した近接位置に位置付けられたとき(
図2,3参照)、グラビア版胴1とスクレーパー2との間には必要に応じてインキ5が供給されるようになっており、スクレーパー2は、グラビア版胴1の回転に伴って、先端部が、グラビア版胴1の配線パターンの溝にインキ5を供給(充填)すると同時に、グラビア版胴1の周面にインキ5の膜を形成することができるようになっている。
【0019】
また、ドクターブレード3は、グラビア版胴1の軸方向に沿って長手方向を向けて配設され、その先端部がグラビア版胴1の周面に対して対接離反可能となっている。すなわち、ドクターブレード3は、スクレーパー2と同様に、その両端が第二の支持部材31を介して板状をなす第二のレバー32の長手方向一端側に固定されている。第二のレバー32は補助フレーム6に固定された第二の固定軸33に当該第二の固定軸33を支点として揺動自在に支持されているとともに、その長手方向他端側が第二のエアシリンダー34の駆動ロッド34aに揺動可能に連結されている。そのため、第二のエアシリンダー34の駆動ロッド34aの伸縮に伴って第二のレバー32が第
二の固定軸33を支点として揺動することにより、第二の支持部材31を介してドクターブレード3の先端部をグラビア版胴1の周面に対して対接離反移動させることが可能となっている。なお、第二のエアシリンダー34の基端部は補助フレーム6に揺動自在に支持されている。
【0020】
ここで、第二のレバー32は、対接位置設定手段としての対接位置設定部材35によって、第二のエアシリンダー34の駆動ロッド34a伸長に伴う移動を規制されている。対接位置設定部材35は、板状をなす第三のレバー36に固定されたナット35aとナット35aに螺着され第三のレバー36を貫通するボルト35bとから構成されている。
【0021】
第三のレバー36は補助フレーム6に固定された第三の固定軸37に当該第三の固定軸37を支点として揺動自在に支持されていると共に、その長手方向他端側が第三のエアシリンダー38の駆動ロッド38aに揺動可能に連結されており、第三のエアシリンダー38の駆動ロッド38aの伸縮に伴い、第三のレバー36に固定された対接位置設定部材35が第二のレバー32に対して離反又は接近するように構成されている。第三のエアシリンダー38の基端部は補助フレーム6に揺動自在に支持されている。なお、第二のレバー32には、対接位置設定部材35(より具体的には、ボルト35bの先端)が当接する位置に、当接部材41が設けられている。
【0022】
さらに、第三のレバー36の長手方向他端側にはインキ返し位置設定手段としてのインキ返し位置設定部材39が固定されている。インキ返し位置設定部材39は、第三のレバー36に固定されたナット39aと第三のレバー36を貫通してナット39aに螺着されたボルト39bとから構成されている。このインキ返し位置設定部材39は、ボルト39bの先端が位置決め部材40に当接することで、第三のエアシリンダー38の駆動ロッド38aの収縮に伴う第三のレバー36の移動を規制するようになっている。
【0023】
このように構成されることにより、ドクターブレード3は、対接位置に位置付けられたとき、グラビア版胴1の回転に伴って、先端部が、グラビア版胴1の配線パターンの溝以外の部分に付着したインキ5をグラビア版胴1から掻き取ることができるようになっている。また、インキ返し位置に位値付けられたとき、グラビア版胴1の回転に伴って、先端部に付着したインキを、グラビア版胴1の周面に戻すことができるようになっている。
【0024】
なお、対接位置設定部材35,インキ返し位置設定部材39は、それぞれナット35a,39aに対するボルト35b,39bの位置を変更することにより、ドクターブレード3の先端部をグラビア版胴1の周面に接触させる対接位置,ドクターブレード3の先端部をグラビア版胴1の周面に近接させたインキ返し位置を印刷条件に応じて変更することができるようになっている。
【0025】
すなわち、第三のレバー36から突出するボルト35bの突出量を大きくすれば、ドクターブレード3が対接位置に位置付けられたときのグラビア版胴1の周面からドクターブレード3の先端部までの距離を大きくする、あるいはドクターブレード3のグラビア版胴1に対する押付力を小さくすることができ、第三のレバー36から突出するボルト35bの突出量を小さくすれば、ドクターブレード3が対接位置に位置付けられたときのグラビア版胴1の周面からドクターブレード3の先端部までの距離を小さくする、あるいはドクターブレード3のグラビア版胴1に対する押付力を大きくすることができる。
【0026】
また、第三のレバー36から突出するボルト39bの突出量を大きくすれば、ドクターブレード3がインキ返し位置に位置付けられたときのグラビア版胴1の周面からドクターブレード3の先端部までの距離を小さくすることができ、第三のレバー36から突出するボルト39bの突出量を小さくすれば、ドクターブレード3がインキ返し位置に位置付けられたときのグラビア版胴1の周面からドクターブレード3の先端部までの距離を大きくすることができる。
【0027】
ここで、インキ返し位置におけるドクターブレード3の先端部とグラビア版胴1の周面との距離αは、近接位置におけるスクレーパー2の先端部とグラビア版胴1の周面との距離をβとして、α≧βを満足するように設定されるものとする。また、αとβとの差γ(=α−β)は、インキの特性に応じて設定されるものとする。
【0028】
以下、本実施例に係るグラビア印刷機におけるスクレーパー2及びドクターブレード3の動作について説明する。
【0029】
図1に示すように、印刷運転を開始する前、第一のエアシリンダー24の駆動ロッド24aは伸長した状態となっており、第二のエアシリンダー34の駆動ロッド34aは収縮した状態となっており、第三のエアシリンダー38の駆動ロッド38aは伸長した状態となっている。これにより、スクレーパー2の先端部,ドクターブレード3の先端部はいずれもグラビア版胴1の周面から離反した離脱位置に位置付けられた状態となっている。
【0030】
その後、印刷運転(グラビア版胴1からブランケット胴への転写)が行われる際には、
図2に示すように、第一のエアシリンダー24の駆動ロッド24aが収縮し、第二のエアシリンダー34の駆動ロッド34aが伸長し、第三のエアシリンダー38の駆動ロッド38aは伸長した状態を維持する。これにより、スクレーパー2の先端部がグラビア版胴1の周面に近接する近接位置に位置付けられた状態となり、ドクターブレード3の先端部がグラビア版胴1の周面に接触する対接位置に位置付けられた状態となる。これにより、スクレーパー2においてインキ5が供給されるとともに、ドクターブレード3の先端部によりグラビア版胴1の溝以外の部分に付着したインキ5の掻き取りが行われ、溝に充填されたインキがブランケット胴へ転写される。
【0031】
グラビア版胴1からブランケット胴へ転写が終了すると、ブランケット胴から基材へ転写を行う間および基材の搬送ならびに新しい基材のセット、及びこの基材の見当合わせ等を行う間、インキ返し運転が行われる。このとき、
図3に示すように、第一のエアシリンダー24の駆動ロッド24aが収縮し、第二のエアシリンダー34の駆動ロッド34aは伸長した状態を維持し、第三のエアシリンダー38の駆動ロッド38aが収縮する。これにより、スクレーパー2の先端部がグラビア版胴1の周面に近接した近接位置に位置付けられた状態を維持する一方、ドクターブレード3の先端部はグラビア版胴1の周面から所定距離(例えば、0.1mm〜2mm程度)離反したインキ返し位置に位置付けられ停止した状態となる。
【0032】
これにより、印刷運転時にドクターブレード3によって掻き取られ当該ドクターブレード3の先端部に付着していたインキ5がグラビア版胴1の表面に戻され、グラビア版胴1の周面にインキ5の膜が形成される。なお、本実施例では、スクレーパー2によってもグラビア版胴1の周面にインキ5の膜が形成される。
【0033】
ブランケット胴から基材へ転写および基材の搬送ならびに新しい基材のセット、及びこの基材の見当合わせ等が終了し、再度印刷運転(グラビア版胴1からブランケット胴への転写)を行う場合は、
図2に示し上述したように第一のエアシリンダー24の駆動ロッド24aが収縮した状態、第二のエアシリンダー34の駆動ロッド34aが伸長した状態を維持する一方、第三のエアシリンダー38の駆動ロッド38aが伸長して、スクレーパー2の先端部がグラビア版胴1の周面に近接した近接位置に位置付けられた状態を維持し、ドクターブレード3の先端部がグラビア版胴1の周面に接触する対接位置に位置付けられる。
【0034】
上述した印刷運転(グラビア版胴1からブランケット胴への転写)とインキ返し運転を必要な回数繰り返した後、印刷運転を終了する場合は、
図1に示し上述したように、第一のエアシリンダー24の駆動ロッド24aが伸長し、第二のエアシリンダー34の駆動ロッド34aが収縮し、第三のエアシリンダー38の駆動ロッド38aが伸長する。これにより、スクレーパー2の先端部がグラビア版胴1の周面から離反した離脱位置に位置付けられた状態となり、ドクターブレード3の先端部がグラビア版胴1の周面から離反した離脱位置に位置付けられた状態となって、印刷が終了する。
【0035】
なお、スクレーパー2,ドクターブレード3が離脱位置に位置付けられている際には、当該スクレーパー2,ドクターブレード3の清掃や交換、また、版交換などのメンテナンスが行われる。
【0036】
ここで、本実施例では、第二のレバー32,第二のエアシリンダー34,対接位置設定部材35,第三のレバー36,第三のエアシリンダー38,及び,インキ返し位置設定部材39がドクターブレード支持装置を構成し、第三のレバー36,ボルト35a及びナット35bが対接位置設定手段を構成し、第三のレバー36,ボルト39a及びナット39bがインキ返し位置設定手段を構成する。
【0037】
このように構成される本実施例に係るグラビア印刷機によれば、受理工程以外の工程を行っている間、例えば受理工程が終了した後、ブランケット胴に転写されたインキ5のカメラ読み取り、粘度調整、また、基材の搬送及び基材のセットならびに基材の見当合わせ等を行っている間、グラビア版胴1は待機状態となるが、このような待機状態の間、ドクターブレード3の先端部をインキ返し位置に位置付けることにより、ドクターブレード3の先端部に付着したインキ5をグラビア版胴1の表面に戻し、グラビア版胴1の表面をインキ5の膜により覆うことができるため、版溝に充填されたインキ5の乾燥を防止することができ、これに伴って印刷稼働時に凹版の洗浄を行う頻度を減らすことができるため、印刷物の生産性を向上させることができる。
【0038】
なお、上述した実施例においては、グラビア版胴1に凹部としての配線パターンの溝を形成された凹版が装着された例を示したが、グラビア版胴1の表面(版面)に直接凹部としての溝が形成されていてもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。