【実施例】
【0135】
本発明について、製造例、実施例および比較例、並びに
図2〜
図23に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0136】
[使用薬品]
Noriaは、上述の反応式(1)に基づき、レゾルシノールと1,5−ペンタンジアールとの縮合反応を、エタノール溶液中にて塩酸(東京化成製)の存在下にて、80℃にて、48時間かけて行うことにより合成したものを使用した。
【0137】
メタクリル酸メチル、酢酸エチル、炭酸水素ナトリウム、無水硫酸マグネシウム、塩酸、ヘキサン、アゾイソブチルニトリル(AIBN)、水酸化ナトリウムは市販品(全て東京化成製)をそのまま使用した。
【0138】
トリエチルアミン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)は、市販品(東京化成製)をCaH
2(東京化成製)にて乾燥した後、減圧蒸留により精製した物を使用した。
【0139】
クロロホルム(CHCl
3)、ジクロロメタン(CH
2Cl
2)は市販品(東京化成製)をCaCl
2(東京化成製)にて乾燥した後、常圧蒸留により精製した物を使用した。
【0140】
メタクリロイルクロライド、1,3−ジアミノプロパン、1.6−ジアミノヘキサン、1.12−ジアミノドデカン、メチルメタクリレートは、市販品(全て東京化成製)を使用した。
【0141】
[構造解析]
本実施例において得られた化合物について、以下の示す装置を使用して得られた化合物の構造解析を行った。
【0142】
(i)核磁気共鳴(NMR)スペクトル
本実施例においては、
1H核磁気共鳴装置(日本電子(株)製 JOEL ECS−400K)を用いて、400MHz−NMRスペクトルを測定した。
【0143】
(ii)IRスペクトル
本実施例においては、フーリエ変換近赤外/中赤外/遠赤外分光分析(FT−IR)装置(パーキンエルマージャパン(株)製 Spectrum 100(R))を用いて、IRスペクトルを測定した。
【0144】
(iii)熱重量測定(TGA)
本実施例においては、島津製作所(株)製 TGA−50を用いて、熱重量損失温度測定を行った。前記測定は、窒素雰囲気下にて、アルミニウムパンを使用して、昇温速度30℃/分にて200℃まで加熱した後、昇温速度10℃/分にて450℃まで加熱する測定条件にて行った。
【0145】
[製造例1]
[Noria−MAの合成]
【0146】
【化8】
【0147】
以下、Noriaの水酸基がメタクリロイル基によってエステル化された化合物を「Noria−MA」と称し、その合成について説明する。前記反応式(2)は、Noria−MAの合成法を表している。
【0148】
撹拌子を入れた300mlのナスフラスコに、6.84g(4mmol:官能基当量96mmol)のNoriaを量り取った後、窒素雰囲気下で、トリエチルアミン140mlを加え30分間撹拌した。その後、氷冷下でメタクリロイルクロライド(18.4ml。すなわち192mmol(Noriaの官能基に対し2当量))を加えた後、室温で24時間撹拌し、反応式(2)に示すエステル化反応を終了させた。
【0149】
エステル化反応が終了した後、溶媒をエバポレーターで濃縮した後、酢酸エチルを加えて希釈した。その結果得られた溶液をメンブランで濾過し、塩をろ別した。
【0150】
その後、得られたろ液を、炭酸水素ナトリウム水溶液150mlを用いて1回、1Nの塩酸150mlを用いて1回、脱イオン水を100mlずつ用いて3回洗浄した。なお、前記洗浄は、ろ液と洗浄液(炭酸水素ナトリウム水溶液、塩酸または脱イオン水)とを分液漏斗に加え、撹拌した後、有機層と水層とを分離させ、前記水層を排出することによって行った。
【0151】
次に、得られた有機層を、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、無水硫酸マグネシウムをろ別した後、エバポレーターを用いて濃縮し、酢酸エチルで希釈した。そして、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル)(Rf=0.94)を用いて、Noria−MAを単離した。単離されたNoria−MAについて、溶媒を減圧留去した後、良溶媒であるクロロホルムに溶解させ、得られた溶液に、貧溶媒であるヘキサンを加えることによって、沈殿精製を行った。得られた固体を室温で24時間乾燥し、生成物として白色固体が2.54g(収率20%)にて得られた。得られた白色固体の構造解析を、IRスペクトルおよび400MHzにおける
1HNMRスペクトルを測定することにより行った。その測定結果を
図2および
図3に示し、主要なピーク位置を以下に示す。
IR(KBr,cm
−1):1739(vC=O:エステル)、1494(vC=C:メタクリロイル基)
1NMR(DMSO−d
6,TMS)δ(ppm):0.57〜2.20(m,60H,H
a,H
b,H
f)、3.74〜4.41(m,12H,H
c)、5.55〜6.18(m,48H,Hg,Hg)、6.43〜7.50(m,24H,H
c,H
d)
なお、上に示すH
X(X=a、b、c、d、fまたはg)は、
図3中の構造式におけるH
X(X=a、b、c、d、fまたはg)の位置のプロトンに対応する。
【0152】
(解析結果)
前述のように測定したIRスペクトルには、Noriaにおいて観測されないエステル結合のC=O伸縮振動に起因する1739cm
−1のピークと、メタクリロイル基のC=C伸縮振動に起因する1497cm
−1のピークとが新たに確認された。このことから、Noriaと、メタクリロイルクロライドとの間にエステル化反応が進行し、Noriaのエステル化が進行したことが示唆された。
【0153】
続いて、
1NMRスペクトルにおいて、Noriaの水酸基に起因する9ppm付近のピークが消失したこと、および、Noriaのベンゼン環のプロトンに起因する7ppm付近のピークと、メタクリロイル基のプロトンに起因する5.5〜6.5ppm付近のピークとの積分比から、Noriaの水酸基のうちのエステル化された基の割合を示す導入率(D.I)が99%以上であることが確認された。そのことから、Noriaの水酸基のほぼすべてがエステル化され、Noria−MAが合成されたことが確認された。
【0154】
[製造例2]
[1,3−ビス(メタクリルアミド)プロパン(以下、「DMA3」と称する)の合成]
【0155】
【化9】
【0156】
1,3−ジアミノプロパン2.1g(10mmol)を50mlナスフラスコに量り取り、トリエチルアミン16.5ml(110mmol)を加え1時間撹拌した。その後、メタクリロイルクロライド2.0ml(22mmol)を加え、12時間撹拌し、前記反応式(3)にて示す反応を終了させた。
【0157】
前記反応を終了させた後、得られる反応溶液をクロロホルムにて希釈し、1Nの塩酸を用いて3回、脱イオン水を用いて1回洗浄を行い、有機層を回収した。なお、洗浄は、製造例1と同様の方法にて行った。
【0158】
回収された有機層に無水硫酸マグネシウムを加え脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別した後、エバポレーターにて濃縮し、得られた固体についてクロロホルム、ヘキサンの混合溶媒を用いて再結晶操作を行った。具体的には、混合溶液を冷却することにより結晶を析出させた。再結晶操作の結果、0.62g(収率30%)の白色固体を得た。
【0159】
得られた白色固体のIRスペクトルおよび400MHzにおける
1HNMRスペクトルを測定することによりその構造解析を行った。その測定結果を
図4および
図5に示し、主要なピーク位置を以下に示す。
IR(KBr,cm
−1):1651(vC=O:アミド)、1532(vC=C:メタクリロイル基)
1NMR(DMSO−d
6,TMS)δ(ppm):1.48〜1.62(t,2H,H
f)、1.76〜1.84(s,6H,H
d)、2.96〜3.14(t、4H,H
e)、5.24(s,4H,H
b)、5.61(s,2H,H
c)、7.78〜7.96(t,2H,H
a)
なお、上に示すH
X(X=a〜fの何れか)は、
図5中の構造式におけるH
X(X=a〜fの何れか)の位置のプロトンに対応する。
【0160】
(解析結果)
前述のように測定したIRスペクトルには、アミド結合に起因する1651cm
−1のピーク、およびメタクリロイル基に起因する1532cm
−1のピークが確認された。このことから、DMA3が合成されたことが示唆された。
【0161】
続いて、
1NMRスペクトルにおいて、アミド基結合に起因する8ppmのピークと、メタクリロイル基のプロトンに起因する5〜6ppm付近のピークが確認され、それらの積分比が、上の反応式にて示されたDMA3の構造式から算出される理論値とほぼ一致することが確認された。この結果から、DMA3が合成されたことが確認された。
【0162】
[製造例3]
[1,6−ビス(メタクリルアミド)ヘキサン(以下、「DMA6」と称する)の合成]
【0163】
【化10】
【0164】
1,3−ジアミノプロパン2.1g(10mmol)の代わりに、1.6−ジアミノヘキサン1.16g(10mmol)を使用した以外は、製造例2と同様の操作を行うことにより、0.99g(収率40%)の白色固体を得た。また、得られた白色固体の構造解析を、製造例2と同様に、IRスペクトルおよび400MHzにおける
1HNMRスペクトルを測定することにより行った。その測定結果を
図6および
図7に示し、主要なピーク位置を以下に示す。
IR(KBr,cm
−1):1654(vC=O:アミド)、1541(vC=C:メタクリロイル基)
1NMR(DMSO−d
6,TMS)δ(ppm):1.12〜1.46(m,8H,H
f)、1.70〜1.88(s,6H,H
d)、2.91〜3.13(t、4H,H
e)、5.10(s,2H,H
b)、5.64(s,2H,H
c)、7.66〜7.93(t,2H,H
a)
なお、上に示すH
X(X=a〜fの何れか)は、
図7中の構造式におけるH
X(X=a〜fの何れか)の位置のプロトンに対応する。
【0165】
(解析結果)
前述のように測定したIRスペクトルには、アミド結合に起因する1654cm
−1のピーク、およびメタクリロイル基に起因する1541cm
−1のピークが確認された。このことから、DMA6が合成されたことが示唆された。
【0166】
続いて、
1NMRスペクトルにおいて、アミド基結合に起因する8ppmのピークと、メタクリロイル基のプロトンに起因する5〜6ppm付近のピークが確認され、それらの積分比が、上の反応式にて示されたDMA6の構造式から算出される理論値とほぼ一致することが確認された。この結果から、DMA6が合成されたことが確認された。
【0167】
[製造例4]
[1,12−ビス(メタクリルアミド)ドデカン(以下、「DMA12」と称する)の合成]
【0168】
【化11】
【0169】
1,12−ジアミノドデカン5.0g(25mmol)を300mlナスフラスコに導入し、ジクロロメタン150ml(234mmol)およびトリエチルアミン8.25ml(55mmol)を加え1時間撹拌した。その後、メタクリロイルクロライド5.3ml(55mmol)を加え、12時間撹拌し、反応式(5)にて示す反応を終了させた。
【0170】
前記反応を終了させた後、得られる反応溶液に対して、製造例2と同様にして、洗浄、乾燥剤による脱水、乾燥剤のろ別、濃縮、再結晶の操作を行い、4.6g(収率55%)の白色固体を得た。また、製造例2と同様に、得られた白色固体のIRスペクトルおよび400MHzにおける
1HNMRスペクトルを測定することによりその構造解析を行った。その測定結果を
図8および
図9に示し、主要なピーク位置を以下に示す。
IR(KBr,cm
−1):1651(vC=O:アミド)、1532(vC=C:メタクリロイル基)
1NMR(DMSO−d
6,TMS)δ(ppm):1.12〜1.46(quin,10H,H
g)、1.79(s,6H,H
d)、3.01〜3.09(q、4H,H
f)、5.25(s,2H,H
b)、5.57(s,2H,H
c)、7.83(s,2H,H
a)
なお、上に示すH
X(X=a、b、c、d、fまたはg)は、
図9中の構造式におけるH
X(X=a、b、c、d、fまたはg)の位置のプロトンに対応する。
【0171】
(解析結果)
前述のように測定したIRスペクトルには、アミド結合に起因する1654cm
−1のピーク、およびメタクリロイル基に起因する1532cm
−1のピークが確認された。このことから、1,12−ビス(メタクリルアミド)ドデカン(以下、DMA12と称する)が合成されたことが示唆された。
【0172】
続いて、
1NMRスペクトルにおいて、アミド基結合に起因する8ppmのピークと、メタクリロイル基のプロトンに起因する5〜6ppm付近のピークが確認され、それらの積分比が、上の反応式にて示されたDMA12の構造式から算出される理論値とほぼ一致することが確認された。この結果から、DMA12が合成されたことが確認された。
【0173】
[製造例5〜8]
[Noria−Gel(3)の製造]
製造例5〜8では、Noria−MAと、DMA3とを種々の仕込み比で反応させることにより、Noria骨格を有するゲル構造体(以下、「Noria−Gel(3)」と称する)を製造した。
【0174】
【化12】
【0175】
製造例1にて得られたNoria−MA0.1g(0.03mmol)、アゾビスブチルニトリル(AIBN) 0.0033g(0.02mmol。すなわち、Noria−MAの官能基に対し3.0mol%)および製造例2にて得られたDMA3を種々の仕込み比(Noria−MA:DMA3=1.0/0(製造例5)、1.0/2.4(製造例6)、1.0/12.0(製造例7)、1.0/24.0(製造例8))にて重合管に導入した後、DMF3mlを加えて溶解させた。
【0176】
得られた溶液に対して液体酸素を用いて凍結させた後、油回転式真空ポンプを用いて脱気することにより、凍結脱気を行い、封管した後、60℃にて20時間撹拌し、反応式(6)にて示す反応を終了させた。前記反応終了後、ゲル構造体(Noria−Gel(3))が得られた。
【0177】
得られたNoria−Gel(3)をジエチルエーテルで洗浄し、24時間乾燥させた後、IRスペクトルを測定することにより構造解析を行った。Noria−MA:DMA3=1.0/0、1.0/2.4、1.0/12.0、1.0/24.0と仕込み比を変化させて得た、それぞれのNoria−Gel(3)のIRスペクトルは類似の結果を示した。ここでは、その中の1つとして、Noria−MA:DMA3=1.0/12.0の仕込み比にて得られたNoria−Gel(3)のIRスペクトルを
図10に示し、主要なピーク位置を以下に示す。
IR(KBr,cm
−1):1741,1126(vC=O:エステル)、1660(vC=O:アミド)
また、得られたNoria−Gel(3)の収率は、製造例5が87%であり、製造例6〜8はいずれも>99%であった。
【0178】
(解析結果)
前述のように測定したそれぞれのNoria−Gel(3)のIRスペクトルにおいて、メタクリロイル基に起因する1532cm
−1のピークの消失が観測され、新たに、エステル結合に起因する1741cm
−1のピーク、アミド結合に起因する1660cm
−1のピークが観測された。前記観測結果から、Noria−Gel(3)は、Noria骨格を有する架橋化合物であることが確認された。
【0179】
尚、以下、仕込み比:Noria−MA:DMA3=1.0/0にて得られたゲル構造体をNoria−Gel(3)(A)と称し、同様に、仕込み比:Noria−MA:DMA3=1.0/2.4にて得られたゲル構造体をNoria−Gel(3)(B)、仕込み比:Noria−MA:DMA3=1.0/12.0にて得られたゲル構造体をNoria−Gel(3)(C)、仕込み比:Noria−MA:DMA3=1.0/24.0にて得られたゲル構造体をNoria−Gel(3)(D)と称する。
【0180】
[製造例9〜11]
[Noria−Gel(6)の製造]
製造例9〜11では、Noria−MAと、DMA6とを種々の仕込み比で反応させることにより、Noria骨格を有するゲル構造体(以下、「Noria−Gel(6)」と称する)を製造した。
【0181】
【化13】
【0182】
DMA3の代わりに、製造例3にて得られたDMA6を、種々の仕込み比(Noria−MA:DMA6=1.0/2.4(製造例9)、1.0/12.0(製造例10)、1.0/24.0(製造例11))にて使用する以外は、製造例5〜8と同様にして、Noria−Gel(6)を得た。また、前記Noria−Gel(6)の構造解析を、製造例5〜8と同様に、IRスペクトルを測定することにより行った。製造例5〜8と同様に、種々の仕込み量のDMA6を用いて得た、それぞれのNoria−Gel(6)のIRスペクトルは、類似の結果を示した。ここでは、その中の1つとして、製造例10で得られたNoria−Gel(6)のIRスペクトルを
図11に示し、主要なピーク位置を以下に示す。
IR(KBr,cm
−1):1741,1126(vC=O:エステル)、1660(vC=O:アミド)
また、得られたNoria−Gel(6)の収率は、仕込み比を、製造例9〜11のすべてで>99%であった。
【0183】
(解析結果)
前述のように測定したそれぞれのNoria−Gel(6)のIRスペクトルにおいて、製造例5〜8と同様の位置に、IRスペクトルのピークが存在することが確認された。よって、Noria−Gel(6)は、Noria−Gel(3)と同様に、Noria骨格を有する架橋化合物であることが確認された。
【0184】
尚、以下、仕込み比:Noria−MA:DMA6=1.0/2.4にて得られたゲル構造体をNoria−Gel(6)(A)と称し、同様に、仕込み比:Noria−MA:DMA6=1.0/12.0にて得られたゲル構造体をNoria−Gel(6)(B)、仕込み比:Noria−MA:DMA6=1.0/24.0にて得られたゲル構造体をNoria−Gel(6)(C)と称する。
【0185】
[製造例12〜16]
[Noria−Gel(12)の製造]
製造例12〜16では、Noria−MAと、DMA12とを種々の仕込み比で反応させることにより、Noria骨格を有するゲル構造体(以下、「Noria−Gel(12)」と称する)を製造した。
【0186】
【化14】
【0187】
DMA3の代わりに、製造例4にて得られたDMA12を、種々の仕込み比(Noria−MA:DMA12=1.0/2.4(製造例12)、1.0/4.8(製造例13)、1.0/7.2(製造例14)、1.0/12.0(製造例15)、1.0/24.0(製造例16))にて使用する以外は、製造例5〜8と同様にして、Noria−Gel(12)を得た。
【0188】
また、Noria−Gel(12)の構造解析を、製造例5〜8と同様に、IRスペクトルを測定することにより行った。製造例5〜8と同様に、種々の仕込み量のDMA12を用いて得た、それぞれのNoria−Gel(12)のIRスペクトルは、類似の結果を示した。ここでは、その中の1つとして、製造例15で得られたNoria−Gel(12)のIRスペクトルを
図12に示し、主要なピーク位置を以下に示す。
IR(KBr,cm
−1):1741,1126(vC=O:エステル)、1660(vC=O:アミド)
また、Noria−Gel(12)の収率は、仕込み比が、製造例12〜16のすべてで>99%であった。
【0189】
(解析結果)
前述のように測定したそれぞれのNoria−Gel(12)のIRスペクトルにおいて、において、製造例5〜11と同様の位置に、IRスペクトルのピークが存在することが確認された。よって、Noria−Gel(12)は、Noria−Gel(3)およびNoria−Gel(6)と同様に、Noria骨格を有する架橋化合物であることが確認された。
【0190】
尚、以下、仕込み比:Noria−MA:DMA12=1.0/2.4にて得られたゲル構造体をNoria−Gel(12)(A)と称し、同様に、仕込み比:Noria−MA:DMA12=1.0/4.8にて得られたゲル構造体をNoria−Gel(12)(B)、仕込み比:Noria−MA:DMA12=1.0/7.2にて得られたゲル構造体をNoria−Gel(12)(C)仕込み比:Noria−MA:DMA12=1.0/12.0にて得られたゲル構造体をNoria−Gel(12)(D)、仕込み比:Noria−MA:DMA12=1.0/24.0にて得られたゲル構造体をNoria−Gel(12)(E)と称する。
【0191】
[Noria−GelからNoriaの脱離]
[参考例1]
(Noria−Gel(3)(A)の加水分解による脱コア)
Noria−Gel(3)(A)0.05gを30mlナスフラスコに量り取り、NaOH水溶液(6M)を10ml加えた。その後リフラックス(還流)条件下にて、120℃にて、6時間撹拌し、Noria−Gel(3)(A)に対する加水分解反応を行った。反応終了後、反応物に対して濃塩酸を用いて酸析を行い、メンブラン(アドバンテック社製)で濾過を行った。その結果、水に対して可溶性のポリマーのみが得られた。
【0192】
[参考例2]
(Noria−Gel(3)(B)の加水分解による脱コア)
Noria−Gel(3)(A)の代わりにNoria−Gel(3)(B)を使用した以外は、参考例1と同様の操作を行った。その結果、水に対して可溶性のポリマーのみが得られた。
【0193】
[参考例3]
(Noria−Gel(3)(C)の加水分解による脱コア)
Noria−Gel(3)(A)の代わりにNoria−Gel(3)(C)を使用した以外は、参考例1と同様の操作を行った。その結果、水に対して可溶性のポリマーのみが得られた。
【0194】
[実施例1]
【0195】
【化15】
【0196】
Noria−Gel(3)(A)の代わりにNoria−Gel(3)(D)を使用した以外は、参考例1と同様の条件にて、反応式(9)に示す加水分解を行った。その結果、NaOH水溶液に可溶な部分と、不溶な部分とが得られた。
【0197】
前記可溶な部分と、前記不溶な部分とをメンブランを用いてろ過することにより分離した後、前記不溶な部分に対して濃塩酸を用いて酸析を行った結果、茶色のゲル構造体を得た。前記ゲル構造体を大量の水道水にて洗浄した後、60℃の条件下にて真空乾燥を行い、24時間かけて乾燥させ、IRスペクトルを測定して構造解析を行った。また、前記ゲル構造体の収量は、0.03g(収率60%)であった。前記IRスペクトルの測定結果を
図13に示し、主要なピーク位置を以下に示す。
IR(KBr,cm
−1):1711,1192(vC=O:カルボキシル基)、1630(vC=O:アミド)
一方、前記可溶部分に対して、濃塩酸を用いて酸析を行った結果、茶色固体を得た。前記固体を大量の水道水にて洗浄した後、60℃の条件下にて真空乾燥を行い、24時間かけて乾燥させたものに対して、IRスペクトルおよび
1NMRスペクトルを測定して構造解析を行った。測定結果を
図14および
図15に示す。
【0198】
(解析結果)
前記茶色のゲル構造体のIRスペクトルを、Noria−Gel(3)(D)のIRスペクトルと比較すると、ベンゼン環に起因する1400cm
−1付近のピークおよびエステル結合に起因する1126cm
−1付近のピークの減少、並びに、カルボン酸に起因する1711cm
−1のピークが新たに出現したことが確認された。
【0199】
また、前記茶色固体は、IRスペクトルにおいて、Noriaの水酸基に起因する3392cm
−1のピークおよびNoriaのベンゼン環に起因する1440cm
−1のピークが確認され、
1HNMRスペクトルにおいては、Noriaの水酸基のプロトンに起因する9ppm付近のピークおよびNoriaのベンゼン環のプロトンに起因する6〜7.5ppm付近のピークが確認された。
【0200】
上述の事項から、実施例1においては、NaOH水溶液に可溶な部分はNoriaであること、および、Noria−Gel(3)(D)から、可溶部としてNoria部位が脱離した、空孔を備えたゲル構造体(以下、Gel−MA(Noria)(3)(D)と称する)が得られたことが示唆された。
【0201】
[参考例4]
(Noria−Gel(6)(A)の加水分解による脱コア)
Noria−Gel(3)(A)の代わりにNoria−Gel(6)(A)を使用した以外は、参考例1と同様の操作を行った。その結果、水に対して可溶性のポリマーのみが得られた。
【0202】
[実施例2]
(Noria−Gel(6)(B)の加水分解による脱コア)
【0203】
【化16】
【0204】
Noria−Gel(3)(A)の代わりにNoria−Gel(6)(B)を使用した以外は、参考例1と同様の条件にて、反応式(10)に示す加水分解を行った。その結果、NaOH水溶液に可溶な部分と、不溶な部分とが得られた。
【0205】
前記不溶な部分に対して、実施例1と同様の処理を行った結果、茶色のゲル構造体が得られた。前記ゲル構造体を実施例1と同様の方法にて乾燥させ、IRスペクトルを測定して構造解析を行った。また、前記ゲル構造体の収量は、0.09g(収率18%)であった。前記IRスペクトルの測定結果を
図16に示し、主要なピーク位置を以下に示す。
IR(KBr,cm
−1):1718,1182(vC=O:カルボキシル基),1624(vC=O:アミド)
一方、前記可溶部分に対して、濃塩酸を用いて酸析を行った結果、茶色固体を得た。前記固体についても、実施例1と同様の方法にて、IRスペクトルおよび
1NMRスペクトルを測定し、構造解析を行った。測定結果を
図17および
図18に示す。
【0206】
(解析結果)
前記茶色のゲル構造体のIRスペクトルに関して、Noria−Gel(6)(D)のIRスペクトルと比較すると、実施例1の場合と同様に、ベンゼン環に起因する1400cm
−1付近のピークおよびエステル結合に起因する1126cm
−1付近のピークの減少、並びに、カルボン酸に起因する1718cm
−1のピークが新たに出現したことが確認された。
【0207】
また、前記茶色固体は、IRスペクトルにおいて、Noriaの水酸基に起因する3407cm
−1のピークおよびNoriaのベンゼン環に起因する1436cm
−1のピークが確認され、
1HNMRスペクトルにおいては、Noriaの水酸基のプロトンに起因する9ppm付近のピークおよびNoriaのベンゼン環のプロトンに起因する6〜7.5ppm付近のピークが確認された。
【0208】
上述の事項から、実施例2においては、NaOH水溶液に可溶な部分はNoriaであること、および、Noria−Gel(6)(B)から、可溶部としてNoria部位が脱離した、空孔を備えたゲル構造体(以下、Gel−MA(Noria)(6)(B)と称する)が得られたことが示唆された。
【0209】
[実施例3]
(Noria−Gel(6)(C)の加水分解による脱コア)
Noria−Gel(3)(A)の代わりにNoria−Gel(6)(C)を使用した以外は、参考例1と同様の条件にて、実施例2に記載の反応式(8)に示す加水分解を行った。その結果、NaOH水溶液に可溶な部分と、不溶な部分とが得られた。
【0210】
前記可溶な部分および前記不溶な部分に対して、実施例1と同様の処理を行った結果、前記可溶な部分からは茶色固体が得られ、前記不溶な部分からは茶色のゲル構造体が得られた。前記茶色固体および前記ゲル構造体を実施例1と同様の方法にて乾燥させ、構造解析を行った。また、前記ゲル構造体の収量は、0.25g(収率50%)であった。前記構造解析の結果、前記茶色固体のIRスペクトル、
1HNMRスペクトルによる測定から、実施例2にて得られた茶色固体におけるスペクトルと類似の結果が得られた。また、前記ゲル構造体のIRスペクトルによる測定からも、実施例2にて得られたゲル構造体におけるスペクトルと類似の結果が得られた。
【0211】
(解析結果)
前記茶色固体および前記ゲル構造体のIRスペクトルおよび
1NMRスペクトルは、実施例2にて得られたスペクトルと類似しており、同様の位置にピークが観測された。前記事項から、実施例3において、実施例2と同様に、NaOH水溶液に可溶な部分はNoriaであること、および、Noria−Gel(6)(C)から可溶部としてNoria部位が脱離した、空孔を備えたゲル構造体(以下、Gel−MA(Noria)(6)(C)と称する)が得られたことが示唆された。
【0212】
[参考例5]
(Noria−Gel(12)(A)の加水分解による脱コア)
Noria−Gel(3)(A)の代わりにNoria−Gel(12)(A)を使用したこと、および、反応物に対して、濃塩酸の代わりに1Nの塩酸を用いた以外は、参考例1と同様の操作を行った。その結果、水に対して可溶性のポリマーのみが得られた。
【0213】
[参考例6]
(Noria−Gel(12)(B)の加水分解による脱コア)
Noria−Gel(12)(A)の代わりにNoria−Gel(12)(B)を使用した以外は、参考例5と同様の操作を行った。その結果、水に対して可溶性のポリマーのみが得られた。
【0214】
[実施例4]
(Noria−Gel(12)(D)の加水分解による脱コア)
【0215】
【化17】
【0216】
Noria−Gel(3)(A)の代わりにNoria−Gel(12)(D)を使用した以外は、参考例1と同様の条件にて、反応式(11)に示す加水分解を行った。その結果、NaOH水溶液に可溶な部分と、不溶な部分とが得られた。
【0217】
前記可溶な部分と、前記不溶な部分とをメンブランを用いてろ過することにより分離した後、前記不溶な部分に対して1Nの塩酸を用いて酸析を行った結果、茶色のゲル構造体を得た。前記ゲル構造体を大量の水道水にて洗浄した後、60℃の条件下にて真空乾燥を行い、24時間かけて乾燥させ、IRスペクトルを測定して構造解析を行った。また、前記ゲル構造体の収量は、0.32g(収率64%)であった。前記IRスペクトルの測定結果を
図19に示し、主要なピーク位置を以下に示す。
IR(KBr,cm
−1):1741,1126(vC=O:カルボキシル基)、1660(vC=O:アミド)
一方、前記可溶部分に対して、1Nの塩酸を用いて酸析を行った結果、茶色固体を得た。前記固体を大量の水道水にて洗浄した後、60℃の条件下にて真空乾燥を行い、24時間かけて乾燥させたものに対して、IRスペクトルおよび
1NMRスペクトルを測定した。測定結果を
図20および
図21に示す。
【0218】
(解析結果)
前記茶色のゲル構造体のIRスペクトルに関して、Noria−Gel(12)(D)のIRスペクトルと比較すると、ベンゼン環に起因する1400cm
−1付近のピークおよびエステル結合に起因する1126cm
−1付近のピークの減少、並びに、カルボン酸に起因する1718cm
−1のピークが新たに出現したことが確認された。
【0219】
また、前記茶色固体は、IRスペクトルにおいて、Noriaの水酸基に起因する3407cm
−1のピークおよびNoriaのベンゼン環に起因する1436cm
−1のピークが確認され、
1HNMRスペクトルにおいては、Noriaの水酸基のプロトンに起因する9ppm付近のピークおよびNoriaのベンゼン環のプロトンに起因する6〜7.5ppm付近のピークが確認された。
【0220】
上述の事項から、実施例4において、NaOH水溶液に可溶な部分はNoriaであること、および、Noria−Gel(12)(D)から、可溶部としてNoria部位が脱離した、空孔を備えたゲル構造体(以下、Gel−MA(Noria)(12)(D)と称する)が得られたことが示唆された。
【0221】
[実施例5]
(Noria−Gel(12)(C)の加水分解による脱コア)
Noria−Gel(12)(A)の代わりにNoria−Gel(12)(C)を使用した以外は、参考例1と同様の条件にて、実施例4に記載の反応式(9)に示す加水分解を行った。その結果、NaOH水溶液に可溶な部分と、不溶な部分が得られた。
【0222】
前記可溶な部分および前記不溶な部分に対して、実施例4と同様の処理を行った結果、前記可溶な部分からは茶色固体が得られ、前記不溶な部分からは茶色のゲル構造体が得られた。前記茶色固体および前記ゲル構造体を実施例4と同様の方法にて乾燥させた後、構造解析を行った。また、前記ゲル構造体の収量は、0.185g(収率37%)であった。前記構造解析の結果、前記茶色固体のIRスペクトル、
1HNMRスペクトルによる測定から、実施例4にて得られた茶色固体におけるスペクトルと類似の結果が得られた。また、前記ゲル構造体のIRスペクトによる測定からも、実施例4にて得られたゲル構造体におけるスペクトルと類似の結果が得られた。
【0223】
(解析結果)
前記茶色固体および前記ゲル構造体のIRスペクトルおよび
1NMRスペクトルは、実施例4にて得られたスペクトルと類似しており、同様の位置にピークが観測された。前記事項から、実施例5において、実施例4と同様に、NaOH水溶液に可溶な部分はNoriaであること、および、Noria−Gel(12)(C)から、可溶部としてNoria部位が脱離した、空孔を備えたゲル構造体(以下、Gel−MA(Noria)(12)(C)と称する)が得られたことが示唆された。
【0224】
[実施例6]
(Noria−Gel(12)(E)の加水分解による脱コア)
Noria−Gel(12)(A)の代わりにNoria−Gel(12)(E)を使用した以外は、参考例1と同様の条件にて、実施例4に記載の反応式(9)に示す加水分解を行った。その結果、NaOH水溶液に可溶な部分と、不溶な部分が得られた。
【0225】
前記可溶な部分および前記不溶な部分に対して、実施例4と同様の処理を行った結果、前記可溶な部分からは茶色固体が得られ、前記不溶な部分からは茶色のゲル構造体が得られた。前記茶色固体および前記ゲル構造体を実施例4と同様の方法にて乾燥させた後、構造解析を行った。また、前記ゲル構造体の収量は、0.48g(収率96%)であった。前記構造解析の結果、前記茶色固体のIRスペクトル、
1HNMRスペクトルによる測定から、実施例4にて得られた茶色固体におけるスペクトルと類似の結果が得られた。また、前記ゲル構造体のIRスペクトによる測定からも、実施例4にて得られたゲル構造体におけるスペクトルと類似の結果が得られた。
【0226】
(解析結果)
前記茶色固体および前記ゲル構造体のIRスペクトルおよび
1NMRスペクトルは、実施例4にて得られたスペクトルと類似しており、同様の位置にピークが観測された。前記事項から、実施例5において、実施例4と同様に、NaOH水溶液に可溶な部分はNoriaであること、および、Noria−Gel(12)(E)から、可溶部としてNoria部位が脱離した、空孔を備えたゲル構造体(以下、Gel−MA(Noria)(12)(E)と称する)が得られたことが示唆された。
【0227】
[熱重量損失温度測定]
上の製造例5〜16にて得られたNoria−Gel(X)(X=3、6または12)および実施例1〜6にて得られたGel−MA(Noria)(X)(X=3、6または12)についてTGA測定を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0228】
【表1】
【0229】
表1において「仕込み比」は、NoriaとMMA(X)(X=3、6または12)とのモル比を示す。また、「−」は、Gel−MA(Noria)が得られなかったことを示す。
【0230】
加水分解後にゲル構造体(NaOH水溶液に不溶な部分)が生成する場合、その加水分解後のゲル構造体(Gel−MA(Noria)(X)(X=3、6または12))と、加水分解前のゲル構造体(Noria−Gel(X)(X=3、6または12))とを比較すると、熱分解開始温度が、加水分解後のゲル構造体の方がより低くなっていることが観測された。これは、加水分解によりNoriaが脱離したために、ゲル構造体の耐熱性が低下したためであると考えられる。
【0231】
[比較例1]
実施例においてNoriaを使用したことによる効果を確認するために、Noriaを使用せず、メチルメタクリレートとDMA6とを重合および架橋させて得られた重合体を加水分解することにより、ゲル構造体(以下、Gel(MA)(6)と称する)を製造した。
(Gel(MMA)(6)の合成)
【0232】
【化18】
【0233】
メチルメタクリレートとDMA6とを反応させることにより、ゲル構造体(以下、Gel(MMA)(6)と称する)を製造した。
【0234】
メチルメタクリレート(MMA)を0.1g(1mmol)、AIBNを0.0049g(0.03mmol:MMAのビニル基に対し3.0mol%)、そしてDMA6を0.252g(1mmol)を重合管に導入し、DMF3mlを加えて溶解させた。その結果得られた溶液に対して液体酸素を用いて凍結させた後、油回転式真空ポンプを用いて脱気することにより、凍結脱気を行い、封管した後、60℃にて20時間撹拌し、反応式(12)にて示す反応を終了させた。
【0235】
前記反応終了後、ゲル構造体が得られた。得られたゲル構造体をジエチルエーテルで洗浄し、24時間乾燥させた後、IRスペクトルを測定することにより構造解析を行った。得られたGel(MMA)(6)のIRスペクトルを
図22に示し、主要なピーク位置を以下に示す。
IR(KBr,cm
−1):3421,1668(vC=O:アミド)、1733,1244(vC=O:エステル)
また、得られたGel(MMA)(6)の収量は、1.32g(収率>99%)であった。
【0236】
(解析結果)
前述のように測定されたGel(MMA)(6)のIRスペクトルにおいて、DMA6のアミド結合に起因する3421cm
−1および1668cm
−1のピーク、並びに、MMAのエステル結合に起因する1733cm
−1のピークおよび1244cm
−1のピークが観測された。前記観測結果から、得られたゲル構造体(Gel(MMA)(6))は、MMAとDMA6とからなる架橋性ポリマーであることが確認された。
【0237】
(Gel(MMA)(6)の加水分解)
【0238】
【化19】
【0239】
Gel(MMA)(6)を加水分解することによりゲル構造体(Gel(MA)(6))を製造した。
【0240】
反応式(12)に示す反応によって得られたGel(MMA)(6)0.1gを30mlナスフラスコに量り取り、6MのNaOH水溶液を10ml加えた。その後リフラックス(還流)条件下にて、120℃にて、6時間撹拌し、反応式(13)に示す加水分解反応を終了させた。反応終了後、反応溶液をメンブランにてろ過し、赤茶色の固体を得た。前記固体に対して濃塩酸を用いて酸析を行った。その結果、赤褐色のゲル構造体が得られた。前記ゲル構造体を真空乾燥器内にて60℃の条件下にて24時間かけて乾燥させ、IRスペクトルを測定することにより構造解析を行った。また、得られたGel(MA)(6)の収量は、0.082g(収率80%)であった。得られたGel(MA)(6)のIRスペクトルの結果を
図23に示す。
【0241】
(解析結果)
前記IRスペクトルにおいて、加水分解前(すなわち、Gel(MMA)(6))と比較して、カルボン酸(カルボキシル基)に起因する3400cm
−1付近のピーク強度が増大したことが観測された。前記事項から、反応式(13)に示す加水分解反応が進行し、カルボン酸が形成されたことが示された。すなわち、加水分解の進行と共に、MMAとDMA6との結合が乖離し、カルボン酸が形成されたことが示された。
【0242】
[実施例7〜11]
[アルカリ金属包接能の評価]
(アルカリ金属ピクリン酸塩の生成)
【0243】
【化20】
【0244】
上の反応式(14)にて示される反応によって、下に示すアルカリ金属包接能の評価に使用するアルカリ金属ピクリン酸塩を製造した。
【0245】
脱イオン水25mlを導入した100ml三角フラスコに、ピクリン酸0.3g(1.3mmol)を加えてピクリン酸の飽和溶液を調製し、桐山ロートを用いてろ過し、飽和ピクリン酸水溶液を得た。前記飽和ピクリン酸水溶液にCsOH(1.3mmol/1.5ml)を、pH試験紙で確認しながら、溶液が中性を示すまで加えた。
【0246】
得られた中性溶液を室温にて放置し、塩を析出させ、析出した塩をろ過し、エタノールにて洗浄した後、エーテルにて洗浄し、その後、脱イオン水を用いて再結晶した。
【0247】
その結果、黄色針状結晶であるCsピクリン酸が生成された。また、Csの代わりに、他のアルカリ金属(Na、K、Rb)を用いて、同様の操作を行い、アルカリ金属ピクリン酸塩を生成した。
【0248】
(包接能の評価)
実施例1〜3、5、6にて得られた、ホストのポリマー:Gel−MA(Noria)に対して、ゲスト(ピクリン酸塩)の脱イオン水溶液を2.4×10
−4重量%の濃度となるように加えた後、前記ホストおよび前記ゲストを含む液体から、ゲスト溶液を5mlサンプル管に抽出し、室温(25℃)で24時間撹拌した。またホスト非存在下における対象サンプルとして、2.4×10
−4重量%の濃度に調整したゲスト溶液を用いた。撹拌終了後、得られた水層を石英セルに移しピクリン酸アニオンの吸収極大波長(355nm)における吸光度を測定し、対象サンプルの吸光度と比較し、以下の式に従い、その減少率から包接率(Ex(%))を求めた。
【0249】
包接率の算出方法
Ex(%)=[Abs(Bi)−Abs(Ex)]/[Abs(Bi)]×100
Abs(Bi): ホスト非存在下における抽出操作後の吸光度(波長=355nm)
Abs(Ex): ホスト存在下における抽出操作後の吸光度(波長=355nm)
前記包接能の評価結果を以下の表2に示す。
【0250】
【表2】
【0251】
表2において、「仕込み比」は、NoriaとMMA(X)(X=3、6または12)とのモル比を示す。
【0252】
[比較例2、3]
比較例1にて得られたゲル構造体:Gel(MMA)(6)について、実施例7〜11にてアルカリ金属包接能を評価したのと同様の方法にて、アルカリ金属包接能を評価した(比較例2)。
【0253】
また、製造例11にて得られたゲル構造体:Noria−Gel(6)(C)についても、実施例にてアルカリ金属包接能を評価したのと同様の方法にて、アルカリ金属包接能を評価した(比較例3)。
【0254】
比較例2、3のアルカリ金属包接能の評価結果と、実施例3にて、Noria−Gel(6)(C)を加水分解することにより得られたゲル構造体:Gel−MA(Noria)(6)(C)のアルカリ金属包接能とを比較した。その結果を以下の表3に示す。
【0255】
【表3】
【0256】
表3において「仕込み比」は、Noriaと、MMA(X)(X=3、6または12)とのモル比を示す。また、「−」は、Noriaを使用していないことを示す。
【0257】
(解析結果)
表2から、同一のDMAを用いたゲル構造体同士(Gel−MA(Noria)(6)(B)とGel−MA(Noria)(6)(C)、および、Gel−MA(Noria)(12)(D)とGel−MA(Noria)(12)(E))を比較すると、Noria−MAとDMAとの仕込み比が、1.0:12.0のものよりも、1.0:24.0のものの方が、アルカリ金属の種類に関係なく高い包接率を示すことが分かった。このことから、DMAのメチレン鎖の長さに関わらず、Noria−MAに対するDMAの仕込み量が多い方が、得られるゲル構造体における脱離したNoria部位に由来する空孔を保持するために好ましいことが分かった。
【0258】
また、表2から、Noria−MAとDMAとの仕込み比が1.0:24.0の場合、DMAのメチレン鎖におけるメチレン基の数が6>3>12の順で、すべてのアルカリ金属において高い金属包接率を示し、前記仕込み比が1.0:12.0の場合、メチレン基の数が12の場合よりも6の場合の方が高い金属包接能を示すことが分かった。
【0259】
DMA12を用いたゲル構造体では、仕込み比がNoria−MA:DMA=1.0:24.0のものであっても、Rb
+、Cs
+イオン以外のアルカリ金属に対して包接能を示さなかった。さらに、DMA12を用いたゲル構造体に関して、Gel−MA(Noria)(12)(D)(仕込み比:Noria−MA:DMA=1.0:12.0)はすべての金属において包接能を示さなかった。
【0260】
以上の事項から、メチレン鎖の長さが長過ぎるとゲル構造体の空孔が保持(固定)されにくく、メチレン基の数が6のDMAを使用したものは空孔が保持されている可能性が高いことが示唆された。
【0261】
さらに、表3から、Noriaを使用しないで得られたゲル構造体は、Noriaを使用して得られたゲル構造体と異なり、アルカリ金属に対する包接能をほとんど示さないことが分かった。このことにより、Noriaを用いることによって、得られるゲル構造体内にアルカリ金属を包接し得る空孔を形成できることが分かった。