【実施例】
【0106】
本明細書中以降、一部の実施形態は、実施例および比較実施例によってさらに具体的に説明されるが、実施形態が以下の実施例に限定されることは意図されない。
【0107】
実施例1
一実施形態による二本鎖核酸剤における第2鎖のギャップマー型またはミックスマー型構造の有用性を示すin vivo実験を行った。二本鎖剤の構造および実験結果は、
図7-1および7-2に示される。
【0108】
第1鎖は、ギャップマー様構造を有するRNAベースの相補領域と、部分的にホスホロチオエート化された2'-OMe RNAアンタゴmirである治療用オリゴヌクレオチドとを含んでいた。第1鎖はまた、二本鎖剤を肝臓に送達するため、標的化部分として5'末端位に連結されたトコフェロール基も有していた。第1鎖は、
図7Aおよび7Bに模式的に示される。さらに、対照として、完全に2'-OMe RNAヌクレオチドからなる第1鎖も同様に調製した。RNAヌクレオチドを2'-OMe RNAヌクレオチドと置換することにより、RNAベースの相補領域は、RNアーゼHによる切断に対して抵抗性となることが期待される。
【0109】
第2鎖は、13merのギャップマー型(
図7-1A、7-1C)またはミックスマー型(
図7-1B)のLNA/DNAオリゴヌクレオチドであった。それぞれのヌクレオチド間位はホスホロチオエート化されていた。ギャップマーは、第1鎖配列に対して完全に相補的なDNA塩基の8塩基の中央領域を有していた。ミックスマーは、例示されるとおり、LNA塩基により分離された3塩基、2塩基、および3塩基連続のDNAを有していた。第2鎖は、マウスアポB mRNA(NM_009693)に対して相補的である。
【0110】
第1鎖および第2鎖の配列、組成、および鎖長は以下のとおりであった:
第1鎖
(配列番号1) 31merToc-cRNA-G
5'-Toc-
u*
g*
a*AUACCAAU
g*
c*
uacgcauacgcacca*
c*
c*
a-3'
(配列番号2) 31merToc-2'OMe RNA
5'-Toc-
u*
g*
a*
auaccaaug*
c*
uacgcauacgcacca*
c*
c*
a-3'
第2鎖
(配列番号3) 13merLNA/DNAギャップマー
5'-
G*
C*a*t*t*g*g*t*a*t*
T*
C*
A-3'
(配列番号4) 13merLNA/DNAミックスマー
5'-
G*c*a*t*
T*g*g*
T*a*t*t*
C*
A-3'
大文字/下線:LNA(C = メチルシトシンLNA)
小文字:DNA
大文字:RNA
小文字/下線:2'-O-Me RNA
*:ホスホロチオエートヌクレオチド間結合
【0111】
ノーザンブロット分析において移動標準として使用するための20〜31塩基の範囲のRNAオリゴヌクレオチドも調製した:
(配列番号5) 20mercRNA
5'-GCUACGCAUACGCACCACCA-3'
(配列番号6) 22mercRNA
5'-AUGCUACGCAUACGCACCACCA-3'
(配列番号7) 23mercRNA
5'-AAUGCUACGCAUACGCACCACCA-3'
(配列番号8) 24mercRNA
5'-CAAUGCUACGCAUACGCACCACCA-3'
(配列番号9) 25mercRNA
5'-CCAAUGCUACGCAUACGCACCACCA-3'
(配列番号10) 31mercRNA
5'-UGAAUACCAAUGCUACGCAUACGCACCACCA-3'
(略語は上記のとおり)
【0112】
ノーザンブロッティング分析のためのジゴキシゲニン標識された(DIG)DNAプローブも調製した:
(配列番号11) 28mer3'DIG-DNA
5'-tggtgcgtatgcgtagcagtggtattca-DIG-3'
(略語は上記のとおり)
【0113】
LNA/DNAオリゴヌクレオチドは株式会社ジーンデザイン(Gene Design)(大阪、日本)によって合成され、cRNAは、北海道システム・サイエンス株式会社(Hokkaido System Science)(札幌、日本)によって合成された。DIG DNAプローブは、DIGオリゴヌクレオチド3'末端標識キット、第2世代ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社(Roche Diagnostics)を使用して、DNAオリゴヌクレオチドをジゴキシゲニン-ddUTPで標識することによって調製した。
【0114】
13merLNA/DNAギャップマー(
図7-1A)もしくは13merLNA/DNAミックスマー(
図7-1B)のいずれかを有する31merToc-cRNA-G、または13merLNA/DNAギャップマーを有する31merToc-2'OMe RNAで構成される二本鎖剤を、等モル量の各鎖をリン酸緩衝生理食塩水(シグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich)、セントルイス、ミズーリ州)中で混合し、この溶液を95℃に5分間加熱し、その後37℃に冷却して1時間保持し、これにより核酸鎖をアニールして二本鎖核酸剤を形成することによって調製した。アニールした核酸を、4℃または氷上で保存した。二本鎖剤を、in vivo実験用のPBS溶液として製剤化した。
【0115】
マウスにおける治療用オリゴヌクレオチドの放出のin vivo研究
4〜5週齢の雌の野生型Crlj:CD1(ICR)マウス(オリエンタル酵母工業株式会社(Oriental Yeast)、東京、日本)を、病原体除去動物施設において12時間の明/暗周期で飼育し、食餌と水を自由に摂取させた。二本鎖剤を、6mg/kg/用量の尾静脈注射により、1匹のマウスにそれぞれ1回投与した。対照マウスはPBSの注射を受けた。静脈注射の24時間後、ノーザンブロッティングによる分析のために肝臓を摘出した。肝臓中の全RNAを、ISOGEN IIキット(和光純薬工業株式会社(Wako Pure Chemicals)、大阪、日本)を使用して抽出した。
【0116】
ノーザンブロッティング分析
全RNA(30マイクロg)を、18%ポリアクリルアミド/尿素ゲル上の電気泳動によって分離した。移動標準の配列番号4〜9、さらにまた一本鎖としての第1鎖を、対照として別のレーンに含めた。電気泳動した物質を、Hybond-N
+膜(アマルシャム・バイオサイエンス社(Amersham Biosciences)、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)に転写した。このブロットを、3'-DIG DNAプローブとハイブリダイズさせ、Gene Images装置で可視化した。ギャップマーとミックスマーを比較した結果(
図7-1A対7-1B)は、
図7-2Dに示される。切断可能なRNA-ベースの相補領域を有する第1鎖を含む二本鎖剤を、完全に2'-Oメチル化されたRNA鎖を有する第1鎖を含む二本鎖剤に対して比較した結果(
図7-1A対7-1C)は、
図7-2Eに示される。別々のブロットを、内部対照としてのマウスU6マイクロRNA配列とハイブリダイズさせた(データは示されない)。
【0117】
結果
図7-2Dのブロッティング分析は、それぞれの二本鎖剤におけるToc-cRNA-G第1鎖が、in vivoでより短い長さに切断されたことを示す。プロセッシングされていないToc-cRNA-G対照(レーンM7)と比較して、ギャップマー二本鎖剤(レーン1)は、Toc-cRNA-G第1鎖の、より短い長さへの本質的に完全な変換を明らかにした。同様に、ミックスマー二本鎖剤(レーン2)は、より短い長さのプローブへの有意な変換を示した。第1鎖はいずれの場合も、レーンM1〜M5における対照cRNAの移動距離との比較に基づけば、20〜約26塩基を有するオリゴヌクレオチドにプロセッシングされた。
【0118】
図7-2Eのブロッティング分析は、Toc-cRNA-G鎖(RNAベースの相補領域内にRNAを含む)(レーン1)はより短い断片に切断されたが、完全に2'-Oメチル化された第1鎖(レーン2)は切断されず、それどころかレーンM6およびM7の完全長の31mer対照とほぼ同じ距離を移動したことを示す。
【0119】
図7-2Dのレーン1〜2および
図7-2Eの(レーン2ではなく)レーン1におけるより短い第1鎖断片の出現は、二本鎖剤が、in vivoで肝臓に送達され、二本鎖DNA/RNAヘテロ二本鎖相補領域がRNアーゼHによって認識され、第1鎖が切断されたことを示す。
図7-2Dのレーン1〜2および
図7-2Eのレーン1における幾つかの20mer産物の出現は、恐らくはエキソヌクレアーゼによって、切断された第1鎖の幾つかのさらなるプロセシングが起こり、上記のオリゴヌクレオチドが、ホスホロチオエート結合によって与えられるヌクレアーゼ耐性位置まで削減されたことを示す。
【0120】
実施例2
一実施形態による二本鎖核酸剤によるマイクロRNA発現のin vivo阻害効力を評価する実験を行った。2つの従来の一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド対照を、本二本鎖剤と比較した。ポリヌクレオチド構造は
図8に示される。
【0121】
対照は、miravirsen(登録商標)として公知のLNA/DNAミックスマーantimiRと、コレステロール部分を含む2'-O-メチル化されたRNAアンタゴmirであった。後者は、LNA/DNAギャップマーとアニールし、本実施例において使用される二本鎖剤を形成した。鎖の配列、組成、および鎖長は以下のとおりであった:
第1鎖
(配列番号12) 36merRNA鎖
5'-
a*
c*
aaacaccauugucacacuc*
c*
a*UGAAUACCAAU*
g*
c-3'-コレステロール(chol)
第2鎖
(配列番号13) 13merLNA/DNAギャップマー相補鎖
5'-
G*
C*a*t*t*g*g*t*a*t*
T*
C*
A-3'
一本鎖対照
(配列番号14) antimiR(miR122)
5'-
C*c*
A*t*t*
G*
T*c*a*
C*a*
C*t*
C*
C-3'
(略語は上記のとおり)
【0122】
上記の二本鎖剤を調製するために、LNA/DNA相補鎖と36merRNA鎖とを等モル量で混合し、溶液を95℃で5分間加熱し、その後37℃に冷却して1時間保持し、これにより核酸鎖をアニールして二本鎖核酸剤を形成した。アニールした核酸を4℃または氷上で保存した。
【0123】
In vivo実験
マウスは、体重20〜25gの4〜6週齢の雌のICRマウスであった。マウスを使用する実験は全て、n=3で実施した。核酸剤を、マウスにそれぞれ尾静脈を通じて0.75mg/kgの量で静脈内注射した。さらにまた、陰性対照群として、(核酸剤の代わりに)PBSのみを注射したマウスも作製した。
【0124】
注射の72時間後、PBSをマウスに灌流させ、その後マウスを解剖して肝臓を摘出した。続いて、mRNAを、Isogenキット(株式会社ジーンデザイン)をプロトコルに従って使用して抽出した。cDNAは、SuperScript III(インビトロゲン社(Invitrogen, Inc.))をプロトコルに従って使用して合成した。定量RT-PCRは、TaqMan(ロシュ・アプライドバイオサイエンス社)により実施した。定量RT-PCRにおいて使用したプライマーは、様々な遺伝子数に基づいて、ライフテクノロジーズ社(Life Technologies Corp)によって設計および製造された製品であった。増幅条件(温度および時間)は以下のとおりであった:95℃で15秒、60℃で30秒、および72℃で1秒(1サイクル)を40サイクル繰り返した。このようにして得られた定量RT-PCRの結果に基づいて、マイクロRNA(miR122)の発現量/マイクロRNA(SNO234;内部標準遺伝子)の発現量をそれぞれ計算し、また各群の結果を比較し、さらにt-検定によって評価した。この結果は、
図8の下部のグラフに示される。
【0125】
結果
図8の結果によって示されるとおり、3つの核酸試薬は全て、陰性対照(PBSのみ)と比較して、miR122の発現の阻害を示す。しかし、本発明の一実施形態による二本鎖剤によって得られた阻害度は、一本鎖オリゴヌクレオチドによって得られた阻害度よりも大きく、その差は統計的に有意である。
【0126】
実施例3
In vivoにおけるマイクロRNA阻害に関するキメラ二本鎖核酸剤の有用性を示す実験を行った。具体的には、この実験において使用される核酸の直接標的であるマイクロRNA122(miR122)に対する阻害効果だけでなく、miR122の下流標的であるアルドラーゼA(ALDOA)および分岐鎖ケト酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(BCKDK)mRNAの発現に対する阻害効果も評価した。ALDOAの表現型である総血清コレステロール値および低密度リポタンパク質(LDL)値もまた評価した。miR122を阻害する既知の一本鎖核酸剤を対照として使用し、さらにこの対照核酸剤を、既知の一本鎖核酸が導入されたヘテロ二本鎖核酸と比較した。核酸構造は
図9に示される。LNA/DNAミックスマーantimiR(miravirsen(登録商標))を陽性対照として使用した。PBSを投与した群を陰性対照として使用した。鎖の配列、組成、および鎖長は以下のとおりであった:
第1鎖
(配列番号15) 28merRNA鎖
5'-
C*c*
A*t*t*
G*
T*c*a*
C*a*
C*t*
C*
CGCGAUACCAAU*
c*
g-3'
第2鎖
(配列番号16) 13merLNA/DNAギャップマー相補鎖
5'-
C*
G*a*t*t*g*g*t*a*t*
C*
G*
C-3'
一本鎖対照
(配列番号14) antimiR(miR122)
5'-
C*c*
A*t*t*
G*
T*c*a*
C*a*
C*t*
C*
C-3'
(略語は上記のとおり)
【0127】
二本鎖剤を、実施例1および2のとおりに調製した。すなわち、LNA/DNA相補鎖とRNA鎖とを等モル量で混合し、溶液を95℃で5分間加熱し、その後37℃に冷却して1時間保持し、これにより核酸鎖をアニールして二本鎖核酸剤を形成した。アニールした核酸を4℃または氷上で保存した。
【0128】
In vivo実験
マウスは、体重20〜25gの4週齢の雌のICRマウスであった。マウスを使用する実験は全て、n=3で実施した。核酸剤を、マウスに尾静脈を通じて静脈内注射した。miR122の阻害効果を評価する実験(
図10a)においては、核酸剤を、マウスに0.1mg/kgの量でそれぞれ1回注射した。次いで、注射の72時間後にPBSをマウスに灌流させ、肝左葉を採取した。miR122の下流標的であるALDOA(
図10b)およびBCKDK(
図10c)、ならびに総血清コレステロール(
図10c)を評価する実験においては、核酸剤を、マウスに0.75mg/kgの量でそれぞれ1週間に3回注射した。次いで、注射時および注射の168時間後、また肝臓組織を採取した際にも血液を採取した。実施例2と同じプロトコルによってRNA抽出、cDNA合成および定量的PCRを行った。評価は、直接標的であるmiRNA(
図10a)の内部対照であるU6で補正することによって、またALDOA(
図10b)およびBCKDK(
図10c)の内部対照であるGAPDHで補正することによって実施した。各群の発現レベルは、実施例2のように比較した。表現型の評価において、注射後0時間〜168時間の総血清コレステロール(
図10d)および血清LDL(低密度リポタンパク質)(
図10e)の低下を測定し、PBSを注射した群と比較した。表現型に対する用量依存性効果の評価については、核酸剤を0.1、0.75および1.5mg/kgの量でそれぞれ1週間に3回注射し、総血清コレステロールの低下を前と同様に評価した(
図10f)。
【0129】
結果
図10aの結果によって示されるとおり、3つの核酸試薬は全て、陰性対照(PBSのみ)と比較してmiR122の発現の阻害を示す。しかし、本発明の一実施形態による二本鎖剤によって得られた阻害度は、一本鎖オリゴヌクレオチドによって得られた阻害度よりも大きく、その差は統計的に有意である。
図10bおよび
図10cによって示されるとおり、二本鎖antimiRは、一本鎖核酸と比較して、miR122の下流標的(ALDOA、BCKDK)の発現の統計的に有意な上昇を示した。
図10dおよび10eによって示されるとおり、二本鎖antimiRは、一本鎖核酸と比較して、総血清コレステロールおよびLDLの統計的に有意な低下を示した。
図10fによって示されるとおり、二本鎖antimiRは、一本鎖antimiRより優れた用量依存性表現型効果を示した。
【0130】
実施例4
本発明者らは、他の標的および標的RNAとの相互作用を有する他の種類のオリゴヌクレオチドへの、二本鎖核酸剤の適用を評価する実験を行った。標的RNAは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne Muscular Dystrophy(DMD))の責任遺伝子であるジストロフィンのプレ-mRNAであった。実施例4のオリゴヌクレオチドは、スプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)であり、ジストロフィンのスキッピングエクソン58を誘導した。ポリヌクレオチド構造は、
図11に示される。
【0131】
対照は一本鎖SSOであった。鎖の配列、組成、および鎖長は以下のとおりであった:
第1鎖
(配列番号17) 28merRNA鎖
5'-t*
C*t*g*
G*g*c*
T*c*c*
T*g*g*
T*aGCGAUACCAAU*
c*
g-3'
第2鎖
(配列番号16) 13merLNA/DNAギャップマー相補鎖
5'-
C*
G*a*t*t*g*g*t*a*t*
C*
G*
C-3'
一本鎖対照
(配列番号18) 15merSSO
5'-t*
C*t*g*
G*g*c*
T*c*c*
T*g*g*
T*a-3'
(略語は上記のとおり)
【0132】
二本鎖剤を、実施例1〜3のとおりに調製した。すなわち、LNA/DNA相補鎖とRNA鎖とを等モル量で混合し、溶液を95℃で5分間加熱し、その後37℃に冷却して1時間保持し、これにより核酸鎖をアニールして二本鎖核酸剤を形成した。アニールした核酸を4℃または氷上で保存した。
【0133】
この実験のため、ヒトジストロフィン遺伝子断片の安定発現プラスミドを構築し、この構築物を含む安定細胞株を確立した。上記のジストロフィン遺伝子断片は、その長さのため便宜上短縮された、イントロン57を除くエクソン57〜エクソン59の完全長配列を有する。安定細胞株におけるジストロフィン断片の発現は、通常、エクソン57、58、および59を含むmRNAを生じることが予想される。しかし、プレ-mRNAのプロセッシング中にエクソン58のスキッピングを引き起こす能力を有するスプライススイッチングオリゴヌクレオチドの存在下では、発現されたmRNAは、エクソン57および59を含むがエクソン58は欠失していると予想され得る。
【0134】
この実験においては、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)が核に到達することができる限り、ASOはジストロフィン遺伝子から発現されたmRNA産物のスプライシングを変更することができなければならず、またこのためジストロフィンの3つのエクソン断片(エクソン57、58、および59)の量は、対応する低下を示すだろう。
【0135】
エクソン58のエクソンスキッピングを引き起こすことができる一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、試験した。ASOは、エクソン58内の配列に結合する。
【0136】
ジストロフィン遺伝子発現プラスミドの構築
構築のための開始プラスミドは、pcDNA5/FRTベクター(インビトロゲン社、カールスバッド、カリフォルニア州)であった。Flagタグを含む断片を作製するため、2つのオリゴヌクレオチド:5'-
AGCTTACCATGGATTACAAGGACGACGACGACAAG
GGGGTAC-3'(配列番号19)(HindIII部位およびKpnI部位(下線部)を含む)と、5'-CCCCTTGTCGTCGTCGTCCTTGTAATCCATGGTA-3'(配列番号20)を一緒にアニールした。アニーリング後、上記の断片をpcDNA5/FRTベクター(pcDNA5/FRT-FLAG)のHindIII/KpnI部位中にクローン化した。このFlagタグは、余分な第1メチオニンの偶発的な発現を回避するため、2つのサイレント変異を含む。
【0137】
鋳型としてpcDNA3-EGFPベクターを使用して、フォワードプライマー:5'-
CCCGGGTGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGT-3'(配列番号21)(SmaI部位(下線)を含む)およびリバースプライマー:5'-ATA
GGGCCCTTACTTGTACAGCTCGTCCAT-3'(配列番号22)(ApaI部位(下線)を含む)を用いてEGFP断片を増幅した。サイクル条件は以下のとおりであった:94℃で2分、次いで98℃で0.5分、63℃で0.5分、68℃で0.75分を35サイクル、さらに68℃で3分。PCR反応は、KOD FX NEO(東洋紡株式会社(TOYOBO)、大阪、日本)を製造者の使用説明書に従って使用して実施した。EGFP断片を、SmaI/ApaI消化したpcDNA5/FRT-FLAGベクター(pcDNA5/FRT-FLAG-EGFP)に挿入した。
【0138】
鋳型としてpDsRed-Express-N1ベクターを使用して、フォワードプライマー:5'-ATAT
GGATCCA
ACCGGTGTGGCCTCCTCCGAGGACGTCA-3'(配列番号23)(BamHIおよびAgeI部位(下線)を含む)およびリバースプライマー:5'-CGGTCTACAGGAACAGGTGGTGGC-3'(配列番号24)を用いてEGFP断片を増幅した。サイクル条件は以下のとおりであった:94℃で2分、次いで98℃で0.5分、63℃で0.5分、68℃で0.75分を35サイクル、さらに68℃で3分。PCR反応は、KOD FX NEO(東洋紡株式会社社、大阪、日本)を製造者の使用説明書に従って使用して実施した。EGFP断片を、BamHI/SmaI消化したpcDNA5/FRT-FLAG-DsRedベクター(pcDNA5/FRT-FLAG-DsRed-EGFP)に挿入した。
【0139】
蛍光タンパク質を核に集めるため、NLS配列(核局在化シグナル(Nucleus Localized Signal))を、BamHI消化したpcDNA5/FRT-Flag-DsRed-EGFPに挿入した。このNLS配列は、2つのオリゴヌクレオチド:5'-ATGCCCCAAAAAAAAAACGCAAAGTGGAGGACCCAAAGGTACCAAAG-3'(配列番号25)と5'-GATCCTTTGGTACCTTTGGGTCCTCCACTTTGCGTTTTTTTTTTGGGGCATGTAC-3'(配列番号26)とをアニーリングすることによって作製した(pcDNA5/FRT-Flag-NLS-DsRed-EGFP)。
【0140】
ヒトジストロフィン遺伝子の安定発現プラスミドを作製するため、HepG2ゲノムを用いるPCRによってヒトジストロフィン遺伝子断片を得た。ジストロフィン遺伝子断片を含むプラスミドは、イントロン57を除くエクソン57〜エクソン59の完全長配列を有する。イントロン57配列(17683塩基対)は、プラスミドに挿入するには長すぎるため、イントロン57の一部分である配列+207〜+17486を、フォワードプライマー:5'-AAC
GGTACCAACGCTGCTGTTCTTTTTCA-3'(配列番号27)(KpnI部位(下線)を含む)、リバースプライマー:5'-AAATCGTCCATTACAAACACAGCGCTTTCC-3'(配列番号28)およびフォワードプライマー:5'-GTGTTTGTAATGGACGATTTCTTAAAGGGTATT-3'(配列番号29)、リバースプライマー:5'-AG
ACCGGTACTCCTCAGCCTGCTTTCGTA-3'(配列番号30)(AgeI部位(下線)を含む)を使用するPCRにより欠失させた。この断片を、KpnI/AgeI消化したpcDNA5/FRT-Flag-NLS-DsRed-EGFPベクターにクローン化した(pcDNA5/FRT-Flag-NLS-DMD-エクソン57_58_59(短-イントロン57)-DsRed-EGFP)。
【0141】
構築物は全て、ABI PRISM 310アナライザー(アプライドバイオシステムズ社(Applied Biosystems)、フォスターシティ、カリフォルニア州、米国)によって確認されるか、または株式会社ファスマック(Fasmac)(神奈川、日本)により配列決定された。
【0142】
安定な細胞株の確立
Flp-In-293(インビトロゲン社、カールスバッド、カリフォルニア州)細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)(バイオウェスト社(Biowest)、ニュアイエ(Nuaille)、フランス)、2%ペニシリン-ストレプトマイシン混合溶液(ペニシリン10,000単位/mL、ストレプトマイシン10,000マイクロg/mL)(ナカライテスク株式会社(Nacalaitesque)、京都、日本)を含有する10%ウシ胎仔血清を補充したダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)(DMEM)(ナカライテスク株式会社、京都、日本)中で培養し、37℃において100mg/mLのゼオシンで選択した。pcDNA5/FRT-Flag-Dys57>59di-NLS-DsRed-EGFPおよびpOG44(Flpリコンビナーゼ発現プラスミド)(インビトロゲン社、カールスバッド、カリフォルニア州)を、Flp-In-293細胞に共トランスフェクトした。安定な細胞株を、ハイグロマイシンB 50mg/mL(インビトロゲン社、カールスバッド、カリフォルニア州)耐性に基づいて選択した。
【0143】
細胞培養
安定細胞株を、10%ウシ胎仔血清(FBS)(バイオウェスト社、ニュアイエ、フランス)および2%ペニシリン-ストレプトマイシン混合溶液(ペニシリン10,000単位/mL、ストレプトマイシン10,000マイクロg/mL)(ナカライテスク株式会社、京都、日本)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(ナカライテスク株式会社、京都、日本)中で培養した。
【0144】
In vitro実験
この細胞を、24ウェルプレート中の、抗生物質を含まない血清含有培地にプレーティングした。脂質ベースのトランスフェクションのため、一本鎖対照と二本鎖剤のいずれかを、製造者の使用説明書に従ってリポフェクタミンRNAiMAX(インビトロゲン社)と混合し、無血清培地中で4時間細胞と共にインキュベートした。細胞をPBSで1回洗浄し、RNA抽出前に抗生物質を含む完全培地中で20時間インキュベートした。mRNAは、Isogenキット(株式会社ジーンデザイン)を製造者の使用説明書に従って使用して抽出した。cDNAは、Transcriptor Universal cDNA Master(ロシュ・アプライドバイオサイエンス社)をプロトコルに従って使用して合成した。定量RT-PCRは、SYBR Green Real Time PCR Master Mix(ロシュ・アプライドバイオサイエンス社)により実施した。プライマーの配列は以下に示される。
【0145】
エクソン58スキップ分析プライマー:
配列番号31:5'-AACGGTACCAACGCTGCTGTTCTTTTTCA-3'
配列番号32:5'-CTTGGAGCCGTACTGGAACT-3'
GAPDH分析プライマー:
配列番号33:5'-ACCACAGTCCATGCCATCAC-3'
配列番号34:5'-TCCACCACCCTGTTGCTGTA-3'
【0146】
プライマーは全て、北海道システム・サイエンス株式会社(札幌、日本)により合成された。増幅条件(温度および時間)は以下のとおりであった:98℃で10秒、55℃で15秒、および72℃で15秒(1サイクル)を35サイクル繰り返した。このようにして得られた定量RT-PCRの結果に基づいて、エクソンスキップされたジストロフィンの発現量/グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH;内部標準遺伝子)の発現量をそれぞれ計算し、また各群の結果を対照群と比較し、さらにt-検定によって評価した。結果は、
図12のグラフに示される。
【0147】
結果
図12の結果によって示されるとおり、本発明の一実施形態による二本鎖剤によって得られたエクソンスキッピングの程度は、一本鎖オリゴヌクレオチドによって得られたエクソンスキッピングの程度よりも大きく、その差は統計的に有意である。
【0148】
実施例5
本発明者らは、他の標的および化学構造を有する他の種類のアンチセンスオリゴヌクレオチドへの、二本鎖核酸剤の適用を評価する実験を行った。標的は、アポリポタンパク質Bのプレ-mRNAのイントロンであった。ポリヌクレオチド構造は、
図13に示される。
【0149】
対照は、LNA/DNAギャップマーであった。鎖の配列、組成、および鎖長は以下のとおりであった:
第1鎖
(配列番号35) 29merRNA鎖
5'-
C*
T*
C*c*c*a*c*c*a*c*a*t*a*
G*
C*
AGCGAUACCAAU*
c*
g-3'
第2鎖
(配列番号16) 13merLNA/DNAギャップマー相補鎖
5'-
C*
G*a*t*t*g*g*t*a*t*
C*
G*
C-3'
一本鎖対照
(配列番号36) 16merイントロンギャップマー
5'-
C*
T*
C*c*c*a*c*c*a*c*a*t*a*
G*
C*
A-3'
(略語は上記のとおり)
【0150】
二本鎖剤を、実施例1〜3のとおりに調製した。すなわち、LNA/DNA相補鎖とRNA鎖とを等モル量で混合し、溶液を95℃で5分間加熱し、その後37℃に冷却して1時間保持し、これにより核酸鎖をアニールして二本鎖核酸剤を形成した。アニールした核酸を4℃または氷上で保存した。
【0151】
In vitro実験
Huh-7(ヒト肝細胞癌細胞株-7)細胞を、推奨培地条件下で培養した。細胞を、24ウェルプレート中の抗生物質を含まない血清含有培地にプレーティングした。脂質ベースのトランスフェクションのため、一本鎖対照と二本鎖剤のいずれかを、リポフェクタミンRNAiMAX(インビトロゲン社)と製造者の使用説明書に従って混合し、無血清培地中で4時間細胞と共にインキュベートした。細胞をPBSで1回洗浄し、RNA抽出前に抗生物質を含む完全培地中でで20時間インキュベートした。mRNAは、Isogenキット(株式会社ジーンデザイン)を製造者の使用説明書に従って使用して抽出した。cDNAは、Transcriptor Universal cDNA Master(ロシュ・アプライドバイオサイエンス社)をプロトコルに従って使用して合成した。定量RT-PCRは、TaqMan(ロシュ・アプライドバイオサイエンス社)により実施した。定量RT-PCRにおいて使用したプライマーは、様々な遺伝子数に基づいて、ライフテクノロジーズ社によって設計および製造された製品であった。増幅条件(温度および時間)は以下のとおりであった:95℃で15秒、60℃で30秒、および72℃で1秒(1サイクル)を40サイクル繰り返した。このようにして得られた定量RT-PCRの結果に基づいて、アポBの発現量/グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH;内部標準遺伝子)の発現量をそれぞれ計算し、また各群の結果を比較し、さらにt-検定によって評価した。結果は、
図14のグラフに示される。
【0152】
結果
図14の結果に示されるとおり、一本鎖イントロンギャップマーは、陰性対照(リポフェクタミンのみ)と比較して、アポB mRNAの発現の阻害を示さなかった。しかし、本発明の一実施形態による二本鎖剤は、アポB mRNAの有意な阻害を達成した。
【0153】
実施例6
本発明者らは、第2鎖が13merLNA/DNAギャップマーから13merLNA/DNAミックスマーに変更された二本鎖核酸剤の適用を評価する実験を行った。標的は、実施例2〜3と同様に、マイクロRNA122であった。そのポリヌクレオチド構造は
図15に示される。
【0154】
対照は、2'-Oメチル化RNAアンタゴmirであった。鎖の配列、組成、および鎖長は以下のとおりであった:
第1鎖
(配列番号37) 36merRNA鎖
5'-
a*
c*
aaacaccauugucacacuc*
c*
a*UGAAUACCAAU*
g*
c-3'
第2鎖
(配列番号4) 13merLNA/DNAミックスマー相補鎖
5'-
G*c*a*t*
T*g*g*
T*a*t*t*
C*
A-3'
一本鎖対照
(配列番号38) 23merアンタゴmiR(miR122)
5'-
a*
c*
aaacaccauugucacacuc*
c*
a-3'
(略語は上記のとおり)
【0155】
二本鎖剤を、実施例1〜5のとおりに調製した。すなわち、LNA/DNA相補鎖とRNA鎖とを等モル量で混合し、溶液を95℃で5分間加熱し、その後37℃に冷却して1時間保持し、これにより核酸鎖をアニールして二本鎖核酸剤を形成した。アニールした核酸を4℃または氷上で保存した。
【0156】
In vitro実験
Huh-7(ヒト肝細胞癌細胞株-7)細胞を、推奨培地条件下で培養した。この細胞を、24ウェルプレート中の抗生物質を含まない血清含有培地にプレーティングした。脂質ベースのトランスフェクションのため、一本鎖対照と二本鎖剤のいずれかを、リポフェクタミン2000(インビトロゲン社)と製造者の使用説明書に従って混合し、無血清培地中で4時間細胞と共にインキュベートした。細胞をPBSで1回洗浄し、RNA抽出前に抗生物質を含む完全培地中で20時間インキュベートした。mRNAは、Isogenキット(株式会社ジーンデザイン)を製造者の使用説明書に従って使用して抽出した。cDNAは、Transcriptor Universal cDNA Master(ロシュ・アプライドバイオサイエンス社)をプロトコルに従って使用して合成した。定量RT-PCRは、TaqMan(ロシュ・アプライドバイオサイエンス社)により実施した。定量RT-PCRにおいて使用したプライマーは、様々な遺伝子数に基づいて、ライフテクノロジーズ社によって設計および製造された製品であった。増幅条件(温度および時間)は以下のとおりであった:95℃で15秒、60℃で30秒、および72℃で1秒(1サイクル)を40サイクル繰り返した。このようにして得られた定量RT-PCRの結果に基づいて、マイクロRNA(miR122)の発現量/マイクロRNA(U6;内部標準遺伝子)の発現量をそれぞれ計算し、また各群の結果を比較し、さらにt-検定によって評価した。結果は、
図16のグラフに示される。
【0157】
結果
核酸試薬は両方とも、陰性対照(リポフェクタミンのみ)と比較して、miR122の発現の阻害を示す。しかし、本発明の一実施形態による二本鎖剤によって得られた阻害度は、一本鎖オリゴヌクレオチドによって得られた阻害度よりも大きく、その差は統計的に有意である。
【0158】
実施例7
本発明者らは、第2鎖が13merLNA/DNAギャップマーから13merLNA/DNAミックスマーに変更された別の二本鎖核酸剤の適用を評価する実験を行った。標的は、実施例4と同様にジストロフィンのプレ-mRNAであった。実施例6のオリゴヌクレオチドは、スプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)であり、ジストロフィンのスキッピングエクソン58を誘導した。ポリヌクレオチド構造は
図17に示される。
【0159】
対照は一本鎖SSOであった。鎖の配列、組成、および鎖長は以下のとおりであった:
第1鎖
(配列番号17) 28merRNA鎖
5'-t*
C*t*g*
G*g*c*
T*c*c*
T*g*g*
T*aGCGAUACCAAU*
c*
g-3'
第2鎖
(配列番号4) 13merLNA/DNA
ミックスマー相補鎖
5'-
G*c*a*t*
T*g*g*
T*a*t*t*
C*
A-3'
一本鎖対照
(配列番号18) 15merSSO
5'- t*
C*t*g*
G*g*c*
T*c*c*
T*g*g*
T*a-3'
(略語は上記のとおり)
【0160】
二本鎖剤を、実施例1〜6のとおりに調製した。すなわち、LNA/DNA相補鎖とRNA鎖とを等モル量で混合し、溶液を95℃で5分間加熱し、その後37℃に冷却して1時間保持し、これにより核酸鎖をアニールして二本鎖核酸剤を形成した。アニールした核酸を4℃または氷上で保存した。
【0161】
In vitro実験
実験条件は、実施例4と同様であった。
【0162】
結果
図18の結果に示されるとおり、本発明の一実施形態による二本鎖剤によって得られたエクソンスキッピングの程度は、一本鎖オリゴヌクレオチドによって得られたエクソンスキッピングの程度よりも大きく、その差は統計的に有意である。
【0163】
実施例8
本発明者らは、第2鎖が13merLNA/DNAギャップマーから13mer/LNA/DNAミックスマーに変更された別の二本鎖核酸剤の適用を評価する実験を行った。標的は、実施例5と同様に、アポリポタンパク質Bのプレ-mRNAのイントロン、であった。ポリヌクレオチド構造は、
図19に示される。
【0164】
対照は、LNA/DNAギャップマーであった。鎖の配列、組成、および鎖長は以下のとおりであった:
第1鎖
(配列番号35) 29merRNA鎖
5'-
C*
T*
C*c*c*a*c*c*a*c*a*t*a*
G*
C*
AGCGAUACCAAU*
c*
g-3'
第2鎖
(配列番号4) 13merLNA/DNA
ミックスマー相補鎖
5'-
G*c*a*t*
T*g*g*
T*a*t*t*
C*
A-3'
一本鎖対照
(配列番号36) 16merイントロンギャップマー
5'-
C*
T*
C*c*c*a*c*c*a*c*a*t*a*
G*
C*
A-3'
(略語は上記のとおり)
【0165】
二本鎖剤を、実施例1〜3のとおりに調製した。すなわち、LNA/DNA相補鎖とRNA鎖とを等モル量で混合し、溶液を95℃で5分間加熱し、その後37℃に冷却して1時間保持し、これにより核酸鎖をアニールして二本鎖核酸剤を形成した。アニールした核酸を4℃または氷上で保存した。
【0166】
In vitro実験
実験条件は、実施例5と同様であった。
【0167】
結果
図20の結果によって示されるとおり、一本鎖イントロンギャップマーは、陰性対照(リポフェクタミンのみ)と比較して、アポB mRNAの発現の阻害を示さなかった。しかし,本発明の一実施形態による二本鎖剤は、用量依存様式でアポB mRNAの有意な阻害を達成した。
【0168】
実施例9
本発明者らは、核酸剤の位置がRNA鎖の5'末端から3'末端に変更された二本鎖核酸剤の適用を評価する実験を行った。標的は、実施例2〜3と同様に、マイクロRNA122であった。ポリヌクレオチド構造は
図21に示される。
【0169】
対照は、LNA/DNAミックスマーantimiR122(miravirsen(登録商標))であった。鎖の配列、組成、および鎖長は以下のとおりであった:
第1鎖
(配列番号15) 28merRNA鎖-5'
5'-
C*c*
A*t*t*
G*
T*c*a*
C*a*
C*t*
C*
CGCGAUACCAAU*
c*
g-3'
(配列番号39) 28merRNA鎖-3’
5'-
g*
c*
g*AUACCAAUCG
C*c*
A*t*t*
G*
T*c*a*
C*a*
C*t*
C*
C-3'
第2鎖
(配列番号16) 13merLNA/DNAミックスマー相補鎖
5'-
C*
G*a*t*t*g*g*t*a*t*
C*
G*
C-3'
一本鎖対照
(配列番号14) 23mer antimiR(miR122)
5'-
C*c*
A*t*t*
G*
T*c*a*
C*a*
C*t*
C*
C-3'
(略語は上記のとおり)
【0170】
二本鎖剤を、実施例1〜5のとおりに調製した。すなわち、LNA/DNA相補鎖とRNA鎖とを等モル量で混合し、溶液を95℃で5分間加熱し、その後37℃に冷却して1時間保持し、これにより核酸鎖をアニールして二本鎖核酸剤を形成した。アニールした核酸を4℃または氷上で保存した。
【0171】
In vitro実験
Huh-7(ヒト肝細胞癌細胞株-7)細胞を、推奨培地条件下で培養した。この細胞を、24ウェルプレート中の抗生物質を含まない血清含有培地にプレーティングした。脂質ベースのトランスフェクションのため、一本鎖対照と二本鎖剤のいずれかを、リポフェクタミンRNAi MAX(インビトロゲン社)と製造者の使用説明書に従って混合し、無血清培地中で4時間細胞と共にインキュベートした。細胞をPBSで1回洗浄し、RNA抽出前に抗生物質を含む完全培地中で20時間インキュベートした。マイクロRNAは、Isogenキット(株式会社ジーンデザイン)を製造者の使用説明書に従って使用して抽出した。cDNAは、Transcriptor Universal cDNA Master(ロシュ・アプライドバイオサイエンス社)をプロトコルに従って使用して合成した。定量RT-PCRは、TaqMan(ロシュ・アプライドバイオサイエンス社)により実施した。定量RT-PCRにおいて使用したプライマーは、様々な遺伝子数に基づいて、ライフテクノロジーズ社によって設計および製造された製品であった。増幅条件(温度および時間)は以下のとおりであった:95℃で15秒、60℃で30秒、および72℃で1秒(1サイクル)を40サイクル繰り返した。このようにして得られた定量RT-PCRの結果に基づいて、マイクロRNA(miR122)の発現量/マイクロRNA(U6;内部標準遺伝子)の発現量をそれぞれ計算し、また各群の結果を比較し、さらにt-検定によって評価した。この結果は、
図22のグラフに示される。
【0172】
結果
二本鎖antimiR-5'およびantimiR-3'は両方とも、陰性対照(リポフェクタミンのみ)および一本鎖antimiRと比較して、miR122の発現の阻害を示す。しかし、二本鎖antimiR-3によって得られた阻害度は、二本鎖antimiR-5'によって得られた阻害度に満たない。
【0173】
図22の結果によって示されるとおり、3つの核酸試薬は全て、陰性対照(PBSのみ)と比較して、miR122の発現の阻害を示す。しかし、二本鎖antimiR-5'によって得られた阻害度は二本鎖antimiR-3'によって得られた阻害度を上回り、その差は統計的に有意である。