(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リレーバルブの上部カバーの内部に、前記上部カバーとの間に作動室を区画するリレーピストンが非制動位置と制動位置との間を往復動自在に組み込まれ、前記リレーピストンは、ピストン付勢手段によって非制動位置に付勢され、前記上部カバーに、前記作動室と連通する指示入力ポートが設けられ、前記指示入力ポートに、制動指示用の圧縮空気の空気供給管が接続され、前記空気供給管に所定圧以上の圧縮空気が供給され、前記ピストン付勢手段の付勢力に抗して前記リレーピストンが前記非制動位置から前記制動位置へ移動することにより、車輪が制動されるトレーラのリレーバルブ排水構造であって、
前記空気供給管の分岐部から分岐する排水管と、
前記排水管に設けられ、前記排水管の内部管路と外部とを排水路を介して連通する開放位置と、前記排水路を閉止して前記排水管の前記内部管路と外部とを遮断する閉止位置との間で変位可能な弁体と、
前記弁体を前記閉止位置と前記開放位置との間で切替えて各位置に保持する弁体位置切替手段と、を備え、
前記排水路の有効流路断面は、前記弁体が前記開放位置に保持された状態で前記空気供給管に前記所定圧以上の圧縮空気が供給された場合に前記リレーピストンが前記ピストン付勢手段の付勢力に抗して前記非制動位置から前記制動位置に向かって移動するように、前記分岐部から前記指示入力ポートまでの前記空気供給管の有効流路断面よりも狭く設定されている
ことを特徴とするトレーラのリレーバルブ排水構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構造では、コントロールライン(コントロールポートに連通する空気管)がメンテナンスバルブによって開閉されるので、コントロールバルブを連通位置に設定した使用状態においても、コントロールラインの管路径は、メンテナンスバルブによって絞られて縮径する。このため、通常走行時において、ブレーキペダルの踏み込みから車輪の制動までの応答時間が増大する(制動制御作動性が低下する)おそれがある。
【0007】
また、圧縮空気からの内圧を受けた状態で、メンテナンスバルブを連通位置と排水位置との間で作動させる必要があるため、メンテナンスバルブが破損し易い。
【0008】
さらに、破損や人為的なミスによってメンテナンスバルブが排水位置に設定されたまま運転者が車両を走行させてしまった場合、コントロールラインからの圧縮空気は作動室へ全く供給されないため、運転者は車両を制動することができない。
【0009】
本発明は、上記実状に鑑み、トレーラの制動用のリレーバルブの作動室に滞留した水分を外部に容易に排水可能であり、通常走行時の制動制御作動性の低下を招くことがなく、構造上破損し難く、且つ排水状態のまま走行した場合であっても完全に制動不能となることがないリレーバルブ排水構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様は、リレーバルブの上部カバーの内部に、上部カバーとの間に作動室を区画するリレーピストンが非制動位置と制動位置との間を往復動自在に組み込まれ、リレーピストンは、ピストン付勢手段によって非制動位置に付勢され、上部カバーに、作動室と連通する指示入力ポートが設けられ、指示入力ポートに、制動指示用の圧縮空気の空気供給管が接続され、空気供給管に所定圧以上の圧縮空気が供給され、ピストン付勢手段の付勢力に抗してリレーピストンが非制動位置から制動位置へ移動することにより、車輪が制動されるトレーラのリレーバルブ排水構造であって、排水管と、弁体と、弁体位置切替手段と、を備える。
【0011】
排水管は、空気供給管の分岐部から分岐する。弁体は、排水管の内部管路と外部とを排水路を介して連通する開放位置と、排水路を閉止して排水管の内部管路と外部とを遮断する閉止位置との間で変位可能に排水管に設けられる。弁体位置切替手段は、弁体を閉止位置と開放位置との間で切替えて各位置に保持する。
【0012】
排水路の有効流路断面(最小断面)は、弁体が開放位置に保持された状態で空気供給管に上記所定圧以上の圧縮空気が供給された場合にリレーピストンがピストン付勢手段の付勢力に抗して非制動位置から制動位置に向かって移動するように、分岐部から指示入力ポートまでの空気供給管の有効流路断面(最小断面)よりも狭く設定されている。
【0013】
上記構成では、車両の走行時には、弁体位置切替手段により弁体を閉止位置に保持する。係る状態でブレーキペダルが踏み込まれると、空気供給管に所定圧以上の圧縮空気が供給され、ピストン付勢手段の付勢力に抗してリレーピストンが非制動位置から制動位置へ移動して、車輪が制動される。
【0014】
作動室内に滞留した水分を外部へ排出する場合、弁体位置切替え手段により弁体を閉止位置から開放位置に切替えて保持する。係る状態で、空気供給管へ所定圧以上の圧縮空気を供給した後、圧縮空気の供給を停止する。好ましくは、圧縮空気の供給と供給停止とを複数回繰り返す。リレーピストンは、圧縮空気の供給によりピストン付勢手段の付勢力に抗して非制動位置から制動位置へ移動し、供給停止によりピストン付勢手段に付勢されて制動位置から非制動位置へ戻る。リレーピストンが非制動位置から制動位置へ移動(往動)した後、制動位置から非制動位置への移動(復動)することにより、作動室内に滞留した水分が、指示入力ポートから空気供給管へ流出し、排水管及び排水路を介して外部へ排出される。このように、上部カバーを取り外すことなく作動室に滞留した水分を外部へ排出することができる。
【0015】
また、空気供給管(コントロールライン)から分岐した排水管に弁体を設けているので、弁体を閉止位置に保持した車両の通常走行時において、空気供給管の管路径が弁体によって絞られて縮径することがない。このため、弁体によってブレーキペダルの踏み込みから車輪の制動までの応答時間が増大してしまう(制動制御作動性が低下してしまう)ことがない。
【0016】
また、弁体を開放位置に保持した状態で圧縮空気の供給と供給停止とを行うので、圧縮空気からの内圧を受けた状態で弁体が移動することがない。このため、弁体の破損を抑制することができる。
【0017】
さらに、破損や人為的なミスによって弁体が開放位置に保持されたまま運転者が車両を走行させてしまった場合であっても、空気供給管に所定圧以上の圧縮空気が供給されることによりリレーピストンがピストン付勢手段の付勢力に抗して非制動位置から制動位置に向かって移動するので、運転者はブレーキペダルを踏み込むことによって車両を制動することができる。
【0018】
本発明の第2の態様は、第1の態様のリレーバルブ排水構造であって、弁体位置切替手段は、弁体を閉止位置に付勢する弁体付勢手段と、弁体付勢手段の付勢力による閉止位置への移動を規制して弁体を開放位置に解除可能に保持する弁体保持手段と、を備える。
【0019】
上記構成では、弁体保持手段により弁体を開放位置に保持することによって排水路が開放され、弁体保持手段による保持を解除することにより弁体が弁体付勢手段に付勢されて開放位置から閉止位置へ移動して保持される。従って、車両の通常走行時において、弁体を弁体付勢手段により閉止位置に確実に保持することができる。
【0020】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様のリレーバルブ排水構造であって、空気供給管は、指示入力ポートから分岐部に向かって水平方向に対して斜め下方へ延び、排水管は、分岐部から略水平方向又は水平方向に対して斜め下方へ延びる。
【0021】
上記構成では、空気供給管は、指示入力ポートから分岐部に向かって水平方向に対して斜め下方へ延び、排水管は、分岐部から略水平方向又は水平方向に対して斜め下方へ延びるので、作動室内に滞留した水分を排水管から外部へ確実に排出することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、トレーラの制動用のリレーバルブの作動室に滞留した水分を外部に容易に排水可能であり、通常走行時の制動制御作動性の低下を招くことがなく、構造上破損し難く、且つ排水状態のまま走行した場合であっても完全に制動不能となることがない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態のリレーバルブ排水構造は、2軸式のセミトレーラタイプのトレーラ5に設けられる。トレーラ5を牽引するトラクタ1は、トレーラ5の前端部が連結される連結部2と、前輪(従動輪)3及び後輪(駆動輪)4とを備え、トレーラ5は、前後の車輪(従動輪)6,7を備える。
【0025】
トラクタ1には、前輪3及び後輪4をそれぞれ制動するためのエアブレーキ装置が組み込まれている。
図2に示すように、トラクタ1のエアブレーキ装置は、エンジン(図示省略)によって駆動するエアコンプレッサ11と、エアコンプレッサ11が生成した圧縮空気を蓄えるトラクタタンク(エアタンク)12とを有する。トラクタ1のブレーキペダル13が運転者により踏み込み操作されると、ブレーキバルブ14が作動し、トラクタタンク12内の圧縮空気が左右の前輪3用のブレーキチャンバー15a,15bと、左右の後輪4用のブレーキチャンバー16a,16bとに供給され、車輪3,4に制動力が加えられる。このように、ブレーキチャンバー15a,15b,16a,16bは、トラクタ1側の車輪3,4を制動するブレーキ駆動部として機能する。
【0026】
トラクタ1には、ブレーキバルブ14を介してトラクタタンク12に連通するトラクタ1側のコントロールライン(サービスライン)17と、トラクタタンク12に連通するトラクタ1側のサプライライン(エマージェンシーライン)18とが設けられ、コントロールライン17及びサプライライン18の各端部には、カップリング17a,18aが設けられている。コントロールライン17は、ブレーキ駆動部の作動タイミングを制御するための圧縮空気を供給するためのホース又は配管であり、サプライライン18は、トラクタタンク12内の圧縮空気をトレーラ5側に供給するためのホース又は配管である。
【0027】
図2に示すように、トレーラ5には、トレーラ5側のコントロールライン(サービスライン)21と、トレーラ5側のサプライライン(エマージェンシーライン)22とが設けられる。トレーラ5側のコントロールライン21の端部には、トラクタ1側のコントロールライン17のカップリング17aに着脱自在に接続されるカップリング21aが設けられ、トレーラ5側のサプライライン22の端部には、トラクタ1側のサプライライン18のカップリング18aに着脱自在に接続されるカップリング22aが設けられる。
【0028】
トレーラ5側のコントロールライン21とサプライライン22とは、リレーバルブ(リレーエマージェンシーバルブ)23に接続される。リレーバルブ23には、トレーラ5に設けられたトレーラタンク(エアタンク)24がタンク接続ライン25を介して接続されるとともに、前車軸の左右の車輪6,7用のブレーキチャンバー27a,27bと後車軸の左右の車輪6,7用のブレーキチャンバー28a,28bとが出力ライン26を介して接続される。これらのライン21,22,25,26は、ホース又は配管により形成される。各ブレーキチャンバー27a,27b,28a,28bは、トレーラ5側の車輪6,7に対して制動力を加えるブレーキ駆動部を構成し、シリンダケース(図示省略)内に設けられたダイヤフラム(図示省略)に取り付けられるプッシュロッド29を有し、プッシュロッド29に取り付けられたカム(図示省略)によりブレーキシュー(図示省略)が駆動されて車輪6,7が制動される。
【0029】
図3に示すように、リレーバルブ23のバルブハウジング30は、ハウジング本体31と、ハウジング本体31の下部にボルト32により固定される下部カバー33と、ハウジング本体31の上部にボルト(図示省略)により固定される上部カバー34とを有する。
【0030】
ハウジング本体31には、サプライライン22が接続されるサプライポート35と、トレーラタンク24に接続されたタンク接続ライン25が接続されるタンク接続ポート36とが設けられる。また、ハウジング本体31には、サプライポート35とタンク接続ポート36とを貫通孔37を介して連通させる連通孔38が形成されるとともに、連通孔38を開閉するチェックバルブ39が装着されている。チェックバルブ39は、チェックバルブスプリング40によって連通孔38を閉止する方向に常時付勢されている。トラクタ1側からサプライライン22を介して供給された圧縮空気は、フィルタ41を通過した後にチェックバルブスプリング40の付勢力(ばね力)に抗してチェックバルブ39を開放し、貫通孔37及びタンク接続ライン25を介してトレーラタンク24に供給される。
【0031】
ハウジング本体31内には、円筒形状のエマージェンシーピストン42が組み込まれている。エマージェンシーピストン42は、エマージェンシー位置(
図3に示す位置)と、エマージェンシー位置から下部カバー33側に移動(
図3において下降)した作動位置との間を往復動可能にハウジング本体31に支持され、エマージェンシーピストンスプリング43によってエマージェンシー位置に向かって常時付勢されている。エマージェンシーピストン42の外面とハウジング本体31の内面との間には、エマージェンシー室44が形成され、エマージェンシー室44は、連通孔45を介してサプライポート35に連通している。サプライポート35にトラクタ1側から圧縮空気が供給されると、エマージェンシー室44内に流入する圧縮空気によってエマージェンシーピストン42がエマージェンシーピストンスプリング43の付勢力(ばね力)に抗してエマージェンシー位置から作動位置へ移動(下降)する。
【0032】
エマージェンシーピストン42の内部には、環状のバルブガイド46が固定され、バルブガイド46内には円筒形状の給排バルブ47が軸方向に移動自在に組み込まれている。給排バルブ47の一端(
図3中の上端)には環状のバルブリテーナ(開閉部)48が設けられ、バルブリテーナ48とバルブガイド46との間にはバルブスプリング49が装着され、給排バルブ47は、バルブスプリング49によって上部カバー34側(
図3における上方)へ常時付勢されている。
【0033】
バルブハウジング30内には、給排バルブ47に対向してバルブシート50が組み込まれている。バルブシート50は、上部カバー34の内部に軸方向(
図3中の上下方向)に往復動自在に組み込まれたリレーピストン51に固定されている。上部カバー34は、円弧状部52と、円弧状部52の周縁から一体的に延びる円筒部53と、円弧状部52の内面から突出して軸方向に直線状に延びるガイドロッド54とを一体的に有する。リレーピストン51は、上部カバー34の円弧状部52に対応した円弧状部55と、上部カバー34の円筒部53に対応した円筒部56と、上部カバー34のガイドロッド54に対応した軸部57とを一体的に有する。軸部57には、上部カバー34のガイドロッド54が挿入されるガイド孔58が形成され、ガイドロッド54は、非制動位置(
図3に示す位置)と非制動位置から下部カバー33側に移動(
図3において下降)した制動位置との間を移動可能に、ガイド孔58に摺動自在に支持される。
【0034】
上部カバー34の内面とリレーピストン51の外面との間には、作動室59が形成される。上部カバー34には、コントロールライン(空気供給管)21が接続される指示入力ポート(コントロールポート)60が設けられ、指示入力ポート60は作動室59と連通する。リレーピストン51の内側には連通室61が設けられ、連通室61は、ハウジング本体31に形成された出力ポート62と連通流路63を介して連通する。出力ポート62には、左右の車輪6,7用のブレーキチャンバー27a,27b,28a,28b(
図2参照)へ圧縮空気を供給する出力ライン26が接続される。
【0035】
リレーピストン51の円弧状部52とハウジング本体31との間には、ピストンリターンスプリング(ピストン付勢手段)64が装着され、リレーピストン51は、ピストンリターンスプリング64によって非制動位置に常時付勢される。サプライポート35からエマージェンシー室44内に流入する圧縮空気によってエマージェンシーピストン42が作動位置へ移動し、エマージェンシーピストン42の当接部42aが給排バルブ47のバルブリテーナ48に密閉状態で接触した状態下において、指示入力ポート60から所定圧以上の圧縮空気が作動室59内に供給されると、リレーピストン51は、ピストンリターンスプリング64の付勢力(ばね力)に抗して非制動位置から制動位置へ向かって移動し、バルブシート50は、給排バルブ47をエマージェンシーピストン42から離すように押し下げる。これにより、当接部42aとバルブリテーナ48との間に隙間が形成され、サプライポート35及びタンク接続ポート36は、連通室61を介して出力ポート62と連通する。
【0036】
指示入力ポート60に対する圧縮空気の供給が停止されて作動室59内の圧力が低下すると、リレーピストン51がピストンリターンスプリング64の付勢力によって非制動位置に向かって移動(上昇)し、バルブシート50が給排バルブ47のバルブリテーナ48から離れ、連通室61は、給排バルブ47の中空孔65を介して下部カバー33内の排気室66と連通する。排気室66は、下部カバー33の排気ポート67を介して外部と連通し、下部カバー33には、弾性変形自在な排気ダイヤフラム68が排気ポート67を覆うようにボルト69によって取り付けられている。
【0037】
図4及び
図5に示すように、コントロールライン21には分岐部としての分岐管80が設けられる。分岐管80はT字状の管継手であり、分岐管80の内部には、直線状に連通する主管路81と、主管路81の中間部から分岐する分岐路82とが形成される。主管路81の一端部は、筒状の第1接続管83を介して指示入力ポート60に接続されて指示入力ポート60と連通し、主管路81の他端部には、第2接続管84が固定される。第2接続管84は、チューブ85の一端部が挿入されることによってチューブ85の外周と係合して保持する非螺合タイプの接続管であり、接続作業を簡単に行うことが可能である。チューブ85から第2接続管84及び分岐管80の主管路81を介して第1接続管83へ至る管路がコントロールライン21を構成し、チューブ85の他端部にカップリング21a(
図2参照)が設けられる。
【0038】
分岐路82の開口端には、円筒状の第3接続管86を介して排水管87が固定される。排水管87は、一端側が第3接続管86に接続される周壁部88と、周壁部88の他端側に配置される底壁部89とを一体的に有する有底円筒状であり、排水管87の内部管路90は、第3接続管86の内部管路91を介して分岐管80の分岐路82と連通する。排水管87の内部管路90には、弁体92と弁体リターンスプリング(弁体付勢手段)93とが設けられ、排水管87の底壁部89には、周壁部88の内径よりも小径な弁体挿通孔94が周壁部88と同軸状に形成される。
【0039】
弁体92は、排水管87の内部管路90に配置される円板状の大径部92aと、大径部92aから一体的に延び、排水管87の内側から弁体挿通孔94に挿入される円筒状の小径部92bとを有する。大径部92aは、小径部92b及び弁体挿通孔94よりも大径で且つ排水管87の内部管路90(周壁部88の内径)よりも小径であり、弁体挿通孔94から外部への弁体92の離脱(抜け)を阻止する。
【0040】
弁体92は、小径部92bが弁体挿通孔94に摺動自在に支持されることにより、閉止位置(
図4に示す位置)と開放位置(
図5に示す位置)との間を移動可能に排水管87に支持される。閉止位置では、小径部92bの先端が弁体挿通孔94(底壁部89)から排水管87の外部へ突出し、開放位置では、小径部92bの先端が弁体挿通孔94から外部へ突出しない。小径部92bには複数の開閉孔95が形成され、小径部92bの内側空間96は、開閉孔95と連通するとともに先端開口で外部と連通する。閉止位置では、開閉孔95が弁体挿通孔94の内周面によって閉止され、排水管87の内部管路90と小径部92bの内側空間96とが連通しない。開放位置では、開閉孔95が排水管87の内部管路90に露出し、排水管87の内部管路90と小径部92bの内側空間96とが連通する。
【0041】
弁体リターンスプリング93は、第3接続管86と弁体92の大径部92aとの間に装着され、弁体92を閉止位置へ付勢する。通常状態では、弁体リターンスプリング93の付勢力(ばね力)によって弁体92が閉止位置に保持され、開閉孔95が閉止されて排水管87の内部管路90と外部とが遮断される。弁体リターンスプリング93の付勢力(ばね力)に抗して弁体92の先端が押し上げられ、弁体92が閉止位置から開放位置へ移動すると、開閉孔95が開放されて排水管87の内部管路90と外部とが小径部92bの内側空間96を介して連通する。
【0042】
排水管87の底壁部89側の周壁部88の端部には、排水管カバー97のカバー本体98と付属管(弁体保持手段)100とが着脱自在に選択的に取付けられる。
【0043】
図4〜
図6に示すように、排水管カバー97は、可撓性又は弾性を有する樹脂材によって形成され、排水管87の周壁部88の端部の外周に係合して底壁部89を覆うカバー本体98と、カバー本体98から延びる延長片99とを一体的に有する。排水管87の底壁部89をカバー本体98が覆うカバー取付状態では、底壁部89から突出する弁体92の先端をカバー本体98は押し上げず、弁体92は閉止位置に維持される。延長片99の先端には排水管87の周壁部88の外周に嵌合して支持される環状部99aが形成され、カバー本体98を排水管87から外した状態で排水管カバー97がカバー支持片を介して排水管87から吊り下がる。
【0044】
図5及び
図7に示すように、付属管(アタッチメント)100は、円筒状の主管部101と、主管部101の内部を一端側と他端側とに仕切る平板状の隔壁部102とを一体的に有する。主管部101の一端側の内周面には、排水管87の端部の外周面に形成された雄ネジ部103と螺合する雌ネジ部104が形成され、隔壁部102には、主管部101の内部の一端側と他端側とを連通する連通孔105が主管部101と同軸状に形成されている。連通孔105は、弁体92の小径部92bの内側空間96と略同径に設定され、小径部92bの内側空間96及び開閉孔95とともに排水路106を形成する。
【0045】
排水管87の雄ネジ部103に付属管100の雌ネジ部104を螺合して締付けていくと、隔壁部102が弁体92の先端に当接して押圧し、弁体リターンスプリング93の付勢力に抗して弁体92が閉止位置から開放位置へ押し上げられ、隔壁部102が排水管87の底壁部89に面接触して、付属管100が排水管87に取付けられる。係る付属管取付状態では、連通孔105が小径部92bの内側空間96と連通し、排水管87の内部管路90と外部とが排水路106を介して連通する。主管部101の他端側の内周面には、排水用の配管(図示省略)を接続するための雌ネジ部107が形成されている。なお、主管部101の他端側に第2接続管84と同様の構造を適用し、排水用チューブの一端部が挿入されることによって排水用チューブの外周と係合して保持する非螺合タイプの接続管としてもよい。
【0046】
排水路106の有効流路断面(最小断面)は、弁体92が開放位置に保持された状態でコントロールライン21に所定圧以上の圧縮空気が供給された場合にリレーピストン51がピストンリターンスプリング64の付勢力に抗して非制動位置から制動位置に向かって移動するように、分岐管80から指示入力ポート60までのコントロールライン21の有効流路断面(最小断面)よりも狭く設定されている。本実施形態では、連通孔105及び小径部92bの内側空間96の内径Aが第1接続管83の内径Bよりも小さく(A<B)設定されている。
【0047】
このように、排水管87は、コントロールライン21の分岐管80から分岐し、弁体92は、排水管87の内部管路90と外部とを排水路106を介して連通する開放位置と、排水路106を閉止して排水管87の内部管路90と外部とを遮断する閉止位置との間で変位可能に排水管87に設けられる。弁体リターンスプリング93は、弁体92を閉止位置に付勢し、付属管100は、弁体リターンスプリング93の付勢力による閉止位置への移動を規制して弁体92を開放位置に解除可能に保持する。弁体リターンスプリング93と付属管100とは、弁体92を閉止位置と開放位置との間で切替えて各位置に保持する弁体位置切替手段を構成する。
【0048】
図8に示すように、リレーバルブ23は、ブラケット108を介して車体側の部材109(例えばトレーラ5の車体フレーム)に固定される。本実施形態では、コントロールライン21が、指示入力ポート60から分岐管80に向かって水平方向に対して斜め下方へ延び、排水管87が、分岐管80から略水平方向又は水平方向に対して斜め下方へ延びる姿勢で、リレーバルブ23が車体側に固定される。
【0049】
車両(トレーラを牽引したトラクタ)の走行時には、トラクタ1側のコントロールライン17のカップリング17aにトレーラ5側のコントロールライン21のカップリング21aを接続し、トラクタ1側のサプライライン18のカップリング18aにトレーラ5側のサプライライン22のカップリング22aを接続する。また、付属管100を排水管87から取外し、弁体92を閉止位置に保持させる。
【0050】
リレーバルブ23では、トラクタ1側のサプライライン18からトレーラ5側のサプライライン22を介してサプライポート35に供給される圧縮空気によりチェックバルブ39が押し下げられ、サプライライン22からの圧縮空気は、連通孔38及び貫通孔37を介してタンク接続ライン25によりトレーラタンク24に供給され、トレーラタンク24に蓄えられる。トレーラタンク24内の圧力がトラクタタンク12内の圧力に達すると、チェックバルブスプリング40の付勢力によってチェックバルブ39が連通孔38を閉じる。サプライポート35に供給される圧縮空気は、連通孔45を介してエマージェンシー室44内へ流入し、エマージェンシーピストン42をエマージェンシー位置から移動させる。これにより、エマージェンシーピストン42の当接部42aがバルブリテーナ48に密閉状態で接触し、給排バルブ47がバルブスプリング49の付勢力に抗して押し下げられ、給排バルブ47のバルブリテーナ48がバルブシート50から離れる。
【0051】
トラクタ1の運転者が車両を制動させるためにブレーキペダル13を踏み込むと、ブレーキバルブ14が作動し、トラクタ1のブレーキチャンバー15a,15b,16a,16bに圧縮空気が供給され、前輪3と後輪4のブレーキが作動する。これと同時に、コントロールライン17からトレーラ5のコントロールライン21を介してリレーバルブ23の指示入力ポート60に所定圧以上の圧縮空気が供給され、ピストンリターンスプリング64の付勢力に抗してリレーピストン51が非制動位置から制動位置へ移動し、リレーピストン51が給排バルブ47を下方に押し下げ、給排バルブ47のバルブリテーナ48がエマージェンシーピストン42の当接部42aから離れる。これにより、トレーラタンク24内の圧縮空気は、当接部42aとバルブリテーナ48との間から連通室61に流入し、連通流路63を介して出力ポート62に流出する。出力ポート62に流出した圧縮空気は、ブレーキチャンバー27a,27b,28a,28b内に供給され、車輪6,7に制動力が加えられる。作動室59内の圧力と連通室61の圧力が同じになると、リレーピストン51はバルブスプリング49の付勢力により押し上げられ、給排バルブ47のバルブリテーナ48がエマージェンシーピストン42の当接部42aに接触して給排バルブ47が閉じられる。
【0052】
ブレーキペダル13の踏み込みが解除されると、作動室59内の圧力が低下し、ピストンリターンスプリング64によりリレーピストン51が押し上げられ、バルブシート50が給排バルブ47のバルブリテーナ48から離れる。これにより、ブレーキチャンバー27a,27b,28a,28b内の圧縮空気は、給排バルブ47の中空孔65から排気室66内に流入し、排気ダイヤフラム68を弾性変形させて排気ポート67から外部に排出され、ブレーキチャンバー27a,27b,28a,28bによる車輪6,7の制動が解除される。
【0053】
トレーラ5がトラクタ1から分離されると、コントロールライン21及びサプライライン22が開放される。このため、エマージェンシーピストンスプリング43の付勢力によりエマージェンシーピストン42がエマージェンシー位置へ移動し、エマージェンシーピストン42の当接部42aが給排バルブ47のバルブリテーナ48から離れる。これにより、トレーラタンク24内の圧縮空気が当接部42aとバルブリテーナ48との間から連通室61内に流入し、連通流路63を介して出力ポート62からブレーキチャンバー27a,27b,28a,28bに供給されて車輪6,7が制動された状態(駐車ブレーキが作動した状態)となる。駐車ブレーキは、トレーラタンク24のドレンコックを開いてトレーラタンク24内の圧縮空気を排出することにより、又はサプライライン22にトラクタ1のサプライライン18を接続することにより解除される。
【0054】
作動室59内に滞留した水分を外部へ排出する場合、付属管100を排水管87に取付けて、弁体92を開放位置に保持させる。係る状態で、コントロールライン21へ所定圧以上の圧縮空気を供給した後、圧縮空気の供給を停止する。好ましくは、圧縮空気の供給と供給停止とを複数回繰り返す。リレーバルブ23のリレーピストン51は、圧縮空気の供給によりピストンリターンスプリング64の付勢力に抗して非制動位置から制動位置へ移動し、供給停止によりピストンリターンスプリング64に付勢されて制動位置から非制動位置へ戻る。リレーピストン51が制動位置から非制動位置への移動することにより、作動室59の容積が急激に減少し、作動室59内に滞留した水分が、指示入力ポート60から分岐管80へ流出し、排水管87及び排水路106を介して外部へ排出される。従って、上部カバー34を取り外すことなく作動室に滞留した水分を外部へ排出することができ、作動室59内の水分凍結によるリレーピストン51の不作動現象の発生を防止することができる。なお、コントロールライン21への圧縮空気の供給は、トラクタ1側のコントロールライン17のカップリング17aにトレーラ5側のコントロールライン21のカップリング21aを接続した状態で、ブレーキペダル13を踏み込むことによって行ってもよく、トレーラ5側のコントロールライン21のカップリング21aをトラクタ1側のコントロールライン17のカップリング17aから外して他のコンプレッサやエアタンクからの外部配管に接続し、外部配管の開閉によって行ってもよい。
【0055】
また、コントロールライン21から分岐した排水管87に弁体92を設けているので、弁体92を閉止位置に保持した通常走行時において、コントロールライン21の管路径が弁体92によって絞られて縮径することがない。このため、弁体92によってブレーキペダル13の踏み込みから車輪6,7の制動までの応答時間が増大してしまう(制動制御作動性が低下してしまう)ことがない。
【0056】
また、弁体92を開放位置に保持した状態で圧縮空気の供給と供給停止とを行うので、圧縮空気からの内圧を受けた状態で弁体92が移動することがない。このため、弁体92の破損を抑制することができる。
【0057】
また、破損や人為的なミスによって弁体92が開放位置に保持されたまま運転者が車両を走行させてしまった場合であっても、コントロールライン21に所定圧以上の圧縮空気が供給されることによりリレーピストン51がピストンリターンスプリング64の付勢力に抗して非制動位置から制動位置に向かって移動するので、運転者はブレーキペダル13を踏み込むことによって車両を制動することができる。
【0058】
また、車両の走行時には、付属管100を排水管87から取外すだけで、弁体92を弁体リターンスプリング93により閉止位置に確実に保持することができる。
【0059】
さらに、コントロールライン21は、指示入力ポート60から分岐管80に向かって水平方向に対して斜め下方へ延び、排水管87は、分岐管80から略水平方向又は水平方向に対して斜め下方へ延びるので、作動室59内に滞留した水分を排水管87から外部へ確実に排出することができる。
【0060】
なお、上述の実施形態は本発明の一例であり、本発明は上述の実施形態に限定されることはなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、上述の実施形態以外であっても種々の変更が可能であることは勿論である。
【0061】
例えば、車輪6,7のブレーキ駆動部として、スプリングブレーキチャンバーを用いてもよく、ブレーキバルブから供給された圧縮空気をブースタにより制動用の液圧に変換してホイールシリンダに送るタイプのエアオーバハイドロリックブレーキを用いてもよい。トレーラは、フルトレーラであってもよい。