特許第6472135号(P6472135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472135
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】上吊引戸の前後方向調整付下ガイド
(51)【国際特許分類】
   E05D 13/00 20060101AFI20190207BHJP
   E05F 7/04 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   E05D13/00 K
   E05F7/04
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-24860(P2015-24860)
(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2016-148173(P2016-148173A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137959
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100104857
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】池田 祥平
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−248654(JP,A)
【文献】 特開2007−303182(JP,A)
【文献】 特開2014−020049(JP,A)
【文献】 米国特許第06467125(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 13/00
E05F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上吊引戸の下端面に対向する床面に固定され、この下端面の左右方向に形成された凹溝に係合して前記上吊引戸の前後方向に対する位置調整を可能にする上吊引戸の前後方向調整付下ガイドであって、
その長軸が前記左右方向に対し所定角度をなす長円状ガイド溝孔、及びその長軸が前記左右方向を向く長円状ゲート溝孔が上面側にそれぞれ形成され、この長円状ゲート溝孔には前記位置調整のための調整ネジが挿通される一方、床面に固定するためのビスが挿通される挿通孔が上面側に形成され、前記ビスを前記床面に固定することによって前記床面に配置された下面側が固定され上記上面側との間に空隙部を形成してなるベース部材と、
前記調整ネジが螺合するネジ孔が設けられる一方、前記ベース部材の前記空隙部に、前記調整ネジの前記左右方向への移動に伴って前記左右方向及び前後方向に移動可能なように収容され、且つ、前記調整ネジの前記ネジ孔への螺着によって前記ベース部材に固定される連結部材と、
一方端が前記連結部材に固着され、且つ、他方端が前記ベース部材の長円状ガイド溝孔を挿通し前記上吊引戸の凹溝内にまで延出して前記凹溝に係合してなるガイド部材と、
を備えてなることを特徴とする上吊引戸の前後方向調整付下ガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上吊引戸の下端面に、当該上吊引戸の移動方向(以下、左右方向という。)に形成された凹溝に係合して上吊引戸の、上記左右方向に垂直な方向(以下、前後方向という。)の位置調整を可能にする前後方向調整付下ガイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上吊引戸の下端面に形成された左右方向の凹溝に係合すべく、この凹溝に対向する、例えば床面に配置されて上吊引戸の前後方向の振れを軽減するための調整装置(前後方向調整付下ガイド)は従来からある(特許文献1,2)。
例えば図6に示すように、特許文献1の吊戸用の振れ止め構造においては、所定の手順で決定された床面上の締結位置に、調整ベース105が下面に位置する状態で載置し、ガイドベース106の締結座106aを位置決めする。この状態で、前後のビス穴106bを介して第1ビス107を床面にねじ込んでガイドベース106を固定する。次に、振止めローラー108がガイドベース106の略前後中心に位置するように調整ベース105の前後位置を調整したのち、クランプ片109のビス挿通穴109aに挿通した第2ビス110をビス長穴105aを介して床面に中途位置までねじ込んで仮固定する。このとき、調整ベース105は、ガイドベース106と床面で前後スライド可能に案内されて、前後方向に遊動できる状態になっている。そして、仮固定したのち、戸パネル100をガイドレール101に吊込んで、その振止めレール102を振止めローラー108に係合させて戸パネル100を数回開閉操作すると、振止めローラー108の中心位置をガイドレール101の中心位置と一致させることができる。このように、振止めローラー108が戸パネル100で位置決めされたのち、調整ベース105を保持固定した状態で、第2ビス110を最後までねじ込んで調整ベース105を前後不動に固定する(以下、本固定という。)ものである。
尚、図6(A)は上記振止め構造の縦断正面図、同図(B)は引戸の縦断側面図、同図(C)は上記振止め構造の分解斜視図である。
【0003】
また、例えば図7に示すように、特許文献2の引き戸用振止め装置においては、位置調節機構202としての円板状部材203、カウンターギヤ204及び調節ギヤ205を水平方向に互いに噛み合った状態でベース部材201の凹所に収容し、調節ギヤ205を回転操作すると円板状部材203を回転させることができる。この場合、これらの円板状部材203、カウンターギヤ204及び調節ギヤ205は、それぞれの軸芯が直線上に乗るように配置される。そして、円板状部材203にはガイド部206の支軸207がこの円板状部材203の軸芯でなく周囲寄りに偏った位置に取付孔203aを介して固着されている。したがって、円板状部材203を回転させると、支軸207はこの円板状部材203の円板面上において円弧状の軌跡を描いて(蓋部材208の挿通孔208aに沿って(同図(C)参照))移動することとなり、引き戸200の前後方向(同図(A)中の矢印方向)に対する位置調整を行うことができる。
尚、図7(A)は上記振止め装置の斜視図、同図(B)は上記振止め装置の蓋部材を外した状態を示す平面図、同図(C)は蓋部材の裏面図である。
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の吊戸用の振れ止め構造は、仮固定したのち戸パネル100を数回開閉操作するだけで、振止めローラー108の中心位置をガイドレール101の中心位置と一致させることができれば良いが、これら中心位置が一致していない場合には、振止めローラー108を当該振止めローラー108に直接触れて、或いは、ガイドベース106が重ね合わされた調整ベース105を工具を介して押動させなければならないため、作業性が良好とは言い難く作業に時間を要してしまう不具合がある。尚、その木口面が閉塞されている吊戸、即ち、当該吊戸の移動方向に形成された凹溝の両端部が閉塞されている吊戸(例えば、図4(B))のようなものには、振止めローラー108に直接触れて押動させることができないことは言うまでもない。また、この振れ止め構造では、中心位置が一致するまで仮固定及び本固定を繰り返して、第2ビス110を床面にねじ込んだり緩めたりする回数が増すと、床面のねじ溝にへたりが生じて固定状態が効かなくなってしまう不具合がある。特に、第2ビス110が床面に対して斜めに螺着させているものであるため上記へたりが生じ易くなる不具合がある。
【0005】
また、特許文献2の引き戸用振止め装置は、調節ギヤ205を回転操作して、この調節ギヤ205に連なる円板状部材203を含むギヤ列を作動させることにより、当該円板状部材203上の偏芯位置に設けられたガイド部206が円弧状の軌跡を描いて移動することを利用して上記位置調整を行うようにしたもので、複数のギヤで以ってギヤ列を構成しなければならないので装置自体が大掛りになって簡便化・低コスト化が図りにくく、特に、作業性向上のために調節ギヤ205の位置と円板状部材203上のガイド部206の位置との距離を長めに採りたい場合、ギヤ列のギヤ数を増やさなければならず、更に簡便化・低コスト化が図りにくくなる不具合がある。また、ギヤを薄鋼板で製作することも可能であるが、噛み合いを確実にし強度を持たせるためにある程度の肉厚を必要とするので、これに伴って装置の調節ギヤ205のところ(以下、装置の調整部位という)の地上高が厚みを増し、当該装置を床面の通路に直接設置するような場合に人の出入りの邪魔になる不具合がある。
【特許文献1】特開2013−249589(第7〜8頁、図1,3,4)
【特許文献1】特開2000−352258(第2〜3頁、図1,2,4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、上吊引戸の前後方向の振れを軽減するための調整装置としての前後方向調整付下ガイドを、調整における作業性が良好で作業時間を要することのない、また、装置自体の簡便化・低コスト化が図れ、且つ、装置の調整部位における地上高の厚みを抑え、装置を床面の通路に直接設置するような場合に人の出入りの邪魔にならない構造のものとする点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る上吊引戸の前後方向調整付下ガイドは、上吊引戸の下端面に対向する床面に固定され、この下端面の左右方向に形成された凹溝に係合して前記上吊引戸の前後方向に対する位置調整を可能にする上吊引戸の前後方向調整付下ガイドであって、その長軸が前記左右方向に対し所定角度をなす長円状ガイド溝孔、及びその長軸が前記左右方向を向く長円状ゲート溝孔が上面側にそれぞれ形成され、この長円状ゲート溝孔には前記位置調整のための調整ネジが挿通される一方、床面に固定するためのビスが挿通される挿通孔が上面側に形成され、前記ビスを前記床面に固定することによって前記床面に配置された下面側が固定され上記上面側との間に空隙部を形成してなるベース部材と、前記調整ネジが螺合するネジ孔が設けられる一方、前記ベース部材の前記空隙部に、前記調整ネジの前記左右方向への移動に伴って前記左右方向及び前後方向に移動可能なように収容され、且つ、前記調整ネジの前記ネジ孔への螺着によって前記ベース部材に固定される連結部材と、一方端が前記連結部材に固着され、且つ、他方端が前記ベース部材の長円状ガイド溝孔を挿通し前記上吊引戸の凹溝内にまで延出して前記凹溝に係合してなるガイド部材とを備えてなるものであり、上吊引戸の前後方向の位置調整に際しては、調整ネジをベース部材の長円状ゲート溝孔に沿って移動させると、ガイド部材がベース部材の長円状ガイド溝孔に案内されて移動するのに伴って当該ガイド部材及び連結部材が左右方向及び前後方向に移動するようになるので、上吊引戸の前後方向の振れを軽減すべく位置調整が可能になり、また、調整完了時には、調整ネジをネジ孔に螺着すると、連結部材がベース部材に固定され、このときガイド部材の位置決めがなされている。
【0008】
このような構成に係る前後方向調整付下ガイドによれば、調整ネジの移動及び螺着で調整を完了させことができるので、調整における作業性を良好にして作業時間を要しないものとすることができ、また、例えば上記従来装置のようなギヤ列を配置した構成のものではないので、装置自体の簡便化・低コスト化を図ることができ、更には、ベース部材の、上面側と下面側との間に空隙部を形成しこの空隙部に左右方向及び前後方向に移動可能な連結部材を収容する構成を採ったので、装置の調整部位における地上高の厚みを抑え、装置を床面の通路に直接設置するような場合に人の出入りの邪魔にならないようにすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上吊引戸の前後方向調整付下ガイドは、調整における作業性が良好で作業時間を要することのない、また、装置自体の簡便化・低コスト化が図れ、且つ、装置の調整部位における地上高の厚みを抑え、装置を床面の通路に直接設置するような場合に人の出入りの邪魔にならないものとする利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る上吊引戸の前後方向調整付下ガイドを図1〜4を参照して説明する。
本上吊引戸の前後方向調整付下ガイド1は、図1に示すように、上吊引戸2の下端面に対向する床面の適宜位置に配置され、この下端面の左右方向(同図中、矢印A,B方向、この方向に上吊引戸2が移動する。)に形成された凹溝2aに係合して上吊引戸2に対する前後方向(同図中、矢印C,D方向)の位置調整を可能にするものである。尚、同図は、上吊引戸2が閉成されている状態のときを描いており、後述のガイド部材が上吊引戸2の凹溝2a内にまで延出して当該凹溝2aに係合し、このガイド部材を含む下ガイド1の略半分部分が上吊引戸2の下端面に対向していて、後述の調整ネジを含むもう一方の略半分部分が通路側にはみ出しているところを示す。
【0011】
本上吊引戸の前後方向調整付下ガイド1の具体的構成を図2を参照して説明する。但し、図2(A)は本下ガイド1の組立て図、同図(B)は本下ガイド1の分解斜視図である。
本下ガイド1は、床面に固定されるベース部材3と、このベース部材3の空隙部3cに収容される連結部材4と、この連結部材4に固着されるガイド部材5とで構成されている簡便なものである。
【0012】
このうちのベース部材3は、その下面3b(図3参照)側が開口されて薄平な略長方形状に成形された成形品であり、その上面3a側の一方端寄りの部位は小高な円錐台状に形成されており、この円錐台6aの中央に上吊引戸の前後方向の位置調整のための調整ネジ7が挿通される長円状ゲート溝孔6bが、当該ゲート溝孔6bの長軸がこのベース部材3の長手方向、即ち、左右方向を向くようにして設けられている。
更に、ベース部材3の上面3aには、その略中央及び他方端寄りの部位に皿ビス孔6c,6dが設けられており、この皿ビス孔6c,6dは、ベース部材3を床面に固定するときの皿ビス(図示せず)の挿通孔である。
更にまた、これら皿ビス孔6c,6dの略中間部位にガイド部材5が挿通される長円状ガイド溝孔6eが、当該ガイド溝孔6eの長軸がこのベース部材3の長手方向に対し、即ち、左右方向に対し所定角度をなすようにして設けられている。この長円状ガイド溝孔6eは、上記位置調整のときにガイド部材5を案内する機能を果たし、連結部材4の前後方向への移動を可能にする(このとき、前後方向のみならず左右方向にも移動する)ものである。
ところで、ベース部材3は、上述のように床面に皿ビスで固定されるが、このとき、このベース部材3の上面3a側と、当該ベース部材3の、床面に配置される下面3b側との間に極めて薄平な空隙部3cが形成されるようにして、この空隙部3cに連結部材4を収容し得るようにしてある(図3を参照)。
尚、ベース部材3の円錐台6aには、図2などに示すように、目盛sが表示されており、これにより上記位置調整に際して調整ネジ7を移動させるときの便宜を図っている。
【0013】
また、連結部材4は、上述したようにベース部材3の空隙部3cに収容される部材であるので、極めて薄平な略長方形状をなす板状材である。その上面側の一方端寄りの部位には、本実施の形態では、リング状の受台8が固着され、この受台8には、調整ネジ7が螺合するためのネジ溝が螺刻され、このネジ溝が、連結部材4に設けられたネジ孔4c(図3(B)参照)に連続する態様をなしており、これにより調整ネジ7との螺合長さが十分確保されるようにしている。そして、このような受台8のネジ溝及び連結部材4のネジ孔に螺着する調整ネジ7によって当該連結部材4がベース部材3に固定される一方、この調整ネジ7を弛緩して当該調整ネジを左右方向に移動させると、これに伴って当該連結部材4が左右方向及び前後方向に移動するようになっている。
更に、この上面側の他方端寄りの部位には、ガイド部材5の一方端が、例えば当該端部をカシメなどして固着されている。
更にまた、これら受台8とガイド部材5との略中間部位に上記ベース部材3の皿ビス孔6cを介して挿通される、ベース部材3を固定するための皿ビス(図示せず)の挿通孔として長円状挿通孔4aが設けられ、この挿通孔4aの長軸はこの連結部材4の長手方向に対し、即ち、左右方向に対し所定角度(この所定角度は、ベース部材3のガイド溝孔6eの長軸がなす角度と同一である。)をなすようにして設けられている。この挿通孔4aは、ベース部材3を固定するための皿ビス(図示せず)との干渉を防止するべく長円状に形成されている。尚、連結部材4の、ガイド部材5が立設された近傍の端部に略凹状の切欠きが施されているが、これは、上記ベース部材3の皿ビス孔6dを介して挿通される、ベース部材3を固定するための皿ビス(図示せず)との干渉を防止するためのものである。
【0014】
また、ガイド部材5は、本実施の形態では単なる長寸の柱状部材であり、上述のように当該ガイド部材5の一方端が連結部材4に固着される一方、その他方端がベース部材3の長円状ガイド溝孔6eを挿通し、本下ガイド1が上吊引戸2の下端面に対向する床面の適宜位置に配置されたときには、上吊引戸2の凹溝2a内にまで延出して当該凹溝2aに係合する態様が採られる。
尚、ガイド部材5の他方端に、例えば転動輪(図示せず)を軸着させる構造にしてもよい。
【0015】
次に、本下ガイド1の動作を図3を参照して説明する。
図1に示すような上吊引戸2が閉成されている状態のときに、上吊引戸2の前後方向の位置調整を行う場合、まず、ガイド部材5の、上吊引戸2の凹溝2a内での係合位置を目視してガイド部材5が凹溝2aに片当たりしているか否かを確かめたり、或いは、上吊引戸2を数回開閉操作して上吊引戸2の開閉動作の軽重を確かめたりしてガイド部材5の凹溝2aに対する片当たり状態を把握する。しかる後に、例えばガイド部材5が凹溝2aの略中央に位置するように、上記位置調整を行えばよい。
ここでは説明の都合上、現にガイド部材5が凹溝2aに片当たりした状態にあり、そのときの本下ガイド1の調整ネジ7やガイド部材5が図3(B)の状態、即ち、調整ネジ7がゲート溝孔6bの略中央にあり、また、ガイド部材5がガイド溝孔6eの略中央にある状態になっているものとする。
【0016】
このような状態を解消すべく上記位置調整を行う場合には、調整ネジ7を、例えばドライバーなどで弛緩して当該調整ネジ7を、図3(A)に示すように右方向(矢印A方向)に移動させるか、又は同図(C)に示すように左方向(矢印B方向)に移動させるかすれば、これに伴ってガイド部材5がベース部材3の長円状ガイド溝孔6eに案内されて移動するので、当該ガイド部材5のみならず連結部材4が、同図(A)に示す右方向及び後方向(矢印C方向)に移動し、又は同図(C)に示す左方向及び前方向(矢印D方向)に移動する。これによりガイド部材5をガイド溝孔6eの略中央に移動させ当該ガイド部材5の片当たり状態を解消させることができる。しかる後、調整ネジ7を螺着して締め付けていくと、ベース部材3の空隙部3cで遊動可能であった連結部材4が引き寄せられ、当該連結部材4とによってベース部材3の円錐台6aを挟み込んで当該ベース部材3が固定されてガイド部材5が位置決めされ、上吊引戸2の前後方向の振れを軽減するための位置調整が完了する。その際、連結部材4に設けられた突起4b(図2(B)参照)が、ベース部材3に食い込む状態となる。
尚、図3(A)や同図(C)では、調整ネジ7をゲート溝孔6bの端部に移動させたところを、また、ガイド部材5をガイド溝孔6eの端部に移動させたところを表示しているが、上記位置調整に際しては、調整ネジ7をゲート溝孔6bの中途位置(従って、ガイド部材5もガイド溝孔6eの中途位置)に移動させて完了する場合もあることはもちろんである。
【0017】
ところで、上述した実施の形態に係る前後方向調整付下ガイド1は、図4(A)に示すような、その木口面が開口されている上吊引戸2、即ち、上吊引戸2の左右方向(矢印A,B方向)に形成された凹溝2aの両端部が開口しているものに使用した場合を説明したが、同図(B)に示すような、その木口面が閉塞されている上吊引戸20に対しても使用できることは言うまでもない。
この場合には、ガイド部材5が上吊引戸20の凹溝20aに片当たりしているか否かを目視で確認することはできないが、上吊引戸20を数回開閉操作を繰り返して上吊引戸20の開閉動作の軽重を確かめれば片当たり状態を把握できるので、上記実施の形態で述べた動作手順に従って、調整ネジ7を左右方向に移動させれば、上吊引戸20の前後方向の振れを軽減すべく位置調整が容易に行える。
【0018】
また、上述した実施の形態に係る前後方向調整付下ガイド1においては、調整ネジ7は、その頭部がさら小ねじのように皿状になっているものであったが、例えば前後方向調整付下ガイド10の調整ネジ9に示す(図5参照)ような、六角状になっているものにしてもよい。このようにすると、上吊引戸2の横から、言い換えれば前後方向から例えばスパナで調整することができる。また、調整ネジ9が上吊引戸2の下に位置してしまう場合にも、前後方向からスパナで調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の上吊引戸の前後方向調整付下ガイドは、上吊引戸の前後方向の振れを軽減するための位置調整装置として、装置自体の簡便化、すなわち低コスト化が図られ、更に、装置の調整部位における地上高の厚みが抑えられており、また、調整における作業性が良好で作業時間を要することのないものなので、既存のものに比べ利用価値の高いものと言える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施の形態に係る前後方向調整付下ガイドの使用状態を示す外観斜視図である。
図2図1の前後方向調整付下ガイドのアセンブリ図及び分解斜視図である。
図3図1の前後方向調整付下ガイドの動作説明図である。
図4図1の上吊引戸及びこの上吊引戸とは異なる上吊引戸に前後方向調整付下ガイドを使用したときの状態を示す外観斜視図である。
図5図1の前後方向調整付下ガイドの調整ネジとは異なるタイプのネジに置き換えた前後方向調整付下ガイドのアセンブリ図である。
図6】従来例の吊戸用の振れ止め構造の要部断面図及び分解斜視図である。
図7】従来例の引き戸用振止め装置の使用状態を示す外観斜視図及び要部平面図である。
【符号の説明】
【0021】
1,10 前後方向調整用下ガイド
2,20 上吊引戸
2a,20a 凹溝
3 ベース部材
3a 上面
3b 下面
3c 空隙部
4 連結部材
4c ネジ孔
5 ガイド部材
6b 長円状ゲート溝孔
6e 長円状ガイド溝孔
7 調整ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7