(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
本実施形態に係るステント10は、血管、胆管、気管、食道、尿道、またはその他の生体管腔内に生じた狭窄部または閉塞部を治療するために用いるものである。なお、本明細書では、管腔に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
【0018】
ステント10は、自己の弾性力により拡張する、いわゆる自己拡張型ステントであり、
図1〜4に示すように、線状に形成されて全体として隙間を有する筒形状を呈する第1ストラット20と、第1ストラット20に固定される複数の第2ストラット30と、を備えている。
【0019】
第1ストラット20は、金属材料により形成されており、線材が折り返されながら環状に形成される複数の環状部21をその中心軸方向に配列し、隣接する環状部21同士を、互いの環状部21に共有される複数の共有部22によって一体化させて、全体として1つの円筒形状に形成されている。なお、環状部21の数は、特に限定されない。また、第1ストラット20の形状は、拡張および収縮が可能であって全体として隙間を有する筒形状であれば、特に限定されない。
【0020】
また、第1ストラット20は、
図2に示すように、縮径された状態において第2ストラット30を格納できる格納部27が形成されている。
【0021】
第1ストラット20の延在方向と直交する断面形状は、
図4に示すように、矩形形状となっている。第1ストラット20は、生体管腔と接する外表面23に、薬剤を含む被覆体26が被覆されている。
【0022】
被覆体26は、薬剤と、薬剤を担持するための薬剤担持体とを含んでいる。なお、被覆体26は、薬剤担持体を含まずに薬剤のみにより構成されてもよい。被覆体26は、第1ストラット20の外表面23の全体に被覆されてもよいが、外表面23の一部にのみ被覆されてもよい。また、被覆体26は、外表面23を挟む両側面24や、外表面23の反対側の内表面25にも被覆されてもよい。
【0023】
第1ストラット20は、留置対象部位により異なるが、一般的に、拡張時(非縮径時、復元時)の外径が1.5〜30mm、好ましくは2.0〜20mm、肉厚が0.04〜1.0mm、好ましくは0.06〜0.5mmのものであり、長さは、5〜250mm、好ましくは10〜200mmである。被覆体26の肉厚は、1〜300μm、好ましくは、3〜100μmである。
【0024】
そして、第1ストラット20は、生体内挿入前および生体内挿入後のいずれにおいても超弾性を示す超弾性金属により略円筒形状に一体的に形成されているのが好ましい。
【0025】
超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。好ましくは、49〜54原子%NiのTiNi合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性合金が使用される。特に好ましくは、上記のTiNi合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0重量%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,B、Au,Pdなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0原子%で置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。
【0026】
そして、使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kg/mm
2(22℃)、好ましくは、8〜150kg/mm
2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kg/mm
2(22℃)、好ましくは、5〜130kg/mm
2である。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、荷重の解放後、加熱を必要とせずにほぼ元の形状に回復することを意味する。
【0027】
そして、第1ストラット20は、例えば、超弾性合金パイプを用いて、ストラット非構成部分を除去(例えば、切削、溶解)することにより作製され、これにより、一体形成物となっている。なお、第1ストラット20の形成に用いられる超弾性金属パイプは、不活性ガスまたは真空雰囲気にて超弾性合金のインゴットを形成し、このインゴットを機械的に研磨し、続いて、熱間プレスおよび押し出しにより、太径パイプを形成し、その後順次ダイス引き抜き工程および熱処理工程を繰り返すことにより、所定の肉厚、外径のパイプに細径化し、最終的に表面を化学的または物理的に研磨することにより製造することができる。そして、この超弾性合金パイプによる第1ストラット20の形成は、切削加工(例えば、機械研磨、レーザー切削加工)、放電加工、化学エッチングなどにより行うことができ、さらにそれらの併用により行ってもよい。
【0028】
被覆体26に含まれる薬剤としては、例えば、抗癌剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、HMG−CoA還元酵素阻害剤、インスリン抵抗性改善剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症薬、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GP IIb/IIIa拮抗薬、レチノイド、フラボノイド、カロチノイド、脂質改善薬、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗血小板薬、抗炎症薬、生体由来材料、インターフェロン、一酸化窒素産生促進物質が挙げられる。
【0029】
抗癌剤は、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、イリノテカン、ピラルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、メトトレキサートである。免疫抑制剤は、例えば、シロリムス、エベロリムス、ピメクロリムス、ゾタロリムス、バイオリムス、AP23573、CCI−779等のシロリムス誘導体、タクロリムス、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロフォスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、グスペリムス、ミゾリビン、ドキソルビシンである。
【0030】
抗生物質は、例えば、マイトマイシン、アクチノマイシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、アクラルビシン、エピルビシン、ペプロマイシン、ジノスタチンスチマラマー、バンコマイシンである。抗リウマチ剤は、例えば、メトトレキサート、チオリンゴ酸ナトリウム、ペニシラミン、ロベンザリットである。抗血栓薬は、例えば、ヘパリン、アスピリン、抗トロンピン製剤、チクロピジン、ヒルジンである。
【0031】
HMG−CoA還元酵素阻害剤は、例えば、セリバスタチン、セリバスタチンナトリウム、アトルバスタチン、アトルバスタチンカルシウム、ロスバスタチン、ロスバスタチンカルシウム、ピタバスタチン、ピタバスタチンカルシウム、フルバスタチン、フルバスタチンナトリウム、シンバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、プラバスタチンナトリウムである。
【0032】
インスリン抵抗性改善剤は、例えば、トログリタゾン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン等のチアゾリジン誘導体である。ACE阻害剤は、例えば、キナプリル、ペリンドプリルエルブミン、トランドラプリル、シラザプリル、テモカプリル、デラプリル、マレイン酸エナラプリル、リシノブリル、カプトプリルである。カルシウム拮抗剤は、例えば、ニフェジピン、ニルバジピン、ジルチアゼム、ベニジピン、ニソルジピンである。
【0033】
抗高脂血症剤は、例えば、ベザフィブラート、フェノフィブラート、エゼチミブ、トルセトラピブ、パクチミブ、K−604、インプリタピド、プロブコールである。
【0034】
インテグリン阻害薬は、例えば、AJM300である。抗アレルギー剤は、例えば、トラニラストである。抗酸化剤は、例えば、α−トコフェロール、カテキン、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールである。GP IIb/IIIa拮抗薬は、例えば、アブシキシマブである。レチノイドは、例えば、オールトランスレチノイン酸である。フラボノイドは、例えば、エピガロカテキン、アントシアニン、プロアントシアニジンである。カロチノイドは、例えば、β−カロチン、リコピンである。
【0035】
脂質改善薬は、例えば、エイコサペンタエン酸である。DNA合成阻害剤は、例えば、 5−FUである。チロシンキナーゼ阻害剤は、例えば、ゲニステイン、チルフォスチン、アーブスタチン、スタウロスポリンである。抗血小板薬は、例えば、チクロピジン、シロスタゾール、クロピドグレルである。抗炎症剤は、例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロン等のステロイドである。
【0036】
生体由来材料は、例えば、EGF(epidermal growth factor) 、VEGF(vascular endothelial growth factor)、HGF(hepatocyte growth factor)、PDGF(platelet derived growth factor)、BFGF(basic fibroblast growth factor)である。インターフェロンは、例えば、インターフェロン−γ1aである。一酸化窒素産生促進物質は、例えば、L−アルギニンである。
【0037】
なお、狭窄治療用として一般的に用いられ、かつ短時間に効率よく細胞内へ移行させることができるという観点から、パクリタキセル、ドセタキセル、シロリムス、エベロリムスが好ましく、特に、シロリムスおよびパクリタキセルが好ましい。
【0038】
薬剤担持体は、高分子材料であり、例えば、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、アクリルポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリビニル・メチル・エーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−メチル・メタクリル酸塩共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリオキシメチレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン・トリアセテート、コラーゲン、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、セロハン、硝酸セルロース、プロピオニルセルロース、セルロース・エーテル、カルボキシメチルセルロース、キチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、乳酸−カプロラクトン共重合体、ポリ−γ―グルタミン酸、ポリエチレンオキシド、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシド共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン・グリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0039】
薬剤担持体は、特に、生体内で分解される生分解性高分子材料であることが好ましい。生体内にステント10を留置した後、薬剤を覆い保護している生分解性高分子材料が生分解されると、薬剤が徐放され、ステント留置部での再狭窄が防止されることになる。生分解性高分子材料としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、乳酸−カプロラクトン共重合体、ポリ−γ―グルタミン酸等の生分解性合成高分子材料、あるいはセルロース、コラーゲン等の生分解性天然高分子材料を使用することが好ましい。
【0040】
被覆体26を第1ストラット20に被覆させる際には、薬剤および薬剤担持体を溶媒に溶解させたコーティング液を第1ストラット20の外表面23にコーティングし、溶媒を蒸発させて薬剤および薬剤担持体を乾燥固化させて被覆させることができる。
【0041】
溶媒は、特に限定されないが、メタノール、エタノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アセトン等の有機溶媒が好ましい。
【0042】
各々の第2ストラット30は、生分解性材料により線状に形成されている。各々の第2ストラット30は、第1ストラット20に連結する複数の連結部31を有しており、連結部31によって折り返すようにジグザグ形状となっている。各々の連結部31の間には、第1ストラット20の隙間を渡るように長尺部32が形成される。
【0043】
連結部31は、内表面33に第1ストラット20を収容可能な凹部34が形成されており、この凹部34に第1ストラット20を収容するように、第1ストラット20の外側から第2ストラット30を被せることで、第1ストラット20と第2ストラット30とを連結できる。なお、第1ストラット20と第2ストラット30とを連結可能であれば、凹部34が設けられなくてもよく、例えば接着剤を用いたり、融着させてもよい。また、これらの手段を組み合わせて連結してもよい。
【0044】
各々の第2ストラット30は、第1ストラット20よりも厚く形成されており、後述するシース50に収容するためにステント10を縮径された際に、第1ストラット20よりも径方向外側へ突出する。第2ストラット30の第1ストラット20からの突出量Hは、特に限定されないが、例えば1〜1000μmであり、好ましくは、10〜100μmである。
【0045】
第2ストラット30に適用される生分解性材料は、好ましくは生分解性高分子材料であり、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、乳酸−カプロラクトン共重合体、ポリ−γ―グルタミン酸等の生分解性合成高分子材料、あるいはセルロース、コラーゲン等の生分解性天然高分子材料を使用することが好ましい。
【0046】
なお、第2ストラット30の、特に後述のシース50と接触する外表面35には、被覆体が被覆されていないことが好ましい。
【0047】
次に、本実施形態に係るステント10を、生体管腔内に留置する方法を説明する。ステント10を留置する際には、
図5,6に示すステントデリバリーシステム40を用いる。
【0048】
ステントデリバリーシステム40は、管状のシース50と、シース50内に摺動可能に挿通され、ステント10を先端方向へ押圧可能な接触部66を備える内管(シャフト)60とを備える。
【0049】
シース50は、先端および基端が開口しており、先端側の内部にステント10を収納可能な収容部51が設けられる。先端開口は、ステント10を生体管腔内の狭窄部に留置する際、ステント10の放出口として機能する。ステント10は、縮径された状態で収容部51に収納される。縮径状態において、第2ストラット30が第1ストラット20よりも径方向外側へ突出しているため、第1ストラット20の外表面に被覆されている被覆体26の、収容部51の内面との接触が抑制される。ステント10は、先端開口より放出されることにより第1ストラット20の応力負荷が解除されて自己の弾性力により拡張し、圧縮前の形状に復元する。
【0050】
また、シース50の基端部には、シースハブ70が固定されている。シースハブ70は、シースハブ本体71と、シースハブ本体71内に収納され、内管60を摺動可能、かつ液密に保持する弁体(図示せず)を備えている。また、シースハブ70は、シースハブ本体71の中央付近より斜め後方に分岐するサイドポート72を備えている。また、シースハブ70は、内管60の移動を規制する内管ロック機構を備えていることが好ましい。
【0051】
内管60は、シャフト状の内管本体部61と、内管本体部61の先端に設けられ、シース50の先端より突出する内管先端部62と、内管本体部61の基端部に固定された内管ハブ63とを備える。
【0052】
内管先端部62は、シース50の先端より突出し、かつ、先端に向かって徐々に縮径するテーパー状に形成されている。このように形成することにより、狭窄部への挿入が容易となる。また、内管先端部62は、基端がシース50の先端と当接可能となっており、シース50の先端方向への移動を阻止するストッパーとして機能している。
【0053】
内管60の内管先端部62の基端側には、ステント保持用突出部65が設けられている。そして、ステント保持用突出部65より所定距離基端側には、ステント押出用突出部(接触部)66が設けられている。これら2つの突出部65,66間にステント10が配置される。突出部65,66は、環状の突出部であることが好ましい。これら突出部65,66の外径は、圧縮されたステント10と当接可能な大きさとなっている。このため、ステント10は、ステント保持用突出部65により先端側への移動が規制され、ステント押出用突出部66により基端側への移動が規制される。そして、内管60の位置を保持した状態でシース50を基端側へ移動させると、ステント押出用突出部66によってステント10の基端側への移動が規制され、ステント10がシース50の内面を摺動し、シース50より放出される。さらに、ステント押出用突出部66の基端側は、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部66Aとなっていることが好ましい。同様に、ステント保持用突出部65の基端側は、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部65Aとなっていることが好ましい。このようにすることにより、内管60に対してシース50を基端側に移動させて、ステント10をシース50より放出した後に、シース50を先端側に移動させて内管60をシース50内に再収納する際に、突出部65,66がシース50の先端に引っかかることを防止できる。また、2つの突出部65,66は、X線造影性材料からなる別部材により形成されてもよい。これにより、X線造影下でステント10の位置を的確に把握することができ、手技がより容易なものとなる。
【0054】
内管60は、シース50内を貫通し、シース50の基端開口より突出している。内管60の基端部には、内管ハブ63が固着されている。内管60は、ガイドワイヤーが挿通されるルーメン64が、先端から基端まで延びて形成されている。なお、ルーメン64は、内管60の先端から内管60の途中で側方へ開口するように形成されてもよい。
【0055】
シース50は、ある程度の可撓性を有する材料により形成されるのが好ましく、そのような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。
【0056】
内管60は、シース50と同様の材料や、金属材料を適用することが可能である。金属材料は、例えば、ステンレス鋼、Ni−Ti合金である。
【0057】
シースハブ70および内管ハブ63は、例えば、ポリカーボネート、ポリオレフィン、スチレン系樹脂、ポリエステルなどの樹脂材料、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属材料が使用できる。
【0058】
ステントデリバリーシステム40を用いてステント10を生体管腔内(例えば血管)に留置する際には、まず、軸中心方向に向かって縮径されたステント10をシース50の先端側の収容部51に収容し、内管60のステント押出用突出部66をステント10の基端側に位置させた状態で、シース50内および内管60内を生理食塩水で満たす。
【0059】
次に、患者の血管に、例えばセルジンガー法によりシースイントロデューサを留置し、ガイドワイヤールーメン64内にガイドワイヤーを挿通させた状態で、ガイドワイヤーおよびステントデリバリーシステム40をシースイントロデューサの内部より血管内へ挿入する。続いて、ガイドワイヤーを先行させつつステントデリバリーシステム40を進行させ、シース50の先端部を狭窄部へ到達させる。
【0060】
この後、内管ハブ63を手で抑えてステント押出用突出部66が基端側へ移動しないように保持しつつ、シースハブ70を基端側へ引いて移動させ、基端方向へ移動するシース50の先端開口から、ステント押出用突出部66によって押し出すようにステント10を放出する。これにより、
図7に示すように、ステント10の第1ストラット20は、応力負荷が解除されて自己の弾性力により拡張し、圧縮前の形状に復元する。そして、第1ストラット20の隙間を渡るように設けられており、かつ第1ストラット20に固定されている第2ストラット30は、第1ストラット20に追従するように拡張する。これにより、狭窄部Sをステント10によって押し広げた状態で良好に維持することができる。第2ストラット30は第1ストラット20に固定されているため、拡張した際に第1ストラット20から外れ難く、安全性が高い。
【0061】
そして、ステント10がシース50から放出される際には、第2ストラット30が第1ストラット20よりも厚く形成されており、第1ストラット20よりも径方向外側へ突出しているため、第2ストラット30が収容部51の内面と接触し、第1ストラット20と収容部51の内面との間の接触が抑制される。このため、シース50を基端側に引いた際に第1ストラット20に設けられる被覆体26がシース50の内面と摺動せず、被覆体26の剥がれが抑制される。このため、被覆体26に含まれる薬剤の量が減少せず、再狭窄や遅延性ステント血栓症等の発生を効果的に抑制できる。また、被覆体26に含まれる薬剤担持体が剥がれ落ち難いため、安全性が向上する。
【0062】
そして、ステント10が狭窄部Sに留置された状態では、第2ストラット30が径方向外側へ突出していても、生体管腔が柔軟であるため、第1ストラット20が生体組織と良好に接触することができる。このため、被覆体26に含まれる薬剤によって、再狭窄や遅延性ステント血栓症等の発生を抑制できる。
【0063】
ステント10を生体管腔内に留置した後には、シースイントロデューサを介して血管よりガイドワイヤーおよびステントデリバリーシステム40を抜去し、手技が終了する。生体管腔内に留置されたステント10は、全体が内皮細胞により覆われるとともに、被覆体26に含まれる薬剤によって、再狭窄や遅延性ステント血栓症等の発生を抑制する。そして、第2ストラット30は、生分解性材料により形成されていることから、時間とともに分解されて消滅するため、生体への影響を極力抑えることができる。
【0064】
以上のように、本実施形態に係るステント10は、金属材料により線状に形成されて全体として隙間を有する筒形状を呈し、表面に薬剤を含む被覆体26が被覆された第1ストラット20と、第1ストラット20に固定され、軸中心方向へ縮径した状態の第1ストラット20よりも径方向外側へ突出して設けられる生分解性材料により形成された少なくとも1つの第2ストラット30と、を有している。このため、ステント10をステントデリバリーシステム40のシース50内に収容した際に、第2ストラット30がシース50の内面と接触し、第1ストラット20のシース50の内面に対する接触が抑制され、第1ストラット20に設けられて薬剤を含む被覆体26がシース50の内面と摺動せず、被覆体26の剥がれが抑制される。このため、被覆体26に含まれる薬剤の量が減少せず、再狭窄や遅延性ステント血栓症等の発生を効果的に抑制でき、薬剤を効果的に作用させることができる。また、被覆体26に含まれる薬剤担持体が剥がれ落ちないため、安全性が向上する。
【0065】
また、第2ストラット30が、第1ストラット20の少なくとも2箇所に固定されて第1ストラット20の隙間を渡るように設けられるため、第1ストラット20の隙間を利用して、第2ストラット30を効果的に配置することができる。
【0066】
また、第2ストラット30が、第1ストラット20の少なくとも3箇所に固定されるため、第1ストラット20の隙間を渡る部位(長尺部32)が複数連なる形態となり、第2ストラット30が第1ストラット20から外れ難くなって安全性が向上し、かつ第2ストラット30を広い範囲に設けやすくなることで、被覆体26の剥がれをさらに効果的に抑制できる。
【0067】
また、第1ストラット20が、軸中心方向へ縮径した際に第2ストラット30を格納する格納部27を有するため、第2ストラット30により妨げられることなしに、ステント10を縮径させることができる。
【0068】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、
図8に示す変形例のように、複数の第2ストラット80の各々が、2箇所のみの連結部81によって第1ストラット20に固定されてもよい。