(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472167
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】フットカバー
(51)【国際特許分類】
A41B 11/10 20060101AFI20190207BHJP
A41B 11/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
A41B11/10 B
A41B11/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-7784(P2014-7784)
(22)【出願日】2014年1月20日
(65)【公開番号】特開2015-137426(P2015-137426A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年3月8日
【審判番号】不服2017-16121(P2017-16121/J1)
【審判請求日】2017年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507109206
【氏名又は名称】株式会社JKトレーディング
(73)【特許権者】
【識別番号】512205991
【氏名又は名称】イノテックス コリア カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INNOTEX KOREA Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】河合 孝
(72)【発明者】
【氏名】金 正一
(72)【発明者】
【氏名】ジョン インジック
【合議体】
【審判長】
久保 克彦
【審判官】
渡邊 豊英
【審判官】
竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】
実開平6−69205(JP,U)
【文献】
実開平6−79705(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3165733(JP,U)
【文献】
特開2002−180302(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3085289(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 11/10,A41B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、
伸縮性生地で編成された、足底部、側辺部、踵部および前記爪先を覆う爪先部で形成され、
足を出し入れするための開口部を、前記足底部に対して上下反対側に設け、
前記開口部の周縁に沿った前記側辺部および前記踵部における足が接する側の面に、伸縮性および粘着性を備えた幅5mm〜15mmのシリコーンテープを設け、
前記シリコーンテープは、前記爪先部を除き前記側辺部および前記踵部に設けられ、
前記フットカバーは複数の伸縮性生地片から形成されたことを特徴とするフットカバー。
【請求項2】
爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、
伸縮性生地で編成された、足底部、側辺部、踵部および前記爪先を覆う爪先部で形成され、
足を出し入れするための開口部を、前記足底部に対して上下反対側に設け、
前記開口部の周縁に沿った前記側辺部および前記踵部における足が接する側の面に、伸縮性および粘着性を備えた幅5mm〜15mmのシリコーンテープを設け、
前記フットカバーは、前記フットカバーを側方から見た側面視において前記爪先部と前記側辺部とが交差する交差部を備え、
前記シリコーンテープは、前記爪先部を除き、前記交差部を含み前記交差部から前記踵部まで、前記開口部を上方から見た平面視でU字形状に一体として設けられ、
前記フットカバーは複数の伸縮性生地片から形成されたことを特徴とするフットカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用するとパンプス(履き口である甲部分が大きく開いている主として婦人用の靴)等の靴の内側に隠れて見えなくなるフットカバーに関し、特に、歩行等の動作によっても脱げたり位置ずれすることが少ないフットカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
素足にパンプス等の靴を履くことが、ファッションとして定着している。この場合、パンプスと足裏とが直接接していると、足に発生した汗により靴の中が蒸れてしまい不快感がある。
そこで、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、着用時にパンプスから露出することのないよう履き口が大きくカットされた薄手のフットカバーが提案されている。このフットカバーを着用してパンプスを履けば、外観上、素足にパンプスを履いているように見え、足裏とパンプスとの間にはフットカバーが介しているため、汗によって靴の中が蒸れてしまうことを防止することができる。
【0003】
なお、このような足装着具を、本明細書ではフットカバーと記載するが、ソックスカバー、インナーソックス、ヌードソックス、カバーソックス等と記載される場合もある。
このようなフットカバーはパンプスから露出しないよう履き口が大きくカットされているため、歩行中の摩擦等によって履き位置がずれたり、脱げたりすすることがある。一方、履き口を小さくしてしまうとパンプスから露出してしまう。このような問題点に鑑みて開発されたフットカバーが、以下の先行技術文献に開示されている。
【0004】
特開平10−292206号公報(特許文献1)は、歩行時におけるパンプスとフットカバーとの摩擦によってフットカバーが素足から脱げてしまったり、パンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを防止するために、踵当接部内面に摩擦付与体を取り付けたフットカバーを開示する。
実用新案登録第3165733号公報(特許文献2)は、特許文献1に開示されたフットカバーの開口部の周縁に沿ってゴム紐を設けたのでは、ゴム紐が足に食い込むため、足にゴム紐の型が付いてしまったり、痛みを感じたり、履き心地が良くないという問題があったことに鑑み、開口部の周縁に沿って平ゴムを設けて一面が足に接するようにした帯状伸縮部を形成したフットカバーを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−292206号公報
【特許文献2】実用新案登録第3165733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたフットカバーは、履き口の周縁にゴムを設けるとともに踵当接部内面に摩擦付与体(ゴム材)を設けており、特許文献2に開示されたフットカバーは、開口部の周縁に平ゴムを設けるとともに着用者の踵に当接する後部内面にシリコーンゲルにより形成された滑り止めを設けている。すなわち、いずれのフットカバーも、開口部の周縁に伸縮性を備えたゴム材を設け、踵に当接する部分に粘着性を備えた滑り止めを設けている。
【0007】
しかしながら、このようなフットカバーは、(1)フットカバーの開口部の周縁にゴムを縫着したり貼付したりする必要がある上に踵部に滑り止めを設ける必要があり製造工数が増える、(2)ゴムが開口部全周にわたって設けられているのでゴムが足の各部分に当たり履き心地がよくない、という問題がある。
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、フットカバーを履くときに開口部が十分に開いて履きやすく、かつ、歩行時およびパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることがなく、さらに、製造工数が少ないために安価に製造できるとともに、履き心地
が良い、フットカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るフットカバーは以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係るフットカバーは、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、伸縮性生地で編成された、足底部、側辺部、踵部および前記爪先を覆う爪先部で形成され、前記足底部に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部を設け、前記開口部の周縁に沿った少なくとも前記側辺部および前記踵部に、伸縮性および粘着性を備えた帯状のシリコーン部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフットカバーによれば、フットカバーを履くときに開口部が十分に開いて履きやすく、かつ、歩行時およびパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることがないようにできる。さらに、本発明のフットカバーによれば、製造工数が少ないために安価に製造できるとともに、履き心地が良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係るフットカバーの全体斜視図である。
【
図2】
図1のフットカバーを裏返した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係るフットカバーを、図面に基づき詳しく説明する。なお、フットカバーの構造には様々なものがあり、本発明は特定の構造に限定されるものではなく、後述する特徴を備えたものであれば、どのようなフットカバーの構造であっても、フットカバーを構成する生地の種類、生地の型紙およびその縫製がどのようなものであっても構わない。そのため、以下に示すフットカバーの構造自体は単なる例示でしかない。なお、このフットカバーは複数の生地片(パーツ)から形成され、いずれの生地も伸縮性を備えた編地である。
【0012】
図1および
図2に本発明の実施の形態に係るフットカバー100を示す。
図1はフットカバー100の全体斜視図であって、
図2はフットカバー100を裏返した斜視図であって、いずれの図も着用者の足Fにフットカバーを着用している状態を想定している。すなわち、本発明の実施の形態に係るフットカバーは、パンティストッキング等の伸縮性生地で形成されているために、このように想定して図示しない場合には縮んだ状態となり、形状を理解することが困難なため、上述のように想定している。
【0013】
このフットカバー100は、着用者の足Fの爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーである。このフットカバー100は、着用時にパンプスから露出することのないよう履き口である開口部が大きくカットされた薄手の伸縮性生地(レース地を含むパンティストッキング等の生地)で形成されている。
このフットカバー100は、爪先部102、足底部104、側辺部106および踵部108で形成されている。そして、足底部104に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部が設けられている。開口部は、爪先部102の上部、側辺部106の上部および踵部108の上部で形成されることになる。
【0014】
このフットカバー100は、たとえば、爪先部102、足底部104、側辺部106および踵部108を別々に編成して(側辺部106および踵部108は一体的に編成)、側辺部106および踵部108と爪先部102とを縫着して一体化して、さらに、一体化されたこれらの爪先部102、側辺部106および踵部108と足底部104とを縫着して一体化している。なお、後述するシリコーンテープ116および爪先部シリコーンテープ112(いずれも帯状のシリコーン部)は、縫着する前に(すなわち一体化する前に)フットカバー100の生地に貼り付けても、縫着した後に(すなわち一体化した後に)フットカバー100の生地に貼り付けても、いずれでも構わない。また、帯状のシリコーン部(テープに限定されない)をフットカバー100の編地に設ける方法は、後述するように
シリコーンテープを接着する以外の方法であっても構わない。
【0015】
このフットカバー100においては、足底部104に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部が爪先部102、側辺部106および踵部108により形成されている。そして、開口部の周縁に沿った側辺部106および踵部108に、伸縮性および粘着性を備えたシリコーンテープ(帯状のシリコーン部)116が設けられ、開口部の周縁に沿った爪先部102に、伸縮性および粘着性を備えた爪先部シリコーンテープ(帯状のシリコーン部)112が設けられている。なお、爪先部シリコーンテープ112が設けられない場合もある。すなわち、開口部の周縁に沿った少なくとも側辺部106および踵部108に、伸縮性および粘着性を備えたシリコーンテープ116が設けられていれば構わない。
【0016】
このようにシリコーンテープ116を開口部に設けたため、踵部108における上方部の足F側(内側)には、シリコン等の薄いシートで形成された踵部滑り止めを設ける必要がない。すなわち、踵部108に設けられたシリコーンテープ116により、足Fの踵との密着性を高めてフットカバー100が足Fからずれることを防止できる。
さらに、
図2に示すように、足底部104において、足Fが接する側と反対側(パンプスを履いたときにパンプスの内底に接する側)には、シリコーン等の薄いシートで形成された足底部滑り止め114を設けることも好ましい。これにより、パンプスの内底との密着性を高めてパンプス内におけるフットカバー100の位置がずれることを防止できる。なお、この足底部滑り止めを、花柄模様等で形成することも好ましい。
【0017】
なお、足底部104は、このフットカバー100を形成する他の部分よりも厚い編地で構成されて、クッション性を持たせることも好ましい。
このような特徴を備えたフットカバー100のシリコーンテープ116および爪先部シリコーンテープ112についてさらに詳しく説明する。なお、爪先部シリコーンテープ112もシリコーンテープ116と同じ構成および同じ接着方法であるので、以下においてはシリコーンテープ116について説明する。
【0018】
シリコーンテープ116は、有機珪素化合物の集合体であるシリコーンを主体とした細幅(5mm〜15mm程度)のテープ状を備え、その一面に接着剤を塗布したものである。ここで、有機珪素化合物の集合体とは、ケイ素と酸素とからなるシロキサン結合(≡Si−O−Si≡)を骨格とし、そのケイ素(Si)にメチル(−CH3)を主体とする有機基が結合したポリマーである。接着剤は、このフットカバー100の編地である薄手の伸縮性生地(レース地を含むパンティストッキング等の生地)にシリコーンテープ116を強力に接着することが好ましい。
【0019】
なお、シリコーンテープ116をフットカバー100の編地に設ける方法は、このような接着剤を用いた方法以外(たとえば熱融着性接着剤を用いた接着、接着以外の方法等)であっても構わない。以下において、これについて説明する。
上述したように本実施の形態に係るフットカバー100においては、開口部の周縁に沿った側辺部106および踵部108に、伸縮性および粘着性を備えたシリコーンテープ116が設けられ、開口部の周縁に沿った爪先部102に、伸縮性および粘着性を備えた爪先部シリコーンテープ112が設けられているものとして説明したが、シリコーンテープではなく帯状のシリコーン部でも構わないし、接着でなくても構わない。すなわち、シリコーン部はテープ状のシリコーンテープ商品を接着するのではなく、たとえば、粘着状態のシリコーンをロータリータイプの機械でシルク印刷のように帯状に付着させるものであっても構わない。さらに、このようなロータリータイプの機械によるシルク印刷ではなく、噴射タイプの機械によりシリコーン部を開口部の周縁に沿った側辺部106および踵部108ならびに開口部の周縁に沿った爪先部102に帯状に設けるようにしても構わない。
【0020】
以上のようにして、本実施の形態に係るフットカバーによると、フットカバーの開口部にゴム(特許文献1)および平ゴム(特許文献2)を設けないで、開口部の周縁に沿った少なくとも側辺部106および踵部108に、伸縮性および粘着性を備えたシリコーンテープ(帯状のシリコーン部)を設けた。このため、開口部にゴムまたは平ゴムを設けた上
に踵部に平ゴムとは別体の滑り止めを設けること必要なく、かつ、履き心地を阻害することなく、歩行時およびパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを防止することができる。
【0021】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、素足で履くフットカバーに好適であり、フットカバーを履くときに開口部が十分に開いて履きやすく、かつ、歩行時およびパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることがない点で好ましく、履き心地がよく安価に製造できる点で、特に好ましい。
【符号の説明】
【0023】
100 フットカバー
102 爪先部
112 爪先部シリコーンテープ(帯状のシリコーン部)
104 足底部
106 側辺部
116 シリコーンテープ(帯状のシリコーン部)
108 踵部
F 足