(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の石鹸組成物の製造方法において、原料石鹸を製造するにあたり、前記ラウリン酸及びミリスチン酸を含む炭素数が12〜24の脂肪酸及び、水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムとともに、水及び多価アルコール類を配合して均質な混合液を得ることを特徴とする、石鹸組成物の製造方法。
請求項1または2記載の石鹸組成物の製造方法において、更にタルク及びステアリン酸マグネシウムを、前記鹸化前又は鹸化後に添加配合することを特徴とする、石鹸組成物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
一般的には顔や身体などの皮膚洗浄用組成物は、脂肪酸または油脂を水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の苛性アルカリ、アルカノールアミン類や塩基性アミノ酸等によって中和またはケン化して得られる脂肪酸石鹸、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び/又は両イオン性界面活性剤等を少なくとも1種以上を混合して調製されており、更にソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリアルキレングリコール等の多価アルコール類及び高分子系化合物などは、配合されて組成物の性能を向上させたり、組成物の粘度等状態を改良させたりするために用いられている。更に必要に応じて、色素や香料等を加熱混合し、溶解させて製造されている。
【0003】
皮膚洗浄用組成物の性能の向上、状態の改良のためには以下の種々の方法が提案されている。
例えば、特開2006−206525号公報(特許文献1)には、良好な水溶け、起泡性と保存安定性のために、高級脂肪酸のカリウム石鹸と低級アルコール、水を含有したペースト状皮膚洗浄剤を提案されている。
また、特開2002−322498号公報(特許文献2)には、炎天下での輸送等による高温下での組成物の分離を改善する方法として、ミリスチン酸とパルミチン酸およびステアリン酸の特定の範囲におかれたカリウム石鹸とプロピレングリコール、グリセリンおよび水の含有される範囲が提案されている。
【0004】
特開2004−210704号公報(特許文献3)には、皮膚洗浄剤の経時安定性、起泡性、洗浄効果、泡質等の向上、洗浄後の肌が滑らかになるソフニング効果を付与する組成物として、高級脂肪酸石鹸、アミノ酸系ポリマー及びイオン性のことなる二種以上の水溶性高分子を含有する皮膚洗浄組成物が提案されている。
更に、特開2011−121870号公報(特許文献4)には、メイクや皮脂の除去効果に優れたペースト状の皮膚洗浄剤として、硫酸基を有する陰イオン界面活性剤、高級脂肪酸又はその塩、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、(ジ)グリセリンモノ脂肪酸エステル又は(ジ)グリセリンモノアルキルエーテル及びアルキルポリグルコシドの配合物が提案されている。
【0005】
しかしながら、高級脂肪酸石鹸を主剤とする配合物であって、使用時に溶け出しが早く、環境にも優しく、しかも皮膚や目に対して刺激が少なく、常温において膨潤して流れることがなく、また石鹸組成物が分離することもない、年間を通して使用性の改良された、高い気泡力を有する、石鹸組成物の実現が期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、通常の石鹸組成物のように界面活性剤を含まず、使用時において溶け出しが早く高い気泡力を有するとともに、常温において膨潤したり流れだしたりすることがなく、使用性に優れ、また皮膚や目に対して刺激が少なく、環境にも優しく、高級脂肪酸石鹸を洗浄成分とする、脂肪酸マグネシウムを含有する石鹸組成物及び、該石鹸組成物を生産性良く製造する方法を提供することにある。
なお、本発明において、「常温」とは5℃〜45℃までの温度を含むものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、通常石鹸組成物に使用されている界面活性剤を使用することなく、所定組成の混合脂肪酸、特に飽和脂肪酸を所定のアルカリで鹸化するにあたり、アルカリ成分の一部として、石鹸成分として用いると泡立ちが劣ると言われている水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムを用いることで、上記課題を解決できる石鹸組成物及びその製造が可能となることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
石鹸組成物は、ラウリン酸及びミリスチン酸を含む炭素数が12〜24の脂肪酸からなる混合脂肪酸と、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム並びに、水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムと水とを含み、水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの質量比が90/10〜0/100以下であり、且つ水酸化カリウムと水酸化ナトリウムの合計質量100質量部に対して、水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムを0.1〜7質量部含むアルカリとの鹸化由来のラウリン酸マグネシウム及びミリスチン酸マグネシウムを含む脂肪酸マグネシウムを含有する原料石鹸及び水分を含む(但し、ジアルキルアンモニウム塩−アクリルアミド共重合体は含まない)ことを特徴とする、石鹸組成物である。
【0010】
また、
好適な石鹸組成物において
は、前記脂肪酸は飽和脂肪酸であり、更に、多価アルコール及び水を含み、原料石鹸を20〜40質量%、多価アルコール類を20〜50質量%、水分を11〜50質量%含むことを特徴とする、石鹸組成物である。
更に好適な石鹸組成物において
は、更にタルクを8質量%以下含み、ステアリン酸マグネシウムを10質量%以下で含むことを特徴とする、石鹸組成物である。
【0011】
請求項
1記載の発明は、
枠練り固形石鹸又はペースト状石鹸を製造する方法であって、ラウリン酸及びミリスチン酸を含む炭素数が12〜24の脂肪酸からなる混合脂肪酸と、
下記水酸化カリウムと水酸化ナトリウムの合計質量100質量部に対して0.1〜7質量部で配合される水酸化マグネシウム又は
1.38〜2.07質量部で配合される酸化マグネシウムと水とを加熱しながら撹拌混合して
80〜110℃で反応させた均質な混合液としたのち、該混合液を70〜130℃で加熱しながら、水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの質量比が90/10〜0/100である混合アルカリを添加して、ラウリン酸マグネシウム及びミリスチン酸マグネシウムを含む脂肪酸マグネシウムを含有する原料石鹸を調製する鹸化工程を含
むことを特徴とする、石鹸組成物の製造方法である。
【0012】
請求項
2記載の発明は、請求項
1記載の石鹸組成物の製造方法において、原料石鹸を製造するにあたり、
前記ラウリン酸及びミリスチン酸を含む炭素数が12〜24の脂肪酸及び、水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムとともに、水及び多価アルコール類を配合して反応させることによって、均質な混合液を得ることを特徴とする、石鹸組成物の製造方法である。
請求項
3記載の発明は、請求項
1または
2記載の石鹸組成物の製造方法において、更にタルク及びステアリン酸マグネシウムを、前記鹸化前又は鹸化後に添加配合することを特徴とする、石鹸組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の石鹸組成物は、使用時における石鹸の溶け出しが早いとともに、高い起泡力を有し、常温において膨潤したり流れだしたりすることがなく、優れた使用性を有する。
また、本発明の石鹸組成物は、脂肪酸石鹸分を洗浄成分とし、界面活性剤を含むことがないため、皮膚への刺激が少なく、環境的にも優れている。
更に、水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムを特定の割合でアルカリ成分として含むことで、石鹸分を多く含み、通常ゲル化して撹拌混合できない石鹸組成物であってもゲル化することなく均質な石鹸組成物を調製することができる。
また、タルクを配合すると石鹸組成物のキメがより細かくなると同時に泡が安定化するという優れた効果がある。更に、ステアリン酸マグネシウムを配合することで、均質な流動性に優れるペースト状の石鹸組成物を得ることができる。
また、本発明のペースト状石鹸組成物の製造方法は、上記本発明のペースト状石鹸組成物を効率よく製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を以下の好適例に基づいて説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明の石鹸組成物は、炭素数が12〜24の脂肪酸からなる混合脂肪酸を、水酸化カリウムを90質量部以下、水酸化ナトリウムを10〜100質量部で、且つ水酸化カリウムと水酸化ナトリウムの合計質量100質量部に対して、水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムを0.1〜7質量部含むアルカリで鹸化して得られる原料石鹸を含み、好適には前記脂肪酸は飽和脂肪酸であり、更に、多価アルコール及び水を含み、原料石鹸を20〜40質量%、多価アルコール類を20〜50質量%、水分を11〜50質量%含む、石鹸組成物である。
より好適には、タルクを8質量%以下含み、ステアリン酸マグネシウムを10質量%以下で含む石鹸組成物である。
かかる構成を有することで、常温、具体的には5〜45℃で、使用時において溶け出しが早く高い気泡力を有するとともに、常温において膨潤したり流れだしたりすることがなく、使用性に優れ、また皮膚や目に対して刺激が少なく、環境にも優しい、固体状またはペースト状の石鹸組成物を得る。
【0015】
本発明の石鹸組成物に含まれる脂肪酸としては、炭素原子数12〜24の、飽和脂肪酸及び/又は不飽和直鎖脂肪酸の少なくとも1種、好ましくは2種以上の混合脂肪酸である。
特に、炭素数12〜18の飽和脂肪酸及び/又は不飽和直鎖脂肪酸が好適に使用でき、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びそれらの混合物である混合脂肪酸、更に、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の水素添加による半硬化及び/又は完全硬化脂肪酸の分留脂肪酸を単独でまたは混合脂肪酸として使用することができる。また、ヤシ油、パーム核油、パーム等の水素添加による半硬化及び/又は完全硬化油を単独でまたは混合油として使用することができる。
また更に好適には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸の混合脂肪酸とすることが低臭気性、色相の経時安定性の点から望ましい。
特に、上記脂肪酸を2種以上の混合脂肪酸とするのは、得られる石鹸組成物に良好な起泡性、泡の安定性、適度な洗浄力を発揮させることができるからである。
【0016】
より好ましくは、本発明の石鹸組成物の石鹸分の原料となる混合脂肪酸の組成としては、脂肪酸中、ラウリン酸等の炭素原子数12の脂肪酸が0〜50質量%、ミリスチン酸等の炭素数14の脂肪酸が30〜80質量%、パルミチン酸等の炭素数16の脂肪酸が5〜30質量%、ステアリン酸やオレイン酸等の炭素数18の脂肪酸が0〜30質量%であることが、良好な起泡性、泡の安定性、適度な洗浄力を発揮する石鹸組成物を製造できる点から好ましい。
【0017】
本発明の石鹸組成物の製造方法において、上記混合脂肪酸を中和して脂肪酸石鹸を得るために使用するアルカリは、水酸化カリウム/水酸化ナトリウム/水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムの混合物である。アルカリ成分中、水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの質量比は90/10〜0/100である。これらの水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムは、別個に配合しても、または予め配合された混合アルカリを用いてもいずれでも良い。
特に好ましい水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの質量比は、80/20〜50/50である。
【0018】
水酸化カリウムの質量比率が90より高くなってしまうと、得られる石鹸組成物が常温において流動性を有してしまうからである。特にペースト状の石鹸組成物を得るには、水酸化カリウムは50以上であることが望ましく、これは50より水酸化カリウムの比率が低くなると石鹸の硬度が上昇してペースト状でなくなってしまう傾向があるからである。
また、混合脂肪酸の中和には、かかるアルカリを予めアルカリ水溶液(例えば、有効分濃度48%を基準)として用いる方が短時間で均一な溶液を得ることができる。
【0019】
また水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムは、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムの合計質量100質量部に対して、0.1〜7質量部配合する。かかる配合量で水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムを含有することにより、上記効果を発現することが可能となる。
水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムの配合量が7質量部を超えると、泡立ちが低下したり、石鹸の硬さが低下する。また0.1質量部未満では、豊富な泡立ちが得られなくなる。特に、ペースト石鹸においては、常温において安定なペースト状態が得られなくなる。また固体状石鹸においては低温での泡立ち易さが低下する。
【0020】
上記混合脂肪酸と混合アルカリを鹸化して得られた脂肪酸石鹸分としては、例えば、ラウリン酸カリウム/ナトリウムの混合塩、ミリスチン酸カリウム/ナトリウムの混合塩、パルミチン酸カリウム/ナトリウムの混合塩、ステアリン酸カリウム/ナトリウムの混合塩及びオレイン酸カリウム/ナトリウムの混合塩等が挙げられ、これらを2つ以上混合して使用することが起泡性で且つ泡立ちの良いペースト状石鹸を製造できる点から望ましい。
より好ましくは、ラウリン酸カリウム/ラウリン酸ナトリウムの混合塩、ミリスチン酸カリウム/ミリスチン酸ナトリウムの混合塩、パルミチン酸カリウム/パルミチン酸ナトリウムの混合塩、ステアリン酸カリウム/ステアリン酸ナトリウムの混合塩などの、飽和脂肪酸カリウム/飽和脂肪酸ナトリウムの混合塩が、得られる石鹸組成物の臭気、酸化による色相の黄変などの経時変化が少ないために望ましい。
【0021】
本発明の石鹸組成物中、脂肪酸石鹸分は、20〜40質量%、好ましくは22〜39質量量%含む。
脂肪酸石鹸分が20質量%未満となると、使用時、充分な泡量が得られない場合があり、一方40質量%を超えると、脂肪酸のアルカリによる鹸化工程で粘度が上昇し、均質な石鹸が得られ難くなる。
【0022】
また、好ましくは、本発明の石鹸組成物がペースト状である場合には、ステアリン酸マグネシウムを10質量%以下、好ましくは8質量%以下で含む。
ステアリン酸マグネシウムが10質量%を超えると、ペースト状組成物の流動性は減少するがペーストのキメが粗くなってしまう。
【0023】
また、ステアリン酸マグネシウムを含むことで、常温(5〜45℃)における高温側でも流動性を抑制し、低温での硬化を抑制するという作用があり、また洗浄時において制泡性もなく潤滑性のある泡を提供できると共に洗浄後にしっとり感等良好な感触を与えることができる。
好ましくは、ステアリン酸マグネシウムの脂肪酸基は炭素数18のものを80質量%以上含んでいることが望ましい。炭素数18未満の脂肪酸基が多くなるとペースト状である石鹸組成物の流動性が大きくなる傾向がある。
【0024】
ここで、本発明の石鹸組成物にはステアリン酸カルシウムは含まれず、ステアリン酸カルシウムは、ステアリン酸マグネシウムの代替として使用することはできない。
これは、ステアリン酸カルシウムでは、ペースト状となる石鹸組成物の流動性を抑制することができず、また低温での硬化を抑制することが難しいためである。
【0025】
さらに好適には、本発明の石鹸組成物には、タルクを含有する。
タルクは、本発明の石鹸組成物中に8質量%以下、好ましくは0.5〜8質量%の割合で含有される。
かかる含有割合でタルクを含むことにより、石鹸組成物の状態が流れにくくなると同時に硬化を抑制するという効果がある。
【0026】
また、本発明の石鹸組成物には、水が含まれ、該水は添加水及び各原料に含まれる水及び脂肪酸とアルカリとの中和によって生成する水分等が該当し、石鹸組成物中、11〜50質量%、好ましくは11〜47質量%である。
水分は水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの質量比が90/10から0/100になるにつれて、より多くの水分を含有することが必要となる。水酸化ナトリウムの使用割合が高くなるにつれて、鹸化によって生成する脂肪酸のナトリウム塩の濃度が高くなるが、生成する脂肪酸のナトリウム塩の水に対する溶解度が小さいためと考えられる。
水分が50質量量%を超えると、使用時に満足する起泡性、泡量が得られにくくなり、一方11質量%未満となると、固体状石鹸は製造時粘度が上昇し混合が難しくなる。
かかる範囲で水の含有量を調整すると、常温におけるペースト状石鹸組成物は、粘度も適正な範囲であり、流れ出す等の流動性を有さず、また硬く固形化することもない、ペースト状石鹸組成物を得ることができる。
【0027】
また、本発明の石鹸組成物には、多価アルコール類を含有する。
多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール等が例示できる。
多価アルコール類は、本発明の石鹸組成物中、20〜50質量%、好ましくは30〜47質量%の割合で含有される。
含有量が25質量%未満では、低温でのペースト状態は得にくく、固体化においても鹸化工程で撹拌混合が難しくなる。また、50質量%を超えると、ペースト状態は、夏場の常温ではペーストが流動してしまう。また、固体状態は、常温においても柔らか過ぎることとなる。
かかる含有割合で多価アルコール類を含むことにより、本発明の石鹸組成物の製造時に、例えば、60〜130℃、好ましくは70〜130℃でゲル化することもなく容易に鹸化することができ、水への溶解が速くなると同時に起泡しやすくなるという効果がある。
【0028】
上記本発明の石鹸組成物を製造するには、以下の方法が例示できる。
炭素数が12〜24の脂肪酸からなる混合脂肪酸と、水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムを加熱溶融し、撹拌混合して均質な混合液とする。次いで、該混合液を70〜130℃で加熱しながら、水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの質量比が90/10〜0/100である混合アルカリで鹸化する工程が実施される。水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの配合質量比は90/10〜0/100であり、且つ水酸化カリウムと水酸化ナトリウムの合計質量100質量部に対して、水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムを0.1〜7質量部配合することにより原料石鹸を調製する。
【0029】
このようにして得られた原料石鹸は、ニートソープとして、また必要に応じてソープチップを調製し、機械練固形石鹸、枠練り固形石鹸、ペースト状石鹸を製造することができる。
【0030】
更にタルク及びステアリン酸マグネシウムを、前記鹸化前又は鹸化後に添加配合することで、特に、流動性に優れたペースト状石鹸組成物が得られる。
ステアリン酸マグネシウムは、初期原料として脂肪酸、水、多価アルコール、水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムとともに配合しても、また鹸化後に、石鹸組成物を調製する際に添加配合してもいずれでもよい。
【0031】
また、必要に応じて、上述した必須成分以外にも高級アルコール類、スクワラン、種々の液体状あるいは固体状脂肪酸エステル類、オリーブ油、ゴマ油等の各種精製天然油脂類などの油性成分、ポリオキシエチレンアルキル変性ジメチルシリコ―ンなどのシリコーン誘導体、各種水溶性高分子、各種キレート剤、各種防腐剤、各種紫外線防止剤、動植物由来の各種天然抽出物類、凝固点、硬度の調節に食塩、ボウ硝等の無機塩、酸化防止剤、色素類、香料類、その他を本発明の効果を損なわない程度の範囲内で任意に配合させることができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を次の実施例、比較例及び試験例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
使用した配合原材料は下記のものである。
[配合成分]
(1)脂肪酸
ラウリン酸(MW200):商品名 IMEX C1299 InterMed
Sdn.Bhd
ミリスチン酸(MW228):商品名 IMEX C1499 InterMed
Sdn.Bhd
パルミチン酸(MW256):商品名 IMEX C1498 InterMed
Sdn.Bhd.
ステアリン酸(MW284):商品名 IMEX STEARIC ACID ST
InterMed Sdn.Bhd.
(2)アルカリ
水酸化ナトリウム:商品名 カセイソーダ液 含有量48% 純正化学株式会社
水酸化カリウム :商品名 カセイカリ液 含有量48% 純正化学株式会社製
水酸化マグネシウム粉末(100%)試薬:昭和一級 昭和化学株式会社製
酸化マグネシウム:商品名 酸化マグネシウム(UC95/S/M/H) 宇部マテリアルズ株式会社製
(3)多価アルコール類
グリセリン:商品名 IMEX GLYCERINE 99.5 USP/BP
InterMed Sdn.Bhd.
(4)ソルビトール:商品名 NEOSORB70/70(成分・含有量:70質量%)
(5)精製水:商品名 高純度精製水(成分・含有量:純粋100%) 株式会社山栄製(6)タルク:商品名 SW−A TALC(成分・含有量:100%)浅田製粉株式会
社
(7)ステアリン酸マグネシウム :ダイワックス(ステアリン酸マグネシウム M)大日化学工業株式会社
【0033】
(実施例1〜30、比較例1〜9)
冷却還流管と攪拌機をつけた2Lのガラス製四つ口フラスコに、所定量の精製水と、所定量の水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムと、所定量のグリコールと、所定の脂肪酸とを、表1〜3に示す原料仕込配合割合で仕込み、加温・撹拌しながら80〜110℃まで昇温して水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムが溶解、反応して、添加した固体物が消失して、白濁混合状態となるまで、撹拌を続行した。
【0034】
次いで、温度を70℃以上、好ましくは70〜130℃に保持しながら所定量の酸化カリウム水溶液及び/又は水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ単独または混合物で徐々に滴下しながら鹸化(中和)して、石鹸分(原料ソープ)を調製した。
その後、50〜100℃、好ましくは60〜95℃で撹拌しながら、均一な混合物が得られるまで熟成した(約1時間程度)。
熟成後、養生用の容器に入れて冷却して、各石鹸組成物1kgを得た。
また得られた各石鹸組成物の性状も表1〜3に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
(試験例)
試験例1:起泡力試験
実施例1〜32、比較例1〜9で得られた各石鹸組成物から複数の石鹸組成物を抜粋して、起泡力試験を行った結果を表1〜3に示す。
具体的には、実施例1〜10、12〜14、16、19〜21、26、29〜32及び比較例1〜3、5の各石鹸組成物に水を配合して試験用石鹸溶液200gを調製するにあたり、該溶液中の石鹸分が、0.30質量%となるように石鹸組成物を秤取して、各試験用石鹸溶液を調製した。
具体的には、例えば実施例1の石鹸組成物では表1より石鹸分が22,6質量%であるので、石鹸分0.3質量%の試験用石鹸溶液200gを調製するためには、下記の式で求められる石鹸組成物2.65gを秤取した。
実施例1の石鹸組成物(g)={200(g)×0.3(質量%)/100}/{22.6(質量%)/100}=2.65(g)
該実施例1の石鹸組成物2.65(g)を200mlのガラスビーカーに秤取し、更に水を加えて全質量を200gとし、撹拌溶解して起泡力を実施した。
このようして得られた各石鹸組成物溶液を、泡立て装置(TESCOM TM8100)ジュースミキサー(容量1000ml)に注入し、注入後ふたをかぶせてから10秒間撹拌し、2分間静置した後、起泡高を測定した。
その結果を表1〜3に示す。
【0039】
上記結果より、配合成分が本発明の範囲内であるペースト状または固体状の石鹸組成物では、高い安定した起泡力を有し、配合成分が本件発明の範囲外であったり、その配合量が本件発明の範囲外等であると、得られる石鹸は、起泡力に劣ることがわかる。なお、表1〜3に具体的に値を記載していない他の実施例においても、表1〜3に記載の実施例のものとほぼ同等の起泡高を有し、ペースト状石鹸のものは少なくとも700ml以上、また固体石鹸のものは715ml以上の起泡高であった。
【0040】
試験例2:溶解性試験
実施例1〜32、比較例1〜10で得られた各石鹸組成物から数種類の石鹸組成物を抜粋して、溶解性試験を行った。
実施例15〜17、22及び比較例4、6で得られた各石鹸組成物を、石鹸製造用ゴム型に充填して、予め準備した長さ500mm、直径8mmmの金属ねじ棒を、前記ゴム型の注入口より垂直かつ中心部の底部まで入れて固定し、24時間以上静置して固化させた。
該固化した各石鹸を外形が円状になるように調製し、石鹸と金属ねじ棒の総質量(A)を測定した。
【0041】
次いで、撹拌モータ(商品名 TORNADO 型番:SM−103、AS ONE CORPORATION社製)に金属ねじ棒を回転軸としに固定するとともに、予め準備した25℃の水2000mlを入れた3000mlのビーカーの中に、金属ねじ棒で固定された各石鹸がビーカーの壁面や底面に触れないように底部から10mm上部に石鹸の底部が位置するように固定した。
次いで、水温を30℃に保持して30分間、450rpmで撹拌モータにて回転させたのち、ビーカーから引き上げて、更に700rpmで3分間回転させて水分を切った後の石鹸と金属ねじ棒の総質量(B)を測定した。
溶出率として、以下の式を用いて評価した。
溶出率(%)=(浸漬後の総質量(A)−浸漬前の総質量(B))×100/浸漬前の総質量(A)
その結果を表4に示す。
【0042】
【表4】
【0043】
上記表1〜4より、本発明の石鹸は、比較例の石鹸と比較して、石鹸の溶出率が高く、実際に使用する際の実用温度範囲において、溶け出しが迅速であり(溶解性試験)、また石鹸の溶け崩れが少ない(膨潤試験)ことがわかる。なお、表4に具体的に記載していない他の実施例においても、溶出率は表4に記載のものとほぼ同等の値を有し、溶出率≦−5%であった。