特許第6472175号(P6472175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472175
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20190207BHJP
   G01D 5/16 20060101ALI20190207BHJP
   G01D 5/244 20060101ALI20190207BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   G01D5/245 110A
   G01D5/16 M
   G01D5/244 F
   G01B7/00 101H
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-119043(P2014-119043)
(22)【出願日】2014年6月9日
(65)【公開番号】特開2015-232473(P2015-232473A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2016年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久須美 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】武井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】石本 茂
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/161027(WO,A1)
【文献】 特開昭58−154613(JP,A)
【文献】 特開2013−234939(JP,A)
【文献】 特開2010−213115(JP,A)
【文献】 特開2014−92526(JP,A)
【文献】 特開2010−145166(JP,A)
【文献】 特開2009−281938(JP,A)
【文献】 特開2012−119613(JP,A)
【文献】 特開2012−122792(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/111494(WO,A1)
【文献】 特開2012−127788(JP,A)
【文献】 特開昭59−221616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
G01R 33/00−33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気信号が磁性媒体に磁気記録されたスケールと、
前記スケールの磁気信号記録面を走査可能に配置され、前記スケールからの漏洩磁気を検出する少なくとも2個の磁気検出素子と、
前記少なくとも2個の磁気検出素子を接続した中間点から出力される信号に基づいて、前記スケールに対する位置を検出する位置検出部と、
前記磁気検出素子のそれぞれに隣接して配置されたバイアス磁場発生部とを備え、
前記少なくとも2個の磁気検出素子は、素子に印加された磁気に対して一方の素子の抵抗値が増加する時、他方の抵抗値は減少するトンネル磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗効果素子よりなり、前記スケールを走査する方向と直交した方向に並べて配置されると共に、前記スケールの磁気信号記録面からの距離がほぼ等しい位置に配置され、
さらに、前記少なくとも2個の磁気検出素子のそれぞれは、バリア層を挟んだ第1及び第2の磁性層を有する素子によって構成され、前記第1の磁性層の磁化方向は、位置検出を行う方向と平行又は反平行に固定された状態とし、前記第2の磁性層は、前記スケールからの漏洩磁気により磁化方向が決まる状態とし、前記第1の磁性層の磁化方向として、平行又は反平行の第1の方向に設定した磁気検出素子と、前記第1の方向と逆の平行又は反平行の第2の方向に設定した磁気検出素子とを設け、
前記磁気検出素子ごとに隣接して配置された前記バイアス磁場発生部は、前記第2の磁性層にバイアス磁場を印加し、前記スケールからの漏洩磁気がない状態で前記第2の磁性層の磁化方向を前記第1の磁性層の前記磁化方向とは異なる方向とし、
前記バイアス磁場発生部が印加するバイアス磁場により、前記スケールからの漏洩磁場の影響がない場合におけるそれぞれの前記磁気検出素子の抵抗値が、最小の抵抗値と最大の抵抗値の中間付近の抵抗値となるようにした
位置検出装置。
【請求項2】
それぞれの前記磁気検出素子に隣接して配置された前記バイアス磁場発生部は、個々の磁気検出素子を挟んだ位置から、前記磁気検出素子毎に前記バイアス磁場を印加するものであり、
前記第1の磁性層と前記バリア層と前記第2の磁性層とを積層した方向とは直交する位置で、前記バイアス磁場発生部が前記磁気検出素子を挟むように配置した
請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記磁気検出素子として、前記スケールを走査する方向と直交した方向に並べて配置される第1、第2、第3及び第4の磁気検出素子を備え、
前記第1及び第2の磁気検出素子の前記第1の磁性層の磁化方向を、前記第1の方向と前記第2の方向に設定すると共に、前記第3及び第4の磁気検出素子の前記第1の磁性層の磁化方向を、前記第1の方向と前記第2の方向に設定し、
前記第1の磁気検出素子と前記第2の磁気検出素子を接続して出力される信号と、前記第3の磁気検出素子と前記第4の磁気検出素子を接続して出力される信号とが、相互に反転した信号になるようにした
請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気スケールと磁気検出素子との相対位置を検出する位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直線変位や回転変位等の精密な変位位置を検出する位置検出装置として、磁気スケールと磁気検出素子を備えた位置検出装置が知られている。この位置検出装置は、例えば搬送物の高精度な位置決め制御が必要とされる電子部品の実装装置や部品の寸法を検出(測定)する検出(測定)装置等に広く利用されている。
【0003】
図15は、従来の磁気式の位置検出装置の磁気スケールと磁気検出素子の配置例を示す図である。図15の例は、直線変位を検出する場合であり、磁気媒体で構成された磁気スケール1を備える。磁気スケール1は、S極とN極の磁化方向を一定の距離ごとに反転させている。このS極とN極が繰り返される1単位が、磁気スケール1の記録信号の1波長となる。
位置検出装置は、磁気スケール1に近接した位置に、磁気検出素子3a〜3hが配置された検出部2を備える。磁気検出素子3a〜3hとしては、例えば異方性磁気抵抗効果を利用したAMR(Anisotropic Magneto-Resistance)素子が使用されている。この磁気検出装置では、磁気スケール1が固定側に、検出部2が可動側に配置されており、位置検出装置は、磁気スケール1と検出部2との相対位置を検出するようになっている。
【0004】
図16は、8個の磁気検出素子3a〜3hの配置例を示す図である。図16Aは磁気スケール1の上面から見た素子配置であり、図16Bは磁気スケール1の断面方向で見た素子配置である。
磁気スケール1は、長手方向に一定間隔でN極とS極に着磁されている。そして、磁気検出素子21が検出する磁気信号としては、N極とS極が変化する1つの周期が1波長λになる。検出素子21が出力する電気信号としては、その1波長λの1/2で、1ピッチPになる。N極とS極は、1ピッチ間隔で直線状に並んでいる。
【0005】
磁気スケール1に近接して、4個の磁気検出素子3a〜3dが近接配置される。これら4個の磁気検出素子3a〜3dの配置間隔としては、図16Aに示すように、2つの磁気検出素子3a,3bが1ピッチPの間隔で配置され、別の2つの磁気検出素子3c,3dが1ピッチPの間隔で配置される。そして、磁気検出素子3aと磁気検出素子3cとが、(n+1/2)Pだけ離して配置される。nは、整数である。これら4個の磁気検出素子3a〜3dは直列に接続されている。この4個の磁気検出素子3a〜3dを直列に接続した直列回路が、所定の電位Vの箇所と接地電位部GNDとの間に接続され、その直列回路の中点(すなわち磁気検出素子3b,3cの接続点)から、信号Ch+が取り出される。
【0006】
さらに、これら4個の磁気検出素子3a〜3dと一定の距離(m+1/2)Pだけ離して、別の4個の磁気検出素子3e〜3hが配置される。mは、整数である。これら4個の磁気検出素子3e〜3hは、磁気検出素子3a〜3dと同じ配置間隔で直列に接続されている。そして、4個の磁気検出素子3e〜3hを直列に接続した直列回路が、所定の電位Vの箇所と接地電位部GNDとの間に接続され、その直列回路の中点(すなわち磁気検出素子3f,3gの接続点)から、信号Ch−が取り出される。
【0007】
図17は、これら8個の磁気検出素子3a〜3hから検出信号を得る接続構成を示す図である。
4個の磁気検出素子3a〜3dの中点から得た信号Ch+と、4個の磁気検出素子3e〜3hの中点から得た信号Ch−とが、演算増幅器4に供給される。この演算増幅器4では、両信号Ch+,Ch−が増幅されて検出信号として取り出される。
【0008】
この図16図17に示す構成で磁気検出素子3a〜3hが検出した信号を取り出すことで、磁気スケールとの相対位置を検出するための検出信号が得られる。すなわち、4個の磁気検出素子3a〜3dの内の素子3a,3bと、素子3c,3dとを、記録信号の1波長の1/4の間隔で配置することにより、それぞれの組で検出される信号変化が逆相になる。すなわち、4個の磁気検出素子3a〜3dの直列回路の中点から取り出される信号Ch+と、4個の磁気検出素子3e〜3hの直列回路の中点から取り出される信号Ch−とが逆位相になる。
【0009】
さらに、これらの信号Ch+,Ch−は、演算増幅器4に供給され、演算増幅器4から増幅された検出信号が得られる。ここで、図17に示すようなブリッジ構成で、演算増幅器4により増幅する構成としたことにより、演算増幅器4から安定した検出信号が得られ、位置検出精度の向上に貢献することができる。すなわち、温度変化に対する個々の素子の抵抗値の変動をキャンセルできるので、素子に加わる温度変動に対して強くなる。また、演算増幅器4として差動増幅器を用いることで、信号レベルはほぼ倍になり、かつ同相のノイズが除去できるので外乱ノイズに対して強い、良好な検出信号が得られる。
特許文献1には、上述した磁気式の位置検出装置の例について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−36637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、従来から位置検出装置に使用されているAMR素子は、磁場の変化に対する抵抗変化率が比較的小さいという問題があった。このため、図15に示すように、それぞれの磁気検出素子3a〜3hを、磁気スケール1の幅方向に比較的長く配置するようにして、位置検出を行うために必要な感度を確保するようにしていた。
したがって、上述したように安定した検出信号を得るために多数の磁気検出素子3a〜3hを配置するためには、それぞれの磁気検出素子3a〜3hを、少なくとも1ピッチP以上ずれた異なる位置に配置する必要があった。
【0012】
磁気スケール1に記録された信号は、1ピッチごとにN極とS極が変化するため、原理的には、1ピッチ周期でずれた位置から検出された複数の素子の信号を加算又は減算することで、位置検出用の同相又は逆相の検出信号が得られる。
ところが、磁気スケール1上の各位置の記録信号には、ある程度の強度のばらつきがあるために、2つの信号Ch+,Ch−の絶対値が完全に等しいレベルにはならない。このため、演算増幅器4で増幅した信号には、ある程度のノイズが含まれてしまい、磁気スケール1に対するヘッドの相対位置の検出精度がそれだけ低下するという問題があった。
【0013】
本発明の目的は、精度の高い位置検出が可能な位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の位置検出装置は、磁気信号が磁性媒体に磁気記録されたスケールと、スケールの磁気信号記録面を走査可能に配置され、スケールからの漏洩磁気を検出する少なくとも2個の磁気検出素子と、少なくとも2個の磁気検出素子を接続した中間点から出力される信号に基づいて、スケールに対する位置を検出する位置検出部とを備える。
少なくとも2個の磁気検出素子は、素子に印加された磁気に対して一方の素子の抵抗値が増加する時、他方の素子の抵抗値が減少する磁気抵抗効果素子よりなる。本発明の位置検出装置に用いられる少なくとも2個の磁気検出素子は、スケールを走査する方向と直交した方向に並べて配置され、かつスケールの磁気信号記録面からの距離がほぼ等しい位置に配置されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、複数の磁気検出素子が、スケールを走査する方向と直交した方向に並べて配置されるため、スケールの同じ位置の記録信号から複数の検出信号が得られる。したがって、それぞれの磁気検出素子で検出される信号として、完全に逆相の信号とすることができ、外乱ノイズの除去性能を向上させることができる。また、スケールに記録された信号強度にばらつきがあった場合にも、そのばらつきが検出信号に悪影響を及ぼすことがなくなり、この点からも良好な検出信号が得られ、位置検出精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態による位置検出装置を含む機構全体構成の例を示す構成図である。
図2】本発明の第1の実施の形態による位置検出装置の素子配列例を示す斜視図である。
図3】本発明の第1の実施の形態による位置検出装置の素子配列例を示す断面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態による磁気検出素子の構成例を示す斜視図である。
図5】本発明の第1の実施の形態による磁気検出素子の抵抗値の変化例を示す説明図である。
図6】本発明の第1の実施の形態による磁気検出素子の接続例を示す構成図である。
図7】本発明の第1の実施の形態によるバイアス磁場が与える影響を示す説明図である。
図8】本発明の第1の実施の形態による磁気検出素子の検出状態を示す特性図である。
図9】本発明の第2の実施の形態による位置検出装置の素子配列例を示す構成図である。
図10】本発明の第2の実施の形態による磁気検出素子に接続される回路例を示す構成図である。
図11】本発明の第2の実施の形態による磁気検出素子の検出状態を示す特性図である。
図12】本発明の第2の実施の形態による位置検出装置の素子配列例の変形例を示す構成図である。
図13】本発明の実施の形態を原点トラックに適用した例を示す斜視図である。
図14】本発明の実施の形態をアブソリュートトラックに適用した例を示す斜視図である。
図15】従来の位置検出装置の磁気スケールと磁気検出素子との配置例を示す説明図である。
図16図15に示す磁気検出素子の配置状態の詳細を示す平面図(A)及び断面図(B)である。
図17】従来の磁気検出素子の接続例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<1.第1の実施の形態例>
以下、本発明の第1の実施の形態例を、図1図8を参照して説明する。
[1−1.位置検出装置の構成例]
図1は、本例の位置検出装置を駆動機構に組み込んだ際の、位置検出装置を含む機構全体構成の例を示す図である。
図1に示す装置100は、工作機械に適用した例である。すなわち、装置100は、固定部101の上に移動自在に配置された移動台102を備えた工作機械において、固定部101上の移動台102の移動距離を検出するものである。
移動台102には被工作物103が固定され、加工具105により被工作物103の加工が行われる。移動台102は、駆動部106による駆動で位置が変化する。
【0018】
移動台102には、磁気スケール11が配置されている。磁気スケール11は、一定の距離ごとにN極とS極に交互に着磁させた信号を記録した磁性媒体を、金属板の表面に形成した構成である。この磁気スケール11は、装置100で移動を検出する最大の距離以上の長さに形成されている。
【0019】
また、固定部101側には検出部20が配置され、この検出部20が磁気スケール11と近接している。そして、検出部20内の検出素子(図2に示す磁気検出素子21)が、磁気スケール11に記録された信号を検出する。ここでは、検出部20が複数の磁気検出素子を備えて、それぞれの磁気検出素子で、磁気スケール1の記録信号を正弦波形の信号(SIN信号)及び余弦波形の信号(COS信号)として検出する。なお、検出部20は、TMR素子(トンネル磁気接合素子)よりなる磁気検出素子21を複数個配置して構成される。
【0020】
検出部20が検出したこれらのSIN信号及びCOS信号は、位置検出部104に供給され、位置検出部104で、これらの信号から磁気スケール11と検出部20との相対位置が算出される。位置検出部104が算出した位置情報は、制御部107に供給される。制御部107は、目標位置入力部108から入力した目標位置情報と、位置検出部104から供給された位置情報との差分を算出し、その差分だけ移動台102を移動させる駆動信号を生成する。そして、制御部107で生成された駆動信号が駆動部106に供給される。駆動部106は、供給された駆動信号で示された移動量だけ移動台102を移動させる。
【0021】
[1−2.磁気検出素子の配置例]
図2及び図3は、磁気スケール11に対する検出部20(図1参照)が備える磁気検出素子の配置例を示す図である。図2及び図3では、SIN信号を得るための磁気検出素子の配置例を示す。COS信号を得る磁気検出素子についても、SIN信号を得る磁気検出素子群と離れた位置に、同様の配列で配置されている。
磁気スケール11は、N極着磁部11NとS極着磁部11Sとが一定間隔で連続している。図2に示すように、N極とS極が変化する1つの周期が1波長λになる。その1波長λの1/2が、1ピッチPになる。ここでは、1波長λを400μmとしている。
【0022】
磁気検出素子を構成するTMR素子は、トンネル磁気抵抗効果(TMR効果:Tunnel Magneto-Resistance Effect)を利用したものである。TMR素子には、磁場変化に対する抵抗値の変化が大きいという利点があり、磁気スケール11から漏洩する磁場を検出する磁気検出素子21にTMR素子を適用した場合、個々の磁気検出素子21を非常に小さいサイズにすることが可能である。この例では、2個の磁気検出素子21を使用する。以下の説明では、2個の磁気検出素子を区別して説明する必要がある場合、一方を磁気検出素子21−1とし、他方を磁気検出素子21−2とする。
【0023】
図2の例では、磁気スケール11の長手方向をx方向としたとき、このx方向と直交する幅方向であるy方向に、2つの磁気検出素子21−1,21−2を直線状に並べて配置する。また、図3図2のy方向の断面を示したものであるが、図3に示すように、2つの磁気検出素子21−1,21−2は、磁気スケール11の表面から、同じ高さに配置されている。すなわち、磁気スケール11の表面から一方の磁気検出素子21−1までの高さz1と、磁気スケール11の表面から他方の磁気検出素子21−2までの高さz2とは等しいものとする。
このように2つの磁気検出素子21−1,21−2を同じ高さとすることは、例えば2つの磁気検出素子21−1,21−2を同じ基板上に作成、配置することにより実現することができる。
磁気検出素子21−1に隣接した位置には、バイアス磁場発生部41−1,42−1が配置され、磁気検出素子21−2に隣接した位置には、バイアス磁場発生部41−2,42−2が配置される。これらのバイアス磁場発生部41−1,41−2,42−1,42−2は、磁気検出素子21−1,21−2よりも厚さが薄く形成され、例えば図3に示すように、各磁気検出素子21−1,21−2の上側の層(後述する固定層21a)と隣接した位置に配置される。したがって、磁気スケール11の表面から各バイアス磁場発生部41−1,41−2,42−1,42−2までの距離は、図3に示す距離z1,z2よりも多少大きい。バイアス磁場発生部41−1,41−2,42−1,42−2によるバイアス磁場が各磁気検出素子21−1,21−2に与える影響については後述する。
【0024】
[1−3.磁気検出素子の構成]
次に、図4を参照して、検出部20が備える磁気検出素子21の構成について説明する。
図4は、TMR素子である磁気検出素子21の構成例を示す図である。
図4に示すように、磁気検出素子21は、固定層21aとバリア層21bとフリー層21cの3層を有する構造になっている。なお、磁気検出素子21は、これらの層の他にも、信号の引き出しの為の配線層、保護層等、各種の層を備える構造であるが、ここでは説明を省略する。
磁気検出素子21には、2つのバイアス磁場発生部41,42が配置される。この2つのバイアス磁場発生部41,42は、TMR素子に、バイアス磁場を印加するためのものであり、磁気検出素子21を挟むように配置される。バイアス磁場発生部41,42は、例えば磁気検出素子21と一体の素子として構成される。図4の例では、それぞれのバイアス磁場発生部41,42は、例えば磁気検出素子21の固定層21aとほぼ同じ厚さであり、固定層21aと隣接した位置に、バイアス磁場発生部41,42が配置される。但し、バイアス磁場発生部41,42を固定層21aとほぼ同じ厚さとするのは1つの例であり、その他の厚さで形成してもよい。
【0025】
固定層21aは、磁化方向が固定された層である。固定層21aの磁化方向は、例えば、磁気スケール11のN極着磁部から漏洩する磁界方向と同じ方向になっている。
フリー層21cは、磁気スケール11から漏洩する磁気により磁化方向が変化する層である。これら固定層21aとフリー層21cは強磁性層であり、バリア層21bは絶縁層である。磁気検出素子21は、固定層21aとフリー層21cの磁化方向が同じとき、素子21全体の抵抗値が小さくなり、固定層21aとフリー層21cの磁化方向が逆のとき、素子21全体の抵抗値が大きくなる。このようにフリー層21cの磁化方向の変化に応じて磁気検出素子21の抵抗値が大きく変化する。さらにTMR素子は1個の磁気検出素子21の1辺の長さを2μm〜10μm程度の非常に小さいサイズとすることができる。
【0026】
図5は、磁気検出素子21内の各層の磁化方向と、抵抗値との関係を示す図である。
図5Aは、固定層21aの磁化方向とフリー層21cの磁化方向とが同じ方向であるとき(例えばN極着磁部11Nからの磁場を検出したとき)を示し、図5Bは、固定層21aの磁化方向とフリー層21cの磁化方向とが逆向きであるとき(例えばS極着磁部11Sからの磁場を検出したとき)を示す。
図5Cに示すグラフは、フリー層21cの磁化方向の変化による抵抗値の変化を示す。フリー層21cの磁化方向が0°のときが、図5Aに示す状態であり、フリー層21cの磁化方向が180°のときが、図5Bに示す状態である。
【0027】
図5Cから分かるように、フリー層21cの磁化方向が0°のとき、磁気検出素子21の抵抗値が最低になり、フリー層21cの磁化方向が180°のとき、磁気検出素子21の抵抗値が最大になる。そして、図5Cに示す特性の曲線から分かるように、フリー層21cの磁化方向が0°から180°の間であるとき、それぞれの角度に応じた抵抗値が得られる。
【0028】
[1−4.磁気検出素子の接続状態]
図6は、図1に示す検出部20内の2つの磁気検出素子21−1,21−2の接続例を示す図である。
磁気スケール11の幅方向(y方向)に直線状に並んだ2つの磁気検出素子21−1,21−2は、所定電圧Vが得られる箇所と接地電位部GNDとの間に直列に接続され、2つの磁気検出素子21−1,21−2の接続点から、検出信号が端子30に取り出される。この端子30に得られる信号が、磁気スケール11から検出したSIN信号である。
【0029】
2つの磁気検出素子21−1,21−2は、固定層21aの磁化方向を、相互に逆の方向に設定する。具体的には、図6にそれぞれの磁気検出素子21−1,21−2の上に矢印で示すように、磁気スケール11の長手方向であるx方向と平行な方向に、固定層21aの磁化方向を決める。そして、一方の磁気検出素子21−1の固定層21aの磁化方向を、x方向と平行な方向としたとき、他方の磁気検出素子21−1の固定層21aの磁化方向を、それとは逆の方向(ここでは反平行の方向)に設定する。
【0030】
磁気検出素子21−1の両脇には、バイアス磁場発生部41−1,42−1が配置され、磁気検出素子21−2の両脇には、バイアス磁場発生部41−2,42−2が配置される。
個々の磁気検出素子21−1,21−2における2つのバイアス磁場発生部41−1,42−1,41−2,42−2により印加するバイアス磁場は、図6に矢印で示すように、各磁気検出素子21−1,21−2の固定層21aの磁化方向と直交した方向である、y方向と平行な方向に設定している。
【0031】
[1−5.バイアス磁場とスケール磁場が与える影響の例]
図7は、バイアス磁場とスケール磁場の影響で、それぞれの磁気検出素子21−1,21−2の抵抗値が変化する様子を説明する図である。図7Aは、バイアス磁場発生部41,42からのバイアス磁場だけがフリー層21cに加わった状態を示す。この図7Aのときのバイアス磁場の方向は、例えば最大の抵抗値と最小の抵抗値のほぼ中間の値となる方向とする。
図7B及びCは、このバイアス磁場が加わった状態で、磁気スケール11からの一方又は他方の磁場が検出された状態を示す。図7Bに示す状態では、磁気検出素子21の固定層21aの磁化方向とフリー層21cの磁化方向は同じであり、図7Cに示す状態では、磁気検出素子21の固定層21aの磁化方向とフリー層21cの磁化方向は180°異なる方向である。
磁気検出素子21は、図7Bに示す状態のとき最小の抵抗値Raとなり、図7Cに示す状態のとき最大の抵抗値Rbとなる。
【0032】
図7Dは、磁気検出素子21の最小の抵抗値Raと最大の抵抗値Rbの関係を示す図である。磁気スケール11からの漏洩磁場の影響がない場合には、この最小の抵抗値Raと最大の抵抗値Rbの中間付近の抵抗値となる。
【0033】
[1−6.磁気検出素子の検出信号の例]
図8は、2つの磁気検出素子21−1,21−2の接続点から引き出した端子30(図6)に得られる信号の例を示す図である。
図8Aは、磁気スケール11から磁気検出素子21−1,21−2に影響を与える漏洩磁場の方向を破線で示す。図8Aでは、2つの磁気検出素子21−1,21−2は重なった位置になる。図8Bは、この磁気スケール11からの漏洩磁場の影響で、2つの磁気検出素子21−1,21−2の抵抗値が変化する状態を示す。抵抗値変化特性R1は、磁気検出素子21−1の特性を示し、抵抗値変化特性R2は、磁気検出素子21−2の特性を示す。ここでは、図8Bに示すように、磁気検出素子21−1の抵抗値変化特性R1が変化する方向と、磁気検出素子21−2の抵抗値変化特性R2が変化する方向とが逆である。
【0034】
図8Cは、端子30(図6参照)に得られる電圧信号の変化特性V1を示す。この電圧の変化特性V1は、磁気スケール11の一方の極の漏洩磁場が最大のとき、最も高い電圧になる。そして、磁気スケール11の漏洩磁場の減少に応じて、電圧が低下する。磁気検出素子21−1,21−2と磁気スケール11との相対位置が変化するとき、この電圧の変化特性が正弦波として検出される。
【0035】
この端子30に得られる正弦波であるSIN信号が、図1に示す位置検出部104に供給される。また、不図示の検出部からCOS信号が位置検出部104に供給される。これらのSIN信号とCOS信号を使用した演算処理が位置検出部104で行われ、磁気スケール11と検出部20との相対位置が算出される。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態例の位置検出装置によると、磁気スケール11からの漏洩磁場を検出する2つの磁気検出素子21−1,21−2が、スケールを走査する方向と直交した方向に並べて配置されるため、磁気スケール11の同じ位置の記録信号から2つの磁気検出素子21−1,21−2が信号検出するようになる。このため、2つの磁気検出素子21−1,21−2で検出される信号として、同じ位置の記録信号による完全に逆相の信号とすることができ、外乱ノイズの除去性能を向上させることができる。
また、磁気スケール11に記録された信号強度にばらつきがあった場合にも、2つの磁気検出素子21−1,21−2への信号強度の変動が同じタイミングで現れるようになり、変動成分をキャンセルできるようなる。このため、信号強度のばらつきが検出信号に悪影響を及ぼすことがなくなり、この点からも良好な検出信号が得られ、位置検出精度が向上する。
【0037】
<2.第2の実施の形態例>
以下、本発明の2の実施の形態例を、図9図12を参照して説明する。この図9図12において、第1の実施の形態例で説明した図1図8に対応する部分には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
本発明の第2の実施の形態例において、位置検出装置の全体構成については、例えば図1に示す構成が適用される。そして、検出部20内の磁気検出素子21の配置状態が、第1の実施の形態例とは異なるものである。
【0038】
[2−1.磁気検出素子の配置状態及び接続状態]
この例では、図9に示すように、検出部20が4個の磁気検出素子21−11,21−12,21−23,21−24を備える。4個の磁気検出素子21−11,21−12,21−23,21−24は、磁気スケール11の幅方向(y方向)に直線状に配置される。この4個の磁気検出素子21−11,21−12,21−23,21−24は、直列に接続され、中央の2つの磁気検出素子21−12,21−23の接続点に、所定電圧Vが印加される。また、4個の磁気検出素子21−11,21−12,21−23,21−24よりなる直列回路の一端及び他端は、接地電位部GNDに接続される。そして、磁気検出素子21−11,21−12の接続点から、SIN信号が端子31に取り出される。また、磁気検出素子21−13,21−14の接続点から、−SIN信号が端子32に取り出される。
【0039】
4個の磁気検出素子21−11,21−12,21−23,21−24は、それぞれの固定層21aの磁化方向を、1個ずつ順に逆の方向に設定する。具体的には、図9にそれぞれの磁気検出素子21−11,21−12,21−23,21−24の上に矢印で示すように、磁気スケール11の長手方向であるx方向と平行な方向に、固定層21aの磁化方向を決める。そして、磁気検出素子21−11,21−23の固定層21aの磁化方向を、x方向と平行な方向としたとき、磁気検出素子21−12,21−24の固定層21aの磁化方向を、これとは逆向きの方向(ここでは反平行の方向)に設定する。
【0040】
磁気検出素子21−11の両脇には、バイアス磁場発生部41−11,42−11が配置され、磁気検出素子21−12の両脇には、バイアス磁場発生部41−12,42−12が配置される。また、磁気検出素子21−13の両脇には、バイアス磁場発生部41−13,42−13が配置され、磁気検出素子21−14の両脇には、バイアス磁場発生部41−14,42−14が配置される。これらのバイアス磁場発生部41−11〜41−14,42−1,42−11〜42−12により印加するバイアス磁場は、図9に矢印で示すように、各磁気検出素子21−11,21−12,21−23,21−24の固定層21aの磁化方向と直交した方向である、y方向と平行な方向に設定する。
なお、4個の磁気検出素子21−11,21−12,21−23,21−24は、磁気スケール11(図9では不図示)の表面からの距離が等しい位置に配置される。
【0041】
[2−2.検出信号を処理する回路の例]
図10は、端子31,32(図9)に得られるSIN信号及び−SIN信号が供給される回路構成例を示す図である。
図10に示すように、端子31に得られるSIN信号が、抵抗器R11を介して演算増幅器33の−側の入力端に供給される。また、端子32に得られる−SIN信号が、抵抗器R12を介して演算増幅器33の+側の入力端に供給される。この演算増幅器33の−側の入力端と出力端は、抵抗器R13により接続される。また、演算増幅器33の+側の入力端は、抵抗器R14を介して接地電位部GNDに接続される。
【0042】
この図10に示す演算増幅器33は、端子31に得られるSIN信号と、端子32に得られる−SIN信号との差分を増幅する差動増幅回路として機能し、出力端に増幅されたSIN信号が得られる。この演算増幅器33の出力端に得られるSIN信号が、出力端子34から、位置検出部104(図1)に供給される。
【0043】
[2−3.磁気検出素子の検出信号の例]
図11は、4個の磁気検出素子21−11,21−12,21−23,21−24から端子31,32に得られる信号の例を示す図である。
図11Aは、磁気スケール11から磁気検出素子21−11,21−12,21−23,21−24に影響を与える漏洩磁場の方向を破線で示す。図11Aでは、4つの磁気検出素子21−11,21−12,21−23,21−24は重なった位置になる。図11Bは、この磁気スケール11からの漏洩磁場の影響で、各磁気検出素子21−11,21−12,21−23,21−24の抵抗値が変化する状態を示す。抵抗値変化特性R1′は、磁気検出素子21−11,21−13の特性を示し、抵抗値変化特性R2′は、磁気検出素子21−12,21−24の特性を示す。ここでは、図11Bに示すように、磁気検出素子21−11,21−13の抵抗値変化特性R1′が変化する方向と、磁気検出素子21−12,21−24の抵抗値変化特性R2′が変化する方向とが逆である。
【0044】
図11Cは、端子31に得られる電圧信号の変化特性V1′を示す。この電圧の変化特性V1′は、磁気スケール11の一方の極の漏洩磁場が最大のとき、最も高い電圧になる。そして、磁気スケール11の漏洩磁場の減少に応じて、電圧が低下する。各磁気検出素子21−11,21−12,21−23,21−24と磁気スケール11との相対位置が変化するとき、この電圧の変化特性が正弦波として検出される。
【0045】
図11Dは、端子32に得られる電圧信号の変化特性V2′を示す。この電圧の変化特性V2′は、図11Cに示す変化特性V1′と電圧変化の方向が逆になる。すなわち、変化特性V1′で示す電圧値がプラス方向に最大であるとき、変化特性V2′で示す電圧値がマイナス方向に最大になる。
【0046】
そして、端子31に得られる正弦波であるSIN信号と、端子32に得られる−SIN信号とが、図10に示す演算増幅器33で増幅され、増幅されたSIN信号が得られる。また、不図示の検出部で得られたCOS信号及び−COS信号についても、演算増幅器で差動増幅されて、増幅されたCOS信号が得られる。COS信号及び−COS信号を得るための磁気検出素子についても、図9に示す素子配置と同様の4個の磁気検出素子が使用される。これらの増幅されたSIN信号とCOS信号を使用した演算処理が位置検出部104(図1)で行われ、磁気スケール11と検出部20との相対位置が算出される。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態例によると、4個の磁気検出素子21−11〜21−14でSIN信号及び−SIN信号が得られ、さらに別の4個の磁気検出素子でCOS信号及び−COS信号が得られ、いわゆるフルブリッジ構成で検出信号が得られるようになる。したがってノイズなどの影響を受けにくい良好な位置検出が可能になる。
さらに、磁気スケール11からの漏洩磁場を検出する各磁気検出素子21−11〜21−14が、スケールを走査する方向と直交した方向に直線状に配置されるため、磁気スケール11の同じ位置の記録信号から各磁気検出素子21−11〜21−14が信号検出するようになる。このため、外乱ノイズの除去性能を向上させることができると共に、信号強度のばらつきが検出信号に悪影響を及ぼすこともなくなり、位置検出精度が向上する。
【0048】
[2−4.2つの群に分けて配置した例]
図9の例では、4個の磁気検出素子21−11〜21−14が、直線状に並ぶようにした。これに対して、磁気スケール11の幅などの制約から、4個の磁気検出素子21−11〜21−14を直線状に配置することが困難な場合、SIN信号を得る2つの磁気検出素子21−11,21−12と、−SIN信号を得る2つの磁気検出素子21−13,21−14とを、磁気スケール11の1波長λの1/2(又は1波長λの1/2整数倍:但し偶数倍の時は電圧を逆に加える)だけ離れた箇所に配置してもよい。
【0049】
図12は、この場合の構成例を示す図である。磁気検出素子21−11,21−12は、磁気スケール11の長手方向と直交する方向のラインy1に沿って直線状に配置される。また、磁気検出素子21−13,21−14は、磁気スケール11の長手方向と直交する方向のラインy2に沿って直線状に配置される。ここで、ラインy1とラインy2は、1波長λ(又は1波長λの整数倍)の間隔を有する。
そして、磁気検出素子21−11,21−12の直列回路に、所定電圧Vが供給される。また、磁気検出素子21−13,21−14の直列回路にも、所定電圧Vが供給される。但し、これら2つの群の直列回路に電圧Vを印加する方向は、互いに逆になるようにする。
さらに、磁気検出素子21−11,21−12の接続点に得られる信号(SIN信号)が、端子31に供給される。また、磁気検出素子21−13,21−14の接続点に得られる信号(−SIN信号)が、端子32に供給される。
端子31,32に得られる信号は、図10に示す演算増幅器33に供給される。
【0050】
この図12に示す構成の場合にも、端子31,32に得られるそれぞれの信号ごとに、同じ位置の記録信号から検出した信号になり、ノイズの影響の除去や、信号強度のばらつきなどによる悪影響を排除することができる。なお、4個の磁気検出素子21−11〜21−14には、図12に示すように、それぞれ個別にバイアス磁場発生部41−11,42−11,41−12,42−12,41−13,42−13,41−14,42−14を配置して、バイアス磁場を印加する。
【0051】
<3.別の磁気スケールに適用した例>
第1及び第2の実施の形態例では、磁気スケール11として、N極着磁部11NとS極着磁部11Sとが一定間隔で連続している、いわゆるインクリメントトラックに適用した。これに対して、本発明は、その他のトラック構成の磁気スケールに適用してもよい。
【0052】
図13は、磁気スケール50として、インクリメントトラック51と原点トラック52とが平行に配置された例である。
インクリメントトラック51については、N極着磁部(例えば “0”と示す箇所)とS極着磁部(例えば “1”と示す箇所)とが一定間隔で交互に連続する。そして、このインクリメントトラック51を検出する検出部20は、例えば図9に示す例と同様に、磁気スケール50の長手方向と直交する幅方向に、4個の磁気検出素子21−11,21−12,21−13,21−14を配置する。この4個の磁気検出素子21−11,21−12,21−13,21−14の接続状態は、図9の例と同様である。また、図13では省略するが、図9の例と同様に4個の磁気検出素子21−11〜21−14に隣接して、バイアス磁場発生部を配置する。
【0053】
原点トラック52については、特定の1箇所に原点信号52aを磁気記録する。この原点52aの記録状態は、一例としては図8Aに示すように1つの磁石が記録されたような状態でよい。そして、この原点信号52aを検出する検出部60についても、磁気スケール50の長手方向と直交する幅方向に、4個の磁気検出素子61−11,61−12,61−13,61−14を配置する。検出部60は検出部20と一体に移動する。
この4個の磁気検出素子61−11,61−12,61−13,61−14の接続状態は、検出部20の4個の磁気検出素子21−11〜21−14の接続状態と同じ状態(図9に示す状態)である。また、バイアス磁場発生部についても、図13では省略するが、それぞれの磁気検出素子61−11〜61−14に隣接して配置する。
この図13に示す構成とすることで、検出部60では、原点トラック52に記録された原点信号52aの検出精度が向上する。
【0054】
図14は、磁気スケール70として、インクリメントトラック71とアブソリュートトラック72とが平行に配置された例である。
インクリメントトラック71の構成は、図13に示したインクリメントトラック51と同じ構成であり、このインクリメントトラック71を検出する検出部20についても、図13の例と同じ構成である。
【0055】
アブソリュートトラック72については、それぞれの記録箇所72a,72b,72c,・・・ごとに予め決められた信号が記録され、検出部80で検出される。検出部80は検出部20と一体に移動する。
アブソリュートトラック72は、図14の例では、左端から順に、000100110・・・と信号が記録される。そして、検出部80は、例えば連続した4つの記録箇所を同時に検出する。このため、例えば図14の例では、例えば左端の4つの記録箇所を検出することで、検出部80が4ビットデータ“0001”を検出するようになる。また、記録箇所が右に1つシフトすることで、検出部80が4ビットデータ“0010”を検出するようになる。このように検出部80では、位置ごとに異なるデータを検出するようになり、その検出データからアブソリュートトラック72と検出部80との相対位置が判断できる。
【0056】
このような4ビットの検出を行う検出部80は、それぞれのビットの検出箇所ごとに、磁気スケール70の長手方向と直交した方向に並んだ4個の磁気検出素子を備える。すなわち、検出部80は、磁気スケール70の長手方向と直交した方向に並んだ4個の磁気検出素子81−11,81−12,81−13,81−14を備える。さらに検出部80は、その4個の磁気検出素子81−11〜81−14と1ビットずつの間隔を開けて、4個ごとの磁気検出素子82−11〜82−14,83−11〜83−14,84−11〜84−14を備える。
【0057】
これら4個ごとの磁気検出素子81−11〜81−14,82−11〜82−14,83−11〜83−14,84−11〜84−14のそれぞれの接続状態は、検出部20の4個の磁気検出素子21−11〜21−14の接続状態と同じ状態(図9に示す状態)である。また、バイアス磁場発生部についても、図14では省略するが、それぞれの磁気検出素子81−11〜81−14,82−11〜82−14,83−11〜83−14,84−11〜84−14に隣接して配置する。
この図14に示す構成とすることで、検出部80では、アブソリュートトラック72に記録された信号の検出精度が向上する。
【0058】
なお、図13図14の例では、検出部60,80は、図9の例と同様の4個の磁気検出素子を直列に配置した例とした。これに対して、検出部60又は80として、図2の例のような2個の磁気検出素子をスケールの長手方向と直交した方向に配置した例としてもよい。また、図13の例と図14の例は、いずれもインクリメントトラックと原点トラック又はアブソリュートトラックとが並列配置された例としたが、原点トラックやアブソリュートトラックだけが配置された磁気スケールに適用してもよい。
【0059】
<4.その他の変形例>
なお、上述した実施の形態例では、磁気スケールの記録信号の1波長として、400μmを示したが、1波長の値は、位置検出装置として必要な測位分解能に応じて、数十μmから数百μm程度の範囲内で適切な値を選定すればよい。
個々の磁気検出素子のサイズについても、1辺の長さが2μm〜10μm程度とするのは1つの例であり、それより大きなサイズや小さなサイズの磁気検出素子を使用してもよい。
また、上述した実施の形態例では、個々の磁気検出素子21の両脇にバイアス磁場発生部41,42を配置した例とした。これに対して、複数個の磁気検出素子(例えば図2に示す磁気検出素子21−1,21−2)にバイアス磁場を与えるバイアス磁場発生部を配置して、バイアス磁場発生部の数を削減してもよい。
また、上述した実施の形態例では、磁気検出素子として、トンネル磁気抵抗効果を利用したTMR素子を使用したが、素子に印加された磁気に対して同様の抵抗などの特性が変化する素子であれば、その他の構成の素子を使用してもよい。
【0060】
また、上述した実施の形態例では、スケールを直線状の位置検出装置に適用した例を説明した。これに対して、磁気スケールを円形に配置することで、スケールとヘッドとの相対回転角度を検出する位置検出装置に本発明を適用してもよい。直線状の位置検出装置の例としてスケールを示した図1の構成も、一例にすぎないものであり、本発明は、その他の各種機器用の位置検出装置に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…磁気スケール、2…検出部、3a〜3h…磁気検出素子、4…演算増幅器、11…磁気スケール、11N…N極着磁部、11S…S極着磁部、20…検出部、21,21−1〜21−2,21−11〜21−14…磁気検出素子、21a…固定層、21b…バリア層、21c…フリー層、33…演算増幅器、41,42,41−1,41−2,42−1,42−2,41−11〜41−14,42−1,42−2,42−11〜42−14…バイアス磁場発生部、50…磁気スケール、51…インクリメントトラック、52…原点トラック、52a…原点信号、60…検出部、61−11〜61−14…磁気検出素子、70…磁気スケール、71…インクリメントトラック、72…アブソリュートトラック、80…検出部、81−11〜81−14,82−11〜82−14,83−11〜83−14,84−11〜84−14…磁気検出素子、100…装置、101…固定部、102…移動台、103…被工作物、104…位置検出部、105…加工具、106…駆動部、107…制御部、108…目標位置入力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17