(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
選択的透過性を有するガス分離膜に対して、透過性の異なる複数のガス成分を含むガス混合物を原料ガスとして第1流路を通じて供給し、該ガス分離膜によって、第2流路から回収される、前記原料ガスに比較して難透過性ガス成分に富んだ残留ガスと、第3流路から回収される、前記原料ガスに比較して易透過性ガス成分に富んだ透過ガスと、に分離し、前記透過ガス及び前記残留ガスの少なくとも一方を製品ガスとして製造する方法であって、
前記原料ガス中の易透過ガス成分の少なくとも1種のガス成分につき、前記透過ガス中の該成分の純度及び回収率を確保しつつ、前記原料ガス中の該成分の濃度X1を測定し、前記第2流路(残留ガス)の圧力を調節することにより、
前記測定された濃度X1に基づいて前記原料ガスの流量と前記残留ガスの流量との比Ka(ここで、Kaは、「原料ガスの流量/残留ガスの流量」である。)を変化させる、
ことを特徴とする、ガス製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図3に示すような従来の構成のガス製造装置を用いる場合、減量操作(原料ガス流量を減量させること及び/又は製品ガス流量を減量させることを以下「減量操作」という。)において、例えば、ガス製造装置は
図6に示す構成を用いて制御される。
図6に示す構成では、原料ガスの流量を測定し、その測定値に基づいて、ガス分離膜の非透過側の圧力の最適値を算出して、係る計算結果に基づいた制御が行われる。これにより、原料ガスの流量が低下した場合においても製品ガスの純度等の所定の仕様が満たされるように運転が制御される。
【0006】
こうしたガス分離膜を用いたガス製造方法においては、その主要な性能に、製品ガスの純度と回収率があり、上記のような種々の用途においては、製品ガスの純度を一定条件とし回収率が高いことが望まれる。しかしながら、一般に、ガス分離膜の面積と圧力(一次圧力および二次圧力)などを一定として、原料ガスの流量が基準の値から減少した時、透過ガスの割合が増加し、残留ガスの割合は減少する。すなわち、残留ガスにおける透過率の低い成分(難透過性ガス)の回収率は減少し、その割合は増加する。一方、透過ガスにおける透過率の高い成分(易透過性ガス)の回収率は増加するが、その割合は減少する。このとき、特に、透過ガスが製品ガスである場合には製品ガスの純度が低下し、残留ガスが製品ガスである場合には回収率が低下するとの問題が知られている。この特性を避ける幾つかの減量方法が提案されている。
【0007】
典型的には、
図2Aに示す如く、ガス分離膜の最大処理量における値に対し透過ガス圧力を一定として、一次圧力を低下させる方法(方法a)、
図2Bに示す如く、ガス分離膜の最大処理量における値に対し一次圧力を一定として、透過ガスの圧力を上げる方法(方法b)が知られている。なお、このとき一次側圧力としては、
図2A、
図2Bで示した如く、非透過側の圧力を計測する場合と、原料側の圧力を計測する場合がある。
【0008】
より具体的には、原料ガスの流量を、膜Sの一次側(非透過側)に設置された流量計FI−1にて測定し、測定された流量を、予定した原料ガスの流量と比較して、一次側(非透過側)の圧力(圧力調節計PIC−1にて測定される。)を設定する。係る膜Sの一次側(非透過側)の圧力は、バルブPCV1の開度を、流量計FI−1及び圧力調節計PIC−1の測定結果に基づいて制御することにより調整される。
【0009】
このような制御の一例として、定格流量(定常状態(設計した流量))においては膜Sの入口(一次側)の圧力は、101bar(abs)、残留ガスの流路R1の圧力は、約100bar(abs)、透過ガスの流路T1の圧力は、20bar(abs)であるが、原料ガスの流量が定格流量に比較して50%である場合においては、膜Sの入口(一次側)の圧力は、71bar(abs)、残留ガスの流路R1の圧力は、70bar(abs)、透過ガスの流路T1の圧力は、20bar(abs)となる。つまり、透過ガスの流路T1と残留ガスの流路R1の圧力差を小さくし、不純物が膜Sを透過するドライビングフォースを削減している。
【0010】
なお、単位「MPaG」の「G」は、大気圧をゼロとした場合を意味し、「MPaG」は、ゲージ圧を表す。なお、「(abs)」は、真空をゼロとした場合を指し、「bar(abs)」と表記した場合には、絶対圧を表す。
【0011】
このような制御を用いると、原料ガスの流量が変動する場合においても、必要な製品ガスを確保しつつ、かつ、製品ガスの純度と回収率とを保つことが可能となっている。
【0012】
しかしながら、上記装置あるいは方法によっては、原料ガスの流量(Nm
3/h)を基にした制御を行っているため、いくつかの課題が生じることがあった。
【0013】
原料ガス中の易透過成分(例えば水素)の濃度が、装置が予定している設計条件と大幅に異なる場合、例えば、装置が、原料ガス中の水素の濃度が85%前後を想定しているとき、原料ガス中の水素の濃度が約77%〜92%の範囲で変動する場合において、上述のような制御を行うと、以下のような不具合を生じる可能性がある。
【0014】
(1)原料ガス中の透過成分の濃度が低い場合には、製品ガスにおける透過成分の濃度が低くなり、製品ガスの保証値を下回るという問題が生じる。
【0015】
(2)原料ガス中の透過成分の濃度が高い場合には、製品ガスにおける透過成分の濃度が高くなり過ぎるという問題と、さらにこの場合にはガス分離膜の非透過側で、透過成分以外の不純物(例えばアミン類)の濃縮が生じ、ガス分離膜にダメージを与える可能性がある。
【0016】
また、原料ガス中の難透過成分(例えばメタン)の濃度が、装置が予定している設計条件と大幅に異なる場合、例えば、装置が、原料ガス中のメタンの濃度が56%前後を想定しているとき、原料ガス中のメタンの濃度が約48%〜76%の範囲で変動する場合において、上述のような制御を行うと、以下のような不具合を生じる可能性がある。
【0017】
(3)原料ガス中の難透過成分の濃度が低い場合には、製品ガスにおける難透過成分の濃度が低くなり、製品ガスの保証値を下回るという問題が生じる。
【0018】
(4)原料ガス中の難透過成分の濃度が高い場合には、製品ガスにおける難透過成分の濃度が高くなり過ぎるという問題と、さらにこの場合にはガス分離膜の透過側で、透過成分以外の不純物(例えばアンモニア)の濃縮が生じ、ガス分離膜にダメージを与える可能性がある。
【0019】
したがって、本発明のいくつかの態様に係る目的は、
(I)易透過ガス(主に水素ガス)が製品の場合
原料ガス中の易透過性ガス成分の濃度の変動が大きくても、製品ガス中の易透過性ガス成分の濃度を所定の値よりも高く保ち、かつ、ガス分離膜の非透過側における不純物の濃縮を抑制する、ガス製造方法及び製造装置を提供することにある。
【0020】
(II)難透過性ガス成分(主にメタンガス)が製品の場合
原料ガス中の難透過性ガス成分の濃度の変動が大きくても、製品ガス中の難透過性ガス成分の濃度を所定の値よりも高く保ち、かつ、ガス分離膜の透過側における不純物の濃縮を抑制する、ガス製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、以下に示すガス分離膜を用いたガス製造方法及びガス製造装置により上記課題の少なくとも一部を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。すなわち、本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するために為されたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0022】
本発明に係るガス製造方法の一態様は、
選択的透過性を有するガス分離膜に対して、透過性の異なる複数のガス成分を含むガス混合物を原料ガスとして第1流路を通じて供給し、該ガス分離膜によって、第2流路から回収される、前記原料ガスに比較して難透過性ガス成分に富んだ残留ガスと、第3流路から回収される、前記原料ガスに比較して易透過性ガス成分に富んだ透過ガスと、に分離し、前記透過ガス及び前記残留ガスの少なくとも一方を製品ガスとして製造する方法であって、
a)前記原料ガス中の易透過ガス成分の少なくとも1種のガス成分の濃度X1を測定し、前記第2流路(残留ガス)の圧力を調節することにより、
前記測定された濃度X1に基づいて前記原料ガスの流量と前記残留ガスの流量との比Ka(ここで、Kaは、「原料ガスの流量/残留ガスの流量」である。)を変化させる、あるいは、
b)前記原料ガス中の難透過ガス成分の少なくとも1種のガス成分の濃度X2を測定し、前記第3流路(透過ガス)の圧力を調節することにより、
前記測定された濃度X2に基づいて前記原料ガスの流量と前記透過ガスの流量との比Kb(ここで、Kbは、「原料ガスの流量/透過ガスの流量」である。)を変化させる、
ことを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係るガス製造方法の一態様は、
選択的透過性を有するガス分離膜に対して、透過性の異なる複数のガス成分を含むガス混合物を原料ガスとして第1流路を通じて供給し、該ガス分離膜によって、第2流路から回収される、前記原料ガスに比較して難透過性ガス成分に富んだ残留ガスと、第3流路から回収される、前記原料ガスに比較して易透過性ガス成分に富んだ透過ガスと、に分離し、前記透過ガス及び前記残留ガスの少なくとも一方を製品ガスとして製造する方法であっ
て、
(I)易透過性ガス成分が製品の場合
前記原料ガス中の易透過ガス成分の少なくとも1種のガス成分の濃度X1を測定し、前記測定された濃度X1に基づいて前記原料ガスの流量と前記残留ガスの流量との比Ka(ここで、Kaは、「原料ガスの流量/残留ガスの流量」である。)を変化させることを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係るガス製造方法において、
前記比Kaを、前記濃度X1が閾値よりも小さい場合には、下記式(1)
Ka=a1*(X1)
2+b1*X1+c1 ・・・(1)
前記濃度X1が閾値以上である場合には、下記式(2)
Ka=d1 ・・・(2)
[式(1)、式(2)中、a1、b1、c1、d1は用いる装置系に依存する定数を表す。]
に従って変化させてもよい。
【0025】
(II)難透過性ガス成分が製品の場合
前記原料ガス中の難透過ガス成分の少なくとも1種のガス成分の濃度X2を測定し、前記測定された濃度X2に基づいて前期原料ガスの流量と前記透過ガスの流量との比Kb(ここで、Kbは、「原料ガスの流量/透過ガスの流量」である。)を変化させることを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係るガス製造方法において、
前記比Kbを、前記濃度X2が閾値よりも小さい場合には、下記式(3)
Kb=a2*(X2)
2+b2*X2+c2 ・・・(3)
前記濃度X2が閾値以上である場合には、下記式(4)
Kb=d2 ・・・(4)
[式(3)、式(4)中、a2、b2、c2、d2は用いる装置系に依存する定数を表す。]
に従って変化させてもよい。
【0027】
ここで、難透過性成分iに注目するとマテリアルバランスから、以下の式が導出される。下記式中、Xfi、Xri、Xpiは、それぞれ原料ガス中の難透過成分の濃度、残留ガス中の難透過成分の濃度、製品ガス中の難透過成分の濃度を表し、Qf、Qr、Qpは、それぞれ原料ガスの流量、残留ガスの流量、製品ガスの流量を表す。
【0028】
Xfi*Qf=Xri*Qr+Xpi*Qp
Xpi*Qp>0なので
Xfi*Qf>Xri*Qr
そのため、
Xri/Xfi<Qf/Qr
(特に、難透過成分iの透過率が極端に小さい極限を考えるとXpiは0と考えることができるため、Xpi*Qpは0となり、Xri/Xfi=Qf/Qrとなる。)
また、ここで、Xri/Xfiは、難透過成分iの濃縮倍率に相当する。つまり流量比K=Qf/Qrをある値以下にすれば、難透過成分の濃縮倍率をそれ以下に保てることとなる。
【0029】
本発明に係るガス製造方法において、
前記閾値は、前記残留ガス中の前記難透過性ガス成分の濃度、又は、前記透過ガス中の前記易透過性ガス成分の濃度によって決定されてもよい。
【0030】
本発明に係るガス製造方法において、
前記易透過性ガス成分は、水素であってもよい。
【0031】
本発明に係るガス製造方法において、
前記難透過性ガス成分は、メタンであってもよい。
【0032】
本発明に係るガス製造装置の一態様は、
複数の成分を含有する原料ガスに対して、選択的透過性を有するガス分離膜によって、前記原料ガスに比較して、易透過性ガス成分に富んだ透過ガスと難透過性ガス成分に富んだ残留ガスとに分離し、前記透過ガス及び前記残留ガスの少なくとも一方を製品ガスとして製造する、ガス製造装置であって、
前記ガス分離膜と、
前記ガス分離膜に対して、前記原料ガスを供給する第1流路と、
前記ガス分離膜の難透過性ガス成分に富んだ残留ガスを回収する第2流路と、
前記ガス分離膜の易透過性ガス成分に富んだ透過ガスを回収する第3流路と、
前記第1流路に設けられた、前記原料ガスの流量を測定する第1流量測定部と、
制御部と、
を有し、
a)更に、前記第1流路に設けられた、前記原料ガス中の易透過ガス成分の少なくとも1種のガス成分の濃度X1を測定する第1濃度測定部と、
前記第2流路に設けられた、前記残留ガスの流量を測定する第2流量測定部と、
前記第2流路に設けられた第1圧力調整部と、
を有し、
前記制御部は、前記第1濃度測定部によって測定された前記濃度X1に基づいて、前記第1流量測定部による前記原料ガスの流量及び前記第2流量測定部による前記残留ガスの流量の比Ka(前記原料ガスの流量/前記残留ガスの流量)が、
前記濃度X1が閾値よりも小さい場合には、下記式(1)
Ka=a1*(X1)
2+b1*X1+c1 ・・・(1)
前記濃度X1が閾値以上である場合には、下記式(2)
Ka=d1 ・・・(2)
[式(1)、式(2)中、a1、b1、c1、d1は用いる装置系に依存する定数を表す。]
を満足するように前記第1圧力調整部により前記第2流路の圧力を制御する、
あるいは、
b)更に、前記第1流路に設けられた、前記原料ガス中の難透過ガス成分の少なくとも1種のガス成分の濃度X2を測定する第2濃度測定部と、
前記第3流路に設けられた、前記透過ガスの流量を測定する第3流量測定部と、
前記第3流路に設けられた第2圧力調整部と、
を有し、
前記制御部は、前記第2濃度測定部によって測定された前記濃度X2に基づいて、前記第1流量測定部による前記原料ガスの流量及び前記第3流量測定部による前記透過ガスの流量の比Kb(前記原料ガスの流量/前記透過ガスの流量)が、
前記濃度X2が閾値よりも小さい場合には、下記式(3)
Kb=a2*(X2)
2+b2*X2+c2 ・・・(3)
前記濃度X2が閾値以上である場合には、下記式(4)
Kb=d2 ・・・(4)
[式(3)、式(4)中、a2、b2、c2、d2は用いる装置系に依存する定数を表す。]
を満足するように前記第2圧力調整部により前記第3流路の圧力を制御する、
ことを特徴とする。
【0033】
また、本発明に係るガス製造装置の一態様は、選択的透過性を有するガス分離膜によって、易透過性ガス成分に富んだ透過ガスと難透過性ガス成分に富んだ残留ガスとに分離し、前記透過ガス及び前記残留ガスの少なくとも一方を製品ガスとして製造する、ガス製造装置であって、
(I)易透過性ガス成分が製品の場合
前記ガス分離膜と、前記ガス分離膜に対して、透過性の異なる複数のガス成分を含むガス混合物を原料ガスとして供給する第1流路と、前記第1流路に設けられた、前記原料ガス中の易透過ガス成分の少なくとも1種のガス成分の濃度X1を測定する測定部と、前記ガス分離膜の難透過性ガス成分に富んだ残留ガスを回収する第2流路と、前記ガス分離膜の易透過性ガス成分に富んだ透過ガスを回収する第3流路と、制御部と、を有し、
前記制御部は、前記測定部によって測定された前記濃度X1に基づいて、前記第1流路の前記原料ガスの流量及び前記第2流路の前記残留ガスの流量の比Ka(前記原料ガスの流量/前記残留ガスの流量)を、
前記濃度X1が閾値より小さい場合には、下記式(1)
Ka=a1*(X1)
2+b1*X1+c1 ・・・(1)
前記濃度X1が閾値以上である場合には、下記式(2)
Ka=d1 ・・・(2)
[式(1)、式(2)中、a1、b1、c1、d1は用いる装置系に依存する定数を表す。]
に従って変化させる。
【0034】
(II)難透過性ガス成分が製品の場合
前記ガス分離膜と、前記ガス分離膜に対して、透過性の異なる複数のガス成分を含むガス混合物を原料ガスとして供給する第1流路と、前記第1流路に設けられた、前記原料ガス中の難透過ガス成分の少なくとも1種のガス成分の濃度X2を測定する測定部と、前記ガス分離膜の難透過性ガス成分に富んだ残留ガスを回収する第2流路と、前記ガス分離膜の易透過性ガス成分に富んだ透過ガスを回収する第3流路と、制御部と、を有し、
前記制御部は、前記測定部によって測定された前記濃度X2に基づいて、前記第1流路の前記原料ガスの流量及び前記第3流路の前記透過ガスの流量の比Kb(前記原料ガスの流量/前記透過ガスの流量)を、
前記濃度X2が閾値より小さい場合には、下記式(3)
Kb=a2*(X2)
2+b2*X2+c2 ・・・(3)
前記濃度X2が閾値以上である場合には、下記式(4)
Kb=d2 ・・・(4)
[式(3)、式(4)中、a2、b2、c2、d2は用いる装置系に依存する定数を表す。]
に従って変化させる。
【0035】
本発明に係るガス製造装置において、
前記閾値は、前記残留ガス中の前記難透過性ガス成分の濃度、又は、前記透過ガス中の前記易透過性ガス成分の濃度によって決定されてもよい。
【0036】
本発明に係るガス製造装置において、
前記易透過性ガス成分は、水素であってもよい。
【0037】
本発明に係るガス製造装置において、
前記難透過性ガス成分は、メタンであってもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係るガス製造方法又は製造装置によれば、
(I)易透過性ガス成分が製品の場合
原料ガス中の易透過性ガス成分の濃度の変化が大きくても、製品ガス中の易透過性ガス成分の濃度を所定の値よりも高く保ち、かつ、ガス分離膜の非透過側における不純物の濃縮を抑制することができ、ガス分離膜の劣化を抑制することができる。
【0039】
(II)難透過性ガス成分が製品の場合
原料ガス中の難透過性ガス成分の濃度の変化が大きくても、製品ガス中の難透過性ガス成分の濃度を所定の値よりも高く保ち、かつ、ガス分離膜の透過側における不純物の濃縮を抑制することができ、ガス分離膜の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に本発明の幾つかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下に説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0042】
1.ガス製造装置
本実施形態に係るガス製造装置100は、ガス分離膜(ガス分離ユニット16)と、第1流路21と、第2流路22と、第3流路23と、測定部30と、第1バルブ41と、制御部50と、を有する。ガス製造装置100は、必要に応じて第2バルブ42を有してもよい。そして、原料ガスG1を、ガス分離膜を透過しやすい易透過性ガス成分に富んだ透過ガスG3と、ガス分離膜を透過しにくい難透過性ガス成分に富んだ残留ガスG2とに分離し、透過ガスG3及び残留ガスG2の少なくとも一方を製品ガスとして製造する。
図1A及び
図1Bは、本実施形態に係るガス製造装置100を模式的に示す概略図である。
【0043】
1.1.原料ガス及び製品ガス
ガス製造装置100によって処理される原料ガスG1は、ガス分離膜に対する透過性が互いに異なる複数のガス成分を含む。原料ガスG1はガス混合物である。ガス成分としては、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、水、アンモニア、メタン、エタン、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、硫化水素、アンモニア、ベンゼン、トルエン、キシレン、アミン類等が挙げられる。また、原料ガスG1に含まれるガス成分の数も特に限定されない。
【0044】
原料ガスG1は、精製ガスあるいは粗製ガスを精製処理されたガスであってもよい。具体的には、精製空気、精製ナフサ分解ガス、精製改質ガス、精製水性ガス、精製天然ガス、バイオガスなどを例示できる。
【0045】
原料ガスG1には、ガス分離膜を透過しやすい易透過性ガス成分及びガス分離膜を透過しにくい難透過性ガス成分が含まれる。易透過性ガス成分及び難透過性ガス成分は、ガス
製造装置100が採用するガス分離膜に依存して変更することができる。例えば、原料ガスG1が、水素及びメタンを含む場合であって、ガス分離膜が、水素分離膜(水素を選択的に透過させやすい膜)である場合には、原料ガスG1中の水素が易透過性ガス成分となり、メタンが難透過性ガス成分となる。易透過性ガス成分及び難透過性ガス成分は、それぞれ複数種のガス成分であってもよい。
【0046】
表1及び表2には原料ガスの典型例を示す。
【0049】
表1の例1〜例7に示す原料ガスG1は、ガス成分として水素の含有量が大きいが、ガス製造装置100がガス分離ユニット16として水素分離膜(水素を選択的に透過させやすい膜)を含むものを採用する場合には、透過ガスG3として、原料ガスG1よりも水素の濃度の高い(純度の高い)ガスが得られる。これらの例では、透過ガスG3をガス製造装置100の製品ガスとすることができる。また、残留ガスG2についても、必要に応じて製品ガスとしてもよい。
【0050】
一方、表2の例8〜例15に示す原料ガスG1は、ガス成分としてメタン及び二酸化炭素の含有量が大きいが、二酸化炭素を選択的に透過させやすい膜(ガス分離膜)を採用する場合には、透過ガスG3として、原料ガスG1よりも二酸化炭素の濃度の高い(純度の高い)ガス、及び、残留ガスG2として、原料ガスG1よりもメタンの濃度の高い(純度の高い)ガスが得られる。これらの例では、残留ガスG2(メタンが富化されたガス)をガス製造装置100の製品ガスとすることができる。また、透過ガスG3(二酸化炭素が富化されたガス)についても製品ガスとしてもよい。
【0051】
したがって、本実施形態のガス製造装置100は、選択的透過性を有するガス分離膜に対して、透過性の異なる複数のガス成分を含むガス混合物を原料ガスG1として供給し、ガス分離膜によって、易透過性ガス成分に富んだ透過ガスと難透過性ガス成分に富んだ残留ガスとに分離し、透過ガスG3及び残留ガスG2の少なくとも一方を製品ガスとして製造することができる。
【0052】
1.1.ガス分離膜
本実施形態のガス製造装置100は、ガス分離膜(ガス分離ユニット16)を有する。ガス分離膜は、ガスの選択的透過性を有する。ガス分離膜を選択的に透過するガス成分としては、特に限定されないが、水素、酸素、二酸化炭素等が挙げられる。また、ガス分離膜が選択的に透過させるガス成分は、複数種であってもよい。
【0053】
ガス分離膜は、原料ガスG1あるいは透過ガスG3の種類によって、最適な素材や容量(表面積)あるいは形状などが選択される。ガス分離膜の材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、シリコーンゴム、ポリスルフォン、酢酸セルロース、ポリイミド、ポリアラミドなどの有機系分離膜のみならず、セラミックス膜などのような無機系の分離膜を挙げることができる。
【0054】
図1A及び
図1Bに示す例では、ガス分離膜は、破線を用いて模式的に直線状(シート状)に描かれているが、ガス分離膜の形状や面積は、膜の表裏において空間を隔絶できれば特に限定されない。例えば、ガス分離膜は、管状、じゃばら状等の平面や曲面を含む形状であってもよい。さらにガス分離膜の厚さや積層構造も適宜に設計されることができる。また、ガス分離膜の面積は、ガス製造装置100に要求される能力に応じて適宜設計されることができる。
【0055】
ガス分離膜は、その特性(易透過性ガス成分又は難透過性ガス成分の種類など)によって適した温度が存在する場合がある。例えば、ガス分離膜が、水素を易透過性ガス成分とする場合には、典型的には70℃〜110℃の温度において分離の効率が高い場合がある。したがって、ガス分離膜の温度を適切に保つ、図示せぬガス分離膜温度調節機構が設けられてもよい。
【0056】
図1A及び
図1Bは、ガス分離ユニット16は、ガス分離膜及びその一次側及び二次側がハウジングで覆われて構成された例を模式的に示している。一次側には、原料ガスG1をガス分離膜に対して供給する第1流路21、及び、残留ガスG2を排出する第2流路22が接続されている。また、二次側には、透過ガスG3を排出する第3流路23が接続されている。
【0057】
なお、本明細書では、ガス分離膜の原料ガスG1が供給される側を、原料側、ガス分離膜の残留ガスG2が生じる側を非透過側、ガス分離膜の透過ガスG3が生じる側を、透過側と称する場合がある。また、原料側及び非透過側を、ガス分離膜の一次側ということがあり、透過側をガス分離膜の二次側ということがある。
【0058】
1.3.第1流路、第2流路及び第3流路
本実施形態のガス製造装置100は、第1流路21、第2流路22及び第3流路23を有する。第1流路21は、原料ガスG1をガス分離ユニット16に対して供給する流路であり、例えば、鋼管等により形成される。
図1A及び
図1Bに示す例では、第1流路21は、原料側の流路であり、ガス分離膜の一次側に接続されている。第2流路22は、残留ガスG2を排出する非透過側の流路であり、例えば、鋼管等により形成される。図示の例では、第2流路22は、ガス分離膜の一次側に接続されている。第3流路23は、透過ガスG3を排出する流路であり、例えば、鋼管等により形成される。図示の例では、第3流路23は、透過側の流路であり、ガス分離膜の二次側に接続されている。
【0059】
第1流路21、第2流路22及び第3流路23は、ガス製造装置100の規模やスループットに応じて適宜の断面積(太さ)を有することができる。また、第1流路21、第2流路22及び第3流路23は、互いに異なる断面積を有してもよい。
【0060】
第1流路21からガス分離膜(ガス分離ユニット16)への原料ガスG1の典型的な供給条件は、温度は環境温度であり、流量は約100〜100000[Nm
3/h]である。また第1流路21における原料ガスG1の圧力は、透過ガスG3又は残留ガスG2(製品ガス)の用途などによって異なるが、1〜150[bar(abs)]程度である。
【0061】
1.4.測定部
ガス製造装置100は、測定部30を有する。測定部30は、各流路を流れるガスの流量、圧力及び組成を測定することができる。また、流量の計測に温度依存性がある場合には、当該温度を測定できるようにしてもよい。
【0062】
図1A及び
図1Bに例示するガス製造装置100には、第1流路21に、測定部30として、内部を流れる原料ガスG1の流量を計測する第1流量計31(流量測定手段)、及び内部を流れる原料ガスG1の中の易透過性ガス成分又は難透過性ガス成分の濃度(純度)を測定する濃度測定器34(濃度測定手段)が設けられている。また、ガス製造装置100には、第2流路22に、測定部30として、内部を流れる残留ガスG2の圧力を測定する圧力測定器35が設けられている。さらに、ガス製造装置100には、第3流路23に、測定部30として、内部を流れる残留ガスG3の流量を計測する第3流量計33(流量測定手段)、及び、内部を流れる透過ガスG3の圧力を計測する圧力測定器36が設けられている。なお、これら各構成の各流路における配置(ガスの流れに対して上流又は下流等の配置)は、各構成が意図する測定を行うことができる限り、特に限定されない。
【0063】
各流量計(流量測定手段)としては、各流路内のガスの流量を測定できる限り限定されず、公知の流量計を適用することができる。また、各圧力測定器についても、第2流路22内又は第3流路23内の圧力を測定できる限り任意に構成することができる。
【0064】
濃度測定手段は、原料ガスG1中の易透過性ガス成分または難透過性ガス成分の少なくとも1種のガス成分の濃度X1又はX2を測定する。濃度測定手段によって濃度を測定される易透過性ガス成分又は難透過性ガス成分の数は限定されない。濃度測定手段としては、原料ガスG1中の易透過性ガス成分または難透過性ガス成分の濃度を測定できればよく、一例としてガス製造装置100では濃度測定器34として、ガスクロマトグラフィーを採用している。なお、濃度測定手段としては、連続的に濃度を計測できる観点から、熱伝導式濃度分析計が好ましく、さらに原料ガス中の水素の濃度を計測する場合には、熱伝導率式水素分析計がより好ましい。
【0065】
ガス製造装置100が稼働している間、測定部30によって連続的に測定されることが
好ましいが、ガス製造装置100の運転の制御に支障がない範囲で間欠的に測定されてもよい。
【0066】
測定部30によって測定される各種の測定結果は、制御部50によって取得することができる。本実施形態のガス製造装置100では、第1流量計31、濃度測定器34及び第2流量計32によって測定された結果が制御部50によって取得される。制御部50は、他の測定部30によって得られた測定結果を取得してもよい。
【0067】
1.5.第1バルブ及び第2バルブ
本実施形態のガス製造装置100は、
図1A及び
図1Bに示すように、第1バルブ41を有する。また、本実施形態のガス製造装置100は、
図1Bに示すように、第2バルブ42を有してもよい。第1バルブ41は、第2流路22に設けられる。第1バルブ41は、その開度によって、第2流路22内を流れる残留ガスG2の流量を調節することができる。第1バルブ41の開度は、圧力測定器35を介して制御部50からの信号により制御される。
【0068】
第1バルブ41の開度が調節されることにより、第2流路22を流れる残留ガスG2の流量に対する第1流路21を流れる原料ガスG1の流量(原料ガスG1の流量/残留ガスG2の流量)の比Kが調節される。
【0069】
第2バルブ42が設けられる場合は、
図1Bに示すように、第3流路23に設けられる。第2バルブ42は、その開度によって、第3流路23内を流れる透過ガスG3の流量を調節することができる。第2バルブ42の開度は、適宜設定されるが、制御部50からの信号により制御されてもよい。
【0070】
第1バルブ41及び第2バルブ42は、流路内のガスの流量を調節できる限り任意の態様であり得るが、第1バルブ41は、制御部50からの信号によって連続的に開度を調節できる態様であることが好ましい。そのような第1バルブ41及び第2バルブ42としては、モーター等によって開度を調節できる態様が挙げられる。
【0071】
1.6.制御部
ガス製造装置100は、制御部50を有する。制御部50は、例えば、電子計算機によって構成される。制御部50は、少なくとも第1流量計31、濃度測定器34及び第2流量計32によって測定された結果を取得し、
(I)易透過性ガス成分(主に水素ガス)が製品の場合、
少なくとも第1バルブ41の開度を調節する信号を送出する。
【0072】
(II)難透過性ガス成分(主にメタンガス)が製品の場合、
少なくとも第2バルブ42の開度を調節する信号を送出する。
【0073】
(I)易透過性ガス成分(主に水素ガス)が製品の場合
制御部50は、測定部30の濃度測定器34(濃度測定手段)によって測定された、原料ガスG1中の易透過性ガス成分の濃度X1に基づいて、第1流路21の原料ガスG1の流量および第2流路22の残留ガスG2の流量の比Ka(原料ガスG1の流量/残留ガスG2の流量)が、特定の関係式を満足させるように変化させる(
図1A参照)。
【0074】
(II)難透過性ガス成分(主にメタンガス)が製品の場合
制御部50は、測定部30の濃度測定器34(濃度測定手段)によって測定された、原料ガスG1中の難透過性ガス成分の濃度X2に基づいて、第1流路21の原料ガスG1の流量および第3流路23の透過ガスG3の流量の比Kb(原料ガスG1の流量/透過ガスG
3の流量)が、特定の関係式を満足させるように変化させる(
図1B参照)。
【0075】
(I)易透過性ガス成分(主に水素ガス)が製品の場合
係る関係式は、濃度X1が閾値より小さい場合には下記式(1)、
Ka=a1*(X1)
2+b1*X1+c1 ・・・(1)
前記濃度X1が閾値以上である場合には、下記式(2)
Ka=d1 ・・・(2)
[式(1)、式(2)中、a1、b1、c1、d1は用いる装置系に依存する定数を表す。]
である。
【0076】
なお、式(2)中のd1はガス分離膜にアミン類等の不純物が濃縮することによるガス分離膜の劣化(被毒)を抑制することのできる最大の流量比(原料ガスG1の流量/残留ガスG2の流量)であり、ガス製造装置100の規模や構成によって決まる無次元の値である(以下、d1を限界流量比ということがある。)。また、本明細書の各式において「*」は、積の演算子を表す。
【0077】
(II)難透過性ガス成分(主にメタンガス)が製品の場合
係る関係式は、比Kbを、
前記濃度X2が閾値よりも小さい場合には、下記式(3)
Kb=a2*(X2)
2+b2*X2+c2 ・・・(3)
前記濃度X2が閾値以上である場合には、下記式(4)
Kb=d2 ・・・(4)
[式(3)、式(4)中、a2、b2、c2、d2は用いる装置系に依存する定数を表す。]
である。
【0078】
なお、式(4)中のd2はガス分離膜にアンモニア等の不純物が濃縮することによるガス分離膜の劣化(被毒)を抑制することのできる最大の流量比(原料ガスG1の流量/透過ガスG3の流量)であり、ガス製造装置100の規模や構成によって決まる無次元の値である(以下、d2を限界流量比ということがある。)。
【0079】
(I)易透過性ガス成分(主に水素ガス)が製品の場合
係る関係式(制御式ということがある)は、濃度X1が閾値より小さい場合に、上記式(1)の如く、濃度X1の2次式に従って流量比Kaを変化させ、閾値以上である場合に流量比Kaを限界流量比に固定することを意図している。
【0080】
(II)難透過性ガス成分(主にメタンガス)が製品の場合
係る関係式(制御式ということがある)は、濃度X2が閾値より小さい場合に、上記式(3)の如く、濃度X2の2次式に従って流量比Kbを変化させ、閾値以上である場合に流量比Kbを限界流量比に固定することを意図している。
【0081】
閾値は、ガス製造装置100の構成や規模によって決定されるが、製品ガスの保証純度(製品ガス中の易透過性ガス成分又は難透過性ガス成分の濃度)と、原料ガスG1中の易透過性ガス成分または難透過性ガス成分の濃度によって適宜に決定される。また、閾値は、残留ガス中の難透過性ガス成分の濃度、又は、透過ガスG3中の易透過性ガス成分の濃度によって決定されてもよい。
【0082】
このようにすることで、
(I)易透過性ガス成分(主に水素ガス)が製品の場合
(i)原料ガスG1中の易透過性ガス成分(例えば水素)の濃度X1が低い場合でも、透過ガスG3における易透過性ガス成分の濃度が低くなることを抑制でき、透過ガスG3の保証値(所定の易透過性ガス成分の濃度)を下回ることを回避することができる。また、(ii)原料ガスG1中の易透過性ガス成分(例えば水素)の濃度が高い場合でも、ガス分離膜の非透過側(一次側)で、透過性ガス成分以外の不純物(典型的にはアミン類やハイドロカーボン類)の濃縮を抑制することができ、ガス分離膜へのダメージを軽減することができる。
【0083】
(II)難透過性ガス成分(主にメタンガス)が製品の場合
(i)原料ガスG1中の難透過性ガス成分(例えばメタン)の濃度X2が低い場合でも、残留ガスG2における難透過性ガス成分の濃度が低くなることを抑制でき、残留ガスG2の保証値(所定の難透過性ガス成分の濃度)を下回ることを回避することができる。また、(ii)原料ガスG1中の難透過性ガス成分(例えばメタン)の濃度が高い場合でも、ガス分離膜の透過側(二次側)で、透過性ガス成分以外の不純物(典型的にはアンモニア等)の濃縮を抑制することができ、ガス分離膜へのダメージを軽減することができる。
【0084】
1.7.その他の構成
本実施形態のガス製造装置100は、上記の構成を備えるが、上述の各構成は、複数備えられてもよい。さらに、本実施形態のガス製造装置100は、他の各種の構成を任意に有することができる。その他の構成としては、圧縮機、乾燥器、加熱器、冷却器、各種の弁、などを挙げることができる。これらの他の構成についても複数設けることができる。
【0085】
また、上述した本実施形態のガス製造装置100は、ガス分離ユニット16が1つ設けられた例であるが、ガス製造装置には、ガス分離ユニット16が複数設けられてもよく、所望の製品ガスが得られるように適宜に配置されることができる。
【0086】
また、閾値を残留ガスG2中の難透過性ガス成分の濃度、又は、透過ガスG3中の易透過性ガス成分の濃度によって決定する場合には、図示しないが、第2流路22又は第3流路23に濃度測定手段を設けて、係る濃度測定手段の測定結果を制御部50が取得して、これ基づいて閾値を決定してもよい。
【0087】
ガス分離ユニット16へ原料ガスG1を供給する第1流路21には、加熱手段(加熱器)を設けることができる。ガス分離ユニット16は、その特性に応じて適切な温度条件が存在する場合がある。例えば、水素を易透過性ガス成分とするガス分離ユニット16では、約90℃でガス分離を行うことが有利となる場合がある。このような場合には、原料ガスG1の温度を適切な温度まで加熱するために加熱手段(加熱器)を設けることが好ましい。
【0088】
また、ガス分離ユニット16へ原料ガスG1を供給する第1流路21には、冷却手段(冷却器)を設けてもよい。原料ガスG1中に液体のミストが含まれる場合があり、その場合には、ガス分離膜の変質が懸念される。具体的には、原料ガスG1中に高沸点成分(蒸気圧の高い物質)が含まれる場合には、常温では液化を起こす可能性があり、この高沸点成分が難透過性ガス成分である場合、残留ガスG2中に高沸点成分が濃縮し液化する恐れがある。そのため、冷却手段によって、例えば約40℃まで原料ガスG1を冷却し、凝縮液化成分を分離した後、加熱手段にて加熱することにより、ガス分離ユニット16での液体のミストの生成を抑制することができる。
【0089】
また、上述した本実施形態のガス製造装置100は、第1バルブ41の開度によって流量比Kが調節される例であるが、ガス製造装置100の第1流路21にも図示せぬバルブが設けられてもよい。このようなバルブが設けられる場合には、流量比Kは、第1バルブ
41及び第1流路21のバルブの一方又は両者によって調節されることができる。また、係るバルブを第1流路21に設けた場合には、当該バルブの開度も制御部50によって制御されることができる。
【0090】
2.ガス製造方法
本実施形態に係るガス製造方法は、選択的透過性を有するガス分離膜に対して、透過性の異なる複数のガス成分を含むガス混合物を原料ガスG1として供給し、ガス分離膜によって、易透過性ガス成分に富んだ透過ガスG3と難透過性ガス成分に富んだ残留ガスG2とに分離し、透過ガスG3及び残留ガスG2の少なくとも一方を製品ガスとして製造する方法である。
【0091】
本実施形態に係るガス製造方法は、上述のガス製造装置100によって実施することができる。また、本実施形態に係るガス製造方法は、
(I)易透過性ガス成分(主に水素ガス)が製品の場合(
図1A参照)
原料ガスG1中の易透過ガス成分の少なくとも1種のガス成分の濃度X1を測定し、当該測定された濃度X1に基づいて原料ガスG1の流量と残留ガスG2の流量との比Ka(ここで、Kaは、「原料ガスG1の流量/残留ガスG2の流量」である。)を変化させることができる機能を有する限り、他の構成の装置を用いても実施することができる。
【0092】
(II)難透過性ガス成分(主にメタンガス)が製品の場合(
図1B参照)
原料ガスG1中の難透過ガス成分の少なくとも1種のガス成分の濃度X2を測定し、当該測定された濃度X2に基づいて原料ガスG1の流量と透過ガスG3の流量との比Kb(ここで、Kbは、「原料ガスG1の流量/透過ガスG3の流量」である。)を変化させることができる機能を有する限り、他の構成の装置を用いても実施することができる。
【0093】
以下では、本実施形態のガス製造方法を、上述のガス製造装置100によって実施する場合について説明する。装置構成の説明において、上述のガス製造装置100と同様の作用・機能を有する構成については、同様の符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。
【0094】
(I)易透過性ガス成分(主に水素ガス)が製品の場合
原料ガスG1中の易透過ガス成分の少なくとも1種のガス成分の濃度X1は、例えば、測定部30の濃度測定器34により行われる。また測定された濃度X1に基づいて原料ガスG1の流量と残留ガスG2の流量との比Kaは、制御部50によって算出され、制御部50からの信号に基づいて第1バルブ41の開度が調節されることによって変化される(
図1A参照)。
【0095】
そして、本実施形態のガス製造方法において、流量比Kaは、濃度X1が閾値よりも小さい場合には、下記式(1)
Ka=a1*(X1)
2+b1*X1+c1 ・・・(1)
前記濃度X1が閾値以上である場合には、下記式(2)
Ka=d1 ・・・(2)
[式(1)、式(2)中、a1、b1、c1、d1は用いる装置系に依存する定数を表す。]
となるように変化させることができる。閾値、各種設計条件については、上述のガス製造装置の項で述べたと同様である。
【0096】
このようにすることで、
(i)原料ガスG1中の易透過性ガス成分(例えば水素)の濃度X1が低い場合でも、透過ガスG3における易透過性ガス成分の濃度が低くなることを抑制でき、透過ガスG3の
保証値(所定の易透過性ガス成分の濃度)を下回ることを回避することができる。また、(ii)原料ガスG1中の易透過性ガス成分(例えば水素)の濃度が高い場合でも、ガス分離膜の非透過側(一次側)で、透過性ガス成分以外の不純物(典型的にはアミン類やハイドロカーボン類)の濃縮を抑制することができ、ガス分離膜へのダメージを軽減することができる。
【0097】
(II)難透過性ガス成分(主にメタンガス)が製品の場合
原料ガスG1中の難透過ガス成分の少なくとも1種のガス成分の濃度X2は、例えば、測定部30の濃度測定器34により行われる。また測定された濃度X2に基づいて原料ガスG1の流量と透過ガスG3の流量との比Kbは、制御部50によって算出され、制御部50からの信号に基づいて第2バルブ42の開度が調節されることによって変化される(
図1B参照)。
【0098】
そして、本実施形態のガス製造方法においても、
流量比Kbを、前記濃度X2が閾値よりも小さい場合には、下記式(3)
Kb=a2*(X2)
2+b2*X2+c2 ・・・(3)
前記濃度X2が閾値以上である場合には、下記式(4)
Kb=d2 ・・・(4)
[式(3)、式(4)中、a2、b2、c2、d2は用いる装置系に依存する定数を表す。]
となるように変化させることができる。閾値、各種設計条件については、上述のガス製造装置の項で述べたと同様である。
【0099】
このようにすることで、
(i)原料ガスG1中の難透過性ガス成分(例えばメタン)の濃度X2が低い場合でも、残留ガスG2における難透過性ガス成分の濃度が低くなることを抑制でき、残留ガスG2の保証値(所定の難透過性ガス成分の濃度)を下回ることを回避することができる。また、(ii)原料ガスG1中の難透過性ガス成分(例えばメタン)の濃度が高い場合でも、ガス分離膜の透過側(二次側)で、透過性ガス成分以外の不純物(典型的にはアンモニア等)の濃縮を抑制することができ、ガス分離膜へのダメージを軽減することができる。
【0100】
3.実施例
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明するが、本発明は以下の例によってなんら限定されるものではない。以下の実施例は、計算機実験によるシミュレーションである。各実施例で用いた装置系は、
図1Aに示す構成を要部として備えている。また各実施例では、モニターとして、ガス分離ユニット16の二次側に生じる透過ガスG3を排出する第3流路23、及び、ガス分離ユニット16の一次側の残留ガスG2を排出する第2流路22に、それぞれ図示しない濃度測定器(濃度測定手段)(AI)を備えている。
【0101】
また、実施例では、ガス分離ユニット16の一次側に原料ガスG1を供給する第1流路21に設置されている第1流量計31(FI−1)により、原料ガスG1の流量を測定し、ガス分離ユニット16の一次側に原料ガスG1を供給する第1流路21に設置されている濃度測定器34(濃度測定手段)(AI)により原料ガスG1中の易透過性ガス成分の濃度X1を測定した。同様に、実施例では、ガス分離ユニット16の二次側から透過ガスG3を排出する第3流路23に設置されている第3流量計33(FI−3)により、透過ガスG3の流量を測定し、第3流路23に設置されている図示せぬ濃度測定器(濃度測定手段)(AI)により透過ガスG3中の易透過性ガス成分の濃度を測定した。さらに、同様に、実施例では、ガス分離ユニット16の一次側の残留ガスG2を排出する第2流路22に設置されている第2流量計32(FI−2)により、残留ガスG2の流量を測定し、第2流路22に設置されている図示せぬ濃度測定器(濃度測定手段)(AI)により残留
ガスG2中の易透過性ガス成分の濃度を測定した。
【0102】
本実施例においても、少なくとも一種の原料ガスG1から、易透過性ガス成分又は難透過性ガス成分が富化した透過ガスG3又は残留ガスG2を製品ガスとして生成することを扱う。そのため、製品ガスの要求仕様条件の与え方には様々なケースがある。
【0103】
さらに、本実施例では、操作温度や材質などの違いによる特性の異なる複数のガス分離モジュールを組合せて使用する場合も含むため、様々なケースがある。これら様々なケースに応じて、制御方法の変形が必要であることは自明であり、これらの変形は全て本発明に含まれるとともに、本発明を限定するものでないことを注記しておく。
【0104】
以下の実施例では、典型的な場合として、ガス製造装置の運転中に、原料ガスG1中の水素の濃度(純度)が変動した場合において、製品ガス中の水素の回収率、流量比及び製品ガス中の水素の濃度(純度)がどの様に変化するか、並びに、ガス製造装置の運転中に、原料ガスG1中のメタンの濃度(純度)が変動した場合において、製品ガス中のメタンの回収率、流量比及び製品ガス中のメタンの濃度(純度)がどの様に変化するか、を中心に調べた。
【0105】
3.1.実施例1
以下、実施例1について、解析条件、解析結果、及びまとめの順に記載する。
【0106】
(1)解析条件
(1−1)原料ガスの組成は表1に例示したものを用いた。
【0107】
(1−2)解析に用いたガス分離膜は、素材をポリアラミド系膜とした。
【0108】
(1−3)原料ガスのガス分離膜の入口における温度は、90℃とした。
【0109】
(1−4)原料ガスの1次圧力の初期設定値は、100bar(abs)とし、原料ガスの流量は、20000Nm
3/h(50%流量)〜40000Nm
3/h(100%流量)とした。
【0110】
(1−5)定格時の透過ガスの圧力は、20bar(abs)とした。なお、製品水素ガス濃度は、98mol%以上とし、水素回収率は88%以上を基準とした。
【0111】
(2)解析結果
本プロセスにおいて、原料ガス中の易透過性成分の少なくとも1種のガス成分の濃度X1を測定し、測定された濃度X1に基づいて原料ガスの流量と残留ガスの流量との比Kaを変化させる方法を適用した。
【0112】
具体的には、原料ガス中水素濃度が77.0mol%、87.0mol%と92.0mol%のものを用い、かつ前記濃度X1が閾値X1=87.85%よりも小さい場合には、下記制御式
Ka=a1*(X1)
2+b1*X1+c1
(a1:0.0254、b1:−3.7495、c1:141.37)
濃度X1が閾値X1=87.85%より大きい場合には下記制御式
Ka=d1
(d1:8.0)
を用いてシミュレーションを行った。
【0113】
シミュレーション結果を下記表3〜表5に示した。
【0117】
上記シミュレーションの結果、以下の内容が確認できた。
・製品ガス中の水素の濃度、及び水素の回収率が、基準値を満たしていること
・原料ガス中の水素の濃度が閾値以上の場合、最大流量比を一定として運用できること
【0118】
(3)まとめ
上記実施例1の結果をみると、流量比による制御式は、以下のような効果を有していることが判明した。
【0119】
1) 原料ガス中の水素の濃度が低い場合(77mol%)においては、製品ガス中の水素の濃度が基準値を下回ることがないように、ガス分離膜の非透過側の圧力を抑えて、製品ガス中の水素の濃度が高くなるように作用すること。
【0120】
2) 原料ガス中の水素の濃度が閾値以上(92mol%)の場合、ガス分離膜の非透過側での不純物(各例におけるモノエタノールアミン)の濃縮による劣化を防ぐために、ガス分離膜の非透過側の圧力抑えて、最大流量比を超えないように作用すること。
【0121】
3) 原料ガス中の水素の濃度が比較的高い(87mol%)場合、製品ガス中の水素の濃度の基準値を保ちながら、ガス分離膜の非透過側の圧力を高めて、回収率を最大限に得られるように作用すること。
【0122】
以上のように、本実施例の方式は優れた制御式であることが判明した。
【0123】
3.2.実施例2
(1)解析条件
(1−1)原料ガスの組成は表2に例示したものを用いた。
【0124】
(1−2)解析に用いたガス分離膜は、素材をポリイミド系膜とした。
【0125】
(1−3)原料ガスのガス分離膜入口温度は、25℃とした。
【0126】
(1−4)原料ガスの1次圧力の初期設定値は11bar(abs)とし、定格時(最大処理時)の原料ガスあるいは製品ガス(実施例1でも同様の訂正お願いします)の流量は、100Nm
3/hとした。
【0127】
(1−5)定格時の非透過ガスの圧力は、10.24bar(abs)とした。なお、製品メタンガス濃度は90.5mol%以上とし、メタン回収率は75%以上を基準と捉えた。また、透過ガス中の易透過性ガス成分以外の不純物の濃縮によるガス分離膜の変質等を防ぐために、限界流量比d2を3.0と設定した。
【0128】
より具体的には、例えばガス分離膜のアンモニアに対する耐性の基準を5ppm以下とする。表6の注記に示したように、原料ガス中にアンモニアが1ppm含まれている場合、濃縮比5が限界となる。実施例2では、濃縮比の最大値5ppmに対して、安全率を見て3.0と設定した。
【0129】
(2)解析結果
本プロセスにおいて、原料ガス中の難透過性ガス成分の少なくとも1種のガス成分の濃度X2を測定し、透過ガス流路の圧力を調節することにより、測定された濃度X2に基づいて原料ガスの流量と透過ガスの流量との比Kbを変化させる方法を適用した。
【0130】
具体的には、原料ガス流量が100Nm
3/h(100%流量)の場合に、前記濃度X1が閾値X2=74%よりも小さい場合には、下記式
Kb=a2*(X2)
2+b2*X2+c2
(a2:0.00068、b2:−0.11964、c2:6.63)
濃度X1が閾値X2=74%より大きい場合に下記式
Kb=d2
(d2:1.5)
を用いた。
【0131】
上記制御式を用いた場合のシミュレーション結果を下記表6に示した。
【0133】
シミュレーションの結果、全ての領域において、製品ガス中のメタン濃度及びメタン回収率が、基準値を上回ることを確認できた。流量比に関しても、全ての領域において、限界流量比以下で運用されていることが確認できた。
【0134】
(2)まとめ
上記実施例2の結果を見ると、流量比による制御式は、以下のような効果を有していることが判明した。
【0135】
1) 原料ガス中メタン濃度が低い場合、流量比を引き上げることで、製品ガス中メタン濃度が基準値を下回らないように制御することが可能であること。
【0136】
2) 原料ガス中メタン濃度が高い場合、限界流量比で一定に保つことで、分離膜の透過側で原料ガス中に含まれる不純物(今回であればアンモニア)が濃縮し、分離膜が劣化することを防止するように制御することが可能であること。
【0137】
3) 原料ガス中メタン濃度が中程度の場合、製品ガス中メタン濃度が基準値を下回らないように監視しつつ、流量比を引き下げることで、回収率が最大値となるように制御することが可能であること。
【0138】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。