(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472204
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】充放電電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20190207BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20190207BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20190207BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
H01M10/42 P
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-206405(P2014-206405)
(22)【出願日】2014年10月7日
(65)【公開番号】特開2016-77094(P2016-77094A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄住金テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 剛志
【審査官】
赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−106460(JP,A)
【文献】
特開2013−257263(JP,A)
【文献】
特開2014−170679(JP,A)
【文献】
特開2013−229201(JP,A)
【文献】
特開2003−219565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00−7/12
H02J 7/34−7/36
H01M 10/42−10/48
G01R 31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池に入出力端子を介して接続され、該二次電池に電力を供給する充電回路と、前記二次電池からの電力を放電する放電回路とを切り換えて形成する充放電スイッチング回路と、該充放電スイッチング回路のスイッチング素子のゲートに信号を与えて該スイッチング素子のオンオフ制御を行うパワーコントローラと、前記入出力端子を流れる電流A又は該入出力端子の電圧Bを検知して、前記パワーコントローラを制御し、前記電流A又は前記電圧Bを設定値に制御する補助コントローラとを有し、該補助コントローラで前記パワーコントローラに入力された前記設定値に基づき前記二次電池の充放電を行う充放電電源装置であって、
前記充放電スイッチング回路の出力側と前記入出力端子の間に、充放電時の前記電流A又は前記電圧Bの実測真値を測定可能で、取付け取外し可能な校正ユニットを設け、
前記校正ユニットの接続端子の一方は前記充放電スイッチング回路の出力側のプラス端子と連結され、前記接続端子の他方は前記入出力端子のプラス側とは開接点を介して、該入出力端子のマイナス側とは直列に接続した抵抗及び閉接点を介して連結され、しかも、前記開接点及び前記閉接点はそれぞれ前記補助コントローラからの指示によって作動され、前記設定値と前記実測真値を比較可能としたことを特徴とする充放電電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の充放電電源装置において、前記校正ユニットには温度センサーが設けられ、前記校正ユニットで測定した前記実測真値を、周囲温度の変化によって生じる誤差で補正することを特徴とする充放電電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の充放電電源装置において、前記校正ユニットはワンタッチで取付け取外し可能であることを特徴とする充放電電源装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の充放電電源装置において、前記電流Aの実測真値は、前記校正ユニット内又は前記校正ユニット外に設けて、前記電流Aを直接測定するCTにより検知して測定され、前記電圧Bの実測真値は、前記入出力端子の両端の電圧の測定ができる電圧計測手段で検知して測定されることを特徴とする充放電電源装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の充放電電源装置において、前記校正ユニットに設けられ、前記電圧Bの実測真値を表示する電圧計及び前記電流Aの実測真値を表示する電流計は、定期的に校正を行って常時正しい電圧及び電流を表示していることを特徴とする充放電電源装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の充放電電源装置において、前記二次電池を接続した状態による動作の際に、間欠的又は連続的に校正が可能であることを特徴とする充放電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の充放電に用いる充放電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車やハイブリッド自動車、その他の電気製品等において、リチウムイオン電池やニッケル水素電池を始めとする充放電可能な二次電池が、広く使用されている。なお、二次電池の充放電は、二次電池を充放電電源装置(「充放電装置」ともいう)に接続することにより行っている(例えば、特許文献1参照)。
この充放電電源装置は使用に伴い、充放電時の実際の値(電流値や電圧値)が、入力した設定値に対してずれていく(誤差が発生する)ため、入力した設定値に基づいて充放電が正常に行われているか否かを定期的に検査し、校正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−257405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、校正を行うたびに、作業者が充放電電源装置の負荷に校正装置を接続する必要があるため、例えば、以下の問題があった。
・校正を行うに際しては、人的作業が必要となるため、作業に時間を要する。
・充放電電源装置の設置スペースが狭い場合、作業者による校正装置の接続の作業がしずらい。なお、設置スペースを広くした場合、設置スペースを確保するための費用がかかる。
・入力した設定値に対する誤差は、充放電電源装置の設置環境に影響されるため、例えば、充放電電源装置ごとに校正時期を変更しなければならない場合や、校正時期の推定が困難な場合がある。
・作業者が校正装置の接続を行うため、人為的なミスが発生するおそれがある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、校正を、人的作業なく、任意の時期に実施可能な充放電電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る充放電電源装置は、
二次電池に入出力端子を介して接続され、該二次電池に電力を供給する充電回路と、前記二次電池からの電力を放電する放電回路とを切り換えて形成する充放電スイッチング回路と、該充放電スイッチング回路
のスイッチング素子のゲートに信号を与えて該スイッチング素子のオンオフ制御を行うパワーコントローラと、前記入出力端子を流れる電流A又は該入出力端子の電圧Bを検知して、前記パワーコントローラを制御し、前記電流A又は前記電圧Bを設定値に制御する補助コントローラとを有し、
該補助コントローラで前記パワーコントローラに入力された
前記設定値に基づき前記二次電池の充放電を行う充放電電源装置
であって、
前記充放電スイッチング回路
の出力側と前記入出力端子の間に、充放電時の
前記電流A又は
前記電圧Bの実測真値を測定可能で、取付け取外し可能な校正ユニットを設け、
前記校正ユニットの接続端子の一方は前記充放電スイッチング回路の出力側のプラス端子と連結され、前記接続端子の他方は前記入出力端子のプラス側とは開接点を介して、該入出力端子のマイナス側とは直列に接続した抵抗及び閉接点を介して連結され、しかも、前記開接点及び前記閉接点はそれぞれ前記補助コントローラからの指示によって作動され、前記設定値と前記実測真値を比較可能としている。
【0007】
本発明に係る充放電電源装置において、前記校正ユニットには温度センサーが設けられ、前記校正ユニットで測定した前記実測真値を、周囲温度の変化によって生じる誤差で補正することが好ましい。
【0008】
本発明に係る充放電電源装置において、前記校正ユニットはワンタッチで取付け取外し可能であることが好ましい。
【0009】
本発明に係る充放電電源装置において、前記電流Aの実測真値は、前記校正ユニット内又は前記校正ユニット外に設けて、
前記電流
Aを直接測定するCTにより検知して測定され、前記電圧Bの実測真値は、前記入出力端子の両端の電圧
の測定ができる電圧計測手段で検知して測定されることが好ましい。
【0010】
本発明に係る充放電電源装置において、前記校正ユニットに設けられ
、前記電圧Bの実測真値を表示する電圧計及び
前記電流Aの実測真値を表示する電流計は、定期的に校正を行って常時正しい電圧及び電流を表示していることが好ましい。
【0011】
本発明に係る充放電電源装置において、前記二次電池を接続した状態による動作の際に、間欠的又は連続的に校正を可能とすることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る充放電電源装置は、充放電時の電流A又は電圧Bの実測真値を測定可能な校正ユニットを設けているので、自動的に校正を実施でき、作業者による作業が不要となる。
このように、人的作業が発生しないため、校正時間を短縮できると共に、人為的なミスも防止できる。また、充放電電源装置の設置スペースも最小限にできる。更に、充電時の実測真値を、間欠的又は連続的に測定できるので、充放電電源装置ごとの校正時期の調整も容易である。
【0013】
特に、校正ユニットに温度センサーを設け、校正ユニットで測定した実測真値を、周囲温度の変化によって生じる誤差で補正する場合、校正の精度が更に高められる。
【0014】
また、校正ユニットがワンタッチで取付け取外し可能である場合、例えば、校正ユニット自体の校正や交換も容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る充放電電源装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る充放電電源装置10は、二次電池11に入出力端子12、13を介して接続される充放電スイッチング回路14と、充放電スイッチング回路14のスイッチング素子15、16のゲート17、18に信号を与えてスイッチング素子15、16のオンオフ制御を行うパワーコントローラ19と、入出力端子12、13を流れる電流又は入出力端子12、13の電圧を検知して、パワーコントローラ19を制御し、入出力端子12、13を流れる電流又は入出力端子12、13の電圧を、入力された値(設定値)に制御する補助コントローラ20とを有している。以下、これらについて詳しく説明する。
【0017】
補助コントローラ20とパワーコントローラ19は、通信路21、22で連結され、信号の授受を行っている。この補助コントローラ20とパワーコントローラ19で、コントローラが構成されている。
即ち、補助コントローラ20で入力された、1)充電時の電流指示値又は電圧指示値、2)放電時の電圧指示値又は電流指示値、に基づいて、パワーコントローラ19が作動し、所定タイミングで所定時間の信号を充放電スイッチング回路14を構成するスイッチング素子15、16に送っている。
【0018】
充放電スイッチング回路14は、スイッチング素子15、16とリアクトル23とでチョッパー回路を構成し、直流電源24からの電力を、異なる電流、電圧の直流に変換し、二次電池11に電力を供給する充電回路と、二次電池11からの電力を放電する放電回路とを切り換え、入出力端子12、13を通じて二次電池11に電力を送り(充電)、また、二次電池11からの電力を受けて直流電源24に電力
を送る(放電)。
この充電と放電の切り換えは、スイッチング素子15、16のオンオフするタイミングをパワーコントローラ19によって制御することにより行う。
【0019】
この充放電スイッチング回路14は、直列に接続された電流検出器(例えば、CT、シャントー)25を備え、検知した電流をパワーコントローラ19に送って負荷電流の制御を行っている。また、入出力端子12、13間の電圧も検知し、パワーコントローラ19に送って負荷電圧の制御を行っている。
ここで、番号26は、直流電源24のアース側(マイナス)端子を示す。また、充放電スイッチング回路14の出力側に接続されているコンデンサ27は平滑用である。
【0020】
この充放電電源装置10には、充放電スイッチング回路14に接続され、入出力端子12、13を流れる電流又は電圧の正しい値(電流真値又は電圧真値、即ち電流A又は電圧Bの実測真値)を電圧計及び電流計で測定する校正ユニット28が設けられている。
この校正ユニット28は一つのユニットとなって接続端子を有し、充放電電源装置10のコネクター(図示しない)にワンタッチで取付け取外し可能に装着され、周囲は保護ケースで覆われている。
【0021】
この校正ユニット28は、
図1に示すように、内部(校正ユニット28内)に電流測定器(例えば、CT)29を有し、入出力端子12、13に流れる電流を直接測定できると共に、入出力端子12、13間(入出力端子12、13の両端)の電圧を電圧計測手段30で測定できる構造となっている。
そして、校正ユニット28にはデジタルマルチメータ31が設けられ、測定した電圧真値又は電流真値(実測真値)を切り換えて表示できるようになっている。
【0022】
上記した実測真値は、補助コントローラ20に送信され、この補助コントローラ20で、設定した電流値又は電圧値(設定値)と比較できるようになっている。この比較は、補助コントローラ20の指示により間欠的又は連続的に実施できる。
なお、入出力端子12、13に流れる電流が大きい場合は、電流測定器29を校正ユニットの外部(構成ユニット外)に設け、通信路を介して、測定した電流真値をデジタルマルチメータ31により表示することもできる。
【0023】
この校正ユニット28に設けられたデジタルマルチメータ31(電圧計及び電流計)は、定期的に校正が行われ、常時正しい電圧及び電流が表示されるようになっている。この場合、各校正ユニット28を充放電電源装置10からワンタッチで取外して校正することで、校正ユニット28自体の校正も容易に実施できる。また、故障等があれば交換を行う必要があるが、充放電電源装置10にワンタッチで取付け取外し可能な構成であるため、作業性も良好である。
更に、校正ユニットに温度センサーを設け、校正ユニットで測定した実測真値を、周囲温度の変化によって生じる誤差で補正することが好ましい。
【0024】
入出力端子12に直列に接続されているスイッチ(開接点)32、及び、入出力端子13に抵抗33を介して直列に接続されているスイッチ(閉接点)34は、補助コントローラ20の指示によって作動する。
即ち、これらのスイッチ32、34が作動すると、充放電電源装置10が二次電池11に接続され、充電又は放電の動作を開始できる。また、スイッチ32、34が非作動の場合は、抵抗33を介して、二次電池11が接続されていない状態でも校正が可能である。
【0025】
上記した充放電電源装置10への電流a又は電圧bの設定値は、充放電電源装置10の補助コントローラ20に接続された管理用パソコン(外部パソコン)35を用い、充放電電源装置10の補助コントローラ20及び管理用パソコン35に設けられた通信手段36を介して入出力される。
なお、電流の設定値は、例えば、100mA〜1000Aの範囲内で種々変更でき、また、電圧の設定値は、例えば、5〜1000Vの範囲内で種々変更できる。
【0026】
スイッチ32、34が非作動時に電流及び電圧の補正係数を有しているパワーコントローラ19、もしくは、補助コントローラ20に対して、校正ユニット28を通して、自動でキャリブレーションを行い、スイッチ32、34が動作時に、間欠的又は連続的に、校正を実施することが可能である。
【0027】
本発明は、充放電スイッチング回路14が駆動した状態で、校正及びキャリブレーションができることも、特徴の一つである。
【0028】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の充放電電源装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、校正ユニットを除く充放電電源装置の構成(回路)は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、例えば、従来使用されている充放電電源装置の構成でもよい。従って、本発明は、校正ユニットが設けられた充放電電源装置を新たに製造する場合のみならず、従来使用している充放電電源装置に、校正ユニットを新たに組み込む場合も含まれる。
【符号の説明】
【0029】
10:充放電電源装置、11:二次電池、12、13:入出力端子、14:充放電スイッチング回路、15、16:スイッチング素子、17、18:ゲート、19:パワーコントローラ、20:補助コントローラ、21、22:通信路、23:リアクトル、24:直流電源、25:電流検出器、26:アース側端子、27:コンデンサ、28:校正ユニット、29:電流測定器、30:電圧計測手段、31:デジタルマルチメータ、32:スイッチ、33:抵抗、34:スイッチ、35:管理用パソコン、36:通信手段