特許第6472240号(P6472240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472240
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 29/02 20060101AFI20190207BHJP
   B43K 24/12 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   B43K29/02 Z
   B43K24/12
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-264540(P2014-264540)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-124128(P2016-124128A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】木暮 正広
【審査官】 大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−124899(JP,A)
【文献】 特開2013−173358(JP,A)
【文献】 特開2011−224860(JP,A)
【文献】 実開昭50−019530(JP,U)
【文献】 実開昭49−082839(JP,U)
【文献】 特開2013−166386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 23/08−23/12
B43K 3/00
B43K 29/02
B43K 24/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に、熱変色性インキを充填した筆記体を前後動可能に収容し、前記軸筒の外面に操作部を設け、前記操作部を操作することによって、前記筆記体のペン先を軸筒の前端孔から出没可能に構成してなる熱変色性筆記具であって、前記軸筒の後端部に、熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦体を具備してなる熱変色性筆記具であって、前記軸筒の後端部に、前記摩擦体よりも径方向外方に第二摩擦体を着脱自在に装着し、前記第二摩擦体の後端部に貫通孔を設け、前記第二摩擦体を軸筒後端部に装着した状態で、前記摩擦体の一部が前記第二摩擦体の貫通孔から軸方向後方に露出するとともに、前記摩擦体及び第二摩擦体に、熱変色性インキの筆跡に接触する曲面部を設け、且つ前記第二摩擦体の曲面部の変形量を、前記摩擦体の曲面部の変形量よりも小さくしたことを特徴する熱変色性筆記具。
【請求項2】
前記軸筒の前端部に、前記第二摩擦体を着脱自在に装着可能な被装着部を設けるとともに、前記第二摩擦体を前記軸筒の前端部に装着した状態で、前記筆記体のペン先が、前記第二摩擦体の貫通孔を挿通し、前記筆記体のペン先を軸筒の前端孔から出没可能に構成したことを特徴する請求項1に記載の熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒内に、熱変色性インキを充填した筆記体を前後動可能に収容し、前記軸筒の外面に操作部を設け、前記操作部を操作することによって、前記筆記体のペン先を軸筒の前端孔から出没可能に構成してなる熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筆記具を構成する筒体の一方の端部に具備した、熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦体については、特開2009−90566号公報「摩擦体」等で開示されている。
【0003】
こうした摩擦体を具備した熱変色性筆記具において、可逆熱変色性インキにより形成された像や筆跡を剥がすことなく擦過して第1状態から第2状態に変色させ得ると共に、擦過部分への再筆記が可能な摩擦体を具備した筆記具として特開2006−123324号「摩擦体及びそれを用いた筆記具、筆記具セット」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−90566号公報
【特許文献2】特開2006−123324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、筆記する時の紙面に対する筆記具の軸芯の角度、いわゆる筆記角度は人によって様々であり、紙面に対して垂直又は垂直に近い状態で筆記する人、紙面に対して60度よりも小さい角度、例えば45度程度の寝かせ書きと呼ばれる角度で筆記する人もいる。こうした筆記角度は、同様に摩擦体を使用する時に擦過角度も人によって様々である。
【0006】
本発明者は、擦過角度について検討した結果、擦過角度(筆記具の軸芯と紙面との角度)が小さいほど、紙面に対する摩擦体を接触させる押圧力を加えにくく、軸筒を把持する握力が必要となることが分かった。これは、垂直に近い状態で紙面に摩擦体を接触する場合には、重力や紙面側への力が摩擦部に伝えやすく、筆記具を寝かせる程、この力が伝わり難いためと推測する。
【0007】
本発明の目的は、摩擦部を使用するときの角度が小さくても紙面の筆跡へ摩擦熱が発生しやすい熱変色性筆記具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、軸筒内に、熱変色性インキを充填した筆記体を前後動可能に収容し、前記軸筒の外面に操作部を設け、前記操作部を操作することによって、前記筆記体のペン先を軸筒の前端孔から出没可能に構成してなる熱変色性筆記具であって、前記軸筒の後端部に、熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦体を具備してなる熱変色性筆記具であって、前記軸筒の後端部に、前記摩擦体よりも径方向外方に第二摩擦体を着脱自在に装着し、前記第二摩擦体の後端部に貫通孔を設け、前記第二摩擦体を軸筒後端部に装着した状態で、前記摩擦体の一部が前記第二摩擦体の貫通孔から軸方向後方に露出するとともに、前記摩擦体及び第二摩擦体に、熱変色性インキの筆跡に接触する曲面部を設け、且つ前記第二摩擦体の曲面部の変形量を、前記摩擦体の曲面部の変形量よりも小さくしたことを特徴する。尚、本発明で、「前」とは、ペン先側を指し、「後」とは、その反対側を指す。
【0009】
また、前記軸筒の前端部に、前記第二摩擦体を着脱自在に装着可能な被装着部を設けるとともに、前記第二摩擦体を前記軸筒の前端部に装着した状態で、前記筆記体のペン先が、前記第二摩擦体の貫通孔を挿通し、前記筆記体のペン先を軸筒の前端孔から出没可能に構成したことを特徴する。
【0010】
本発明の第1の構成によれば、前記軸筒の後端部に、前記摩擦体よりも径方向外方に第二摩擦体を着脱自在に装着し、前記第二摩擦体の後端部に貫通孔を設け、前記第二摩擦体を軸筒後端部に装着した状態で、前記摩擦体の一部が前記第二摩擦体の貫通孔から軸方向後方に露出するとともに、前記摩擦体及び第二摩擦体に、熱変色性インキの筆跡に接触する曲面部を設け、前記第二摩擦体の曲面部の曲率を、前記摩擦体の曲面部の曲率よりも小さく、且つ前記第二摩擦体の曲面部の変形量を、前記摩擦体の曲面部の変形量よりも小さくすることで、摩擦体と第二摩擦体の形状(曲率)が異なるため、細かな部分を摩擦変色する場合や、幅広く摩擦変色することなど、様々な用途に使用することができる。
【0011】
また、摩擦体の使用する角度によって、摩擦体または第二摩擦体が筆跡に接触する。このとき、摩擦角度小さい場合に変形量が小さい第二摩擦体が紙面の筆跡に接触するため、小さい力での摩擦操作でも摩擦熱を発生しやすくすることができる。これは、変形量が小さいほうが、接触面積は小さくなるものの、単位面積当たりに掛かる力が大きくなるため、熱変色性インキの筆跡に接触して摩擦し、その際に摩擦熱が生じやすいためと思慮する。
【0012】
尚、摩擦体の曲面部の変形量とは、紙面に摩擦体の曲面部を一定荷重で押し当てたときに曲面部が変形する大きさを示すものであって、構造、材質などによって定まるが、一般的に硬度が低く柔らかいほうが変形量は大きくなるため、第二摩擦体の硬度を摩擦体の硬度よりも硬くすることが好ましい。また、曲率が小さいほうが、接触面積を小さく維持し易いため好ましい。
【0013】
本願発明の第2の構成によれば、前記軸筒の前端部に、前記第二摩擦体を着脱自在に装着可能な被装着部を設け、前記第二摩擦体を前記軸筒の前端部に装着した状態で、前記筆記体のペン先が、前記第二摩擦体の貫通孔を挿通し、前記筆記体のペン先を軸筒の前端孔から出没可能にすることで、軸筒後端部、軸筒前端部と異なる2カ所での摩擦操作が可能となる。
【0014】
本発明において摩擦体は、弾性材料(軟質材料)から構成されることが好ましい。前記摩擦体を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂、SEBS樹脂、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。前記摩擦体を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)からなるものよりも、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が生じるため、殆ど生じない低摩耗性の弾性材料からなることが最も好ましい。尚、本発明の摩擦体は、少なくとも曲面部外面が前記弾性材料からなる構成であればよい。また、摩擦体及び第二摩擦体としては、ショアA硬度40以上、100以下が好ましい。
【0015】
本発明の摩擦体は、軸筒に嵌着、圧入、螺着、接着、融着によって具備することが挙げられる。さらに、摩擦体は、軸筒自体を摩擦体とすること、軸筒と摩擦体を二色成形によって一体に成形してあってもよい。同様に、第二摩擦体もベースとなる硬質樹脂で形成した筒体などに軟質部材を嵌着、圧入、螺着、接着、融着によって具備することが挙げられる。さらに、第二摩擦体は、軟質部材で一体に構成すること、硬質部材と第二摩擦体とを二色成形によって一体に成形してあってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、摩擦体を使用するときの角度が小さくても紙面の筆跡へ摩擦熱が発生しやすい熱変色性筆記具を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1の熱変色性筆記具を示す縦断面図である。
図2図1におけるペン先を突出した状態を示す図である。
図3図1におけるキャップを前軸に装着した状態を示す図である。
図4図3におけるペン先を突出した状態を示す図である。
図5】摩擦体を使用する状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施例1
図1図5に示す実施例1の熱変色性筆記具1は、前軸3、後軸4、頭冠5で構成される軸筒2内に複数本(3本)の筆記体が前後方向に移動可能に収容されている。前軸3の雄ネジ部と後軸4の雌ネジ部を螺合により取り付けられ、後軸4の雄ネジ部に頭冠5の雌ネジ部が螺合により取り付けられている。また、筆記体9の後端部には、筆記体9のインキ収容筒10に収容した熱変色性インキ(図示せず)と発色状態と同色の摺動体6を配設してあり、筆記体9は、コイルスプリング14により後方に付勢してあり、他の筆記体13の後端部には、筆記体9と同様にして、筆記体13のインキ収容筒に収容した熱変色性インキと同色の摺動体(図示せず)を配設してある。また、摺動体を配設した、もう一方の筆記体について詳細は図示していないが、3本の筆記体を配設した従来から知られている出没機構のスライド式の多芯筆記具である。
【0019】
筆記体9について詳述すると、インキ収容筒10の前端部に、φ0.5mmのボールを回転自在に抱持したボールペンチップ12からなる筆記部を、チップホルダー11を介して装着してある。また、インキ収容筒10内には、平均粒径が0.5μmの可逆熱変色性のマイクロカプセル顔料を含有し、EM型回転粘度計における1rpmでのインキ粘度が1020mPa・s(25℃)、100rpmでのインキ粘度が84mPa・s(25℃)で、剪断減粘指数が0.48の熱変色性インキ(図示せず)と、このインキの後端に、グリース状のインキ追従体(図示せず)を直に収容してある。尚、インキ粘度は、EM型回転粘度計における100rpm、20℃において、40〜200mPa・sとすることが好ましい。また、本発明で規定する「平均粒子径」は、堀場製作所製レーザー式粒度分布測定機LA−300(体積基準)を使用し、そのメジアン径を平均粒子径とした値である。
【0020】
尚、前記熱変色性インキは、日常の生活温度域で呈する色彩の保持を有効に機能するため、低温側変色点が−30℃〜−10 ℃の範囲の任意の温度に設定され、高温側変色点が60℃〜80℃の範囲の任意の温度に設定され、ヒステリシス幅ΔHが40 ℃〜60℃の範囲を示す可逆熱変色性組成物を有するインキとすることが好ましい。前記熱変色性インキは、発色状態において、透明、白色、灰色、及び淡色以外の色を呈する。前記熱変色性インキは、発色状態において、例えば、黒、青、赤、黄、緑、橙、紫、紺、ピンク、水色等を呈する。前記熱変色性インキは、消色状態において、無色となる。
【0021】
また、後軸4の後端部には、前後方向に延びる細長状の摺動溝4Aが3本、形成してあり、互いに、120度間隔に形成される。また、摺動溝4Aは、後方が開口していて、後軸4の後端で連通する開口部を有している。後軸4の後端部は略円筒状であって、後軸4の外面には予めフィルム転写を施してある。
【0022】
後軸4内には、略円筒状のスプリング支持部7を固着している。スプリング支持部7は、筆記体9、13等、3本の筆記体が挿通される内孔が軸方向に貫設し、スプリング支持部7と、各々の摺動体6間には、例えば摺動体6とスプリング支持部7との間には、コイルスプリング14が配置し、筆記体9及び摺動体6を後方に付勢してある。尚、図示はしていないが、他の摺動体も摺動体6と同様に、スプリング支持部7と、各々の摺動体間には、コイルスプリングが配置し、筆記体及び摺動体を後方に付勢してある。
【0023】
また、後軸4の後端部、且つ後軸4の摺動溝間には、長手方向に沿って延びる凹状の装着溝を形成してあり、この装着溝にクリップ15を付設してある。 クリップ15は、クリップ片16を、クリップ台17の外壁に設けられた支柱18に連結し、クリップ片16の内壁とクリップ台17との間であって支柱の後方に配設されるコイルスプリング19によって、クリップ片16の前端部の内壁を常時、クリップ台17の外壁の外面に弾性的に反発させるとともに、クリップ片16の後端部をクリップ台17側へ押圧することによりクリップ片16と支柱18との連結部を支点としクリップ台17に対しクリップ片16の前端部の内壁をクリップ台17から離間可能に配設してある。また、クリップ台17の前端部には、クリップ片16に向かって突出する係止部を形成してある。
【0024】
また、後軸4の後端部には、頭冠5を螺合により着脱自在に装着し、頭冠5には、SEBS樹脂で形成した摩擦体8が装着してある。具体的には、頭冠5に設けた嵌合突部に、摩擦体8の突部を落とし込み嵌合によって、摩擦操作時などに容易に抜けないように装着してある。また、頭冠5を着脱自在に装着することで、仮に摩擦体8が損傷や汚れた場合でも摩擦体8を交換することができる。尚、摩擦体8の硬度は、ショアA硬度60であった。
【0025】
さらに、後軸4の後端部には、第二摩擦体20を装着してある。第二摩擦体20は、内部に設けた凸部(装着部)20Bと、ドーム状の天部には貫通孔20Aを設けてある。一方、後軸4の後端部には装着した頭冠5の外面に凸部(被装着部)5Aを設けてあり、この凸部5Aと第二摩擦体20内設けた凸部(装着部)20Bを乗り越し嵌合によって着脱自在に装着してある。第二摩擦体20は、ポリエステル系樹脂からなり、熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で熱変色性インキの筆跡を熱変色可能である。尚、第二摩擦体20の硬度は、ショアA硬度100であった。
【0026】
筆記体9のボールペンチップからなる筆記部12を前軸3の前端孔3Aから突出させるには、摺動体6の操作部6Aを、摺動溝4Aに沿って、前軸3の前端孔3A方向へスライドすることにより、摺動体6に形成した係合突起が後軸4内に形成した係止部(図示せず)に係止して、筆記体9の筆記部12を前軸3の前端孔3Aから選択して突出を維持して、筆記することができる。
【0027】
また、筆記体9の筆記部12が前軸3の前端孔3Aから突出を維持した状態で、他の摺動体の操作部を前軸3の前端孔3A方向にスライドすることで、他の摺動体の解除突起が摺動体6の係止を解除し、コイルスプリング14により筆記体9の筆記部12を前軸3内に没入させることができる。
【0028】
筆跡を熱変色するには、図5に示すとおり、第二摩擦体20を装着した状態で、摩擦体8の後端部が、長手方向において第二摩擦体20の貫通孔から後部外方に露出しているため、擦過する角度が大きいと摩擦体8の曲面部8Aがノート等の筆記面Hに筆記した筆跡に接触し、その状態から圧接して擦ることで発生する熱によって、熱変色性インキの筆跡を熱消色させることができる。擦過する角度が小さい場合(45度以下)には、第二摩擦体20の天部の外周面に設けた曲面部20Cがノート等の筆記面Hに筆記した筆跡に接触し、その状態で圧接し、擦ることで発生する熱によって、熱変色性インキの筆跡を熱消色させることができる。
【0029】
また、第二摩擦体20は、頭冠5から取り外して、前軸3の前端部に設けた凸状の被装着部4Cに乗り越し嵌合によって着脱自在に装着することができる。さらに、前軸3の前端部に第二摩擦体20を装着した状態であれば、軸筒の後端部の摩擦体8と前軸3の前端部の第二摩擦体20との両端部にて使用することができる。
【0030】
尚、第二摩擦体20を前軸3の前端部に装着した状態で、筆記体9の筆記部12を前軸3の前端孔3Aから突出させる場合も同様に、摺動体6の操作部6Aを、摺動溝4Aに沿って、前軸3の前端孔3A方向へスライドすることにより、筆記体9の筆記部12を前軸3の前端孔3A及び第二摩擦体20の貫通孔20Aを挿通して、前軸3の前端孔3Aから突出して、筆記することができる。
【0031】
本実施例では、便宜上、熱変色性インキを収容したボールペンを3本配設してあるが、筆記体には、例えば、ボールペン、マーキングペン等が挙げられる。また、筆記体の本数は、少なくとも1本が熱変色性インキを収容した筆記体であればよく、具体的には、1本(単色)、2本、3本、4本、5本、6本等が挙げられる。
【0032】
また本実施例では、便宜上、第二摩擦体を乗り越し嵌合することで、軸筒の後端部及び前端部に着脱自在に装着するようにしてあるが、装着方法は、螺合や圧入など、特に限定されるものではないが、頭冠を着脱自在とする場合には、頭冠とは異なる方法で装着することで、第二摩擦体の着脱時に頭冠が外れ難くなるので好ましい。また、第二摩擦体の形状も特に限定されるものではないが、軸筒前端部に装着した後のペン先視認性を考慮すると、天部に向かって徐々に縮径する形状とすることが好ましく、摩擦操作性を鑑みて、天部の外周面に曲面部を有する形状が好ましい。
【0033】
また、筆記具用インキも特に限定されるものではないが、粒子の平均の大きさが0.1〜30μmの顔料を含有し、前記ボールの縦方向のクリアランスが、30〜80μm、100m当たりのインキ消費量が、200〜800mgとすることで、濃く良好な筆跡及び良好な筆感を得ることができる。これは、ボールの縦方向のクリアランスが30μm未満では、粒子の平均の大きさが0.1〜30mの顔料を有する筆記具用水性インキにおいて、100m当たりのインキ消費量が200〜800mgのようなインキ消費量を多くすることが困難であるとともに、80μmを超えると、インキ消費量が多く、筆跡乾燥性が低下する恐れがあるため、30から80μmとすることが最も好ましいためである。尚、インキ消費量については、20℃環境下で、筆記用紙としてJIS P3201筆記用紙A上に筆記角度65°、筆記荷重100gの条件にて、筆記速度4m/minの速度で、試験サンプル5本用いて、らせん筆記試験を行い、その100mあたりのインキ消費量の平均値を、100mあたりのインキ消費量と定義する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の熱変色性筆記具は、出没機構や単芯、多芯に限定されることなく、熱変色性筆記具として広く実施可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 熱変色性筆記具
3 前軸
3A 前端孔
3B 被装着部
4 後軸
4A 摺動溝
5 頭冠
5A 被装着部
6 摺動体
6A 操作部
7 スプリング支持部
8 摩擦体
8A 曲面部
9、13 筆記体
10 インキ収容筒
12 ペン先
14 コイルスプリング
15 クリップ
16 クリップ片
17 クリップ台
18 支柱
19 コイルスプリング
20 第二摩擦体
20A 貫通孔
20B 装着部
20C 曲面部
図1
図2
図3
図4
図5