特許第6472261号(P6472261)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472261
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20190207BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   B41J2/01 123
   B41J2/01 129
   B41J2/01 501
   B05D1/26 Z
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-26327(P2015-26327)
(22)【出願日】2015年2月13日
(65)【公開番号】特開2016-147456(P2016-147456A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100103676
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 康夫
(72)【発明者】
【氏名】大西 勝
(72)【発明者】
【氏名】坂口 あゆみ
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−265233(JP,A)
【文献】 特開2003−103674(JP,A)
【文献】 特開2009−148744(JP,A)
【文献】 特開2004−158529(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0028772(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0200884(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
B05D 1/00 − 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して印刷を行う印刷装置であって、
前記媒体へ向けてインクジェット方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにおいて用いるインクよりも粘度が高いインクである高粘度インクを前記媒体に向けて吐出するディスペンサと
を備え
前記ディスペンサは、連続して前記高粘度インクを吐出しつつ前記媒体に対して相対的に移動するベクトル走査を行うことで、前記高粘度インクを前記媒体に向けて吐出することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記高粘度インクは、所定の条件に応じて硬化する硬化性樹脂を含むインクであることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記硬化性樹脂は、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記媒体の被印刷面と直交する方向である上下方向へ前記ディスペンサを移動させる上下方向駆動部を更に備え、
前記ディスペンサが連続して前記高粘度インクを吐出している間、前記上下方向駆動部は、前記ディスペンサと前記被印刷面との間の距離を、予め設定された範囲の距離に保ち、
かつ、前記ディスペンサが連続的に前記高粘度インクを吐出する動作を終了するタイミングに合わせて、前記上下方向駆動部は、前記被印刷面から離れる方向へ前記ディスペンサを移動させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記高粘度インクは、フィラーを含むインクであることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記高粘度インクは、所定の条件に応じて硬化する硬化性樹脂を含むインクであり、
前記印刷装置は、前記高粘度インクに含まれる前記硬化性樹脂を硬化させる硬化手段を更に備え、
前記硬化手段は、前記媒体上において前記高粘度インクが隆起している状態で前記硬化性樹脂を硬化させることにより、前記媒体の少なくとも一部に、前記硬化性樹脂により隆起した領域を形成することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
媒体に対して印刷を行う印刷方法であって、
前記媒体へ向けてインクジェット方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにおいて用いるインクよりも粘度が高いインクである高粘度インクを前記媒体に向けて吐出するディスペンサと
を用いて印刷を行い、
前記ディスペンサに、連続して前記高粘度インクを吐出しつつ前記媒体に対して相対的に移動するベクトル走査を行わせることで、前記高粘度インクを前記媒体に向けて吐出させることを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタが広く用いられている(例えば、非特許文献1参照。)。インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドの微細なノズルから粘度の低いインクのインク滴を吐出することにより、印刷を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】インターネットURL:http://www.mimaki.co.jp
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットプリンタで印刷を行う場合、その構成上、使用可能なインクに様々な制限が生じる。しかし、より多様な印刷を行うためには、より多様な特性のインクを用いることが望まれる。そのため、従来、インクジェットヘッドでは使用が難しいインクを用いて印刷を行うことが可能な構成が望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷方法及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明者は、多様なインクを使用可能な構成に関し、鋭意研究を行った。そして、先ず、インクジェットヘッド用のインクに関し、制限となっている特徴に着目した。より具体的に、例えば、インクジェットヘッド用のインクの粘度に関する制限に着目した。
【0006】
従来、インクジェットヘッドを用いて印刷を行う場合、極めて粘度が低いインクを用いることが必要になる。これに対し、例えばインクの用途や、印刷の仕方等によっては、より高い粘度のインクを用いること等が好ましい場合もある。例えば、印刷の対象となる媒体(メディア)に対し、一部を隆起させた隆起印刷を行う場合には、より高い粘度のインクを用いることが好ましい場合もある。
【0007】
また、例えばメタリック顔料等のフィラーを含むインクを用いる場合、インクの粘度が低いと、フィラーの偏りが生じやすくなる場合がある。また、インクの粘度が低いと、媒体上でフィラーを適切に配向させるための時間を十分に確保できない場合もある。そのため、このような場合にも、より高い粘度のインクを用いることが好ましい場合がある。
【0008】
そこで、本願の発明者は、先ず、より高い粘度のインクを使用できる構成として、ディスペンサを用いて印刷を行うことを考えた。このように構成すれば、例えば、隆起印刷等をより適切に行うことができる。また、フィラーを含むインクについても、より適切に使用できると考えられる。
【0009】
しかし、印刷の内容によっては、ディスペンサよりも、インクジェットヘッドを用いることが好ましい場合もある。例えば、高精細な画像を描画する場合等には、インクジェットヘッドを用いる方が、より適切に印刷を行える場合がある。
【0010】
そこで、本願の発明者は、更に、単にディスペンサを用いるのではなく、一台の印刷装置において、インクジェットヘッド及びディスペンサの両方を用いることを考えた。このように構成すれば、例えば、ディスペンサ及びインクジェットヘッドの両方を用いることにより、それぞれの特性に応じた印刷を適切に行うことができる。また、これにより、多様な印刷をより適切に行うことができる。すなわち、上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
【0011】
(構成1)媒体に対して印刷を行う印刷装置であって、媒体へ向けてインクジェット方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドにおいて用いるインクよりも粘度が高いインクである高粘度インクを媒体に向けて吐出するディスペンサとを備え、ディスペンサは、連続して高粘度インクを吐出しつつ媒体に対して相対的に移動するベクトル走査を行うことで、高粘度インクを媒体に向けて吐出する
【0012】
このように構成した場合、例えば、インクジェットヘッドでは吐出が困難なインクを用いる場合においても、ディスペンサにより適切にインクを吐出することができる。また、印刷装置は、ディスペンサのみではなく、インクジェットヘッドを更に備えている。そのため、ディスペンサ及びインクジェットヘッドの両方を用いて、それぞれの特性に応じた印刷を適切に行うことができる。従って、このように構成すれば、例えば、媒体に対し、多様な印刷を適切に行うことができる。
【0013】
尚、この構成において、インクとは、例えば、印刷に用いる液体のことである。また、ディスペンサとは、制御に応じて一定の容量の液体を吐出する装置(液体定量吐出装置)のことである。
【0014】
また、ディスペンサで用いるインクとしては、より具体的に、例えば、粘度が20mPa・sより高いインクを用いることが考えられる。この場合、インクの粘度は、好ましくは50mPa・s以上、更に好ましくは100mPa・s以上である。また、ディスペンサにおいて、例えば、サイズの大きなフィラーを含むインクを用いることも考えられる。この場合、フィラーとは、例えば、インク中に分散させた微粒子のことである。例えば、フィラーは、例えば、光沢性の粒子や蛍光粒子等の、加飾用の微粒子であってよい。また、より具体的に、フィラーは、例えばメタリック顔料、パール顔料、又は各種の無機顔料等であってよい。また、フィラーとしては、例えば、リーフ状又は鱗片状の微粒子等を用いることが考えられる。
【0015】
また、ディスペンサとしては、小型のマイクロディスペンサ等を好適に用いることができる。このように構成すれば、例えば、印刷時において、ディスペンサを適切に移動させることができる。
【0016】
また、インクジェットヘッドは、媒体に対し、例えばカラー印刷を行う。印刷装置は、例えば、それぞれ異なる色のインク滴を吐出する複数のインクジェットヘッドを備えてよい。また、インクジェットヘッド用のインクとしては、公知の各種のインクを用いることが考えられる。例えば、インクジェットヘッド用のインクとして、捺染用インク、ソルベントインク、ラテックスインク、紫外線硬化型インク(UVインク)、ソルベントUVインク、又はソリッドインク等を用いることが考えられる。
【0017】
(構成2)高粘度インクは、所定の条件に応じて硬化する硬化性樹脂を含むインクである。このように構成すれば、例えば、媒体に対し、高粘度インクを適切に定着させることができる。また、印刷装置は、例えば、硬化性樹脂を硬化させる硬化手段を更に備えることが好ましい。この場合、硬化手段は、例えば、媒体上の高粘度インクに含まれる硬化性樹脂を硬化させる。
【0018】
(構成3)硬化性樹脂は、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型樹脂である。このように構成すれば、例えば、媒体上の硬化樹脂を適切に硬化させることができる。この場合、印刷装置は、硬化手段として、例えば、紫外線照射装置を備える。
【0019】
尚、この場合、インクジェットヘッド用のインクとしても、紫外線硬化型インクを用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、ディスペンサ用の硬化型インクを硬化させる硬化手段により、インクジェットヘッド用のインクについても、適切に硬化させることもできる。また、インクジェットヘッド用のインクとしては、紫外線硬化型インク以外のインクを用いてもよい。
【0020】
(構成4)ディスペンサは、連続して高粘度インクを吐出しつつ媒体に対して相対的に移動するベクトル走査を行うことで、高粘度インクを媒体に向けて吐出する。このように構成すれば、例えば、ディスペンサによる印刷の動作を適切に行うことができる。
【0021】
尚、ベクトル走査とは、例えば、予め設定された図形の形状に沿ってディスペンサ等を移動させる走査の動作(ベクタースキャン)のことである。また、より具体的に、ディスペンサにベクトル走査を行わせるとは、例えば、ディスペンサに連続的なインクの吐出を行わせつつ、予め設定された線状の軌道に沿ってディスペンサを移動させることである。
【0022】
(構成5)媒体の被印刷面と直交する方向である上下方向へディスペンサを移動させる上下方向駆動部を更に備え、ディスペンサが連続して高粘度インクを吐出している間、上下方向駆動部は、ディスペンサと被印刷面との間の距離を、予め設定された範囲の距離に保ち、かつ、ディスペンサが連続的に高粘度インクを吐出する動作を終了するタイミングに合わせて、上下方向駆動部は、被印刷面から離れる方向へディスペンサを移動させる。このように構成すれば、例えば、ディスペンサにベクトル走査を適切に行わせることができる。
【0023】
尚、上下方向駆動部は、例えば、各回のベクトル走査が終了するタイミングでディスペンサを被印刷面から離すことにより、その回のベクトル走査による描画を行うために連続して吐出されているインクを切る動作を行う。また、上下方向駆動部は、例えば、次回のベクトル走査を開始する前に、ディスペンサを、被印刷面に近づける。これにより、次回のベクトル操作による描画を行うためのインクの先端を、被印刷面に接触させる。このように構成すれば、ベクトル走査の開始及び終了の動作をより適切に行うことができる。
【0024】
(構成6)ディスペンサは、高粘度インクを間歇的に吐出しつつ媒体に対して相対的に移動するラスタ走査を行うことで、高粘度インクを媒体に向けて吐出する。このように構成すれば、例えば、ディスペンサによる印刷の動作を適切に行うことができる。
【0025】
尚、ラスタ走査とは、例えば、点状の画素の並びにより表現されるラスタ画像を描くようにディスペンサ等を移動させる走査の動作のことである。また、より具体的に、ディスペンサにラスタ走査を行わせるとは、例えば、ディスペンサに間歇的なインクの吐出を行わせつつ、予め設定された走査方向へディスペンサを移動させることである。
【0026】
また、インクジェット方式で印刷を行う場合、インクジェットヘッドは、通常、ラスタ走査により、画像を描画する。また、ラスタ走査として、例えば、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行う。そのため、ディスペンサにラスタ走査を行わせる場合、例えば、インクジェットヘッド及びディスペンサに対し、同様の制御を行うことが考えられる。より具体的には、例えば、ディスペンサに、インクジェットヘッドと共に主走査動作を行わせること等が考えられる。
【0027】
(構成7)高粘度インクは、フィラーを含むインクである。このように構成した場合、例えば、フィラーを含む高粘度インクとして、十分に高い粘度のインクを用いることができる。また、これにより、フィラーを含むインクをより適切に使用することができる。そのため、このように構成すれば、例えば、多様な印刷をより適切に行うことができる。
【0028】
また、ディスペンサを用いる場合、例えば、インクジェットヘッドを用いる場合と比べ、サイズのより大きなフィラーを用いることも可能になる。そのため、このように構成すれば、例えば、より多様なフィラーを適切に使用できる。
【0029】
また、ディスペンサにおいて、例えば硬化性樹脂とフィラーとを含むインクを用いる場合、高粘度インクが媒体に付着した後、少なくとも、フィラーを媒体の表面に定着させるために予め設定された待機時間以上経過してから、硬化性樹脂を硬化させることが好ましい。このように構成すれば、例えば、フィラーの配向性をより適切に高めることができる。
【0030】
(構成8)高粘度インクは、所定の条件に応じて硬化する硬化性樹脂を含むインクであり、印刷装置は、高粘度インクに含まれる硬化性樹脂を硬化させる硬化手段を更に備え、硬化手段は、媒体上において高粘度インクが隆起している状態で硬化性樹脂を硬化させることにより、媒体の少なくとも一部に、硬化性樹脂により隆起した領域を形成する。このように構成すれば、例えば、媒体に対し、隆起印刷を適切に行うことができる。
【0031】
(構成9)媒体に対して印刷を行う印刷方法であって、媒体へ向けてインクジェット方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドにおいて用いるインクよりも粘度が高いインクである高粘度インクを媒体に向けて吐出するディスペンサとを用いて印刷を行う。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、例えば、多様な印刷をより適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す図である。図1(a)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す。図1(b)は、印刷装置10により行う印刷の動作の一例を示す。図1(c)は、印刷装置10により行う印刷の動作の他の例を示す。
図2】媒体50に対してヘッド部12及びディスペンサ14を用いて印刷を行う動作の一例を示す図である。図2(a)は、ヘッド部12によりカラー印刷を行う印刷段階の動作の一例を示す。図2(b)は、ディスペンサ14により加飾用インクを媒体50に向けて吐出する吐出段階の動作の一例を示す。図2(c)は、紫外線照射部16により媒体50上の加飾用インクを硬化させる硬化段階の動作の一例を示す。
図3】媒体50に対してヘッド部12及びディスペンサ14を用いて印刷を行う動作の他の例を示す図である。図3(a)、(b)は、この場合に行う印刷段階及び吐出段階の動作の一例を示す。図3(c)は、吐出段階の動作を行った後に一定時間待機する待機段階の動作の一例を示す。図3(d)は、この場合に行う硬化段階の動作の一例を示す。
図4】浸透抑制インクを用いて隆起印刷を行う場合に順次行う動作の一例を示す図である。図4(a)は、浸透抑制インクを媒体に塗布する浸透抑制インク塗布段階の動作の一例を示す。図4(b)、(c)は、この場合に行う吐出段階及び硬化段階の動作の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す。図1(a)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、印刷装置10は、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の構成を有してよい。例えば、本例の印刷装置10は、公知のインクジェットプリンタに対し、以下において説明をするディスペンサ14に関連する構成を追加した装置であってよい。
【0035】
本例において、印刷装置10は、繊維状の媒体50に対して印刷を行う印刷装置であり、ヘッド部12、ディスペンサ14、紫外線照射部16、媒体保持部18、ヘッド駆動部20、ディスペンサ駆動部22、UV光源駆動部24、媒体搬送部26、及び制御部28を備える。この場合、媒体50とは、印刷の対象となる基材(メディア)である。また、繊維状の媒体50とは、例えば、各種の繊維製品である。より具体的に、媒体50としては、例えば、Tシャツ等の衣類や、布帛等を用いること等が考えられる。
【0036】
尚、印刷装置10の構成の変形例においては、媒体50として、例えば、繊維製品以外の媒体を用いることも考えられる。例えば、インクジェット方式で印刷が可能な公知の様々な媒体を用いることが考えられる。また、より具体的に、例えば、プラスチックやセラミック等の剛性の媒体を用いることも考えられる。
【0037】
ヘッド部12は、媒体50に対してインクジェット方式で印刷を行う複数のインクジェットヘッド102y〜kを有する部分である。この場合、複数のインクジェットヘッド102y〜kそれぞれは、互いに異なる色のインク滴を吐出するノズルをそれぞれ有し、それぞれのノズルから、媒体50に向けて、インク滴を吐出する。より具体的に、本例において、複数のインクジェットヘッド102y〜kのそれぞれは、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、及びK(ブラック)の各色のインク滴を吐出する。また、これにより、ヘッド部12は、媒体50に対して、カラー印刷の動作を行う。
【0038】
尚、本例において、インクジェットヘッド102y〜k用のインクとしては、粘度が20mPa・s以下のインクを用いる。このように構成すれば、例えば、インクジェット方式で適切にインク滴を吐出することができる。また、インクジェットヘッド102y〜k用のインクとしては、例えば、使用する媒体50に合わせた公知のインクジェットヘッド用のインクを好適に用いることができる。例えば、繊維製品を媒体50として用いる場合、公知の捺染用のインクを用いることが考えられる。また、例えば、紫外線の照射に応じて硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)等を用いることも考えられる。また、インクジェットヘッド102y〜k用のインクとして、ソルベントインク、ラテックスインク、ソルベントUVインク、又はソリッドインク等を用いることも考えられる。
【0039】
ディスペンサ14は、制御に応じて一定の容量の液体を吐出する液体定量吐出装置であり、ヘッド部12におけるインクジェットヘッド102y〜kとは異なる方式により、媒体50へ向けてインクを吐出する。また、本例において、ディスペンサ14は、所定の条件に応じて硬化する硬化性樹脂を含むインクである硬化性インクを吐出する。より具体的に、本例において、ディスペンサ14は、硬化性インクとして、紫外線硬化型樹脂を含む紫外線硬化型インクを用いる。これにより、ディスペンサ14は、例えば、硬化性インクを媒体50に向けて吐出する動作を行う。
【0040】
ここで、ディスペンサ14においては、印刷の目的等に応じて、様々なインクを用いることが考えられる。例えば、所定の色の有色のインク(カラーインク)、無色透明のクリアインク、メタリックインク、又は各種の無機顔料を含むインク等を用いることが考えられ得る。
【0041】
また、ディスペンサ14は、例えば、高粘度の液体を高圧力で押し出す装置であってよい。ディスペンサ14としては、例えば、公知の小型のディスペンサ(例えばマイクロディスペンサ等)を好適に用いることができる。この場合、例えば、印刷に求められる品質に応じた解像度でインクを吐出できるディスペンサ(例えば、画像の印刷が可能な高解像度ディスペンサ)を用いることが好ましい。より具体的に、ディスペンサ14による印刷の解像度は、例えば、3Dプリンタ等の立体物造形装置における造形の解像度と同程度であってよい。また、ディスペンサ14とは、少なくとも、一定量の液体を吐出する機構を含む構成のことであってよい。ディスペンサ14は、液体を吐出する機構をコントロールする手段等を更に含んでもよい。また、より具体的に、ディスペンサ14としては、例えば、兵神装備株式会社製のヘイシンマイクロディスペンサー HD型(例えば、3HD010G30、又は3HD025G30)等を好適に用いることができる。また、例えば、武蔵エンジニアリング株式会社製のスクリューディスペンサMSD−2や、メカニカル高精度ディスペンサーMAX−2−N等も、好適に用いることができる。
【0042】
また、本例において、ディスペンサ14で用いる硬化性インクは、インクジェットヘッド用のインクよりも粘度が高いインクである高粘度インクの一例である。すなわち、ディスペンサ14は、例えば、インクジェットヘッド102y〜k用のインクよりも粘度が高いインクを吐出する。この場合、ディスペンサ14は、インクジェットヘッドでは吐出困難な粘度のインクを吐出してよい。より具体的に、ディスペンサ14で用いるインクとしては、例えば、粘度が20mPa・sより高いインクを用いることが好ましい。また、ディスペンサ14用のインクの粘度は、好ましくは50mPa・s以上、更に好ましくは100mPa・s以上である。また、インクの最大の粘度(粘度の上限)は、例えば使用するディスペンサ14の性能によって決まる。そのため、インクの粘度は、ディスペンサ14の機種や性能等に応じて、そのディスペンサ14で使用可能な範囲の粘度であればよい。
【0043】
また、ディスペンサ14用の硬化性インクとしては、例えば、インクジェットヘッドでは吐出困難なサイズの大きなフィラーを含むインクを用いてもよい。この場合、フィラーとは、例えば、インク中に分散させた微粒子のことである。より具体的に、フィラーは、例えば光沢性の粒子や蛍光粒子であってよい。また、光沢性の粒子としては、例えば、メタリック顔料やパール顔料等を用いることが考えられる。また、フィラーとしては、例えば、広く用いられている球状、多角形状、又は楕円状等のフィラーに限らず、リーフ状又は鱗片状の微粒子等を用いることが考えられる。
【0044】
また、ディスペンサ14用の硬化性インクは、例えば、インクジェットヘッド102y〜kのノズルの直径よりも大きなフィラーを含んでもよい。例えば、ディスペンサ14用の硬化性インクは、直径が1mm以上のフィラーを含んでよい。この場合、直径が1mm以上のフィラーを含むとは、例えば、設計上のサイズが1mm以上であるフィラーを含むことであってよい。
【0045】
また、ディスペンサ14を用いる場合、高圧力でインクを押し出す構成であるため、粘度の高いインクであっても、適切に吐出することができる。そして、この場合、例えば大きなフィラーを用いたとしても、粘度の高い硬化性インクを用いることにより、沈殿等によりフィラーの偏りが生じることを適切に抑えることができる。そのため、本例によれば、サイズの大きなフィラーを含むインクをより適切に使用することができる。また、これにより、例えば、高い輝度を有する金色や銀色等のインクをより適切に使用することが可能になる。尚、ディスペンサ14等を用いて行う印刷の動作については、後に更に詳しく説明をする。
【0046】
紫外線照射部16は、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を照射する光源である。この場合、インクを硬化させるとは、例えば、インク中の硬化性樹脂を硬化させることである。また、本例において、紫外線照射部16は、少なくとも、ディスペンサ14が媒体50上へ吐出した硬化性インクに対し、紫外線を照射する。これにより、紫外線照射部16は、媒体50上に吐出された硬化性樹脂を硬化させる動作を行う。このように構成すれば、例えば、媒体50上の硬化性インクを適切に硬化させることができる。
【0047】
尚、紫外線照射部16は、硬化性樹脂を硬化させる硬化手段の一例である。紫外線照射部16としては、例えば、UVLEDを有する光源を好適に用いることができる。また、紫外線照射部16の光源としては、例えば、紫外線ランプやメタルハライドランプ等も用いてもよい。また、インクジェットヘッド102y〜kにおいても紫外線硬化型インクを用いる場合、インクジェットヘッド102y〜kが媒体50上へ吐出したインクに対しても、紫外線照射部16により紫外線を照射してもよい。
【0048】
媒体保持部18は、媒体50を保持する保持部材であり、ヘッド部12及びディスペンサ14と対向させた状態で、媒体50を保持する。媒体保持部18としては、例えばプラテン等の台状部材を好適に用いることができる。
【0049】
ヘッド駆動部20は、ヘッド部12に印刷の動作を行わせる駆動部である。本例において、ヘッド駆動部20は、例えば、ヘッド部12による印刷の動作として、ヘッド部12が有するインクジェットヘッド102y〜kに対し、主走査動作を行わせる。この場合、主走査動作とは、例えば、予め設定された主走査方向(図中のY方向)へ移動しつつインク滴を吐出する動作のことである。これにより、ヘッド部12は、例えば、公知のインクジェットプリンタにおけるヘッド部と同一又は同様にして、媒体50に対する印刷の動作を行う。
【0050】
ディスペンサ駆動部22は、ディスペンサ14に印刷の動作を行わせる駆動部である。本例において、ディスペンサ駆動部22は、ディスペンサ14に、ベクトル走査を行わせることで、媒体50に対する印刷の動作を行わせる。この場合、ベクトル走査とは、例えば、連続して硬化性インクを吐出しつつ媒体50に対して相対的に移動する走査のことである。
【0051】
また、ベクトル走査とは、例えば、予め設定された図形の形状に沿ってディスペンサ14を移動させる走査の動作であってよい。また、より具体的に、ディスペンサ14にベクトル走査を行わせるとは、例えば、ディスペンサ14に連続的なインクの吐出を行わせつつ、予め設定された線状の軌道に沿ってディスペンサ14を移動させることである。ベクトル走査において、ディスペンサ駆動部22は、例えば主走査方向に限らず、媒体50上の任意の方向へディスペンサ14を移動させてよい。このように構成すれば、例えば、連続吐出型ベクトル走査機能により、ディスペンサ14による印刷の動作を適切に行うことができる。
【0052】
また、本例において、ディスペンサ駆動部22は、更に、媒体50の被印刷面と直交する方向である上下方向(図中のZ方向)へディスペンサ14を移動させる上下方向駆動部の機能を有する。この場合、ディスペンサ駆動部22は、ベクトル走査を行う期間(ベクトル走査の実行中)にのみ、ディスペンサ14と媒体50とを接近させる。また、ベクトル走査の前後の期間には、ディスペンサ14と媒体50とを、一定の距離よりも離す。
【0053】
より具体的に、例えば、各回のベクトル走査を開始する直前のタイミングにおいて、ディスペンサ駆動部22は、ディスペンサ14を、媒体50の被印刷面に近づける。これにより、ディスペンサ14と被印刷面との間の距離を、予め設定された距離に調整する。また、ベクトル走査によりディスペンサ14が連続して硬化性インクを吐出している間、ディスペンサ駆動部22は、ディスペンサ14と被印刷面との間の距離を、予め設定された範囲の距離に保つ。更に、ディスペンサ14が連続的に硬化性インクを吐出する動作を終了するタイミングに合わせて、ディスペンサ駆動部22は、被印刷面から離れる方向へディスペンサ14を移動させる。
【0054】
このように構成した場合、例えば、各回のベクトル走査を開始するタイミングにおいて、ディスペンサ駆動部22は、ディスペンサ14を媒体50に近づけることで、その回のベクトル操作による描画を行うためのインクの先端を、被印刷面に接触させる。また、これにより、その回のベクトル走査の開始位置(書き始め部)において、インクを媒体50に接着させる。
【0055】
また、各回のベクトル走査が終了するタイミングにおいて、ディスペンサ駆動部22は、ディスペンサを被印刷面から離すことにより、その回のベクトル走査による描画を行うために連続して吐出されているインクを切る動作を行う。これにより、ベクトル走査により一筆書き状に行った描画の最後部のインクが玉状になること等を防止する。そのため、このように構成すれば、例えば、ディスペンサ14によるベクトル走査の開始及び終了の動作をより適切に行うことができる。また、これにより、例えば、ディスペンサ14にベクトル走査をより適切に行わせることができる。
【0056】
ここで、媒体に対してベクトル走査を行う装置として、従来、カッターにより媒体を切断する切断装置(例えばカッティングプロッタ等)が知られている。また、カッタ−による切断に加え、インクジェットヘッドによる印刷を更に行う印刷切断装置等も知られている。そして、本例におけるディスペンサ14のベクトル走査は、例えば、これらの装置におけるカッターの走査と同一又は同様に行うことができる。このように構成すれば、例えば、ディスペンサ14によるベクトル走査を適切に実行できる。
【0057】
UV光源駆動部24は、紫外線照射部16に紫外線の照射を行わせる駆動部である。本例において、UV光源駆動部24は、例えば、紫外線を照射している紫外線照射部16を媒体50に対して相対的に移動させることにより、媒体50の各位置に対し、紫外線照射部16に紫外線を照射させる。また、これにより、媒体50上の硬化性インクを硬化させる。
【0058】
媒体搬送部26は、媒体50を搬送する機構部であり、媒体50を搬送することにより、例えば、媒体50においてヘッド部12及びディスペンサ14と対向する位置を順次変更する。このように構成すれば、例えば、媒体50において印刷の対象となる位置を順次変更できる。また、これにより、例えば、媒体50の各位置に対して適切に印刷を行うことができる。媒体搬送部26は、例えばプーリやタイミングベルト等を用いた搬送機構であってよい。また、媒体50として、例えばロール状の媒体を用いる場合、媒体搬送部26は、ロールの繰り出し及び巻き取り等を行う駆動部であってよい。
【0059】
また、本例において、媒体搬送部26は、媒体50を搬送することにより、副走査駆動部として機能する。この場合、副走査駆動部とは、例えば、ヘッド部12に副走査動作を行わせる駆動部のことである。また、副走査動作とは、例えば、主走査方向の合間に、主走査方向と直交するX方向へ、媒体50に対して相対的にヘッド部12を移動させる動作である。また、印刷装置10の構成の変形例においては、例えば、ヘッド部12の側を移動させることにより、副走査動作を行ってもよい。
【0060】
制御部28は、例えば印刷装置10のCPUであり、印刷装置10の各部を制御する。本例によれば、媒体50に対し、インクジェットヘッド102y〜k及びディスペンサ14を用いて、適切に印刷を行うことができる。
【0061】
続いて、本例の印刷装置10により行う印刷の動作について、更に詳しく説明をする。図1(b)は、印刷装置10により行う印刷の動作の一例を示す。図1(c)は、印刷装置10により行う印刷の動作の他の例を示す。
【0062】
上記においても説明をしたように、本例において、ディスペンサ14では、インクジェットヘッド102y〜k用のインクよりも粘度の高いインクを用いる。また、例えば、フィラーを含むインクを用いることも考えられる。そして、このようなインクを用いることにより、ディスペンサ14は、単なるカラー印刷等ではなく、媒体50に対して様々な加飾を行う加飾用の印刷を行う。
【0063】
より具体的には、例えば、図1(b)に示す場合、先ず、媒体50に対してヘッド部12によりカラー印刷を行い、カラー印刷部52を形成する。そして、その後、その上に、ディスペンサ14により印刷を行う。これにより、ディスペンサ14は、例えば、加飾用に用いる高粘度のインク(以下、加飾用インクという)をカラー印刷部52上の少なくとも一部の領域上に吐出して、加飾印刷部54を形成する。
【0064】
この場合、ディスペンサ14を用いて印刷を行うことにより、例えば、インクジェットヘッドでは吐出が困難な加飾用インクを用いる場合においても、より適切にインクを吐出することができる。また、その後に紫外線照射部16によりインクを硬化させることにより、媒体50にインクを適切に定着させることができる。また、例えば高精細な画像を描画する場合等においては、ディスペンサ14ではなく、インクジェットヘッド102y~kを用いて印刷を行うことができる。
【0065】
そのため、本例によれば、例えば、ディスペンサ14及びインクジェットヘッド102y~kの両方を用いることにより、それぞれの特性に応じた印刷を適切に行うことができる。また、これにより、多様な印刷を適切に行うことができる。
【0066】
また、例えば、図1(c)に示すように、ディスペンサ14による印刷を先に行い、その後、ヘッド部12によるカラー印刷を行ってもよい。この場合、ディスペンサ14を用いて媒体50上の少なくとも一部の領域上に加飾用インクを吐出することで、加飾印刷部54を形成する。また、その後、加飾印刷部54に重なるように、ヘッド部12により、カラー印刷部52を形成する。この場合、ヘッド部12は、例えば、媒体50の全面に対し、カラー印刷部52を形成してよい。また、例えば、加飾印刷部54と重なる位置のみにインク滴を吐出して、カラー印刷部52を形成してもよい。
【0067】
ここで、より具体的に、加飾用インクとしては、例えば、インクジェットヘッドでは使用が困難な高粘度高分子樹脂を含むインクを用いてよい。このように構成すれば、例えば、加飾用インクに求められる特性に応じて、強いインク、柔らかいインク、接着性のよいインク、又は安全性の高いインク等の様々な特性のインクを適切に使用できる。また、より具体的に、加飾用インクとしは、たとえば、柔軟性の高いウレタン系の紫外線硬化型樹脂を含むインク等を好適に用いることができる。また、例えばABS樹脂を含むインクを用いることも考えられる。また、例えば、SBR樹脂や、NBR樹脂を含むインク等を用いることも考えられる。
【0068】
また、上記においても説明をしたように、加飾用インクとしては、フィラーを含むインクを用いることも考えられる。また、このようなフィラーとしては、各種の光沢性の顔料や蛍光顔料等の無機顔料等を用いることが考えられる。そして、このような加飾用インクを用いて媒体50上に任意の位置に印刷を行い、紫外線の照射により硬化させることにより、高輝度の加飾印刷部54を形成することができる。また、これにより、例えば、媒体50に対し、金糸風や銀糸風の風合いの装飾等を施すことができる。更には、例えば、カラー印刷部52上又は下にこのような加飾印刷部54を形成することにより、様々な光沢性の装飾を施すこともできる。そのため、本例によれば、例えば、装飾性の高い印刷を適切に行うことができる。
【0069】
また、本例においては、例えば粘度の高い加飾用インクを用いることにより、媒体50上においてインクが隆起している状態で加飾用インクを硬化させることが容易になる。また、これにより、加飾印刷部54として、例えば、媒体50の少なくとも一部に、硬化性樹脂により隆起した領域を形成することができる。そのため、本例によれば、例えば、媒体50の一部が盛り上がって見える隆起印刷を適切に行うこともできる。
【0070】
尚、図1(b)に示した場合等において、隆起印刷を行うと、例えば、カラー印刷部52に印刷された画像の一部が盛り上がったように視認されることになる。そのため、このように構成すれば、例えば、装飾性の高い印刷を適切に行うことができる。また、この場合、紫外線照射部16は、例えば、加飾用インクが媒体50に完全に浸透する前に、インク中の硬化性樹脂を硬化させる。このように構成すれば、例えば、隆起印刷をより適切に行うことができる。
【0071】
また、隆起印刷を行うことにより、例えば、媒体50に対し、例えばドーミング等の装飾を施すことができる。この場合、加飾用インクとしては、例えば、フィラーを含まない透光性のインクを用いてもよい。より具体的に、この場合、加飾用インクとして、例えば、高粘度のクリアインク等を用いることが考えられる。クリアインクとは、例えば、無色透明のクリア色のインクである。
【0072】
また、加飾用インクとしては、フィラーを含むインクや、クリア色のインク以外に、例えば、白又は特定の色のインクを用いることも考えられる。また、必ずしも隆起した状態で硬化させずに、加飾用インクを用いて平面状に印刷を行うことも考えられる。
【0073】
続いて、本例において行う印刷の動作について、更に具体的に説明をする。図2は、媒体50に対してヘッド部12及びディスペンサ14を用いて印刷を行う動作の一例を示す図であり、輝度の高い加飾を施した印刷である高輝度加飾印刷を行う場合に順次行う動作の一例を示す。
【0074】
図2(a)は、ヘッド部12によりカラー印刷を行う印刷段階の動作の一例を示す。この印刷段階は、インクジェットヘッドを用いて印刷を行うインクジェット印刷段階の一例である。図1に関連して説明をしたように、本例においては、ヘッド部12が有するインクジェットヘッド102y~k(図1参照)に主走査動作を行わせることにより、媒体50に対してカラー印刷を行う。より具体的には、例えば、図中に矢印で示す方向をヘッド部12の移動方向(スキャン方向)として主走査動作を行い、媒体50上に、カラー印刷がされた領域であるカラー印刷部52を形成する。
【0075】
図2(b)は、ディスペンサ14により加飾用インクを媒体50に向けて吐出する吐出段階の動作の一例を示す。図示した場合においては、ヘッド部12によるカラー印刷を行った後に、媒体50上において予め設定された位置に対し、ディスペンサ14により、加飾用インクを吐出する。より具体的には、例えば、カラー印刷部52の一部の領域上に加飾用インクを吐出することにより、加飾印刷部54を形成する。
【0076】
ここで、加飾用インクとしては、例えば、メタリック顔料やパール顔料等をフィラーとして含む高粘度の紫外線硬化型インクを用いる。また、このフィラーは、例えばリーフ状のフィラー(リーフタイプ粒子)であることが好ましい。このように構成すれば、高輝度加飾印刷に適した加飾用インクを適切に用いることができる。
【0077】
図2(c)は、紫外線照射部16により媒体50上の加飾用インクを硬化させる硬化段階の動作の一例を示す。ディスペンサ14により加飾用インクを吐出した後、紫外線照射部16により、紫外線を照射する。また、これにより、媒体50上の加飾用インクを硬化させる。このように構成すれば、高輝度加飾印刷を適切に行うことができる。
【0078】
ここで、リーフ状のフィラーを含む加飾用インクを用いる場合、輝度を適切に高めるためには、フィラーの配向性を高めることが望ましい。そして、フィラーの配向性を高めるためには、例えば、媒体50上への加飾用インクの吐出後、硬化までの時間をある程度確保することが好ましい。そのため、高輝度加飾印刷を行う場合には、ディスペンサ14による加飾用インクの吐出後、一定時間待ってから、紫外線照射部16による紫外線の照射を行うことが好ましい。このように構成すれば、高輝度加飾印刷をより適切に行うことができる。
【0079】
また、この場合において、例えば加飾用インクの粘度が低いと、媒体50上において、フィラーが十分に配向する前に、加飾用インクが媒体50に浸透してしまうおそれがある。特に、例えば繊維状の媒体50を用いる場合、インクの粘度が低いと、短時間で媒体50にインクが浸透するおそれがある。そして、このような場合、紫外線照射部16を照射するまでの時間を空けたとしても、フィラーの配向性を高めることができず、印刷の品質が低下するおそれがある。
【0080】
これに対し、本例のように、ディスペンサ14により加飾用インクを吐出する場合、加飾用インクの粘度を十分に高くすることが可能である。そのため、本例によれば、媒体50上でフィラーが配向する時間を適切に確保することができる。また、これにより、印刷の品質を適切に高めることができる。
【0081】
また、この場合、加飾用インクの粘度を高めることにより、例えば、加飾用インク中で沈殿等によりフィラーが偏ること等も適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、フィラーを含む加飾用インクをより適切に吐出することができる。更には、ディスペンサ14を用いる場合、例えば、インクジェットヘッドを用いる場合と比べ、サイズの大きなフィラーを用いることも可能になる。
【0082】
そのため、本例のようにディスペンサ14を用いて加飾用インクを用いる場合、例えば、より多様なフィラーを適切に使用できる。また、例えば、光沢性のフィラーを用いる場合において、サイズの大きなフィラーを用いて、より高輝度の装飾を施すこと等も可能になる。そのため、本例によれば、例えば、媒体50に対し、多様な印刷をより適切に行うことができる。
【0083】
ここで、図2においては、印刷の動作の一例として、カラー印刷部52上に加飾印刷部54を形成する場合の動作を示している。印刷の動作の他の例においては、例えば図1(c)等を用いて説明をしたように、加飾印刷部54を先に形成して、その上にカラー印刷部52を形成してもよい。
【0084】
また、印刷の用途によっては、加飾用インクとして、例えば、粘度がより低いインクを用いることが望まれる場合もある。そして、この場合、媒体50へのインクの浸透が早くなり、単にディスペンサ14を用いるのみでは、フィラーを配向させる時間を適切に確保できない場合もある。
【0085】
そのため、このような場合には、例えば、加飾印刷部54を形成する領域の下に、インクの浸透を抑制するための下地層(アンダーコート層)を形成してもよい。この場合、例えば媒体50へのインクの浸透を抑制するインク(浸透抑制インク)により、下地層を形成する。
【0086】
また、印刷の用途や、求められる品質によっては、例えば加飾用の微粒子であるフィラーを媒体50の表面のみに定着させることが望まれる場合もある。このような場合、例えば、ディスペンサ14により加飾用インクを吐出した後、一定時間待って、例えば加飾用インクの少なくとも一部が媒体50に浸透した後に、紫外線を照射してもよい。
【0087】
図3は、媒体50に対してヘッド部12及びディスペンサ14を用いて印刷を行う動作の他の例を示す図であり、加飾用インクの少なくとも一部を媒体50に浸透させる場合に順次行う動作の一例を示す。尚、以下の説明をする点を除き、図3に示した印刷の動作は、図2に示した印刷の動作と、同一又は同様である。
【0088】
図3(a)、(b)は、この場合に行う印刷段階及び吐出段階の動作の一例を示す。加飾用インクの少なくとも一部を媒体50に浸透させる場合においても、印刷段階及び吐出段階の動作は、例えば、図2(a)、(b)に関連して説明をした場合と同一又は同様に行うことができる。尚、図3(b)~(d)においては、この印刷の動作の特徴をより明確にするために、加飾用インクにより形成する加飾印刷部54の内部に、簡略化してフィラー202を図示している。フィラー202は、例えばメタリック顔料等のリーフ状のフィラーであってよい。
【0089】
図3(c)は、吐出段階の動作を行った後に一定時間待機する待機段階の動作の一例を示す。加飾用インクの少なくとも一部を媒体50に浸透させる場合、例えば、加飾用インクが媒体50に付着した後、少なくとも、予め設定された待機時間以上経過するまで、紫外線の照射を行わない。この場合、待機時間は、例えば、フィラー202を媒体50の表面に定着させるための時間を考慮して設定される。このように構成した場合、例えば、加飾用インクを硬化させる前に、フィラー202を媒体50の表面に沈殿させることができる。また、これにより、例えば、フィラー202の配向性をより適切に高めることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、より高輝度の印刷を適切に行うことができる。
【0090】
また、この場合、待機時間の間に、加飾用インクの少なくとも一部を媒体50に浸透させる。そのため、このように構成すれば、例えば、加飾印刷部54をより平坦にすることができる。また、これにより、例えば、媒体50の表面に対し、より自然な印象で加飾を行うことができる。
【0091】
図3(d)は、この場合に行う硬化段階の動作の一例を示す。この場合、待機時間の経過後に紫外線を照射することにより、紫外線照射部16は、媒体50の表面にフィラー202が定着した状態で、加飾用インクを硬化させる。このように構成した場合も、例えば、高輝度加飾印刷等を適切に行うことができる。また、これにより、媒体50に対し、多様な印刷を適切に行うことができる。
【0092】
また、媒体50に加飾用インクを浸透させるのではなく、加飾用インクの浸透を極力抑えたい場合には、例えば図2に関連して上記においても説明をしたように、浸透抑制インクを用いることも考えられる。図4は、浸透抑制インクを用いて隆起印刷を行う場合に順次行う動作の一例を示す。尚、以下の説明をする点を除き、図4に示した印刷の動作は、図2又は図3に示した印刷の動作と、同一又は同様である。
【0093】
図4(a)は、浸透抑制インクを媒体に塗布する浸透抑制インク塗布段階の動作の一例を示す。この場合、浸透抑制インクの塗布は、例えば、媒体50の少なくとも一部の領域に対し、浸透抑制インクを吐出することで行う。また、浸透抑制インクを吐出することにより、媒体50の少なくとも一部の領域に、浸透抑制部56を形成する。
【0094】
尚、浸透抑制インクの吐出は、例えば浸透抑制インク用のインクジェットヘッドを更に用いて行うことが考えられる。また、浸透抑制インクの塗布は、インクジェットヘッドを用いずに、その他の方法で行ってもよい。例えば、スプレー等を用いて、浸透抑制インクを塗布することも考えられる。また、浸透抑制インク用のディスペンサを更に用いて、浸透抑制インクの塗布を行ってもよい。
【0095】
図4(b)、(c)は、この場合に行う吐出段階及び硬化段階の動作の一例を示す。この場合、吐出段階では、浸透抑制インク塗布段階で浸透抑制インクが塗布された領域である浸透抑制部56の少なくとも一部に、加飾用インクを吐出する。このように構成すれば、例えば、媒体50へ加飾用インクが浸透することをより適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、硬化前の加飾用インクについて、媒体50上で盛り上がった状態を適切に維持できる。
【0096】
そのため、この場合、硬化段階では、盛り上がった状態を保っている加飾印刷部54に対し、紫外線を照射する。また、これにより、隆起した状態のまま、加飾用インクを硬化させる。そのため、このように構成すれば、例えば、加飾用インクが浸透しやすい媒体50を用いる場合等においても、隆起印刷をより適切に行うことができる。
【0097】
尚、浸透抑制インクとしては、例えば、所定の色のインク等を用いることが考えられる。例えば、浸透抑制インクとして、クリア色や白色のインクを用いることが考えられる。この場合、例えば、所定の色のインクをインクジェットヘッドで媒体50に塗布することにより、加飾用インクの下地となる領域に、インクの層を形成する。このように構成すれば、例えば、加飾用インクの浸透を適切に抑えることができる。
【0098】
また、図示の便宜上、図4においては、ディスペンサ14による印刷のみを行う動作について、図示をしている。しかし、印刷の動作の更なる他の例においては、例えば、ディスペンサ14を用いて行う吐出段階の動作の前又は後に、ヘッド部12を用いて、印刷段階の動作を更に行ってもよい。また、この場合、例えば、印刷段階で吐出する少なくとも一部の色のインクについて、浸透抑制インクとして用いてもよい。
【0099】
以上のように、本例によれば、例えば、インクジェットヘッドでは吐出が困難な加飾用インクを用いる場合においても、ディスペンサ14により、適切にインクを吐出することができる。また、その後に紫外線を照射することにより、加飾用インクを媒体50に適切に定着させることができる。
【0100】
また、本例において、印刷装置10(図1参照)は、ディスペンサ14のみではなく、インクジェットヘッドを更に備えている。そのため、ディスペンサ14及びインクジェットヘッドの両方を用いて、それぞれの特性に応じた印刷を適切に行うことができる。
【0101】
また、ディスペンサ14及びインクジェットヘッドを用いることにより、例えば、インクジェットヘッドにより印刷した画像の任意の部分に対し、加飾用インクによる加飾を行うことができる。また、この場合、ディスペンサ14においてフィラーを内部に分散させた加飾用インクを用いることが可能であるため、例えばオーバーコート層等を形成しなくても、加飾用インクを適切に定着させることができる。また、加飾用インクのフィラーとして、例えばmmオーダー等の大きな粒子を使用できるため、例えばサイズの大きな金属微粒子や蛍光粒子等をフィラーとして用い、輝度の高い印刷を適切に行うことができる。また、粘度の高い加飾用インクを使用できるため、隆起印刷等についても、より適切に行うことができる。このように、本例によれば、例えば、媒体50に対し、多様な印刷を適切に行うことができる。
【0102】
続いて、以下、本例の構成に関する様々な特徴や、考えられる変形例等について、更に詳しく説明をする。先ず、本例において使用するインクについて、説明をする。
【0103】
上記のように、本例において、加飾用インクとしては、例えば、紫外線硬化型インクを用いる。これに対し、印刷装置10の構成の変形例において、硬化性樹脂を含む加飾用インクとしては、例えば、2液硬化型のインクや、温度変化に応じて硬さが変わる樹脂を含むインク(以下、熱反応硬化性インクという)等を用いることも考えられる。この場合、2液硬化型のインクとしては、例えば、ドーミング形成用の公知のインク等を用いることが考えられる。また、熱反応硬化性インクとしては、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を含むインクを用いることが考えられる。これらのようなインクを用いる場合にも、加飾用インクの種類に応じてインクを硬化させることにより、例えば、多様な印刷を適切に行うことができる。
【0104】
また、例えば、図4等を用いて説明をした場合のように、媒体50に加飾用インクを浸透させる場合、硬化のさせ方によっては、加飾用インク中のモノマーが硬化しない状態で残る残留モノマー等の問題が生じる場合もある。また、モノマーの種類によっては、環境に対する残留モノマー等の影響が問題になる場合がある。そのため、このような場合には、例えば、加飾用インクとして、カチオン硬化型の紫外線硬化型インクを用いることが考えられる。また、例えば、紫外線硬化型インクではなく、2液硬化型のインクや、熱反応硬化性インク等を用いることも考えられる。これらのように構成すれば、例えば、残留モノマーの環境への影響を適切に抑えることができる。
【0105】
一方、加飾用インクとして2液硬化型のインクを用いる場合、主剤と硬化剤とを別に吐出することが必要になるため、装置の構成が複雑になるおそれがある。また、例えば加飾用インクの粘度を高くした場合、主剤と硬化剤とが混ざりにくくなり、適切に硬化させることが難しくなるおそれもある。
【0106】
また、熱反応硬化性インクを用いる場合、紫外線硬化型インクを用いる場合と比べ、インクを硬化させるまでの時間が長くなりやすい。例えば、インクや媒体の温度を変化させるためには、通常、ある程度の時間がかかることになる。そして、その結果、インクを硬化させるまで時間が長くなることが考えられる。そのため、この場合、粘度が高い加飾用インクを用いたとしても、硬化前にインクが平坦化し、隆起印刷を適切に行えなくなるおそれもある。また、インクが硬化する前に媒体50にインクが浸透するおそれもある。
【0107】
また、例えば熱硬化性のインクを用いる場合、媒体50を加熱する工程が必要になるため、熱により媒体50がダメージを受けることも考えられる。また、この場合、例えば印刷装置とは別の装置(例えばオーブン)を用いて、媒体50を加熱することも考えられる。そして、この場合、加飾用インクが未硬化の状態で媒体50を移動させることになり、媒体50の汚れ等が生じやすくなるおそれもある。
【0108】
これに対し、本例のように、加飾用インクとして紫外線硬化型インクを用いる場合、例えば主剤と硬化剤とを別に吐出すること等は必要ない。そのため、装置の構成が複雑になることを適切に防ぐことができる。また、加飾用インクの粘度が高い場合にも、適切かつ十分にインクを硬化させることができる。
【0109】
また、この場合、紫外線の照射により速やかにインクを硬化させることが可能であるため、例えば、媒体50上で加飾用インクが盛り上がっている状態を維持している間に、適切に加飾用インクを硬化させることができる。また、繊維製品等のインクが浸透しやすい媒体50を用いる場合においても、インクが浸透する前に、加飾用インクを適切に硬化させることができる。更には、この場合、媒体50を高い温度に加熱すること等は必要ないため、熱により媒体50がダメージを受けることはない。また、例えば、インクの吐出と紫外線の照射とを同じ装置で行うことができるため、硬化前の加飾用インクが付着している媒体50を必要以上に移動することなく、加飾用インクを適切に硬化させることができる。また、これにより、媒体50の移動中に加飾用インクが不用意に擦れて媒体50が汚れること等を適切に防ぐことができる。そのため、本例によれば、この点でも、多様な印刷を適切に行うことができると言える。
【0110】
また、本例のように、加飾用インクとして紫外線硬化型インクを用いる場合、ヘッド部12におけるインクジェットヘッド用のインクとしても、紫外線硬化型インクを用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、加飾用インクを硬化させるために用いる紫外線照射部16を用いて、インクジェットヘッド用のインクについても、適切に硬化させることもできる。また、この場合、例えば、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドと主走査方向において隣接する位置に紫外線照射部16を配設し、主走査動作時にインクジェットヘッドと共に紫外線照射部16を移動させてもよい。
【0111】
次に、本例の印刷装置10を用いて行い得る様々な印刷の形態について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、ディスペンサ14は、例えば粘度の高いインクを吐出することにより、媒体50上に対し、隆起印刷を行う。このように構成すれば、例えば、一部の領域を立体的に強調する印刷(強調立体感プリント)を適切に行うことができる。
【0112】
より具体的には、例えば、Tシャツ等の媒体50に対し、ヘッド部12による印刷と、ディスペンサ14による隆起印刷とを行うことが考えられる。この場合、ディスペンサ14は、例えば、クリアインクを吐出することで、隆起印刷を行う。また、ディスペンサ14は、例えば3Dプリンタによる造形の解像度と同程度の解像度でインクを吐出することが好ましい。このように構成すれば、例えば、ヘッド部12により印刷された画像を適切に強調して表現できる。
【0113】
また、ディスペンサ14は、ヘッド部12により印刷された画像の一部の領域と重ねて、隆起印刷を行ってもよい。このように構成すれば、例えば、画像の一部を強調した印刷を適切に行うことができる。
【0114】
また、このような強調立体感プリントとして、より具体的には、例えば、作業着等の衣類に対して会社のネームやロゴ入れる印刷や、スポーツ用のユニフォームにチーム名や番号を入れる印刷等が考えられる。また、例えば、名札や携帯端末(例えば携帯電話又はスマートフォン等)のカバーに対し、強調立体感プリントにより文字や模様を印刷することも考えられる。また、例えば木目模様を印刷する場合に、木目部分等のみを隆起させること等も考えられる。
【0115】
また、上記においても説明をしたように、ディスペンサ14においては、例えばメタリックインク等の様々な加飾用インクを好適に用いることもできる。そして、この場合、媒体50に対し、高輝度の様々なメタリック模様等を印刷することができる。より具体的には、例えば、Tシャツ等の衣類の媒体50に対し、メタリック調の文字等を印刷することが考えられる。また、メタリックインクを用いて隆起印刷を行うことにより、例えば、エンボス調のメタリック印刷を行うこと等も考えられる。
【0116】
ここで、本例とは異なる方法で媒体50に対してメタリック調の印刷を行う方法としては、例えば、硬化時又は乾燥時に粘着性を有する塗料で媒体上にプライマー層を形成し、その上に加飾用の金属箔や金属パウダー等の光沢用材料を接着させる方法等も考えられる。しかし、このような方法の場合、プライマー層の形成後に、光沢用材料を別工程でのせることが必要になる。また、光沢用材料の剥がれを防止するため、接着後に更に、保護層となるオーバーコート層を形成することが必要になる。そのため、この場合、工程が複雑になり、印刷のコストが増大するおそれがある。
【0117】
また、その他の方法として、例えば、光輝性のある粒子を含むシートを媒体とは別に用意して、そのシートに画像を印刷した上で、熱転写等でシート上の画像を媒体に転写すること等も考えられる。しかし、この場合、特定の領域のみに対して部分的に加飾を行うことは困難である。また、転写の工程が必要になるため、印刷のコストが増大するおそれもある。
【0118】
また、より簡易な方法で印刷を行うためには、例えばディスペンサ14を用いずに、メタリックインク等についてもインクジェットヘッドで吐出すること等も考えられる。しかし、インクジェットヘッドを用いる場合、メタリック顔料等のフィラーとして、ノズルから吐出可能な小さなサイズの粒子を用いることが必要になる。そして、例えばメタリック顔料を用いる場合、サイズが小さいと、得られる光沢性が低下することになる。また、フィラーとして、例えば蛍光粒子等を用いる場合には、サイズが小さくなると、蛍光の輝度が小さくなると考えられる。更に、インクジェットヘッドを用いる場合、インクの粘度を低くすることが必要になる。そのため、隆起印刷をしようとする場合、例えば多くの層を重ねて形成する積層印刷が必要になる。また、繊維製品等の液体が浸透しやすい媒体を用いる場合には、高い隆起印刷を行うことが困難になる。
【0119】
これに対し、本例においては、上記のように、ディスペンサ14を用いることにより、例えばサイズの大きなフィラー(メタリック顔料等)を用いることが可能になる。また、これにより、簡易な工程により、高い輝度のメタリック調の印刷を適切に行うことができる。また、粘度の高いインクを用いることも可能になるため、例えば繊維製品等の媒体を用いる場合にも、必要に応じて、隆起印刷を適切に行うことができる。
【0120】
そのため、本例によれば、媒体に対して様々な加飾を行う印刷をより適切に行うことができる。より具体的には、例えば、ディスペンサ14において、メタリック色、パール色、蛍光色、クリア色、白色、又は各種のカラー色のインクを用いることで、媒体50に対し、印刷の目的に応じて、様々な画像、文字、文様について、金糸状や銀糸状等の様々な形態で印刷を行うことができる。また、必要に応じて、隆起印刷を行うこともできる。
【0121】
また、印刷装置10の構成及び動作については、上記に説明した構成及び動作に限らず、様々な変形を更に行うことも考えられる。そこで、続いて、更なる変形例について、説明をする。
【0122】
上記において説明をした構成においては、主に、繊維製品等の媒体50に対し、ヘッド部12又はディスペンサ14で直接印刷を行う場合について、説明をした。しかし、媒体50に対するインクの密着性を高めるためには、プライマーインクを用いて、媒体50上に下地のインク層を形成してもよい。この場合、例えば、プライマーインク用のインクジェットヘッドを更に用い、媒体50に対し、先ず、プライマーインクによる印刷を行う。そして、プライマーインクで形成されたインクの層の上に、ヘッド部12における他のインクジェットヘッド及びディスペンサ14により、更に印刷を行う。
【0123】
また、加飾用インクで印刷を行った領域について、光沢感をより高めるためには、例えば、インクの層を平滑化するローラを用いることも考えられる。この場合、例えば、ディスペンサ14による印刷を行った後に、ローラを用いて、媒体50上の加飾用インクを平滑化する。
【0124】
また、例えばヘッド部12でカラー印刷を行った上にディスペンサ14による印刷を行う場合、ヘッド部12により形成するインクの層の平滑性をできるだけ高めることが好ましい。そのため、この場合、例えば、カラー印刷用の有色のインク(例えば、YMCKの各色のインク)に加え、クリアインクを用いることで、媒体50上のインクの密度を均一にすることが考えられる。より具体的には、例えば、媒体50上において有色のインクの密度が低い領域に対して、クリアインクのインク滴を吐出することにより、単位面積あたりのインクの量を均一化すること等が考えられる。この場合、有色のインクによる印刷と、クリアインクによる印刷は、一の主走査動作において、同時に行ってよい。また、例えば、有色のインクによる印刷を行った後、ディスペンサ14によるインクの吐出を行う前に、クリアインクによる印刷を行うことも考えられる。
【0125】
また、上記においても説明をしたように、本例において、ディスペンサ14は、ベクトル走査により、媒体50上にインクを吐出する。そして、この場合、ディスペンサ14の動き方は、例えばカッティングプロッタ等の切断装置におけるカッターの動きと類似している。そのため、印刷装置10において、ディスペンサ14について、例えばカッターと交換可能に構成することも考えられる。また、ディスペンサ14の他にカッターを更に備える構成にすることも考えられる。これらのように構成すれば、例えば、印刷装置10について、インクジェットヘッドによる印刷と、切断とを行う装置(プリンタ&カット機)や、更にディスペンサによる印刷も行う装置(プリント&カット&ディスペンサー機)として用いることもできる。また、これにより、例えば、印刷装置10について、3機能での切り替えが可能な高機能プリンタとして用いることができる。
【0126】
また、上記においては、主に、一のディスペンサ14のみを用いる場合について、説明をした。しかし、印刷装置10は、複数のディスペンサ14を備えてもよい。また、この場合、複数のディスペンサ14のそれぞれは、互いに異なる色のインクを吐出してよい。このように構成すれば、例えば、より多様な印刷を適切に行うことができる。
【0127】
また、ディスペンサ14については、ベクトル走査を行う構成(連続吐出型ベクトル走査機能を有するディスペンサ)に限らず、例えば、ラスタ走査を行うディスペンサ14(間歇吐出型ラスター走査機能を有するディスペンサ)を用いることも考えられる。この場合、ディスペンサ14は、例えば、加飾用インクを間歇的に吐出しつつ媒体50に対して相対的に移動することにより、印刷の動作を行う。
【0128】
尚、ラスタ走査とは、例えば、点状の画素の並びにより表現されるラスタ画像を描くようにディスペンサ14を移動させる走査の動作のことである。また、より具体的に、ディスペンサ14にラスタ走査を行わせるとは、例えば、ディスペンサに間歇的なインクの吐出を行わせつつ、予め設定された走査方向へディスペンサを移動させることである。
【0129】
また、インクジェット方式で印刷を行う場合、インクジェットヘッドは、通常、ラスタ走査により、画像を描画する。例えば、本例において、ヘッド部12におけるインクジェットヘッド102y〜kは、ラスタ走査の一例である主走査動作を行うことにより、画像を描画する。この場合、ディスペンサ駆動部22は、例えば、ヘッド駆動部20と同一又は同様の制御を行うことにより、ディスペンサ14にラスタ走査を行わせてよい。より具体的に、ディスペンサ駆動部22は、例えば、ディスペンサ14に、インクジェットヘッド102y〜kと共に主走査動作を行わせてもよい。
【0130】
また、上記においては、主に、繊維製品等の媒体50に対して印刷を行う場合について、説明をした。しかし、印刷装置10においては、繊維製品等以外の媒体50を用いてもよい。例えば、プラスチックやセラミック等の媒体50に対し、隆起印刷や、様々な加飾印刷を行ってもよい。このような場合にも、本例によれば、多様な印刷を適切に行うことができる。
【0131】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は、例えば印刷装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0133】
10・・・印刷装置、12・・・ヘッド部、14・・・ディスペンサ、16・・・紫外線照射部、18・・・媒体保持部、20・・・ヘッド駆動部、22・・・ディスペンサ駆動部、24・・・UV光源駆動部、26・・・媒体搬送部、28・・・制御部、50・・・媒体、52・・・カラー印刷部、54・・・加飾印刷部、56・・・浸透抑制部、102y〜k・・・インクジェットヘッド、202・・・フィラー
図1
図2
図3
図4