特許第6472281号(P6472281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472281
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】外装材の保持材、及び外装構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 1/18 20060101AFI20190207BHJP
【FI】
   E04D1/18 F
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-49414(P2015-49414)
(22)【出願日】2015年3月12日
(65)【公開番号】特開2016-169511(P2016-169511A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2017年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082669
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 賢三
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100095061
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恭介
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−027123(JP,U)
【文献】 実開平03−120711(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第00823515(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/18
E04F 13/12
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面板部の周縁を表面側或いは裏面側に折曲して係合部、被係合部をそれぞれ成形した外装材を下地に取付保持する保持材であって、
前記外装材は、少なくとも水上側頂部を形成する被係合部が表面側に折曲し、水下側頂部を形成する係合部が裏面側に折曲し、水上側頂部周辺に位置決め部を形成し、
当該保持材は、下地に固定される固定部と、前記外装材の水上側頂部を形成する二辺の被係合部にそれぞれ係合する係止部と、該係止部に近接する開口部とを有し、
前記開口部より、該開口部の縁部又は前記固定部の水上側に設けた合わせ部を通過する流れ方向に平行な想定線上に、前記外装材の位置決め部が配置される位置調整を目視可能であることを特徴とする外装材の保持材。
【請求項2】
開口部の縁部及び固定部の水上側に合わせ部を設けていることを特徴とする請求項1に記載の外装材の保持材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の保持材にて、面板部の周縁を表面側或いは裏面側に折曲して係合部、被係合部をそれぞれ成形した外装材を、下地に取付保持した外装構造であって、
前記外装材は、少なくとも水上側頂部を形成する被係合部が表面側に折曲し、水下側頂部を形成する係合部が裏面側に折曲し、水上側頂部周辺に位置決め部を形成し、
前記保持材の係止部に近接して設けた開口部から、前記合わせ部(を通過する流れ方向に平行な想定線上)に前記外装材位置決め部が配置されるように目視しながら位置調整を行って前記外装材及び前記保持材を取り付けてなることを特徴とする外装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な野地材等の下地に対し、菱葺き外装材等の外装材とその保持材を目視にて確認しつつ適正位置に位置調整して配設することができる外装材の保持材、及び外装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に平葺きは、比較的小単位の外装材を重ねて葺いていく工法であり、通常の板金工具で施工でき、極めて多種の屋根に広く適用され、例えば神社・仏閣や住宅など木造建築の屋根を中心に広く適用されている。この平葺きに属する菱葺きは、外装材が菱形を呈するという意匠性に加え、裏面側に生成される結露の殆どを水下側の屋根材の表面側へ排出、流下させることができるため、下地材への水分の影響も少ないという構造的利点をも有している。
【0003】
このような菱葺きに関する構造としては、例えば特許文献1,2に記載の構造が知られていた。
特許文献1には、一つの屋根材(金属製の面材11)の水上側の斜辺(係合受部12,12A)を複数の吊子(18)で固定する構造が記載されている。なお、屋根材の水上側先端の頂部は、折り重ねられている。
特許文献2には、屋根材(平葺建築用板A)の水上側先端の頂部を吊子(D)で固定する構造が記載されている。
なお、このような面状屋根材を敷設する場合(但し、下地形状が特殊な前記特許文献2は除く)、下地上に墨出しを行い、その墨出し線に対して、面材の頂部が位置するように順次固定される方法が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−11219号公報(図10
【特許文献2】特開平2−128049号公報(図18〜20)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の構造では、下地上に墨出しを行い、その「線」に対して、屋根材の頂部が位置するように順次固定されるため、係合受部12,12Aを複数の吊子18で固定する際に、墨出し線に対して交わる方向に吊子18を係止させながら固定する必要があり、ズレが生じないように押さえながら固定する作業は、非常に施工の手間がかかるものであった。
また、前記特許文献2の構造では、吊子を固定する野地材(下地材C)が、表面に凹凸状の段差を多数有する特殊なものであり、屋根材も、その水上側端縁に立ち上げ部が形成される構成であり、吊子は、舌片10を後から折り曲げて屋根材を固定するものである。そのため、用いる特殊な野地材や吊子、屋根材を製造する手間や費用がかかり、また施工にも手間がかかり、さらに吊子の折り曲げに不具合があると、次段の屋根材との係合ができなくなる虞があった。
【0006】
そこで、本発明は、一般的な野地材等の下地に対し、菱葺き外装材等の外装材とその保持材を目視にて確認しつつ適正位置に位置調整して安定に取り付けることができる外装材の保持材、及び外装構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、面板部の周縁を表面側或いは裏面側に折曲して係合部、被係合部をそれぞれ成形した外装材を下地に取付保持する保持材であって、前記外装材は、少なくとも水上側頂部を形成する被係合部が表面側に折曲し、水下側頂部を形成する係合部が裏面側に折曲し、水上側頂部周辺に位置決め部を形成してなり、当該保持材は、下地に固定される固定部と、前記外装材の水上側頂部を形成する二辺の被係合部にそれぞれ係合する係止部と、該係止部に近接する開口部とを有し、前記開口部より、該開口部の縁部又は前記固定部の水上側に設けた合わせ部を通過する流れ方向に平行な想定線上に、前記外装材の位置決め部が配置される位置調整を目視可能であることを特徴とする外装材の保持材を提案するものである。
【0008】
また、本発明は、前記保持材において、開口部の縁部及び固定部の水上側に合わせ部を設けていることを特徴とする外装材の保持材をも提案する。
【0009】
さらに、本発明は、前記構成の保持材にて、面板部の周縁を表面側或いは裏面側に折曲して係合部、被係合部をそれぞれ成形した外装材を下地に取付保持した外装構造であって、前記外装材は、少なくとも水上側頂部を形成する被係合部が表面側に折曲し、水下側頂部を形成する係合部が裏面側に折曲し、水上側頂部周辺に位置決め部を形成し、前記保持材の係止部に近接して設けた開口部から、前記合わせ部を通過する流れ方向に平行な想定線上に前記外装材位置決め部が配置されるように目視しながら位置調整を行って前記外装材及び前記保持材を取り付けてなることを特徴とする外装構造をも提案するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の外装材の保持材は、一般的な野地材等の下地に対し、係止部に近接して設けた開口部より、該開口部の縁部又は前記固定部の水上側に設けた合わせ部を通過する流れ方向に平行な想定線上に、前記外装材の位置決め部が配置される位置調整を目視可能であるから、容易に位置調整を行って外装材を適正位置に取り付けることができ、特に菱形外装材に好適に適用することができる。また、外装材の被係合部に係止部が係合するように組み合わせた保持材を配設する際にも、合わせ部を墨出し線に合わせる等して適正位置に配設できる。したがって、優れた意匠性を有し、且つ構造的利点を備える菱葺き外装構造を容易に且つ高い精度で施工することができる。
【0011】
また、開口部の縁部及び固定部の水上側に合わせ部を設けている場合、この合わせ部通過する直線上に、外装材に設けた位置決め部が位置するように配置すればよく、位置調整を極めて容易に行うことができる。
【0012】
さらに、本発明の外装構造は、前記構成の保持材用いるので、外装材及び保持材が適正位置に取り付けられるものであって、優れた意匠性を有し、且つ構造的利点を備える菱葺き外装構造を容易に且つ高い精度で施工したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の保持材を外装材に取り付ける状態を示し、(a)取付以前の保持材、外装材、下地(支持部材)を示す斜視図、(b)下地に対し、位置調整しつつ保持材及び外装材と配設した状態を示す斜視図、(c)下地に保持材及び外装材が取り付けられた状態を示す斜視図である。
図2】(a)第1実施例の保持材を用いた外装構造の施工途中の状態を示す斜視図、(b)その下地構造を示す断面図である。
図3】(a)第1実施例の保持材を用いて位置決め部が三角突起である別の外装材を取り付けた外装構造を示す平面図、(b)その要部の拡大平面図である。
図4】(a)第1実施例の保持材を用いて位置決め部が直線合わせである別の外装材を取り付けた外装構造を示す平面図、(b)その要部の拡大平面図である。
図5】(a)第1実施例の保持材を用いて位置決め部がV字切り込みである別の外装材を取り付けた外装構造を示す平面図、(b)その要部の拡大平面図である。
図6】(a)第1実施例の保持材を用いた外装構造の一例を示す平面図、(b)第2実施例の保持材を用いた外装構造の一例を示す平面図、(c)第3実施例の保持材を用いた外装構造の一例を示す平面図、(d)第4実施例の保持材を用いた外装構造の一例を示す平面図、(e)第5実施例の保持材を用いた外装構造の一例を示す平面図、(f)第6実施例の保持材を用いた外装構造の一例を示す平面図である。
図7】(a)第7実施例の保持材を用いて水上側頂部が鋭角となるように外装材を取り付けた外装構造を示す平面図、(b)その要部の拡大平面図、(c)その下地構造を示す断面図である。
図8】(a)第8実施例の保持材を示す平面図、(b)該保持材にて取り付ける外装材の水上側頂部を示す平面図、(c)その取付構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の外装材(B)の保持材(A)は、面板部(b-1)の周縁を表面側或いは裏面側に折曲して係合部(b-3)、被係合部(b-2)をそれぞれ成形した外装材(B)を下地に取付保持するものであり、下地に固定される固定部(a-1)と、外装材の水上側頂部を形成する二辺の被係合部にそれぞれ係合する係止部(a-2)と、を有し、該係止部(a-2)に近接して前記外装材の位置決め部が開口部の縁部又は前記固定部の水上側に設けた合わせ部を通過する流れ方向に平行な想定線上に配置される位置調整を目視可能な開口部(a-3)を備える構成である。
この保持材(A)で保持される外装材(B)は、少なくとも水上側頂部を形成する被係合部(b-2)が表面側に折曲し、水下側頂部を形成する係合部(b-3)が裏面側に折曲し、水上側頂部周辺に位置決め部(b-4)を形成する構成である。
なお、以下、外装材(B)、保持材(A)の順で詳細に説明する。
【0015】
前述のように外装材(B)は、面板部(b-1)と、被係合部(b-2)と、係合部(b-3)と、位置決め部(b-4)とを有する。隣接する外装材同士が相互に係合するものであれば、少なくとも水上側頂部を形成する被係合部(b-2)が二辺に設けられるので、水下側頂部を形成する係合部(b-3)も二辺に設けられる。この外装材としては、図示実施例のように菱形外装材でもよいし、それ以外の矩形状(菱形以外の平行四辺形等)でもよく、水上側頂部が形成される六角形等の多角形状でもよい。
矩形状の外装材(B)を例にすると、敷設状態の面板部(b-1)の水上側頂部を挟んだ二辺を表面側に折り返して被係合部(b-2)とし、他の二片を裏面側に折り返して係合部(b-3)とする。
【0016】
面板部(b-1)は、この外装材(B)が図示実施例のように菱形外装材の場合には菱形に成形され、それ以外の矩形状の場合や六角形等の多角形状に形成される外装材の場合にもそれに応じた形状に成形される。
【0017】
被係合部(b-2)は、前述のように少なくとも水上側頂部を形成する二辺に形成されるものであって、面板部の水上側端縁を表面側に折曲した構成であり、後述する図示実施例(第1実施例)のようにプレス加工等により折返し基端を連続状に形成したものでも、被係合部の端縁同士が突き合わせ状、被係合部の端部が重合状でもよい。なお、重合状とは、被係合部を順次折り曲げ加工等により重なって折り曲げられた状態を指す。
【0018】
係合部(b-3)は、前述のように少なくとも水下側頂部を形成する二辺に形成されるものであって、面板部の水下側端縁を裏面側に折曲した構成である。隣接する外装材同士が相互に係合するものであれば、前記被係合部(b-2)と係合する。
【0019】
位置決め部(b-4)は、前述のように水上側頂部周辺に形成されるものであって、二辺の被係合部(b-2)の内側隅部や二辺の被係合部(b-2)の外側角部であれば特に加工を必要としないが、被係合部(b-2)や面板部(b-1)に円、線等の突部を設ける加工を行うようにしてもよい。なお、面板部(b-1)に突部を設ける場合、次工程である次段の外装材を敷設する位置決めを兼用するものでもよい。
【0020】
前述のように保持材(A)は、固定部(a-1)と、係止部(a-2)と、開口部(a-3)とを有する。さらに、固定部(a-1)の水上側又は開口部(a-3)の縁部に合わせ部(a-4)を設けてもよい。
【0021】
固定部(a-1)は、前述のように下地に固定される部位を指し、ビス等の固定具を用いるものでもよい。後述する図示実施例では、平板状に固定具を打ち込むための孔を設けた構成や、下地(支持部材)に形成した縦片を挿着するスリット等を設けた構成を採用しているが、特にそれらに限定するものではなく、どのような構成を採用してもよい。
【0022】
係止部(a-2)は、前述のように前記外装材(B)の水上側頂部を形成する二辺の被係合部(b-2)にそれぞれ係合する部位を指し、前記被係合部(b-2)の形状に応じて適宜係合する構成を選択すればよい。
【0023】
開口部(a-3)は、前述のように前記係止部(a-2)に近接して設けられ、前記外装材の位置決め部を目視可能であれば、円形、矩形等に切除状に形成されるものでも、両係止部に亘って切除状に形成されるものであってもよく、特にその開口形状等を限定するものではない。なお、この開口部(a-3)の縁部には、突起状、V字状等の目印(=合わせ部(a-4))を設けることにより、保持材(A)と外装材(B)との位置調整を補助するようにしてもよい。
【0024】
合わせ部(a-4)は、前述のように前記開口部(a-3)の端縁部に設けてもよいし、前記固定部(a-1)の水上側に設けてもよく、特にその両方に設けるようにしてもよい。固定部の水上側に合わせ部を設けることが重要であり、特に下地に支持部材を用いない場合に有用である。
この合わせ部を通過する直線(=流れ方向に平行な想定線)上に、外装材(B)に設けた位置決め部(b-4)が位置するように配置すればよい。また、合わせ部を二箇所に設けた場合には、該合わせ部同士を結ぶ直線上に、外装材(B)に設けた位置決め部(b-4)が位置するように配置すればよく、極めて容易に位置調整を行うことができる。
【0025】
なお、前記保持材を固定する下地は、後述する図示実施例では流れ方向又はそれと直交する方向に連続する支持部材(垂木)を用い、該支持部材間に野地材等の断熱材を配した構造であるが、特にこの構成を限定するものではなく、野地材上に直接固定するものでもよい。
支持部材を配設する場合、使用する外装材に応じて支持部材の配設方向を適宜に設定してもよい。例えば図示実施例のように支持部材上に保持材を固定して外装材を取り付ける場合には、第1実施例のように水上側頂部が鈍角となる外装材では、支持部材は水流れ方向に連続するように配設し、第8実施例のように水上側頂部が鋭角となる外装材では、支持部材は水流れ方向に直交する方向に連続するように配設することが好ましい。
【0026】
そして、前記構成の本発明の外装材の保持材は、係止部に近接して設けた開口部から外装材の水上側頂部付近に設けた位置決め部を目視しながら位置調整を行って外装材を適正位置に取り付けることができる。したがって、優れた意匠性を有し、且つ構造的利点を備える菱葺き外装構造を容易に且つ高い精度で施工することができる。
【0027】
また、特に保持材の開口部の縁部又は固定部の水上側に合わせ部を設けている場合、この合わせ部又は該合わせ部を通過する直線上に、或いは合わせ部同士を結ぶ直線上に、外装材に設けた位置決め部が位置するように配置すればよく、位置調整を極めて容易に行うことができる。
【実施例1】
【0028】
本発明の外装材2の保持材1は、図1及び図2に示す第1実施例に示すように水上側頂部が二辺から形成される菱形外装材等の外装材2を下地3に取付保持するものであり、下地3に固定される固定部11と、外装材2の水上側頂部を形成する二辺の被係合部22,22にそれぞれ係合する係止部12,12と、を有し、該係止部12,12間には前記外装材2の位置決め部24を目視可能な開口部13を備える構成である。
【0029】
この第1実施例の保持材1は、図1(a)に示すように略平坦状で略正方形状の固定部11と、その水下側に折返し基端が連続状に形成された係止部12,12と、該係止部12,12間に設けられる略扇状に切り欠かれた開口部13を備えるピース材であって、該開口部13の開口縁部の略中央には水下側へ突起状の合わせ部131が設けられた構成である。
また、前記固定部11には、図示しない固定具を打ち込むための孔111と、支持部材(下地)3に設けた水下側縦片312の挿通可能なスリット113と、水上側縦片313を係止可能な溝114と、が設けられ、溝114の略中央にはV字状の切り込みを形成して合わせ部112とした。
【0030】
この第1実施例の外装材2は、図2(a)に示すように略平坦状の面板部21と、該面板部21の周縁を表面側或いは裏面側に折曲して係合部23、被係合部22をそれぞれ成形した菱形外装材であり、その水上側頂部が鈍角となるように取り付けられ、水上側頂部周辺に形成した位置決め部24を有する構成である。前記面板部21は、水上側頂部が鈍角である横長の菱型形であり、前記被係合部24は、水上側頂部を形成する二辺に形成され、プレス加工により折返し基端を連続状に形成したものである。また、前記位置決め部24は、二辺に跨がる被係合部22の折返し片の略中央の先端を略円弧状に切り込んでその中央部分を突起状に形成したものである。
【0031】
また、この第1実施例の下地3は、図2(a)に示すように断面略ハット状で水流れ方向に連続する支持部材であって、この支持部材3の配設間隔には野地材等の断熱材4が配設されている。
前記支持部材3は、図2(b)に示すように上面を形成する頂面部31と、側面を形成する縦面部32,32と、該縦面部32,32の下端を外側へ折り曲げて形成した固定部33,33とからなる。また、頂面部31には、前述のようにスリット113に挿通可能な水下側縦片312と、溝114に係止可能な水上側縦片313とがそれぞれ切り起こしにて設けられている。
【0032】
前記下地(支持部材)3へ、前記保持材1及び前記外装材2を取り付ける際には、図1(a)に示すように、支持部材3に対しておおよその位置に外装材2を配した状態で、図1(b)に示すように保持材1を水上側から臨ませ、支持部材3と外装材2との間に差し込むように配し、その係止部12,12と外装材2の被係合部22,22とが係合するように組み合わせる。その際、保持材1の合わせ部112と外装材2の位置決め部24とを一致させつつ組み合わせ、この状態で保持材1のスリット113に支持部材3の水下側縦片312を挿通させ、溝112に水上側縦片313を係止させる。
その後、図1(c)に示すように縦片312,313を倒し込み(倒し片312',313')、支持部材3に保持材1を取り付けることができる。
なお、保持材1を支持部材3に対して取り付けた状態で、外装材2を水下側から配するようにしてもよい。
【0033】
このように本発明の保持材1を用いた取付作業(操作)は、保持材1の開口部13から外装材2の水上側頂部付近に設けた位置決め部24を目視しながら位置調整を行って外装材2を適正位置に取り付けることができる。
詳しくは、保持材1の開口部13から外装材2の位置決め部24を目視しながら保持材1に形成したV字状の切り込みである合わせ部112及び水下側の突起状の合わせ部131を直線上に並ぶように位置調整を行いつつ、外装材2を適正位置に取り付けることができる。即ち保持材1の合わせ部112,131を結ぶ直線上に外装材2の位置決め部24が位置するように配置する。また、外装材2の保持材1による保持箇所は水上側頂部の一箇所であるが、隣接する外装材2,2同士が相互に係合するので、確実に固定することができる。
したがって、優れた意匠性を有し、且つ構造的利点を備える菱葺き外装構造を容易に且つ高い精度で施工することができる。
【0034】
図3図5に示す各外装構造は、前記第1実施例の保持材1を用いて、形成した位置決め部24x〜24zの形状構成がそれぞれ異なる外装材2X〜2Zを外装材2に代えて取り付けたものである。
なお、前記第1実施例の外装材2に対し、位置決め部24x〜24zの構成以外は、係止部12に係合される被係合部22の折返し片が短いという相違があるものの、それ以外は同一であるため、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
まず、図3(a)の外装構造では、外装材2Xに形成した位置決め部24xが、図3(b)に拡大して示すように前記図1及び図2における外装材2の位置決め部24とほぼ同様に、二辺に跨がる被係合部22の折返し片の略中央の先端を略円弧状に切り込んでその中央部分を突起状に形成したものである。
【0036】
次に、図4(a)の外装構造では、外装材2Yに形成した位置決め部24yが、図4(b)に拡大して示すように二辺の被係合部22,22が交わる直線状を指すものである。
【0037】
さらに、図5(a)の外装構造では、外装材2Zに形成した位置決め部24zが、図5(b)に拡大して示すように二辺に跨がる被係合部22の折返し片の略中央の先端を略V字状に切り込んで形成したものである。
【0038】
したがって、保持材1の開口部13から外装材2X〜2Zの前記位置決め部24x〜24zを目視しながら保持材1に形成した合わせ部112,131を直線上に並ぶように位置調整を行って外装材2X〜2Zを適正位置に取り付けることができる。
【0039】
図6(a)には、前記第1実施例の平面図を参考のため示した。
図6(b)に示す第2実施例では、保持材1Bは、略平坦状で略台形状の固定部11bと、その水下側に形成された係止部12b,12bと、該係止部12b,12b間に設けられる広幅の略逆V字状に切り欠かれた開口部13bを備えるピース材であって、該開口部13bの中央隅部が合わせ部131bである。また、前記固定部11bの水上側端縁には、V字状の切り込みである合わせ部112bも設けられている。
一方、上記構成の保持材1Bに保持される外装材2Bは、位置決め部24bが、二辺の被係合部22,22が交わる中央隅部である以外は、前記第1実施例における外装材2と同様であり、図面に同一符号を付して説明を省略する。
そのため、保持材1Bの開口部13bから外装材2Bの位置決め部24bを目視しながら保持材1Bに形成した合わせ部112b,131bにて位置調整を行って外装材2Bを適正位置に取り付けることができる。
【0040】
図6(c)に示す第3実施例では、保持材1Cは、略平坦状で略台形状の固定部11cと、その水下側に形成された係止部12c,12cと、該係止部12c,12c間に設けられる一定幅で切り欠かれた開口部13cを備えるピース材であって、該開口部13cの中央隅部が合わせ部131cである。また、前記固定部11cの水上側端縁には、V字状の切り込みである合わせ部112cも設けられている。
一方、上記構成の保持材1Cに保持される外装材2Cは、位置決め部24cが、二辺の被係合部22,22が交わる直線状を指す以外は、前記第1実施例における外装材2と同様であり、図面に同一符号を付して説明を省略する。
そのため、保持材1Cの開口部13cから外装材2Cの位置決め部24cを目視しながら保持材1Cに形成した合わせ部112c,131cにて位置調整を行って外装材2Cを適正位置に取り付けることができる。
【0041】
図6(d)に示す第4実施例では、保持材1Dは、略平坦状で略正方形状の固定部11dと、その水下側に形成された係止部12d,12dと、該係止部12d,12d間に設けられる深スリット状に切り欠かれた開口部13dを備えるピース材であって、該開口部13dの中央部が合わせ部131dである。また、前記固定部11dの水上側端縁には、V字状の切り込みである合わせ部112dも設けられている。
一方、上記構成の保持材1Dに保持される外装材2Dは、位置決め部24dが、二辺の被係合部22,22を折り込んだ外側角部である以外は、前記第1実施例における外装材2と同様であり、図面に同一符号を付して説明を省略する。
そのため、保持材1Dの開口部13dから外装材2Dの位置決め部24dを目視しながら保持材1Dに形成した合わせ部112d,131dにて位置調整を行って外装材2Dを適正位置に取り付けることができる。
【0042】
図6(e)に示す第5実施例では、保持材1Eは、略平坦状で略正方形状の固定部11eと、その水下側に形成された係止部12e,12eと、該係止部12e,12e間に設けられる狭幅の略逆V字状に切り欠かれた開口部13eを備えるピース材である。また、前記固定部11eの水上側端縁には、V字状の切り込みである合わせ部112eも設けられている。
一方、上記構成の保持材1Eに保持される外装材2Eは、位置決め部24eが、二辺の被係合部22,22が交わる中央隅部である以外は、前記第1実施例における外装材2と同様であり、図面に同一符号を付して説明を省略する。
そのため、保持材1Eの開口部13eから外装材2Eの位置決め部24eを目視しながら保持材1Eに形成した合わせ部112eにて位置調整を行って外装材2Eを適正位置に取り付けることができる。より詳しくは、合わせ部112eを通過する直線(=流れ方向に平行な想定線)上に位置決め部24eが位置するように配置する。
【0043】
図6(f)に示す第6実施例では、保持材1Fは、略平坦状で略台形状の固定部11fと、その水下側に形成された係止部12f,12fと、該係止部12f,12f間に設けられる略大型山状に切り欠かれた開口部13fを備えるピース材であって、該開口部13fの中央隅部が合わせ部131fである。また、前記固定部11fの水上側端縁には、V字状の切り込みである合わせ部112fも設けられている。
一方、上記構成の保持材1Fに保持される外装材2Fは、位置決め部24fが、二辺の被係合部22,22を折り込んだ外側角部である以外は、前記第1実施例における外装材2と同様であり、図面に同一符号を付して説明を省略する。
そのため、保持材1Fの開口部13fから外装材2Fの位置決め部24fを目視しながら保持材1Fに形成した合わせ部112f,131fにて位置調整を行って外装材2Fを適正位置に取り付けることができる。
【0044】
図7に示す第7実施例では、保持材1Gは、略平坦状で略矩形状の固定部11gと、その水下側を切り抜いて形成された閉鎖状の開口部13gを備えるピース材であって、該開口部13gの水下側の端縁から略団扇状に突出する舌状片の左右に外装材2Gの被係合部22gに係合する係止部12g,12gが設けられている。また、前記固定部11gには、図示しない固定具を打ち込むための孔111gが設けられている。
一方、上記構成の保持材1Gに保持される外装材2Gは、前記第1〜第6実施例とは異なり、その水上側頂部が鋭角となるように取り付けられた縦長の菱型形である。この外装材2Gも、他の実施例と同様に面板部21g周縁を表面側或いは裏面側に折曲して係合部23g、被係合部22gを形成したものであり、先鋭な水上側頂部を水下側へ折り返した先端が位置決め部24gである。
また、この第7実施例における下地構造は、図7(c)に示すように断面略ハット状の連続材である支持部材3Gを水流れ方向と直交するように配設したものであり、この支持部材3Gの配設間隔には断熱材4Gが配設され、その裏面側には異なる野地材等の断熱材5Gが配設されている。
【0045】
図8に示す第8実施例では、保持材1Hは、図8(a)に示すように略平坦状で略矩形状の固定部11hと、その水下側を切り抜いて形成された開口部13hを備えるピース材であり、該開口部13hの水下側を囲うように係止部12h,12hが設けられている。また、前記固定部11hには、図示しない固定具を打ち込むための孔111hが設けられている。
一方、上記構成の保持材1Hに保持される外装材2Hは、図8(b)に示すように前記第7実施例と同様に縦型の菱形外装材であり、面板部21hの水上側頂部周辺に設けられた突起24hが位置決め部である。なお、前記第7実施例と同様に、先鋭な水上側頂部を水下側へ折り返した先端である位置決め部24h'も設けられている。
【0046】
これらの縦型の菱形外装材である外装材2G、2Hを用いた第7,第8実施例の外装構造においても、前記第1〜第6実施例と同様に係止部12g,12hに近接して設けた開口部13g,13hから外装材2G,2Hの水上側頂部付近に設けた位置決め部24g,24h,24h'を目視しながら位置調整を行って外装材2G,2Hを適正位置に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0047】
1,1B〜1F,1G,1H 保持材
11,11b〜11f,11g,11h 固定部
111 孔
112,112b〜112f 合わせ部(切り込み)
113 スリット
114 溝
12,12b〜12f,12g,12h 係止部
13,13b〜13f,13g,13h 開口部
131,131b〜131f,131g,131h 合わせ部(突起)
2,2X〜2Z,2B〜2F,2G,2H 外装材
21,21g,21h 面板部
22,22g,22h 被係合部
23,23g,23h 係合部
24,24x〜24z,24b〜24f,24g,24h 位置決め部
3 下地(支持部材)
31 頂面部
311 孔
312,313 縦片
312',313' 倒し片
32 縦面部
33 固定部
4 断熱材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8