(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472286
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】溶湯保持装置
(51)【国際特許分類】
B22D 41/02 20060101AFI20190207BHJP
B22D 11/10 20060101ALI20190207BHJP
B22D 45/00 20060101ALI20190207BHJP
F27D 3/14 20060101ALI20190207BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20190207BHJP
C04B 35/565 20060101ALI20190207BHJP
C04B 35/103 20060101ALI20190207BHJP
C04B 35/66 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
B22D41/02 B
B22D11/10 310H
B22D11/10 310J
B22D41/02 A
B22D45/00 B
F27D3/14 A
F27D3/14 Z
F27D1/00 N
C04B35/565
C04B35/103
C04B35/66
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-56289(P2015-56289)
(22)【出願日】2015年3月19日
(65)【公開番号】特開2016-175093(P2016-175093A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】西田 龍太
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 智宏
(72)【発明者】
【氏名】萱間 剛
【審査官】
池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−266024(JP,A)
【文献】
特開平05−105507(JP,A)
【文献】
特開平09−024462(JP,A)
【文献】
特開2000−254772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00−11/22
B22D 33/00−47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非鉄金属の溶湯を保持する炭化珪素とアルミナで構成された耐火物製の溶湯保持部を有する溶湯保持装置であって、
前記溶湯保持部は前記溶湯保持部に流し込まれる前記溶湯を受け止める焼成定形耐火物で形成された溶湯受け止め部と、残りの不定形耐火物で形成された本体部と、からなり、
前記本体部を形成する不定形耐火物は重量比で炭化珪素を30%〜90%含み残りがアルミナからなり且つ不定形耐火物を流し込んで成形したものを乾燥した後に測定した気孔率は体積比で5%〜15%であり、
前記溶湯受け止め部を形成する焼成定形耐火物は重量比で炭化珪素を60%〜95%含み残りがアルミナからなり該炭化珪素の重量の百分率は前記本体部を形成する不定形耐火物の炭化珪素の重量の百分率の1.05〜2.00倍であり、かつ、該焼成定形耐火物の気孔率は体積比で10%〜20%であり該気孔率は前記本体部の不定形耐火物の気孔率の1.3〜2.0倍である、
ことを特徴とする溶湯保持装置。
【請求項2】
前記溶湯保持部は、焼成定形耐火物で形成され、前記溶湯保持部に保持された前記溶湯を前記溶湯保持装置の外部に放出する穴部を備えた溶湯放出部と、を更にもち、
前記溶湯放出部を形成する焼成定形耐火物は重量比で炭化珪素を60%〜95%含み残りがアルミナからなり該炭化珪素の重量の百分率は前記本体部を形成する不定形耐火物の炭化珪素の重量の百分率の1.05倍〜2.00倍であり、かつ、該焼成定形耐火物の気孔率は体積比で10%〜20%であり該気孔率は前記本体部の不定形耐火物の気孔率の1.3倍〜2.0倍である、
請求項1に記載の溶湯保持装置。
【請求項3】
請求項1に記載の溶湯保持装置は取鍋、タンディッシュ、樋、又はルツボのいずれかである。
【請求項4】
請求項2に記載の溶湯保持装置は取鍋、タンディッシュ、又は樋のいずれかである。
【請求項5】
鉄皮と該鉄皮の内周面に形成された断熱層と、
該断熱層の内周面に形成された前記溶湯保持部と、からなる
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の溶湯保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅、アルミニウム、亜鉛等の非鉄金属の溶湯を受け止め、この非鉄金属の溶湯を保持する溶湯保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流し込まれる高温の金属溶湯を受け止め、この金属溶湯を保持する溶湯保持装置が提供されている。従来、非鉄金属の溶湯を保持する溶湯保持装置は、流動性をもつ不定形耐火物であるキャスタブル材を現場で流し込むことにより形成されている。溶銑を保持する溶湯保持装置は、流動性をもつキャスタブル材を現場で流し込むことにより形成され、または、多数の煉瓦を現場で築造することにより形成されている。
【0003】
しかし、不定形耐火物であるキャスタブル材を流し込んで形成した場合は耐久性が必ずしも充分でない。多数の煉瓦を現場で築造した場合には、煉瓦の目地に先行溶損が発生したり、築造に時間を要したり、使用条件によって煉瓦が脱落したりする問題がある。
【0004】
特許文献1には、高炉から延設される出銑樋から出銑される溶銑を受け止め、この受け止めた溶銑を保持する傾注樋の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−69515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非鉄金属の溶湯は溶銑と比べ粘性が低く、溶銑と比べて溶湯が耐火物の奥深くまで浸透し易い。更に、非鉄金属の溶湯は溶銑と比べて耐火物表面によく濡れるため、耐火物表面に非鉄金属の溶湯が張り付き易い。そして、耐火物が冷えて温度が低下すると、耐火物内部に浸透した溶湯と耐火物表面に張り付いた溶湯とが共に繋がった状態で固化して非鉄金属が析出する。
【0007】
この状態で溶湯保持装置に非鉄金属の溶湯を保持させると、耐火物内部に析出している非鉄金属が加熱膨張して周囲の耐火物に亀裂を発生させてから再び溶ける。その結果、耐火物のより一層深い部分まで非鉄金属の溶湯が浸透することになり溶湯保持装置の破損を招く。
【0008】
そこで、再加熱による溶湯の浸透を抑制するために冷却固化して析出した非鉄金属の除去作業を行うことが必要となる。しかしながら、耐火物の表面には非鉄金属の溶湯が張り付き易く、更に非鉄金属の溶湯は耐火物内部の奥深くまで浸透し易い。そのため、頻繁に除去作業を行う必要があり手間を要する。
【0009】
その一方で、頻繁に除去作業を行うと耐火物表面における面荒れが進行するため、より一層非鉄金属の溶湯が耐火物表面に付着し易くなる。従って、除去作業後の溶湯保持装置の使用によって、耐火物表面に析出する非鉄金属の厚みは増大する。更に、非鉄金属の溶湯は耐火物内の奥深くに浸透し易いため、1回の除去作業で剥離する必要がある耐火物の層の厚みが大きい。そのため、除染作業後の溶湯保持装置の使用によって、非鉄金属の溶湯は耐火物内のより一層深い位置まで浸透することになる。その結果、頻繁に除去作業を行うことで、耐火物自体が劣化して溶湯保持装置の寿命を縮める。
【0010】
そこで、本発明は、非鉄金属の溶湯に対する耐久性を具備した長寿命である非鉄金属の溶湯を保持する溶湯保持装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の溶湯保持装置は、非鉄金属の溶湯を保持する炭化珪素とアルミナで構成された耐火物製の溶湯保持部を有する溶湯保持装置であって、溶湯保持部は溶湯保持部に流し込まれる溶湯を受け止める焼成定形耐火物で形成された溶湯受け止め部と、残りの不定形耐火物で形成された本体部と、からなり、本体部を形成する不定形耐火物は重量比で炭化珪素を30%〜90%含み残りがアルミナからなり且つ
不定形耐火物を流し込んで成形したものを乾燥した後に測定した気孔率は体積比で5%〜15%であり、溶湯受け止め部を形成する焼成定形耐火物は重量比で炭化珪素を60%〜95%含み残りがアルミナからなり該炭化珪素の重量の百分率は前記本体部を形成する不定形耐火物の炭化珪素の重量の百分率の1.05〜2.00倍であり、かつ、該焼成定形耐火物の気孔率は体積比で10%〜20%であり該気孔率は本体部の不定形耐火物の気孔率の1.3〜2.0倍である、ことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の溶湯保持装置は耐火物製の溶湯保持部を有する。この溶湯保持部は容器状の構造であり、銅、アルミニウム、亜鉛等の非鉄金属の溶湯を保持する。なお、溶湯保持部は底浅であっても底深であってもよい。この溶湯保持部は、該溶湯保持部に流し込まれる溶湯を受け止める溶湯受け止め部と、残りの本体部と、から形成されている。
【0013】
溶湯受け止め部は、取鍋やノズルから流下する非鉄金属の溶湯を直接受け止める部分である。そのため、この溶湯受け止め部は溶湯が浸透し易い部分である。また、この溶湯受け止め部は溶湯に浸食されやすい部分である。従って、溶湯受け止め部は非鉄金属の溶湯に対する耐浸透性と耐浸食性を十分に備える必要がある。そこで、この溶湯受け止め部は予め成形して焼成された焼成品であり、不焼成定形耐火物よりも面荒れが起きにくく耐久性に優れる焼成定形耐火物で形成される。溶湯受け止め部は、一枚の板状の焼成定形耐火物で形成することができる。この場合、目地に発生する溶損を防止できる。なお、溶湯受け止め部は、多数の焼成定形耐火物を敷設して形成することもできる。溶湯受け止め部は、重量比で炭化珪素を60%〜95%含み残りがアルミナからなり且つその気孔率は体積比で10%〜20%である焼成定形耐火物で形成されている。この焼成定形耐火物で形成される溶湯受け止め部は、非鉄金属の溶湯に対する耐浸透性と耐浸食性に優れている。
【0014】
本体部は、現場における施工が容易である不定形耐火物で形成される。不定形耐火物にはキャスタブル耐火物を用いることができる。この場合、流し込み用、吹付用またはこて塗用のキャスタブル耐火物を用いることができる。本体部は、重量比で炭化珪素を30%〜90%含み残りがアルミナからなり且つその気孔率は体積比で5%〜15%である不定形耐火物で形成されている。なお、ここでいう不定形耐火物の気孔率は乾燥後の不定形耐火物の気孔率である。本体部が重量比で炭化珪素を30%〜90%含む不定形耐火物で形成されると、該本体部の表面は非鉄金属の溶湯で濡れにくくなり、該本体部の表面に溶湯が張り付きにくくなる。また、該本体部は非鉄金属の溶湯に対する耐浸食性に優れる。更に、該本体部は耐スポーリング性にも優れる。その一方で、炭化珪素が重量比で30%より小さい場合は非鉄金属の溶湯が本体部の表面に張り付く傾向や非鉄金属の溶湯で本体部の表面が浸食される傾向がみられ、耐スポーリング性も低下する。炭化珪素が重量比で90%より大きい場合は不定形耐火物の流動性が低下するため、施工することに時間を要する。また、結合剤等の添加剤を用いて不定形耐火物を調整することが困難となり、不定形耐火物の熱伝導性や膨張性及び耐食性などを考慮した設計を行うことが困難になる。
【0015】
更に、溶湯受け止め部を形成する焼成定形耐火物に含まれる炭化珪素の重量の百分率は、本体部を形成する不定形耐火物の炭化珪素の重量の百分率の1.05倍〜2.00倍である。すなわち、溶湯受け止め部を形成する焼成定形耐火物と本体部を形成する不定形耐火物の炭化珪素の重量の百分率は異なっており、上記した関係をもつ。溶湯受け止め部を形成する焼成定形耐火物の炭化珪素の重量の百分率と本体部を形成する不定形耐火物の炭化珪素の重量の百分率とが上記した関係にある場合、溶湯保持部全体の非鉄金属に対する耐浸食性が向上する。
【0016】
また、溶湯受け止め部を形成する焼成定形耐火物の気孔率は本体部を形成する不定形耐火物の気孔率の1.3倍〜2.0倍である。すなわち、溶湯受け止め部を形成する焼成定形耐火物と本体部を形成する不定形耐火物の気孔率は異なっており、上記した関係をもつ。溶湯受け止め部を形成する焼成定形耐火物の気孔率と本体部を形成する不定形耐火物の気孔率とが上記した関係にある場合、溶湯保持部全体の耐スポーリング性が向上する。
【0017】
本発明の溶湯保持装置の溶湯保持部は、
焼成定形耐火物で形成され、該溶湯保持部に保持された溶湯を
溶湯保持装置の外部に放出する
穴部を備えた溶湯放出部と、を更にもつことができる。
【0018】
溶湯放出部は、溶湯保持部に保持された非鉄金属の溶湯を溶湯保持装置の外部へ放出可能とする部分である。溶湯保持装置の外部に放出される溶湯がこの溶湯放出部に集中する。そのため、溶湯放出部は浸食されやすい。従って、この溶湯放出部は、不焼成定形耐火物よりも面荒れが起きにくく耐久性に優れた予め成形して焼成される焼成定形耐火物で形成されていることが好ましい。溶湯放出部は、重量比で炭化珪素を60%〜95%含み残りがアルミナからなりその気孔率は体積比で10%〜20%である焼成定形耐火物で形成されることが好ましい。この場合、非鉄金属の溶湯に対する耐浸食性が向上する。また、該焼成定形耐火物の炭化珪素の百分率は、本体部を形成する不定形耐火物の炭化珪素の重量の百分率の1.05〜2.00倍であるとよい。更に、該焼成定形耐火物の気孔率は該不定形耐火物の気孔率の1.3倍〜2.0倍であるとよい。この場合、溶湯保持部全体の非鉄金属の溶湯に対する耐浸食性と耐スポーリング性が向上するため、溶湯保持装置の更なる長寿命化を図ることができる。
【0019】
溶湯保持部が溶湯受け止め部と本体部とを備える溶湯保持装置は、取鍋、タンディッシュ、樋、又はルツボとして用いることができる。
【0020】
溶湯保持部が溶湯受け止め部と本体部と溶湯放出部とを備える溶湯保持装置は、取鍋、タンディッシュ、又は樋として用いることができる。
【0021】
本発明の溶湯保持装置は、溶湯保持部の外周面に断熱層を設け、該断熱層の外周面を鉄皮で覆うこともできる。すなわち、本発明の溶湯保持装置は、鉄皮と該鉄皮の内周面に形成された断熱層と、該断熱層の内周面に形成された溶湯保持部と、から形成されていてもよい。この場合、溶湯の保温効果に優れる。
【0022】
断熱層は、多数の焼成定形耐火物を敷設して形成することができる。また、炭素繊維やセラミックス繊維を敷き詰めて形成することもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の溶湯保持装置は、非鉄金属の溶湯に対する耐久性を具備しており、長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】実施形態の溶湯保持装置の縦断面図(W1−W1線)である。
【
図3】実施形態の溶湯保持装置の横断面図(W2−W2線矢視図)である。
【
図4】実施形態の溶湯保持装置の横断面図(W3−W3線矢視図)である。
【
図5】実施形態の溶湯保持装置の横断面図(W4−W4線矢視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施形態の溶湯保持装置1を
図1〜
図5に示す。この実施形態の溶湯保持装置1は略直方体であり、その外周側の側面と底面を形成する容器状の鉄皮2と、断熱煉瓦層3と、溶湯保持装置1の内側に設けられたキャスタブル層4と、溶湯を受け止める部分に設けられた耐火煉瓦5aと、溶湯を放出する部分に設けられた耐火煉瓦5bと、から形成されている。そして、溶湯保持装置1の内側には、キャスタブル層4と耐火煉瓦(5a、5b)が壁面となるように、略長円形の容器状の空間が形成されている。また、この溶湯保持装置1の内側の空間と溶湯保持装置1の外部を連通する底穴6が形成されている。
【0026】
すなわち、実施形態の溶湯保持装置1は、流し込まれる非鉄金属の溶湯を受け止める溶湯受け止め部を形成する耐火煉瓦5aと、本体部を形成するキャスタブル層4と、保持された溶湯を外部へ放出する溶湯放出部を形成する耐火煉瓦5bと、からなる非鉄金属の溶湯を保持する溶湯保持部を備えている。
【0027】
鉄皮2は、
図2〜
図5の溶湯保持装置1の断面図に示すように、上面が開口であり、上面が底面よりも広くなるように側面のほぼ全体で傾斜をもつ略U字の断面をもつ容器形状である。また、底面の一部には穴が形成されている。
【0028】
断熱煉瓦層3は、
図2〜
図5の溶湯保持装置1の断面図に示すように、鉄皮2の内周側に多数の耐火断熱煉瓦を敷設することで形成される。なお、耐火断熱煉瓦は、熱伝導率が低い耐火煉瓦である。耐火断熱層3の厚さは鉄皮2の厚さとほぼ同じになるように形成されている。
【0029】
キャスタブル層4は、鉄皮2の内周側に多数の耐火断熱煉瓦を敷設した後に、流動性をもつキャスタブル材を流し込んで鋳込み成形することで形成される。すなわち、
図2〜
図5の溶湯保持装置1の断面図に示すように、キャスタブル層4は、溶湯保持装置1の内側で鉄皮2と断熱煉瓦層3を覆うように形成されている。また、キャスタブル層4は、
図2の溶湯保持装置1の断面図に示すように、溶湯保持装置1の底穴6へ溶湯を流す緩やかな傾斜面を形成している。この傾斜面の傾斜角は5°である。キャスタブル層4は、重量比で炭化珪素を30%〜90%含み残りがアルミナからなる。また、キャスタブル層4は体積比で5%〜15%の気孔率を有する。なお、キャスタブル層4の気孔率は乾燥後のキャスタブル層4の気孔率である。このキャスタブル層4の表面は非鉄金属の溶湯で濡れにくく、該溶湯がキャスタブル層4の表面に張り付きにくい。また、このキャスタブル層4は非鉄金属の溶湯に対する耐浸食性と耐スポーリング性に優れる。
【0030】
溶湯受け止め部を形成する耐火煉瓦5aと溶湯放出部を形成する耐火煉瓦5bは、
図2、
図3、
図5の溶湯保持装置1の断面図に示すように、キャスタブル層4に埋設されており、このキャスタブル層4と一体となっている。この耐火煉瓦(5a、5b)は、不焼成定形耐火物よりも面荒れが起きにくく耐久性に優れる予め成形され焼成された焼成定形耐火物である。キャスタブル層4の傾斜面の上流側に配置され、溶湯受け止め部を形成している耐火煉瓦5aは、
図1の溶湯保持装置1の平面図に示すように、一枚の平板形状である。一方で、キャスタブル層4の傾斜面の下流側に配置され、溶湯放出部を形成している耐火煉瓦5bは、
図2と
図5の溶湯保持装置1の断面図に示すように、溶湯を放出する穴を中心に備えた平板形状である。また、この穴は溶湯保持装置1の底穴6を形成している。耐火煉瓦5aおよび耐火煉瓦5bは、重量比で炭化珪素を60%〜95%含み残りがアルミナからなりその気孔率は体積比で10%〜20%である焼成定形耐火物から形成されている。この焼成定形耐火物で形成された耐火煉瓦(5a、5b)は、非鉄金属の溶湯に対する耐浸透性と耐浸食性に優れている。
【0031】
実施形態の溶湯保持装置1は上記の構成を備える。
【0032】
次に、この実施形態の溶湯保持装置1の作用の一例を説明する。
【0033】
まず、耐火煉瓦5aに向けて、図示されていない取鍋やノズルから非鉄金属の溶湯が流下する。このとき、耐火煉瓦5aは非鉄金属の溶湯の流下を直接受け止める。この耐火煉瓦5aに受け止められた溶湯は、キャスタブル層4と耐火煉瓦(5a、5b)からなる溶湯保持部で保持される。そして、保持された溶湯は、耐火煉瓦5bが形成している底穴6へキャスタブル層4の傾斜面を沿うように流れ、この底穴6を介して溶湯保持装置1の外部に放出される。なお、1600℃付近において、炭化珪素は空気雰囲気の下で分解するおそれがあるため、溶湯保持装置1内に保持されている非鉄金属の溶湯の温度は1400℃以下であることが好ましい。
このキャスタブル層4の表面は非鉄金属の溶湯で濡れにくく、該溶湯がキャスタブル層4の表面に張り付きにくい。また、このキャスタブル層4は非鉄金属の溶湯に対する耐浸食性と耐スポーリング性に優れる。その一方で、非鉄金属の溶湯の浸透や浸食が発生しやすい溶湯受け止め部と溶湯放出部は、耐火煉瓦(5a、5b)で形成されている。従って、溶湯保持部の耐久性を向上させることができる。そのため、実施形態の溶湯保持装置1は非鉄金属の溶湯に対する耐久性を具備しており長寿命化を図ることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 溶湯保持装置
2 鉄皮
3 耐火断熱層
4 キャスタブル層
5(a)耐火煉瓦
5(b)耐火煉瓦
6 底穴