(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ホイールシリンダ(10)で拡張駆動される一対のブレーキシュー(8,9)のウエブ(13,14)間に設けられるとともにアジャストギヤ(28)の回動によって伸長し得る収縮位置規制ストラット(24)、前記アジャストギヤ(28)に係合する送り爪(26a)を有して一対の前記ブレーキシュー(8,9)のうち一方のブレーキシュー(9)の前記ウエブ(14)に回動可能に支持されるアジャストレバー(26)、ならびに前記収縮位置規制ストラット(24)を伸長させる方向に前記アジャストギヤ(28)を回動させる側に前記アジャストレバー(26)を回動付勢するアジャストスプリング(27)で構成されて一対の前記ブレーキシュー(8,9)およびブレーキドラム(7)間の間隙を調整する制動間隙自動調整手段(11)と、前記収縮位置規制ストラット(24)で規制される収縮位置側に一対の前記ブレーキシュー(8,9)を付勢するようにして一対の前記ブレーキシュー(8,9)間に設けられるリターンスプリング(12)とを備えるドラムブレーキ(5)に、一対の前記ブレーキシュー(8,9)のうち他方のブレーキシュー(8)の前記ウエブ(13)に一端部が回動可能に軸支されるとともに前記収縮位置規制ストラット(24)の一端部に係合されるパーキングブレーキレバー(32)が付設され、電動アクチュエータ(36)で牽引されるブレーキケーブル(37)が、該ブレーキケーブル(37)の牽引によって前記一方のブレーキシュー(9)の前記ウエブ(14)に前記収縮位置規制ストラット(24)を押しつけるように前記パーキングブレーキレバー(32)を回動駆動してパーキングブレーキ状態を得ることを可能として前記パーキングブレーキレバー(32)に接続される車両用ブレーキ装置において、前記電動アクチュエータ(36)の作動を制御する制御ユニット(C)が、前記ドラムブレーキ(5)で所定温度以上の制動熱が発生していると判断したときに、前記一方のブレーキシュー(9)が前記ブレーキドラム(7)との間のシュークリアランス(d)未満の範囲で拡張作動する側に前記パーキングブレーキレバー(32)を回動するだけ前記ブレーキケーブル(37)を牽引するように前記電動アクチュエータ(36)を制御することを特徴とする車両用ブレーキ装置。
前記制御ユニット(C)は、車体減速度およびブレーキ頻度に基づいて演算したドラムブレーキ(5)の発生熱量が、予め定めた閾値を超えるのに応じて前記制動熱が前記所定温度以上であると判断することを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでブレーキドラムが熱膨張によって一時的に大径となるのに伴ってブレーキシューとの間に制動間隙が拡がるのに応じて、制動間隙自動調整手段が作動してブレーキシューの縮径位置を外側に変位させると、ブレーキドラムが冷えて元の径に戻ったときには、ブレーキドラムおよびブレーキシュー間の制動間隙が小さくなってオーバーアジャスト状態となり、非制動時にブレーキシューがブレーキドラムに接触して、引きずりが生じる可能性がある。特に電動アクチュエータの作動によってパーキングブレーキ状態が得られるようにしたドラムブレーキでは、前記制動間隙の減少に起因したエラー等の不具合が発生する可能性がある。これに対して上記特許文献1で開示されたものでは、バイメタルや形状記憶合金から成る熱膨張手段の働きによって、所定温度以上では制動間隙自動調整手段の作動を自動的に停止させることでオーバーアジャスト状態となるのを防止するようにしているが、制動間隙自動調整手段の作動を自動的に停止させる温度を変更するにあたっては、熱膨張手段を交換する必要がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、部品の変更を不要としつつオーバーアジャスト状態が生じるのを防止し得るようにした車両用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ホイールシリンダで拡張駆動される一対のブレーキシューのウエブ間に設けられるとともにアジャストギヤの回動によって伸長し得る収縮位置規制ストラット、前記アジャストギヤに係合する送り爪を有して一対の前記ブレーキシューのうち一方のブレーキシューの前記ウエブに回動可能に支持されるアジャストレバー、ならびに前記収縮位置規制ストラットを伸長させる方向に前記アジャストギヤを回動させる側に前記アジャストレバーを回動付勢するアジャストスプリングで構成されて一対の前記ブレーキシューおよびブレーキドラム間の間隙を調整する制動間隙自動調整手段と、前記収縮位置規制ストラットで規制される収縮位置側に一対の前記ブレーキシューを付勢するようにして一対の前記ブレーキシュー間に設けられるリターンスプリングとを備えるドラムブレーキに、一対の前記ブレーキシューのうち他方のブレーキシューの前記ウエブに一端部が回動可能に軸支されるとともに前記収縮位置規制ストラットの一端部に係合されるパーキングブレーキレバーが付設され、電動アクチュエータで牽引されるブレーキケーブルが、該ブレーキケーブルの牽引によって前記一方のブレーキシューの前記ウエブに前記収縮位置規制ストラットを押しつけるように前記パーキングブレーキレバーを回動駆動してパーキングブレーキ状態を得ることを可能として前記パーキングブレーキレバーに接続される車両用ブレーキ装置において、前記電動アクチュエータの作動を制御する制御ユニットが、前記ドラムブレーキで所定温度以上の制動熱が発生していると判断したときに、前記一方のブレーキシューが前記ブレーキドラムとの間のシュークリアランス未満の範囲で拡張作動する側に前記パーキングブレーキレバーを回動するだけ前記ブレーキケーブルを牽引するように前記電動アクチュエータを制御することを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記制御ユニットは、車体減速度およびブレーキ頻度に基づいて演算したドラムブレーキの発生熱量が、予め定めた閾値を超えるのに応じて前記制動熱が前記所定温度以上であると判断することを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の特徴によれば、所定温度以上の制動熱が発生していると制御ユニットが判断したときに、アジャストレバーが支持されている側のブレーキシューがシュークリアランス未満の範囲内で拡張作動する側にパーキングブレーキレバーを回動するだけブレーキケーブルが電動アクチュエータで牽引される。この際、ホイールシリンダが作動することにより、一対のブレーキシューがリターンスプリングのばね力に抗して拡張作動すると、パーキングブレーキレバーが係合したままの収縮位置規制ストラットおよび一方のブレーキシュー間にはわずかな間隙が生じるが、前記収縮位置規制ストラットの長手方向に沿う前記間隙の長さは、アジャストギヤの回動によって該収縮位置規制ストラットを伸長させるのに必要な値よりも小さく、したがって制動間隙自動調整手段がブレーキシューの縮径位置を外側に変位させるように作動することはなく、制動間隙自動調整手段のオーバーアジャスト状態の発生を防止することができる。これにより、引きずりの発生を抑制することができるとともに、制御ユニットで制御される電動アクチュエータの作動によってパーキングブレーキ状態を得る際にエラー等の不具合が発生することを抑制することができる。しかも制動間隙自動調整手段の作動を自動的に停止させる温度を変更する際にも、制御ユニットの制御プログラムを変更すればよいので、部品変更が不要となる。
【0009】
また本発明の第2の特徴によれば、車体減速度およびブレーキ頻度に基づいて、ドラムブレーキの制動熱を容易に判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について、添付の
図1〜
図4を参照しながら説明すると、先ず
図1および
図2において、四輪車両のたとえば左後輪にはドラムブレーキ5が設けられており、このドラムブレーキ5は、固定のバックプレート6と、前記左後輪とともに回転するブレーキドラム7の内周に摺接することを可能として前記バックプレート6内に配置される第1および第2のブレーキシュー8,9と、第1および第2のブレーキシュー8,9が拡張作動する力を発揮するようにして前記バックプレート6の上部に固定されるホイールシリンダ10と、第1および第2のブレーキシュー8,9および前記ブレーキドラム7間の間隙を自動的に調整する制動間隙自動調整手段11と、第1および第2のブレーキシュー8,9間に設けられるリターンスプリング12とを備える。
【0012】
第1および第2のブレーキシュー8,9は、前記ブレーキドラム7の内周に沿うようにして弓形に形成されるウエブ13,14と、そのウエブ13,14の外周に直交するように連設されるリム15,16と、該リム15,16の外周に貼着されるライニング17,18とから成る。
【0013】
前記ホイールシリンダ10が備える一対のピストン19の外端部は、第1および第2のブレーキシュー8,9の上端部で前記ウエブ13,14に対向するように配置される。また前記バックプレート6の下部には、第1および第2のブレーキシュー8,9の拡張、収縮時の支点となるようにしてアンカーブロック20が固設されており、前記ホイールシリンダ10は、ブレーキペダルで操作されるマスタシリンダ(図示せず)の出力液圧によって作動して、前記アンカーブロック20を支点として第1および第2のブレーキシュー8,9を拡張する側に駆動する力を発揮する。
【0014】
第1および第2のブレーキシュー8,9における前記ウエブ13,14の下端部間には、それらのウエブ13,14の下端部を前記アンカーブロック20側に付勢するコイルスプリング21が設けられ、第1および第2のブレーキシュー8,9における前記ウエブ13,14の上端部間には、第1および第2のブレーキシュー8,9を収縮方向に付勢する前記リターンスプリング12が設けられる。
【0015】
前記制動間隙自動調整手段11は、第1および第2のブレーキシュー8,9のウエブ13,14間に設けられるとともにアジャストギヤ28の回動によって伸長し得る収縮位置規制ストラット24と、前記アジャストギヤ28に係合する送り爪26aを有して第1および第2のブレーキシュー8,9のうち一方のブレーキシューである第2のブレーキシュー9の前記ウエブ14に回動可能に支持されるアジャストレバー26と、前記収縮位置規制ストラット24を伸長させる方向に前記アジャストギヤ28を回動させる側に前記アジャストレバー26を回動付勢するアジャストスプリング27とで構成される。
【0016】
前記収縮位置規制ストラット24は、第1および第2のブレーキシュー8,9の収縮位置を規制するものであり、第1および第2のブレーキシュー8,9のうち第1のブレーキシュー8が備える前記ウエブ13の上部に係合する第1係合部29aを有する第1ロッド29と、第2のブレーキシュー9が備えるウエブ14の上部に係合する第2係合部30aを有して第1ロッド29と同軸に配置される第2ロッド30と、第1ロッド29に一端部が軸方向相対移動可能に挿入されるとともに第2ロッド30に他端部が同軸に螺合されるアジャストボルト31とを有しており、前記アジャストギヤ28は、第1および第2ロッド29,30間に配置されて前記アジャストボルト31の外周に形成される。
【0017】
第1のブレーキシュー8における前記ウエブ13の上部には第1係合部29aを係合させる第1係止凹部13aが設けられ、また第2のブレーキシュー9における前記ウエブ14の上部には第2係合部30aを係合させる第2係止凹部14aが設けられる。
【0018】
前記アジャストギヤ28に係合する送り爪26aを有するアジャストレバー26は、第2のブレーキシュー9の前記ウエブ14に支軸25を介して回動可能に支持され、第2のブレーキシュー9の前記ウエブ14および前記アジャストレバー26間に前記アジャストスプリング27が設けられる。しかも前記アジャストスプリング27のばね力は、前記リターンスプリング12のばね力よりも小さく設定される。
【0019】
このような制動間隙自動調整手段11によれば、第1および第2のブレーキシュー8,9が前記ホイールシリンダ10の作動によって拡張作動する際に前記ライニング17,18の摩耗に起因して一定値以上拡張した場合には、前記アジャストスプリング27のばね力によって前記アジャストレバー26が前記支軸25の軸線まわりに回動し、それによって前記アジャストギヤ28が回動するのに応じて前記収縮位置規制ストラット24の有効長さが増加補正される。
【0020】
ところでドラムブレーキ5には、第1および第2のブレーキシュー8,9のうち他方のブレーキシューである第1のブレーキシュー8における前記ウエブ13に一端部が回動可能に軸支されるとともに前記収縮位置規制ストラット24の一端部に係合されるパーキングブレーキレバー32が付設される。
【0021】
図3を併せて参照して、前記パーキングブレーキレバー32は、第1のブレーキシュ−8における前記ウエブ13に正面視で一部が重なるようにして上下に延びるものであり、このパーキングブレーキレバー32の上端部には、第1のブレーキシュ−8の前記ウエブ13の上部にピン33を介して連結される連結孔34が設けられ、また該パーキングブレーキレバー32の上部には、前記収縮位置規制ストラット24が有する第1係合部29aを係合する第3係止凹部32aが設けられる。
【0022】
車両のパーキング時には、前記パーキングブレーキレバー32が
図1の反時計方向に回動、駆動されるものであり、このパーキングブレーキレバー32の回動によって、第2のブレーキシュー9に、当該ブレーキシュー9が有する前記ライニング18を前記ブレーキドラム7の内周に圧接させる方向の力が前記収縮位置規制ストラット24を介して作用する。さらに前記パーキングブレーキレバー32が
図1の反時計方向に続けて回動、駆動されると、前記パーキングブレーキレバー32が前記収縮位置規制ストラット24の第1係合部29aとの係合点を支点として回動し、今度は、前記ピン33を介して第1のブレーキシュー8が拡張作動し、第1のブレーキシュー8の前記ライニング17が前記ブレーキドラム7の内周に圧接することになる。すなわち第1および第2のブレーキシュー8,9の前記ライニング17,18が前記ブレーキドラム7の内周に圧接してパーキングブレーキ状態が得られることになる。
【0023】
図4を併せて参照して、前記パーキングブレーキレバー32は、電動アクチュエータ36が発揮する動力で回動駆動されるものであり、前記電動アクチュエータ36で牽引されるブレーキケーブル37が、該ブレーキケーブル37の牽引によって第2のブレーキシュー9の前記ウエブ14に前記収縮位置規制ストラット24を押しつけるように前記パーキングブレーキレバー32を回動駆動してパーキングブレーキ状態を得ることを可能として、前記パーキングブレーキレバー32の下部に接続される。
【0024】
前記電動アクチュエータ36は、回転軸線を上下方向としてケーシング38に取り付けられる電動モータ40と、該電動モータ40の回転動力を直線方向の力に変換するようにして前記ケーシング38に内蔵される動力変換機構(図示せず)とを備える。前記ケーシング38は、前記ブレーキケーブル37を引き出すケーブル出口39を先端部に有する筒部38aを有するものであり、前記ケーブル出口39を前記バックプレート6内に臨ませるようにして前記バックプレート6の外面に取付けられる。
【0025】
前記動力変換機構に連なる前記ブレーキケーブル37は、前記ケーブル出口39から前記バックプレート6内に引き出され、このブレーキケーブル37の先端部が、前記パーキングブレーキレバー32に接続される。しかも前記ケーシング38および前記パーキングブレーキレバー32間のブレーキケーブル37のうち前記ケーシング38側の一部が、前記ケーシング38および前記バックプレート6に対する固定位置に長手方向両端部が規制されるようにして前記バックプレート6内に配置されるアウターケーブル41で囲繞され、前記ブレーキケーブル37のうち前記アウターケーブル41および前記パーキングブレーキレバー32間の部分が、前記バックプレート6内に配置される蛇腹状のブーツ42で覆われる。前記アウターケーブル41は、弾発性を有しつつ、曲げ方向に受難性があり、前記ブレーキケーブル37の牽引方向44への圧縮荷重に対して剛性を有する材料によって円筒状に形成される。
【0026】
しかも前記ブレーキケーブル37の先端部の前記パーキングブレーキレバー32への接続部43および前記ケーブル出口39が、前記ブレーキケーブル37による前記パーキングブレーキレバー32の牽引方向44に直交するように配置されて前記バックプレート6の中心を通る一平面PLに関して対称となる位置に配置される。
【0027】
前記アウターケーブル41の一端部は、前記ケーシング38における前記筒部38aの先端部に螺合される雄ねじ部45aを有する第1ケーブルエンドキャップ45にたとえばかしめによって固定され、前記アウターケーブル41の他端部は、第2ケーブルエンドキャップ46の一端部にたとえばかしめによって固定され、第1および第2ケーブルエンドキャップ45,46は、前記ブレーキケーブル37を挿通させるようにして円筒状に形成される。
【0028】
前記アウターケーブル41および前記ブーツ42を接続する接続具すなわち第2ケーブルエンドキャップ46は、前記バックプレート6に設けられるアンカーブロック20で支持されるものであり、第2ケーブルエンドキャップ46を囲むようにして前記アンカーブロック20に一体に形成される支持部20aで第2ケーブルエンドキャップ46が支持される。このようにして前記アウターケーブル41の長手方向一端部がケーシング38の筒部38aに螺合される第1ケーブルエンドキャップ45に固定され、前記アウターケーブル41の長手方向他端部がバックプレート6のアンカーブロック20で支持される第2ケーブルエンドキャップ46に固定され、前記アウターケーブル41の両端部が前記ケーシング38および前記バックプレート6に対して固定位置に規制されることになる。
【0029】
しかも前記ケーブル出口39の中心軸線CLは、前記ブレーキケーブル37による前記パーキングブレーキレバー32の牽引方向44とは異なる方向に延びるように設定されており、前記アウターケーブル41は、前記ケーブル出口39および前記アンカーブロック20間で湾曲するように配設される。
【0030】
前記ブレーキケーブル37の先端部は、前記パーキングブレーキレバー32の下端部に係合する第3ケーブルエンドキャップ47にかしめ固定されており、前記ブーツ42の一端部は、前記第2ケーブルエンドキャップ46の他端部に嵌合され、前記ブーツ42の他端部は第3ケーブルエンドキャップ47に嵌合される。
【0031】
第3ケーブルエンドキャップ47が前記パーキングブレーキレバー32の下部に直接、係合することで前記ブレーキケーブル37の先端部の前記パーキングブレーキレバー32への接続部43が構成される。
【0032】
ところで前記電動アクチュエータ36における前記電動モータ40の作動は、制御ユニットCで制御されるものであり、この制御ユニットCは、前記ドラムブレーキ5で所定温度以上の制動熱が発生していると判断したときに、第2のブレーキシュー9が前記ブレーキドラム7との間のシュークリアランスd未満の範囲で拡張作動する側に前記パーキングブレーキレバー32を回動するだけ前記ブレーキケーブル37を牽引するように前記電動アクチュエータ36を制御する。
【0033】
しかも前記制御ユニットCは、車体減速度およびブレーキ頻度に基づいて演算したドラムブレーキ5の発生熱量が、予め定めた閾値を超えるのに応じて前記制動熱が前記所定温度以上であると判断するものであり、前記車体減速度は、車両に搭載される加速度センサ49で読み取ることが可能であり、また前記ブレーキ頻度は、前記ホイールシリンダ10のブレーキ液圧を検出する液圧センサ50で読み取ることが可能である。なお車輪速センサ(図示せず)の検出値から車体減速度を演算することも可能であり、またブレーキランプスイッチ(図示せず)からブレーキ頻度を得ることや、前記車輪速センサの検出値から車輪減速度を演算して液圧推定することでブレーキ頻度を得ることも可能である。
【0034】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、パーキングブレーキレバー32の牽引作動に応じてパーキングブレーキ状態となるドラムブレーキ5のバックプレート6に取付けられる電動アクチュエータ36のケーシング38からブレーキケーブル37が引き出され、そのブレーキケーブル37の先端部が、前記パーキングブレーキレバー32に接続され、前記ケーシング38および前記パーキングブレーキレバー32間のブレーキケーブル37のうち前記ケーシング38側の一部が、円筒状のアウターケーブル41で囲繞され、前記ブレーキケーブル37のうち前記アウターケーブル41および前記パーキングブレーキレバー32間の部分が、蛇腹状のブーツ42で覆われるので、ケーシング38内への水の浸入を防止することができる。
【0035】
しかも弾発性を有しつつ、曲げ方向には柔軟性があり、前記牽引方向44への圧縮荷重に対して剛性を有する材料から成るアウターケーブル41の長手方向両端部が、前記ケーシング38および前記バックプレート6に対する固定位置に規制されるので、ブレーキケーブル37を緊張させる側の弾発力をアウターケーブル41からブレーキケーブル37に付与することができ、ブレーキケーブル37の不所望な弛みが生じることを抑制して、無効ストロークを減らすことができる。
【0036】
また前記ケーシング38が、前記ブレーキケーブル37を引き出すケーブル出口39を前記バックプレート6内に臨ませて前記バックプレート6の外面に取付けられ、前記アウターケーブル41および前記ブーツ42が前記バックプレート6内に収容されるので、ケーシング38内への水の浸入をより確実に防止することができる。
【0037】
また前記アウターケーブル41および前記ブーツ42を接続する第2ケーブルエンドキャップ46が、前記バックプレート6に設けられるアンカーブロック20で支持されるので、第1および第2のブレーキシュー8,9の回動支点とすることで強固に構成されるアンカーブロック20で前記アウターケーブル41および前記ブーツ42を接続する第2ケーブルエンドキャップ46を支持することにより、電動アクチュエータ36の作動によってバックプレート6に歪みが生じることを防止することができる。
【0038】
また前記ブレーキケーブル37の先端部の前記パーキングブレーキレバー32への接続部43および前記ケーブル出口39が、前記ブレーキケーブル37による前記ブレーキレバーの牽引方向44に直交するように配置されて前記バックプレート6の中心を通る一平面PLに関して対称となる位置に配置されるので、ブレーキケーブル37を極力曲げることなく配索して無効ストロークの低減により寄与することができる。
【0039】
さらに前記ケーブル出口39の中心軸線CLが、前記牽引方向44とは異なる方向に延びるように設定されるので、バックプレート6に対するケーシング38の取付け姿勢の自由度を高めることができる。
【0040】
さらにアジャストギヤ28の回動によって伸長し得る収縮位置規制ストラット24、前記アジャストギヤ28に係合する送り爪26aを有して第2のブレーキシュー9のウエブ14に回動可能に支持されるアジャストレバー26、ならびに収縮位置規制ストラット24を伸長させる方向に前記アジャストギヤ28を回動させる側に前記アジャストレバー26を回動付勢するアジャストスプリング27で構成される制動間隙自動調整手段11と、前記収縮位置規制ストラット24で規制される収縮位置側に第1および第2のブレーキシュー8,9を付勢するようにして第1および第2のブレーキシュー8,9間に設けられるリターンスプリング12とを備えるドラムブレーキ5に、第1のブレーキシュー8のウエブ13に一端部が回動可能に軸支されるとともに前記収縮位置規制ストラット24の一端部に係合されるパーキングブレーキレバー32が付設され、電動アクチュエータ36で牽引されるブレーキケーブル37が、該ブレーキケーブル37の牽引によって第2のブレーキシュー9の前記ウエブ14に前記収縮位置規制ストラット24を押しつけるように前記パーキングブレーキレバー32を回動駆動してパーキングブレーキ状態を得ることを可能としてパーキングブレーキレバー32に接続され、電動アクチュエータ36の作動を制御する制御ユニットCが、前記ドラムブレーキ5で所定温度以上の制動熱が発生していると判断したときに、第2のブレーキシュー9が前記ブレーキドラム7との間のシュークリアランスd未満の範囲で拡張作動する側に前記パーキングブレーキレバー32を回動するだけ前記ブレーキケーブル37を牽引するように前記電動アクチュエータ36を制御する。
【0041】
したがってホイールシリンダ10の作動によって一対のブレーキシュー8,9がリターンスプリング12のばね力に抗して拡張作動すると、パーキングブレーキレバー32が係合したままの収縮位置規制ストラット24および第2のブレーキシュー9間にはわずかな間隙が生じるが、前記収縮位置規制ストラット24の長手方向に沿う前記間隙の長さは、アジャストギヤ28の回動によって該収縮位置規制ストラット24を伸長させるのに必要な値よりも小さく、したがって制動間隙自動調整手段11がブレーキシュー8,9の縮径位置を外側に変位させるように作動することはなく、制動間隙自動調整手段11のオーバーアジャスト状態の発生を防止することができる。これにより、引きずりの発生を抑制することができるとともに、制御ユニットCで制御される電動アクチュエータ36の作動によってパーキングブレーキ状態を得る際にエラー等の不具合が発生することを抑制することができる。しかも制動間隙自動調整手段11の作動を自動的に停止させる温度を変更する際にも、制御ユニットCの制御プログラムを変更すればよいので、部品変更が不要となる。
【0042】
また前記制御ユニットCは、車体減速度およびブレーキ頻度に基づいて演算したドラムブレーキ5の発生熱量が、予め定めた閾値を超えるのに応じて前記制動熱が前記所定温度以上であると判断するので、車体減速度およびブレーキ頻度に基づいて、ドラムブレーキ5の制動熱を容易に判定することができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。