特許第6472289号(P6472289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6472289レジスト下層膜形成組成物および半導体素子の作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472289
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】レジスト下層膜形成組成物および半導体素子の作製方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20190207BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   G03F7/11 503
   H01L21/30 573
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-58751(P2015-58751)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2015-194748(P2015-194748A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年9月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-66935(P2014-66935)
(32)【優先日】2014年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000180302
【氏名又は名称】四国化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】溝部 昇
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−352107(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公開第01932305(DE,A)
【文献】 特開昭56−122313(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0167212(US,A1)
【文献】 特開2016−065199(JP,A)
【文献】 特開2016−061939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)で示されるグリコールウリル化合物または化学式(I)で示されるグリコールウリル化合物と酸無水物の反応物を含有し、且つ、架橋剤および溶剤を含有することを特徴とするリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【化1】
(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、低級アルキル基またはフェニル基を表し、R、RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはグリシジル基を表す。)
【請求項2】
架橋触媒を更に含有することを特徴とする請求項1に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のレジスト下層膜形成組成物を用いて、基板上にレジスト下層膜を形成した後、レジストを被覆し、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、極端紫外線および電子線から選択されるエネルギー線の照射および現像により、レジストパターンを形成し、その後ドライエッチングすることを特徴とする半導体素子の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト下層膜形成組成物および半導体素子の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化に伴い、回路パターンを形成するリソグラフィー工程において、レジスト線幅の微細化が求められている。レジスト線幅の微細化には、レジストパターン倒壊を抑制するために、レジスト膜厚/レジスト線幅の比(アスペクト比)を小さく保持せねばならず、レジスト線幅の微細化と共にレジスト膜厚の薄膜化が必要となる。しかしながら、レジスト膜厚を薄膜化することにより、ドライエッチング工程において、エッチングマスクとしての機能が低下する虞がある。
レジストパターン倒壊を抑制し、且つ所望の断面形状を有するレジストパターンを形成するために、レジスト下層膜(反射防止膜)が設けられる。このレジスト下層膜には、レジストのドライエッチングマスク機能を損なわないように、高速なドライエッチングが求められている。
【0003】
レジスト下層膜には、ドライエッチング速度を速くするために、レジスト下層膜形成組成物の構成成分として酸素原子、窒素原子、ハロゲン原子などのヘテロ原子含有率が高い化合物を使用している。また、レジスト下層膜形成組成物の固形分としては、分子量の大きいポリマーを用いる場合に比べて、分子量の小さいオリゴマーを用いる場合の方が、炭素炭素結合(−C−C−)の数が少ないので、ドライエッチング速度が速くなることが期待される。
【0004】
しかしながら、オリゴマーを含有するレジスト下層膜形成組成物を塗布し、焼成を行う膜形成工程において、三次元架橋ネットワークの形成が不十分であったり、構成成分が揮発することにより、十分な架橋膜が得られず、レジスト膜とのインターミキシングを惹起する虞がある。
【0005】
このような問題に対して、エポキシ基を有するイソシアヌレート化合物と、エポキシ基と反応するモノマーとの反応生成物を含有する、反射防止膜形成組成物やレジスト下層膜形成組成物が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3804792号公報
【特許文献2】特許第4171920号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第1939688号明細書
【特許文献4】国際公開第2009/069197号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、レジスト膜とのインターミキシングが生じず、優れたドライエッチング速度を有するレジスト下層膜が形成できるリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、エポキシ基を有するグリコールウリル化合物または該グリコールウリル化合物と酸無水物の反応物を含有するレジスト下層膜形成組成物とすることにより、所期の目的を達成することを見出し、本発明を完遂させるに至った。
【0009】
即ち、第1の発明は、化学式(I)で示されるグリコールウリル化合物または化学式(I)で示されるグリコールウリル化合物と酸無水物の反応物を含有し、且つ、架橋剤および溶剤を含有することを特徴とするリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物である。
【0010】
【化1】
(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、低級アルキル基またはフェニル基を表し、R、RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはグリシジル基を表す。)
【0011】
第2の発明は、架橋触媒を更に含有することを特徴とする第1の発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物である。
第3の発明は、第1の発明または第2の発明のレジスト下層膜形成組成物を用いて、基板上にレジスト下層膜を形成した後、レジストを被覆し、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、極端紫外線および電子線から選択されるエネルギー線の照射および現像により、レジストパターンを形成し、その後ドライエッチングすることを特徴とする半導体素子の作製方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、良好な熱硬化性を発現するため、レジスト膜とのインターミキシングが生じないレジスト下層膜を形成できる。
また、該レジスト下層膜形成組成物は、優れたドライエッチング速度を有するレジスト下層膜を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、前記の化学式(I)で示されるグリコールウリル化合物または化学式(I)で示されるグリコールウリル化合物と酸無水物の反応物を含有し、且つ、架橋剤および溶剤を含有する。
【0014】
本発明の実施において使用する化学式(I)で示されるグリコールウリル化合物としては、
1−グリシジルグリコールウリル、
1,3−ジグリシジルグリコールウリル、
1,4−ジグリシジルグリコールウリル、
1,6−ジグリシジルグリコールウリル、
1,3,4−トリグリシジルグリコールウリル、
1,3,4,6−テトラグリシジルグリコールウリル、
1−グリシジル−3a−メチルグリコールウリル、
1,3−ジグリシジル−3a−メチルグリコールウリル、
1,4−ジグリシジル−3a−メチルグリコールウリル、
1,6−ジグリシジル−3a−メチルグリコールウリル、
1,3,4−トリグリシジル−3a−メチルグリコールウリル、
1,3,4,6−テトラグリシジル−3a−メチルグリコールウリル、
1−グリシジル−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,3−ジグリシジル−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,4−ジグリシジル−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,6−ジグリシジル−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,3,4−トリグリシジル−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1,3,4,6−テトラグリシジル−3a,6a−ジメチルグリコールウリル、
1−グリシジル−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,3−ジグリシジル−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,4−ジグリシジル−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,6−ジグリシジル−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,3,4−トリグリシジル−3a,6a−ジフェニルグリコールウリル、
1,3,4,6−テトラグリシジル−3a,6a−ジフェニルグリコールウリルなどが挙げられる。
これらのグリコールウリル化合物は、単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
化学式(I)で示されるグリコールウリル化合物と酸無水物を反応させる場合、必要に応じて触媒、ラジカル重合禁止剤などを使用することができる。
【0016】
本発明の実施において使用する酸無水物としては、例えば、コハク酸無水物、無水マレイン酸、テトラブロモフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、フタル酸無水物、(+)−ジアセチル−L−酒石酸無水物、酒石酸無水物などが挙げられる。
【0017】
前記の触媒としては、第4級アンモニウム塩および第4級ホスホニウム塩が挙げられ、公知の化合物を使用できるが、例えば、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイドを好ましく使用することができる。
【0018】
グリコールウリル化合物と酸無水物との反応時間は、使用する化合物およびそれらの濃度に依存するが、1〜24時間の範囲が好ましい。
【0019】
本発明のレジスト下層膜形成組成物において、前記グリコールウリル化合物または該グリコールウリル化合物と酸無水物の反応物の含有割合は、0.5〜70質量%であることが好ましい。
【0020】
本発明の実施において使用する架橋剤としては、1,3,4,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(メトキシメチル)尿素などが挙げられる。
これらの架橋剤は、単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
本発明のレジスト下層膜形成組成物において、架橋剤の含有割合は、前記グリコールウリル化合物または該グリコールウリル化合物と酸無水物の反応物に対して、1〜50質量%であることが好ましい。
【0022】
本発明の実施において使用する溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
これらの溶剤は、単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本発明の実施において、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸などのスルホン酸化合物や、サリチル酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸などのカルボン酸化合物等を、架橋反応を促進する架橋触媒として使用することができる。
【0024】
本発明のレジスト下層膜形成組成物において、架橋触媒の含有割合は、架橋剤に対して、0.1〜20質量%であることが好ましい。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において採用した評価試験は、以下のとおりである。
【0026】
[耐溶剤性試験]
レジスト下層膜形成組成物をスピンコーターでシリコンウェハ上に塗布し、ホットプレート上で200℃/60秒間加熱し、塗布膜を形成した。この塗布膜の膜厚(初期膜厚)を、光干渉式膜厚計(チノー社製、「IRMS8599B」)を用いて測定した。
次に、この塗布膜が形成されたシリコンウェハを溶剤(東京応化工業社製、「OK73シンナー」)に30秒間浸漬させた後、スピンコーターでスピンドライし、続いてホットプレート上で100℃/30秒間加熱して、溶剤を除去した。溶剤除去後の塗布膜の膜厚(浸漬後膜厚)を測定し、残膜率として初期膜厚に対する浸漬後膜厚の割合を算出した。
【0027】
[エッチングレート試験]
レジスト下層膜形成組成物をスピンコーターでシリコンウェハ上に塗布し、ホットプレート上で200℃/60秒間加熱した。この操作を3回繰り返してレジスト下層膜を形成した後、ドライエッチング装置(芝浦メカトロニクス社製、「CDE−80N」)を使用して、CFガス(ドライエッチングガス)に対するドライエッチング速度を測定した。
また、レジスト溶液(住友化学社製、「PAR710」)をシリコンウェハ上に塗布し、前述のレジスト下層膜の場合と同様にしてレジスト膜を形成した後、ドライエッチング装置(芝浦メカトロニクス社製、「CDE−80N」)を使用して、CFガスに対するドライエッチング速度を測定した。
レジスト膜のドライエッチング速度に対するレジスト下層膜のドライエッチング速度の比(ドライエッチング速度の選択比)を算出した。
【0028】
〔合成例1〕
1,3,4,6−テトラグリシジルグリコールウリル(特願2013−190678号明細書に記載の方法に従って合成した)2.00g、テトラブロモフタル酸無水物5.07g、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド0.12gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル28.76gを混合し、撹拌しながら12時間加熱還流して、反応生成物を含む溶液を得た。
この溶液に陽イオン交換樹脂(オルガノ社製、「アンバーリストA21」)10.00g、陰イオン交換樹脂(オルガノ社製、「アンバーリスト15JWET」)10.00gを加えて、室温で8時間イオン交換処理をした。得られた化合物の分子量分布をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)分析により測定したところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量2100であった。
【0029】
〔合成例2〕
1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌル酸(日産化学工業社製、「TEPIC−SS」)2.00g、テトラブロモフタル酸無水物8.33g、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド0.09gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル41.68gを混合し、撹拌しながら12時間加熱還流して、反応生成物を含む溶液を得た。
この溶液に陽イオン交換樹脂(オルガノ社製、「アンバーリストA21」)10.00g、陰イオン交換樹脂(オルガノ社製、「アンバーリスト15JWET」)10.00gを加えて、室温で8時間イオン交換処理をした。得られた化合物の分子量分布をGPC分析により測定したところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量700であった。
【0030】
[実施例1]
合成例1で得た溶液10.00g、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(東京化成工業社製)0.49g、p−トルエンスルホン酸0.05g、プロピレングリコールモノメチルエーテル8.05gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート11.05gを混合し、これらが均一に溶解した液状のレジスト下層膜形成組成物を調製した。
得られたレジスト下層膜形成組成物について、耐溶剤性試験およびエッチングレート試験を行った。得られた試験結果は表1に示したとおりであった。
【0031】
[比較例1]
合成例2で得た溶液10.00g、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(東京化成工業社製)0.62g、p−トルエンスルホン酸0.09g、プロピレングリコールモノメチルエーテル20.05gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8.32gを混合し、これらが均一に溶解した液状のレジスト下層膜形成組成物を調製した。
得られたレジスト下層膜形成組成物について、耐溶剤性試験およびエッチングレート試験を行った。得られた試験結果は表1に示したとおりであった。
【0032】
【表1】
【0033】
表1の結果より、本発明のレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜は、良好な耐溶剤性を示すことから、レジスト膜とのインターミキシングが生じないような優れた耐溶剤性を有することが認められる。
また、本発明のレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜は、ドライエッチング速度の選択比が大きく、優れたドライエッチング選択性を有することが認められる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のとおり、本発明によれば、レジスト膜とのインターミキシングを抑制し、且つ、ドライエッチング選択性に優れたレジスト下層膜を形成することができる。