(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
グリップを兼ねる本体ケース(1)とかみそりヘッド(2)を有し、かみそりヘッド(2)に内刃(7)と、内刃(7)に外接する外刃(8)が設けてある電気かみそりであって、
外刃(8)が外刃枠(61)に固定されており、
外刃(8)が外刃枠(61)を介して外刃ホルダー(31)で上下動可能に支持されており、
外刃枠(61)の両側端と外刃ホルダー(31)の間に、外刃(8)を内刃(7)に密着させる外刃ばね(62)が配置してあり、
外刃ホルダー(31)の内面両側と外刃枠(61)の両側に設けた上下対向状のばね受体(194・196)の間に、外刃ばね(62)が配置されており、
外刃枠(61)の両側に左右方向へ弾性変形可能な門形のストッパー腕(192)が設けられており、
ストッパー腕(192)の遊端に外刃ホルダー(31)のばね受体(196)で受止められるストッパー(195)が設けてあることを特徴とする電気かみそり。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施例)
図1ないし
図19は、本発明に係る電気かみそりの実施例を示す。本発明における前後、左右、上下とは、
図2および
図3に示す交差矢印と、矢印の近傍の前後・左右・上下の表記に従う。
図2、
図3において電気かみそりは、グリップを兼ねる本体ケース1と、本体ケース1で前後傾動可能に支持したかみそりヘッド2を備えており、水洗い可能に構成してある。本体ケース1の内部には、モーター3、2次電池4、および制御基板5などの電装品が配置してある。制御基板5には、モーター3への通電状態を切換えるスイッチ6や、電池残量を発光表示するLEDなどが実装してある。かみそりヘッド2には水平軸(横軸)まわりに回転駆動されるロータリー式の内刃(切断刃)7と、内刃7に外接する逆U字状の外刃8が配置してある。
図7に示すように内刃7は、内刃軸7aと、内刃軸7aに固定される5個の円板7bと、円板7bの周面に固定される網目状の切刃7cで構成してある。交換を容易化するために、内刃7は内刃ホルダー9で片持ち支持してあり、内刃軸7aを後述する従動プーリー111に組んだ状態において両持ち支持される。
【0016】
(本体ケースの概略構造)
図4において本体ケース1は、前後に分割された前ケース13および後ケース14と、前ケース13の前面を覆うグリップケース15で構成してあり、前後ケース13・14の分割線に沿ってグリップケース15が前ケース13の表面を覆っている。前ケース13は、上下に分割した前上ケース16と、前下ケース17で構成してあり、後ケース14に対してビス18で固定してある。グリップケース15は、その上部および上下中途部が前ケース13に係合された状態で、ケース下端が後ケース14の側からねじ込んだビス19で後ケース14に固定してある。グリップケース15の下部には上部および下部が尖った舟形のスイッチパネル21が配置されて、その上端寄りに先のスイッチ6を切換え操作するスイッチボタン22が配置してある。本体ケース1の後面側には、きわ剃り刃23と、きわ剃り刃23を駆動位置へ押し上げ操作するスライドノブ24が設けてある。
【0017】
(かみそりヘッドの概略構造)
図7においてかみそりヘッド2は、ヘッドブロック28と、同ブロック28の左右に固定したサイドフレーム29・30と、内刃7および外刃8と、ヘッドブロック28に対して着脱される内刃ホルダー9と、サイドフレーム29・30に着脱される外刃ホルダー31などで構成してある。
図8に示すようにヘッドブロック28は、角皿状の光源ホルダー33と、光源ホルダー33の上面に配置した金属板製の補強プレート34と、補強プレート34の上面を覆う上部枠35と、光源ホルダー33の内部に収容される光源基板36および導光体37と、光源基板36に実装した3個の発光源(LED)38と、光源用パッキン50などで構成する。3個の発光源38は、電気かみそりの使用時に可視光を照射して、内刃7や外刃8にコーティングした可視光応答型の光触媒を励起させることにより、光触媒の強い酸化還元作用によって有機物を分解し、有機物の腐敗に伴う異臭の発生を防止できる。補強プレート34には、発光源38から照射された光の通過を許す透光窓39が、各発光源38に対応して3個設けてある。
【0018】
図8に示すように、導光体37は透明なプラスチック材(ポリプロピレン)で平板状に形成してあり、その上面の周縁に沿って補強プレート34の下面を支持するスペーサー突起43がリブ状に形成してある。このように、スペーサー突起43を設けることにより、補強プレート34と導光体37の間に、毛屑や皮脂を洗い流すための排出路44を形成して、導光体37の上面に付着した毛屑や皮脂を水洗い洗浄できるようにしている。導光体37は、その内部に入射した可視光を内部反射作用で屈折させて、毛屑や皮脂に覆われていない導光体37の表面から毛屑室へ光を放射する。
【0019】
光源ホルダー33と上部枠35は、スモーク調の半透明(透明材)のポリプロピレンで形成してある。そのため、発光源38から照射された光の一部は、上部枠35を介して毛屑室へ照射されるので、透光窓39を通過した光とともに毛屑室R内を明るく照らすことができる。従って、光触媒10による酸化還元作用を活性化してより効果的に有機物を分解できる。また、毛屑室に放射された光は外刃8の刃穴から漏れ出て筋状の光となる。さらに、光源ホルダー33の前面は、後述するクリーニング空間Uに露出しているので、発光源38から照射された光の一部は後述する水ガイド面134から放射されて、クリーニング空間Uを明るく照らすことができる。クリーニング空間Uを照らす光は、半透明の光源ホルダー33から放射される柔らかで半ばぼんやりとした光となる。このように、使用時におけるかみそりヘッド2からは、筋状の光とぼんやりとした光が放射されるので、幻想的な雰囲気を醸し出して電気かみそりを興趣に富むものとすることができる。
【0020】
補強プレート34はヘッドブロック28の構造強度を増強し、光源ホルダー33と導光体37のひずみや変形を矯正するために設けてある。補強プレート34を含むヘッドブロック28で左右一対のサイドフレーム29・30を強固に支持することにより、サイドフレーム29・30の構造強度を増強できる。また、サイドフレーム29・30の構造強度を増強することにより、内刃ホルダー9と右側のサイドフレーム30で支持される内刃7の回転を円滑化できる。
図7に示すように、上部枠35および補強プレート34の側端は、ビス49で光源ホルダー33に締結固定する。これに伴い、導光体37がその下面に配置した光源用パッキン50に密着して、光源ホルダー33の内部が封止される。光源基板36はビス51で導光体37の下面側に締結固定する(
図6参照)。
【0021】
図9に示すように、左右のサイドフレーム29・30は、それぞれ光源ホルダー33の左右側面にビス52で締結固定されるフレーム枠29a・30aと、同枠の外側面を覆う枠カバー29b・30bで中空ケース状に構成してある。枠カバー29b・30bは、ビス53でフレーム枠29a・30aに固定する(
図12参照)。サイドフレーム29・30を光源ホルダー33に固定した状態では、フレーム枠29a・30aの下側が光源ホルダー33より下方に突出している。これにより、ヘッドブロック28とサイドフレーム29・30の3者で、本体ケース1の上部を左右から挟む門型の連結凹部54を形成している(
図7参照)。
【0022】
左右のサイドフレーム29・30の対向面には、後述する回動軸55と連結される軸受部56が形成してある。
図9に向かって右側のサイドフレーム30は、その上半部分が光源ホルダー33より上方に突出しており、この突出部分の上部に従動プーリー111を回転自在に支持するための軸受体(ボス)57が装着してある。軸受体57はポリアセタール樹脂で形成してある。サイドフレーム29・30には、外刃ホルダー31をロック保持するロック爪58とロックばね59が組み付けてある。ロック爪58は、外刃ホルダー31の側壁内面に設けた係合凹部60(
図7参照)と係合する向きにロックばね59で付勢してある。外刃8の前後縁を外刃枠61の前後面に固定してあり、外刃枠61を圧縮ばねからなる外刃ばね62で押し下げ付勢することにより、外刃8を上下フロート(上下動)可能な状態で内刃7に密着させている。その詳細は後述する。
【0023】
(首振り構造)
かみそりヘッド2は、本体ケース1の側に設けた回動軸55を中心にして前後方向へ傾動可能に支持してあり、本体ケース1とかみそりヘッド2の間に配置した復帰ばね65で傾動待機位置(
図6に示す状態)へ向かって復帰付勢してある。回動軸55の中心軸は正面から見て水平になっており、かみそりヘッド2が傾動待機位置にあるとき、回動軸55は、その軸端と正対する向き(側面)から見るときのかみそりヘッド2のヘッド中心軸P1に対して後側へ偏寄配置してある。また、かみそりヘッド2のヘッド中心軸P1は、回動軸55の軸端と正対する向きから見るときの本体ケース1のグリップ中心軸P2に対して前側へ傾斜している。
【0024】
復帰ばね65は捩じりコイルばねからなり、ばねホルダー66に装着した状態で、前上ケース16にビス67で固定してある。復帰ばね65をばねホルダー66に組付けた状態では、ばね腕68の上部がばねホルダー66の上方に突出し、光源ホルダー33の下面中央に突設したばね受座69に接当して、かみそりヘッド2の全体を
図6において時計回転方向へ復帰付勢する。このように、回動軸55がかみそりヘッド2の下側に配置してあると、かみそりヘッド2の切断刃面から回動軸55の中心までの距離を大きくできるので、その分だけかみそりヘッド2に作用する傾動モーメントを大きくできる。従って、かみそりヘッド2を軽快に傾動させて、切断刃面を肌面の変化に応答よく追随させることができ、ひげ切断を効果的に行うことができる。
【0025】
サイドフレーム29・30に設けた軸受部56を回動軸55に連結することにより、かみそりヘッド2は前後傾動できるが、この傾動範囲を規定するために回動軸55と軸受部56の嵌合面に傾動規制構造を設けている。詳しくは、
図9に示すように、回動軸55の周面に角リブ状の規制突起72を設け、軸受部56にサイドフレーム29・30の傾動範囲を規定する規制溝73を設けている。かみそりヘッド2が前側へ傾動するときサイドフレーム29・30は同行傾動するが、規制溝73の溝端が規制突起72に接当したら、それ以上傾動することはできない。因みに、かみそりヘッド2の傾動角度は15度である。以上のように傾動規制構造を設けると、かみそりヘッド2が過剰に傾動するのを規制できる。また、かみそりヘッド2の傾動範囲が傾動規制構造によって規定されるので、復帰ばね65に過剰な力が作用することもなく、かみそりヘッド2を常に適正に傾動待機位置へ復帰操作できる。
【0026】
(内刃の駆動構造)
上記のように、首振り可能に支持したかみそりヘッド2の内刃7を回転駆動するために、本体ケース1の上部から内刃軸7aにわたって内刃駆動構造を配置している。内刃駆動構造は、本体ケース1の内部に設けた前段駆動部T1と、前段駆動部T1の回転動力を内刃軸7aに伝動する次段駆動部T2で構成する。
【0027】
(前段駆動部の構造)
図10において、前段駆動部T1は、モーター3と、モーター3を支持するモーターホルダー76と、モーターホルダー76の左右に固定される一対の駆動部フレーム77と、モーターホルダー76および駆動部フレーム77に組付けたギヤトレインなどで構成する。モーターホルダー76の左右両側には、位置決めピン78を備えた連結座79が形成してあり、駆動部フレーム77を連結座79に接当して2個のビス80で締結することにより、駆動部フレーム77をモーターホルダー76と一体化している。固定状態の駆動部フレーム77はその大半がモーターホルダー76より上方へ突出している。駆動部フレーム77の全体の構造強度を増強し、さらに回動軸55の構造強度を向上するために、駆動部フレーム77は、金属製(ステンレス板材)のフレームベース81と、プラスチック成形品からなるフレーム枠82を一体化して形成してあり、フレーム枠82の成形時にフレームベース81をインサート固定している。また、フレーム枠82の外側面の上部に、回動軸55が一体に形成してある。
【0028】
モーター3を水密状に封止するために、
図10に示すように、モーターホルダー76の上部に出力軸パッキン(図示していない)を装着し、モーターホルダー76の下部に有底筒状のモーターパッキン88を装着している。モーターホルダー76の左右側面には締結座89が設けてあり、この締結座89に挿通したビス18で、モーターホルダー76を前上ケース16と共に後ケース14に締結固定している。
【0029】
ギヤトレインは、モーター動力を減速する減速ギヤ機構として構成されており、
図10に示すように6個のギヤ92〜97と、水平の第1軸98および第2軸99で構成する。詳しくは、第1ギヤ92はモーター3の出力軸に固定してあり、第2ギヤ93と第3ギヤ94は一体に形成されて、モーターホルダー76で縦軸回りに回転自在に支持してある。第4ギヤ95と第5ギヤ96は第1軸98に固定してあり、第6ギヤ97は第2軸99に固定してある。第3ギヤ94と第4ギヤ95はベベルギヤからなり、両ギヤ94・95によってモーター3の回転動力を水平の第1軸98回りの回転動力に変換している。
【0030】
第1軸98の両端は、左右の駆動部フレーム77で回転自在に支持してあり、第2軸99は
図10に向かって右側の駆動部フレーム77に設けた軸受体(ブッシュ)102で回転自在に支持されて、その軸端が回動軸55の外側方に突出している。この突出軸部分がギヤトレインの出力軸103となる。第1ギヤ92の上面には偏心カム104が設けてあり、同カム104で振動子105を往復駆動することにより、きわ剃り刃23の可動刃を往復駆動できるようにしている。軸受体102は銅合金製の含油メタル、あるいはベアリングで構成してある。上記のように、構造強度が高いモーター3およびモーターホルダー76と駆動部フレーム77を支持構造にして前段駆動部T1のギヤトレインを構成すると、ギヤトレインを構成するギヤ同士の噛合い精度を高度化して、モーター3の回転動力を効率よく内刃7に伝動できる
【0031】
(次段駆動部の構造)
次段駆動部(駆動部)T2は、
図9に向かって右側のサイドフレーム30の外側面に配置した巻掛け伝動機構からなる。具体的には、
図11に示すように、先の出力軸103に固定した駆動プーリー110と、内刃軸7aに連結される従動プーリー(終段駆動体)111と、これら両プーリー110・111に巻掛けたタイミングベルト(ベルト)112と、タイミングベルト112の外側面を覆う規制プレート113などで巻掛け伝動機構を構成し、その側外方を枠カバー30bで覆っている。
【0032】
上記のように、光源ホルダー33とサイドフレーム29・30の構造強度を金属製の補強プレート34で増強する駆動構造によれば、光源ホルダー33およびサイドフレーム29・30の構造強度が増強される分だけ、駆動プーリー110および従動プーリー111の回転を円滑化し安定化できるので、駆動部T2における回転動力の伝動を的確に行って、伝動ロスが少ない状態で内刃7を駆動できる。
【0033】
図11に示すように、規制プレート113は、ステンレス板材を素材とするプレス成型品からなり、その板面で両プーリー110・111の外側面を押え、同時にタイミングベルト112の左右方向の揺れ動きを規制する。そのために、プレート板面の上下端に、両プーリー110・111の外側面を受止めるプーリー受壁140が設けてあり、プレート板面の前後にベルト受壁141が設けてある。ベルト受壁141は、タイミングベルト112の直線移行部の外側面を受止めて、タイミングベルト112が左右方向へ揺れるのを規制する。このように、プーリー受壁140で駆動プーリー110および従動プーリー111の軸方向の移動を規制し、さらにベルト受壁141でタイミングベルト112の左右方向への揺れを規制すると、伝動ロスを小さくして巻掛け伝動機構の伝動効率を向上できる。また、ひげ切断時の切断負荷が大きい場合でも、従動プーリー111および内刃7を円滑に回転駆動して、ひげ切断を効果的に行うことができる。また、ひげ切断時の切断負荷が大きい場合でも、従動プーリー111および内刃7を円滑に回転駆動して、ひげ切断を効果的に行うことができる。
【0034】
上下のプーリー受壁140の中央には、それぞれプーリー受壁140と各プーリー110・111の間で生じた摩擦熱を逃がすための放熱穴142が開口してあり、プレート板面の上下中途部には、ビス53用のねじボスを避けるための逃げ穴143が形成してある(
図12参照)。規制プレート113は、上下の放熱穴142が軸部144および出力軸103に隙間を介して嵌まり込むように組付けられて、フレーム枠30aにねじ込んだビス145で締結固定してある。ビス145で締結されるプレート板面の上下中央部分は、上下のプーリー受壁140に対して段落ち状に凹ませてある。上側の放熱穴142と正対する枠カバー30bの側壁には、放熱穴146が形成してある。放熱穴146を設けることにより、プーリー受壁140の周辺部分に熱がこもるのを解消して、各プーリー110・111が過熱されるのを確実に防止できる。
【0035】
(継手構造)
従動プーリー111の回転動力を内刃軸7aへ伝動し、さらに内刃7の交換を容易化するために、両者111・7aを互いに係合する軸継手で連結している。
図12ないし
図14に示すように軸継手は、内刃軸7aの軸端に設けた平行な平坦面を備えた継手軸部116と、従動プーリー111の軸受穴117の内奥に形成した十文字状の継手穴部118で構成してある。この実施例では、
図13および
図14に示すように、軸受穴117の内面の4か所に三角形状の突起120を突設して、各突起120の対向面間に継手穴部118を形成した。軸受穴117の開口端側には、内刃軸7aの軸端を軸受穴117へ向かって係合案内する導入ガイド穴119がテーパー状に形成してある。また、先の突起120には継手軸部116を継手穴部118へ向かって係合案内する導入ガイド面121が形成してある。上記の継手構造によれば、継手軸部116を従動プーリー111の内部の軸受穴117に差込んで継手穴部118に係合するだけで、内刃7と従動プーリー111を簡単に連結できる。継手軸部116を軸受穴117に差込む際には、継手軸部116の軸端を導入ガイド穴119で軸受穴117へと案内でき、さらに継手軸部116の軸端を導入ガイド面121で案内して継手穴部118に係合できるので、内刃軸7aと従動プーリー111の連結を容易に行うことができる。また、導入ガイド面121を設けることにより、突起120の開口端側の隅部が破損するのを良く防磁できる。
【0036】
内刃7を従動プーリー111から取外す場合には、内刃ホルダー9を従動プーリー111から分離する向きに引張り操作するだけで、内刃軸7aを軸受穴117から抜き出して、内刃7を従動プーリー111から簡単に分離できるので、内刃7の交換を簡便に行うことができる。さらに、継手軸部116と継手穴部118を、終段駆動体111の噛合い周面に対応する内部中央において係合するので、終段駆動体111の強度を内刃軸7aで補強して、終段駆動体111と内刃軸7aの動力伝構造の構造強度を増強できる。従動プーリー111を軸支する軸受体57と継手構造の位置関係を整理すると、軸受体57で支持される従動プーリー111のプーリーボス114の側端から順に、導入ガイド穴119と、軸受穴117が形成され、軸受穴117の内奥において継手軸部116と継手穴部118が係合している。つまり、継手軸部116と継手穴部118は、軸受体57の軸受周面より内奥において係合している。
【0037】
(内刃係合構造)
図7に示すように、装着前の内刃7は先に説明したように、内刃ホルダー9で片持ち支持されている。この状態の内刃7を従動プーリー111とヘッドブロック28に対して適正に位置決めするために、内刃ホルダー9とヘッドブロック28の上部枠35の間に内刃係合構造を設けている。
図8に示すように内刃係合構造は、上部枠35の上面に設けた前後一対の支持枠122と、支持枠122の対向面に形成した横長リブ状の3個の枠支持体123と、内刃7の下方に配置されて内刃ホルダー9から内刃軸7aと平行に突設した連結体124(
図13参照)で構成する。3個の枠支持体123のうち、左右の枠支持体123は支持枠122の上縁に沿って形成し、中央の枠支持体123は支持枠122の下縁に沿って形成してあり、これら枠支持体123の上下の隙間部分125を連結体124がスライドして枠支持体123と係合する(
図6参照)。
【0038】
連結体124は平面から見て門形のステンレス板材製のプレス成形品からなり、その基端部分を内刃ホルダー9の成形時にインサートして、内刃ホルダー9と一体化してある。内刃交換を容易化するために、
図7に示すように、内刃ホルダー9から連結体124の突端までの寸法Lを、内刃ホルダー9から内刃軸7aの継手軸部116の突端までの寸法L1より小さく設定している。さらに、内刃ホルダー9から連結体124の突端までの寸法を、内刃7の切断刃面の左右長さL2より小さく設定している。
【0039】
上記のように、各寸法および長さの関係をL<L2<L1とすることにより、連結体124を上部枠35の枠支持体123の間の隙間部分に側方から差込んでスライドするとき、継手軸部116を軸受穴117に係合させ、さらに継手穴部118に係合させることができる。また、連結体124を枠支持体123にスライド係合する過程で、内刃7の遊端側がぐら付くことがあっても、内刃7の切断刃面が連結体124に接当して刃面が傷つくのを解消できる。内刃軸7aを従動プーリー111に完全に連結した状態では、内刃軸7aが従動プーリー111のプーリーボス114と内刃ホルダー9で両持ち状に確りと軸支される。
【0040】
上記のように、上部枠35に装着した内刃ホルダー9が、従動プーリー111から遠ざかる向きへ分離移動するのを阻止するために、内刃ホルダー9と上部枠35の間に内刃ロック構造を設けている。
図5において内刃ロック構造は、内刃ホルダー9の内部に組付けた内刃ロック爪128と、内刃ロック爪128を下向きに進出付勢する付勢ばね129と、上部枠35に凹み形成した係合凹部130で構成してある。内刃ホルダー9を上部枠35に組付けた状態においては、内刃ロック爪128が係合凹部130に係合して、内刃7および内刃ホルダー9を分離移動不能に位置保持する。内刃7を取外す場合には、内刃ホルダー9を抜き出し操作して、係合凹部130に係合している内刃ロック爪128を付勢ばね129に抗して上方へ退入させ、ロック状態を解除する。さらに、連結体124を枠支持体123から抜き出すことにより、内刃7を上部枠35から取外すことができる。このように内刃ロック構造を設けると、落下衝撃が作用するような場合であっても、内刃7および内刃ホルダー9が従動プーリー111から分離するのを確実に防止できる。
【0041】
図6に示すように、かみそりヘッド2を傾動待機位置から前方へ傾動させる必要上、本体ケース1とかみそりヘッド2の間には、傾動角度に相当する隙間が確保してある。詳しくは、光源ホルダー33の下面と前ケース13の上面の間に、復帰ばね65へ向かって先すぼまり状の隙間が形成してある。この隙間には毛屑や塵埃が入込みやすいので、隙間に入り込んだ毛屑や塵埃を洗い流すために、隙間をクリーニング空間Uとして利用している。また、クリーニング空間Uの前部に臨んで斜めの水ガイド面134を形成し、その両側端に、洗浄水をクリーニング空間Uの中央へ向かって案内する導水面135を斜めに形成している。クリーニング空間Uを設けることにより、同空間Uに入り込んだ毛屑や塵埃を洗浄水で簡単に洗い流すことができ、同時に洗浄水を復帰ばね65の周囲に流動させて、復帰ばね65の洗浄も併せて行うことができる。
【0042】
図1および
図15に示すように、内刃ホルダー9は、内刃軸7aを支持するホルダー枠151と、ホルダー枠151の外側面を覆う枠カバー152で構成する。ホルダー枠151は、アーチ形の縦壁153と、縦壁153の周縁に沿って横向きに張出した横枠部154と、底壁155を一体に備えており、縦壁153の上部中央に内刃軸7aを軸支する軸受体(ブッシュ)156が固定してある。縦壁153には、付勢ばね129を受止めるばね受枠157が横向きに突設してあり、その上側に内刃軸7aの軸端に固定した座金158を受止めるストッパーリブ159が突設してある(
図14参照)。また、軸受体156の後側の縦壁には摺接口163が開口され、軸受体156の前側の縦壁には溶着ピン164と回止めピン165が設けてある。枠カバー152の接合縁の内面3個所には係合爪166が形成してあり、これらの爪166を横枠部154に設けた係合穴167と係合することにより、枠カバー152をホルダー枠151と一体化できる。座金158およびストッパーリブ159は、内刃7が従動プーリー111の側へ向かって軸方向へ移動するのを規制するために設けてある。
【0043】
以上のように構成した内刃係合構造によれば、内刃7および起振体170をヘッドブロック28に対して内刃ホルダー9と共に着脱できるので、内刃7を交換する際に起振体170も同時に交換できる。また、内刃軸7aの他端を支持する内刃ホルダー9に起振体170を設けるので、内刃7の摺接面7Aと起振体170を高い精度で摺接させて、安定した状態で起振体170を振動させることができる。
【0044】
(起振構造)
内刃7に振動を与えてひげ切断を効果的に行うために、内刃7を構成する側端の円板7bと内刃ホルダー9の間に起振構造を設けている。詳しくは、枠カバー152と対向するホルダー枠151の縦壁(装着壁)153に起振体170を設けて、内刃7が回転駆動されるとき起振体170を振動させて、内刃7に振動を付与している。
図1において起振体170は、縦壁153に固定される固定部171と、固定部171から延びる中間腕172と、中間腕172の端部に設けた摺接部173と、固定部171の前隅に折起こし形成した回止め片174を一体に備えた金属製の板ばね体からなる。固定部171の板面には、溶着ピン164用のピン穴175が形成され、回止め片174に隣接する周縁には回止めピン(回止め突起)165用の回止め凹部176が形成してある。
【0045】
中間腕172は、内刃7の回転中心軸を中心とする同心円に沿って湾曲状に形成してある。このように、中間腕172を湾曲状に形成すると、固定部171と中間腕172と摺接部173の合計長さを大きくして、起振体170を振動しやすくできる。また、固定部171から中間腕172を経由して摺接部173に至る合計長さが大きい分だけ振動する部分の総重量を大きくして、より強い振動を切断刃7に付与できる。
【0046】
図17に示すように、摺接部173は、中間腕172に連続して内刃7の側端に設けた円板(端部壁)7bに向かって折曲げられる摺接腕180と、摺接腕180の先端寄りをV字状に折曲げて形成される摺接爪181を備えている。摺接部173を摺接口163に差込みながら、ピン穴175および回止め凹部176を溶着ピン164と回止めピン165に係合し、回止め片174を横枠部154の内面にあてがった状態で、溶着ピン164の突端を溶融変形させることにより、起振体170を縦壁153に固定できる。
【0047】
摺接爪181が緩衝シート182を介して側端の円板(端部壁)7bの摺接面7Aに圧接した状態の中間腕172は、縦壁153から僅かに浮離れた状態で弾性変形している。また、摺接爪181を摺接面7Aの周側度が大きな周縁寄りに圧接して、内刃7が1回転する間の摺接爪181の振動数が大きくなるようにしている。各図において矢印aは内刃7の回転方向を示している。
【0048】
上記のように、起振体170を縦壁153に装着した状態を側面から見ると、
図1に示すように、摺接部173は固定部171より内刃7の回転方向上手側に配置されて、その摺接爪181が緩衝シート182に圧接している。また、溶着ピン164の中心と、摺接爪181の圧接中心は、固定部171と摺接部173は、内刃軸7aを間にして対向する状態で、内刃軸7aを通る内刃7の直径線上に配置しており、概ね時計の文字盤の3時の位置と9時の位置に位置している。
【0049】
緩衝シート(緩衝体)182はポリアミド樹脂シートを円形に打抜いて形成してあり、その中央の挿通穴183を内刃軸7aに外嵌して内刃7と一体化してある。内刃7が回転駆動されるとき、緩衝シート182は基本的に回転せず止まったままであるが、内刃7の回転方向へゆっくりと回転することもある。
【0050】
以上のように構成した起振構造は、摺接部173が内刃7の摺接抵抗で駆動方向に引摺られる弾性変形動作と、弾性変形した起振体170が摺接部173と内刃7の摩擦抵抗に抗して自己の弾性力で復元する変形解除動作で振動を発生する。ひげ剃り時の内刃7は約2000rpmで回転駆動されるが、起振体170の弾性変形動作と変形解除動作は内刃7が1回転する間に10回前後行われる。そのため、内刃7には300〜330Hzの微振動(振動)が作用し、内刃7は先の微振動を受けながらひげ切断を行う。従って、単に内刃7のせん断動作のみでひげ切断を行う場合に比べて、切断抵抗を小さくしてひげ切断を効果的に行うことができる。
【0051】
(外刃構造)
図18および
図19に外刃8のフロート構造を示している。先に説明したように、網目を有するシート状の外刃8は、その両端に固定した外刃枠61を介して外刃ホルダー31で上下フロート(上下動)可能に支持してある。
図18に示すように、外刃枠61は前後面が上すぼまり状に傾斜する枠体からなり、その前後両側部に外刃8を組むための刃受凹部185が形成され、左右両側部にばね受部186が設けてある。刃受凹部185には4個の溶着ピン187が設けてあり、このピン187に外刃8と押え枠188を係合して、溶着ピン187の突端を溶融変形することにより、外刃8を外刃枠61と一体化している。刃受凹部185の下側には3個のスライド溝189が形成してあり、この溝189を外刃ホルダー31の内面に設けたガイドリブ190で上下スライド可能に案内している。
【0052】
図19に示すように、ばね受部186には左右方向へ弾性変形可能な門形のストッパー腕192が設けられており、ストッパー腕192の基端の左右中央に外刃ばね62の下端に係合するばね受ピン(ばね受体)194が上向きに突設してある。また、ストッパー腕192の遊端(上端)を外側方へ膨出させ、ストッパー195を設けている。ストッパー195は、外刃枠61の過剰な沈込みを規制し、さらに外刃枠61が外刃ホルダー31から分離するのを規制するために設けている。外刃ホルダー31の内面には、外刃ばね62の上端に係合するばね受ピン(ばね受体)196が下向きに突設してある。外刃ばね62は圧縮コイル形のばねである。このように、圧縮コイル形の外刃ばね62は、外刃ホルダー31の内面両側と外刃枠61の両側に設けた上下対向状のばね受体194・196に配置してある。
【0053】
この実施例の内刃7は上下にフロートしないため、外刃8を上下フロート可能に支持する意味は、専ら外刃8を内刃7に密着させるためである。しかし、内刃7が上下フロート可能である場合には、内刃7に追随して外刃8を上下フロートさせて、外刃8を内刃7に密着させることができる。内刃7が上下フロートしない電気かみそりにおいてストッパー195を設ける意味は、外刃ホルダー31をヘッドブロック28から分離した状態において、外刃枠61が外刃ホルダー31から分離するのを規制するためである。しかし、内刃7が上下フロート可能である場合には、ストッパー195は外刃枠61の過剰な沈込みを規制する効果も併せて発揮できる。
【0054】
以上のように構成した外刃構造によれば、外刃8を内刃7に常に密着できる。また、外刃8および外刃枠61が右または左へ沈込み傾動する場合であっても、外刃8を内刃7に密着させて、的確にひげ切断を行うことができる。また、外刃枠61のばね受ピン194に外刃ばね62を組んだ状態で、外刃枠61を下開口の側から外刃ホルダー31に組み、片方のストッパー腕192をばね受ピン196の上端に掛止し、他方のストッパー腕192を外刃枠61の内面側へ弾性変形させながらばね受ピン196の上端に掛止することにより、外刃8および外刃枠61を外刃ホルダー31と一体化できる。このように、外刃枠に弾性変形可能な門形のストッパー腕192を設けると、外刃8および外刃枠61の外刃ホルダー31に対する組立をより簡便に行える。
【0055】
組立状態の外刃枠61は、外刃ばね62で押下げ付勢されているので、左右のストッパー195は外刃ホルダー31のばね受ピン196の上端で受け止められている。また、外刃ホルダー31をヘッドブロック28の装着した状態では、外刃8の内面が内刃7の周面で受止められるので、
図5に示すように、左右のストッパー195は外刃ホルダー31のばね受ピン196の上端から浮き離れていて、外刃ばね62の付勢力を内刃7が受止めている。外刃枠61の左右両側部とその左右両側部に対応する外刃ホルダー31の間に、外刃8を内刃7に密着させる外刃ばね62が配置してあるので、外刃8および内刃7の組みを複数並設することが容易となるとともに、外刃8および外刃枠61が右または左へ沈込み傾動する場合、外刃8を内刃7に強く密着させることができ、的確にひげの切断を行うことができる。
【0056】
内刃7が回転駆動されるときの起振体170の摺接爪181は、緩衝シート182および円板7bの摺接面7Aに対して、摺接しながら弾性変形動作と変形解除動作を繰り返す。つまり、起振体170は回転駆動する内刃7の摺接面7Aから摺接抵抗を受けて自励振動する。そのため、回転する微小突起がガイドピンを乗越えながら内刃を機械的かつ強制的に左右移動させる従来の起振構造に比べると、摺接爪181は摺接面7Aに対して摺動するだけであるので、振動発生時の摩擦抵抗を軽減しながら内刃7を円滑に振動させることができる。経年劣化も殆んど考慮する必要がない。起振体170から付与された振動で、切断刃7を強制的に振動させながらひげのせん断を行えるので、単に切断刃7のせん断作用のみでひげのせん断を行う場合に比べて、切断刃7の切刃部分の動きを複合的なものとして、ひげ切断を効果的に行うことができる。
【0057】
摺接爪181と円板7bの間に緩衝シート182が配置されていない場合には、摺接爪181の微振動を内刃7に直接伝動して、より強い微振動を内刃7に伝えることができる。しかし、より強い微振動を内刃7に伝えられる反面、摺接爪181が弾性変形動作から変形解除動作に切換る場合に摺接爪181が跳ねて円板7bを叩打し、叩打音を生じやすい。こうした叩打音の発生を緩和するために、摺接爪181と円板7bの間に緩衝シート182を介装している。以上のように、起振体170で内刃7に振動を付与しながらひげ切断を行うと、内刃7が引切り作用を発揮しながらひげ切断を行うので、単に内刃7のせん断作用のみでひげ切断を行う場合に比べて、ひげ切断時の切れ味を向上して、さらに効果的にひげ切断を行える。
【0058】
図20ないし
図28に、起振構造の別の実施例を示す。なお、各別実施例において、上記の実施例と同じ部材には同じ符号を付して、その説明を省略する。
図20に示す起振構造では、固定部171と、固定部171から折りおこし形成した中間腕172と、中間腕172の先端に設けたV字状の摺接部173で起振体170を構成した。この場合の摺接部173は、内刃軸7aの周面の摺接面7Aに圧接しており、摺接部173が内刃軸7aの摺接抵抗で駆動方向に引摺られる弾性変形動作と、弾性変形した起振体170が自己の弾性力で復元する変形解除動作で振動を発生する。このように、摺接部173を内刃軸7aの周面の摺接面7Aに圧接させると、内刃軸7aの直径が小さく周速度が小さいため、起振体170で発生する振動の振幅は、先の実施例で説明した微振動の振幅よりさらに小さな振動となる。また、内刃7には上下方向(外刃8が肌面に接触する方向)の微振動が作用する。そのため、内刃7によって振動する外刃8で肌面を振動させて、ひげを肌面から押出した状態でひげ切断を行うことができ、深剃り効果を向上できる。なお、内刃7の駆動方向が矢印A方向とは逆である場合には、振動は発生しないものの、内刃軸7aの振れを防止できる。
【0059】
図21に示す起振構造では、固定部171と、固定部171の下縁側から折起こし形成した中間腕172と、中間腕172の先端に設けた摺接部173で起振体170を構成した。さらに、固定部171の上縁側から弾性片177を折起こし形成し、その先端に設けた押圧爪178を内刃軸7aの上周面に圧接した。中間腕172は、内刃軸7aの下周面に沿って湾曲してあり、摺接部173は内刃7の側端の摺接面7Aに圧接している。内刃7の回転方向は、
図21において反時計回転方向となる。
【0060】
図21の起振構造においては、起振体170で振動を発生しながら、弾性片177で内刃軸7aを押圧して内刃7の振れを抑えることができるので、内刃7を安定した状態で回転駆動できる。また、ひげ切断時には、起振体170の振動で内刃7を内刃軸7aの軸心方向に振動させながらひげ切断を行える。このときの内刃7は、引切り作用を発揮しながらひげ切断を行うので、単に内刃7のせん断作用のみでひげ切断を行う場合に比べて、ひげ切断時の切れ味を向上して、さらに効果的にひげ切断を行える。
【0061】
図22(a)に示す起振構造では、円板7bの外側面に緩衝シート182を接着固定して、緩衝シート182が内刃7に同行して回転できるようにした。先の実施例における緩衝シート182は、円板7bに対して接着固定されていない点が、
図22(a)の緩衝シート182と異なる。
図22(b)に示す起振構造では、摺接部173を構成する摺接腕180から摺接爪181にわたって緩衝シート182を接着固定して、摺接爪181および緩衝シート182が円板7bに対して摺接するようにした。
図22(c)に示す起振構造では緩衝シート182を省略して、摺接爪181を円板7bの摺接面7Aに直接圧接させるようにした。このように緩衝シート182を省略した場合には、叩打音を生じるおそれがあるが、起振構造の全体構造や各構成部品の形成素材の違いなどによって、発生する叩打音の音圧レベルが低い場合には、緩衝シート182を省略しても差支えはない。
【0062】
図23および
図24は起振構造のさらに別の実施例を示す。そこでは、内刃7の1側端において一定幅で切刃7cを省略して、内刃7の周面に滑らかに連続する摺接面7Aを形成した。また、ホルダー枠151の縦壁153の外面に起振体170を装着して、その摺接部173を先の摺接面7Aに圧接させるようにした。この実施例における中間腕172は固定部171の下縁から折起こして形成してあり、その先端に摺接部173が形成してある。また、中間腕172は摺接面7Aに沿って部分円弧状に形成してある。
【0063】
上記のように、起振体170の摺接爪181を、内刃7の周面に設けた摺接面7Aに圧接すると、摺接面7Aの周速度が大きい分だけ、起振体170の微振動の周波数をさらに高めて、内刃7に上下方向(外刃8が肌面に接触する方向)の振動を付与することができる。従って、
図20で説明した起振構造と同様に、振動する外刃8で肌面を振動させて、ひげを肌面から押出した状態でひげ切断を行うことができ、深剃り効果を向上できる。また、起振体170は縦壁153の外面に組めばよいので、その構造を簡素化して、微振動を安定した状態で発生することができる。
【0064】
図25および
図26は起振構造を、レシプロ式の内刃7を備えた電気かみそりに適用した別の実施例を示す。そこでは、内刃7が内刃枠198で逆U字状に保形してあり、内刃枠198の後面に摺接面7Aが設けてある。同様に、外刃8は外刃ホルダー31で逆U字状に保形してあり、摺接面7Aと正対する外刃ホルダー31の内面に起振体170を配置している。起振体170は固定部171と、中間腕172と、摺接部173を一体に備えているが、各部分が板ばね材を厚み方向へ折曲げて形成してあり、さらに摺接腕180を省略して、中間腕172に連続して摺接爪181を形成した。こうした起振体170によれば、
図23で説明した起振体170に比べて、起振体170の全体構造をさらに簡素化できる。因みに内刃7は、
図26に示す矢印方向へ往復駆動される。起振体170は内刃7が一方向へ移動する間に複数回振動して、内刃7によるひげ切断を促進する。
図25において符号199は内刃7を往復駆動する駆動軸である。
【0065】
図27は起振構造を、内刃7が垂直軸(縦軸)まわりに回転駆動される回転式の電気かみそりに適用した実施例を示す。そこでは、本体ケース1の上部周面にねじ込み操作した円筒状の外刃ホルダー31で部分球面状の外刃8を支持している。また、モーターの出力軸3aに固定した内刃ホルダー201で複数枚の切刃202を支持して内刃7を構成している。内刃ホルダー201は、円筒状の筒壁203を備えており、その内面の摺接面7Aに起振体170が圧接してある。起振体170は、本体ケース1の上端面に溶着ピン164で固定される固定部171と、固定部171から折り起こされて、摺接面7Aに沿って延びる中間腕172と、摺接面7Aに圧接する摺接部173を一体に備えている。内刃7は矢印a方向へ回転駆動され、摺接部173は固定部171より内刃7の回転方向の上手側に配置してある。この実施例における起振体170は、内刃7が1回転する間に複数回振動して、内刃7によるひげ切断を促進する。上記構成の電気かみそりによれば、内刃ホルダー201の投影平面内に起振体170を配置するので、かみそりヘッド2をコンパクト化できる。
【0066】
上記の実施例では、起振体170が内刃軸7aと接当干渉するのを避け、さらに、固定部171から摺接部173までの全長を稼ぐために、中間腕172を内刃7の内刃軸7aと同心の同心円に沿って湾曲状に形成したが、その必要はない。例えば、
図28に示すように、中間腕172を山谷状に形成して中間腕172の全長を大きくすることができる。要は、固定部171と摺接部173を最短距離で結ぶ仮想中心線を想定するとき、中間腕172の中途部が仮想中心線から離れた位置を経由して非直線状に形成してあればよい。
【0067】
上記の実施例では、前段駆動部T1でモーター動力を減速して駆動プーリー110に出力したが、モーター3の出力仕様によっては、その出力軸に駆動プーリー110を固定して、回転動力を次段駆動部T2に直接伝動してもよい。本発明はロータリー式の電気かみそりに限らず、レシプロ式の電気かみそりや、外刃を備えていない電気かみそりにも適用できる。次段駆動部T2はギヤを伝動要素にして構成することができる。その場合の終段駆動体111はギヤで構成して、出力軸103と終段駆動体111との間にギヤトレインを設けるとよい。本体ケース1に対してかみそりヘッド2が傾動可能に連結されているものに限らず、本体ケース1に対してかみそりヘッド2が固定された一体的構成のものであってもよい。