特許第6472321号(P6472321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6472321ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472321
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20190207BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20190207BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08L71/02
   C08K5/524
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-100641(P2015-100641)
(22)【出願日】2015年5月18日
(65)【公開番号】特開2016-216553(P2016-216553A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化ポリカーボネート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊 陽一郎
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/111117(WO,A1)
【文献】 特開2017−125208(JP,A)
【文献】 特開2013−139097(JP,A)
【文献】 特開2000−351891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、ポリエーテル誘導体(B)を0.2〜3.0重量部、亜リン酸エステル系化合物(C)を0.005〜1.0重量部、及び脂肪酸エステル(D)を0.5〜1.0重量部含し、
前記ポリエーテル誘導体(B)が、下記一般式(2)で表されるテトラメチレングリコール誘導体であり、
前記亜リン酸エステル系化合物(C)が、少なくとも下記一般式(3)で表される化合物であり、
前記脂肪酸エステル(D)が、グリセリンモノステアレートまたはペンタエリスリトールテトラステアレートであることを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物。
一般式(2):
HO−(CHCHCHCHO)m(CHCH(CH)O)n−H (2)
(式中、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
一般式(3):
【化1】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す)
【請求項2】
前記一般式(3)で表される化合物が、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトである、請求項記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリカーボネート組成物から射出成形された厚み3mmの成形片のJIS K7361に準拠した光線透過率が80%以上である、請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂が本来有する透明性を保持したまま、摺動性を著しく改善したポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性、耐衝撃性、難燃性等の性能に優れ、このことから電気、電子、IT等の分野の数多くの製品に広く使用されている。また、当該分野においては、摺動性を必要とする用途も数多くあり、これらの特性をバランス良く具備した材料が市場において要求されている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂に摺動性を付与する手法としてポリカーボネート系樹脂に粘度が1000〜20000cpのシリコーンオイルを配合する方法(特許文献1)が提案されている。
【0004】
しかしながら、シリコーンオイルを配合する方法においては、シリコーンオイルの滲みだしに起因する成形品の外観不良が発生したり、さらには長期的な摺動性の維持という面でも必ずしも十分ではないという問題があり、改良が求められていた。
【0005】
また、摺動性を付与する手法としてポリカーボネート樹脂にポリテトラフルオロエチレン樹脂を配合した樹脂組成物が提案(特許文献2)されている。しかしながら、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を配合する事で摺動性は改良されるものの、ポリカーボネート樹脂の長所である透明性を大きく低下させると共に、ポリカーボネート樹脂の耐衝撃性が損なわれるという問題があり、さらなる改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−143965号公報
【特許文献2】特開平1−259059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリカーボネート樹脂が本来有する透明性等を保持したまま、摺動性を著しく改善したポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ポリカーボネート樹脂に特定のポリエーテル誘導体、亜リン酸エステル系化合物、及び脂肪酸エステルを特定量含有させることにより、驚くべきことに透明性を維持しながら摺動性に優れたポリカーボネート樹脂脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、ポリエーテル誘導体(B)を0.2〜3.0重量部、亜リン酸エステル系化合物(C)を0.005〜1.0重量部、及び脂肪酸エステル(D)を0.5〜1.0重量部含有し、ポリエーテル誘導体(B)が、下記一般式(2)で表されるテトラメチレングリコール誘導体であり、亜リン酸エステル系化合物(C)が、少なくとも下記一般式(3)で表される化合物であり、脂肪酸エステル(D)が、グリセリンモノステアレートまたはペンタエリスリトールテトラステアレートであることを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品を提供するものである。
一般式(2):
HO−(CHCHCHCHO)m(CHCH(CH)O)n−H (2)
(式中、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
一般式(3):
【化1】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す)
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂本来の性質である熱安定性、衝撃強度等を大きく損なうことなく、優れた透明性及び摺動性を備えたものであることから、電気、電子、IT等各種分野における軽量・薄肉化、意匠性、あるいは磨耗性等が要求される製品に対して好適に使用することが可能であり工業的利用価値が極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、発明者らは、当業者が本発明を充分に理解するために以下の説明を提供するのであってこれらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と、特定のポリエーテル誘導体(B)と、亜リン酸エステル系化合物(C)と、脂肪酸エステル(D)とを含有するものである。なお、本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じてその他の成分を配合してもよい。
【0014】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体である。代表例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0015】
前記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を混合して使用される。これらの他にも、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4´−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0016】
さらに、前記ジヒドロキシジアリール化合物と、例えば以下に示す3価以上のフェノール化合物とを混合して使用してもよい。
【0017】
前記3価以上のフェノール化合物としては、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−[4,4−(4,4´−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン等が挙げられる。
【0018】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、10000〜100000、さらには12000〜30000であることが好ましい。なお、このようなポリカーボネート樹脂(A)を製造する際には分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0019】
本発明にて使用されるポリエーテル誘導体(B)は、下記一般式(1)で表される。
一般式(1):
RO−(X−O)m(Y−O)n−R’ (1)
(式中、RおよびR’は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜30のアルキル基を示し、Xは、炭素数2〜4のアルキレン基を、Yは、炭素数3〜5の分岐アルキレン基を、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
【0020】
また、このようなポリエーテル誘導体の中でもとりわけ、テトラメチレングリコール誘導体が好適であり、さらに下記一般式(2)で表されるポリオキシテトラメチレン−ポリオキシプロピレン−グリコールが好適である。
一般式(2):
HO−(CHCHCHCHO)m(CHCH(CH)O)n−H (2)
(式中、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
【0021】
上記テトラメチレングリコール誘導体としては、ポリオキシテトラメチレン−ポリオキシプロピレン−グリコールの他にも、ポリオキシテトラメチレン−ポリオキシブチレン−グリコール、テトラメチレングリコールユニットと2-メチルテトラメチレングリコールユニットからなる変性テトラメチレングリコール誘導体(例えば、HO−(CHCHCHCHO)22(CHCHCH(CH)CHO)−H等)等が好適である。商業的に入手可能なポリエーテル誘導体として、ポリオキシテトラメチレン−ポリオキシプロピレン−グリコールとしては、例えば、日油(株)製の、ポリセリンDCB−2000(重量平均分子量2000)、ポリセリンDCB−1000(重量平均分子量1000)等(「ポリセリン」は登録商標)、ポリオキシテトラメチレン−ポリオキシブチレン−グリコールとしては、日油(株)製の、ポリセリンDCD−2000(重量平均分子量2000)、変性テトラメチレングリコール誘導体としては、保土谷化学工業(株)製のPTG−L1000、PTG−L2000、又はPTG−L3000等が挙げられる。その中でも、特に、ポリセリンDCB−2000、ポリセリンDCB−1000等が好適に使用され得る。
【0022】
本発明にて使用されるポリエーテル誘導体(B)の重量平均分子量は、1000〜4000、さらには2000〜3000であることが好ましい。ポリエーテル誘導体の重量平均分子量が1000未満の場合は、光線透過率の充分な向上効果が望めない恐れがあり、逆に重量平均分子量が4000を超える場合も、曇化率が上昇して光線透過率が低下する恐れがある。
【0023】
ポリエーテル誘導体の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.2〜3.0重量部であり、さらに0.5〜2.0重量部であることが好ましい。ポリエーテル誘導体の量が0.2重量部未満の場合は、光線透過率及び摺動性の向上効果が不充分である。逆にポリエーテル誘導体の量が3.0重量部を超える場合は、曇化率が上昇して光線透過率が低下してしまう。
【0024】
本発明におけるポリカーボネート樹脂組成物には、特定のポリエーテル誘導体(B)と共に、亜リン酸エステル系化合物(C)および脂肪酸エステル(D)が配合されている。これら3成分の併用が、透明性及び摺動性の向上に有益である。
【0025】
本発明にて使用される亜リン酸エステル系化合物(C)としては、例えば、下記一般式(3)で表される化合物が特に好適である。
一般式(3):
【0026】
【化1】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す。)
【0027】
前記一般式(3)において、Rは、炭素数1〜20のアルキル基であるが、さらには、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
【0028】
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、特にトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトが好適であり、例えば、BASF社製のイルガフォス168(「イルガフォス」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標)として商業的に入手可能である。
【0029】
前記亜リン酸エステル系化合物(C)としては、前記一般式(3)で表される化合物の他にも、例えば、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
一般式(4):
【0030】
【化2】
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR−(ここで、Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR−(ここで、Rは、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す)。
【0031】
一般式(4)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。
【0032】
ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0033】
前記R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基又は炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基であることが好ましい。特に、R及びRは、それぞれ独立して、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基等のt−アルキル基、シクロヘキシル基又は1−メチルシクロヘキシル基であることが好ましい。特に、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基、t−ブチル基又はt−ペンチル基であることがさらに好ましい。
【0034】
前記Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0035】
一般式(4)において、Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基が挙げられる。特に、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましい。
【0036】
一般式(4)において、Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR−で表される基を示す。ここで、式:−CHR−中のRは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基及び炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、それぞれ前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。特に、Xは、単結合、メチレン基、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等で置換されたメチレン基であることが好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
【0037】
一般式(4)において、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR−で表される基を示す。炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また、式:*−COR−におけるRは、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示す。Rを示す炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、前記Aの説明にて例示したアルキレン基が挙げられる。Rは、単結合又はエチレン基であることが好ましい。また、式:*−COR−における*は、酸素側の結合手であり、カルボニル基がフォスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。
【0038】
一般式(4)において、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、α−メチルベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基が挙げられる。
【0039】
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等が挙げられる。これらの中でも、特に光学特性が求められる分野に、得られるポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合には、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンが好適であり、例えば、住友化学(株)製のスミライザーGP(「スミライザー」は登録商標)として商業的に入手可能である。
【0040】
前記亜リン酸エステル系化合物(C)としては、前記一般式(3)で表される化合物及び前記一般式(4)で表される化合物の他にも、例えば、一般式(5)で表される化合物が好適に使用され得る。
一般式(5):
【0041】
【化3】
(式中、R及びR10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す)
【0042】
一般式(5)で表される化合物としては、例えば、(株)ADEKA製のアデカスタブPEP−36(「アデカスタブ」は登録商標)が商業的に入手可能である。
【0043】
亜リン酸エステル系化合物(C)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.005〜1.0重量部であり、0.01〜0.5重量部、さらに0.02〜0.1重量部であることが好ましい。亜リン酸エステル系化合物(C)の量が0.005重量部未満の場合は、光線透過率及び摺動性の向上効果が不充分である。逆に亜リン酸エステル系化合物(C)の量が1.0重量部を超える場合も、光線透過率及び摺動性の向上効果が不充分である。
【0044】
本発明にて使用される脂肪酸エステル(D)としては、通常の脂肪族カルボン酸とアルコールとの縮合化合物を用いることができる。
【0045】
前記脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸等が挙げられる。なお、該脂肪族カルボン酸には、脂環式カルボン酸も含まれる。これらの中でも、炭素数6〜36の、モノカルボン酸及びジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。
【0046】
前記脂肪族カルボン酸の具体例としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等が挙げられる。
【0047】
前記アルコールとしては、飽和又は不飽和の、一価アルコール及び多価アルコールが挙げられ、これらのアルコールは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらの中でも、炭素数30以下の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の、脂肪族飽和一価アルコール及び脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、脂肪族アルコールには、脂環式アルコールも含まれる。
【0048】
前記アルコールの具体例としては、例えば、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0049】
脂肪酸エステル(D)の具体例としては、例えば、ベヘニルベヘネート、オクチルドデシルベヘネート、ステアリルステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート等のステアリン酸エステル、ペンタエリスリトールステアレートが好適であり、例えば、理研ビタミン(株)製のリケマールS−100A(商品名)、日油(株)製のユニスターH476DP(「ユニスター」は登録商標)、コグニス社製ロキシオールVPG861等が商業的に入手可能である。
【0050】
本発明にて使用される脂肪酸エステル(D)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり1.0重量部までである。1.0重量部を超えると透過性や衝撃特性等の物性が低下するため好ましくない。
【0051】
また、本発明に用いられるポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、ポリエーテル誘導体(B)と亜リン酸エステル系化合物(C)と脂肪酸エステル(D)とを配合したポリカーボネート組成物から射出成形された厚み3mmの成形片のJIS K7361に準拠した光線透過率は、80%以上であることが好ましく、当該光線透過率が85%であるとより好ましい。光線透過率が80%を下回ると、当該ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品の視認性を阻害し不具合の発見に悪影響を及ぼす虞がある。
【0052】
本発明にて使用される脂肪酸エステル(D)は、ポリエーテル誘導体(B)及び亜リン酸エステル系化合物(C)とともに作用し、得られるポリカーボネート樹脂組成物の黄変を抑制し、透明性及び摺動性を向上させる成分である。
【0053】
以上の成分に加えて、実施の形態に係るポリカーボネート樹脂組成物へは、例えば、得られるポリカーボネート樹脂組成物の耐候性をより向上させる成分である紫外線吸収剤を得られる成形品の用途に応じて適宜用いることができる。
【0054】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物等の、ポリカーボネート樹脂に通常配合される紫外線吸収剤を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−butyl−2−hydroxy−5−methylphenyl)−5−chloro−2H−benzotriazole、2−(3,5−di−tert−pentyl−2−hydroxyphenyl)−2H−benzotriazole、2−(2H−benzotriazole−2−yl)−4−methyl−6−(3,4,5,6−tetrahydrophthalimidylmethyl)phenol、2−(2−hydroxy−4−octyloxyphenyl)−2H−benzotriazole、2−(2−hydroxy−5−tert−octylphenyl)−2H−benzotriazole、2−[2’−hydroxy−3,5−di(1,1−dimethylbenzyl)phenyl]−2H−benzotriazole、2,2’−Methylenbis[6−(2H−benzotriazol−2−yl)4−(1,1,3,3−tetramethylbutyl)phenol]等が挙げられる。なかでも、特に、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が好適であり、例えば、BASF社製のTINUVIN 329(TINUVINは登録商標)、シプロ化成(株)製のシーソーブ709、ケミプロ化成(株)製のケミソーブ79等が商業的に入手可能である。
【0056】
トリアジン系化合物としては、例えば、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシフェニル−4−ヘキシルオキシフェニル)1,3,5−トリアジン、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール等が挙げられ、例えば、BASF社製のTINUVIN 1577等が商業的に入手可能である。
【0057】
シュウ酸アニリド系化合物としては、例えば、クラリアントジャパン(株)製のSanduvor VSU等が商業的に入手可能である。
【0058】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2、4−dihydroxybenzophenone、2−hydroxy−4−n−octoxybenzophenone等が挙げられる。
【0059】
紫外線吸収剤(D)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0〜1.0重量部であり、好ましくは0〜0.5重量部であることが好ましい。紫外線吸収剤(D)の量が1.0重量部を超える場合は、得られるポリカーボネート樹脂組成物の初期の色相が低下する虞れがある。また、紫外線吸収剤(D)の量が0.1重量部以上の場合は特に、ポリカーボネート樹脂組成物の耐候性をより向上させる効果が奏される。
【0060】
さらに、実施の形態に係るポリカーボネート樹脂組成物には、本発明における効果を損なわない範囲で、例えば、他の酸化防止剤、着色剤、離型剤、軟化剤、帯電防止剤、衝撃性改良剤等の各種添加剤、ポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等が適宜配合されていてもよい。
【0061】
ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法には特に限定がなく、ポリカーボネート樹脂(A)、特定のポリエーテル誘導体(B)、亜リン酸エステル系化合物(C)、および脂肪酸エステル(D)、必要に応じて前記各種添加剤やポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等について、各成分の種類及び量を適宜調整し、これらを、例えばタンブラー、リボンブレンダー等の公知の混合機にて混合する方法や、押出機にて溶融混練する方法が挙げられる。これらの方法により、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを容易に得ることができる。
【0062】
前記のごとく得られるポリカーボネート樹脂組成物のペレットの形状及び大きさには特に限定がなく、一般的な樹脂ペレットが有する形状及び大きさであればよい。例えば、ペレットの形状としては、楕円柱状、円柱状等が挙げられる。ペレットの大きさとしては、長さが2〜8mm程度であることが好適であり、楕円柱状の場合、断面楕円の長径が2〜8mm程度、短径が1〜4mm程度であることが好適であり、円柱状の場合、断面円の直径が1〜6mm程度であることが好適である。なお、得られたペレット1つずつがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体を形成する全てのペレットがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体の平均値がこのような大きさであってもよく、特に限定はない。
【0063】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、前記のごとく得られるポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるものである。
【0064】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法には特に限定がなく、例えば公知の射出成形法、圧縮成形法等によりポリカーボネート樹脂組成物を成形する方法が挙げられる。
【0065】
以上のように、本発明の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本発明における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施の形態にも適用可能である。
【実施例】
【0066】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ重量基準である。
【0067】
原料として以下のものを使用した。
1.ポリカーボネート樹脂(A):
ビスフェノールAと塩化カルボニルとから合成されたポリカーボネート樹脂
カリバー200−80
(商品名、住化スタイロンポリカーボネート(株)製、「カリバー」はスタイロン ユーロップ ゲーエムベーハーの登録商標、粘度平均分子量:15000、以下「 PC」という)
【0068】
2.ポリエーテル誘導体(B)(テトラメチレングリコール誘導体):
ポリオキシテトラメチレンポリオキシプロピレングリコール(ランダムタイプ)
ポリセリンDCB−2000
(商品名、日油(株)製、重量平均分子量:2000、以下「化合物B」という)
【0069】
3.亜リン酸エステル系化合物(C):
以下の式で表される、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト
【0070】
【化4】
イルガフォス168
(商品名、BASF社製、以下「AO」という)
【0071】
3.脂肪酸エステル(D)
グリセリンモノステアレート
リケマールS−100A
(商品名、理研ビタミン(株)製、以下「GMS」という)
ペンタエリスリトールステアレート
ロキシオールVPG861
(商品名、コグニス社製、以下、「PETS」と略記)
【0072】
実施例1〜4及び比較例1〜4
前記各原料を、表1および表2に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX30α)を用いて、溶融温度220℃にて溶融混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0073】
得られたペレットを用い、以下の方法にしたがって、各評価用試験片を作製して評価に供した。その結果を表1および表2に示す。
【0074】
(摺動性の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ120℃で4時間以上乾燥した後に、射出成型機(ファナック(株)製、ROBOSHOT S2000i100B)を用いて設定温度280℃、射出圧力60MPaにて試験片(63x63x3mm)を作成した。
得られた試験片をJIS K−7125に準じ、400g荷重をかけ相手材がポリカーボネート樹脂に対する動摩擦係数を測定し、0.3以下を良好とした。
当該相手材の作成条件は、次のとおり:
ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂(住化スタイロンポリカーボネート社製 カリバー200−80 粘度平均分子量:15000)を用いた。これを125℃で4時間以上乾燥した後、射出成型機(ファナック(株)製、ROBOSHOT S2000i100B)を用いて設定温度280℃、射出圧力60MPaにて相手材(150x90x3mm)を作成した。
【0075】
(透明性の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物の試験片を用い、JIS K7361に準じて試験片厚み3mmの光線透過率を測定し、光線透過率が80%以上を良好とした。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を満足する場合(実施例1〜4)にあっては、透明性および摺動性ともに良好な結果を示した。
【0079】
一方、ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を満足しない場合においては、いずれの場合も何らかの欠点を有していた。
【0080】
比較例1は、ポリエーテル誘導体(化合物B)の量が本発明の定める範囲より少ない場合で、摺動性に劣っていた。
比較例2は、ポリエーテル誘導体(化合物B)の量が本発明の定める範囲より多い場合で、透明性に劣っていた。
比較例3は、ポリエーテル誘導体(化合物B)を含有していない場合で、摺動性に劣っていた。
比較例4は脂肪酸エステル(PETS)の量が本発明の定める範囲より多い場合で、透明性に劣っていた。
【0081】
以上のように、本発明における技術の例示として実施の形態を説明した。そのために、詳細な説明を提供した。
【0082】
したがって、詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0083】
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略等を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂本来の性質である熱安定性、衝撃強度等を大きく損なうことなく、優れた透明性及び摺動性を備えたものであることから、電気、電子、IT等各種分野における軽量・薄肉化、意匠性、あるいは磨耗性等が要求される製品に対して好適に使用することが可能であり工業的利用価値が極めて高い。