(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る異常予兆診断装置1の構成図である。
異常予兆診断装置1は、内燃力発電機2(機械設備)に設置された複数のセンサ31〜33(
図2参照)の検出値を含む時系列データに基づき、内燃力発電機2に異常予兆が発生しているか否かを診断する装置である。前記した「異常予兆」とは、内燃力発電機2の異常が発生する前触れであり、「異常予兆診断」とは、異常予兆の有無を診断することである。
以下では、異常予兆診断装置1に関する説明に先立って、異常予兆の診断対象である内燃力発電機2と、この内燃力発電機2に設置されている各センサ31〜33(
図2参照)について簡単に説明する。
【0011】
<内燃力発電機の構成>
図2は、内燃力発電機2の説明図である。内燃力発電機2は、内燃機関21によって化学エネルギを運動エネルギに変換し、前記した運動エネルギを発電機27によって電気エネルギに変換する装置である。以下では、一例として、内燃機関21がディーゼルエンジンである場合について説明する。
【0012】
内燃力発電機2は、内燃機関21と、空気供給流路22と、空気供給ポンプ23と、燃料ガス供給流路24と、燃料ガス供給ポンプ25と、ガス排出流路26と、発電機27と、を備えている。
内燃機関21は、図示はしないが、シリンダ内に供給した空気及び燃料ガスを圧縮し、燃料ガスの自然発火に伴う膨張によってシリンダ内でピストンを往復させ、このピストンの往復によってクランクシャフトを回転するように構成されたディーゼルエンジンである。
【0013】
空気供給流路22は、内燃機関21の燃焼室(図示せず)に空気を導く流路である。空気供給ポンプ23は、燃焼室に向けて空気を圧送するものであり、空気供給流路22に設置されている。
燃料ガス供給流路24は、内燃機関21の燃焼室に燃料ガスを導く流路である。燃料ガス供給ポンプ25は、燃焼室に向けて燃料ガスを圧送するものであり、燃料ガス供給流路24に設置されている。
【0014】
ガス排出流路26は、内燃機関21で燃焼したガスを排出するための流路である。
発電機27は、内燃機関21の駆動によって発電を行うものであり、その回転子(図示せず)は内燃機関21のクランクシャフト(図示せず)に連結されている。
【0015】
<センサ>
吸気温度センサ31(第2センサ)は、内燃機関21に供給される空気の温度(吸気温度)を検出するセンサであり、空気供給流路22に設置されている。
排気温度センサ32(第1センサ)は、内燃機関21から排出されるガスの温度(排気温度)を検出するセンサであり、ガス排出流路26に設置されている。
発電電力センサ33(第2センサ)は、発電機27の発電電力を検出するセンサである。
【0016】
ここで「第1センサ」とは、その検出値が、内燃力発電機2の異常予兆の診断に直接的に用いられるセンサである。本実施形態では、排気温度センサ32が「第1センサ」に相当する。例えば、内燃機関21に供給される冷却水が不足したり、潤滑油が不足したりすると、内燃機関21の温度が異常に高くなり、燃焼室(図示せず)から排出されるガスの温度も高くなる。つまり、排気温度センサ32の検出値には、内燃力発電機2の状態(異常予兆の有無)が敏感に反映されるため、本実施形態では排気温度に基づいて異常予兆診断を行うようにしている。
【0017】
また、「第2センサ」とは、内燃力発電機2が正常である場合において、その検出値と、前記した「第1センサ」の検出値と、の間に相関関係があるセンサである。本実施形態では、吸気温度センサ31と、発電電力センサ33と、が「第2センサ」に相当する。
【0018】
例えば、内燃力発電機2が正常であるにもかかわらず、発電電力の指令値の変動や、外気温度(吸気温度)の変動に伴い、異常予兆の診断に用いる排気温度センサ32の検出値も大きく変動することが多い。
従来は、排気温度センサ32の検出値を所定閾値と比較することで、異常予兆診断が行われていたが、前記したように、内燃力発電機2の正常時においても排気温度センサ32の検出値が大きく変動するため、誤診断を招く可能性があった。
【0019】
これに対して本実施形態では、排気温度センサ32の検出値と吸気温度センサ31の検出値との相関関係を表す関数や、排気温度センサ32の検出値と発電電力センサ33の検出値との相関関係を表す関数を利用して、排気温度センサ32の検出値を補正しするようにしている。これらの関数については、後記する。
図2に示す各センサ31〜33の検出値は、通信手段34及びネットワークNを介して、所定周期で異常予兆診断装置1に送信される。
【0020】
なお、
図1では、複数の内燃力発電機2のそれぞれに関して、センサ31〜33の検出値がネットワークNを介して異常予兆診断装置1に送信される構成を図示したが、内燃力発電機2の個数は一つであってもよい。また、複数の内燃力発電機2の構成が全て同一である必要はない。
【0021】
<異常予兆診断装置の構成>
図1に示すように、異常予兆診断装置1は、通信手段11と、時系列データ取得手段12と、時系列データ記憶手段13と、関数導出手段14と、関数記憶手段15と、補正手段16と、補正後時系列データ記憶手段17と、診断手段18と、診断結果記憶手段19と、表示制御手段20と、を備えている。
【0022】
通信手段11は、ネットワークNを介して内燃力発電機2から送信されるデータを、所定の通信プロトコルに基づいて受信するものである。
時系列データ取得手段12は、ネットワークNを介して通信手段11が受信したデータのうち、内燃力発電機2に関する時系列データを取得する。前記した時系列データには、内燃力発電機2の識別情報と、センサ31〜33(
図2参照)の検出値と、それぞれのセンサ31〜33の識別情報と、センサ31〜33によって物理量が検出された日付・時刻と、が含まれる。
【0023】
時系列データ記憶手段13には、時系列データ取得手段12によって取得された時系列データが、例えば、データベースとして格納されている。
なお、時系列データ記憶手段13として、磁気ディスク装置、光ディスク装置、半導体記憶装置等を用いることができる(後記する関数記憶手段15、補正後時系列データ記憶手段17、及び診断結果記憶手段19についても同様)。
【0024】
関数導出手段14は、内燃力発電機2が正常であることが既知である過去の時系列データに基づき、吸気温度センサ31(
図2参照)の検出値と、排気温度センサ32(
図2参照)の検出値と、によって特定される点の分布の近似曲線を表す関数を導く機能を有している。
また、関数導出手段14は、内燃力発電機2が正常であることが既知である過去の時系列データに基づき、排気温度センサ32(
図2参照)の検出値と、発電電力センサ33(
図2参照)の検出値と、によって特定される点の分布の近似曲線を表す関数を導く機能も有している。
なお、前記した「近似曲線」には、「近似直線」も含まれる。
【0025】
図3(a)は、内燃力発電機2の吸気温度と、排気温度と、によって特定される点をプロットした散布図である。この散布図の横軸は、吸気温度センサ31(
図2参照)によって検出された吸気温度であり、縦軸は、排気温度センサ32(
図2参照)によって検出された排気温度である。
なお、
図3(a)に示す各点は、内燃力発電機2が正常であることが既知であり、かつ、所定の発電電力が得られるように内燃力発電機2を稼動させているときに得られた各検出値に関して、ひと月ごと(12ヶ月分)の平均値を算出したものである。
【0026】
図3(a)に示すように、内燃力発電機2が正常である場合には、吸気温度と排気温度との間に強い相関関係があり、また、吸気温度が高くなるほど排気温度も高くなっている。このような相関の有無は、事前の実験やシミュレーションの結果に基づいて予め特定されている。
【0027】
図2に示す関数導出手段14は、コンピュータ4の操作によって吸気温度センサ31及び排気温度センサ32が指定された場合、その検出値で特定される各点の分布の近似曲線を表す関数を導出する。このような近似曲線の導出方法として、例えば、最小二乗法を用いることができる。
図3(a)に示す例では、直線G
A(近似曲線)を表す関数:y=ax+bが、関数導出手段14によって導出されている。
【0028】
図3(b)は、内燃力発電機2の発電出力と、排気温度と、によって特定される点をプロットした散布図である。この散布図の横軸は、発電電力センサ33(
図2参照)によって検出された発電電力であり、縦軸は、排気温度センサ32(
図2参照)によって検出された排気温度である。
なお、
図3(b)に示す各点は、内燃力発電機2が正常であることが既知であり、かつ、吸気温度(外気温度)が略一定である期間に取得されたものである。
【0029】
図3(b)に示すように、内燃力発電機2が正常である場合には、発電出力と排気温度との間にも強い相関関係があり、発電電力が大きいほど排気温度が高くなっている。このような相関の有無は、事前の実験やシミュレーションの結果に基づいて予め特定されている。
【0030】
図2に示す関数導出手段14は、前記したように、コンピュータ4の操作によって排気温度センサ32及び発電電力センサ33が指定された場合、その検出値で特定される各点の分布の近似曲線を表す関数を導出する。
図3(b)に示す例では、直線G
B(近似曲線)を表す関数:y=cx+dが、関数導出手段14によって導出されている。
ちなみに、直線G
A,G
Bを表す関数を導くことができればよいため、
図3(a)に示す各点と、
図3(b)に示す各点と、を一対一で対応させる必要はない。
【0031】
図1に示す関数記憶手段15(記憶手段)には、直線G
Aを表す関数が、吸気温度センサ31に対応付けて格納されている。また、関数記憶手段15には、直線G
Bを表す関数が、発電電力センサ33に対応付けて格納されている。
補正手段16は、関数記憶手段15に格納されている2つの関数(y=ax+b、y=cx+d)に基づいて、排気温度の検出値(時系列データ)を補正する機能を有している。なお、補正手段16が実行する処理については後記する。
補正後時系列データ記憶手段17には、異常予兆の診断に用いられる排気温度の補正値が格納される。
【0032】
診断手段18は、補正後時系列データ記憶手段17に格納されている排気温度の補正値(補正後の時系列データ)に基づいて、内燃力発電機2の異常予兆の有無を診断する機能を有している。なお、診断手段18が実行する処理については後記する。
診断結果記憶手段19には、診断手段18の診断結果に関する情報が格納される。前記した診断結果には、内燃力発電機2の識別情報と、異常予兆の有無と、が含まれる。
【0033】
表示制御手段20は、診断手段18による診断結果を表示するための制御信号を表示装置5に出力する。例えば、表示制御手段20は、内燃力発電機2の識別情報を行とし、診断日の日付を列としてマトリクス形式で診断結果(異常予兆の有無)を表示装置5に表示させる。
【0034】
図4は、近似曲線を表す関数の導出に関するフローチャートである。
ステップS101において異常予兆診断装置1は、時系列データ取得手段12によって、内燃力発電機2が正常であるときの時系列データを取得する(時系列データ取得ステップ)。内燃力発電機2が正常に稼動していることは、前記したように、既知であるものとする。
ステップS102において異常予兆診断装置1は、ステップS101で取得した時系列データを時系列データ記憶手段13に格納する。
【0035】
ステップS103において異常予兆診断装置1は、関数導出手段14によって、近似曲線を表す関数を導出する。つまり、異常予兆診断装置1は、ユーザによるコンピュータ4の操作に応じて、吸気温度と排気温度とで特定される各点の分布を近似した直線G
A(
図3(a)参照)を表す関数を導出する。また、異常予兆診断装置1は、ユーザによるコンピュータ4の操作に応じて、発電出力と排気温度とで特定される各点の分布を近似した直線G
B(
図3(b)参照)を表す関数を導出する。
ステップS104において異常予兆診断装置1は、ステップS103で導出した関数を関数記憶手段15に格納する(記憶ステップ)。
【0036】
図5は、時系列データの補正に関するフローチャートである。
ステップS201において異常予兆診断装置1は、時系列データ取得手段12によって、診断対象の時系列データを取得する。診断対象の時系列データには、吸気温度センサ31(
図2参照)によって検出された吸気温度と、排気温度センサ32(
図2参照)によって検出された排気温度と、発電電力センサ33(
図2参照)によって検出された発電電力と、が含まれている。これらの各検出値に基づいて、以下で説明するように、排気温度センサ32の検出値が補正される。
【0037】
図6(a)は、排気温度の補正に関する説明図である。
図6(a)に示す説明図の横軸は時刻であり、縦軸は内燃力発電機2の排気温度である。なお、時刻t1,t2,t3に検出された排気温度に関しては、以下で説明する一連の補正処理(S201〜209)が既に施されているものとする。ここでは、時刻t4における排気温度の検出値T
Sを、この時刻t4における吸気温度の検出値T
Q(
図6(b)参照)と、発電電力の検出値W
Q(
図6(c)参照)と、に基づいて補正する場合について説明する。
【0038】
図5のステップS202において異常予兆診断装置1は、複数の「第2センサ」の中から一つを選択する。前記したように、「第2センサ」には、吸気温度センサ31(
図2参照)と、発電電力センサ33(
図2参照)と、が含まれる。異常予兆診断装置1は「第2センサ」として、例えば、吸気温度センサ31を選択する。
【0039】
ステップS203において異常予兆診断装置1は、ステップS201で取得した時系列データについて、吸気温度センサ31の検出値から所定の基準値を減算することで「第2差分」を算出する。
【0040】
図6(b)は、吸気温度に関する第2差分ΔT2と、排気温度に関する第1差分ΔT1
Aと、の関係を示す説明図である。
図6(b)に示す直線G
Aを表す関数は、吸気温度と排気温度との相関関係に基づくものであり、ステップS103(
図4参照)において導出され、予め関数記憶手段15に格納されている。
【0041】
ステップS203において異常予兆診断装置1は、吸気温度の検出値T
Qから所定の基準値T
P(例えば、20℃)を減算することで、第2差分ΔT2(=T
Q−T
P)を算出する。前記した基準値T
Pは、例えば、年間を通した吸気温度(外気温度)の平均値であり、予め設定されている。
図6(a)に示す例では、検出値T
Qが基準値T
Pよりも高いため、第2差分ΔT2は正の値になっている。
【0042】
ステップS204において異常予兆診断装置1は、第2差分ΔT2に対応する第1差分ΔT1
Aを算出する。すなわち、異常予兆診断装置1は、直線G
Aを表す関数を関数記憶手段15から読み出し、直線G
Aの傾きaを第2差分ΔT2に乗算することで、第1差分ΔT1
A(=a×ΔT2)を算出する。
ステップS205において異常予兆診断装置1は、ステップS204で算出した第1差分ΔT1
Aを記憶する。
【0043】
ステップS206において異常予兆診断装置1は、他に「第2センサ」が存在するか否かを判定する。他に「第2センサ」が存在する場合(S206:Yes)、異常予兆診断装置1の処理はステップS202に進む。本実施形態では、吸気温度センサ31の他に「第2センサ」として発電電力センサ33が存在する(S206:Yes)。
二回目のステップS202において異常予兆診断装置1は、複数の「第2センサ」の中から発電電力センサ33を選択し、さらにステップS203〜S205の処理を実行する。
【0044】
図6(c)は、発電電力に関する第2差分ΔW2と、排気温度に関する第1差分ΔT1
Bと、の関係を示す説明図である。
図6(c)に示す直線G
Bを表す関数は、発電電力と排気温度との相関関係に基づくものであり、ステップS103(
図4参照)において導出され、予め関数記憶手段15に格納されている。
【0045】
二回目のステップS203において異常予兆診断装置1は、発電電力の検出値W
Qから所定の基準値W
P(例えば、500kW)を減算することで、第2差分ΔW2(=W
Q−W
P)を算出する。前記した基準値W
Pは、例えば、内燃力発電機2がロード運転を行っているときの発電電力の平均値であり、予め設定されている。
図6(c)に示す例では、検出値W
Qが基準値W
Pよりも大きいため、第2差分ΔW2は正の値になっている。
【0046】
二回目のステップS204において異常予兆診断装置1は、第2差分ΔW2に対応する第1差分ΔT1
Bを算出する。すなわち、異常予兆診断装置1は、関数記憶手段15から直線G
Bを表す関数を読み出し、直線G
Bの傾きcを第2差分ΔW2に乗算することで、第1差分ΔT1
B(=c×ΔW2)を算出する。
二回目のステップS205において異常予兆診断装置1は、ステップS204で算出した第1差分ΔT1
Bを記憶する。
【0047】
以上の処理で、複数の第2センサ(吸気温度センサ31、発電電力センサ33)のそれぞれに関して第1差分ΔT1
A,ΔT1
Bが算出されたため(S206:Yes)、異常予兆診断装置1の処理はステップS207に進む。
【0048】
ステップS207において異常予兆診断装置1は、ステップS206で記憶した第1差分ΔT1
A,ΔT1
Bの和である第1差分積算値(ΔT1
A+ΔT1
B)を算出する。
ステップS208において異常予兆診断装置1は、排気温度の検出値T
Sから第1差分積算値(ΔT1
A+ΔT1
B)を減算することで、排気温度の補正値T
RS(=T
S−ΔT1
A−ΔT1
B)を算出する。
【0049】
つまり、異常予兆診断装置1は、吸気温度が所定の基準値T
Pであり、かつ、発電電力が所定の基準値W
Pとなるように内燃力発電機2を稼動したと仮定した場合の排気温度(補正値T
RS)を、直線G
A,G
Bの関数に基づいて推定する。
前記したように、吸気温度と排気温度との間には強い相関があり、また、発電電力と排気温度との間にも強い相関がある(
図3参照)。これらの相関を利用して、時々刻々と変動する吸気温度及び発電電力が一定である仮定して、排気温度を補正するようにしている。これによって、内燃力発電機2が正常である場合には、排気温度の補正値T
RSのばらつきが非常に小さくなる(
図6(a)参照)。
【0050】
ちなみに、外気温度が比較的低い冬季(T
Q<T
P)に検出された排気温度や、通常よりも小さな発電電力(W
Q<W
P)を供給しているときに検出された排気温度に関しては、その値を大きくするように排気温度の検出値が補正される。
【0051】
ステップS209において異常予兆診断装置1は、ステップS208で算出した排気温度の補正値T
RSを補正後時系列データ記憶手段17に格納し、排気温度の補正に関する処理を終了する(END)。
なお、前記したステップS202〜S209の処理(補正ステップ)は、ステップS201で取得した診断対象の時系列データのそれぞれについて、補正手段16(
図1参照)により実行される。
【0052】
図7は、異常予兆の有無の診断に関するフローチャートである。なお、以下で説明するステップS301〜S306の処理(診断ステップ)は、異常予兆診断装置1が備える診断手段18(
図2参照)によって実行される。また、
図7に示す「START」時には、直線G
A,G
Bを表す関数に基づいて排気温度の補正値T
RS(
図6(a)参照)が算出され、この補正値T
RSが補正後時系列データ記憶手段17に格納されているものとする。
【0053】
ステップS301において異常予兆診断装置1は、補正後時系列データ記憶手段17から排気温度の補正値T
RS(つまり、診断対象の時系列データ)を読み出す。
ステップS302において異常予兆診断装置1は、ステップS301で取得した排気温度の補正値T
RSが、所定範囲から外れているか否かを判定する。前記した「所定範囲」は、内燃力発電機2に異常予兆が発生しているか否かの判定基準となる範囲であり、事前の実験等に基づいて予め設定されている。例えば、異常予兆診断装置1は、排気温度の補正値T
RSが、
図6(a)に示す閾値T
L以上、かつ、閾値T
H以下である所定範囲から外れているか否かを判定する。
【0054】
ステップS302において排気温度の補正値T
RSが所定範囲から外れている場合(S302:Yes)、異常予兆診断装置1の処理はステップS303に進む。ステップS303において異常予兆診断装置1は、内燃力発電機2に「異常予兆あり」と診断する。
一方、ステップS302において排気温度の補正値T
RSが所定範囲に入っている場合(S302:No)、異常予兆診断装置1の処理はステップS304に進む。
【0055】
ステップS304において異常予兆診断装置1は、排気温度の補正値T
RS(つまり、診断対象の時系列データ)が他に存在するか否かを判定する。排気温度の補正値T
RSが他に存在する場合(S304:Yes)、異常予兆診断装置1の処理はステップS301に進む。一方、排気温度の補正値T
RSが他に存在しない場合(S304:No)、異常予兆診断装置1の処理はステップS305に進む。ステップS305において異常予兆診断装置1は、内燃力発電機2に関して「異常予兆なし」と診断する。
【0056】
ステップS303又はステップS305の処理を行った後、ステップS306において異常予兆診断装置1は、表示制御手段20(
図1参照)によって表示装置5(
図1参照)に診断結果を表示し、診断に関する処理を終了する(END)。
【0057】
<効果>
本実施形態では、排気温度の検出値T
S(
図6(a)参照)に関して、吸気温度が所定の基準値T
P(
図6(b)参照)であり、かつ、発電電力が所定の基準値W
P(
図6(c)参照)であると仮定した場合の補正値T
RSを算出し、この補正値T
RSに基づいて内燃力発電機2の異常予兆の有無を診断するようにしている。前記したように、内燃力発電機2が正常であれば、吸気温度や発電電力が大きく変動した場合でも、排気温度の補正値T
RSのばらつきは非常に小さい(
図6(a)参照)。したがって、内燃力発電機2が正常であるにもかかわらず「異常予兆あり」と誤診断してしまうことを防止できる。
また、吸気温度センサ31及び発電電力センサ33(2つの「第2センサ」)の検出値に基づいて排気温度センサ32(「第1センサ」)の検出値を補正するため、1つの「第2センサ」の検出値に基づく補正よりも、内燃力発電機2の異常予兆の有無を高精度に診断できる。
【0058】
図8(a)は、排気温度に関する実験データである。
図8(a)に示す各データは、8月1日〜9月20日の期間において、各時刻に検出された排気温度である。なお、8月24日に内燃力発電機2で「異常予兆あり」と診断され、その後にメンテナンスを行い、8月28日から再稼動した。
【0059】
図8(b)は、
図8(a)に示す領域Kの部分拡大図である。
図8(b)に示すように、内燃力発電機2が正常に稼動している期間(8月23日以前)においても排気温度が大きく変動していることがわかる。
仮に、補正前の排気温度をそのまま用い、所定閾値との比較に基づいて異常予兆の有無を診断した場合、内燃力発電機2が正常であるにもかかわらず「異常予兆あり」と誤診断される可能性が高い。内燃力発電機2の正常時において、例えば、実際の発電電力が大きく変動しているときには、この発電電力と強い相関を有する排気温度も大きく変動するからである。
【0060】
図9(a)は、排気温度の補正値に関する実験データである。
図9(a)に示す各データは、
図8(a)に示す各データを補正(S201〜S209:
図5参照)することで得られたものである。8月26日頃に行われたメンテナンス前では、排気温度の補正値が630℃付近に集まって分布しており、
図8(a)に示す排気温度と比べてデータのばらつきが非常に小さくなっている。
【0061】
図9(b)は、
図9(a)に示す領域Mの部分拡大図である。なお、
図9(b)に示す閾値T
H,T
Lは、
図6(a)に示す閾値T
H,T
Lに対応している。
図9(b)に示す例では、8月24日頃に排気温度の補正値が閾値T
Hよりも高くなり、診断手段18によって「異常予兆あり」と診断されている。例えば、内燃機関21(
図2参照)を冷却するための冷却水が不足している場合には、
図3(a)、(b)に示す相関関係が崩れて、排気温度の補正値が閾値T
Hよりも高くなり、「異常予兆あり」と診断される。このように本実施形態によれば、排気温度の補正値に基づいて、内燃力発電機2に関する異常予兆の有無を適切かつ高精度に診断できる。
【0062】
≪第2実施形態≫
第2実施形態に係る異常予兆診断装置1A(
図10参照)は、第1実施形態で説明した診断手段18(
図1参照)に代えて、データマイニング手段18A(
図10参照)を備えている。また、多数のセンサを備える機械設備6の異常予兆の有無を、異常予兆診断装置1Aによって診断する点が、第1実施形態とは異なっている。
なお、時系列データの補正に関する一連の処理(S201〜S209:
図5参照)については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0063】
図10は、第2実施形態に係る異常予兆診断装置1Aの構成図である。
異常予兆診断装置1Aは、機械設備6に異常予兆が発生しているか否かを診断する装置である。診断対象である機械設備6には、図示はしないが、多数(例えば、数百個)のセンサが設置されている。これらのセンサには、第1実施形態で説明したように、異常予兆の診断に直接的に用いられる「第1センサ」と、その検出値が「第1センサ」の検出値と相関を有する複数の「第2センサ」と、が含まれる。
【0064】
なお、第1実施形態では「第1センサ」が一つ(排気温度センサ32:
図2参照)である場合について説明したが、「第1センサ」が複数存在することもある。この場合において関数記憶手段15には、「第1センサ」の検出値と、「第2センサ」の検出値と、によって特定される点の分布の近似曲線を表す関数が、「第1センサ」及び「第2センサ」に対応付けて格納されている。
また、「第1センサ」及び「第2センサ」のいずれにも属しないセンサ(他のセンサの検出値との間で相関関係がほとんどないセンサ)も存在し、このセンサの検出値も異常予兆の診断に用いられる。
【0065】
<異常予兆診断装置の構成>
図10に示すように、異常予兆診断装置1Aは、通信手段11と、時系列データ取得手段12と、時系列データ記憶手段13と、関数導出手段14と、関数記憶手段15と、補正手段16と、補正後時系列データ記憶手段17と、データマイニング手段18Aと、診断結果記憶手段19と、表示制御手段20と、を備えている。
【0066】
補正後時系列データ記憶手段17には、前記した「第1センサ」に関する補正値と、「第1センサ」及び「第2センサ」のいずれにも含まれないセンサの検出値と、が機械設備6の識別情報、及び、各センサの検出時刻に対応付けて格納されている。
ちなみに、補正後時系列データ記憶手段17に格納される補正後の時系列データの中に「第2センサ」の検出値を含める必要はない。第1実施形態で説明したように、「第2センサ」の検出値が所定の基準値(一定値)であった場合を仮定して、「第1センサ」に関する補正値が算出されるからである。
【0067】
図11は、異常予兆診断装置1Aが備えるデータマイニング手段18Aの構成図である。
図11に示すように、データマイニング手段18Aは、学習手段181と、診断手段182、を備えている。
【0068】
学習手段181は、統計的なデータ分類手法の一つであるクラスタリングを行うことで、機械設備6の正常状態の範囲を示すクラスタ(正常モデル)を学習する機能を有している。前記したクラスタとは、多次元ベクトル空間においてクラスタ中心c(
図12参照)及びクラスタ半径r(
図12参照)で特定される領域であり、機械設備6が正常であることが既知である期間に取得された時系列データを用いて学習される。
【0069】
図11に示すように、学習手段181は、学習対象データ取得部181aと、クラスタ学習部181bと、クラスタ情報記憶部181cと、を備えている。
学習対象データ取得部181aは、学習対象となる時系列データ(学習対象データ)を、補正後時系列データ記憶手段17から取得する。この学習対象データは、機械設備6が正常であることが既知である期間に取得された時系列データに関して、第1実施形態で説明した補正(S201〜S209:
図5参照)が施されたデータである。
【0070】
クラスタ学習部181bは、学習対象データ取得部181aによって取得された学習対象データに基づいて、機械設備6の正常状態の範囲を示すクラスタを学習する。ここで、クラスタ学習部181bによって学習されるクラスタについて説明する。
【0071】
図12は、クラスタ学習部181bによって学習されるクラスタの説明図である。
機械設備6の状態は、多次元ベクトル空間上において、各センサの検出値(「第1センサ」に関しては補正値)が正規化された値を成分とする特徴ベクトルとして表される。ここで「正規化」とは、センサの検出値等を当該センサの代表値(平均値、標準偏差等)で除算するなどして無次元量化し、互いに比較できるようにする処理である。
【0072】
なお、説明をわかりやすくするために、
図12では、3個のセンサに対応する3次元ベクトル空間上で各特徴ベクトルを図示している。また、通常、クラスタは複数存在するが、
図12ではクラスタを1個だけ記載している。
図12に示す各点が、それぞれ、各時刻に取得された時系列データに対応している。
【0073】
以下では、一例として、非階層的クラスタリングであるk平均法を用いてクラスタリングを行う場合について説明する。クラスタ学習部181bは、時系列データに対応する各特徴ベクトルに関して、類似する特徴ベクトルごとにクラスタと呼ばれるいくつかの代表グループに分類する。すなわち、クラスタ学習部181bは、各特徴ベクトルに対してランダムにクラスタを割り振り、割り振ったデータに基づいて各クラスタの中心(クラスタ中心c:
図12参照)を算出する。クラスタ中心cとは、例えば、クラスタに属する複数の特徴ベクトル(各軸α,β,γの成分:
図12参照)の重心である。
【0074】
次に、クラスタ学習部181bは、所定の特徴ベクトルと各クラスタ中心cとの距離を求め、この距離が最も小さくなるクラスタに当該特徴ベクトルを割り当て直す。このような処理を全ての特徴ベクトルについて実行し、クラスタの割り当てが変化しなかった場合もはクラスタに関する学習処理を終了する。それ以外の場合は、新しく割り振られたクラスタからクラスタ中心cを再計算し、前記した処理を繰り返す。このようにしてクラスタ学習部181bは、各時系列データに対応する特徴ベクトルを複数のクラスタに分類する。
【0075】
さらに、クラスタ学習部181bは、各クラスタについてクラスタ中心c(
図12参照)の座標値と、クラスタ半径r(
図12参照)と、を算出する。クラスタ半径rは、例えば、クラスタ中心cと特徴ベクトルとの距離の平均値である。なお、クラスタ半径rの算出方法はこれに限定されず、例えば、特徴ベクトルの各成分の分散値に基づいてクラスタ半径rを算出するようにしてもよい。
図11に示すクラスタ情報記憶部181cには、クラスタ学習部181bによって学習されたクラスタに関するクラスタ情報(クラスタ中心c、クラスタ半径r)が格納されている。
【0076】
診断手段182は、学習手段181によって学習されたクラスタを用いて、機械設備6の異常予兆の有無を診断する機能を有している。診断手段182は、診断対象データ取得部182aと、異常測度算出部182bと、診断部182cと、を備えている。
【0077】
診断対象データ取得部182aは、診断対象となる時系列データ(診断対象データ)を補正後時系列データ記憶手段17から取得する。
異常測度算出部182bは、診断対象データ取得部182aによって取得された診断対象データを用いて、機械設備6の異常測度uを算出する。まず、異常測度算出部182bは、診断対象データを正規化(無次元量化)し、各時系列データを特徴ベクトルに変換する。
【0078】
そして、異常測度算出部182bは、診断対象データの特徴ベクトルに最も近いクラスタ中心c(
図12参照)を有するクラスタを特定し、このクラスタに基づいて診断対象データの異常測度uを算出する。すなわち、異常測度算出部182bは、特定したクラスタのクラスタ中心cから診断対象データまでの距離d(
図12参照)と、クラスタ半径r(
図12参照)と、を用いて、例えば、(数式1)に基づき異常測度uを算出する。
【0080】
異常測度算出部182bは、算出した異常測度uを診断部182cに出力する。また、異常測度算出部182bは、診断対象データと、その異常測度uと、を対応付けて診断結果記憶手段19に格納する。
【0081】
診断部182cは、異常測度算出部182bから入力される異常測度uに基づいて、機械設備6に関する異常予兆の有無を診断する機能を有している。なお、診断部182cが実行する処理については後記する。
【0082】
<異常予兆診断装置の動作>
図13は、学習手段181が実行する学習処理のフローチャートである。
ステップS401において学習手段181は、学習対象データ取得部181aによって、補正後時系列データ記憶手段17から学習対象データを取得する。この学習対象データは、機械設備6が正常であることが既知である期間に取得され、さらに、補正手段16による補正が施された時系列データである。
【0083】
ステップS402において学習手段181は、クラスタ学習部181bによって、機械設備6の正常状態の範囲を表すクラスタを学習する(学習ステップ)。すなわち、学習手段181は、学習対象データを特徴ベクトルに変換し、各特徴ベクトルをクラスタリングする。
ステップS403において学習手段181は、ステップS402の学習結果をクラスタ情報記憶部181cに格納し、学習処理を終了する(END)。
【0084】
図14は、診断手段182が実行する診断処理のフローチャートである。
ステップS501において診断手段182は、診断対象データ取得部182aによって、補正後時系列データ記憶手段17から診断対象データを取得する。この診断対象データは、補正手段16による補正が施された時系列データである。
ステップS502において診断手段182は、異常測度算出部182bによって、診断対象データの異常測度uを算出する。すなわち、診断手段182は、診断対象データの特徴ベクトルに最も近いクラスタ中心cを有するクラスタに基づいて、異常測度uを算出する。
【0085】
ステップS503において診断手段182は、診断部182cによって、診断対象データに関する診断処理を実行する(診断ステップ)。すなわち、診断手段182は、ステップS502で算出した異常測度uと、所定閾値(=1)と、の大小を比較することで、機械設備6に関する異常予兆の有無を診断する。
異常測度u≦1である場合、診断対象データはクラスタの領域内(つまり、機械設備6が正常である範囲内)に存在している。全ての診断対象データについて異常測度u≦1である場合、診断手段182は機械設備6に関して「異常予兆なし」と診断する。
また、異常測度u>1である診断対象データが少なくとも一つ存在する場合、その診断対象データはクラスタの領域外に存在しているから、診断手段182は機械設備6に関して「異常予兆あり」と診断する。
【0086】
ステップS504において診断手段182は、ステップS503の診断結果を診断結果記憶手段19に格納し、診断処理を終了する(END)。
【0087】
<効果>
図15は、学習手段181によって学習された複数のクラスタD1,D2,D3と、各時系列データの特徴ベクトルと、を示す説明図である。
図15に示す各点が、それぞれ、診断対象データの特徴ベクトルを表している。
第1実施形態で説明したように、補正手段16(
図10参照)による補正処理(S201〜S209:
図5参照)によって、「第1センサ」に関する補正値のばらつきが非常に小さくなる。このような補正値を含む学習対象データに基づいて、クラスタD1,D2,D3が学習される。したがって、補正を行わない場合(破線で示す各クラスタ)と比較して、実線で示すクラスタD1,D2,D3のクラスタ半径r1
α,r2
α,r3
αを小さくすることができる(r1
α<r1等)。
【0088】
従来は、機械設備6が正常であっても、「第1センサ」の検出値が非常に大きい学習対象データと、「第1センサ」の検出値が非常に小さい学習対象データと、が混在することがあった。この場合、多次元ベクトル空間において各特徴ベクトルが広範囲に亘って分布するため、クラスタ半径が徒に大きくなりやすく、異常予兆に関して誤診断を招く(例えば、実際には機械設備2で異常予兆が発生していても「異常予兆なし」と診断する)可能性があった。
【0089】
これに対して本実施形態によれば、「第2センサ」の検出値との相関関係に基づいて「第1センサ」の検出値を補正することで、各特徴ベクトルが広範囲に亘って分布することを抑制できる。したがって、機械設備6の正常状態をクラスタとして適切に反映させ、ひいては、機械設備6の異常予兆を適切かつ高精度に診断できる。
【0090】
≪変形例≫
以上、本発明に係る異常予兆診断装置1,1Aについて各実施形態により説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、第1実施形態では、内燃力発電機2の異常予兆の診断に直接的に用いる「第1センサ」が排気温度センサ32(
図2参照)であり、「第2センサ」が吸気温度センサ31(
図2参照)及び発電電力センサ33(
図2参照)である場合について説明したが、これに限らない。すなわち、内燃力発電機2の内燃機関21で吸熱した冷却水の温度を検出する冷却水温度センサを「第1温度センサ」とし、吸気温度センサ31及び発電電力センサ33を「第2温度センサ」としてもよい。
【0091】
また、例えば、内燃力発電機2の内燃機関21で吸熱した潤滑油の温度を検出する潤滑油温度センサを「第1温度センサ」とし、吸気温度センサ31及び発電電力センサ33を「第2温度センサ」としてもよい。
また、第1実施形態では、2種類の「第2センサ」(吸気温度センサ31及び発電電力センサ33)が存在する場合について説明したが、第2センサは1種類であってもよいし、また、3種類以上であってもよい。なお、第2実施形態についても同様のことがいえる。
【0092】
また、第1実施形態では、異常予兆の診断対象が内燃力発電機2(
図2参照)である場合について説明したが、これに限らない。すなわち、ガスタービン、化学プラント、分散電源発電設備、医療設備、通信設備等の「機械設備」を、異常予兆の診断対象としてもよい。この場合において、「機械設備」に設置されているセンサに含まれる「第1センサ」及び「第2センサ」は、実験やシミュレーションに基づいて事前に選定される。
【0093】
また、第2実施形態では、クラスタ学習部181b(
図11参照)が非階層的クラスタリングであるk平均法を用いて学習処理を行う場合について説明したが、これに限らない。例えば、クラスタ学習部181bが、非階層的クラスタリングとしてファジィクラスタリングや混合密度分布法等に基づいて学習処理を行うようにしてもよい。
また、第2実施形態では、診断対象が機械設備6である場合について説明したが、この機械設備6には、内燃機関21(
図2参照)と、発電機27(
図2参照)と、を備える内燃力発電機2(
図2参照)も含まれる。この場合において、「第1センサ」には排気温度センサ32が含まれ、また、「第2センサ」には、吸気温度センサ31及び発電電力センサ33が含まれる。
【0094】
また、各実施形態では、関数導出手段14(
図1、
図10参照参照)によって、直線G
A,G
B(近似曲線:
図3参照)を表す関数を求める場合について説明したが、これに限らない。例えば、近似曲線を表す関数として、次数が二以上である多項式を用いてもよいし、また、指数関数や対数関数を用いてもよい。
【0095】
また、
図1、
図10に示す各構成は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、前記の各構成は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テープ、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0096】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。