(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走査方向に対して直交する直線方向に並んだ複数のコイルからなる第1列コイル群と、前記第1列コイル群に平行になるように並んだ複数のコイルからなる第2列コイル群とを有するマルチコイルプローブを備えた渦電流検査装置であって、
前記第1列コイル群中の二つのコイルで構成されるコイル対を用いて起電力信号を測定する直交検出モードと、
前記走査方向に対して交差する方向に並んだ前記第1列および第2列コイル群中の二つのコイルで構成される第1コイル対を用いて起電力信号を測定する第1交差検出モードと、
前記走査方向に対して交差する方向が前記第1コイル対が交差する方向と同じ側であって、前記第1コイル対のコイル対交差角よりも大きいコイル対交差角を有する方向に並んだ前記第1列および第2コイル群中の二つのコイルで構成される第2コイル対を用いて起電力信号を測定する第2交差検出モードとを具備していることを特徴とする渦電流検査装置。
最大欠陥交差角が、欠陥に対する起電力信号の信号強度がゼロとなる欠陥交差角を含まない単一の欠陥交差角の範囲に収められている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の渦電流検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来の装置を用いる場合であっても、最大欠陥交差角が大きい場合や、材料物性(導電率などの電磁気特性)等の影響により欠陥の方向に対する感度変化が大きい場合などでは、感度の低下に起因して必ずしも確実に欠陥を探知できないことがある。
【0007】
例えば、
図4(b)に示すような感度変化が互いに異なる材料M、Nで形成された2つの被検体を測定する場合、材料Nは材料Mに比べて感度変化が大きく、材料Mでは起電力信号の信号強度が0となる交差角が約55°であるのに対し、材料Nでは約35°となっている。そのため従来のような複数のコイルが正三角形状の千鳥状に配列(最大交差角30°)された渦電流検査装置を用いて探傷する場合、材料Nで形成された被検体の測定では欠陥交差角が大きくなると起電力信号が急激に低下し、上記欠陥交差角が最大欠陥交差角近傍となる状態では十分な強度の起電力信号が得られず、その結果、欠陥を確実に検知できないおそれがある。
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、感度低下を抑制することができ、欠陥を確実に探知することができる渦電流検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(1)走査方向に対して直交する直線方向に並んだ複数のコイルからなる第1列コイル群と、前記第1列コイル群に平行になるように並んだ複数のコイルからなる第2列コイル群とを有するマルチコイルプローブを備えた渦電流検査装置であって、
前記第1列コイル群中の二つのコイルで構成されるコイル対を用いて起電力信号を測定する直交検出モードと、
前記走査方向に対して交差する方向に並んだ前記第1列および第2列コイル群中の二つのコイルで構成される第1コイル対を用いて起電力信号を測定する第1交差検出モードと、
前記走査方向に対して交差する方向が前記第1コイル対が交差する方向と同じ側であって、前記第1コイル対のコイル対交差角よりも大きいコイル対交差角を有する方向に並んだ前記第1列および第2コイル群中の二つのコイルで構成される第2コイル対を用いて起電力信号を測定する第2交差検出モードとを具備していることを特徴とする渦電流検査装置、
(2)起電力信号に対し、コイル対を構成する二つのコイルの間隔に応じて所定の補正を行う信号強度補償部を有している前記(1)に記載の渦電流検査装置、
(3)起電力信号の信号強度の最大値と所定の基準値とを用いて欠陥の有無を判定する信号強度測定部を有している前記(1)または(2)に記載の渦電流検査装置、
(4)基準信号に対する起電力信号の位相角を用いて欠陥の有無を判定する信号位相評価部を有している前記(1)から(3)のいずれか1項に記載の渦電流検査装置、
(5)第1列および第2列コイル群におけるコイルが平面視で千鳥状に配置されている前記(1)から(4)のいずれか1項に記載の渦電流検査装置、並びに
(6)最大欠陥交差角が、欠陥に対する起電力信号の信号強度がゼロとなる欠陥交差角を含まない単一の欠陥交差角の範囲に収められている前記(1)から(5)のいずれか1項に記載の渦電流検査装置
に関する。
【0010】
なお、「起電力信号」とは、コイル対を用いて測定された起電力の信号を意味し、「制御信号」とは、コイル対を用いて被検体に入力する信号を意味する。また、「コイル対交差角」とは、マルチコイルプローブの走査方向に対してコイル対を構成する二つのコイルの並び方向(以下、コイル対に対応して「第1コイル対方向」などともいう)がなす角度を意味する。また、「欠陥交差角」とは、コイル対方向と欠陥の長手方向とがなす角度を意味し、「最大欠陥交差角」とは、直交検出モード、第1交差検出モードおよび第2交差検出モードで用いられるコイル対のうちの欠陥交差角が最も小さくなるコイル対が取り得る欠陥交差角の最大値を意味する。また、「走査方向に対して交差する方向が第1コイル対が交差する方向と同じ側」とは、コイル対方向に沿った直線が直交座標系の原点を通る直線であると仮定した場合、上記直交座標系の原点を通る上記直線と異なる直線が上記直線と同じ象限に存する態様を意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、感度低下を抑制することができ、欠陥を確実に探知することができる渦電流検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の渦電流検査装置は、走査方向に対して直交する直線方向に並んだ複数のコイルからなる第1列コイル群と、上記第1列コイル群に平行になるように並んだ複数のコイルからなる第2列コイル群とを有するマルチコイルプローブを備えた渦電流検査装置であって、上記第1列コイル群中の二つのコイルで構成されるコイル対を用いて起電力信号を測定する直交検出モードと、上記走査方向に対して交差する方向に並んだ上記第1列および第2列コイル群中の二つのコイルで構成される第1コイル対を用いて起電力信号を測定する第1交差検出モードと、上記走査方向に対して交差する方向が上記第1コイル対が交差する方向と同じ側であって、上記第1コイル対のコイル対交差角よりも大きいコイル対交差角を有する方向に並んだ上記第1列および第2コイル群中の二つのコイルで構成される第2コイル対を用いて起電力信号を測定する第2交差検出モードとを具備していることを特徴とする。
【0014】
当該渦電流検査装置は、上記直交検出モード、第1交差検出モードおよび第2交差検出モードを具備していることで、直交検出モードおよび第1交差検出モードのみを具備している渦電流検査装置に比して最大欠陥交差角を小さくすることができ、欠陥を確実に探知することができる。
【0015】
以下、当該渦電流検査装置の第1および第2の実施形態について
図1〜
図11を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。
【0016】
なお、以下の実施形態では、検査対象として板状の被検体を検査する場合について説明する。また、便宜上、マルチコイルプローブの長手方向をX方向、マルチコイルプローブの走査方向をY方向、並びに上記X方向およびY方向に直交する方向をZ方向とする。
【0017】
また、本明細書において、「欠陥」とは、き裂、欠損などの幾何学上の特異的部位(傷)を意味している。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る渦電流検査装置の概略構成図である。当該渦電流検査装置1は、
図1に示すように、概略的に、本体100と、渦電流探傷器200と、プローブ移動制御器300と、表示器400とにより構成されている。
【0019】
本体100は、マルチコイルプローブ110と、プローブ移動ユニット120と、ガイドレール130と、プローブ押さえ治具140と、緩衝材150と、押さえ調整ねじ160とを備えている。
【0020】
マルチコイルプローブ110は、
図2に示すように、走査方向(Y方向)に対して直交する直線方向(X方向)に並んだ複数のコイル112からなる第1列コイル群R1と、第1列コイル群R1に平行になるように並んだ複数のコイル112からなる第2列コイル群R2とを有している。第1列および第2列コイル群R1、R2を構成するコイル112は、被検体s内に渦電流を励起することと、被検体sの表層部での渦電流分布の変化を検出することの両方の作用を行う。以下、被検体s内に渦電流を励起するコイル112を「励磁コイル」、被検体s表層部での渦電流分布の変化を検出するコイル112を「検出コイル」ともいう。なお、上記第1列コイル群R1を構成するコイル112を、紙面上から順にコイルa1、コイルa2、・・・と称する。また、上記第2列コイル群R2を構成するコイル112を、紙面上から順にコイルb1、コイルb2、・・・と称する。
【0021】
第1列および第2列コイル群R1、R2におけるコイル112は、平面視で互いに半ピッチずらした千鳥状に配置されている。このように、上記コイル112が千鳥状に配置されていることで、最大欠陥交差角を小さくして起電力信号の信号強度を高めることができ、欠陥をさらに確実に探知することができる。上記千鳥状のコイル配置としては、第1列コイル群R1を構成するコイル112と第2コイル群R2を構成するコイル112とを互いに半ピッチずらした千鳥状の配置が好ましく、互いに半ピッチずらした千鳥状の配置であって各コイル112が仮想正三角形の各頂点に位置する配置がより好ましい。これにより、最大欠陥交差角を小さくすることでき、欠陥をさらに確実に探知することができる。
【0022】
また、最大欠陥交差角は、欠陥に対する起電力信号の信号強度がゼロとなる欠陥交差角を含まない単一の欠陥交差角の範囲に収められていることも好ましい。このように、最大欠陥交差角が上記範囲であることで、欠陥があるにもかかわらず起電力信号の信号強度がゼロとなるのを回避することができ、欠陥をよりいっそう確実に探知することができる。
【0023】
マルチコイルプローブ110は、具体的には、コイル112を固定し電気的に配線を施工した基板111と、渦電流信号の変化を検出するコイル112の選択および切り替えを行うマルチプレクサ回路部113とを更に有している。これら基板111とコイル112とマルチプレクサ回路部113とは電気的に結線されており、マルチプレクサ回路部113は、後述する渦電流探傷器200に接続されている。マルチプレクサ回路部113には検出モードに応じた励磁コイルおよび検出コイルの切り替えプログラムが記憶されており、渦電流探傷器200からの指示でプログラムが作動して渦電流を測定する。なお、基板111は、可撓性を有する材料により形成されてることが好ましい。これにより、曲面部を測定する際に被検体sとの密着性を高めることができる。
【0024】
プローブ移動ユニット120は、マルチコイルプローブ110を保持すると共に、マルチコイルプローブ110を被検体sに対して走査方向に平行移動する。このプローブ移動ユニット120は、ガイドレール130に沿って移動する車輪(不図示)と、車輪を動かすモータ(不図示)と、マルチコイルプローブ110の移動量を測定するエンコーダ(不図示)とを有し、マルチコイルプローブ110をY方向(走査方向)に平行移動させて測定を行う。プローブ移動ユニット120の移動制御は、後述するプローブ移動制御器300により行われる。
【0025】
ガイドレール130は、プローブ移動ユニット120を平行移動できるように支持する。プローブ押さえ治具140は、マルチコイルプローブ110を一定の押し付け力で被検体sに当接させる。緩衝材150は、スポンジ等で形成され、マルチコイルプローブ110の被検体sへの押し付け力を均一化する。押さえ調整ねじ160は、マルチコイルプローブ110の押し付け力を調整する。
【0026】
渦電流探傷器200は、検出コイルで測定された起電力信号を入力とし、上記起電力信号の中から探傷信号を取得し、A/D変換器を介してデジタル信号として出力する。渦電流探傷器200は、概略的に、
図3に示すように、検出モード制御部301、励磁信号制御部302、起電力信号測定部303、信号強度測定部304、信号位相評価部305、位置制御部306、欠陥判定部307、信号強度補償部308、および描画部309により構成されている。
【0027】
検出モード制御部301は、直交検出モード、第1交差検出モードおよび第2交差検出モードの中から検出モードを選択し、励磁信号制御部302と起電力信号測定部303と信号強度補償部308とへ検出モードに関する信号を送信する。また、検出モード制御部301は、位置制御部306にプローブ移動ユニット120の移動指示を送ると共にその移動量を受信する。
【0028】
励磁信号制御部302は、検出モード制御部301からの信号を受信し、マルチプレクサ回路部113に励磁コイルを指定して励磁信号を送信する。起電力信号測定部303は、マルチコイルプローブ110で検出した信号をマルチプレクサ回路部113から受信して、信号強度測定部304および描画部309に伝達する。なお、マルチコイルプローブ110における励磁コイルでの励磁および検出コイルでの検出は連続して行われる。また、起電力信号測定部303は、全検出モードでの起電力信号の測定が終了したときに、検出モード制御部301にその位置での測定終了の信号を送る。
【0029】
信号強度測定部304は、渦電流検査装置1を校正するために用いられる基準となる欠陥(以下、「校正欠陥」ともいう)の測定によりあらかじめ取得した基準信号が記憶されており、検出コイルにより測定された起電力信号の信号強度の最大値と所定の基準値とを用いて欠陥の有無を判定する。このように、信号強度測定部304を有していることで、当該渦電流検査装置1は、欠陥を一律に判定することができる。
【0030】
信号位相評価部305は、校正欠陥の測定によりあらかじめ取得した基準信号が記憶されており、基準信号に対する上記起電力信号の位相角を用いて欠陥の有無を判定する。このように、信号位相評価部305を有していることで、当該渦電流検査装置1は、起電力信号の由来を判別することができ、欠陥をより確実に探知することができる。
【0031】
位置制御部306は、検出モード制御部301からの信号を受信し、プローブ移動制御器300にプローブ移動ユニット120の移動指示を送ると共にその移動量を記憶し、この記憶された移動量を検出モード制御部301と描画部309に送信する。また、欠陥判定部307は、信号強度測定部304および信号位相評価部305の評価結果に基づいて起電力信号を評価し、この評価結果を描画部309に送信する。
【0032】
信号強度補償部308は、測定された起電力信号に対し、コイル対を構成する二つのコイルの間隔に応じて所定の補正を行う。このように、信号強度補償部308を有していることで、当該渦電流検査装置1は、検出モードごとのコイル間隔の差異による信号の感度差を補償することができ、精度よく欠陥を探知することができる。ここで、本実施形態では3つの検出モードの実施が例示されているが、各検出モードでは励磁コイルと検出コイルの間隔が異なるため、検出モードごとに起電力信号のレベルに差が生じる。そこで、信号強度補償部308を用いて検出モードでのコイル間隔に応じて信号強度測定部304で測定された信号強度に係数を乗算して感度差を補償する。信号強度補償部308で補償された信号は信号強度測定部304に返信される。また、描画部309は、起電力信号測定部303、位置制御部306および欠陥判定部307からの出力(検査結果)を集積および記録すると共に、検査結果を表示器400に送信する。
【0033】
なお、上述した渦電流探傷器200としては、例えば、パソコン等の汎用の演算処理装置を用いることができる。渦電流探傷器200として上記演算処理装置を用いる場合、演算処理装置は単一の装置であってもよく、演算処理を分担させた複数の装置であってもよい。
【0034】
プローブ移動制御器300は、プローブ移動ユニット120の移動を制御する。プローブ移動制御器300は、プローブ移動ユニット120の移動量を記憶し、その移動量を検出モード制御部301および描画部309に送信する。
【0035】
表示器400は、描画部309から受信した検査結果を表示する。表示器400としては、例えば、二次元ディスプレイ等のモニタなどを採用することができる。上記検査結果は、例えば、測定位置に対応付けて二次元画像としてモニタ上に表示される。
【0036】
次に、上述した構成の渦電流検査装置1を用いた検出モードおよび欠陥判定方法について詳述する。
【0037】
[検出モード]
上述したように、欠陥交差角や材料物性(導電率などの電磁気特性)等により信号強度が変化するため(
図4(b)参照)、最大欠陥交差角が可及的に小さくなるような検出モードにすることが、欠陥の識別性を向上させるためには重要である。
【0038】
しかしながら、一定の間隔でコイル112が配列されたマルチコイルプローブ110を用いて欠陥方向に応じた検出モードを複数設定すると、検出モードにより励磁コイルと検出コイルとの間隔が種々異なる。
図5は、コイル間隔比と信号強度比との関係の一例を示す概略図である。この図から分かるように、コイル間隔の指標となるコイル間隔比が大きくなるにつれて起電力信号の信号強度比が低下する。
【0039】
そこで、あらかじめコイル間隔による信号強度の低下率を渦電流探傷器200に保有しておこことで、検出モードごとのコイル間隔の相異に起因する信号強度の差異を補正することができる。
【0040】
ここで、本実施形態の検出モードについて、
図6〜
図8を参照して説明する。これらの図に示すように、当該渦電流検査装置1は、直交検出モードと、第1交差検出モードと、第2交差検出モードとを具備している。なお、
図6〜
図8は、
図2に示したマルチコイルプローブ110のうちの一部のコイル112の配列のみを示している。また、これらの検出モードではマルチコイルプローブ110を図中Y方向に走査するものとする。
【0041】
直交検出モードは、
図6に示すように、第1列コイル群R1中の二つのコイル112で構成されるコイル対を用いて起電力信号を測定するモードである。このモードでは、例えば、コイルa1を励磁コイル、コイルa2を検出コイルとして測定を行った後、コイルa2を励磁コイル、コイルa3を検出コイルとして測定を行い、以下第1列コイル群R1中のコイル112を順次切り替えながら測定を行う。このモードは、X軸方向に進展した欠陥の検出性に優れている。
【0042】
第1交差検出モードは、
図7に示すように、走査方向に対して交差する方向に並んだ第1列および第2列コイル群R1、R2中の二つのコイル112で構成される第1コイル対を用いて起電力信号を測定するモードである。このモードでは、例えば、コイルa1を励磁コイル、コイルb1を検出コイルとして測定を行った後、コイルa2を励磁コイル、コイルb1を検出コイルとして測定を行う。次いで、コイルa2を励磁コイル、コイルb2を検出コイルとして測定を行った後、コイルa3を励磁コイル、コイルb2を検出コイルとして測定を行い、以下第1列コイル群R1中のコイル112および第2列コイル郡R2中のコイル112を順次切り替えながら測定を行う。このモードは、Y軸方向に進展した欠陥の検出性に優れている。
【0043】
第2交差検出モードは、
図8に示すように、走査方向に対して交差する方向が第1コイル対が交差する方向と同じ側であって、第1コイル対のコイル対交差角よりも大きいコイル対交差角を有する方向に並んだ第1列および第2列コイル群R1、R2中の二つのコイル112で構成される第2コイル対を用いて起電力信号を測定するモードである。このモードは、第1交差検出モードとは励磁コイルと検出コイルとの組合せが異なっている。このモードでは、例えば、コイルa1を励磁コイル、コイルb2を検出コイルとして測定を行った後、コイルa3を励磁コイル、コイルb1を検出コイルとして測定を行う。次いで、コイルa2を励磁コイル、コイルb3を検出コイルとして測定を行った後、コイルa4を励磁コイル、コイルb2を検出コイルとして測定を行い、以下第1列コイル群R1中のコイル112および第2列コイル郡R2中のコイル112を順次切り替えながら測定を行う。このモードは、Y軸に対して斜め方向に進展した欠陥の検出性に優れている。
【0044】
なお、上述した直交検出モード、第1交差検出モードおよび第2交差検出モードの切り替え、並びに上記各モードにおける励磁コイルおよび検出コイルの選定は、マルチプレクサ回路部113のプログラム動作で行われる。
【0045】
このように、当該渦電流検査装置1が直交検出モード、第1交差検出モードおよび第2交差検出モードを具備することで、
図6〜
図8に示すように、各コイル112を仮想正三角形の各頂点に位置するように配置した場合、最大欠陥交差角は15°になる。これは、直交検出モードおよび第1交差検出モードの2つの検出モードのみ具備する従来の渦電流検査装置において得られる最大欠陥交差角30°の半分の値である。これを
図4(b)に示す材料Nにあてはめると、欠陥交差角30°で信号強度が約25%であるのに対し、欠陥交差角15°では信号強度が約65%となるので、信号とノイズとの区別が明確となって欠陥を確実に識別することができる。なお、第2交差検出モードにおけるコイル間隔は第1交差検出モードのものに比して√3倍となるが、信号強度補償部308により補償することで、補正された強度の信号を得ることができる。
【0046】
[欠陥判定方法]
欠陥の判定は二段階で行われる。第一段階としては、信号強度を用いる。具体的には、まず、校正欠陥をあらかじめ測定して基準信号を取得し、取得した基準信号からその最大値A1を得る。なお、実際に発生する欠陥は校正欠陥のようにはっきりした性状でないため信号強度が校正欠陥に比して大きくない。そこで、信号の最大値A1に係数αを乗じてこれを欠陥判定の基準値A0(=α×A1)とする。
【0047】
第二段階としては、制御信号に対する起電力信号の位相変化に基づいて、欠陥信号とノイズ信号とを識別する。上記位相変化はリサージュ波形を用いて評価する。
図9は、
図1の渦電流検査装置を用いて得られるリサージュ波形の概略説明図であって、(a)は欠陥に起因する起電力信号の一例、(b)はリフトオフに起因する起電力信号の一例をそれぞれ示す。
図9(a)、(b)において、横軸は制御信号Sの信号強度、縦軸は起電力信号Tの信号強度をそれぞれ示しており、これにより制御信号Sと起電力信号Tとの位相角を表すことができる。一般に、校正欠陥の位相は、制御信号Sに対する起電力信号Tの位相角が90°となるように設定されている。そのため、欠陥に起因するリサージュ波形の位相角は、
図9(a)に図示された太い実線のように、約90°となる。これに対し、ノイズの一種であるリフトオフ信号(マルチコイルプローブ110が被検体sから離れることにより発生するノイズ)の位相角は、
図9(b)に図示された太い実線のように、約225°となる。
【0048】
したがって、例えば、直交検出モード、第1交差検出モードまたは第2交差検出モードのいずれかにおいて起電力信号の信号強度Aが基準値A0以上であり、かつ上記起電力信号のリサージュ波形での位相角が90°近傍になる場合、その起電力信号は欠陥に由来するものであると判定することができる。また、起電力信号の信号強度Aは基準値A0以上であるが、上記起電力信号のリサージュ波形での位相角が90°近傍にならない場合、その起電力信号はノイズであると判定することができる。
【0049】
次に、当該渦電流検査装置1の動作方法について説明する。なお、当該渦電流検査装置1の動作方法は、以下に示す方法にのみ限定されるものではない。
【0050】
図10は、
図1の渦電流検査装置を用いた測定の概略フローチャートである。なお、ここで説明する制御処理は、マルチプレクサ回路部113、渦電流探傷器200およびプローブ移動制御器300の内部メモリにあらかじめ記憶されたプログラムに基づいて実行される。
【0051】
まず、測定に先立って測定の準備を行う。この準備では、被検体sと同等の材料で形成された校正欠陥の信号(渦電流)をあらかじめ測定し、得られた信号を基準信号として渦電流探傷器200に記憶させる。また、上記準備では、マルチコイルプローブ110のコイル間隔に関する寸法値を渦電流探傷器200に入力して記憶させる。
【0052】
次いで、被検体sの測定開始位置にマルチコイルプローブ110を設置し、緩衝材150の介在下、プローブ抑え治具140を用いてマルチコイルプローブ110を被検体sに押し当てる。その際、被検体sに対する平常状態(欠陥が無い状態)の起電力信号を測定してコイルキャリブレーションを行い、この状態の起電力信号を記憶する(ステップS1)。
【0053】
次いで、プローブ移動制御器300から信号を発信してプローブ移動ユニット120を操作し、これによりマルチコイルプローブ110を移動させる(ステップS2)。
【0054】
次いで、上述した3つの検出モードでの測定を行う。具体的には、まず直交検出モードでの測定(ステップS3)を行った後、第1交差検出モードでの測定(ステップS4)および第2交差検出モードでの測定(ステップS5)をこの順で行う。
【0055】
上記3つの検出モードでの測定が終了した後、マルチコイルプローブ110が測定終端位置まで移動したか否かの判定を行う(ステップS6)。この判定の結果、マルチコイルプローブ110が測定終端位置まで移動していない場合は更にマルチコイルプローブ110を移動させて渦電流測定を繰り返し、マルチコイルプローブ110が測定終端位置まで移動した場合は後述の信号強度評価に移行する。
【0056】
信号強度評価では、まず起電力信号の信号強度と基準信号の信号強度との比較を行う(ステップS7)。この評価では、上述の欠陥判定方法で説明したように欠陥判定の基準値A0に対する大小で判定する。その際、起電力信号の信号強度AがA<A0の場合は有意な信号はないと判断されるため、欠陥なしと判定(ステップS10)した後、測定を終了する。一方、起電力信号の信号強度AがA≧A0の場合は有意な信号があると判断されるため、後述の位相角評価に移行する。
【0057】
位相角評価では、まず上述したリサージュ波形を描画して起電力信号の位相角を計算し、得られた位相角が欠陥の特徴と一致するか否かの判定を行う。具体的には、直交検出モード、第1交差検出モードおよび第2交差検出モードで得られた各起電力信号を用いてリサージュ波形の位相角が90°近傍になるか否かの判定を行う(ステップS8)。その際、上記3つの検出モード全ての位相角が90°近傍にならない場合は有意な信号はないと判断されるため、欠陥なしと判定(ステップS10)した後、測定を終了する。一方、上記3つの検出モードのうちの少なくともいずれかの位相角が90°近傍になる場合は有意な信号であると判断されるため、欠陥ありと判定(ステップS9)した後、測定を終了する。
【0058】
[第2の実施形態]
図11は、本発明の第2の実施形態に係る渦電流検査装置におけるマルチコイルプローブの概略拡大図である。当該渦電流検査装置2は、マルチコイルプローブ115における第1列コイル群R1と第2列コイル群R2との間隔が調整可能である点で、第1の実施形態とは異なっている。なお、第2の実施形態において、マルチコイルプローブ115以外の構成は上述した第1の実施形態と同様であるため、その詳細な説明は省略する。また、第2の実施形態における検出モード、欠陥判定方法および動作方法については、上述した第1の実施形態のものと同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0059】
マルチコイルプローブ115は、
図11に示すように、概略的に、第1の基板116aと、第2の基板116bとにより構成されている。
【0060】
第1の基板116aは、第1列コイル群R1を構成するコイル112および第1のマルチプレクサ回路部117aが配設され、これら第1の基板116aとコイル112と第1のマルチプレクサ回路部117aとは電気的に結線されており、第1のマルチプレクサ回路部117aは、渦電流探傷器200に接続されている。また、第2の基板116bは、第2列コイル群R2を構成するコイル112および第2のマルチプレクサ回路部117bが配設され、これら第2の基板116bとコイル112と第2のマルチプレクサ回路部117bとは電気的に結線されており、第2のマルチプレクサ回路部117bは、渦電流探傷器200に接続されている。
【0061】
また、マルチコイルプローブ115は、上述した第1の基板116aと第2の基板116bとがコイル間隔調整ガイド118を介して接続され、必要に応じて第1列コイル群R1と第2列コイル群R2との間隔が調整できるように調整ねじ119で固定されている。
【0062】
ここで、当該渦電流検査装置2におけるコイル間隔の設定方法を示す。例えば、上述した材料Nにおいて斜め方向に発生した欠陥を校正欠陥の信号強度の50%の値が得られるように測定する場合、
図4(b)の測定データに基づくと、上記50%となる欠陥交差角は約20°である。そのため、X軸方向と第2交差検出モードのコイル対方向とのなす角度が40°になるように第1列コイル群R1と第2列コイル群R2との間隔を調整すればよい。すなわち、第1列コイル群R1を構成する隣り合うコイル112どうしの間隔に対して1.25倍(=1.5×tan40°)となるように上記間隔を調整すればよい。
【0063】
このように、当該渦電流検査装置2は、マルチコイルプローブ115における第1列コイル群R1と第2列コイル群R2との間隔が調整可能であることで、最大欠陥交差角を適宜小さくすることができ、感度低下の抑制により欠陥を確実に探知することができる。また、当該渦電流検査装置2によれば、コイル対交差角の調整が可能となるので、コイル対交差角が異なる複数のマルチコイルプローブ115を被検体sの材質等に応じて準備したり、取り替える必要が無いという利点を有する。
【0064】
なお、本発明に係る渦電流検査装置は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0065】
例えば、上述した実施形態では、走査方向に対して直交する直線方向に二列に並んだコイル群を有するマルチコイルプローブ110、115を備えた渦電流検査装置1、2について説明したが、三列または四列以上に並んだコイル群を有するマルチコイルプローブを備えた渦電流検査装置であってもよい。かかる場合、これらのコイル群の中から第1列コイル群および第2コイル群を選択することができる。
【0066】
また、上述した実施形態では、第1および第2交差検出モードにおいて、特定のコイル対交差角を有する渦電流検査装置1、2について説明したが、第1コイル対および第2コイル対が上記関係を有する限り、上記特定のコイル対交差角に限定されるものではない。