【実施例】
【0030】
製造例1:プラジクアンテルおよび炭素粉末を含む混合物をエクストルーダーで加圧、押出造粒して形成した本発明の固形状の魚類用経口投与薬剤
本発明の魚類用経口投与薬剤が以下のようにして製造された。20重量%のプラジクアンテル50%散剤(ハダクリーン
(登録商標)、バイエル薬品株式会社)、30重量%の炭素粉末(株式会社ゴトー養殖研究所)およびバインダーとして50重量%の小麦粉(株式会社ゴトー養殖研究所)の混合物を、バレル温度110℃、圧力1〜2Mpaの条件でエクストルーダー(株式会社スエヒロEPM、2軸エクストルーダー EA−20;ダイ直径5mm)で加圧、押出造粒して成形体を形成し、その後この成形体を、温風乾燥機で乾燥させて、固形状の魚類用経口投与薬剤(長さ5mm、直径5mm、プラジクアンテル含有量10重量%)を形成した。この薬剤は膨化構造を有していなかった。
【0031】
製造例2:プラジクアンテルおよび炭素粉末を含む混合物をペレットマシンで押出造粒して形成した本発明の固形状の魚類用経口投与薬剤
本発明の魚類用経口投与薬剤が以下のようにして製造された。20重量%のプラジクアンテル50%散剤(ハダクリーン
(登録商標)、バイエル薬品株式会社)、30重量%の炭素粉末(株式会社ゴトー養殖研究所)および賦形剤として50重量%の小麦粉(株式会社ゴトー養殖研究所)の混合物を用いてディスクペレッター(株式会社ダルトン)で押出造粒して成形体を形成し、固形状の魚類用経口投与薬剤(長さ5mm、直径5mm、プラジクアンテル含有量10重量%)を形成した。この薬剤は膨化構造を有していなかった。
【0032】
製造例3:プラジクアンテルおよび炭素粉末を含む混合物をエクストルーダーで加圧、押出造粒して形成した膨化構造を有する本発明の固形状の魚類用経口投与薬剤
エクストルーダーで加圧、押出造粒する際の条件を先端のバレル温度を115℃、圧力を5.2Mpaに変更した以外は、製造例1と同じ方法を行い、膨化構造を有する固形状の魚類用経口投与薬剤(長さ5mm、直径5.5mm、プラジクアンテル含有量10重量%)を形成した。
【0033】
比較製造例1:プラジクアンテルを含むが炭素粉末を含まない混合物をエクストルーダーで加圧、押出造粒して形成した固形状の魚類用経口投与薬剤
魚類用経口投与薬剤が以下のようにして製造された。20重量%のプラジクアンテル50%散剤(ハダクリーン
(登録商標)、バイエル薬品株式会社)およびバインダーとして80重量%の小麦粉(株式会社ゴトー養殖研究所)の混合物を、バレル温度110℃、圧力1〜2Mpaの条件でエクストルーダー(株式会社スエヒロEPM、2軸エクストルーダー EA−20;ダイ直径5mm)で加圧、押出造粒して成形体を形成し、その後この成形体を、温風乾燥機で乾燥させて、固形状の魚類用経口投与薬剤(長さ5mm、直径5mm、プラジクアンテル含有量10重量%)を形成した。この薬剤は膨化構造を有していなかった。
【0034】
比較製造例2:プラジクアンテルを含むが炭素粉末を含まない混合物をペレットマシンで押出造粒して形成した固形状の魚類用経口投与薬剤
魚類用経口投与薬剤が以下のようにして製造された。20重量%のプラジクアンテル50%散剤(ハダクリーン
(登録商標)、バイエル薬品株式会社)および賦形剤として80重量%の小麦粉(株式会社ゴトー養殖研究所)の混合物を、ペレットマシン・ディスクペレッター(株式会社ダルトン)で押出造粒して成形体を形成し、固形状の魚類用経口投与薬剤(長さ5mm、直径5.5mm、プラジクアンテル含有量10重量%)を形成した。この薬剤は膨化構造を有していなかった。
【0035】
比較製造例3:プラジクアンテルを含むが炭素粉末を含まない混合物をエクストルーダーで加圧、押出造粒して形成した膨化構造を有する固形状の魚類用経口投与薬剤
エクストルーダーで加圧、押出造粒する際の条件を先端のバレル温度を115℃、圧力を5.2Mpaに変更した以外は、比較製造例1と同じ方法を行い、膨化構造を有する固形状の魚類用経口投与薬剤(長さ5mm、直径5.5mm、プラジクアンテル含有量10重量%)を形成した。
【0036】
実施例1〜2
本発明の固形状の魚類用経口投与薬剤を含む本発明の養魚用モイストペレット飼料の製造
製造例1において製造された本発明の固形状の魚類用経口投与薬剤(3重量%)、冷凍生餌(マイワシ)(91重量%)、市販飼料マッシュ(日本配合飼料株式会社)(6重量%)を含む原料を、モイストペレット機械(イワキ電機 IW−25、以下同じ)を用いて混合して、養魚用モイストペレット飼料(直径9mm)(実施例1)を作成した。
同様にして、製造例2において製造された魚類用経口投与薬剤から養魚用モイストペレット飼料(直径9mm)(実施例2)を作成した。
【0037】
比較例1〜2
比較例の固形状の魚類用経口投与薬剤を含む比較例の養魚用モイストペレット飼料の製造
比較製造例1において製造された固形状の魚類用経口投与薬剤(3重量%)、冷凍生餌(マイワシ)(91重量%)、市販飼料マッシュ(日本配合飼料株式会社)(6重量%)を含む原料を、モイストペレット機械を用いて混合して、養魚用モイストペレット飼料(直径9mm)(比較例1)を作成した。
同様にして、比較製造例2において製造された魚類用経口投与薬剤から養魚用モイストペレット飼料(直径9mm)(比較例2)を作成した。
【0038】
比較例3
粉体状の薬効成分を飼料の原料として使用した比較例の養魚用モイストペレット飼料の製造
プラジクアンテル50%散剤(ハダクリーン
(登録商標)、バイエル薬品株式会社)(0.6重量%)、冷凍生餌(マイワシ)(93.4重量%)、市販飼料マッシュ(日本配合飼料株式会社)(6重量%)を含む原料を、モイストペレット機械を用いて混合して、養魚用モイストペレット飼料(直径9mm)を作成した。
【0039】
比較例4
粉体状の薬効成分および炭素粉末を飼料の原料として使用した比較例の養魚用モイストペレット飼料の製造
プラジクアンテル50%散剤(ハダクリーン
(登録商標)、バイエル薬品株式会社)(0.6重量%)、炭素粉末(0.9重量%)、冷凍生餌(マイワシ)(92.5重量%)、市販飼料マッシュ(日本配合飼料株式会社)(6重量%)を含む原料を、モイストペレット機械を用いて混合して、養魚用モイストペレット飼料(直径9mm)を作成した。
【0040】
対照群
薬効成分を含まない対照群用の養魚用モイストペレット飼料の製造
冷凍生餌(マイワシ)(94重量%)、市販飼料マッシュ(日本配合飼料株式会社)( 6重量%)を含む原料を、モイストペレット機械を用いて混合して、養魚用モイストペレット飼料(直径9mm)を作成した。
【0041】
試験1:
上述のように製造されたそれぞれの養魚用モイストペレット飼料を魚に経口投与して、摂餌率およびハダムシ駆除効果についての検討を行った。試験方法および結果は以下の通りである。
【0042】
魚体への薬剤の経口投与および摂餌率測定方法
縦4m×横4m×深さ3mの生け簀内で飼育されている約500gの体重のカンパチ100尾を1つの試験区とした。各試験区ごとに異なる経口投与薬剤を含む養魚用モイストペレット飼料が投与された。各試験区においては、2日間餌止めした後で、カンパチに上記養魚用モイストペレット飼料を一日あたり魚体重の3重量%となる量(15gモイストペレット飼料/500g魚体重)で投与し、自由に経口的に摂取させた。この投与を3日間連続して行った。各投与日の各投与から24時間後に、生け簀から5尾のカンパチを捕獲、解剖し、それぞれの胃の内容物の重量を測定し、これを摂餌量とし、5匹の平均摂餌量を算出した。各投与日ごとに、対照群のモイストペレット飼料を投与した平均摂餌量を100%とした場合の各薬剤投与群の平均摂餌量の割合を摂餌率(%)とした。また、表1中の有効性評価は、薬剤がハダムシを充分に駆除できた場合には◎;薬剤のハダムシ駆除効果は中程度であるが、体内での薬効成分濃度がハダムシ寄生部分である体表面より高くなる血管内に寄生する血管内吸虫(Paradeontacylix grandispinus、Paradeontacylix kampachi)を充分に駆除できる場合には〇;薬剤が薬効成分の経口投与に有効ではなかった場合には×として表した。
【0043】
ハダムシ駆除効果判定方法
経口投与薬剤を含む養魚用モイストペレット飼料の投与前および3日目の投与から24時間後に、各試験区から5尾ずつカンパチを捕獲し、真水に3分間浸した後で寄生しているハダムシを計数し、カンパチ1匹あたりに寄生しているハダムシの平均数を算出した。
【0044】
各試験区に投与された飼料は以下の通りである。
対照群として、上述のように製造された薬効成分を含まない養魚用モイストペレット飼料が投与された。
実施例1として、エクストルーダーペレット製法で製造された、プラジクアンテルおよび炭素粉末を含む固形状の魚類用経口投与薬剤を含む本発明の実施例1の養魚用モイストペレット飼料が投与された。
比較例1として、エクストルーダーペレット製法で製造された、プラジクアンテルを含むが炭素粉末を含まない固形状の魚類用経口投与薬剤を含む比較例1の養魚用モイストペレット飼料が投与された。
実施例2として、ドライペレット製法で製造された、プラジクアンテルおよび炭素粉末を含む固形状の魚類用経口投与薬剤を含む本発明の実施例2の養魚用モイストペレット飼料が投与された。
比較例2として、ドライペレット製法で製造された、プラジクアンテルを含むが炭素粉末を含まない固形状の魚類用経口投与薬剤を含む比較例2の養魚用モイストペレット飼料が投与された。
比較例3として、粉体のプラジクアンテルを原料として含む比較例3の養魚用モイストペレット飼料が投与された。
比較例4として、粉体のプラジクアンテルおよび炭素粉末を原料として含む比較例4の養魚用モイストペレット飼料が投与された。結果は以下の表1に示される。
【0045】
【表1】
【0046】
魚におけるプラジクアンテルの嗜好性の低さは、粉末プラジクアンテルを混ぜ込んだ養魚用モイストペレット飼料を投与した比較例3の結果から明らかである。すなわち、比較例3においては、投与1日目では摂餌率は70%で対照群と比較して若干の低下を示したが、投与2および3日目ではそれぞれ7%および5%と著しく摂餌が抑制された。なお、1日目の70%という結果は、その前2日間の餌止めによる魚の空腹状態が、プラジクアンテルによる摂餌抑制にある程度打ち勝っていたものと考えられる。比較例4において認められる様に、単に炭素粉末を粉末プラジクアンテルと共に飼料原料に混合したとしても、プラジクアンテルに起因する摂餌抑制を軽減することができなかった。比較例1および比較例2において認められる様に、プラジクアンテルをエクストルーダーペレット製法(比較例1)(表中でEP製法と記載)またはドライペレット製法(比較例2)(表中でDP製法と記載)のいずれの製法で固形化したとしても、炭素粉末がなければ摂餌抑制の軽減は認められなかった。これら比較例1〜4においては、ハダムシ駆除効果も認められなかった。これは、摂餌率の低下によりプラジクアンテルの魚体内への取り込みが低下し、その結果、ハダムシ駆除効果を発揮するのに充分なプラジクアンテルの体内濃度を維持できなかったものと推察される。
【0047】
一方、実施例1および実施例2において認められる様に、プラジクアンテルおよび炭素粉末を含む混合物の固形化物を薬剤として使用した場合には、プラジクアンテルの嗜好性に起因する摂餌抑制が完全に抑制(実施例1)もしくは軽減(実施例2)され、これと共に、ハダムシ駆除効果も確認できた。ドライペレット製法によりプラジクアンテルおよび炭素粉末を含む混合物を固形化した実施例2における2日目および3日目の31%および33%の摂餌率、および3日間の投与後での半数強のハダムシ駆除割合は、養殖の経済性に充分に貢献しうる水準である。この摂餌率と後述の試験2における実施例1の2日目以降のプラジクアンテル血中濃度とを考慮すると、実施例2の2日目以降のプラジクアンテル血中濃度は約0.6ppmであろうと推察される。ここで、非特許文献2に報告されるように、プラジクアンテルはインビトロの試験で0.2ppmの濃度でクロマグロの住血吸虫に対して有効である。クロマグロの血管内吸虫とカンパチの血管内吸虫ではその種は異なるものの同じ吸虫類であるから、カンパチの血管内吸虫(Paradeontacylix grandispinus、Paradeontacylix kampachi)に対してもプラジクアンテルは同程度の濃度で有効であろうと考えられる。よって、実施例2においては、血管内吸虫に対しては充分に有効であると言える。また、エクストルーダーペレット製法により固形化を行った実施例1においては、プラジクアンテルによる摂餌量低下を完全に抑制すると共に、寄生しているハダムシの約95%を駆除することができた。実施例1においては、後述の試験2におけるプラジクアンテルの血中濃度の結果を考慮すると、血管内吸虫に対する充分な有効性を有していたのは明らかである。よって、本発明の固形状の魚類用経口投与薬剤は、単にプラジクアンテルの嗜好性の低さをマスキングして摂餌量の低下を軽減もしくは抑制できるだけでなく、経口摂取後にプラジクアンテルが魚の体内に吸収され、薬効が発揮されうる薬剤であることが明らかとなった。
【0048】
試験2:
上記試験1における対照群、実施例1、比較例1および比較例3の試験区の魚におけるプラジクアンテル(表中PZQと表示)の血中濃度および筋肉中濃度を測定した。具体的な試験方法および結果は以下の通りである。
【0049】
各試験区において、飼料投与の24時間後毎に、それぞれ5尾のカンパチを捕獲し、それぞれの魚から血液および筋肉を採取した。血液については、血液約0.5gにエタノール2mlを加え、攪拌し、超音波で1分間処理し、これを0.45μmのメンブランフィルターで濾過した濾液をHPLC用試料溶液とした。筋肉については、筋肉約1gにエタノール10mlを加え、ホモジナイザーで2分間処理して、これを0.45μmのメンブランフィルターで濾過した濾液をHPLC用試料溶液とした。プラジクアンテルの濃度を決定するための標準液は、プラジクアンテル標準品100mgを精秤しエタノール20mlに溶かした後、使用時に水で10μg/mlに希釈して標準液とした。これら試料溶液について、HPLCを用いて分析を行った。HPLC分析条件は以下の通りであった:測定波長210nm、カラム ODS(Waters smmetry C18)、流量1.0ml/min、カラム温度40℃、移動相 アセトニトリル:水=50:50、注入量10μl。
結果は以下の表2に示される。
【0050】
【表2】
【0051】
粉末プラジクアンテルを混ぜ込んだ養魚用モイストペレット飼料を投与した比較例3、およびプラジクアンテルを含むが炭素粉末を含まない混合物をエクストルーダーペレット製法(表中でEP製法と記載)で固形化した薬剤を使用した比較例1おいては、2日目以降、プラジクアンテルの血液中および筋肉中濃度は著しく低かった。この結果は、表1に示されるハダムシ駆除効果の結果と対応するものである。これに対して、本発明の固形状の魚類用経口投与薬剤を使用した実施例1においては、血中および筋肉中のいずれにおいても、経口投与の継続に伴うプラジクアンテルの濃度の増大が認められた。この実施例1における血中および筋肉中のプラジクアンテル濃度の結果は、試験1におけるハダムシ駆除効果の結果と対応するものである。
【0052】
試験3:
従来技術の効果を確認するために、従来技術を用いて様々な薬効成分を含む養魚用モイストペレット飼料を製造し、試験1と同様の条件で試験を行い、その飼料の摂餌率について検討を行った。
対照群、比較例3および比較例4は上記試験1のと同じである。
比較例5においては、薬効成分としてプラジクアンテル50%散剤(ハダクリーン
(登録商標)、バイエル薬品株式会社)に代えてエリスロマイシン20%散剤(水産用エリスロマイシン散「TG」20%、株式会社トーヨー技術研究所)(0.6重量%)が使用された以外は比較例3におけるように製造された養魚用モイストペレット飼料が投与された。
比較例6においては、薬効成分としてプラジクアンテル50%散剤(ハダクリーン
(登録商標)、バイエル薬品株式会社)に代えてエリスロマイシン20%散剤(水産用エリスロマイシン散「TG」20%、株式会社トーヨー技術研究所)(0.6重量%)が使用された以外は比較例4におけるように製造された養魚用モイストペレット飼料が投与された。
比較例7においては、薬効成分としてエリスロマイシン20%散剤(水産用エリスロマイシン散「TG」20%、株式会社トーヨー技術研究所)(0.6重量%)およびプラジクアンテル50%(ハダクリーン
(登録商標)、バイエル薬品株式会社)(0.6重量%)が使用された以外は比較例3におけるように製造された養魚用モイストペレット飼料が投与された。
比較例8においては、薬効成分としてエリスロマイシン20%散剤(水産用エリスロマイシン散「TG」20%、株式会社トーヨー技術研究所)(0.6重量%)およびプラジクアンテル50%散剤(ハダクリーン
(登録商標)、バイエル薬品株式会社)(0.6重量%)が使用された以外は比較例4におけるように製造された養魚用モイストペレット飼料が投与された。
比較例9においては、薬効成分としてプラジクアンテル50%散剤(ハダクリーン
(登録商標)、バイエル薬品株式会社)に代えてアンピシリン10%散剤(水産用アンピシリン散「TG」10%、株式会社トーヨー技術研究所)(4重量%)が使用された以外は比較例3におけるように製造された養魚用モイストペレット飼料が投与された。
比較例10においては、薬効成分としてアンピシリン10%散剤(水産用アンピシリン散「TG」10%、株式会社トーヨー技術研究所)(4重量%)およびプラジクアンテル50%散剤(ハダクリーン
(登録商標)、バイエル薬品株式会社)(0.6重量%)が使用された以外は比較例3におけるように製造された養魚用モイストペレット飼料が投与された。
比較例11においては、薬効成分としてアンピシリン10%散剤(水産用アンピシリン散「TG」10%、株式会社トーヨー技術研究所)(4重量%)およびプラジクアンテル50%散剤(ハダクリーン
(登録商標)、バイエル薬品株式会社)(0.6重量%)が使用された以外は比較例4におけるように製造された養魚用モイストペレット飼料が投与された。結果は以下の表3に示される。
【0053】
【表3】
【0054】
養魚用モイストペレット飼料が粉末プラジクアンテルまたは粉末エリスロマイシンを含む場合には、これら飼料の摂餌率が低く、このことは、これらの薬剤は魚の嗜好性が低いことを示す。一方、比較例9の結果は、アンピシリンが摂餌率に影響しないことを示す。また、炭素粉末を単に混合することによるマスキングを意図する従来技術を用いた比較例4、比較例6、比較例8および比較例11の結果からは、単なる炭素粉末の添加だけでは、プラジクアンテルまたはエリスロマイシンの嗜好性の低さに起因する摂餌率の低下を軽減または抑制することができないことがわかる。
【0055】
試験4:
本発明の固形状の魚類用経口投与薬剤の物理的性質について検討を行った。
製造例1、3および比較製造例1、3の固形状の魚類用経口投与薬剤について、その崩壊硬度を、錠剤硬度計A型15kg(萱垣医理科工業株式会社)を用いて計測し、10個の硬度平均を計算し、その結果を表4に示す。膨化構造を有する製造例3および比較製造例3の固形状の魚類用経口投与薬剤については、その気泡の状態を、実体顕微鏡を用いて観察し、その結果をスケッチした図を
図1(製造例1)および
図2(比較製造例1)に示し、また、気泡の大きさを対物ミクロメータで計測し、10個の平均および標準偏差を計算した。結果を表4に示す。なお、表中のPZQはプラジクアンテルを示し、EP製法はエクストルーダーペレット製法で薬剤が造粒されたことを示す。
【0056】
【表4】
【0057】
気泡の直径については、炭素粉末を使用せずに造粒された比較製造例3の固形状の薬剤に形成されている気泡(
図2)と比較して、炭素粉末を使用して造粒された製造例3の本願発明の固形状の薬剤は気泡の直径が小さく、かつばらつきも小さかった(
図1)。
【0058】
崩壊硬度については、炭素粉末を使用せずに造粒された固形状薬剤をそれぞれ100%として比較すると、本願発明の固形状薬剤は、エクストルーダーペレット製法で製造された膨化構造を有さない製造例1の薬剤について237%、およびエクストルーダーペレット製法で造粒された膨化構造を有する製造例3の薬剤について350%もの増大を示した。