(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472353
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】パイロット式ガバナの2次側整流装置
(51)【国際特許分類】
F15D 1/02 20060101AFI20190207BHJP
G05D 16/04 20060101ALN20190207BHJP
【FI】
F15D1/02 A
!G05D16/04 H
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-162865(P2015-162865)
(22)【出願日】2015年8月20日
(65)【公開番号】特開2017-40314(P2017-40314A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2017年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142425
【氏名又は名称】アズビル金門株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123434
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 英昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100156351
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 秀央
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 英明
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−138952(JP,A)
【文献】
特開昭49−085625(JP,A)
【文献】
特開2004−093170(JP,A)
【文献】
特開2001−175337(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0269583(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15D 1/02
G05D 16/00 − 16/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空で側面に複数の孔を有し、内側に流入する流体を当該複数の孔を介して外側へ流出させる拡散ストレーナと、
前記拡散ストレーナの下流側に設けられ、複数の孔を有して前記拡散ストレーナから流出した流体の旋回流を除去する旋回流除去板と、
前記旋回流除去板の下流側に設けられ、複数の孔を有して前記旋回流除去板を通過した流体の偏流を除去する偏流除去板とを備えることを特徴とするパイロット式ガバナの2次側整流装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パイロット式ガバナの2次側で流体の流れを整える装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガス等の流体が流れる流路に設けられて、2次側圧力を設定圧力に調整するパイロット式ガバナが知られている。パイロット式ガバナは、1次側から2次側へと流体を流すメインガバナと、メインガバナの開度を変化させる制御圧力を、感知した2次側圧力に応じて調整するパイロットガバナとを有する。パイロット式ガバナへの2次側圧力の伝達は、一端が2次側の配管に接続した整圧管を介して行われる。
パイロット式ガバナの動作の安定性のためには、流体の流れが安定した位置で整圧管を2次側の配管に接続する必要がある。このため、当該配管の内径をDとすると、5D以上離れた位置で整圧管を当該配管に接続していた。
図8は、パイロット式ガバナ5aに対する整圧管6aの設置状況を概略的に示した図である。しかし、このように整圧管6aと2次側の配管との接続位置がパイロット式ガバナ5aから離れていると、他の何らかの工事の際に整圧管6aが破損される恐れがあった。また、パイロット式ガバナへの入れ替え等の際、5D以上離れた位置での接続を行うには細心の注意を要し、施工性が悪かった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、メインガバナの出口にレジューサを接続し、当該レジューサの下流側に整流板を設けた圧力制御装置が記載されている。このようにすることで、メインガバナの下流側に近接した位置で2次側圧力を取り出せるように図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−138952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構成では、整流板の面の広範囲に亘り流体を均等に流すのが難しく、整流板の中央部付近に集中して流体が流れやすかった。こうした事象は、流量が増えるほど特に顕著となり、中央部に更に集中的に流体が流れる。このように整流板の面の一部分に偏って流体が流れると、整流板による整流効果を十分に得ることはできない。
また、上記特許文献1のように1枚の整流板では、そもそも得られる整流効果が限定的であった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、整流効果の高いパイロット式ガバナの2次側整流装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るパイロット式ガバナの2次側整流装置は、中空で側面に複数の孔を有し、内側に流入する流体を当該複数の孔を介して外側へ流出させる拡散ストレーナと、拡散ストレーナの下流側に設けられ、複数の孔を有して拡散ストレーナから流出した流体の旋回流を除去する旋回流除去板と、旋回流除去板の下流側に設けられ、複数の孔を有して旋回流除去板を通過した流体の偏流を除去する偏流除去板とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、拡散ストレーナ、その下流側に旋回流除去板、その下流側に偏流除去板を設けたので、高い整流効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るパイロット式ガバナの2次側整流装置を示す側面図である。
【
図5】旋回流除去板及び偏流除去板の断面図である。
【
図6】この発明の実施の形態1に係るパイロット式ガバナの2次側整流装置を用いた際の、整圧管の設置状況を概略的に示す図である。
【
図7】拡散ストレーナの変形例を示す側面図である。
【
図8】従来の整圧管の設置状況を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1に、この発明の実施の形態1に係るパイロット式ガバナの2次側整流装置を示す。この2次側整流装置は、拡散ストレーナ1と、旋回流除去板2と、偏流除去板3とを有し、これらは配管4の内部に納められている。配管4の内部では、
図1中のA方向にガス等の流体が流れる。配管4の上流つまり紙面上方には、不図示のパイロット式ガバナが設けられており、当該パイロット式ガバナにより流量制御された2次側の流体が、2次側の配管4に流入する。また、偏流除去板3よりも下流の位置で、整圧管6が配管4に接続している。
【0011】
拡散ストレーナ1は、配管4の入口側に設けられる。
図2(a)に拡散ストレーナ1の側面図を、また、
図2(b)には、
図2(a)のB−B線に沿って拡散ストレーナ1を切断した際の断面図を示す。拡散ストレーナ1は、有底で略筒状の形状を成し、塞がれた底面10に対向する上面11は開口している。また、拡散ストレーナ1は、その側面に規則的に並ぶ複数の孔12を有している。拡散ストレーナ1の端部のうち、上面11側の端部は、
図1に示す管部40の端部と溶接等により固定され、配管4に流入した流体は、連続的に拡散ストレーナ1の内部へ流入する。拡散ストレーナ1に流入した流体は、複数の孔12を介して拡散ストレーナ1の内側から外側へ流出する。側面に形成された複数の孔12を通過することで、流体は拡散されて流出する。
【0012】
旋回流除去板2は、拡散ストレーナ1の下流側に設けられる。
図3に、旋回流除去板2の平面図を示す。旋回流除去板2は、複数の孔20を有する円盤状の板材であり、複数の孔20を通過させて流れ方向に平行な軸回りの回転成分を除去し、流体の旋回流を除去する。図示した複数の孔20は、等間隔で規則的に並べられた同径の孔である。なお、旋回流除去板2の厚み、複数の孔20の配列、孔径、孔ピッチ等は、配管4を流れる流体の旋回流を除去可能なように周知の理論を用いて適宜決められ、図示した例に限らない。
旋回流除去板2は、その周縁部21を用いて配管4の内壁と溶接され、固定される。
【0013】
偏流除去板3は、旋回流除去板2の下流側に設けられる。
図4に、偏流除去板3の平面図を示す。偏流除去板3は、複数の孔30を有する円盤状の板材であり、複数の孔30を通過させて速度分布のずれを無くし、流体の偏流を除去する。図示した複数の孔30は、同心円上に並べられた同径の孔である。これらの同心円は、
図4に一点鎖線で示している。そして、隣り合う2つの同心円に挟まれた円環状の部分での各開口比率は、偏流除去板3の中心から外側に位置する円環状の部分でのものほど、低くなっている。また、複数の孔30の個数は、複数の孔20のものよりも少ない。なお、偏流除去板3の厚み、複数の孔30の配列、孔径、孔ピッチ等は、配管4を流れる流体の偏流を除去可能なように周知の理論を用いて適宜決められ、図示した例に限らない。
偏流除去板3は、その周縁部31を用いて配管4の内壁と溶接され、固定される。
【0014】
図5は、配管4に設置された旋回流除去板2及び偏流除去板3を示す断面図である。旋回流除去板2は、偏流除去板3よりも厚く、複数の孔20の孔径は、複数の孔30のものよりも大きい。旋回流除去板2と偏流除去板3は、配管4の内径Dに対して例えば0.5D〜1D程度離れて設けられる。
【0015】
図6は、パイロット式ガバナ5に対してこの発明の実施の形態1に係るパイロット式ガバナの2次側整流装置を用いた際の、整圧管6の設置状況を概略的に示した図である。
パイロット式ガバナ5は、周知の通り流体の流路に設けられて、メインガバナにより1次側から2次側へと流体を流すものである。このメインガバナの開度は、パイロット式ガバナ5を構成するパイロットガバナが供給する制御圧力により変化する。パイロットガバナは、メインガバナの1次側から分岐させた流体の流量を調整し、制御圧力としてメインガバナへ供給する。その際にパイロットガバナは、整圧管6によりパイロット式ガバナ5の2次側圧力を感知し、感知した2次側圧力に応じてその開度を変えて、制御圧力を変化させる。
【0016】
拡散ストレーナ1と、旋回流除去板2と、偏流除去板3とを有する2次側整流装置は、パイロット式ガバナ5の2次側に設けられ、パイロット式ガバナ5を1次側から2次側へと通過した流体は、拡散ストレーナ1の開口した上面11からその内部へと流入する。
図2で示したように、拡散ストレーナ1の底面10は塞がれていることから、拡散ストレーナ1へ流入した流体は、側面に設けられた複数の孔12を介して拡散ストレーナ1の内側から外側へと流出する。このように、側面に設けられた複数の孔12から流出することで、流体が拡散され、旋回流除去板2の面の広範囲に亘り流体が均等に流れ込む。拡散ストレーナ1によるこの拡散効果は、大流量のときも同様に機能し、旋回流除去板2の面の中央部に集中的に流体が流れるのを抑制する。
【0017】
拡散ストレーナ1により拡散された流体は、次いで旋回流除去板2を通過することで旋回流が除去された状態となる。
その後、偏流除去板3を通過することになるが、まず最初に旋回流除去板2の上流で拡散ストレーナ1により拡散された流体は、このときも偏流除去板3の面の広範囲に亘り流体が均等に流れ込み、偏流除去板3の通過後は、偏流が除去された状態となる。
【0018】
以上のようにして拡散ストレーナ1、旋回流除去板2、偏流除去板3を通過することで流体の流れが十分に整えられ、偏流除去板3から少なくとも2次側の配管4の内径D程度離れた位置で、整圧管6を接続することが可能となる。旋回流除去板2と偏流除去板3が、0.5D〜1D程度離れて設置されることを考慮しても、整圧管6と2次側の接続位置は、
図8に示したものよりもパイロット式ガバナ5に近づけることができる。
【0019】
なお、拡散ストレーナ1は、
図2に示す形状に限らず、例えば
図7に示すような形状であってもよい。
図7では、フラスコ型で側面に複数の孔12を有する拡散ストレーナ1を示している。要は、拡散ストレーナ1は、中空で側面に複数の孔12を有し、内側に流入する流体を複数の孔12を介して外側へ流出させるものであればよい。
【0020】
また、旋回流除去板2及び偏流除去板3の固定方法として溶接を採用することで、コスト及び流体の漏れ防止という点で有利となるが、フランジによる固定方法を採用してもよい。この場合、周縁部21を外周へ向けて更に延ばしてフランジとした旋回流除去板2を一端に有し、周縁部31を外周へ向けて更に延ばしてフランジとした偏流除去板3を他端に有する配管を用意する。そして、当該配管を配管4の途中にフランジ接続して、配管4と共に連続的な2次側の配管を構成するように設置する。
【0021】
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、拡散ストレーナ1により流体が拡散されることで、旋回流除去板2及び偏流除去板3双方の面の広範囲に亘り流体が均等に流れ込み、高い整流効果を得ることができる。これにより、整圧管6と2次側の接続位置を、パイロット式ガバナ5に近づけることができ、整圧管6の設置、維持管理等が容易となる。
【0022】
また、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 拡散ストレーナ
2 旋回流除去板
3 偏流除去板
4 配管
5 パイロット式ガバナ
6 整圧管
10 底面
11 上面
12 孔
20 孔
21 周縁部
30 孔
31 周縁部
40 管部