(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記巡回経路が、同一の巡回点を複数回通過した場合であっても1回の通過ごとに、巡回点の通過数を累積加算したときの巡回点の数が予め定められている巡回経路であることを特徴とする請求項1に記載のエンジン特性試験方法。
前記第1ステップが、前記巡回経路上の巡回点を遺伝子として捉えた遺伝アルゴリズムを利用して該巡回経路の生成と淘汰を繰り返すステップであることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン特性試験方法。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車の普及と環境科学の進歩に伴い、燃費や排ガスの規制が激しく強化されてきている。このため、精密なエンジンモデルを作成し、エンジンの様々な運転条件下での排気ガス中のNOxや燃費などを高精度にシミュレーションすることが求められている。
【0003】
ここで、エンジンモデルの作成にあたっては、エンジンにダイナモを連結した実験システム上で実験を行ない、その実験結果に基づいてエンジンモデルを作成することが従来より行なわれている(特許文献1参照)。
【0004】
エンジンモデルを作成して、自動車に搭載されたエンジンの制御パラメータをその作成されたエンジンモデルに基づいて調整することで、エンジンの回転速度やトルクを所要の値に保ちながら排気ガス中のNOxの低減や燃費の向上を図る努力がなされている。
【0005】
従来は、エンジンの回転速度とトルクとからなる2次元平面上の各点での定常運転によるエンジンモデルが作成され、活用されている。しかしながら、この定常運転によるエンジンモデルの場合、エンジンの回転速度やトルクが変化しつつある過渡運転時、例えば運転開始時などについては、十分に最適化されたエンジンモデルにはなっていない。すなわち、エンジンモデルから予測されるNOxの値や燃費等のエンジン特性値が、エンジンを実際に自動車に搭載して運転して実測したときのエンジン特性値に高精度に近似しているとは言い難く、それらの間の誤差が十分に小さいとは言い難い。
【0006】
この誤差が生じる大きな原因の1つは、過渡運転時の排気温度がエンジンモデルに正しく組み込まれていないことにある。すなわち、定常運転によるエンジンモデルの場合、排気温度は、エンジンの現在の回転速度やトルクによって定まるのに対し、過渡運転の場合、排気温度は、エンジンの現在の回転速度やトルクだけでは定まらず、現在に至るまでの回転速度やトルクの変化の影響が時間的に遅れて現在の排気温度に反映される。
【0007】
例えば、排気温度が低いときは、エンジンの壁温も低いことが多く、再燃焼が妨げられることによる煙の増加や、燃焼温が下がることによるNOxの減少が起こる。また、例えば排気温度が低いときは、媒体の効きが悪くなり、未燃炭化水素(HC)等の除去率が低下する。したがって、正確なシミュレーションを行なうためには、排気温度が大きく変化するような様々な過渡運転を行なって、NOxや燃費等のエンジン特性を測定し、その測定値に基づいて高精度なエンジンモデルを作成する必要がある。
【0008】
なお、後述の実施形態の説明のために非特許文献1を挙げておく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、高精度なエンジンモデル作成のために好適なエンジン特性試験方法およびエンジン特性試験システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明のエンジン特性試験方法は、
エンジンの回転速度とトルクとを変数とする二次元平面上の離散的な複数の巡回点を、同一の巡回点の複数回の通過を許容して順次辿る巡回経路を生成するにあたって、
試験対象のエンジンの回転速度とトルクとを説明変数とし、エンジンの回転速度とトルクの変化の履歴に応じて定まる排気温度を目的変数とするエンジンモデルを参照するとともに、
同一の巡回点を複数回通過したときの同一の巡回点における排気温度のうちの最高温度と最低温度との差分が大きく、かつ、巡回点から巡回点への1回の移動を単位巡回経路と呼んだとき、単位巡回経路の始点である移動前巡回点と単位巡回経路の終点である移動後巡回点とがともに一致する単位巡回経路を複数回通過した場合であっても通過した単位巡回経路の数をその単位巡回経路について1つとして計数したときの通過した単位巡回経路の数が多いことをもって高い評価を与える評価関数を用いて、
巡回経路の生成と、上記評価関数を用いた評価による淘汰とを繰り返すことにより、その評価関数を用いた評価の高い高評価巡回経路を生成する第1ステップと、
試験対象のエンジンの回転速度とトルクが上記高評価巡回経路を辿るようにエンジン制御パラメータを調整することによってエンジンの運転を制御して、エンジンの排気成分と成分量とを含むエンジン特性を測定する第2ステップとを有することを特徴とする。
【0013】
本発明のエンジン特性試験方法によれば、上記の第1ステップにおいて、同じ回転速度および同じトルクであっても、それ以前の運転条件の履歴に応じた様々な排気温度を得る高評価循回経路が定められる。そして、第2ステップにおいて、その高評価巡回経路を辿るようにエンジン制御パラメータを調整することによってエンジンの運転を制御し、幅広い様々な排気温度下でのエンジン特性を測定する。こうすることで、過渡運転を含む幅広い運転条件下での実運転を高精度にシミュレートしたエンジンモデルを作成することができる。
【0014】
ここで、本発明のエンジン特性試験方法において、上記巡回経路が、巡回点を1つ通過するごとに、同一の巡回点を複数回通過した場合であっても1回の通過ごとに、巡回点の通過数を累積加算したときの巡回点の数が予め定められている巡回経路であることが好ましい。
【0015】
巡回経路の長さ、すなわち1つの巡回経路を構成する巡回点の数を予め定めておくことにより、高評価巡回経路を算出するまでの無駄な演算が抑えられる。ここで、巡回経路の長さは、唯一に定められていてもよく、長さA〜長さBの間の長さ、というようにある範囲を持って定められていてもよい。
【0016】
また、本発明のエンジン特性試験装置において、上記第1ステップが、前記巡回経路上の巡回点を遺伝子として捉えた遺伝アルゴリズムを利用して巡回経路の生成と淘汰を繰り返すステップであることが好ましい。
【0017】
遺伝アルゴリズムを適用すると、高評価巡回経路を容易に算出することができる。
【0018】
また、上記目的を達成する本発明のエンジン特性試験システムは、
エンジンの回転速度とトルクとを変数とする二次元平面上の離散的な複数の巡回点を、同一の巡回点の複数回の通過を許容して順次辿る巡回経路を生成するにあたって、
試験対象エンジンの回転速度とトルクとを説明変数とし、そのエンジンの回転速度とトルクの変化の履歴に応じて定まる排気温度を目的変数とするエンジンモデルを参照するとともに、
同一の巡回点を複数回通過したときの同一の巡回点における排気温度のうちの最高温度と最低温度との差分が大きく、かつ、巡回点から巡回点への1回の移動を単位巡回経路と呼んだとき、単位巡回経路の始点である移動前巡回点と単位巡回経路の終点である移動後巡回点とがともに一致する単位巡回経路を複数回通過した場合であっても通過した単位巡回経路の数をその単位巡回経路について1つとして計数したときの通過した単位巡回経路の数が多いことをもって高い評価を与える評価関数を用いて、
巡回経路の生成と、上記評価関数を用いた評価による淘汰とを繰り返すことにより、その評価関数を用いた評価の高い高評価巡回経路を生成する演算装置と、
試験対象エンジンに連結されるダイナモを備え、そのエンジンの回転速度とトルクが上記高評価巡回経路を辿るようにエンジン制御パラメータを調整することによってエンジンの運転を制御する制御装置と、
エンジンの排気成分と成分量とを含むエンジン特性を測定する測定装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上の本発明によれば、高精度のエンジンモデル作成のためのエンジン特性試験方法およびエンジン特性試験システムが実現する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態としてのエンジン特性試験システムの構成図である。
【0023】
ここに示すエンジン特性試験システム1は、エンジン特性試験対象のエンジン10に連結されたダイナモ20を備えている。また、このエンジン特性試験システム1は、制御・計測用パソコン30、スロットルアクチュエータ40、ECU(エンジンコントロールユニット)50、排ガス分析計60、およびダイナモ制御盤70を備えている。また、ここには、エンジン10の排気管11内を流れる排ガスの排気温度を測定する温度センサ81や、排ガスの流量を測定する流量センサ82や、エンジン10の回転軸12のトルクを測定するトルクセンサ83や、回転軸の回転速度を測定する回転速度センサ84などの様々なセンサが備えられている。
【0024】
制御・計測用パソコン30は、スロットルアクチュエータ40を介してのエンジン10のスロットル(不図示)の開度の制御によるトルク制御、ダイナモ制御盤70を介してのダイナモ20の制御によるエンジン10の回転軸12の回転速度制御、ECU50を介しての噴射進角の制御等を行なう。また、この制御・計測用パソコン30では、エンジン10の回連速度、トルク、排気温度、排気流量等のデータの収集が行なわれる。排ガス分析計60では、排気管11内を流れる排ガスの成分分析が行なわれ、制御・計測用パソコン30には、その分析結果も収集される。さらに、この制御・計測用パソコン30には、ECU50によるエンジン10の制御パラメータの値も収集される。さらに、この制御・計測用パソコン30は、燃料の供給、排ガスの処理等を行なう様々な環境設備90の制御も行なう。
【0025】
この
図1に示すエンジン特性試験システム1において、ダイナモ20、スロットルアクチュエータ40、ECU50、およびダイナモ制御盤70や、制御・計測用パソコン30のそれらを制御する機能の組合せが、本発明にいう制御装置の一例に相当する。
【0026】
また、この
図1に示すエンジン特性試験システム1のうちの、エンジン10の回転速度やトルクなどを測定する各種センサと、排ガス分析計60と、制御・計測用パソコン30のデータ収集機能との組合せが、本発明にいう測定装置の一例に相当する。
【0027】
また、この
図1に示すエンジン特性試験システム1の制御・計測用パソコン30は、
エンジン制御装置にエンジンをどのように制御されるかという運転条件(後で説明する高評価巡回経路)を算出する機能を有している。制御・計測用パソコン30の、この算出機能は、本発明にいう演算装置の一例に相当する。
【0028】
図2は、JE05モード走行パターンを示した図である。
【0029】
この
図2の横軸は時間[s]、縦軸は車速(km/h)である。
【0030】
例えばこのJE05モード走行によりNOxや燃費等が計測される。
【0031】
ここで、ポイントAとポイントBではいずれも停車した状態から走行を開始している。しかしながら、ポイントAでは停車直後に走行を開始し、ポイントBでは暫く停車した後走行を開始している。このため、ポイントAではエンジンが暖まった状態で走行が開始され、ポイントBではエンジンが冷えた状態で走行が開始される。この温度条件の違いが排気ガス中のNOxの量や燃費等に大きく影響を与える。したがって幅広い温度条件を再現させたエンジン特性試験を行なってデータを収集し、高精度なエンジンモデルを作成する必要がある。
【0032】
図3は、運転パターンの概念図である。
【0033】
ここには、回転速度[r/min]とトルク[N・m]との2軸からなる平面に垂直に排気温度[℃]の軸が示されている。すなわち、ここには、回転速度とトルクと排気温度とからなる3次元空間が示されている。
【0034】
この3次元空間に示されているグラフAは、エンジンが辿る、回転速度とトルクと排気温度からなる巡回経路を示している。
【0035】
図1に示すエンジン特性試験システム1を使ってエンジン10の運転を制御するにあたり、直接的には、エンジンの回転速度とトルクが制御対象となる。これら回転速度とトルクとが辿る経路に応じて排気温度が上昇、下降し、例えばこの
図3に示すような巡回経路を辿ることになる。
【0036】
図4は、エンジン回転速度とトルクと排気温度の時間変化の一例を示した図である。
図4(A),(B),(C)の縦軸は、それぞれ、回転速度、トルク、および排気温度である。横軸は、いずれも時間[s]である。
【0037】
回転速度およびトルクを
図4(A),(B)に示すように、時間的に変化させると、それに伴って
図4(C)に示すように排気温度が変化する。
【0038】
そこで、ここでは、以下のようにして、排気温度ができるだけ幅広く変化する巡回経路を算出する。
【0039】
図5は、回転速度とトルクとからなる2次元平面を示した模式図である。この
図5の横軸は、回転速度[r/min]、縦軸は、トルク[N・m]である。
【0040】
ここでは、この2次元平面上であって、試験対象のエンジン10での運転が可能な領域内に複数の巡回点を設定する。この
図5では、巡回点A〜巡回点Uが設定されている。そして、以下のようにして、これら複数の巡回点を、同一の巡回点の複数回の通過を許容して順次辿る巡回経路を生成する。
【0041】
ここでは、エンジンモデルが参照される。このエンジンモデルは、試験対象のエンジン10(
図1参照)の回転速度とトルクとを説明変数とし、そのエンジンの回転速度とトルクの変化の履歴に応じて定まる排気温度を目的変数とするエンジンモデルである。
【0042】
エンジンの回転速度とトルクの変化の履歴に応じて定まる排気温度は、例えば、定常運転時に測定した排気温度を1次遅れ系に入力して実運転時の排気温度の変化に適合するように時定数を定めることなどにより算出することができる。あるいは、前掲の非特許文献1に記載された演算方法を用いて算出してもよい。
【0043】
また、ここでは、生成された巡回経路を評価する評価関数が用いられる。この評価関数は、
(1)同一の巡回点を複数回通過したときのその同一の巡回点における排気温度のうちの最高温度と最低温度との差分が大きいこと、および
(2)同一の巡回点を複数回通過した場合であっても通過した巡回点の数をその巡回点について1つとして計数したときの通過した巡回点の数が多いこと、
を評価基準とし、(1)と(2)の双方の評価が高いことをもって高い評価を与える評価関数である。すなわち、同じ巡回点、つまり同じ回転速度および同じトルクにおける、排気温度の変化幅が大きいことと、様々な回転速度とトルクにおける試験が行なわれることを評価の対象とする。
【0044】
本実施形態に置いては、巡回経路の長さが予め定められていて、その長さが定められている巡回経路が評価の対象となる。ここで、巡回経路の長さとは、同一の巡回点を複数回通過した場合であっても1回の通過ごとに巡回点の通過数を累積加算した巡回点の数をいう。
【0045】
図1に示す制御・計測用パソコン30では、上記の、予め長さが定められている巡回経路について、巡回経路の生成と、上記の評価関数を用いた評価による淘汰とを繰り返すことにより、その評価関数による評価の高い高評価巡回経路が生成される。
【0046】
そして、この高評価巡回経路を生成した後、
図1に示すエンジン特性試験システム1では、エンジン特性試験対象のエンジン10の回転速度とトルクが、その生成した高評価巡回経路を辿るようにエンジン制御パラメータを調整することによって該エンジンの運転を制御して、その運転時におけるエンジンの排気成分と成分量とを含むエンジン特性が測定される。
【0047】
そしてさらに、制御・計測用パソコン30では、その測定データを用いて高精度なエンジンモデルが生成される。
【0048】
ここで、巡回経路の生成と淘汰を繰り返して高評価巡回経路を生成するにあたり、本実施形態では、巡回経路上の巡回点を遺伝子として捉えた、以下の遺伝アルゴリズムを利用している。
【0049】
ここでは、初期値として、
「ACDJPONMLGCA」 ・・・(1)
「ADEFKJNRMHCA」 ・・・(2)
なる2つの巡回経路(DNA)を考える。
【0050】
なお、実際には、
図5に示す約20の巡回点に対し、巡回経路の長さ、すなわち1つの巡回経路を構成する巡回点の数は例えば100である。
【0051】
ここでは、上記の(1),(2)のDNAから出発し、DNAの突然変異や交差等によりDNAを増殖させる。例えば、上記(1)のDNAを構成する遺伝子「・・・JPO・・・」のPをKに突然変異させて「・・・JKO・・・」とし、
新たなDNA
「ACDJKONMLGCA」 ・・・(3)
を生成する。ただし、この突然変異にあたっては、
図5に示す経路が繋がるように突然変異させる。
【0052】
また、上記(1)のDNAの前半部分「ACDJP・・・」と上記(2)のDNAの後半部分「・・・NRMHCA」とを繋げて
「ACDJPONRMHCA」 ・・・(4)
を生成する。
【0053】
このようにしてDNAの数を増殖させ、評価関数にあてはめて評価の低いDNAを取り除く。この評価関数としては、
Ε=α・Σ(最高温度―最低温度)+β・通過した単位巡回経路の数 ・・・(5)
が採用される。
【0054】
ここで、α,βは、経験的に定めた各定数である。
【0055】
また、(最高温度―最低温度)は、同じ巡回点を複数回通過したときのその巡回点における最高の排気温度と最低の排気温度との差分である。1回しか通過しなかった巡回点については、その差分はゼロとなる。その差分を、通過した全ての巡回点について加算する。
【0056】
また、「通過した単位巡回経路の数」は、同じ単位巡回経路を複数回通過しても、その単位巡回経路についてはその複数回を持って通過した単位巡回経路の数を1つと数えたときの単位巡回経路の数である。
【0057】
このようにして、DNAの増殖と評価関数による淘汰を、例えば1000世代にわたって繰り返し、最終的に上記の評価関数において評価の高い高評価DNA(高評価巡回回路)を生成する。
【0058】
この高評価巡回経路を生成した後は、エンジン特性試験対象のエンジン10の回転速度とトルクが、その生成した高評価巡回経路を辿るようにエンジン制御パラメータを調整することによって該エンジンの運転を制御して、エンジンの排気成分と成分量とを含むエンジン特性が測定される。そして、この測定データに基づいて、さらに高精度なエンジンモデルが生成される。
【0059】
図6は、JE05モード走行時の、NOx排出予測精度を示した図である。
【0060】
この
図6は、(A)〜(D)のいずれにおいても横軸は時間[s]である。
【0061】
また、
図6(A),(B)の縦軸は、それぞれ、回転速度とトルクである。
【0062】
また、
図6(C),(D)の縦軸は、いずれもNOxの量を示している。
【0063】
図6(C),(D)において、実線は実測値を示していて、(C)と(D)とで同一のカーブとなっている。また、
図6(C)の破線は、上記のような高評価巡回経路を算出することなく、適宜行なったエンジン試験で集収したデータから生成したエンジンモデルを使って算出した値である。これに対し、
図6(D)の破線は、上記のようにして算出した高評価巡回経路を辿るエンジン試験で集収したデータから生成したエンジンモデルを使った算出値である。
【0064】
図6(D)の、一点鎖線で囲った部分は、暖気不十分なタイミングを表わしている。
図6(C)と
図6(D)とを比べると、
図6(D)の方が、この暖気不十分の時のNOx排出量の過大評価が抑えられていることが分かる。
【0065】
なお、上記の実施形態では、1つの巡回経路の長さを一つに定めているが、長さA〜長さBの範囲内というように長さの幅を持たせておいてもよい。あるいは、長さの上限値だけ決めておいて、長さの下限値については特に定めなくてもよい。
【0066】
また、上記の実施形態では、高評価巡回経路を生成するにあたり、遺伝アルゴリズムを使っているが、高評価巡回経路を生成するためのアルゴリズムはどのようなものであってもよく、特定のアルゴリズムに限定されるものではない。
【0067】
さらに、上記の実施形態では、評価関数として式(5)を採用しているが、式(5)の評価関数に限られるものではなく、同一の巡回点を複数回通過したときのその同一の巡回点における排気温度のうちの最高温度と最低温度との差分が大きく、かつ、巡回点から巡回点への1回の移動を単位巡回経路と呼んだとき、単位巡回経路の始点である移動前巡回点と単位巡回経路の終点である移動後巡回点とがともに一致する単位巡回経路を複数回通過した場合であっても通過した単位巡回経路の数をその単位巡回経路について1つとして計数したときの通過した単位巡回経路の数が多いという条件を満たす評価関数であればよい。