(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フルオロエラストマー−アミノシラングラフト化ポリマーのフルオロエラストマー基は、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)及びエチレン(ET)からなる群から排他的に選択された、2つ以上のモノマー単位を含む、請求項5記載のブランケット。
【発明を実施するための形態】
【0011】
前記図面の一部の詳細は単純化されており、厳密な構造的正確さ、詳細及びスケールを維持することよりむしろ、実施形態の理解を容易にするように描かれていることに留意されたい。
【0012】
これから、本教示の実施形態に対して、参照が詳細になされるであろう。その例は、添付の図面に図示される。前記図面において、同じ参照番号は、全体を通して、同一の構成要素を指定するのに使用されている。下記説明において、参照は、その一部を形成する添付の図面に対してなされ、その中で、本教示が実施され得る具体的な典型的実施形態の実例として示される。したがって、下記説明は、単に代表的である。
【0013】
多層画像化ブランケット
図1は、本開示の実施形態に基づく、プリンタ用の実例となる多層画像化ブランケット100の模式的断面図を示す。多層ブランケット構成の可能性のある利点は、トップコート及び下層のシリコーンの特性を細かく調整し、前記ブラケットの改善された全体性能のために、層間の機能を分割する能力である。
【0014】
基材
多層画像化ブランケット100は、前記ブランケットの他の層のための支持を提供する基材110を含んでもよい。前記基材は、当該分野において周知のように、シームレスベルトであり得る。シームレスベルトは、例えば、前記ブランケットの改善された動作品質等の利点を提供し得る。基材110は、任意の適切な材料から形成され得る。例としては、ポリマー、例えば、ポリイミド、シリコーン又は二軸配向ポリエチレンテレフタレート(例えば、MYLAR)、織布又はそれらの組み合わせがあげられる。実施形態において、前記シームレスベルトは、独立したポリイミドフィルムである。
【0015】
基材110は、任意の適切な厚みを有することができ、前記適切な厚みは、中でも、使用される前記基材材料により決まり得る。厚みの例は、約10ミクロンから約1000ミクロン、例えば、約20又は30ミクロンから約80、100又は200ミクロンの範囲である。
【0016】
適合層
適合層120は、基材110上に配置されてもよい。適合層120は、シリコーンゴム及び金属酸化物充填材152を含む。前記シリコーンは、媒体へのインク画像の改善された転写のために、前記ブランケットの印刷表面に、十分な適合能を付加し得る。前記金属酸化物の量は、前記ブランケットの適合性を調整するのに調節され得る。
【0017】
前記シリコーンの絶縁性は、表面層が、インクを乾燥させるための熱エネルギーを効率的に吸収及び保持するのを可能にする場合もある。湿し液が印刷プロセスに使用される場合、例えば、オフセット印刷プロセスに使用されることができる場合、前記ブランケット表面における熱エネルギーは、インクが塗工される画像領域から、前記湿し液を消散させるのを促進し得る。前記シリコーンと金属酸化物充填材との組み合わせは、サイクル間において、前記ブランケットの十分な冷却を可能にする、十分な熱移動特性を提供し得る。金属酸化物は、前記ブランケットの断熱性を調整するのにも添加され得る。例えば、シリカは、前記シリコーン層の断熱性能を向上させ得る。前記断熱性能は、例えば、水性インクジェットプロセスにおいて、前記ブランケットの所望の特性であり得る。
【0018】
前記「シリコーン」の用語は、当該分野において十分に理解され、ケイ素及び酸素の原子から形成された骨格と、炭素及び水素の原子を含む側鎖とを有するポリオルガノシロキサンを意味する。実施形態において、前記シリコーンは、フッ素原子を含まない。他の官能基が、前記シリコーンゴムに存在してもよい。例えば、ビニル、窒素含有、メルカプト、ヒドリド及びシラノール基は、架橋中にシロキサン鎖を互いに結合させるのに使用される。前記ポリオルガノシロキサンの側鎖は、アルキル又はアリールであり得る。
【0019】
本願明細書で使用する場合、前記「アルキル」の用語は、炭素原子と水素原子とから全体が構成され、完全に飽和の基を意味する。前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状でもよい。直鎖状のアルキル基は、一般的には、式−C
nH
2n+1を有する。
【0020】
前記「アリール」の用語は、炭素原子と水素原子とから全体が構成される芳香族基を意味する。アリールが炭素原子の数値範囲を伴って記載される場合、置換されている芳香族基を含むと解釈されるべきではない。例えば、「6から10個の炭素原子を含むアリール」の表現は、フェニル基(6個の炭素原子)又はナフチル基(10個の炭素原子)のみに言及すると解釈されるべきであり、メチルフェニル基(7個の炭素原子)を含むと解釈されるべきでない。
【0021】
実施形態において、前記シリコーンゴムは、コート可能な溶液又は分散液であり、前記シリコーン層の容易な形成を可能にする。さらに、前記シリコーンゴムは、例えば、プラチナ触媒又は硬化に適した他の触媒を使用することにより達成され得る、室温加硫性でもよい。例において、前記シリコーンゴムは、ビニル又はヒドリド等の官能基を含むポリ(ジメチルシロキサン)から形成される。前記官能基は、更なる架橋を可能にする。このようなシリコーンゴムは、例えば、Wackerから、ELASTOSIL RT 622として市販されている。
【0022】
上記されたように、前記シリコーンゴムは、1つ以上の金属酸化物充填材152、例えば、酸化鉄(FeO)又はシリカを含み得る。この開示の目的で、金属酸化物は、金属及び非金属の両方の酸化物、例えば、シリカを含むと規定される。上でも検討されたように、前記金属酸化物充填材の量は、前記ブランケットの適合性又は前記ブランケットの前記断熱性の少なくとも1つを調整するのに調節され得る。所望の適合性及び/又は熱特性を提供するであろう、任意の適切な量の金属酸化物充填材が使用され得る。例えば、前記金属酸化物充填材は、前記適合層の約5から約20重量パーセント、例えば、約7から約15重量パーセントを構成してもよい。前記シリコーンゴムは、前記適合層の約80から約95重量パーセント、例えば、約85から約93重量パーセントを構成してもよい。
【0023】
適合層120は、任意の適切な厚みを有してもよい。例示の厚み122は、約200μmから約6000μm、約500μmから約4000μm又は約500μmから約2000μmの範囲である。
【0024】
任意の接着層
任意の接着層130は、適合層120上に配置されてもよい。接着層130は、任意の適切な厚みを有してもよい。例えば、厚み132は、約0.05μmから約10μm、約0.25μmから約5μm又は約0.5μmから約2μmの範囲である。接着層130は、シラン、エポキシシラン、アミノシランの接着剤又はそれらの組み合わせから形成されてもよい。別の実施形態では、接着層130は、複合材料から形成されてもよい。より具体的には、接着層130は、ポリマーマトリクスから形成されるか、又は、同ポリマーマトリクスを含んでもよい。前記ポリマーマトリクスは、シリコーン、架橋性シラン又はそれらの組み合わせであるか、又は、それらを含んでもよい。
【0025】
トップコート層
トップコート層(本願明細書において「表面層」とも呼ばれる)140は、任意の接着層130及び/又は適合層120上に配置されてもよい。トップコート層140は、フルオロエラストマー、例えば、フルオロエラストマー−アミノシラングラフト化ポリマー組成物又はフルオロシリコーンであり得る。
【0026】
フルオロエラストマー−アミノシラングラフト化ポリマーのトップコート
トップコート層140は、下記有益な特性:インク又は(水性インク転写定着プロセスの場合)スキンの適切なぬれ及び/又は拡散;比較的低出力でも前記インク又はスキンの適切な乾燥;並びに、前記インク画像及び/又はスキンの印刷媒体への良好な転写特性の1つ以上を提供し得る。
【0027】
実施形態において、表面層140は、フルオロエラストマー−アミノシラングラフト化ポリマー組成物を含む。前記組成物は、(i)フルオロエラストマー;アミノシラン;溶媒;及び赤外吸収性充填材料を含む成分を混合して、コーティング組成物を形成すること、(ii)前記コーティング組成物を前記基材上に堆積させること、及び(iii)前記コーティング組成物を硬化させることにより形成される。
【0028】
任意の適切なフルオロエラストマーが、前記フルオロエラストマー−アミノシラングラフト化ポリマー組成物に使用され得る。実施形態において、前記フルオロエラストマーは、フッ化ビニリデンモノマー単位を含むコ−モノマーであり、置換基である、フルオロ、アルキル、パーフルオロアルキル及び/又はパーフルオロアルコキシの基を、ポリマー鎖上に有する。ここで、コポリマーの用語は、2つ以上のモノマーから形成されたポリマーを意味する。実施形態において、前記フルオロエラストマーは、ASTM D1418に基づいて分類され、ISO1629指定FKMを有する。エラストマーのこの分類は、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)及びエチレン(ET)からなる群から排他的に選択されたモノマー単位を含む、コポリマーを含むファミリーである。実施形態において、前記フルオロエラストマーは、これらのモノマーの2又は3つ以上を含んでもよく、約60wt%から約70wt%のフッ素含量を有してもよい。
【0029】
実施形態において、前記フルオロエラストマー−アミノシラングラフト化ポリマー組成物中のフルオロエラストマーは、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン及びテトラフルオロエチレンのコポリマーである。典型的な市販のフルオロエラストマーとしては、Solvay America,Inc.(Houston、TX)からのTECNOFLONブランドP959、及び、Daikin Industries(Houston、TX)からのDAI−ELブランドG621に基づくVDF−TFE−HFPターポリマーがあげられる。
【0030】
前記アミノシランは、架橋剤として使用される。前記フルオロエラストマーの所望の架橋を提供し得る、任意の適切なアミノシランが使用され得る。前記フルオロエラストマーと反応し得る、典型的なアミノシラン化合物は、オキシアミノシランである。前記「オキシアミノシラン」の用語は、酸素原子に共有結合した少なくとも1つのケイ素原子を有し、少なくとも1つのアミノ基(−HN
2)を有する化合物を意味する。前記酸素原子は、加水分解性基、例えば、アルコキシ又はヒドロキシル基の一部でもよい。前記アミノ基は、前記ケイ素原子に必ずしも共有結合されるものではなく、結合基を介して結合されてもよい。オキシアミノシランについての一般式は、式(1):
Si(OR)
pR’
q(−L−NH
2)
4−p−q 式(1)
に提供される。
【0031】
式中、R及びR’は、同じでも又は異なることができ、水素又はアルキルから選択され;pは、1から3の整数であり;qは、0から2の整数であり;及び、Lは、結合基、例えば、アルキルアミン又はアルキル結合基である。より望ましくは、pは、2又は3である。4−p−qの合計は、少なくとも1である。前記「アルコキシ」の用語は、酸素原子に結合したアルキル基(通常、直鎖状又は分岐鎖状)を意味し、例えば、式−OC
nH
2n+1を有する。
【0032】
実施形態において、前記オキシアミノシランは、アミノ置換されているトリアルコキシシラン、例えば、トリメトキシシラン又はトリエトキシシランである。実施形態において、前記オキシアミノシランは、アミノ置換されているジアルコキシ−アルキルシラン、例えば、アミノ置換されているジメトキシ−メチルシランであり得る。典型的なオキシアミノシランとしては、[3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン及び3−アミノプロピルトリメトキシシランがあげられる。3−アミノプロピルトリメトキシシランにおいて、前記プロピル鎖が、前記結合基である。このようなシランは、例えば、Sigma−Aldrich又はUCT(AO700として販売)から市販されている。前記アミン官能基は、一級、二級又は三級のアミンでもよい。前記アミノ基の窒素原子は、前記フルオロエラストマーと結合することができるため、少なくとも一部の場合には、酸素原子は、前記フルオロエラストマーと結合しない。
【0033】
1つ以上の任意の共架橋剤が、前記フルオロエラストマーの表面特性を適合させるために、必要に応じて、前記アミノシラン架橋剤に加えて使用され得る。例えば、前記フルオロエラストマーは、場合により、1つ以上のフルオロアルキル置換基を有するアミノ官能化シランと共架橋され得る。適切なアミノ官能化シラン共架橋剤の例は、Anthony Condello et alにより、2014年4月11日に出願された、同時係属の米国特許出願第14/250,482号に開示されている。
【0034】
1つ以上の赤外吸収性充填材料160、例えば、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、酸化鉄又はそれらの組み合わせが、トップコート層140に含まれる。中でも、前記赤外吸収性充填材料は、多層画像化ブランケット100の放射乾燥中に、異なる着色インク間に存在し得る温度差動を低下させ得る。
【0035】
前記赤外吸収性充填材料は、前記トップコート層の総重量に対して、約0.1wt%から約20wt%、約1wt%から約15wt%又は約2wt%から約10wt%の範囲の量で、トップコート層140に存在してもよい。他の例としては、トップコート層140の総重量に基づいて、約1重量%から約5重量%又は約3重量%の範囲があげられる。
【0036】
トップコート層140は、さらに、1つ以上の赤外反射性顔料150を含んでもよい。別の実施形態では、適合層120、接着層130、トップコート層140又はそれらの組み合わせは、反射性顔料150を含んでもよい。トップコート層140中の反射性顔料150は、適合層120及び/又は接着層130中の反射性顔料150と同じでもよいし、又は、それらは、異なってもよい。例えば、トップコート層140中の反射性顔料150は、二酸化チタン、シリカニッケルルチル、クロムルチル、コバルト系スピネル、酸化クロム、クロム鉄ニッケルブラックスピネル又はそれらの組み合わせでもよいし、又は、それらを含んでもよい。反射性顔料150は、約0.1wt%から約20wt%、約1wt%から約15wt%又は約2wt%から約10wt%の範囲の量で、トップコート層140に存在してもよい。実施形態において、反射性顔料は、前記適合層に含まれない。別の実施形態では、反射性顔料は、適合層、接着層又はトップコート層のいずれかに含まれない。
【0037】
トップコート層140への反射性顔料150の包含は、改善及び/又は向上したインク乾燥のために、インク成分による吸収のための、インク内での放射エネルギーの反射を改善し得る。反射性顔料150は、トップコート層140中で、吸収性材料160、例えば、カーボンブラックと組み合わせられた場合、光熱変換の効率が、カーボンブラック単独に対して向上される場合がある。さらに、種々のインク色間における乾燥の差動が減少又は除去される場合がある。放射エネルギー廃棄物の量が減る場合があり、インク乾燥の効率が改善する場合がある。
【0038】
トップコート層140は、任意の所望の厚みを有し得る。例として、トップコート層140は、約5μmから約500μm、約20μmから約200μm、約30μmから約100μm又は約30μmから約70μmの範囲の深さ又は厚み142を有してもよい。
【0039】
本開示のトップコート層140は、任意の適切な重合プロセスにより形成され得る。例えば、所望量の赤外吸収性充填材が、前記フルオロエラストマー及び適切な溶媒と十分に混合され得る。次いで、溶媒に溶解された前記アミノシランが、硬化プロセス中に所望の架橋を提供するのに十分な量で、フルオロエラストマー/充填材の混合物に添加され得る。場合により、重合及び/又は硬化中の架橋を促進するのに、触媒が使用され得る。実施形態において、アミノ官能化シランの量は、前記フルオロエラストマーに対して、約2pphから約10pphの範囲である。前記アミノシランとフルオロエラストマー/充填材の混合物とを混合した後、得られた液体コーティング配合は、適切な基材上にコートされ、以下により詳細に検討するように硬化され得る。本開示に基づいて調製された架橋コーティングは、溶融又は分解することなく、高温条件に耐えることができ、このような条件下において、機械的に堅牢であることができ、良好なぬれ性を提供する。
【0040】
前駆体の処理及び層のコーティングに使用される溶媒としては、有機炭化水素溶媒、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びn−ブタノール並びにフッ化溶媒があげられる。溶媒の更なる例としては、ケトン、例えば、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン(「MIBK」)があげられる。溶媒の混合物が使用されてもよい。実施形態において、前記溶媒は、前記配合組成物の少なくとも20重量パーセント、例えば、前記配合組成物の、約20重量パーセントから約90重量パーセント又は約50重量パーセントから約80重量パーセントの量で存在してもよい。
【0041】
形成された前記液体コーティング組成物は、任意の適切な量のコーティング前駆体及び溶媒を含み得る。実施形態において、前記組成物の固体負荷は、約10重量パーセントから約80重量パーセント、例えば、約18若しくは20重量パーセントから約70重量パーセント又は約40重量パーセントから約60重量パーセントの範囲であり得る。
【0042】
実施形態において、前記液体コーティング配合は、任意の適切な液体堆積技術を使用して、基材に塗工してもよい。前記基材上に前記コーティング溶液を堆積させるための典型的な方法としては、ドローダウンコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、フローコーティング、ディッピング、例えば、非常に微細な薄膜のマルチスプレーアプリケータによるスプレー、キャスティング、ウェブ−コーティング、ロール−コーティング、押出成形、ラミネート等があげられる。前記コーティング溶液の厚みは、約1000nmから約200μm、例えば、約5000nmから約100μm又は約30μmから約100μmでもよい。
【0043】
基材上への前記液体配合のコーティング後に、硬化した膜が、静置に基づき、又は、熱処理による乾燥により形成されてもよい。本開示に基づく硬化プロセスは、任意の適切な温度、例えば、約80℃から約200℃又は約100℃から約180℃又は約120℃から約160℃で行われてもよい。前記硬化プロセスは、所望の架橋及び溶媒の除去を提供するのに適切な任意の長さの時間起こり得る。
【0044】
トップコート層140は、前記トップコート層が使用される、水性転写定着プロセスの要求を最も良く支持するように適合され得る。例えば、前記トップコート層は、以下により詳細に検討される犠牲層(「スキン」と呼ばれることもある)の均一なぬれ(良好な拡散)を促進する特性、及び、犠牲層/インク画像が最終的な印刷媒体に効率的に転写されるのを確保するのに十分な剥離特性を示す特性の両方を有し得る。さらに、前記トップコート層は、乾燥ランプからの放射エネルギーを吸収して、インク吸収における任意の差を補償し得る。すなわち、より大きな熱式質量であるトップコート層の均一な加熱は、インク温度の差を平衡化するのに作用し得る。インク温度の均一性における改善は、水性転写定着印刷プロセスにおける改善された色間の転写整合性を提供する場合がある。
【0045】
フルオロシリコーントップコート
フルオロシリコーン層は、トップコート層140として使用され得る。フルオロシリコーントップコートは、種々の用途、例えば、Mandakini Kanungo et alによる米国特許出願公開第2014/0060359号明細書に記載されたオフセット印刷に使用され得る。
【0046】
オフセット印刷プロセスでは、前記トップコートの表面は、非画像領域における湿し液/湿し流体を保持するのに役立つ、マイクロ粗面化表面構造を有し得る。前記表面を構成するこれらのヒロック及びピットは、前記湿し液を前記表面に引き付ける静的又は動的な表面エネルギー力を向上させる。これにより、ローラニップ作用により前記表面から前記湿し液が離れる傾向が低下する。前記画像化部材は、可変性データリトグラフ印刷プロセスにおいて、複数の役割を果たす。前記役割としては、(1)前記湿し液によるぬれ、(2)潜像の形成、(3)オフセットインクによるインク塗布、並びに(4)前記インクの剥離及び受け入れ基材への転写の可能性があげられる。前記画像化部材、特にその表面についての一部の望ましい品質としては、前記画像化部材の有用な使用寿命を伸ばす高い引張り強度があげられる。前記表面層は、前記インクに弱く接着することもできるが、前記インクによりぬれることもでき、画像領域の均一なインク塗布及び前記表面から前記受け入れ基材への前記インクの後の転写の両方を促進することができる。最後に、一部の溶媒は、それらが、前記画像化部材の表面層を必然的に一部膨潤させるような低分子量を有する。前記画像化部材表面における近赤外レーザエネルギー吸収性粒子の剥離により、これらの膨潤条件下において、摩耗が間接的に進行し得る。前記粒子は、例えば、研磨粒子として作用する。望ましくは、前記画像化部材の表面層は、溶媒による浸透に低い傾向を有する。
【0047】
実施形態において、本開示のトップコート140は、フルオロシリコーン及び赤外吸収性充填材を含む。本願明細書で使用する場合、前記「フルオロシリコーン」の用語は、ケイ素及び酸素の原子から形成された骨格と、炭素、水素及びフッ素の原子を含む側鎖とを有するポリオルガノシロキサンを意味する。少なくとも1つのフッ素原子が、前記側鎖に存在する。前記側鎖は、直鎖状、分岐鎖状、環状又は芳香族性であり得る。前記フルオロシリコーンは、アミノ基等の官能基を含むこともできる。前記官能基は、更なる架橋を可能にする。前記架橋が完了した場合、このような基は、前記フルオロシリコーン全体の骨格の一部になる。適切なフルオロシリコーンは、例えば、NuSilからのCF1−3510、又は、商品名SLM50330でWackerから入手できるビニル末端化トリフルオロプロピルメチルシロキサンポリマー又はMomentiveからのフルオロシリコーンが市販されている。
【0048】
所望の剥離特性及び/又は表面エネルギー特性を提供する任意の適切な量のフッ素が使用され得る。実施形態において、前記フルオロシリコーンの、少なくとも25%、例えば、少なくとも35%又は少なくとも40%又は少なくとも75%のシロキサン単位がフッ化される。フッ化シロキサン単位の割合は、各ケイ素原子が2つの可能性のある側鎖を含むことを考慮することにより決定され得る。前記割合は、側鎖の総数(すなわち、ケイ素原子数の2倍)で割った、少なくとも1つのフッ素原子を有する側鎖の数として算出される。
【0049】
実施形態において、前記フルオロシリコーンは、フルオロシリコーン反応物と架橋剤とを使用して形成され得る。前記フルオロシリコーン反応物は、アルキル側鎖とフルオロアルキル側鎖との混合物を含み得る。例えば、フルオロシリコーン反応物は、メチル側鎖の集合とトリフルオロプロピル側鎖の集合とを含んでもよい。このようなフルオロシリコーン反応物の一例は、ビニル末端化トリフルオロプロピルメチルシロキサンポリマー、例えば、上記されたように、Wackerから商品名SLMで入手できる、市販のビニル末端化トリフルオロプロピルメチルシロキサンポリマーである。前記SLM化合物の一例は、以下の式2により表わされる。式中、Xは、任意の適切な数のシロキサン繰り返し単位であり得る。実施形態において、Xは、約20から約40、例えば、約25から約35又は約27の範囲であり得る。
【0051】
各種の架橋剤分子、例えば、ポリシロキサン鎖のケイ素原子に付着している、1つ以上の水素を含むポリシロキサン骨格を有する置換又は非置換の化合物が使用され得る。置換基は、前記ポリシロキサン骨格のケイ素原子に付着しているアルキル基及びフルオロアルキル基を含み得る。一例は、少なくとも1つ、例えば、2から10個のフルオロアルキル置換されているシロキサン繰り返し単位、及び、Si−H結合を有する少なくとも1つ、例えば、2から10個の内部シロキサン繰り返し単位を含むポリシロキサンであり、例えば、以下の式3の架橋化合物である。
【0053】
前記フルオロシリコーン反応物及び架橋剤は、混合及び硬化され得る。硬化は、任意の適切な技術により、例えば、水分及び/又は触媒により行われてもよい。一例は、プラチナ触媒を使用する付加硬化技術である。この技術では、前記フルオロシリコーン反応物のビニル基は、前記架橋剤のSi−H基と共有結合する。プラチナの塩又は錯体が、前記触媒として機能し得る。プラチナ触媒−環状シロキサン錯体の一例は、以下の式4に示される。種々の他のプラチナ触媒の錯体及び塩が、当該分野において公知である。
【0055】
種々の充填材が、前記フルオロシリコーントップコートに使用され得る。実施形態において、赤外吸収性充填材が使用される。前記赤外吸収性充填材は、(約750nmから約1000nmの波長を有する)スペクトルの赤外部分からのエネルギーを吸収可能である。これは、オフセット印刷プロセスに使用される湿し液の効率的な蒸発を促進する。実施形態において、前記赤外吸収性充填材は、カーボンブラック、金属酸化物、例えば、酸化鉄(FeO)、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト又は炭素繊維の1つ以上でもよい。前記充填材は、任意の適切な平均粒径、例えば、約2ナノメートルから約10ミクロンを有してもよい。
【0056】
実施形態において、前記赤外吸収性充填材は、前記表面層の約5から約30重量パーセント、例えば、約10から約25重量パーセントを構成してもよい。実施形態において、前記フルオロエラストマーは、前記表面層の約70から約95重量パーセント、例えば、約75から約90重量パーセントを構成してもよい。
【0057】
必要に応じて、前記表面層は、他の充填材、例えば、シリカを含むこともできる。シリカは、前記表面層の引張り強度を向上させ、耐摩耗性を向上させるのに役立ち得る。シリカは、フローコーティング用の溶液のフローを改善するのに添加されることもでき、カーボンブラックの分散に役立つことも示されている。実施形態において、5重量%以下、例えば、約1重量%から約5重量%又は約2重量%から約4重量%のシリカが使用される。他の実施形態では、例えば、引張り強度又は耐摩耗性を向上させるのにシリカが使用される場合、シリカは、前記表面層の約2から約30重量パーセント、例えば、約5から約30重量パーセントの量で存在してもよい。
【0058】
前記フルオロシリコーントップコート層は、任意の適切な厚みを有してもよい。例えば、前記コーティング溶液の厚みは、約100nmから約5000μm、例えば、約500nmから約500μm又は約30μmから約100μmでもよい。実施形態において、前記厚みは、印刷システム全体の要求に応じて、約0.5ミクロン(μm)から約4ミリメートル(mm)の範囲である。
【0059】
多層画像化ブランケットを使用するプリンタ
水性インクジェット転写定着プリンタ
図2は、本開示の実施形態に基づく、多層画像化ブランケット100を含むプリンタ200を示す。プリンタ200は、多層画像化ブランケット100の表面上にインク画像を形成する、インダイレクト水性インクジェットプリンタでもよい。水性インクジェットプリンタの例は、2013年9月20に出願された米国特許出願第14/032,945号、及び、2013年12月13に出願された米国特許出願第14/105,498号に、より詳細に記載されている。
【0060】
プリンタ200は、動作サブシステム及びコンポーネントを支持するフレーム211を含む。前記動作サブシステム及びコンポーネントは、以下に記載される。プリンタ200は、画像転写部材を含む。前記画像転写部材は、回転画像化ドラム212及び多層画像化ブランケット100を含むように図示される。本願明細書に記載したいずれかの多層画像化ブランケットが使用され得る。実施形態において、多層画像化ブランケット100は、別々に製造され、次いで、ドラム212の周囲に取り付けられたブランケットの形態である。
【0061】
多層画像化ブランケット100は、ドラム212が回転する際に、方向216に移動してもよい。転写定着ローラ219は、方向217に回転してもよく、多層画像化ブランケット100の表面に対して負荷されて、転写定着ニップ218を形成する。転写定着ニップ218内では、多層画像化ブランケット100の表面上に形成されたインク画像が、印刷媒体249上に転写定着される。一部の実施形態では、ドラム212又は前記プリンタの別の箇所におけるヒータ(図示せず)が、例えば、約50℃から約120℃の範囲の温度に、多層画像化ブランケット100を加熱する。高温により、親水性の犠牲コーティング組成物を堆積させるのに使用された液体キャリア、及び、多層画像化ブランケット100上に堆積された水性インク滴中の水の部分的な乾燥が促進される。
【0062】
洗浄ユニット、例えば、ブレード295は、前記インク画像が印刷媒体249に転写された後に、多層画像化ブランケット100の表面上に残った残留インクを除去してもよい。表面メンテナンスユニット(「SMU」)292は、コーティングアプリケータ、例えば、ドナーローラ(図示せず)を含んでもよい。前記ドナーローラは、前記液体キャリア中に前記親水性の犠牲コーティング組成物を保持する、貯留部(図示せず)に部分的に沈められる。前記ドナーローラは、前記液状の犠牲コーティング組成物を、前記貯留部から出し、多層画像化ブランケット100上に、前記犠牲コーティング組成物の層を堆積させてもよい。例えば、ドライヤ296により行われ得る乾燥プロセス後に、プリンタ200が印刷プロセス中にインク滴を噴射する前に、乾燥した前記犠牲コーティングは、多層画像化ブランケット100の表面を実質的に覆ってもよい。
【0063】
プリンタ200は、水性インクサプライ及び輸送サブシステム220を含むこともできる。輸送サブシステム220は、1色の水性インクの少なくとも1つの供給源222を有する。実施形態において、プリンタ200は、多色画像生成機であり、インク輸送システム220は、例えば、4つの供給源222、224、226、228を含む。前記4つの供給源は、4種類の色CYMK(シアン、イエロー、マゼンタ、ブラック)の水性インクを提供する。
【0064】
プリントヘッドシステム230は、プリントヘッド支持体を含んでもよい。前記プリントヘッド支持体は、プリントボックスユニットとしても公知の、複数のプリントヘッドモジュール234A−234Dについての支持を提供する。各プリントヘッドモジュール234A−234Dは、多層画像化ブランケット100の幅にわたって有効に伸び、多層画像化ブランケット100上にインク滴を噴射する。プリントヘッドモジュール234A−234Dは、1つのプリントヘッド又は、千鳥状配置に構成された複数のプリントヘッドを含んでもよい。プリントヘッドモジュール234A−234Dは、当業者に理解されるであろうように、前記1つ以上のプリントヘッドにインクを供給するのに関連する電子装置、インク貯留部及びインク導管を含んでもよい。
【0065】
多層画像化ブランケット100上の印刷画像が印刷ゾーンを出た後、前記画像は、画像ドライヤ204の下を通過する。画像ドライヤ204は、ヒータ205、例えば、放射赤外ヒータ、放射近赤外ヒータ及び/又は強制温風対流ヒータを含んでもよい。画像ドライヤ204は、加熱空気供給源として図示されたドライヤ206と、エアリターン207A及び207Bとを含むこともできる。ヒータ205は、例えば、多層画像化ブランケット100の表面上の前記印刷画像に、赤外熱を印加して、前記インク中の水及び/又は溶媒を蒸発させてもよい。加熱空気供給源206は、前記インク上に加熱空気を向けて、前記インクから水及び/又は溶媒の蒸発を提供してもよい。実施形態において、ドライヤ206は、ドライヤ296と同じ設計の加熱空気供給源でもよい。ドライヤ296は、前記親水性の犠牲コーティングを乾燥させる処理方向に沿って配置されてもよいが、ドライヤ206は、プリントヘッドモジュール234A−234D後に、多層画像化ブランケット100上の前記水性インクを少なくとも部分的に乾燥させる処理方向に沿って配置されることもできる。次いで、前記空気は、エアリターン207A及び207Bにより、回収及び排気されて、前記印刷領域における他のコンポーネントに対する気流の妨害を減少させてもよい。
【0066】
プリンタ200は、例えば、種々のサイズの紙印刷媒体の1つ以上のスタック及び前記印刷媒体の取扱い及び輸送に有用な種々の他のコンポーネントを格納している、印刷媒体サプライ及び取扱いシステム240をさらに含んでもよい。例示の取扱い及び輸送コンポーネントは、242、244、246、250及び264に図示されるが、当業者に容易に理解されるであろうように、任意の適切なサプライ及び取扱いシステムが使用され得る。プリンタ200の種々のサブシステム、コンポーネント及び機能の動作及び制御は、コントローラ280の支援により実行されてもよい。実施形態において、コントローラ280は、他の機器のサブシステム及び機能の全てを動作及び制御するためのメインマルチタスク方式プロセッサでもよい。
【0067】
1つ以上の画像が多層画像化ブランケット100及び前記犠牲コーティング上に形成されると、プリンタ200内のコンポーネントは、前記1つ以上の画像を、多層画像化ブランケット100から媒体に転写及び固定するためのプロセスを実行するように動作してもよい。例えば、熱及び/又は圧力が、転写定着ローラ219により、前記加熱された印刷媒体249の裏側に印加されて、印刷媒体249上に前記画像転写部材からの前記画像の転写定着(転写及び定着)を容易にし得る。実施形態において、前記犠牲コーティングも、前記転写定着プロセスの一部として、前記画像転写部材から印刷媒体249に転写される。
【0068】
前記画像転写部材が転写定着ニップ218を通って移動した後に、画像受け入れ表面は、洗浄ユニットを通過する。前記洗浄ユニットは、多層画像化ブランケット100の前記画像受け入れ表面から、前記犠牲コーティングの残留部分及び少量の残留インクのいずれかを除去し得る。
【0069】
デジタル(可変性)オフセット印刷プロセス用プリンタ
図3は、本開示の多層画像化ブランケットが使用され得る、可変性リトグラフ用プリンタ410を図示する。プリンタ410は、画像転写部材を含む。前記画像転写部材は、回転ドラム412及び多層画像化ブランケット100を含むように図示される。実施形態において、多層画像化ブランケット100は、(
図1に示した)シームレスベルト110;前記ベルト上に配置されたシリコーン層120及び前記シリコーン層上に配置されたフルオロエラストマー表面層140を含む。プリンタ410において、フルオロエラストマートップコート層140は、画像再形成可能な表面層である。実施形態において、表面層140は、フルオロシリコーンを含む。前記表面層は、前記画像化部材の最外層である。すなわち、前記画像化部材の前記層は、前記ベルト基材から最も遠い。
【0070】
本願明細書に記載した多層画像化ブランケット100のいずれかが使用され得る。実施形態において、多層画像化ブランケット100は、別々に製造され、次いで、ドラム412の周囲に取り付けられたブランケットの形態である。
【0071】
示した実施形態では、前記画像化部材は、反時計回りに回転し、洗浄表面で開始する。最初の位置には、湿し流体サブシステム430が配置される。同システム430は、前記表面を湿し流体432で均一にぬらして、均一で、制御された厚みを有する層を形成する。理想的には、前記湿し流体層は、厚みが約0.15マイクロメートルと約1.0マイクロメートルとの間であり、均一であり、ピンホールを有しない。以下にさらに説明されるように、前記湿し流体の組成物は、レベリング及び層厚みの均一性を支援する。センサ434、例えば、in situ非接触レーザ光沢センサ又はレーザコントラストセンサが、前記層の均一性を確認するのに使用される。このようなセンサは、湿し流体サブシステム430を自動化するのに使用され得る。
【0072】
光学パターン形成サブシステム436において、前記湿し流体層は、前記層の一部にエネルギーを選択的に印加して、前記湿し液を画像状に蒸発させ、前記受け入れ基材上に印刷されることが望まれる前記インク画像の潜在「ネガ」を形成する、エネルギー源(例えば、レーザ)に曝される。画像領域は、インクが望まれる箇所に形成され、非画像領域は、前記湿し流体が残っている箇所に形成される。ここで、清浄な乾燥空気の供給を維持し、空気温度を制御し、インク塗布前の埃による汚染を低下させる目的で、表面層420上の気流を制御する、任意のエアナイフ444も示される。次に、インク組成物が、インカーサブシステム446を使用して、前記画像化部材に塗工される。インカーサブシステム446は、1つ以上の形成ローラ446A、446B上のオフセットインク組成物を計量するアニロックスローラを使用する、「キーレス」システムからなってもよい。前記インク組成物は、前記画像領域に塗工されて、インク画像を形成する。
【0073】
レオロジー制御サブシステム450は、前記インク画像を部分的に硬化又はタックする。この硬化源は、例えば、紫外発光ダイオード(UV−LED)452でもよい。紫外発光ダイオード452は、必要に応じて、光学素子454を使用して焦点を合わせられ得る。粘着性及び粘度を向上させる別の方法は、前記インク組成物の冷却を使用する。これは、例えば、前記インク組成物が塗工された後であるが、前記インク組成物が前記最終的な基材に転写される前に、画像再形成可能な表面上にジェット458から冷えた空気を吹き付けることにより行われ得る。あるいは、加熱素子459が、インカーサブシステム446付近で使用されて、第1の温度を維持し、冷却素子457が、ニップ416付近において、より低い第2の温度を維持するように使用され得る。
【0074】
次いで、前記インク画像は、転写サブシステム470において、目的又は受け入れ基材414に転写される。これは、記録媒体又は受け入れ基材414、例えば、紙を、インプレッションローラ418と画像化部材412との間のニップ416を通過させることにより達成される。
【0075】
最終的に、前記画像化部材は、任意の残留したインク又は湿し流体を洗浄されるべきである。ほとんどのこの残留物は、十分な気流によるエアナイフ477を使用して、素早く容易に除去され得る。任意の残留したインクの除去は、洗浄サブシステム472において達成され得る。
【0076】
本願明細書で使用する場合、特に断らない限り、前記「プリンタ」の語は、任意の目的についての印刷出力機能を実行する任意の装置、例えば、デジタルコピー機、ブックマーク機、ファクシミリ機、多機能機、電子写真装置等を包含する。
【0077】
これから、具体的な実施例を、詳細に記載するであろう。これらの実施例は、例証を意図しており、これらの実施形態において説明された、材料、条件又はプロセスパラメータに限定されない。特に断らない限り、全ての部は、固体重量による割合である。
【実施例】
【0078】
実施例1:水性インクジェット転写定着印刷プロセス用の多層ブランケット
厚み20−100μmのシームレスポリイミド(PI)フィルムを、マンドレルに取り付ける。ブラシを使用して、Wacker G790プライマー(ビニル末端化アルコキシシラン)の薄い層を、前記PIフィルムの表面上に塗工する。前記PIフィルムの前処理及び過剰のプライマーの拭き取りを必要としない。前記プライマーを、室温及び湿度40−60%で、1−2時間塗工する。
【0079】
Pt硬化シロキサンRT622配合を、1部のWacker Chemie AG of Munich Germanyからのシラン架橋剤(Pt触媒と酸化鉄粒子との予混合)及び2部のMIBKに対して、9質量部のRT622を混合することにより調製する。最終的な粘度は、約5000cPである。RT622配合を、前記プライマーで機能化した前記シームレスPIの表面上にフローコートする。RT622シリコーンの厚みは、約0.5mmから約2mmである。
【0080】
前記RT622の表面を、下層のRT622シリコーン表面に対するFKMトップコートの接着を改善するのに役立つ、プライマーで処理して粗面化し、又は、インラインのコロナ処理を有するかのいずれかとし得る。前記トップコート配合は、MIBKに混合したG621、アミノシラン(AO700)硬化剤及びカーボンブラック(N990)を含む。前記トップコートの厚みは、約30μmから約100μmである。
【0081】
実施例2:可変性リトグラフ印刷プロセス用の多層ブランケット
厚み20−80μmのシームレスポリイミド(PI)フィルムを、マンドレルに取り付ける。ブラシを使用して、Wacker G790プライマー(ビニル末端化アルコキシシラン)の薄い層を、前記PIフィルムの表面上に塗工する。前記PIフィルムの前処理及び過剰のプライマーの拭き取りを必要としない。前記プライマーを、室温及び湿度約40から約60%で、約1から約2時間塗工する。
【0082】
Pt硬化シロキサンRT622配合を、1部の架橋剤(Pt触媒と酸化鉄粒子との予混合)及び4.5部のMIBKに対して、9質量部のRT622を混合することにより調製する。最終的な粘度は、約15000−20000cPである。前記RT622配合を、前記プライマーで機能化した前記シームレスPIの表面上にフローコートする。
【0083】
前記RT622の表面を、下層のRT622シリコーン表面に対するフルオロシリコーントップコートの接着を改善するのに役立つ、プライマーで処理し、又は、インラインのコロナ処理を有するかのいずれかとし得る。前記トップコートのフルオロシリコーン配合を、100gのFSあたりに、5質量部のWackerからのSLMフルオロシリコーン(ビニル末端化トリフルオロプロピルメチルシロキサンポリマー、n=27);1部のNusilからの架橋剤XL−150、12.5部のトリフルオロトルエン(TFT)溶媒;20%カーボンブラック(CabotからのEmperor 1600)、1.15%ヒュームドシリカ、4.2mLのPt−触媒(TFTにおける14.3%)を混合することにより調製する。
【0084】
具体的には、前記ビニル末端化トリフルオロプロピルメチルシロキサンポリマーを、ステンレス鋼ビーズを含むペイントシェイカー中で、前記カーボンブラック、シリカ及びトリフルオロトルエン(TFT)溶媒と、3時間混合する。前記ペイントシェイカーにおける混合は、前記カーボンブラックを前記フルオロシリコーン中に微細に分散させるのに役立つ。混合後、Pt触媒を添加し、十分混合する。次いで、Nusilからの架橋剤(XL−150)を添加し、十分混合する。前記配合の粘度を、TFTの添加により、約250cPに調節する。前記配合を、真空において脱気し、フローコーティング前に気泡を除去する。フローコーティング後に、前記フローコートしたブランケットを、160℃で4時間、後硬化させる。全ての材料は市販されている。実施例の配合の組成は、下記の通りである。
SLM(n=27)−100g
カーボンブラック(20重量%)−30.4g
シリカ(1.15重量%)−1.75g
TFT−250g
Pt触媒(TFTにおける14.3重量%)−4200マイクロリットル
パートB(XL150架橋剤)−20g
粘度:約250cPから約280cPの範囲で調節
【0085】
開示の広い範囲を説明する数値範囲及びパラメータは近似であるにもかかわらず、具体的な実施例で説明した数値は、可能な限り正確に報告する。ただし、任意の数値は、その各試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる特定のエラーを本質的に含む。さらに、本願明細書に開示した全ての範囲には、その中に包含される任意及び全ての部分範囲を包含すると理解されたい。