特許第6472376号(P6472376)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472376
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20190207BHJP
【FI】
   F16K31/06 305Z
   F16K31/06 305L
   F16K31/06 305J
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-256481(P2015-256481)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-120104(P2017-120104A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】391004171
【氏名又は名称】株式会社コム
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100201259
【弁理士】
【氏名又は名称】天坂 康種
(72)【発明者】
【氏名】加藤 賢太朗
【審査官】 角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−234912(JP,A)
【文献】 実開平2−40170(JP,U)
【文献】 特開平11−141707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/11
39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座を有するベース部材と、電磁力を受けて筒状体内を往復移動するプランジャ及び前記プランジャの端部に設けられ前記プランジャの往復移動により前記弁座に対して接離する弁体を有する弁体ユニットと、を備え、前記弁座の環状シール部に対して前記弁体のシール部が接触することにより閉弁される電磁弁であって、
前記弁体は前記ベース部材が備える誘導部材により直線状に誘導され、該弁体のシール部が前記弁座の環状シール部に対して直線状に往復移動されるようになっており、
前記プランジャは、連結部により前記弁体対して相対移動を許容して連結されていることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記連結部は、少なくとも前記弁体と前記プランジャの傾動を許容する傾動許容手段を有することを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記連結部は、少なくとも前記弁体と前記プランジャの水平方向への移動を許容する水平動許容手段を有することを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記連結部は、少なくとも前記弁体と前記プランジャの傾動を許容する傾動許容手段と、水平方向への移動を許容する水平動許容手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記連結部における前記プランジャ側には、円柱状の凹部が形成され、前記凹部には前記弁体の一端部に形成された載頭球形部が収納されるとともに、前記凹部底面と前記載頭球形部の先端とが当接するように板状弾性体により保持されてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電磁弁。
【請求項6】
前記弁体は、前記誘導部材に摺接して案内されるステムと、該ステム先端に設けられ、前記弁座の環状シール部と接触して閉弁する載頭円錐形のシール部と、を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁力を利用して弁体を弁座に対して接離させることで流路の開閉を行う電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスや液体等の流体が流れる配管において、電磁石の磁力を用いてプランジャを往復移動させ、プランジャの先端に設けられた弁体を弁座に対して接離させることで流路の開閉制御を行う電磁弁がある。電磁弁は、ガスメータ等の取付け板のフランジにネジ等で固定されており、コイルの磁極になるヨークの内部に納められたボビンにコイルが巻き付けられている。コイルの中央部には、固定鉄心と永久磁石とが設けられ、可動鉄心であるプランジャは、ボビンの中央軸に取付けられるガイドパイプ内に挿入されている。プランジャとガイドパイプの間には、接触を減らしてプランジャを移動しやすくするための隙間が設けられ、コイルに電流が流れることによって生じる磁力を受けてプランジャがガイドパイプ内を往復移動する。これにより、電磁弁の特徴である高速で直線的な往復動作が可能となり、流路の開閉間隔が短く、かつ開閉回数が多い用途に多用されている。
【0003】
また、電磁弁は、磁力を利用するため他のアクチュエータの使用が制限される極低温において使用可能となっているが、閉弁時の気密性で電動弁等に劣っていることから、閉弁時の気密性を向上させた電磁弁が開発されている。このような電磁弁には、例えば、特許文献1に開示されているような技術が採用されている。特許文献1によれば、双方向遮断弁(電磁弁)は、プランジャの先端に弁体が挿入されたパイロットピンが揺動自在に取付けられ、弁体を構成するゴム製のバルブシートが弁座に対して接離することにより流路の開閉制御を行う。また、弁体を支えるパイロットピンがプランジャに対して揺動自在に取付けられているため、弁座に対する弁体の角度を調整することができ、弁体が弁座に対して常に平行な角度で押し当てられた状態にすることにより閉弁時の気密性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−122411号公報(第3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にあっては、弁体を支えるパイロットピンがプランジャに対して揺動自在に取付けられており、弁座に対する弁体の進入角度によっては、弁体の一部が弁座に対して片当たりした後、パイロットピンが揺動されることにより弁体のシール部によって弁座の環状シール部が閉め切られるようになっているため、弁体のシール部と弁座の環状シール部とを完全に密閉するまでに時間を要し、流路の開閉時における流量調整の精度が低くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、流路の開閉時における流量調整の精度の高い電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の電磁弁は、
弁座を有するベース部材と、電磁力を受けて筒状体内を往復移動するプランジャ及び前記プランジャの端部に設けられ前記プランジャの往復移動により前記弁座に対して接離する弁体を有する弁体ユニットと、を備え、前記弁座の環状シール部に対して前記弁体のシール部が接触することにより閉弁される電磁弁であって、
前記弁体は前記ベース部材が備える誘導部材により直線状に誘導され、該弁体のシール部が前記弁座の環状シール部に対して直線状に往復移動されるようになっており、
前記プランジャは、連結部により前記弁体対して相対移動を許容して連結されていることを特徴としている。
この特徴によれば、筒状体内においてプランジャは低抵抗の往復動作性が維持される一方、誘導部材により弁座の環状シール部に対する弁体の開閉弁方向への直線動作性が確保されるため、高速性を維持しつつ開弁から閉弁に亘って安定した流量調整ができ、流路の開閉時における流量調整の精度を高めることができる。
【0008】
前記連結部は、少なくとも前記弁体と前記プランジャの傾動を許容する傾動許容手段を有することを特徴としている。
この特徴によれば、プランジャに対して弁体が傾斜可能に連結されているため、筒状体内で生じるプランジャの往復移動方向に対する傾きに関わらず、誘導部材によって弁座の環状シール部に対して弁体のシール部を正しく誘導することができる。
【0009】
前記連結部は、少なくとも前記弁体と前記プランジャの水平方向への移動を許容する水平動許容手段を有することを特徴としている。
この特徴によれば、プランジャに対して弁体が水平方向に移動可能に連結されているため、筒状体内で生じるプランジャの水平方向への移動に関わらず、誘導部材によって弁座の環状シール部に対して弁体のシール部を正しく誘導することができる。
【0010】
前記連結部は、少なくとも前記弁体と前記プランジャの傾動を許容する傾動許容手段と、水平方向への移動を許容する水平動許容手段と、を有することを特徴としている。
この特徴によれば、プランジャに対して弁体の3次元方向の移動自由度が向上し、誘導部材によって弁座の環状シール部に対して弁体のシール部を正しく誘導することができる。
【0011】
前記連結部における前記プランジャ側には、円柱状の凹部が形成され、前記凹部には前記弁体の一端部に形成された載頭球形部が収納されるとともに、前記凹部底面と前記載頭球形部の先端とが当接するように板状弾性体により保持されてなることを特徴としている。
この特徴によれば、プランジャに対して弁体の上下移動が板状弾性体によって規制され、かつ互いの傾動時には板状弾性体が一部変形し円滑に傾動を許容できることとなる。
【0012】
前記弁体は、前記誘導部材に摺接して案内されるステムと、該ステム先端に設けられ、前記弁座の環状シール部と接触して閉弁する載頭円錐形のシール部と、を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、載頭円錐形のシール部が前記弁座の環状シール部に侵入する際、弁座の環状シール部により弁体のシール部が調芯されていくので、誘導部材とステムとの間のクリアランスを僅かに確保でき、誘導部材とステムとの摺動抵抗を低減できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例における電磁弁の構造を示す断面図である。
図2】弁座の構造を示す断面図である。
図3】プランジャと弁体の取付け構造を示す分解斜視図である。
図4】プランジャと弁体の連結部の構造を示す断面図である。
図5】(a)は、開弁時における弁体と弁座の状態を示す断面図であり、(b)は、閉弁時における弁体と弁座の状態を示す断面図である。
図6】プランジャが往復移動方向に対して傾斜した場合のプランジャと弁体の連結部の状態を示す断面図である。
図7】プランジャが水平方向に移動した場合のプランジャと弁体の連結部の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る電磁弁を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0015】
実施例に係る電磁弁につき、図1から図7を参照して説明する。以下、図1の画面手前側を電磁弁の正面側(前方側)とし、奥側を背面側(後方側)とし、その正面側から見たときの上下左右方向を基準として説明する。
【0016】
本実施例の電磁弁1は、例えば、MRI等の医療機器、冷凍機等に用いられる冷凍サイクルにおいて冷媒(例えば、液体ヘリウム等)が流出入する流路の開閉制御を行うために設けられる。尚、本実施例における電磁弁1は、常時閉弁式のものとして説明する。
【0017】
図1に示されるように、電磁弁1は、冷媒の流入通路21及び流出通路22を有するベース部材2と、該ベース部材2に取付けられ流入通路21及び流出通路22の連通状態を変更する弁体ユニット3と、から主に構成されている。
【0018】
図1及び図2に示されるように、ベース部材2は、その外縁側の上面2aよりも内側の位置に平面視略環状の凸条部23が形成されている。また、凸条部23の内側には、上面2aよりも若干凹んだ平面視略環状の凹条部24が形成されており、さらに凹条部24の内側(ベース部材2の中央部)には、凸条部23よりも上方に突出した円筒状の突部25が形成されている。また、凸条部23の上面には、上方に突出する突起部26が周方向に連続するように環状に設けられている。
【0019】
この凸条部23の中央には、該凸条部23の軸方向に延びる凹部27(誘導部材)と、凹部27の内周面から斜め上方に向けて突部25の上面に貫通する複数の貫通孔28(本実施例では4つ)が放射状に穿設されている。また、凹部27には、前述した流入通路21が同軸方向に連通して延びている。この凹部27と流入通路21との連通箇所には、後述するように流入通路21及び流出通路22が非連通状態において弁体31が接触する弁座29が設けられている。この弁座29は、凹部27と中心軸を同じくし、凹部27側に向けて環状に拡径するテーパ状に形成されている。また、凹条部24の周方向の所定箇所の底面には、前述した流出通路22がベース部材2の外部に連通するように穿設されている。尚、ベース部材2は、ステンレスの鋳造成形品に上述したように流入通路21及び流出通路22、凹部27、貫通孔28、弁座29が穿設されることにより形成されている。さらに尚、凹部27及び弁座29は、突部25から流入通路21にかけて上下方向に貫通する孔を穿設した後、各部の寸法に合わせて孔の径を広げていくことにより形成されるため、凹部27と弁座29の中心軸を簡単に同軸上に揃えることができる。
【0020】
図1に示されるように、弁体ユニット3は、弁体31と、弁体31が下方に取付けられた筒状のプランジャ32と、プランジャ32を上下方向に駆動させる駆動手段33と、これらを被覆する有底筒状のキャップ34と、から主に構成されている。各種部材は、キャップ34の内部に収容されてユニット化されている。より詳しくは、各種部材を収容したキャップ34を、ガスケット4を配置したベース部材2の凸条部23の外側に嵌め込み、該キャップ34の取付フランジ34aを図示しないボルト等で緊締することにより、弁体ユニット3とベース部材2とが連結される。尚、弁体31は、ポリイミド樹脂製であり、耐寒性に優れ、液体ヘリウム(−269℃)が流体として使用されるような極低温下においても優れた物性を保つことができる。
【0021】
弁体ユニット3とベース部材2とが連結された状態にあっては、弁体ユニット3とベース部材2との間にリング状のガスケット4が挟持されており、弁体ユニット3とベース部材2とが密封状に連結されている。また、弁体ユニット3とベース部材2との間(ガスケット4の内側)には、空間Sが形成されており、この空間Sは、流入通路21及び流出通路22に連通している。また、弁体31の上下移動は、凹部27の内周面によりガイドされるようになっており、この結果、弁体ユニット3とベース部材2とが連結された状態にあっては、弁体31の中心軸が弁座29の中心軸と同一直線上に配置された状態で凹部27内に挿入される。
【0022】
また、駆動手段33は、プランジャ32を収納する断面コ字状の筒状体35と、筒状体35の外周に設けられるコイル36と、筒状体35に固定されるベースコア37と、筒状体35の上方に設けられるマグネット38と、プランジャ32とベースコア37との間に接続されるバネ39と、を備える。
【0023】
筒状体35の下方側端縁に設けられたフランジ部35aの下端面35bには、下方に突出する突起部35cが周方向に連続するように環状に設けられている。この突起部35cと前述したベース部材2の突起部26とは、上下に対応する位置に設けられており、弁体ユニット3とベース部材2とが連結された状態にあっては、この突起部26と突起部35cとの間にガスケット4の一部が挟持されるようになっているため、空間S内の密封性が向上している。
【0024】
次に、弁体ユニット3の開閉動作について説明する。駆動手段33のコイル36に開電流が通電されると、コイル36の起磁力によりプランジャ32が上方に移動し、プランジャ32の下方に取付けられた弁体31が弁座29から離間することにより開弁される(図5(a)参照)。尚、プランジャ32の吸引に必要な通電は瞬間的なものであり、プランジャ32が開弁位置まで吸引された後は、通電を止めてマグネット38の磁力によりプランジャ32が開弁位置に吸着された状態を維持している。
【0025】
また、コイル36に開弁時と異なる方向の閉電流が通電されると、コイル36の反対方向への起磁力によりプランジャ32が下方に移動し、弁体31が弁座29に接触することにより閉弁される(図5(b)参照)。尚、プランジャ32の復帰に必要な通電は吸引と同様に瞬間的なものであり、プランジャ32が閉弁位置に復帰した後は、通電を止めてプランジャ32とベースコア37との間に接続されるバネ39の付勢力によりプランジャ32を閉弁位置に維持している。このように、弁体ユニット3は瞬間的な通電によりプランジャ32の往復移動が可能な自己保持型ソレノイドの構造を有し、省電力で開閉動作を行えるようになっている。
【0026】
図1の拡大部に示されるように、プランジャ32の外周面と筒状体35の内周面との間には、所定の寸法の間隔L1が形成されている。これにより、プランジャ32の外周面と筒状体35の内周面とが接触しにくくなっているため、プランジャ32が筒状体35に対して相対移動できるようになっている。
【0027】
図3及び図4に示されるように、弁体31は、胴部31a(ステム)と、胴部31aの下方側端部に設けられた先端部31bと、胴部31aの上方側端部に設けられた頭部31c(載頭球形部)と、を備えている。胴部31aは、その外周面がベース部材2の凹部27の内周面に対して摺動されることによって、弁体31の上下移動が凹部27の内周面によりガイドされるようになっている。先端部31bは、胴部31aよりも小径を成し、その先端は下方に向かって漸次減径するテーパ面31dとなっている。また、頭部31cは、胴部31aよりも大径を成し、その上端部は略半球面形状を成している。
【0028】
弁体31のテーパ面31dのテーパ角度は、弁座29のテーパ角度よりも若干小さくなっており、弁座29に対して弁体31のテーパ面31dが環状に接触することで閉弁される。このため、シール部分の接触荷重が小さくなり、プランジャ32の推力が小さくても弁体31による閉弁時の気密性を高めることができる。尚、以下に記述される弁体31のシール部及び弁座29の環状シール部とは、閉弁時において弁体31のテーパ面31dと弁座29とが接触する部分のことである(図5(b)参照)。さらに尚、弁座29の環状シール部の形状は、円形であってもよいし、多角形であってもよい。
【0029】
また、プランジャ32との対向面に当たる弁体31の頭部31c上端部は略半球面形状となっており、弁体31をプランジャ32に対して円滑に傾動させることができるようになっている。
【0030】
プランジャ32は、その外縁側の下面32aよりも内側の位置から下方に突出する環状突部32bが設けられているとともに、その下面32aにおける中央部には、上方に凹む凹状部32cが設けられている。環状突部32bの内周面には、該環状突部32bの全周に亘って段部32d及び凹溝部32eが形成されている。
【0031】
次に、弁体31とプランジャ32との連結態様について説明する。図3及び図4に示されるように、弁体31は、Oリング5(板状弾性体,傾動許容手段)及びCリング6を用いてプランジャ32の下方に取付けられている。詳しくは、弁体31の頭部31cは、凹状部32c内に挿入されている。凹状部32cは、頭部31cよりも大径であって、その上底面が平面に形成されており、頭部31cを凹状部32c内に挿入した状態にあっては、頭部31cの外周面と凹状部32cの内周面との間に所定の寸法で間隔L2(水平動許容手段)が形成されている。
【0032】
また、段部32dには、Oリング5が水平方向に移動可能に遊嵌されている。このOリング5は、硬質ゴム等により形成されており、Oリング5の中央に設けられた貫通部5aの径は、弁体31の胴部31aよりも若干大径であるとともに、頭部31cよりも小径となっている。環状突部32b内にOリング5が配置された状態にあっては、Oリング5の中央に設けられた貫通部5a内に弁体31の胴部31aが挿通されている。
【0033】
また、凹溝部32eには、ステンレス等により形成され弾性を備えたCリング6が嵌入されている。このCリング6が凹溝部32eに嵌入された状態にあっては、Cリング6とプランジャ32の下面32aとによりOリング5を上下方向から挟み込み、Oリング5がプランジャ32から離脱することが防止されている。尚、Cリング6は、凹溝部32eよりも大径を成しており、Cリング6を縮径させた状態で凹溝部32e内に嵌入され、凹溝部32e内に嵌入後は、Cリング6の弾性復元力により凹溝部32e内に嵌入された状態が保たれる。
【0034】
このように弁体31がプランジャ32の下方に取付けられているため、頭部31cがOリング5に係止され、弁体31がプランジャ32から離脱することが防止される。また、弁体31がプランジャ32の下方に取付けられた状態にあっては、頭部31cの略半球面形状の外周面と凹状部32cの内周面との間に間隔L2が形成されているため、弁体31は、プランジャ32の往復移動方向に対して直交する方向(水平方向)への相対移動が可能となっている。また、Oリング5は、硬質ゴム等により板状に形成された弾性体であり、若干弾性力を有するため、凹状部32cに頭部31cが挿入された状態で、凹状部32cの底面と頭部31cの先端とが当接するようにOリング5により保持されることにより、プランジャ32に対して弁体31の上下移動がOリング5によって規制され、かつ互いの傾動時にはOリング5が一部変形し円滑に傾動を許容できるようになっている。
【0035】
また、図4に示されるように、弁体31とプランジャ32の連結部は、弁体31の頭部31c、プランジャ32の凹状部32c、Oリング5から形成されており、該連結部によってプランジャ32に対する弁体31の3次元方向の移動自由度を向上させることができる。
【0036】
以上説明したように、本実施例における電磁弁1は、弁体31のシール部は、凹部27により弁座29の環状シール部に対して直線状にガイドされるので、筒状体35内においてプランジャ32は低抵抗の往復動作性が維持される一方、凹部27により弁座29の環状シール部に対する弁体31の開閉弁方向への直線動作性が確保されるため、高速性を維持しつつ開弁から閉弁に亘って安定した流量調整ができ、流路の開閉時における流量調整の精度を高めることができる。
【0037】
また、弁体31の胴部31aは、その外周面が凹部27の内周面に摺接され、弁体31の先端のテーパ面31dは、弁座29の環状シール部と接触して閉弁する載頭円錐形のシール部を構成しているため、載頭円錐形のシール部が弁座29の環状シール部に侵入する際、弁座29の環状シール部により弁体31のシール部が調芯されていくので、凹部27と胴部31aとの間のクリアランスを僅かに確保でき、凹部27と胴部31aとの摺動抵抗を低減することができる。
【0038】
これによれば、弁体ユニット3の開閉動作においてプランジャ32が筒状体35に対して相対移動する際に、前述したプランジャ32の外周面と筒状体35の内周面との間に形成された間隔L1に起因するプランジャ32の往復移動方向に対する傾き(図6参照)及び水平方向への移動(図7参照)に対して、弁体31が相対移動可能になっているとともに、弁体31のシール部は、凹部27により弁座29の環状シール部に対して直線状に円滑にガイドされるため、高速性を維持しつつ開弁から閉弁に亘って安定した流量調整ができ、流路の開閉時における流量調整の精度を高めることができる。
【0039】
また、図5乃至図7に示されるように、弁体31は、プランジャ32に対して相対移動可能に軸支されているが、開閉弁時において、常に弁体31の胴部31aが凹部27に挿入された状態となっており、弁座29に対する弁体31の開閉弁方向以外の動きを規制されているため、流入通路21及び流出通路22の連通状態において、凹部27や空間Sを通過する流体の影響を受けて弁体31が動かない構造となっており、弁体31を常に安定させた状態で開閉弁動作を行うことができるので、流路の開閉時における流量調整の精度を高めることができる。
【0040】
尚、本実施例における弁体31は、プランジャ32の凹状部32cに頭部31cが挿入されたOリング5により上下移動が規制され、かつ互いの傾動時にはOリング5が一部変形し円滑に傾動を許容できるようになっている態様として説明したが、これに限られず、弁体31の頭部31cとプランジャ32の凹状部32cとの間にクリアランスを設けることにより、傾動を許容できるようにしてもよい。
【0041】
また、本実施例においては、弁体31の胴部31aを凹部27に摺接させることにより弁体31のシール部を弁座29の環状シール部に対して直線状にガイドする態様として説明したが、これに限られず、弁体31のシール部を弁座29の環状シール部に対して直線状にガイドすることができれば誘導部材は自由に構成されてよく、例えば、ニードル型の弁体の先端が弁孔の縁部によってガイドされるような態様であってもよい。
【0042】
また、本実施例における弁体31は、プランジャ32との対向面に当たる弁体31の頭部31c上端部が略半球面形状となっている態様として説明したが、これに限られず、プランジャ32の凹状部32cの弁体31の頭部31cに対する対向面が略半球面形状となっていてもよいし、弁体31とプランジャ32の対向面が両方とも略半球面形状となっていてもよい。
【0043】
また、本実施例における弁体31は、弁座29に対して挿嵌されることにより閉弁される態様として説明したが、これに限られず、弁体と弁座の閉弁の態様は自由に構成されてよく、例えば、円盤形状の弁体が弁座を覆うように圧着されることにより閉弁されるものであってもよい。
【0044】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0045】
例えば、前記実施例では、弾性ゴム等により形成されたOリング5によってプランジャ32の下方に弁体31が係止されていたが、弁体31を係止可能な板状の弾性体であれば、どのような形状であってもよく、材質もステンレス等の金属により形成されてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 電磁弁
2 ベース部材
3 弁体ユニット
4 ガスケット
5 Oリング(板状弾性体)
6 Cリング
21 流入通路
22 流出通路
27 凹部(誘導部材)
28 貫通孔
29 弁座
31 弁体
31a 胴部(ステム)
31b 先端部
31c 頭部(載頭球形部)
31d テーパ面
32 プランジャ
33 駆動手段
34 キャップ
35 筒状体
36 コイル
37 ベースコア
38 マグネット
39 バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7