(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472388
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】低ESRコンデンサー
(51)【国際特許分類】
H01G 9/028 20060101AFI20190207BHJP
H01G 9/032 20060101ALI20190207BHJP
H01G 9/052 20060101ALI20190207BHJP
H01G 9/055 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
H01G9/028 G
H01G9/032
H01G9/052 500
H01G9/052 503
H01G9/055 103
【請求項の数】34
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-558216(P2015-558216)
(86)(22)【出願日】2014年2月19日
(65)【公表番号】特表2016-507166(P2016-507166A)
(43)【公表日】2016年3月7日
(86)【国際出願番号】US2014017027
(87)【国際公開番号】WO2014130500
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2015年10月19日
【審判番号】不服2017-4492(P2017-4492/J1)
【審判請求日】2017年3月30日
(31)【優先権主張番号】61/766,454
(32)【優先日】2013年2月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511231986
【氏名又は名称】ケメット エレクトロニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーン ランドルフ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ポルトラック ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】サミー ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】チャッコ アントニー ピー.
(72)【発明者】
【氏名】キナード ジョン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】レッスナー フィリップ エム.
【合議体】
【審判長】
國分 直樹
【審判官】
田中 慎太郎
【審判官】
井上 信一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−505405(JP,A)
【文献】
特開平11−121280(JP,A)
【文献】
特開2000−188239(JP,A)
【文献】
特開2000−353641(JP,A)
【文献】
特開2004−303813(JP,A)
【文献】
特開平5−21279(JP,A)
【文献】
特開2006−121000(JP,A)
【文献】
特開2011−91413(JP,A)
【文献】
米国特許第7154742(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G9/028
H01G9/032
H01G9/04
H01G9/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサーを形成する方法であって、
陽極を陽極酸化して該陽極の上に誘電体を形成することであって、該陽極は溝と、該陽極から延在する陽極ワイヤとを備えることと、
前記陽極ワイヤ上に導電性ノードを形成することと、
前記誘電体の上に第1の導電性層を形成することであって、該第1の導電性層及び前記導電性ノードは前記陽極ワイヤと電気的に接触することと、
前記陽極ワイヤに電圧を印加することと、
前記第1の導電性層の上に導電性ポリマーを電気化学的に堆積させてコンフォーマルな陰極を形成することと、
前記コンフォーマルな陰極と電気的に接触するめっき金属層を形成することと、
を含み、
前記めっき金属層を形成することは、前記導電性ノードを通過する電流によって前記めっき金属層を電気めっきすることを含むコンデンサーを形成する方法。
【請求項2】
前記コンフォーマルな陰極は40ミクロン以下の平均の厚さを有する、請求項1に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項3】
前記コンフォーマルな陰極は20ミクロン以下の平均の厚さを有する、請求項2に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項4】
前記コンフォーマルな陰極は10ミクロン以下の平均の厚さを有する、請求項3に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項5】
前記コンフォーマルな陰極は平均の厚さの50%以下の厚さのばらつきを有する、請求項1に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項6】
前記コンフォーマルな陰極は平均の厚さの40%以下の厚さのばらつきを有する、請求項5に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項7】
前記コンフォーマルな陰極は平均の厚さの30%以下の厚さのばらつきを有する、請求項6に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項8】
前記コンフォーマルな陰極は平均の厚さの20%以下の厚さのばらつきを有する、請求項7に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項9】
前記コンフォーマルな陰極は平均の厚さの10%以下の厚さのばらつきを有する、請求項8に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項10】
前記めっき金属層は銅、銀、ニッケル及び金からなる群から選択される金属を含む、請求項1に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項11】
前記めっき金属層は銅を含む、請求項10に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項12】
前記第1の導電性層を前記形成することは化学的重合を含む、請求項1に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項13】
前記第1の導電性層はMnO2及び導電性ポリマーから選択される導電性層を含む、請求項1に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項14】
前記導電性ポリマーはポリアニリン、ポリピロール及びポリチオフェンからなる群から選択される、請求項13に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項15】
前記導電性ポリマーはポリジオキシチオフェンを含む、請求項14に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項16】
前記陽極は弁作用金属又は弁作用金属の導電性の酸化物を含む、請求項1に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項17】
前記弁作用金属又は弁作用金属の導電性の酸化物はAl、W、Ta、Nb、NbO、Ti、Zr及びHfからなる群から選択される材料を含む、請求項16に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項18】
前記弁作用金属又は弁作用金属の導電性の酸化物はタンタル及びニオブから選択される、請求項17に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項19】
前記溝は0.022インチ以下の幅を有する、請求項1に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項20】
前記溝は0.019インチ以下の幅を有する、請求項19に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項21】
前記溝は0.016インチ以下の幅を有する、請求項20に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項22】
前記溝は少なくとも0.004インチより広い幅を有する、請求項21に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項23】
前記溝は少なくとも0.60:1の深さの幅に対する比を有する、請求項1に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項24】
前記コンフォーマルな陰極の上に炭素含有層を形成することを更に含む、請求項1に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項25】
前記炭素含有層は少なくとも1ミクロン〜20ミクロン以下の厚さを有する、請求項24に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項26】
前記炭素含有層の上に前記めっき金属層を形成することを更に含む、請求項24に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項27】
前記めっき金属層は少なくとも2ミクロンの厚さを有する、請求項26に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項28】
前記第1の導電性層を前記形成することは化学的重合を含む、請求項1に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項29】
前記化学的重合はポリチオフェンの重合を含む、請求項28に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項30】
前記コンフォーマルな陰極はポリチオフェンを含む、請求項1に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項31】
前記ポリチオフェンはジオキシチオフェンを含む、請求項30に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項32】
陰極層界面における外部陽極表面に対する隣接する陰極層界面における前記めっき金属層の前記溝における表面の面積の比は75%より大きい、請求項26に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項33】
陰極層界面における外部陽極表面に対する隣接する陰極層界面における前記めっき金属層の前記溝における表面の面積の比は85%より大きい、請求項32に記載のコンデンサーを形成する方法。
【請求項34】
陰極層界面における外部陽極表面に対する隣接する陰極層界面における前記めっき金属層の前記溝における表面の面積の比は95%より大きい、請求項33に記載のコンデンサーを形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本発明は、2013年2月19日に出願された係属中の米国仮特許出願第61/766,454号に対する優先権を主張し、それは引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明は固体電解コンデンサーを準備するための改良された方法に関する。より詳細には、本発明は固体電解コンデンサーを形成する改良された方法、及びそれによって形成される改良されたコンデンサーに関する。更により詳細には、本発明は改良された重合法によって形成される改良されたコンフォーマルな陰極、及び特に溝付き陽極のための改良された金属めっき方法に関する。
【背景技術】
【0003】
固体電解コンデンサーの構造及び製造は詳細に文書化されている。固体電解コンデンサーの構造において、弁作用金属が陽極として働くことが好ましい。陽極本体は高純度の粉体を押圧し焼結することによって形成される多孔質ペレットか、又はエッチングされて陽極の表面積を増加させた箔のいずれかとすることが可能である。弁作用金属の酸化物は電気分解によって形成されて陽極の表面全体を覆うとともにコンデンサーの誘電体として働く。通常、固体陰極電解質は非常に限られた材料の種別から選択されて、それらの材料は二酸化マンガン、又は7,7,8,8テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯塩等の導電性の有機材料、又はポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン及びそれらの誘導体等の真性導電性ポリマーを含む。固体陰極電解質は、固体陰極電解質が誘電体表面全体を覆い、誘電体と直接密接に接触するように適用される。固体電解質に加えて、固体電解コンデンサーの陰極層は、通常、陽極本体の外側にあるいくつかの層から構成される。面実装構造体の場合、通常、これらの層は炭素層と、ポリマーマトリックス又は樹脂マトリックスに包まれた通常は銀である高導電性金属を含む層とすることができる陰極導電性層と、銀粒子を充填した接着剤等の導電性接着剤層とを含む。固体陰極電解質、導電性接着剤を含む層及びそれらの間の層は、本明細書において集合的に陰極層と呼ばれ、これらの層は、通常、一方の面を誘電体に、他方の面を陰極リードに接着させることを可能にするように設計された複数の中間層を含む。多くの場合、高導電性金属リードフレームが負極端子のための陰極リードとして用いられる。様々な層が固体電解質を外側の回路に接続し、誘電体を後続の処理中、ボード実装中又は顧客の使用中に発生する可能性がある熱機械的損傷から保護する働きもする。
【0004】
携帯型電子デバイスのための最先端の設計において、体積効率、高信頼性、低コスト、低減化された発火傾向及び低等化直列抵抗(ESR)をもたらすコンデンサーが必要とされている。導電性ポリマー陰極を使用するタンタルコンデンサーは、唯一これらの重大な特性の全てを提供することが可能である。タンタルコンデンサーはこの上ない体積効率及び信頼性に対する長年にわたる実績がある。導電性ポリマー陰極を導入したことによって、MnO
2に比べてESRの劇的な低減を可能にし、発火に対する耐性を大いに増大してきた。導電性ポリマー構造における、ESRがより小さいことと高周波における改善された容量値の維持(cap retention)とは、回路設計者が設計解に到達するのに必要となるコンデンサーの数を低減してコストを低減することを可能にする。
【0005】
米国特許第7,154,742号は非常に狭い溝を用いて容量リカバリー(capacitance recovery)を改良した容量素子の使用を記載しており、この特許は参照することにより本明細書の一部をなす。‘742号の特許の
図5〜
図8に示されているように、溝を使用することは、当該技術分野において、限定的な範囲の溝サイズに関して適していると考えられている。米国特許第7,342,775号及び同7,116,548号は、溝サイズは依然として幾分制限され溝によって期待される潜在能力のすべてが実現されているわけではないが、複数のリード線と導電性ポリマー陰極系とを組み込むことにより溝付きコンデンサーを改良しており、これらの特許は引用することにより本明細書の一部をなす。いずれかの理論に限定されるわけではないが、溝サイズが制限されることは陰極層が溝の寸法に対してコンフォーマルにすることができないことの結果であることが認識されている。米国特許第7,342,775号の
図2に示されているように、陰極層は溝内にてよどむ(pool)傾向があり、したがって陰極の厚さが均一ではなく、それにより溝によって提供される利点が制限されている。陰極層を形成するのに利用可能な方法がコンフォーマルなコーティングの役に立たず、溝付き陽極を用いて利用可能なすべての利点が達成されたと考えられていたので、ここで認識されたこの問題は避けられないと考えられていた。
【0006】
本発明は改良されたコンデンサーを提供し、溝付き陽極から達成できると考えられてきた利点を超える更なる利点を達成することが可能である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、改良された固体電解コンデンサーを提供することである。
【0008】
本発明の目的は、固体電解コンデンサー陰極を準備する改良された方法、及びそれによって形成される改良された固体電解コンデンサーを提供することである。
【0009】
特定の利点は改良されたESRを有するコンデンサーである。
【0010】
理解されるように、これらの利点及び他の利点は改良されたコンデンサーにおいて提供される。コンデンサーは溝付き陽極と、その溝付き陽極から延在する陽極ワイヤとを有する。誘電体は溝付き陽極の上にある。コンフォーマルな陰極はその誘電体の上にあり、めっき金属層は炭素層の上にある。
【0011】
更に別の実施形態が改良されたコンデンサーにおいて提供される。コンデンサーは陽極と、その陽極から延在する陽極ワイヤとを有する。誘電体は陽極の上にある。コンフォーマルな陰極はその誘電体の上にあり、めっき金属層は炭素層の上にある。
【0012】
更に別の実施形態がコンデンサーを形成する方法において提供される。本方法は、陽極を陽極酸化して該陽極の上に誘電体を形成することであって、該陽極は溝と、該陽極から延在する陽極ワイヤとを備えることと、前記陽極ワイヤ上に導電性ノードを形成することと、前記誘電体の上に第1の導電性層を形成することであって、該第1の導電性層及び前記導電性ノードは前記陽極ワイヤと電気的に接触することと、前記陽極ワイヤに電圧を印加することと、前記第1の導電性層の上に導電性ポリマーを電気化学的に堆積させてコンフォーマルな陰極を形成することと、前記コンフォーマルな陰極と電気的に接触する金属層を形成することと、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は固体電解コンデンサーを作製する方法、及びその方法によって作製される改良された固体電解コンデンサーに関する。より詳細には、本発明はコンフォーマルな陰極とともに溝付き陽極を備えるコンデンサーに関する。コンフォーマルな陰極は誘電体を通じて印加される電圧をバイパスする優先的な導電性パスを提供する導電性ノードを利用した電気化学的重合法によって提供される。
【0015】
本発明は、本開示の統合された非限定的なコンポーネントを形成する様々な図面を参照して説明される。本開示を通して、同様の要素はそれに応じて参照符号が付されている。
【0016】
本発明の実施形態が
図1において概略側面斜視図にて、及び
図2において概略断面図にて示されている。
図1及び
図2において、全体として10で表されるコンデンサーが陽極12を備え、この陽極12はそこから延在するか、又はそこに付着されている陽極リード線14を有している。誘電体16は陽極上に形成され、好ましくは、その誘電体は陽極の少なくとも一部分、好ましくはそれらの全体、及び陽極リードの一部分を包む。コンフォーマルな陰極18は誘電体上にあり、陽極及び陰極が直接電気的な接触をしないように誘電体の一部分を包む。本明細書において、コンフォーマルな陰極は陽極の形状にコンフォーマルな導電性層として定義され、好ましくは導電性ポリマーを含み、好ましくは溝付き陽極にコンフォーマルであり、このコンフォーマルな陰極は少なくとも1ミクロンの平均の厚さを有し、より好ましくは少なくとも2ミクロン〜40ミクロン以下の平均の厚さを有し、好ましくは20ミクロン以下の平均の厚さを有し、より好ましくは10ミクロン以下の平均の厚さを有し、厚さのばらつきが平均の厚さの50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、更により好ましくは20%以下、更により好ましくは10%以下である。
【0017】
当該技術分野において、リードをポリマー層に接着することは難しく、したがって、より容易に金属リードフレームに付着する少なくとも1つの接着層をコンフォーマルな陰極上に形成することが好ましいことが知られている。炭素含有層及び金属層は当該技術分野において既知である。特に好ましい実施形態において、接着層はめっき金属層20を有する炭素を含む層19をその上に含み、本明細書において以下でより詳細に説明するように、そのめっき金属層は電着によって形成されることが好ましい。つぎに、
図1及び
図2のコンデンサーは陽極端子及び陰極端子、並びにオプションで当該技術分野において既知の容器を含むパッケージに組み込まれる。
【0018】
本発明の実施形態が
図3において概略部分断面図で示されている。
図3において、陽極12及び陽極リード14は
図2に示し、
図2に関連して説明されるようなものである。導電性ノード28は陽極リード14と電気的に接続され、本明細書においてより詳細に説明されるように、陽極本体から隔離されていることが好ましい。導電性ノードは、その抵抗が誘電体16を通る電流パスの抵抗より小さいことに起因して、好ましい導電性パスを提供する。第1の導電性層24は誘電体の表面に適用され、導電性ノードと接触する。第1の導電性層は好ましくは酸化マンガン層、又は更に説明するように、好ましくは或る導電性ポリマー層、特に好ましくは続いて形成されたポリマー層として同一の導電性ポリマー組成物を有する導電性ポリマー層である。
【0019】
好ましい実施形態において、第1の導電性層は陽極を最初にトルエンスルホン酸鉄(III)等の酸化剤に浸漬し、その後モノマー又はエチレンジオキシチオフェン等のモノマー溶液に短時間浸すことによって形成された導電性ポリマーである。第1の導電性層は、陰極として機能するには不十分であるが、導電性ノードと電気的に接触するには十分な非常に薄い層であることが意図される。第1の導電性層が形成された後、陰極はモノマーからのポリマーを電気化学的堆積させることによって厚さが増築される。電圧が陽極リード14に印加され、電流が第1の導電性層24と電気的に接触する導電性ノード28を通過して、それによりポリマーの成長を容易にして導電性ポリマー層26を形成する。第1の導電性層及び導電性ポリマー層は合わせてコンフォーマルな陰極18を形成し、コンフォーマルな陰極18は誘電体の全体にわたって均一の厚さを有する。
【0020】
第1の導電性層及び導電性ポリマー層はそれぞれ単一工程又は複数の工程において塗布することができる。例えば、第1の導電性層は酸化剤に一度浸し、その後モノマーへ一度浸すか又は酸化剤とモノマーとに交互に複数回浸すことによって形成することができる。電気化学的堆積によって形成された電気化学層は単一工程において形成されることが好ましい。
【0021】
図3を更に参照すると、コンフォーマルな陰極18を形成した後、接着層がコンフォーマルな陰極の表面上に形成されて、陰極リードフレームへの接着を容易にする。炭素層19は導電性炭素及び導電性結着剤を含む溶液中へ浸すことによって形成されることが好ましい。炭素含有溶液としては、当該技術分野において既知の、コンフォーマルな陰極にとって十分コンフォーマルなコーティングを形成するのに適した粘度指数を有するものを準備することができる。炭素コーティングは当該技術分野においてよく知られており、本明細書においては特に限定されない。めっき金属層20は炭素層上に形成される。特に好ましい実施形態において、めっき金属層は、陽極ワイヤへ供給されノードと、コンフォーマルな陰極と、炭素層とを通過する電流を用いて金属を電着することによって形成され、それによってその炭素上にめっき金属層を形成する。この金属は銅、ニッケル、銀及び金から選択されることが好ましく、銅が特に好ましい。
【0022】
金属めっきを形成した後、陽極ワイヤ及び誘電体にわたって塗布される層によって表される陰極層の導電性は線29等においてレーザーアブレーションによって途絶されて、それにより陽極素子、すなわち陽極及び陽極ワイヤを陰極層から絶縁して、その結果として、
図4にその概略断面図を記載するコンデンサーとなる。次に、コンデンサーは当該技術分野において既知のように端子が付加され、オプションで当該技術分野において既知のようにカプセル封入される。
【0023】
コンデンサーの基本コンポーネントは陽極、陰極、及びこれら2つの電極間の誘電体である。通常の固体電解コンデンサーにおいて、陽極は多孔質の弁作用金属ペレット又は、好ましくはタンタル、アルミニウム、ニオブ若しくは酸化ニオブから選択される弁作用金属を用いた箔である。誘電体は好ましくは弁作用金属の高絶縁性の酸化物であり、この高絶縁性の酸化物は多孔質の陽極の内部表面及び外部表面を覆う。通常、陽極リード線は陽極内に埋め込まれるか陽極に取り付けられて、陽極端子への電気的な接続として働く。通常、陰極は複数の層を含む。通常、陰極は誘電体の内部表面及び外部表面を覆う。信頼性の高い固体電解コンデンサーを生産するために、陰極層は誘電体内の欠損箇所が治癒することを可能にする治癒性を示すことが好ましい。通常、治癒の原因となるメカニズムは、欠陥箇所を電流が流れるときのジュール熱の結果として発生する、誘電体の欠陥箇所の領域内の陰極の導電性の低下に起因すると思慮される。このことが主陰極層として利用する材料の選択を大いに制限する。MnO
2及び真性導電性ポリマー(ICP)が最も頻繁に用いられる。ICPはMnO
2に比べて非常に高い導電性と害のない欠陥率とを示す。一方、MnO
2を用いて製造されたコンデンサーはより低い製造コスト、低リーク及び過酷な環境における改良された信頼性を有する傾向がある。デバイスのESRを低減するために、外部メタライズ層が使用される。概して、メタライズ層は主陰極層とは不適合であり、したがって、化学的な分離層が主陰極層とメタライズ層との間に塗布される。炭素充填層が分離層として最も一般的に用いられる。追加の分離層を使用して耐湿性を改良することもできるし、治癒性を示さない材料が誘電体と接触するのを防止する更なる保護を提供することもできる。
【0024】
コンデンサー産業における重要なトレンドは更に小さいESR値を有し、さらに高い周波数にて機能する製品を製造する必要性である。今日の回路において要求される低ESRレベルを達成するために、固体電解コンデンサー製造業者は、通常、主陰極層としてICPを使用する。ESRを更に低減するために、コンデンサー製造業者は多重陽極タンタルコンデンサー、積層アルミニウムコンデンサー及び溝付き陽極等の設計を開発してきた。
【0025】
溝の数及び溝の深さは最小のESRを達成するように最大化されることが好ましい。溝の数を最大化するためには溝の幅を低減することが必要である。したがって、最小のESRは溝の深さが溝の幅を超える溝によって得られる。
【0026】
多重のリード線を組み込むことができるが、それらを陽極端子に付着させることはより困難であり、したがって、あまり望ましくない。本明細書において、ラウンドワイヤ、フラットワイヤ、又は平角線が本発明を説明するのに適しているがリード線の形状は特に限定されない。フラットワイヤの場合、フラットワイヤが少なくとも外側の溝の中間点まで延在していることが好ましく、そうでない場合、ESRに悪影響が及ぼされ得る。
【0027】
溝は最も広い点で0.022インチ(0.55mm)以下であることが好ましい。コンフォーマルな陰極の場合、0.004インチ(0.10mm)等の非常に狭い溝を用いることが可能である。更により好ましくは、溝は0.019インチ(0.48mm)以下の幅を有し、より好ましくは、幅が最も広い点において0.016インチ(0.41mm)以下の幅を有する。好ましくは、溝の深さは溝の幅を超え、深さの幅に対する比は少なくとも0.6〜1であることが好ましい。陽極は少なくとも2つの溝、好ましくは少なくとも4つの溝、最も好ましくは少なくとも6つの溝を有することが好ましい。コンデンサーはフラットワイヤ又は多重のリード線を用いる。
【0028】
ESRを最小化するために、外部陽極表面−主陰極層間界面に対するメタライズ層−隣接する陰極層間界面の溝又はくぼみの表面積の比が75%より大きく、より好ましくは85%より大きく、最も好ましくは95%より大きいことが好ましい。
【0029】
一般に多重のコンデンサーを用いることはデバイスのESRを効果的に低減するが、多重の容量素子を単一のパッケージ内に組み立てるコストはデバイスのコストとともに、コンデンサーを製造するのに必要な機器のコストも増加させる。
【0030】
陰極層は、好ましくは、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール又はそれらの誘導体等の導電性ポリマー、二酸化マンガン、酸化鉛又はそれらの組合せを含む導電層である。真性導電性ポリマーが最も好ましい。
【0031】
特に好ましい導電性ポリマーを、式1に示す。
【化1】
ここで、R
1及びR
2は、環のβ位において重合を抑制するように選択される。α位の重合のみが進行可能であることが最も好ましい。したがって、R
1及びR
2は水素ではないことが好ましい。より好ましくは、R
1及びR
2はα−ディレクター(director)である。したがって、エーテル結合はアルキル結合より好ましい。立体的干渉を回避するように基が小さいことが最も好ましい。これらの理由で、−O−(CH
2)
2−O−としてまとめられるR
1及びR
2が最も好ましい。式1において、XはS又はNであり、最も好ましくはSである。
【0032】
R
1及びR
2は、独立して、直鎖若しくは分岐C1〜C16アルキル若しくはC2〜C18アルコキシアルキルを表すか、又は非置換若しくはC1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、ハロゲン若しくはOR3によって置換されたC3〜C8シクロアルキル、フェニル若しくはベンジルであるか、又はR1及びR2は、まとめて、非置換若しくはC1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、ハロゲン、C3〜C8シクロアルキル、フェニル、ベンジル、C1〜C4アルキルフェニル、C1〜C4アルコキシフェニル、ハロフェニル、C1〜C4アルキルベンジル、C1〜C4アルコキシベンジル若しくはハロベンジル、2つの酸素元素を含む5員、6員若しくは7員複素環構造によって置換された直鎖C1〜C6アルキレンである。R3は、好ましくは、水素、直鎖若しくは分岐C1〜C16アルキル若しくはC2〜C18アルコキシアルキルを表すか、又は非置換若しくはC1〜C6アルキルによって置換されたC3〜C8シクロアルキル、フェニル若しくはベンジルである。
【0033】
導電性ポリマーは、好ましくは、特に有機スルホン酸と組み合わされた、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及び式1の繰返し単位を有するポリマーから選択される。特に好ましいポリマーは、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)である。
【0034】
本技術分野において通常採用されるように、重合プロセス中にさまざまなドーパントをポリマーに組み込むことができる。ドーパントを、芳香族スルホン酸、芳香族ポリスルホン酸、ヒドロキシ基を含む有機スルホン酸、カルボキシヒドロキシル基を含む有機スルホン酸、脂環式スルホン酸及びベンゾキノンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、スルホサリチル酸、スルホイソフタル酸、カンファースルホン酸、ベンゾキノンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸を含む、さまざまな酸又は塩から誘導することができる。他の適切なドーパントとしては、引用することにより本明細書の一部をなす米国特許第6,381,121号に例示されているような、スルホキノン、アントラセンモノスルホン酸、置換ナフタレンモノスルホン酸、置換ベンゼンスルホン酸又は複素環式スルホン酸が挙げられる。
【0035】
コンフォーマルな陰極と溝内のめっき金属層との間の分離層(複数の場合もある)は、通常、炭素含有層であり、好ましくは少なくとも1ミクロン〜20ミクロン以下、より好ましくは10ミクロン以下、最も好ましくは5ミクロン以下の平均の厚さを有する。絶縁層の平均の厚さは好ましくは1ミクロン〜10ミクロン、より好ましくは1ミクロン〜5ミクロン、最も好ましくは1ミクロン〜3ミクロンである。
【0036】
主陰極層の外部コーティングは好ましくは電気化学的重合法によって、最も好ましくは外部の電気的接続と容量素子の誘電体上のアクティブ陰極領域との間の導電性ノードを利用した電気化学的重合法によって堆積させる。外部MnO
2コーティングは、窒化マンガン内に混濁されたMnO
2粒子のスラリーを利用して堆積させることが好ましく、好ましいMnO
2の平均粒子サイズは15ミクロン未満、より好ましくは10ミクロン未満、最も好ましくは5ミクロン未満である。
【0037】
メタライズ層は電気めっき又は無電解めっきによって堆積されためっき金属層であることが好ましい。めっき金属層は以前に塗布された金属充填層に塗布することができる。めっきは様々な金属系を用いて行うことが可能である。銅は好ましい金属系である。めっきは電気めっき又は無電解めっきによって行うことが可能である。電気めっきは、生産サイクル時間が短いことに起因して好ましい。金属層を、陰極リードとして働くリードフレーム又は回路トレースに接着によって取り付けるのに、通常、導電性接着剤が用いられる。めっき金属層の厚さは少なくとも2ミクロンであることが好ましい。約2ミクロン未満であると、基礎をなす陰極の表面の粗さに起因して、コンデンサーを完全には覆うことができない可能性がある。一旦完全な被覆が達成されると、追加のめっきをしても追加の利点は提供されない。めっき金属層は外部の電気的な接続と容量素子の誘電体上のアクティブ陰極領域との間の導電性ノードを通じた電気めっきによって堆積されることが好ましい。
【0038】
陽極は、好ましくは弁作用金属又は導電性金属酸化物から選択される導体である。より好ましくは、陽極はAl、W、Ta、Nb、Ti、Zr及びHfから選択されることが好ましい、弁作用金属、混合物、合金、又は弁作用金属の導電性の酸化物を含む。最も好ましくは、陽極はAl、Ta、Nb及びNbOからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。通常、アルミニウムが箔として使用される一方、通常、タンタルの粉体を押圧し焼結して成形体を形成することによってタンタルが用意される。取り扱い上の便宜のために、通常、弁作用金属は担体に付着されて、それにより多数の要素が同時に処理されることを可能にする。
【0039】
陽極は、特に陽極がアルミ箔等の弁作用金属箔である場合、エッチングされて表面積を増加させることが好ましい。エッチングは陽極を少なくとも1つのエッチング槽に浸漬することによって行われることが好ましい。様々なエッチング槽が当該技術分野において教示されており、本明細書において陽極をエッチングするのに用いる方法は限定されない。陽極ワイヤは、特に成形体が使用される場合は、陽極に取り付けることが好ましい。陽極ワイヤは、溶接、又は押圧の前に粉体内に埋め込むことによって取り付けることが可能である。弁作用金属は特に適切な陽極ワイヤであり、好ましい実施形態において陽極及び陽極ワイヤは同じ材料である。誘電体は陽極の表面上に形成される。誘電体は非導電性層であり、本明細書において特に限定しない。誘電体は金属酸化物又はセラミック材料とすることができる。特に好ましい誘電体は、形成の容易性及び使用の簡潔性に起因して、金属陽極の酸化物である。本明細書において更に説明するように、誘電体層は弁作用金属の酸化物であることが好ましい。誘電体層は陽極の酸化物であることが最も望ましい。誘電体は陽極を電解質溶液に浸漬し、陽極に正の電圧を印加することによって形成することが好ましい。本明細書において酸化物の形成のための電解質は特に限定しないが、例示の材料はエチレングリコールと、米国特許第5,716,511号に記載されているポリエチレングリコールジメチルエーテルと、米国特許第6,480,371号に記載されているアルカノールアミン及びリン酸と、英国特許第2,168,383号及び米国特許第5,185,075号に記載されている非プロトン性極性溶媒のリン酸溶液と、米国特許第4,812,951号に記載されている非プロトン性極性溶媒のプロトン化されたアミンとの錯体等を含めることが可能である。アンモニウムアジペート等のジカルボン酸の水溶液を含む、陽極上に誘電体を形成するための電解質も既知である。ホスフェート、クエン酸等の他の材料を誘電体の中へ組み込んで、熱的安定性、又は化学的耐性若しくは耐水和性を誘電体層に与えることができる。
【実施例】
【0040】
比較例1:深さ0.020インチ(0.51mm)、幅0.015インチ(0.38mm)の溝を各辺に4つ有する、寸法(幅×長さ×高さ)が0.140インチ(3.56mm)×0.190インチ(4.838mm)×0.070インチ(1.78mm)の一連の1000マイクロファラッド、2.5V、タンタル陽極が準備された。タンタルが陽極酸化されてタンタル陽極上に誘電体を形成した。こうして形成された陽極をトルエンスルホン酸鉄(III)酸化剤に1分間浸漬し、続けてエチルジオキシチオフェンモノマーに1分間浸漬した。60分間の重合化の完了後、陽極は洗浄されて過剰のモノマー及び反応の副産物が除去され、これにより陽極の誘電体上に導電性のポリエチレンジオキシチオフェン(正:dioxythiophene)ポリマー(PEDOT)の薄い中間層を形成した。このプロセスは6回繰り返された。導電性ノードはワイヤ上に形成された。電気化学的な重合工程が適用され、これによりPEDOT上に導電性ポリマー(ポリピロール)の中間層を形成した。電気化学的な重合の完了後、陽極は洗浄されて過剰のモノマー及び反応の副産物が除去された。従来のグラファイトコーティングが適用され、その後銀コーティングが適用された。導電性のブリッジがレーザーアブレーションによって粉砕された。パーツは組み立てられてESRが測定された。その測定結果は表1に表されている。
【0041】
比較例2:パーツは、ポリマーが従来の化学的な重合によって形成されたことを除いて、比較例1と同様の方法で準備された。従来のグラファイトコーティングが適用され、その後銀コーティングが適用された。パーツは組み立てられてESRが測定された。その測定結果は表1に表されている。
【0042】
比較例3:パーツは、炭素コーティングを除いて、比較例2と同様の方法で準備された。電気めっきを用いて銅層が堆積された。パーツは組み立てられてESRが測定された。その測定結果は表1に表されている。
【0043】
本発明の実施例:比較例1のように一連のタンタル陽極が準備された。タンタルが陽極酸化されてタンタル陽極上に誘電体を形成した。こうして形成された陽極をトルエンスルホン酸鉄(III)酸化剤に1分間浸漬し、続けてエチルジオキシチオフェンモノマーに1分間浸漬した。60分間の重合化の完了後、陽極は洗浄されて過剰のモノマー及び反応の副産物が除去され、これにより陽極の誘電体上にPEDOTの薄い中間層を形成した。このプロセスは6回繰り返された。導電性ノードはPEDOTと電気的に接触している陽極ワイヤ上に形成された。電気化学的な重合が適用されてコンフォーマルな陰極を形成した。従来のグラファイトがコンフォーマルな陰極に適用された。導電性ノードを通じた電気めっきによって銅層が炭素層上に堆積された。導電性のブリッジがレーザーアブレーションによって粉砕された。パーツは組み立てられてESRが測定された。その測定結果は表1に表されている。
【0044】
【表1】
【0045】
結果は溝付き陽極上のコンフォーマルな陰極を含むパーツのESRの改良を示している。めっきされた銅を用いることにより、更に一層の改良が実現されている。
【0046】
本発明を、好ましい実施形態を参照してそれに限定することなく説明した。当業者であれば、特に示されていないが、添付の特許請求の範囲においてより具体的に示されている本発明の範囲内にある追加の実施形態及び改良形態を認識するであろう。