特許第6472393号(P6472393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6472393エレベーターの負荷検出調整装置及びエレベーター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472393
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】エレベーターの負荷検出調整装置及びエレベーター
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20190207BHJP
   B66B 5/14 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   B66B3/00 L
   B66B5/14 A
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-3388(P2016-3388)
(22)【出願日】2016年1月12日
(65)【公開番号】特開2017-124878(P2017-124878A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 卓馬
(72)【発明者】
【氏名】金 政和
(72)【発明者】
【氏名】魚谷 翔吾
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−330245(JP,A)
【文献】 特開平03−249083(JP,A)
【文献】 特開2007−223733(JP,A)
【文献】 特開2015−020854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00− 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降する乗りかごの乗客が携帯する情報カードに記録された情報を取得するカード情報取得部と、
前記カード情報取得部が取得した前記情報カードに記録された情報を元に得られた前記乗客の体重情報と、前記乗りかご内の負荷に応じた負荷検出値を出力するかご内負荷検出部が検出した現在の前記乗りかごの負荷検出値とから、最大積載時の前記乗りかごの負荷検出値に相当する最大積載時負荷検出値を算出する演算部と、
大積載時負荷検出値を記録する記録部と、
前記演算部が算出した前記最大積載時負荷検出値と、前記記録部に登録された前記最大積載時負荷検出値とを比較し、比較した2つの前記最大積載時負荷検出値の差が規定値を超えたか否かを判定する判定部と、
前記判定部においてその差が規定値を超えたと判定された場合に、前記演算部が算出した前記最大積載時負荷検出値を用いて前記記録部に登録された前記最大積載時負荷検出値を補正する補正部と、
を備えるエレベーターの負荷検出調整装置。
【請求項2】
前記カード情報に前記乗客の体重情報が含まれている場合、前記カード情報取得部は、前記カード情報に含まれる前記乗客の体重情報を前記演算部に出力する
請求項1に記載のエレベーターの負荷検出調整装置。
【請求項3】
前記乗客の個人識別情報と前記乗客の体重情報とが対応づけられている体重情報データベース、を更に備え、
前記カード情報に前記乗客の個人識別情報が含まれている場合、前記カード情報取得部は、前記乗客の個人識別情報を元に前記体重情報データベースから当該乗客の体重情報を抽出して前記演算部へ出力する
請求項1に記載のエレベーターの負荷検出調整装置。
【請求項4】
前記乗りかご内を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置により撮影された撮影画像を解析する画像解析部と、を更に備え、
前記画像解析部は、前記撮影画像の解析結果を前記演算部に出力し、前記演算部は、前記撮影画像の解析結果を元に、前記乗客が前記乗りかごの床板の中央部に乗っているか否かを判断し、前記乗客が前記乗りかごの床板の中央部に乗っていない場合には、前記最大積載時負荷検出値を算出する処理を行わない
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエレベーターの負荷検出調整装置。
【請求項5】
昇降する乗りかごと、
前記乗りかごの乗客が携帯する情報カードに記録された情報を取得するカード情報取得部と、
前記乗りかご内の負荷に応じた負荷検出値を出力するかご内負荷検出部と、
前記カード情報取得部が取得した前記情報カードに記録された情報を元に得られた前記乗客の体重情報と、前記かご内負荷検出部が検出した現在の前記乗りかごの負荷検出値とから、最大積載時の前記乗りかごの負荷検出値に相当する最大積載時負荷検出値を算出する演算部と、
大積載時負荷検出値を記録する記録部と、
前記演算部が算出した前記最大積載時負荷検出値と、前記記録部に登録された前記最大積載時負荷検出値とを比較し、比較した2つの前記最大積載時負荷検出値の差が規定値を超えたか否かを判定する判定部と、
前記判定部においてその差が規定値を超えたと判定された場合に、前記演算部が算出した前記最大積載時負荷検出値を用いて前記記録部に登録された前記最大積載時負荷検出値を補正する補正部と、
を備えるエレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗りかごに設けられた負荷検出装置の負荷検出値を調整するエレベーターの負荷検出調整装置及びエレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターは、エレベーターを起動させて乗りかごを走行させる際に、この乗りかごや釣合い錘の質量によって乗りかごが急に動きだしたりせず、滑らかに走行するように制御している。この制御においては、走行時の乗りかご内の負荷の検出が必要であるため、乗りかごには、乗りかご内の負荷を検出するための負荷検出装置が取り付けられている。この負荷検出装置は、乗りかごの床下部に取り付けた防振ゴムのたわみ量等から、乗りかごに乗り込んだ利用者や物体等の質量に基づく乗りかご内の負荷を算出する構成となっている。この乗りかご内の負荷を算出するためには、無負荷時と最大積載時の負荷検出値を不揮発性メモリに記憶しておく必要がある。最大積載時とは、乗りかご内の積載量が乗りかごに許容された最大の積載量の100%(定格負荷の100%)であるときである。
【0003】
ところが、防振ゴムの経年劣化に伴い、防振ゴムが硬化することにより負荷検出装置の負荷検出値と実際の乗りかご内の負荷との間に誤差が生じる。また一般に、この種の負荷検出装置においては、周囲の温度や取り付け状態の変化によっては同じ負荷(質量)であっても負荷検出値に差異が発生するおそれがある。負荷検出値に差異が発生した場合、出発時に乗りかごが逆方向に移動したり、急に動き出すように移動したりし、乗り心地が悪化してしまう可能性がある。
【0004】
そこで、一定周期ごとに乗りかごに最大積載重量を準備し、実負荷試験にて負荷検出調整を行うことが行われている。あるいは、負荷検出値の差異により、飛び出しなどの乗り心地が悪い走行を検出した場合には、再度最大積載時の負荷検出値を記憶させて負荷検出調整をする。負荷検出調整の一例として、作業者の重量データと現在の乗りかごの負荷検出値から、最大積載時の負荷検出値を算出する手法が考案されている。
【0005】
例えば、特許文献1に、エレベーターのかご内に多重量のおもりを準備することなく、簡単な操作で負荷検出器の調整ができるエレベーターの負荷検出調整装置が開示されている。
【0006】
特許文献1に開示された技術では、かご内操作盤に設けられた切換スイッチにより、負荷検出調整モードに切り換えを行い、作業者がかご内を無負荷にして乗り場ボタンを操作すると、制御装置はこのときの負荷検出器の出力データをRAMに書き込む。次に、作業者はかごに乗り、かご内操作盤の操作ボタンを操作して作業者の重量データを入力し、制御装置はこのときの負荷検出器の出力データをRAMに書き込む。そして、これらのデータからゲイン係数及び過負荷の負荷データを算出し、無負荷の負荷データとともにEEPROMに書き込む。そして、定期点検時に、作業者は操作ボタンを操作して作業者の重量データを入力し、制御装置はこのときの負荷検出器の出力データをRAMに書き込む。また、作業者の重量データが入力されたとき、制御装置はEEPROMに書き込まれた各データを用いて負荷検出値を算出する。制御装置は、負荷検出値と実際の負荷検出器の出力データを比較し、誤差が誤差レベルを超えているか判断を行い、判断結果を基に表示器に調整の要否を報知する。制御装置は、必要に応じて再調整によってEEPROMのデータを書き換えて、負荷量を正確に検出できるよう調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−330245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の技術を利用した場合には、最大積載時の負荷検出値の算出を、専門技術者が対象のエレベーターまで直接出向いて行う必要がある。
【0009】
しかしながら、負荷検出値の差異は周囲の温度の変化等によって発生するため、一度最大積載時の負荷検出値を調整しても一定期間が過ぎれば差異が発生する可能性がある。そのため、負荷検出値の定期的な調整が必要となり、専門技術者の作業量の増加へと繋がる。
【0010】
本発明は、上記の状況を考慮してなされたものであり、専門技術者による特別な操作を行うことなく、最大積載時の負荷検出値の調整を行うことが可能なエレベーターの負荷検出調整装置及びエレベーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、乗客が携帯する情報カードに記録された情報を元に得られた該乗客の体重情報と、乗りかご内の負荷に応じた負荷検出値を出力するかご内負荷検出部が検出した現在の乗りかごの負荷検出値とから、最大積載時の乗りかごの負荷検出値に相当する最大積載時負荷検出値を算出する。そして、算出された最大積載時負荷検出値と、記録部に最後に記録された最大積載時負荷検出値とを比較し、記録部に記録された最大積載時負荷検出値の良否を判定し、判定結果を元に、記録部に記録された最大積載時負荷検出値を補正する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、専門技術者による特別な操作を行うことなく、最大積載時の負荷検出値の算出が可能となり、専門技術者の作業量を低減させることができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係るエレベーターの概要を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るエレベーターの制御系を示すブロック図である。
図3】負荷検出値と負荷量との関係例を示すグラフである。
図4】エレベーター制御装置に用いられる計算機のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係るエレベーターの負荷検出調整装置の動作例を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2の実施形態に係るエレベーターの制御系を示すブロック図である。
図7】体重情報データベースの一例である。
図8】本発明の第3の実施形態に係るエレベーターの制御系を示すブロック図である。
図9】体重情報データベースの他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0015】
<1.第1の実施形態>
[エレベーターの概要]
図1は、第1の実施形態に係るエレベーターの概要を示す図である。
図1において、エレベーター100は、建物構造物内に形成された昇降路1、利用者が乗車する乗りかご6、巻上機8a、釣合い錘10、巻上機8a及び反らせ車8bに巻きかけられ、乗りかご6と釣合い錘10を懸架する主ロープ7、エレベーター制御装置2を備える。
【0016】
昇降路1は、建築構造物内に形成され、その頂部には機械室1Aが設けられている。巻上機8aは、機械室1Aに配置され、不図示のモーターにより正転又は逆転し、主ロープ7を巻き掛けることにより乗りかご6を昇降させる。また、巻上機8aの近傍には、主ロープ7が装架される反らせ車8bが設けられている。また、巻上機8aには、不図示のモーターに直結しモーターの速度に比例するパルスを発生するエンコーダー9が設けられている。
【0017】
昇降路1は、複数階床用であって各乗り場には乗り場ドア13が設置されている。乗りかご6は、行き先階に応じて各階の停止位置を示す着床レベル14(乗り場)で停止し、乗りかごドア11及び着床した階の乗り場ドア13が開く。アナウンス装置12は、音声等により行き先階への乗りかご6の到着や乗りかごドア11の開閉状態などの情報を利用者に伝える。
【0018】
乗りかご6の天井裏には、IDカード検出装置3が設置され、乗りかご6内に設置されたIDカード読取機16と接続されている。乗りかご6の床下部の中央には、この乗りかご6に掛かる荷重、すなわち乗りかご6内の負荷を検出するためのかご内負荷検出装置4が取り付けられている。そして、IDカード検出装置3とかご内負荷検出装置4は、テールコード5を介して、エレベーター100の運行を制御するエレベーター制御装置2に接続されている。
【0019】
エレベーター制御装置2は、電話回線等を介して、エレベーター100の状態を監視する不図示の監視センターに接続している。監視センターは、エレベーター100に異常があれば、エレベーター100を停止、又はエレベーター100を減速して運転するなどの制御を行う。
【0020】
[エレベーターの負荷検出調整装置の制御系]
図2は、第エレベーター100の制御系を示すブロック図である。
エレベーター100は、IDカード読取機16、IDカード検出装置3、かご内負荷検出装置4、エレベーター制御装置2、アナウンス装置12、かご内カメラ17を備える。エレベーター制御装置2、IDカード検出装置3、及びかご内負荷検出装置4は、エレベーターの負荷検出調整装置90の構成要素の一例である。かご内負荷検出装置4は、一般にエレベーターの乗りかごの床下に設定されているかご内負荷検出装置を利用することができる。
【0021】
かご内負荷検出装置4は、かご内負荷検出部41を備えている。かご内負荷検出部41は、乗りかご6の床下部に取り付けられている不図示の弾性装置(例えば防振ゴム)のたわみ量等から、乗りかご6に乗り込んだ利用者や物体等の質量に基づく乗りかご6内の負荷に応じた出力データ(負荷検出値)を出力する。また、かご内負荷検出部41は、現在の乗りかご6の負荷検出値を、エレベーター制御装置2内の最大積載時負荷検出値演算部21に送信する。
【0022】
IDカード検出装置3は、乗客Uが携帯するIDカード(情報カードの一例)Cの不図示のメモリに記録された情報を取得する。このIDカードCには、乗客UのID情報(個別識別情報の一例)と、乗客Uの体重情報が登録されている。また、IDカードCに登録する体重は、エレベーター100が設置された建物のオーナーや管理人、守衛、住居者など、頻繁にエレベーターを利用する人物のものが望ましい。
【0023】
IDカード検出装置3は、乗客Uが携帯するカードに記録された情報を取得するカード情報取得部の一例として、体重情報取得部31を備える。体重情報取得部31は、乗りかご6内に設置されたIDカード読取機16がIDカードCから読み取った情報に含まれる乗客Uの体重情報を取得する。そして、体重情報取得部31は、取得した体重情報を、最大積載時負荷検出値演算部21に送信する。
【0024】
IDカード読取機16は、非接触式又は接触式でIDカードCに記録されたデータを読み取る。IDカードは、例えばICカード又は磁気カードが用いられる。ICカードとして、携帯端末に格納されたICカード機能を用いることもできる。
【0025】
エレベーター制御装置2は、最大積載時負荷検出値演算部21と、最大積載時負荷検出値良否判定部22と、最大積載時負荷検出値補正部23と、最大積載時負荷検出値記録部24を備える。乗客Uが重い荷物を運搬していたり、同乗者が居たりする場合には、かご内負荷検出部41が出力する負荷検出値と、IDカードCに登録された体重情報との間に差異が発生する。このような場合に、エレベーター制御装置2の各部が協働して、その差異を補正する。
【0026】
最大積載時負荷検出値演算部21(演算部の一例)は、最大積載時の乗りかご6の負荷検出値に相当する最大積載時負荷検出値を算出する処理を行う。負荷検出調整が初調整である場合、最大積載時負荷検出値演算部21は、次の処理を実行する。初調整において、最大積載時負荷検出値演算部21は、かご内負荷検出部41から送信される現在の乗りかご6内の負荷検出値と、体重情報取得部31から送信される体重情報と、無負荷時にかご内負荷検出部41から送信される負荷検出値とから、最大積載時負荷検出値を演算する。そして、最大積載時負荷検出値演算部21は、最大積載時負荷検出値を求める際に用いた各データ(無負荷時の負荷検出値、現在の負荷検出値、体重情報)、及び最大積載時負荷検出値を、最大積載時負荷検出値記録部24に記録する。
【0027】
負荷検出調整が2回目以降の場合には、最大積載時負荷検出値演算部21は、かご内負荷検出部41から送信される現在の乗りかご6内の負荷検出値と、体重情報取得部31から送信される体重情報とから、最大積載時負荷検出値を演算する。そして、最大積載時負荷検出値演算部21は、この最大積載時負荷検出値を最大積載時負荷検出値良否判定部22に出力する。
【0028】
また、最大積載時負荷検出値演算部21は、体重情報を取得した場合に、アナウンス指令部25に対し、乗客Uが乗りかご6の中央部に乗ることを促すためのアナウンスを行うよう指示する。乗りかご6の床板の中央部とは、真に中央もしくは中央を含む所定領域である。かご内負荷検出装置4は、乗りかご6の床下部の中央に取り付けられる。そのため、アナウンスを行って乗客Uを乗りかご6内の床板の中央部に位置させることで、計測時の誤差を極力小さくし、最大積載時負荷検出値の調整精度を上げることができる。
【0029】
[負荷検出値と負荷量との関係例]
図3は、負荷検出値と負荷量との関係例を示すグラフである。この図3を参照して、最大積載時負荷検出値を算出する方法を説明する。
【0030】
例えば初調整においては、専門技術者が乗りかご6内の図示しない操作盤の切換スイッチを操作し、負荷検出調整モードを確立したとき、動作が開始される。操作盤とエレベーター制御装置2とは、テールコード5を介して接続されている。専門技術者は乗りかご6から乗り場に降りて、乗りかご6内を無負荷状態にし、例えば図示しない乗り場ボタンを押す。この操作により、無負荷時におけるかご内負荷検出部41の負荷検出値D0が最大積載時負荷検出値演算部21に送信される。
【0031】
次に、専門技術者は乗りかご6に乗り、携帯するIDカードCをIDカード読取機16の読取面にかざす。IDカードCには、専門技術者のID情報と体重情報が記録されている。IDカード読取機16はIDカードCの情報を読み取り、読み取った情報に含まれる専門技術者の体重情報を体重情報取得部31に送信する。体重情報取得部31は、IDカード読取機16から送信された負荷量W1の体重情報(図3参照)を、最大積載時負荷検出値演算部21に送信する。またこのとき、かご内負荷検出部41は、現在の乗りかご6内の負荷検出値D1(図3参照)を最大積載時負荷検出値演算部21に送信する。最大積載時負荷検出値演算部21は、無負荷時における負荷検出値D0、負荷量W1の体重情報、現在の乗りかご6内の負荷検出値D1をRAM53に記録する(図4参照)。
【0032】
そして、最大積載時負荷検出値演算部21は、RAM53に記録されている無負荷時における負荷検出値D0、負荷量W1の体重情報、現在の乗りかご6内の負荷検出値D1を用いて、1次関数L(図3参照)で表される最大積載時負荷検出値の計算式を算出する。負荷量を表す横軸をx、負荷検出値を表す縦軸をyとおくと、1次関数Lは次式(1)で表される。
【0033】
y={(D1−D0)/W1}x+D0 ・・・・(1)
【0034】
最大積載時負荷検出値演算部21は、1次関数Lを用いて、乗りかご6の最大積載量の100%である負荷量Wmaxのときにかご内負荷検出部41から送信されるべき最大積載時負荷検出値Dmax(図3参照)を算出し、RAM53に記録する。そして、最大積載時負荷検出値演算部21は、無負荷時における負荷検出値D0、負荷量W1の体重情報、現在の乗りかご6内の負荷検出値D1、及び最大積載時負荷検出値Dmaxを、書き換え可能な不揮発性ストレージ57(図4参照)等の不揮発性の記録部に記録する。
【0035】
なお、上述した初調整では、負荷量W1の体重情報をIDカードCから読み取るようにしたが、専門技術者が操作盤を操作して自身の体重を入力してもよい。あるいは、無負荷時における負荷検出値D0、負荷量W1、及び現在の乗りかご6内の負荷検出値D1から算出される計算式、並びに最大積載時負荷検出値Dmaxを、工場出荷時等の段階で予め算出しておいて、不揮発性ストレージ57等に記録しておいてもよい。また、工場出荷時等の段階では各データをROM52(図4参照)に記録しておき、2回目以降の調整で算出したデータを不揮発性ストレージ57等に記録してもよい。
【0036】
2回目以降の調整においては、例えば専門技術者ではない乗客Uが乗りかご6に乗り、携帯するIDカードCをIDカード読取機16の読取面にかざすことで、負荷検出調整モードが確立され、動作が開始される。IDカードCには、乗客UのID情報と体重情報が記録されている。IDカード読取機16はIDカードCの情報を読み取り、読み取った情報に含まれる乗客Uの体重情報を体重情報取得部31に送信する。体重情報取得部31は、IDカード読取機16から送信された負荷量W2(図3参照)の体重情報を、最大積載時負荷検出値演算部21に送信する。またこのとき、かご内負荷検出部41は、現在の乗りかご6内の負荷検出値D2(図3参照)を最大積載時負荷検出値演算部21に送信する。最大積載時負荷検出値演算部21は、負荷量W2の体重情報、現在の乗りかご6内の負荷検出値D2をRAM53に記録する(図4参照)。
【0037】
そして、最大積載時負荷検出値演算部21は、RAM53に記録されている無負荷時における負荷検出値D0、負荷量W2の体重情報、現在の乗りかご6内の負荷検出値D2を用いて、1次関数L´(図3参照)で表される最大積載時負荷検出値の計算式を算出する。
1次関数L´は次式(2)で表される。
【0038】
y={(D2−D0)/W2}x+D0 ・・・・(1)
【0039】
最大積載時負荷検出値演算部21は、1次関数L´を用いて、乗りかご6の最大積載量の100%である負荷量Wmaxのときにかご内負荷検出部41から送信されるべき最大積載時負荷検出値Dmax´(図3参照)を算出し、RAM53に記録する。そして、最大積載時負荷検出値演算部21は、この最大積載時負荷検出値Dmax´を、最大積載時負荷検出値良否判定部22に出力する。
【0040】
図2の説明に戻る。最大積載時負荷検出値良否判定部22(判定部の一例)は、最大積載時負荷検出値演算部21で演算された最大積載時負荷検出値と、記録部に登録(最後に記録)された最大積載時負荷検出値とを比較し、良否判定を行う。良否判定の基準は、例えば両者の差異(増減率)が規定値以内かどうかであり、差異が規定値を超えていれば「否」、差異が規定値以内に収まっていれば「良」とする。最大積載時負荷検出値良否判定部22は、良否判定の結果を、最大積載時負荷検出値補正部23に出力する。本実施形態では、規定値を±10%とするが、この例に限らない。
【0041】
最大積載時負荷検出値補正部23(補正部の一例)は、最大積載時負荷検出値良否判定部22の良否判定の結果が「否」であれば、最大積載時負荷検出値演算部21が今回演算した結果を正とし、最大積載時負荷検出値を補正する。一方、最大積載時負荷検出値補正部23は、最大積載時負荷検出値良否判定部22の良否判定の結果が「良」であれば、補正を実施しない。
【0042】
最大積載時負荷検出値記録部24(記録部の一例)は、最大積載時負荷検出値演算部21で算出された最大積載時負荷検出値、又は最大積載時負荷検出値良否判定部22で補正された最大積載時負荷検出値を記録する。最大積載時負荷検出値記録部24には、例えば不揮発性ストレージ57(図4参照)又は図示しないEEPROMが適用される。この最大積載時負荷検出値記録部24には、最大積載時負荷検出値演算部21が現在の乗りかご6内の負荷検出値から最大積載時負荷検出値を求める際に用いる計算式(1次関数)が記録されている。
【0043】
アナウンス指令部25(出力部の一例)は、最大積載時負荷検出値演算部21が体重情報を取得した場合に、アナウンス装置12に対し、乗客Uが乗りかご6の床板の中央部に乗ることを促すためのアナウンスを行うよう指令を出す。
【0044】
アナウンス装置12は、アナウンス指令部25からの指令に基づき、音声等により乗客Uに乗りかご6の床板の中央部に乗るように報知する。アナウンス装置12は、例えば図示しない音声出力装置(スピーカー)と、図示しない液晶パネル等の表示装置とから構成される。アナウンス装置12は、音声出力装置を用いて音声出力を行うだけでなく、表示装置にメッセージを表示することができる。
【0045】
画像解析部26は、乗りかご17内に設けられたかご内カメラ17(撮影装置の一例)が撮影した乗りかご6内の撮影画像に対してノイズ除去等の画像処理を実施する。そして、画像解析部26は、画像処理を実施した撮影画像を解析し、解析結果を最大積載時負荷検出値演算部21に出力する。最大積載時負荷検出値演算部21において、画像解析部26から入力される撮影画像の解析結果を元に、乗客Uが乗りかごの床板の中央部に乗っているか否かが判断される。
【0046】
[計算機のハードウェア構成例]
次に、上述したエレベーター100のエレベーター制御装置2を構成する計算機のハードウェア構成を説明する。
【0047】
図4は、エレベーター制御装置2に用いられる計算機のハードウェア構成例を示すブロック図である。本実施形態では、体重情報取得部31についても計算機50と同様のハードウェア構成としている。ただし、各装置の機能、使用目的に合わせて計算機50の各部は取捨選択される。
【0048】
計算機50は、いわゆるコンピューターとして用いられるハードウェアである。計算機50は、バス54にそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53を備える。さらに、計算機50は、表示部55、操作部56、不揮発性ストレージ57、ネットワークインターフェース58を備える。
【0049】
CPU51は、本実施形態に係る各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM52から読み出して実行する。即ち、CPU51がROM52から読み出したプログラムコードを実行することにより、エレベーター制御装置2の各機能が実現される。なお、計算機50は、CPU51の代わりに、MPU(Micro-Processing Unit)等の処理装置を備えるようにしてもよい。
【0050】
RAM53には、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれる。表示部55は、例えば、液晶ディスプレイモニタであり、計算機50で行われる処理の結果等を表示する。操作部56には、例えば、キーボード、マウス等が用いられ、専門技術者又は乗客Uが所定の操作入力、指示を行うことが可能である。
【0051】
不揮発性ストレージ57としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード等が用いられる。この不揮発性ストレージ57には、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、計算機50を機能させるためのプログラムが記録されている。ネットワークインターフェース58には、例えば、NIC(Network Interface Card)等が用いられ、LAN等のネットワークNを介して不図示の監視センター等との間で各種のデータを送受信することが可能である。
【0052】
不揮発性ストレージ57又は図示しないEEPEOMにより、図2の最大積載時負荷検出値記録部24が実現される。
【0053】
[エレベーター制御装置の動作例]
図5は、第1の実施形態に係るエレベーターの負荷検出調整装置の動作例を示すフローチャートである。図5を参照してエレベーターの負荷検出調整装置の動作について説明する。
【0054】
まず、IDカード読取機16は、乗りかご6に乗車した乗客UがIDカードCをIDカード読取機16にかざしたか否かを判定する(S1)。IDカードCがIDカード読取機16にかざされない場合(S1のNO)、IDカード読取機16は、ステップS1の処理に戻り、IDカードCがIDカード読取機16にかざされるまで待機する。
【0055】
次に、ステップS1においてIDカードCがIDカード読取機16にかざされた場合(S1のYES)、IDカード検出装置3の体重情報取得部31は、IDカード読取機16により読み取られた乗客UのIDカードCの情報を元に乗客Uの体重情報を取得する処理を実行する(S2)。
【0056】
次に、体重情報取得部31は、IDカードCの情報に乗客Uの体重情報が含まれるか否かを判定する(S3)。IDカードCの情報に乗客Uの体重情報が含まれない場合(S3のNO)、体重情報取得部31は、ステップS1の処理に戻り、再度IDカードCがIDカード読取機16にかざされるまで待機する。
【0057】
次に、ステップS3においてIDカードCの情報に乗客Uの体重情報が含まれる場合(S3のYES)、体重情報取得部31は、取得した乗客Uの体重情報(図3の負荷量W2)をエレベーター制御装置2の最大積載時負荷検出値演算部21へ送信する(S4)。
【0058】
次に、最大積載時負荷検出値演算部21は、体重情報取得部31から乗客Uの体重情報が送信されると、アナウンス指令部25に対し乗客Uに向けてアナウンスを行うよう指示する。アナウンス指令部25は、アナウンス装置12に対し、乗客Uが乗りかご6の床板の中央部に乗ることを促すためのアナウンスを行うよう指令を出す。アナウンス装置12は、例えば「エレベーターの中央にお乗りください」と音声出力する(S5)。さらに、この音声出力とともに、表示装置に「エレベーターの中央にお乗りください」というメッセージを表示してもよい。
【0059】
次に、最大積載時負荷検出値演算部21は、画像解析部26から入力された撮影画像の解析結果を元に、乗客Uが乗りかご6の床板の中央部に乗っているか否かを判断する(S6)。このとき、乗客Uが乗りかご6の床板の中央部に乗っていない、あるいは規定の時間が経過しても乗客Uが乗りかご6の床板の中央部へ移動しない場合には(S6のNO)、最大積載時負荷検出値演算部21は演算を停止し、ステップS1の処理に戻って再度IDカードCがIDカード読取機16にかざされるまで待機する。
【0060】
次に、ステップS6において乗客Uが乗りかご6の床板の中央部に乗っている場合(S6のYES)、最大積載時負荷検出値演算部21は、かご内負荷検出装置4のかご内負荷検出部41から乗りかご6内の負荷検出値(図3の負荷検出値D2)を取得する(S7)。
【0061】
次に、最大積載時負荷検出値演算部21は、体重情報取得部31から送信される体重情報と、かご内負荷検出部41から送信される現在の乗りかご6内の負荷検出値とから、最大積載時負荷検出値(Dmax´)を演算する(S8)。演算された最大積載時負荷検出値(Dmax´)は、最大積載時負荷検出値良否判定部22へ出力される。
【0062】
次に、最大積載時負荷検出値良否判定部22は、最大積載時負荷検出値演算部21から入力された最大積載時負荷検出値(Dmax´)と、不揮発性ストレージ57に登録(最後に記録)された最大積載時負荷検出値(Dmax)とを比較する。そして、最大積載時負荷検出値良否判定部22は、算出した最大積載時負荷検出値(Dmax´)と、登録された最大積載時負荷検出値(Dmax)との誤差が±10%以上であるか否かを判定する(S9)。良否判定の結果は、最大積載時負荷検出値補正部23へ出力される。
【0063】
次に、ステップS9において両者の誤差が±10%以上(良否判定の結果は「否」)である場合には(S9のYES)、最大積載時負荷検出値補正部23は、算出した最大積載時負荷検出値(Dmax´)を正として補正処理を実施する(S10)。一例として最大積載時負荷検出値補正部23は、最大積載時負荷検出値記録部24に登録されている最大積載時負荷検出値(Dmax)を、今回算出した最大積載時負荷検出値(Dmax´)に置き換え、新たな最大積載時負荷検出値(Dmax´)として登録する。あるいは、最大積載時負荷検出値(Dmax)と最大積載時負荷検出値(Dmax´)の平均値を計算し、新たな最大積載時負荷検出値として登録してもよい。ステップS10の処理が終了後、本フローチャートが終了する。
【0064】
一方、両者の誤差が±10%未満(良否判定の結果は「良」)である場合には(S9のNO)、最大積載時負荷検出値補正部23は、最大積載時負荷検出値演算部21が今回演算した結果を正とし、補正を実施しない。最大積載時負荷検出値演算部21は、ステップS1の処理に戻り、再度IDカードCがIDカード読取機16にかざされるまで待機する。
【0065】
[第1の実施形態の効果]
上述のように構成される第1の実施形態によれば、体重情報取得部31によってIDカードCに予め登録された乗客Uの体重情報(負荷量W2)と、かご内負荷検出部41が検出した現在の乗りかご6内の負荷検出値(D2)とを用いて、最大積載時負荷検出値演算部21が最大積載時負荷検出値(Dmax´)を算出する。次に、最大積載時負荷検出値良否判定部22は、算出した最大積載時負荷検出値(Dmax´)と、最大積載時負荷検出値記録部24が記録している最後に登録された最大積載時負荷検出値(Dmax)を比較する。そして、誤差が規定値を超えた場合に、最大積載時負荷検出値補正部23が、最後に登録された最大積載時負荷検出値(Dmax)を補正する(例えば最大積載時負荷検出値(Dmax´)に置き換える)。
【0066】
このように、エレベーター100の乗客Uが携帯するIDカードCに登録された体重情報を利用して最大積載時の負荷検出値の調整が可能となるので、専門技術者が対象のエレベーター100まで直接出向かなくてもよい。したがって、エレベーター100の最大積載時の負荷検出値の調整頻度を上げることができる。
【0067】
また、専門技術者による特別な操作を行うことなく、最大積載時負荷検出値の調整が可能となり、専門技術者の作業量を低減させることができる。
【0068】
<2.第2の実施形態>
第2の実施形態は、乗客Uが携帯するIDカードCに乗客Uの体重情報が存在しない場合の例である。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点に着目して説明する。
【0069】
[エレベーターの負荷検出調整装置の制御系]
図6は、第2の実施形態に係るエレベーターの制御系を示すブロック図である。
本実施形態に係るエレベーター100AのIDカード検出装置3は、体重情報取得部31と、体重情報データベース32(図6では「体重情報DB32」と表記している)とを備える。乗客Uが携帯するIDカードCには、ID情報のみが登録されており体重情報が存在しない。
【0070】
[体重情報データベース]
図7は、体重情報データベースの一例である。
体重情報データベース32のレコードは、ID情報フィールドと、体重情報フィールドを有する。図7の例では、IDが‘001’のとき体重が‘60kg’であり、IDが‘002’のとき体重が‘48kg’である。
【0071】
体重情報データベース32への情報の登録は、専門技術者が点検の際に携帯する不図示の保守コンソールにより行われる。また、体重情報データベース32への情報の登録に、乗りかご6内の図示しない操作盤や、呼びボタンの機能割り当てを変更して行われる暗号操作を利用してもよい。あるいは他の装置で予め体重情報データベース32を作成し、その体重情報データベース32をIDカード検出装置3の不図示の不揮発性の記録部に記録してもよい。
【0072】
体重情報取得部31は、IDカード読取機16が乗客UのIDカードCから読み取った情報に含まれるID情報を取得し、取得したID情報を元に体重情報データベース32を検索して乗客Uの体重情報を取得する処理を実行する(図5のS2に対応)。例えば体重情報取得部31は、取得したID情報のIDが‘001’であれば、体重情報データベース32から対応する体重情報として‘60kg’を抽出する。そして、体重情報取得部31は、抽出した乗客Uの体重情報(負荷量W2)を、エレベーター制御装置2の最大積載時負荷検出値演算部21に送信する。エレベーター制御装置2内の構成及び動作は、第1の実施形態のものと同じである。
【0073】
[第2の実施形態の効果]
上述した第2の実施形態によれば、乗客UのIDカードCに体重情報が存在しない場合でも、IDカード検出装置3に格納した体重情報データベース32から乗客UのID情報に対応する体重情報を取得し、最大積載時負荷検出値を算出することができる。その他の効果は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0074】
<3.第3の実施形態>
第3の実施形態は、第2の実施形態と同様に乗客Uが携帯するIDカードCに乗客Uの体重情報が存在せず、体重情報データベース32がエレベーター制御装置2に格納されている場合の例である。以下、第3の実施形態について、第2の実施形態との相違点に着目して説明する。
【0075】
[エレベーターの負荷検出調整装置の制御系]
図8は、第3の実施形態に係るエレベーターの制御系を示すブロック図である。
本実施形態に係るエレベーター100BのIDカード検出装置3は、カード情報取得部の一例としてID情報取得部33を備える。また、エレベーター制御装置2は、体重情報データベース32を備える。乗客Uが携帯するIDカードCには、ID情報のみが登録されており体重情報が存在しない。
【0076】
ID情報取得部33は、IDカード読取機16が乗客UのIDカードCから読み取った情報に含まれるID情報を取得し、取得したID情報をエレベーター制御装置2の最大積載時負荷検出値演算部21に送信する。
【0077】
最大積載時負荷検出値演算部21は、ID情報取得部33から送信された乗客UのID情報を元に、体重情報データベース32を検索して乗客Uの体重情報を取得する処理を実行する(図5のS2に対応)。即ち、最大積載時負荷検出値演算部21が、乗客UのID情報を元に体重情報データベース32から体重情報を抽出する図6の体重情報取得部31と同様の機能を具備する。そして、最大積載時負荷検出値演算部21は、かご内負荷検出部41から送信される現在の乗りかご6内の負荷検出値(D2)と、体重情報データベース32から抽出した体重情報(負荷量W2)とを用いて、最大積載時負荷検出値(Dmax´)を演算する。エレベーター制御装置2内のその他の構成及び動作は、第1の実施形態及び第2の実施形態のものと同じである。
【0078】
[第3の実施形態の効果]
上述した第3の実施形態によれば、第2の実施形態の場合と同様に乗客UのIDカードCに体重情報が存在しない場合でも、エレベーター制御装置2に格納した体重情報データベース32から乗客UのID情報に対応する体重情報を取得し、最大積載時負荷検出値を算出することができる。その他の効果は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0079】
<4.その他>
なお、第1〜第3の実施形態において、IDカードC又は体重情報データベース32に情報を登録してから期間が経過するほど、人間の体重も変化する可能性がある。したがって、所定の期間ごとに体重情報を更新することが望ましい。最大積載時負荷検出値演算部21は、取得した体重情報が、所定の期間以上更新されていないときは、該当体重情報を用いて最大積載時負荷検出値を算出しないとしてもよい。あるいは、最大積載時負荷検出値演算部21は、所定の期間以上、体重情報の更新がされていないときには、アナウンス装置12により乗客Uに体重情報の更新をお願いするアナウンスをしてもよい。
【0080】
図9は、体重情報データベースの他の例である。
体重情報データベース32aのレコードは、ID情報フィールド、体重情報フィールド、及び登録日フィールドを有する。図9の例では、ID‘001’の体重‘60kg’は、2015年10月30日に登録され、ID‘002’の体重‘48kg’は、2015年2月28日に登録されている。例えば更新目安とする所定の期間が3ヶ月であり、調整日の日付が2015年11月15日であると仮定すると、ID‘002’の体重情報は約8か月以上前の古い情報である。このような古い体重情報は、負荷検出値の調整に利用しないようにすることで、負荷検出値の調整精度が一定レベル以上に維持される。
【0081】
一方で、所定の期間以上更新されていない体重情報を使用して負荷検出値の調整を行う必要がある場合には、良否判定時の誤差の幅を狭めるようにする。例えば上述した各実施形態おいて、良否判定時の誤差の規定値を±10%から±5%の幅を狭める。このようにすることで、正確性が担保されていない体重情報を使用した場合に、負荷検出値の調整精度が一定レベル以上に維持される。
【0082】
また、第1〜第3の実施形態において、IDカードC即ち体重情報のサンプル数を増やし、登録されている最大積載時負荷検出値の良否判定を行うことで、調整精度を向上させることが可能である。例えばIDカード読取機16で10人分のIDカードCの情報を読み取って10個の体重情報を取得し、最大積載時負荷検出値の良否判定ですべて「否」であれば、算出した最大積載時負荷検出値の中央値を補正値とする。
【0083】
また、第2及び第3の実施形態において、IDカード読取機16の代わりに生体情報読取機を用いてもよい。例えば、乗客Uの生態情報としては、指の指紋や血管、眼球の虹彩、声紋などを利用できる。この場合、体重情報取得部31及びID情報取得部33は、乗客UのID情報ではなく生体情報を取得するので、負荷検出調整処理時に乗客UのIDカードが不要になる。それゆえ、さらに乗客Uに負担をかけることなく、自然に負荷検出調整処理を実施できる。
【0084】
さらに、本発明は上述した各実施形態例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
【0085】
例えば、上述した実施形態例は本発明を分かりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態例の構成の一部を他の実施形態例の構成に置き換えることは可能である。また、ある実施形態例の構成に他の実施形態例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0086】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又はICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0087】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0088】
また、本明細書において、時系列的な処理を記述する処理ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)をも含むものである。
【符号の説明】
【0089】
2…エレベーター制御装置、 3…IDカード検出装置、 4…かご内負荷検出装置、 6…乗りかご、 12…アナウンス装置、 16…IDカード読取機、 17…かご内カメラ、 21…最大積載時負荷検出値演算部、 22…最大積載時負荷検出値良否判定部、 23…最大積載時負荷検出値補正部、 24…最大積載時負荷検出値記録部、 25…アナウンス指令部、 26…画像解析部、 31…体重情報取得部、 32,32a…体重情報データベース、 41…かご内負荷検出部、 50…計算機、 51…CPU、 52…ROM、 53…RAM、 57…不揮発性ストレージ、 90…エレベーターの負荷検出調整装置、 100,100A,100B…エレベーター制御装置、 D1,D2…負荷検出値、 Dmax,Dmax´…最大積載時負荷検出値、 W1,W2,Wmax…負荷量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9