(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水から水蒸気を生成する誘導加熱方式又は通電加熱方式の水蒸気生成部と、水蒸気から過熱水蒸気を生成する誘導加熱方式又は通電加熱方式の過熱水蒸気生成部と、前記水蒸気生成部により生成された水蒸気を前記過熱水蒸気生成部に供給する水蒸気供給流路と、前記水蒸気とは異なる他の気体を前記過熱水蒸気生成部に供給する気体供給流路とを備えた過熱水蒸気生成装置を用いて被処理物を処理する処理方法であって、
前記過熱水蒸気生成部に前記他の気体を供給して前記他の気体を加熱し、その加熱された前記他の気体により前記被処理物を加熱する前工程と、
前記前工程の後に、前記過熱水蒸気生成部に前記水蒸気を供給して過熱水蒸気を生成し、その過熱水蒸気により前記前工程で加熱された前記被処理物を処理する後工程とを備え、
前記前工程において、前記水蒸気生成部への電力供給を停止する処理方法。
水から水蒸気を生成する誘導加熱方式又は通電加熱方式の水蒸気生成部と、水蒸気から過熱水蒸気を生成する誘導加熱方式又は通電加熱方式の過熱水蒸気生成部と、前記水蒸気生成部により生成された水蒸気を前記過熱水蒸気生成部に供給する水蒸気供給流路と、前記水蒸気とは異なる他の気体を前記過熱水蒸気生成部に供給する気体供給流路とを備えた過熱水蒸気生成装置を用いて被処理物を処理する処理方法であって、
前記過熱水蒸気生成部に前記他の気体を供給して前記他の気体を加熱し、その加熱された前記他の気体により前記被処理物を加熱する前工程と、
前記前工程の後に、前記過熱水蒸気生成部に前記水蒸気を供給して過熱水蒸気を生成し、その過熱水蒸気により前記前工程で加熱された前記被処理物を処理する後工程とを備え、
前記前工程及び前記後工程に加えて、前記過熱水蒸気生成部に前記水蒸気及び前記他の気体を供給してその混合気体を加熱し、その加熱された混合気体により前記被処理物を処理する工程をさらに備える処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、過熱水蒸気を用いて被処理物を処理する場合に被処理物に生じる結露を防ぐことをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る過熱水蒸気生成装置は、水から水蒸気を生成する誘導加熱方式又は通電加熱方式の水蒸気生成部と、水蒸気から過熱水蒸気を生成する誘導加熱方式又は通電加熱方式の過熱水蒸気生成部と、前記水蒸気生成部により生成された水蒸気を前記過熱水蒸気生成部に供給する水蒸気供給流路と、前記水蒸気とは異なる他の気体を前記過熱水蒸気生成部に供給する気体供給流路とを備え、前記過熱水蒸気生成部に前記水蒸気が供給される第1状態、又は、前記過熱水蒸気生成部に前記他の気体が供給されて前記過熱水蒸気生成部が気体加熱部として機能する第2状態に切り替え可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、第1状態では過熱水蒸気生成部により過熱水蒸気が生成され、第2状態では過熱水蒸気生成部が気体加熱部として機能して他の気体が加熱されるので、過熱水蒸気を用いて被処理物を処理する前に、加熱された他の気体を用いて被処理物を加熱することによって、過熱水蒸気が液化して被処理物に結露が生じることを防ぐことができる。また、過熱水蒸気生成部を気体加熱部として機能させているので、被処理物を加熱する別の加熱装置を不要とすることができ、被処理物の結露を防ぐためのシステム構成を簡単化することができると共に、そのシステムを小型化することができる。
【0009】
前記水蒸気供給流路に設けられて、前記過熱水蒸気生成部に供給される前記水蒸気の流量を調整する水蒸気流量調整部を備え、前記第2状態において、前記水蒸気流量調整部が前記過熱水蒸気生成部への前記水蒸気の供給を停止していることが望ましい。この構成であれば、第2状態において水蒸気生成部により水蒸気を生成しておくことにより、第2状態から第1状態への切り替えを素早く行うことができる。
【0010】
前記水蒸気生成部への電力供給を制御する制御装置を備え、前記第2状態において、前記制御装置が前記水蒸気生成部への電力供給を停止していることが望ましい。この構成であれば、第2状態において水蒸気生成部により消費される電力を削減することができる。
【0011】
前記第1状態及び前記第2状態に加えて、前記過熱水蒸気生成部に前記水蒸気及び前記他の気体が供給されて前記過熱水蒸気生成部が混合気体加熱部として機能する第3状態に切り替え可能に構成されていることが望ましい。この構成であれば、被処理物を過熱水蒸気を用いて処理する他に、別の処理を行うことができる。例えば、他の気体が空気又は窒素の場合には、被処理物の酸化処理や窒化処理が可能となる。
【0012】
前記水蒸気供給流路に設けられて、前記過熱水蒸気生成部に供給される前記水蒸気の流量を調整する水蒸気流量調整部を備え、前記第3状態において、前記水蒸気流量調整部が前記過熱水蒸気生成部に供給される前記水蒸気の流量を調整することにより、前記過熱水蒸気生成部における前記水蒸気及び前記他の気体の混合比が調整されることが望ましい。この構成であれば、被処理物の処理条件をコントロールすることができる。例えば、他の気体が空気又は窒素の場合には、被処理物の酸化度や窒化度をコントロールすることができる。
【0013】
水蒸気生成部及び過熱水蒸気生成部の具体的な構成としては、前記水蒸気生成部及び前記過熱水蒸気生成部は、主座変圧器及びT座変圧器からなるスコット結線変圧器を用いて構成されるものであり、前記水蒸気生成部は、前記主座変圧器の出力により、誘導加熱又は通電加熱される第1加熱用金属体を有し、前記過熱水蒸気生成部は、前記T座変圧器の出力により、誘導加熱又は通電加熱される第2加熱用金属体を有することが考えられる。
【0014】
この構成において、水蒸気生成部により生成される水蒸気の温度及び過熱水蒸気生成部により生成される過熱水蒸気の温度を個別に制御するためには、前記主座変圧器の入力側の2相のうち一方に電圧又は電流を制御する第1制御機器が設けられており、前記T座変圧器の入力側である1次コイルの一端側に電圧又は電流を制御する第2制御機器が設けられており、前記第1制御機器及び前記第2制御機器により、前記主座変圧器の出力電圧と前記T座変圧器の出力電圧とを個別に制御することが望ましい。
【0015】
スコット結線変圧器における1次側出力制御は、1次側電流においてT座変圧器の1次コイルを流れる電流が主座変圧器の1次コイルに流れ込むことから、主座変圧器の出力をゼロにできない場合が生じる。例えば、水蒸気出力をせずに他の気体のみを第2加熱用金属体で加熱する場合には、主座側の第1制御機器の出力をゼロとしてT側の第2制御機器を大きな出力となるように制御するが、T座変圧器の1次コイルの電流が主座変圧器の1次コイルに流れ込むので、第1加熱用金属体が加熱されることになる。そうすると、第1加熱用金属体が過加熱される恐れが生じ危険である。
この問題を好適に解決するためには、前記主座変圧器の1次コイルの中点に接続された中点端子と、前記T座変圧器の1次コイルの一端側端子とを接続してスコット結線する第1接続状態と、前記スコット結線を解線して、前記第2制御機器を含む前記T座変圧器の1次コイルの両側端子を三相交流電源に接続する第2接続状態とを切り替える切り替え機構をさらに備えることが望ましい。
この構成であれば、過熱水蒸気を生成する第1状態と、過熱水蒸気及び他の気体の混合気体を加熱する第3状態との場合には、第1接続状態(スコット結線状態)で使用し、他の気体のみを加熱する第2状態の場合には、第2接続状態(T座側回路と主座側回路とが独立した回路状態)で使用することができる。第2接続状態においては、他の気体を加熱運転しつつ、水蒸気発生部を保温待機させることができる。また、第1制御機器の出力を零にして、他の気体のみを加熱運転し続けることも可能である。
【0016】
前記切り替え機構によりスコット結線状態とした場合、三相交流電源の入力電圧をEとすると、第2制御機器を含むT座変圧器の1次コイルに印加される電圧は、E×(√3)/2である。ところが、切り替え機構によりスコット結線を解線して、第2制御機器を含むT座変圧器の1次コイルの両側端子を三相交流電源に接続すれば、印加電圧はEとなる。すなわち、T座変圧器の1次コイルへの印加電圧は、2/(√3)倍となる。また、第2加熱用金属体が目標温度に到達するまでは、大きな出力となるように第2制御機器が働き、回路電流もおよそ2/(√3)倍となる。
このとき、前記第2制御機器が、定電流制御機能を有するものであれば、T座変圧器の1次コイルに一定以上の大きな電流が流れることを防止でき、回路保護機能を持たせることができる。
【0017】
また、本発明に係る過熱水蒸気を用いた処理方法は、水から水蒸気を生成する誘導加熱方式又は通電加熱方式の水蒸気生成部と、水蒸気から過熱水蒸気を生成する誘導加熱方式又は通電加熱方式の過熱水蒸気生成部と、前記水蒸気生成部により生成された水蒸気を前記過熱水蒸気生成部に供給する水蒸気供給流路と、前記水蒸気とは異なる他の気体を前記過熱水蒸気生成部に供給する気体供給流路とを備えた過熱水蒸気生成装置を用いて被処理物を処理する処理方法であって、前記過熱水蒸気生成部に前記他の気体を供給して前記他の気体を加熱し、その加熱された前記他の気体により前記被処理物を加熱する前工程と、前記前工程の後に、前記過熱水蒸気生成部に前記水蒸気を供給して過熱水蒸気を生成し、その過熱水蒸気により前記前工程で加熱された前記被処理物を処理する後工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
このように構成した本発明によれば、過熱水蒸気を用いて被処理物を処理する前に、加熱された他の気体を用いて被処理物を加熱することによって、被処理物の結露を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明に係る過熱水蒸気生成装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態に係る過熱水蒸気生成装置100は、水を加熱することにより過熱水蒸気を生成するものであり、当該過熱水蒸気生成機能の他に、水蒸気とは異なる他の気体を加熱する気体加熱過熱機能を有するものである。なお、前記他の気体としては、空気、酸素、窒素、アルゴンなどであり、水蒸気以外の気体であれば用途に応じて種々のものが考えられる。
【0022】
この過熱水蒸気生成装置100は、
図1に示すように、水を加熱して飽和水蒸気を生成する水蒸気生成部2(以下、飽和水蒸気生成部2という。)と、飽和水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成する過熱水蒸気生成部3と、飽和水蒸気生成部2により生成された飽和水蒸気を過熱水蒸気生成部3に供給する水蒸気供給流路L2(以下、飽和水蒸気供給流路L2という。)と、飽和水蒸気とは異なる他の気体を過熱水蒸気生成部3に供給する気体供給流路L3とを備えている。
【0023】
飽和水蒸気生成部2は、例えば誘導加熱方式又は通電加熱方式のものであり、水が導入される水導入ポート21及び飽和水蒸気を導出する飽和水蒸気導出ポート22を有する。なお、水導入ポートには、図示しないタンク等から飽和水蒸気生成部2に水を供給する水供給流路L1が接続されている。
【0024】
誘導加熱方式の飽和水蒸気生成部2は、水導入ポート21及び飽和水蒸気導出ポート22を有する例えば螺旋状に形成された中空導体管2T(
図2参照)と、当該中空導体管2Tの内側又は外側に配置されて中空導体管2Tを誘導加熱する誘導コイル(不図示)と、当該誘導コイルに交流電圧を印加する交流電源(不図示)とを備えたものであり、当該誘導コイルに交流電圧を印加することによって、中空導体管2Tに誘導電流を流すことによりジュール発熱させて、中空導体管2Tに導入された水を飽和水蒸気に状態変化させるものとすることが考えられる。
【0025】
また、通電加熱方式の飽和水蒸気生成部2は、水導入ポート21及び飽和水蒸気導出ポート22を有する例えば螺旋状に形成された中空導体管2Tと、当該中空導体管2Tに電圧を印加する直流又は交流電源(不図示)とを備えたものであり、中空導体管に電流を流すことによりジュール発熱させて、中空導体管2Tに導入された水を飽和水蒸気に状態変化させるものとすることが考えられる。なお、通電加熱方式の場合、中空導体管は、螺旋状に限られず、例えば直管状をなすものであっても良い。
【0026】
何れの方式の場合であっても、中空導体管2Tの飽和水蒸気導出ポート22から導出される飽和水蒸気の温度を検出して、誘導コイルに印加する電圧、中空導体管2Tに印加する電圧又は中空導体管2Tに流れる電流をフォードバック制御することによって、中空導体管2Tの飽和水蒸気導出ポート22から導出される飽和水蒸気の温度を制御する。なお、飽和水蒸気の温度検出は、飽和水蒸気の温度を直接検出する方式と、中空導体管2Tの温度を検出することによって飽和水蒸気の温度を間接検出する方式とが考えられる。
【0027】
過熱水蒸気生成部3は、前記飽和水蒸気生成部2と同様、例えば誘導加熱方式又は通電加熱方式のものであり、飽和水蒸気が導入される飽和水蒸気導入ポート31及び過熱水蒸気を導出する過熱水蒸気導出ポート32を有する。
【0028】
誘導加熱方式の過熱水蒸気生成部3は、飽和水蒸気導入ポート31及び過熱水蒸気導出ポート32を有する例えば螺旋状の中空導体管3T(
図2参照)と、当該中空導体管3Tの内側又は外側に配置されて中空導体管3Tを誘導加熱する誘導コイル(不図示)と、当該誘導コイルに交流電圧を印加する交流電源(不図示)とを備えたものであり、当該誘導コイルに交流電圧を印加することによって、中空導体管3Tに誘導電流を流すことによりジュール発熱させて、中空導体管3Tに導入された飽和水蒸気を過熱水蒸気に状態変化させるものとすることが考えられる。
【0029】
また、通電加熱方式の過熱水蒸気生成部3は、飽和水蒸気導入ポート31及び過熱水蒸気導出ポート32を有する例えば螺旋状に形成された中空導体管3Tと、当該中空導体管3Tに電圧を印加する直流又は交流電源(不図示)とを備えたものであり、中空導体管3Tに電流を流すことによりジュール発熱させて、中空導体管3Tに導入された飽和水蒸気を過熱水蒸気に状態変化させるものとすることが考えられる。何れの方式の場合であっても、中空導体管3Tに印加する電圧又は中空導体管3Tに流れる電流を制御することによって、中空導体管3Tの導出ポート32から導出される過熱水蒸気の温度を制御する。なお、通電加熱方式の場合、中空導体管3Tは、螺旋状に限られず、例えば直管状をなすものであっても良い。
【0030】
何れの方式の場合であっても、中空導体管3Tの過熱水蒸気導出ポート32から導出される過熱水蒸気の温度を検出して、誘導コイルに印加する電圧、中空導体管3Tに印加する電圧又は中空導体管3Tに流れる電流をフォードバック制御することによって、中空導体管3Tの過熱水蒸気導出ポート32から導出される過熱水蒸気の温度を制御する。なお、過熱水蒸気の温度検出は、過熱水蒸気の温度を直接検出する方式と、中空導体管3Tの温度を検出することによって過熱水蒸気の温度を間接検出する方式とが考えられる。
【0031】
また、誘導加熱方式の場合は、印加する交流電圧の周波数を50Hz又は60Hzの商用周波数とすれば、電流浸透度が深いので、中空導体管2T、3Tの外面温度検出で内面温度検出と同等の値が得られるので、間接検出であっても精度の高い蒸気温度検出が可能となる。
【0032】
本実施形態では、
図3及び
図4に示すように、飽和水蒸気生成部2の誘導コイル2C及び過熱水蒸気生成部3の誘導コイル3Cの中心部に磁路用鉄心101、102が設けられており、これにより誘導コイル2C、3Cにより発生した磁束を効率良く循環させることで、各中空導体管2T、3Tに磁束を効率良く導入させている。さらに、飽和水蒸気生成部2の磁路用鉄心101及び過熱水蒸気生成部3の磁路用鉄心102の他に、それら2つの磁路用鉄心101、102に生じる磁束の共通の通路になる共通鉄心103が設けられており、この共通鉄心103及び前記2つの磁路用鉄心101、102の上下それぞれを継鉄心104、105が連結している。この構成により、鉄心全体の寸法を小さくすることができ、ひいては、装置全体のコンパクト化を図ることができる。なお、
図3及び
図4では、平面視においてそれぞれの鉄心が三角形の頂点に位置するように配置され、継鉄心104、105が、平面視において共通鉄心103を屈折点として折れ曲がっている。これにより、2つの磁路用鉄心101、102間の距離を小さくして、鉄心全体の幅方向の寸法を小さくし、省スペース化を図ることができる。
【0033】
その他、飽和水蒸気生成部2の誘導コイル2C及び過熱水蒸気生成部3の誘導コイル3Cはスコット結線されている(
図5参照)。つまり、飽和水蒸気生成部2及び過熱水蒸気生成部3は、主座変圧器及びT座変圧器からなるスコット結線変圧器を用いて構成されている。
【0034】
飽和水蒸気生成部2の中空導体管2T(第1加熱用金属体)は、主座変圧器の出力により、誘導加熱又は通電加熱され、過熱水蒸気生成部3の中空導体管3T(第2加熱用金属体)は、T座変圧器の出力により、誘導加熱又は通電加熱される。
【0035】
また、主座変圧器の入力側の2相のうち一方(
図5では三相交流電源10のV相)に電圧又は電流を制御する第1制御機器81が設けられている。T座変圧器の入力側である1次コイル(誘導コイル3C)の一端側(
図5では三相交流電源10のU相)に電圧又は電流を制御する第2制御機器82が設けられている。ここで、第1制御機器81及び第2制御機器82は、サイリスタ等の半導体制御素子を用いて構成されている。そして、この第1制御機器81及び第2制御機器82により、主座変圧器の出力電圧とT座変圧器の出力電圧とを個別に制御するように構成されている。
【0036】
飽和水蒸気供給流路L2は、一端が飽和水蒸気生成部2の飽和水蒸気導出ポート22に接続され、他端が過熱水蒸気生成部3の過熱水蒸気導入ポート31に接続されたものであり、例えば接続管により構成されている。なお、前記何れかの中空導体管2T、3Tに前記接続管としての機能を一体的に設けることにより、飽和水蒸気生成部2の飽和水蒸気導出ポート22と過熱水蒸気生成部3の過熱水蒸気導入ポート31とを例えば絶縁性を有する継手を介して接続するようにしても良い。
【0037】
また、飽和水蒸気供給流路L2には、過熱水蒸気生成部3に供給される飽和水蒸気の流量を調整する水蒸気流量調整部4(以下、飽和水蒸気流量調整部4という。)が設けられている。本実施形態の飽和水蒸気流量調整部4は、第1流量調整弁である。なお、第1流量調整弁4は、後述する制御装置7により制御信号が入力されて、その弁開度が制御される。その他、飽和水蒸気供給流路L2に流量計を設けても良い。
【0038】
気体供給流路L3は、一端が他の気体(例えば空気や窒素など)の供給源に接続され、他端が飽和水蒸気供給流路L2における第1流量調整弁4の下流側(過熱水蒸気生成部3側)又は過熱水蒸気生成部3に接続されている。気体供給流路L3が飽和水蒸気供給流路L2に接続される場合には、気体供給流路L3を構成する接続管に気体導入ポートが形成される。また、気体供給流路L3が過熱水蒸気生成部3に接続される場合(
図1参照)には、過熱水蒸気生成部3に気体導入ポート33が形成される(
図2には図示しない。)。なお、過熱水蒸気生成部3に気体導入ポート33を形成する場合には、他の気体の加熱効率を考えて、中空導体管3Tの上流側(飽和水蒸気導入ポート31側)に形成することが望ましい。
【0039】
また、気体供給流路L3には、過熱水蒸気生成部3に供給される他の気体の流量を調整する気体流量調整部5が設けられている。本実施形態の気体流量調整部5は、第2流量調整弁である。なお、第2流量調整弁5は、後述する制御装置7により制御信号が入力されて、その弁開度が制御される。その他、気体供給流路L3に流量計を設けても良い。
【0040】
そして、本実施形態では、過熱水蒸気生成部3により生成された過熱水蒸気又は加熱された他の気体は、被処理物Wを処理する処理部6に供給される。
【0041】
処理部6は、過熱水蒸気又は他の気体によって被処理物Wを熱処理(例えば洗浄、乾燥、焼成又は殺菌)するものであり、被処理物Wを収容するとともに、密閉空間又は略密閉空間を形成する被処理物収容部61と、当該被処理物収容部61に設けられ、過熱水蒸気が導入される過熱水蒸気導入ポート62と、被処理物収容部61で生じたドレン水を排出するドレン排出ポート63と、被処理物収容部61を通過した利用済み蒸気又は他の気体を排出する排出ポート64とを有している。処理部6の過熱水蒸気導入ポート62は、過熱水蒸気供給流路L4により過熱水蒸気生成部3の過熱水蒸気導出ポート32に接続されている。なお、ドレン排出ポート63及び排出ポート64に接続された流路には開閉弁が設けられている。
【0042】
上記構成の過熱水蒸気生成装置100は、過熱水蒸気生成部3に飽和水蒸気のみが供給される第1状態と、過熱水蒸気生成部3に他の気体のみが供給されて過熱水蒸気生成部3が気体加熱部として機能する第2状態と、過熱水蒸気生成部3に飽和水蒸気及び他の気体の両方が供給されて過熱水蒸気生成部3が混合気体加熱部として機能する第3状態とに切り替わるように構成されている。
【0043】
ここでは、各生成部2、3及び各流量調整弁4、5を制御する制御装置7によって上記の第1状態、第2状態又は第3状態の何れかに切り替わるように構成されている。
【0044】
この制御装置7は、物理的にはCPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ等を備えたものであり、機能的には、
図6に示すように、飽和水蒸気生成部2の加熱温度(以下、第1加熱温度という。)を制御する第1加熱温度制御部71と、過熱水蒸気生成部3の加熱温度(以下、第2加熱温度という。)を制御する第2加熱温度制御部72と、第1流量調整弁4を制御する第1流量調整弁制御部73と、第2流量調整弁5を制御する第2流量調整弁制御部74とを有するものである。その他、制御装置7は、処理部6に収容された被処理物Wの温度又は処理部6内の温度を取得する処理物温度取得部75を有している。なお、制御装置7と、飽和水蒸気生成部2及び過熱水蒸気生成部3等の各部との間は接続されているが、
図1では、その接続についての記載は省略してある。
【0045】
以下、各部の説明を兼ねて、本実施形態の過熱水蒸気生成装置100の動作について
図7を参照して説明する。
まず、ユーザが過熱水蒸気生成装置100を動作させると、例えば図示しないタンク内の水が給水ポンプ等により飽和水蒸気生成部2に供給される。
【0046】
このとき、第1加熱温度制御部71は、飽和水蒸気生成部2で生成される飽和水蒸気が所定温度となるように、第1加熱温度を制御しており、本実施形態では、飽和水蒸気生成部2の中空導体管2Tの温度を前記第1加熱温度としている。
【0047】
具体的にこの第1加熱温度制御部71は、飽和水蒸気生成部2の中空導体管2T又は飽和水蒸気供給流路L2に設けられた第1温度センサT1からの測定値を取得し、この測定値に基づいて、飽和水蒸気生成部2の誘導コイル2Cに印加される交流電圧の大きさを制御し、第1加熱温度を例えば100〜140℃に制御している。
【0048】
なお、前記第1温度センサT1は、その測定値をより飽和水蒸気の温度に近づけるべく、飽和水蒸気生成部2の中空導体管2Tの下流側や飽和水蒸気導出ポート22又はその近傍に設けられていることが好ましい。
【0049】
そして、飽和水蒸気生成部2が飽和水蒸気を生成している状態において、第1流量調整弁制御部73は、第1流量調整弁4をその弁開度がゼロの状態、つまり閉状態に制御している。これにより、過熱水蒸気生成装置100は、飽和水蒸気生成部2が飽和水蒸気を生成している状態であり、かつ、その飽和水蒸気の供給が停止されている状態である待機状態となる。
【0050】
この待機状態において、第2流量調整弁制御部74は、第2流量調整弁5を開放させて、気体供給流路L3から過熱水蒸気生成部3に他の気体が供給する。
【0051】
このとき、第2加熱温度制御部72は、過熱水蒸気生成部3で加熱される他の気体が所定温度となるように、第2加熱温度を制御しており、本実施形態では、過熱水蒸気生成部3の中空導体管3Tの温度を前記第2加熱温度としている。
【0052】
具体的にこの第2加熱温度制御部72は、過熱水蒸気生成部3の中空導体管3T又は過熱水蒸気供給流路L4に設けられた第2温度センサT2からの測定値を取得し、この測定値に基づいて、過熱水蒸気生成部3の誘導コイル3Cに印加される交流電圧の大きさを制御し、第2加熱温度を例えば100℃以上に制御している。
【0053】
なお、他の気体を加熱する場合の第2加熱温度は、過熱水蒸気が供給された際に被処理物Wに結露が生じない程度に被処理物Wを加熱できる温度であれば良い。また、前記第2温度センサT2は、その測定値をより過熱水蒸気の温度に近づけるべく、過熱水蒸気生成部3の中空導体管3Tの下流側や過熱水蒸気導出ポート32又はその近傍に設けられていることが好ましい。
【0054】
これにより、過熱水蒸気生成装置は、第1流量調整弁4が閉状態であり、第2流量調整弁5が開状態であり、過熱水蒸気生成部3が他の気体を加熱する気体加熱部として機能する第2状態となる。この第2状態において、処理部6に収容された被処理物Wを加熱(予熱)する前工程が行われる。
【0055】
制御装置7の処理物温度取得部75は、処理部6に収容された被処理物Wの温度又は処理部6内の温度を測定する第3温度センサT3からの測定値を取得する。そして、処理物温度取得部75は、第3温度センサT3からの測定値が所定の温度(過熱水蒸気が供給された際に被処理物Wに結露が生じない温度)となったか否かを判断する。
【0056】
処理物温度取得部75により第3温度センサT3からの測定値が前記所定の温度以上と判断された場合、第2流量調整弁制御部74は、第2流量調整弁5を閉状態に制御し、第1流量調整弁制御部73は、第1流量調整弁4を開放させて、飽和水蒸気供給流路L2から過熱水蒸気に飽和水蒸気を供給する。
【0057】
なお、各流量調整弁制御部73、74は、前記処理物温度取得部75の判断とは別に、ユーザから入力される切り替え信号により、各流量調整弁4、5の開閉を切り替えるようにしても良い。また、各流量調整弁制御部73、74は、第2状態となってから所定時間経過したことを示す所定時間経過信号をタイマー等が取得して、各流量調整弁4、5の開閉を切り替えるようにしても良い。
【0058】
このとき、第2加熱温度制御部72は、過熱水蒸気生成部3の中空導体管3T又は過熱水蒸気供給流路L4に設けられた第2温度センサT2からの測定値を取得し、この測定値に基づいて、過熱水蒸気生成部3で生成される過熱水蒸気が所定温度となるように、第2加熱温度を制御する。具体的に第2加熱温度は、過熱水蒸気生成部3で生成される過熱水蒸気の設定温度又はその前後の温度に制御されており、ここでは、例えば200〜1200℃に制御されている。
【0059】
これにより、過熱水蒸気生成装置100は、第1流量調整弁4が開状態であり、第2流量調整弁5が閉状態であり、過熱水蒸気生成部3が過熱水蒸気を生成する第1状態となる。この第1状態において、処理部6に収容された被処理物Wを熱処理(例えば洗浄、乾燥、焼成又は殺菌)する後工程が行われる。
【0060】
なお、気体供給状態である第2状態(上記では待機状態)から飽和水蒸気供給状態である第1状態に切り替える際に、第1流量調整弁制御部73は、
図7に示すように、第1流量調整弁4を徐々に開いて、その弁開度がゼロから所定開度まで徐々に大きくなるように制御する。これにより、待機状態から飽和水蒸気供給状態に切り替わった切替時点から第1流量調整弁4の弁開度が所定開度に到るまでは、飽和水蒸気の供給量が徐々に増加する初期運転となり、弁開度が所定開度に到った時点からは、飽和水蒸気の供給量が一定となる定常運転となる。なお、後工程は、所定の処理時間行われる。
【0061】
次に、後工程終了時の動作について説明する。
本実施形態の過熱水蒸気生成装置100は、飽和水蒸気供給状態から待機状態に切り替えるための自動又は手動の操作が行われた時点から、所定時間経過後に、過熱水蒸気生成部3への飽和水蒸気の供給が停止されるように構成されている。なお、過熱水蒸気生成部3の誘導コイルへの電力供給は、飽和水蒸気供給状態から待機状態に切り替えるための操作が行われた時点で停止される。
【0062】
ここで、飽和水蒸気供給状態から待機状態に切り替えるための操作とは、例えばユーザが、外部から入力手段等を用いて切替信号を入力することや、飽和水蒸気供給状態が所定時間経過したことを示す所定時間経過信号をタイマー等が出力することなどである。
【0063】
より詳細に本実施形態では、飽和水蒸気供給状態から待機状態に切り替えるための操作が行われると、上述した第1流量調整弁制御部73が、例えば前記切替信号や前記所定時間経過信号などを取得し、取得した時点から所定時間は、第1流量調整弁4を開状態のままにする。前記所定時間において、飽和水蒸気生成部2から過熱水蒸気生成部3へ飽和水蒸気が供給される。これにより、後工程終了時に高温となっている過熱水蒸気生成部3は飽和水蒸気により冷却される。これにより、過熱水蒸気生成部3を待機状態における設定温度まで冷却して、過熱水蒸気生成装置100の損傷などを防ぐことができる。
【0064】
上記の通り前工程及び後工程により熱処理された被処理物Wは処理部6から取り出される。そして、未処理の被処理物Wが処理部6に収容された後に、上記と同様に、前工程及び後工程が行われる。
【0065】
また、本実施形態の過熱水蒸気生成装置100は、後工程において、第1流量調整弁制御部73が第1流量調整弁4の開状態とし、第2流量調整弁制御部74が第2流量調整弁5を開状態とすることで、過熱水蒸気生成部3に飽和水蒸気及び他の気体の両方を供給することができる。このとき、過熱水蒸気生成部3に供給される飽和水蒸気及び他の気体の流量を調整することにより、過熱水蒸気及び他の気体からなる混合気体の混合比を調整することができる。このように飽和水蒸気及び他の気体を混合して加熱するものの場合には、混合される流路を可及的に長くして均一に混合させる観点から、中空導体管が螺旋状をなすものが望ましい。
後工程において飽和水蒸気及び他の気体の両方を過熱水蒸気生成部3に供給することによって、過熱水蒸気を用いた処理とは異なる別の処理を行うことができる。例えば、他の気体が空気又は窒素の場合には、被処理物Wの酸化処理や窒化処理が可能となる。また、混合比を調整することにより、被処理物Wの酸化度や窒化度をコントロールすることができる。
【0066】
このように構成した過熱水蒸気生成装置100によれば、第1状態では過熱水蒸気生成部3により過熱水蒸気が生成され、第2状態では過熱水蒸気生成部3が気体加熱部として機能して他の気体が加熱されるので、過熱水蒸気を用いて被処理物Wを処理する前に、加熱された他の気体を用いて被処理物Wを加熱することによって、過熱水蒸気が液化して被処理物Wに結露が生じることを防ぐことができる。また、過熱水蒸気生成部3を気体加熱部として機能させているので、被処理物Wを加熱する別の加熱装置を不要とすることができ、被処理物Wの結露を防ぐためのシステム構成を簡単化することができると共に、そのシステムを小型化することができる。
【0067】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態では、第1流量調整弁制御部73が第1流量調整弁4を閉状態にして第2状態となるように構成しているが、第1加熱温度制御部71が飽和水蒸気生成部2の誘導コイルへの電力供給を停止して第2状態となるように構成しても良い。このとき、第1流量調整弁4は閉状態であっても良いし、開状態であっても良いが、第1流量調整弁4を閉状態としておけば、他の気体が飽和水蒸気生成部2内に逆流することを防ぐことができる。
【0068】
また、前記実施形態では、過熱水蒸気生成部3は、前段に設けられた飽和水蒸気生成部2により生成された飽和水蒸気を受け取る構成としているが、飽和水蒸気生成部2が飽和水蒸気をそれ以上に加熱して過熱水蒸気を生成するものの場合には、過熱水蒸気を受け取り、受け取った過熱水蒸気をさらに加熱して、過熱水蒸気利用部に供給する所望温度の過熱水蒸気を生成する構成としても良い。
【0069】
さらに、前記実施形態の構成に加えて、過熱水蒸気生成装置100は、処理部6を通過した利用済み蒸気又は他の気体を過熱水蒸気生成部3に戻す戻し流路を有するものであっても良い。この戻し流路は、一端が処理部6(例えば被処理物収容部の排出ポート)に接続され、他端が飽和水蒸気供給流路L2における流量調整弁の下流側(過熱水蒸気生成部3側)、気体供給流路L3又は過熱水蒸気生成部3に接続されている。このように利用済みの蒸気又は他の気体を再利用することによって熱量損失を抑えることができる。
【0070】
その上、
図8に示すように、過熱水蒸気生成装置100は、主座変圧器の一次コイル(誘導コイル2C)及びT座変圧器の1次コイル(誘導コイル3C)をスコット結線する第1接続状態と、前記誘導コイル2C及び前記誘導コイル3Cをそれぞれ独立した回路とする第2接続状態とを切り替える切り替え機構9を備えたものであっても良い。
【0071】
第1接続状態は、主座変圧器の一次コイル(誘導コイル2C)の中点に接続された中点端子2Mと、T座変圧器の1次コイル(誘導コイル3C)の一端側端子3Tとを接続してスコット結線した状態である。一方、第2接続状態は、スコット結線を解線して、第2制御機器82を含むT座変圧器の1次コイル(誘導コイル3C)の両側端子を三相交流電源10(
図8では、U相及びV相)に接続した状態である。なお、第2接続状態では、主座変圧器の1次コイル(誘導コイル2C)の両側端子は、三相交流電源10のV相及びW相に接続されたままである。
【0072】
切り替え機構9としては、例えば電磁接触器や半導体スイッチ素子を用いて構成されており、制御装置7により制御される。また、この構成では、第2制御機器82は、T座変圧器の1次コイル(誘導コイル3C)に流れる電流を一定値以下に制御する定電流制御機能を有する。
【0073】
過熱水蒸気を生成する第1状態と、過熱水蒸気及び他の気体の混合気体を加熱する第3状態との場合には、切り替え機構9により、第1接続状態(スコット結線状態)とする。一方、他の気体のみを加熱する第2状態の場合には、切り替え機構9により、第2接続状態(T座側回路と主座側回路とが独立した回路状態)とする。なお、第2接続状態においては、第2制御機器82により誘導コイル3Cを流れる電流を制御して、他の気体を加熱運転しつつ、第1制御機器81により誘導コイル2Cを流れる電流を制御して、飽和水蒸気発生部2を保温待機させることができる。
【0074】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。