特許第6472445号(P6472445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アトテツク・ドイチユラント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許6472445-電気銅めっき方法 図000005
  • 特許6472445-電気銅めっき方法 図000006
  • 特許6472445-電気銅めっき方法 図000007
  • 特許6472445-電気銅めっき方法 図000008
  • 特許6472445-電気銅めっき方法 図000009
  • 特許6472445-電気銅めっき方法 図000010
  • 特許6472445-電気銅めっき方法 図000011
  • 特許6472445-電気銅めっき方法 図000012
  • 特許6472445-電気銅めっき方法 図000013
  • 特許6472445-電気銅めっき方法 図000014
  • 特許6472445-電気銅めっき方法 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472445
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】電気銅めっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/18 20060101AFI20190207BHJP
   C25D 3/38 20060101ALI20190207BHJP
   C25D 5/02 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   C25D5/18
   C25D3/38 101
   C25D5/02 B
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-525864(P2016-525864)
(86)(22)【出願日】2014年10月9日
(65)【公表番号】特表2016-538419(P2016-538419A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】EP2014071630
(87)【国際公開番号】WO2015058963
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2017年8月3日
(31)【優先権主張番号】13189652.4
(32)【優先日】2013年10月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】300081877
【氏名又は名称】アトテツク・ドイチユラント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス マチョセク
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ マン
(72)【発明者】
【氏名】パメラ セブラ
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−522962(JP,A)
【文献】 特開2003−213489(JP,A)
【文献】 特開2003−060349(JP,A)
【文献】 特開2011−017036(JP,A)
【文献】 特表2014−508859(JP,A)
【文献】 特表2009−531542(JP,A)
【文献】 特表2000−500529(JP,A)
【文献】 特表2013−503968(JP,A)
【文献】 特表2016−503461(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0011746(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/18
C25D 3/38
C25D 5/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気銅めっき方法において、以下の順で、
(i)ブラインドマイクロビアと、トレンチ形成用の開口部を有するパターンレジスト層と、を含む基板を提供するとともに、レベラー添加剤を含む酸性水溶液の銅電解液を提供し、前記レベラー添加剤は、ウレイレンポリマー、ポリアルキレングリコール残基で官能化されたアミノカルボン酸、ポリアルキレンイミン残基で官能化されたアミノカルボン酸、ポリビニルアルコール残基で官能化されたアミノカルボン酸、ポリアルキレングリコール残基で官能化されたペプチド、ポリアルキレンイミン残基で官能化されたペプチドおよびポリビニルアルコール残基で官能化されたペプチドからなる群から選択され、
(ii)前記基板を、少なくとも1つの陽極に接触している陰極として動作させ、前記基板を、前記酸性水溶液の銅電解液に接触させ、
(iii)前記基板に、1つの順方向電流パルスおよび1つの逆方向電流パルスからなる少なくとも1つの電流パルス・サイクルを含む電流を与え、前記少なくとも1つの電流パルス・サイクルの間、前記基板に与えられる順方向電荷に対する逆方向電荷の割合は、0.1%から5%の範囲であり、
前記少なくとも1つの電流パルス・サイクルの間の前記順方向電流パルスの持続時間は、10msから1000msの範囲であり、
前記少なくとも1つの電流パルス・サイクルの間の前記逆方向電流パルスの持続時間は、0.05msから1msの範囲であり、
前記少なくとも1つの電流パルス・サイクルの間の前記順方向電流パルスの電流密度は、0.5A/dmから10A/dmの範囲であり、
前記少なくとも1つの電流パルス・サイクルの間の前記逆方向電流パルスの電流密度は、20A/dmから100A/dmの範囲であり、
このことにより、前記ブラインドマイクロビアに銅を充填し、矩形の断面形状を有する銅のトレンチを形成する、
電気銅めっき方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電流パルス・サイクルの間、前記基板に与えられる前記順方向電荷に対する前記逆方向電荷の割合は、0.5%から4%の範囲である、
請求項1に記載の電気銅めっき方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの電流パルス・サイクルの間、前記基板に与えられる前記順方向電荷に対する前記逆方向電荷の割合は、1%から3%の範囲である、
請求項1または2に記載の電気銅めっき方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの陽極は、不活性陽極である、
請求項1から3のいずれかに記載の電気銅めっき方法。
【請求項5】
前記酸性水溶液の銅電解液は、金属イオンレドックス系をさらに含む、
請求項1から4のいずれかに記載の電気銅めっき方法。
【請求項6】
前記金属イオンレドックス系は、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンからなる、
請求項5に記載の電気銅めっき方法。
【請求項7】
第二鉄イオンの濃度は、0.1g/lから4.0g/lの範囲である、
請求項5または6に記載の電気銅めっき方法。
【請求項8】
前記酸性水溶液の銅電解液は、金属レドックス系を含み、前記少なくとも1つの陽極は、不活性陽極である、
請求項5から7のいずれかに記載の電気銅めっき方法。
【請求項9】
前記レベラー添加剤の濃度は、0.01mg/lから200mg/lの範囲である、
請求項1から8のいずれかに記載の電気銅めっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板およびIC基板などの製造において、ブラインドマイクロビアの充填およびトレンチのめっきを組み合わせた電気銅めっき方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅の電気めっきは、プリント基板およびIC基板のような電子部品の製造における一般的な技術である。ブラインドマイクロビア(BMV)およびパターンレジスト層における凹部構造のような、多層積層体内の種々のタイプの構造は、銅で完全に充填される必要がある。本願明細書では、パターンレジスト層の銅で充填された凹部構造は、トレンチと称される。
【0003】
電子部品におけるこの種の構造は、小型化が進行しているため、銅の電気めっきに対する要求は増加している。BMVの直径は減少し、同時に、BMVのアスペクト比は増加する。トレンチの線幅および線間距離は、50μmまで減少し、さらに10μmまたは5μm未満にまで減少する。
【0004】
したがって、銅で充填されたBMVに対する要求は増加している。同時に、トレンチの断面形状に対する要求もまた増加している。スキー・スロープ形状のトレンチ(2)(図1)およびラウンド形状のトレンチ(3)(ラウンドエッジ)(図2)のような断面形状のトレンチは、例えば電流伝播の観点でもはや十分ではない。基板表面(1)上の矩形の断面形状のトレンチ(4)が求められている(図3)。
【0005】
経済的な理由により、BMVおよびトレンチのような異なる構造を1つのステップで電気めっきし、BMVの必要な充填品質を達成し、矩形の断面形状のトレンチを得ることも非常に求められている。
【0006】
逆パルスめっき条件下で電気めっきによってBMVに銅を充填することは、例えばUS2009/0301889A1に開示されている。この文献に開示されている方法では、BMVに銅を十分に充填することはできるが、同時にめっきされたトレンチの断面線形状は、必ずしも十分ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、電気銅めっきによってBMVの充填および矩形の断面形状のトレンチのめっきを同時に行う方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、電気銅めっき方法によって解決され、本発明の方法では、以下の順で、
(i)ブラインドマイクロビアと、トレンチ形成用の開口部を有するパターンレジスト層と、を含む基板を提供するとともに、酸性水溶液の銅電解液を提供し、
(ii)前記基板を、少なくとも1つの陽極に接触している陰極として動作させ、前記基板を、レベラー添加剤を含む前記酸性水溶液の銅電解液に接触させ、レベラー添加剤により、直流めっき条件下でラウンドの断面形状を有する銅のトレンチを形成し、
(iii)基板に、1つの順方向電流パルスおよび1つの逆方向電流パルスからなる少なくとも1つの電流パルス・サイクルを含む電流を与え、前記少なくとも1つのパルス・サイクルの間、基板に与えられる順方向電荷に対する逆方向電荷の割合は、0.1から5%の範囲であり、
このことにより、ブラインドマイクロビアに銅を充填して、矩形の断面形状を有する銅のトレンチを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】不所望のスキー・スロープ形状を有するトレンチの断面を図式的に示す。
図2】ラウンド形状を有するトレンチの断面を図式的に示す。
図3】所望の矩形形状を有するトレンチの断面を図式的に示す。
図4】実施例1から得られた不所望のスキー・スロープ形状を有するトレンチの断面の顕微鏡写真を示す。
図5】実施例2から得られた不所望のスキー・スロープ形状を有するトレンチの断面の顕微鏡写真を示す。
図6】実施例3から得られたラウンド形状を有するトレンチの断面の顕微鏡写真を示す。
図7】実施例4から得られた不所望のスキー・スロープ形状を有するトレンチの断面の顕微鏡写真を示す。
図8】実施例5から得られた所望の矩形形状を有するトレンチの断面の顕微鏡写真を示す。
図9】実施例6から得られたラウンド形状を有するトレンチの断面の顕微鏡写真を示す。
図10】実施例7から得られた所望の矩形形状を有するトレンチの断面の顕微鏡写真を示す。
図11】実施例8から得られた不所望のスキー・スロープ形状を有するトレンチの断面の顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による電気銅めっき方法は、BMVの充填および矩形の断面形状を有するトレンチの形成を同時に行うことに関する。
【0011】
この方法は、(a)(b)の組み合わせに基づく。
(a)酸性水溶液の銅めっき浴が、DC(直流)めっき条件下で(断面が)ラウンド形状を有するトレンチ(図2)を製造するレベラー添加剤を含むこと、好ましくは、金属イオンレドックス系を含むこと。
(b)長い順方向パルスおよび非常に短い逆方向パルスからなる少なくとも1つの電流パルス・サイクルを含む電流を与えること。
【0012】
銅を非導電性の基板表面(1)に電気めっきするために、非導電性の表面に形成される導電性のシード層が、銅の電気めっきを開始するのに必要である。一般に、シード層は、例えば銅の無電解析出によって形成される。シード金属層は、導電性であり、粘着性を与え、その上側表面の露出部分に対する電気めっきを可能にする。
【0013】
BMVの誘電体壁は、クリーニング・プロセスを受け、機械穿孔、レーザー穿孔、プラズマエッチングおよび放電加工のような方法に由来するスミアおよび他の残留物が除去される。クリーニング・プロセスは、ウェット・ケミカル・デスミアまたはプラズマ・デスミア・プロセスとすることができる。この種の方法は、公知技術である(例えば、C. F. Coombs, Jr.著の「Printed Circuits Handbook」第5版、2001、第28.4章、28.5〜28.7頁)。
【0014】
ウェット・ケミカル・デスミア・プロセスは、a)誘電体層の誘電体表面を増大するステップと、b)誘電体層の誘電体表面を過マンガン酸塩溶液でエッチングするステップと、c)化学的還元によって誘電体層の誘電体表面からMnOを除去するステップと、を含む。
【0015】
次に、BMVの誘電体表面は、無電解銅めっきのような従来の方法によって、または、ダイレクトめっき方法によって活性化される。この種の方法も、公知技術である(例えば、C. F. Coombs, Jr.著の「Printed Circuits Handbook」第5版、2001、第28.5章、28.7〜28.10頁)。
【0016】
本発明の方法による酸性水溶液の銅めっき浴は、銅イオン源、酸、有機ブライトナー添加剤、キャリア添加剤、ハロゲン化物イオンおよびレベラー添加剤を含む。前記レベラー添加剤により、DCめっき条件下でラウンド形状を有するトレンチを製造する。好適なさらなる構成要素は、金属イオンレドックス系および界面活性剤である。
【0017】
銅イオンは、水溶性銅塩としてめっき浴に加えられる。好ましくは、銅イオン源は、硫酸銅五水和物、硫酸銅溶液または銅のメタンスルホン酸塩から選択される。めっき浴内の銅イオンの濃度は、15から75g/lであり、より好ましくは、40から60g/lである。
【0018】
少なくとも1つの酸は、硫酸、フルオロホウ酸およびメタンスルホン酸からなる群から選択される。めっき浴内の少なくとも1つの酸の濃度は、20から400g/lであり、より好ましくは、40から300g/lである。
【0019】
硫酸が酸として用いられる場合は、硫酸は、50から96重量%溶液の形で加えられる。最も好ましくは、60から120g/lの50重量%溶液の硫酸が、めっき浴に加えられる。
【0020】
有機ブライトナー添加剤は、チオール化合物、硫化物、二硫化物および多硫化物化合物のような硫黄含有化合物から選択される(US4975159)。好適なブライトナー添加剤は、3−(ベンゾチアゾール−2−チオ)−プロピルスルホン酸、3−メルカプトー1−プロパンスルホン酸、エチレンジチオジプロピルスルホン酸、ビス−(p−スルホフェニル)−ジスルフィド、ビス−(ω−スルホブチル)−ジスルフィド、ビス−(ω−スルホヒドロキシプロピル)−ジスルフィド、ビス−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド、ビス−(ω−スルホプロピル)−スルフィド、メチル−(ω−スルホプロピル)−ジスルフィド、メチル−(ω−スルホプロピル)−トリスルフィド、O−エチル−ジチオ炭酸−S−(ω−スルホプロピル)−エステル、チオグリコール酸、チオホス−ホリック酸−O−エチル−ビス−(ω−スルホプロピル)−エステル、チオリン酸−トリス−(ω−スルホプロピル)−エステルおよびそれらの対応する塩類からなる群から選択される。酸性水溶液の銅めっき浴に存在するブライトナー添加剤の濃度は、0.005mg/lから200mg/lであり、より好ましくは、0.01から100mg/lであり、最も好ましくは、0.05から50mg/lである。
【0021】
酸性の銅めっき浴は、少なくとも1つのキャリア添加剤をさらに含み、このキャリア添加剤は、通常、ポリアルキレングリコール化合物(US4975159)であり、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ステアリン酸ポリグリコールエステル、オレイン酸ポリグリコールエステル、ステアリルアルコールポリグリコールエステル、ノニルフェノールポリグリコールエーテル、オクタノールポリアルキレングリコールエーテル、オクタンジオール−ビス−(ポリアルキレングリコールエーテル)、ポリ(エチレングリコール−ラン−プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)からなる群から選択される。前記キャリア添加剤の濃度は、0.005g/lから20g/lであり、より好ましくは、0.01g/lから5g/lである。
【0022】
ハロゲン化物イオンは、アルカリ金属塩または対応する酸の形で酸性の銅めっき浴に加えることができる。めっき浴内のハロゲン化物イオンの濃度は、好ましくは、20から200mg/lであり、より好ましくは、30から100mg/lであり、最も好ましくは、35から75mg/lである。塩化物イオンは、最も好適なハロゲン化物イオンであり、塩化ナトリウムおよび希塩酸は、塩化物イオンのための最も好適なイオン源である。
【0023】
銅のめっき浴内に存在するレベラー添加剤が、DC(直流)めっき条件下で、「ラウンド形状」(図2)と称される銅充填トレンチの断面形状を製造する場合、銅めっきのトレンチ(3)の所望の矩形の断面形状(図3)は、本発明による方法によって達成される。DCめっき条件下で「スキー・スロープ形状の」トレンチ(図1)を製造するレベラー添加剤は、本発明による方法のための単一のレベラー添加剤として適切ではない。
【0024】
「DCめっき条件下で」ラウンドの(断面)形状を有するトレンチを製造するレベラー添加剤を決定するための適切なDCめっき条件は、例えば、1から5A/dmの範囲の電流密度を有する直流を、30から60分間、20から30℃で、銅めっきされたトレンチを有する基板に与えることである。
【0025】
当業者は、DCめっき条件下で「スキー・スロープ形状」および「ラウンド形状」のトレンチを製造するレベラー添加剤を区別することができる(実施例1、3、6)。
【0026】
DCめっき条件下で「ラウンド形状の」トレンチ(3)を製造し、本発明による方法に適しているレベラー添加剤は、例えば、ウレイレンポリマーである。
【0027】
この種のウレイレンポリマーの1つの特定タイプは、EP12194261に開示され、化学式(I)および/または化学式(II)に従う構造要素を含む。
【化1】
【化2】
R1、R2、R5およびR6は、それぞれ、水素、1から10の炭素原子を有する置換または非置換炭化水素残基、好ましくは、メチル、エチル、ヒドロキシエチルまたは−CHCH(OCHCH−OH(aは0から4の整数)からなる群から選択され、
R3およびR4は、それぞれ、(CH(pは2から12の整数)からなる群から選択され、好ましくは、エチレン基またはプロピレン基であり、または−[CHCHO]−CHCH−基(mは1から40の整数)であり、好ましくは、−(CH−O−(CH−基または−(CH−O−(CH−O−(CH−基であり、
Zは同一でも異なっていてもよく、OまたはSを表し、好ましくは、Zは同一であり、最も好ましくは、ZはOであり、
xおよびyは同一でも異なっていてもよく、好ましくは、1、2および3から選択される整数であり、より好ましくは、xおよびyの両方は2である。
【0028】
また、ウレイレンポリマー・ポリ[ビス(2−クロロエチル)エーテル]−アルト−1,3−ビス[3−ジメチルアミノ)プロピル]尿素(CAS−No.68555−36−2)は、DCめっき条件下でめっきすると、ラウンド形状を有するトレンチを形成する。
【0029】
DCめっき条件下で所望の「ラウンド形状の」トレンチを製造し、本発明による方法に適しているレベラー添加剤のための他の実施例は、ペプチドおよび/またはアミノ酸であり、これは、ポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレンイミンおよび/またはポリビニルアルコール残基で官能化される。この種のレベラー添加剤は、US2011/0011746A1に開示されている。
【0030】
DCめっき条件下で「スキー・スロープ形状の」トレンチ(2)を製造し、本発明による方法の単一のレベラー添加剤として好適ではないレベラー添加剤は、例えば、ビニルピロリドンモノマーからなるポリビニルピロリドンおよびコポリマーであり、例えば、Luviquat(R)FC370、Luviquat(R)MS370、Luviquat(R)HoldおよびLuviquat(R)Excellence(BASF SEの製品)、Luviskol(R)Plus(ポリビニル−ε−カプロラクタム、BASF SEの製品)、ポリビニルピリジン、5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−チオールおよび他の分子アゾール誘導体である。
【0031】
本発明の一実施形態では、酸性水溶液の銅めっき浴は、DCめっき条件下で「ラウンド形状の」トレンチを製造する少なくとも1つのレベラー添加剤を含み、DCめっき条件下で「スキー・スロープ形状」または矩形形状のトレンチを製造する少なくとも1つのレベラー添加剤が組み合わせられる。
【0032】
レベラー添加剤は、0.01から200mg/lの量で、より好ましくは、0.05から100mg/lの量で、最も好ましくは、0.1から50mg/lの量で銅めっき浴に加えられる。
【0033】
本発明によるめっき方法は、銅めっきの間、基板に与えられる電流のために定義済みのパラメータを利用する。
【0034】
前記電流は、1つの順方向電流パルスおよび1つの逆方向電流パルスからなる少なくとも1つの電流パルス・サイクルを含む。前記基板に与えられる前記電流は、電荷として表すこともでき、電荷は、アンペアで与えられる電流に、前記電流が前記基板に与えられている間の時間(ミリ秒)を乗算することによって得られる。したがって、前記電荷の単位は、A・msである。
【0035】
逆方向電流パルスの期間は、前記少なくとも1つの電流パルス・サイクルの間の順方向パルスの期間の、好ましくは、5%以下であり、より好ましくは、1%以下であり、最も好ましくは、0.5%以下である。
【0036】
前記少なくとも1つの電流パルス・サイクルの間の順方向電流パルスの期間は、好ましくは、10から1000msであり、より好ましくは、20から500msであり、最も好ましくは、40から200msである。
【0037】
前記少なくとも1つの電流パルス・サイクルの間の順方向電流パルスの電流密度は、好ましくは、0.5から10A/dmであり、より好ましくは、1から8A/dmであり、最も好ましくは、2から6A/dmである。
【0038】
前記少なくとも1つの電流パルス・サイクルの間の逆方向電流パルスの期間は、好ましくは、0.05から1msであり、より好ましくは、0.1から0.8msであり、最も好ましくは、0.1から0.5msである。
【0039】
前記少なくとも1つの電流パルス・サイクルの間の逆方向電流パルスの電流密度は、好ましくは、5から100A/dmであり、より好ましくは、10から80A/dmであり、最も好ましくは、20から60A/dmである。
【0040】
本願明細書では、「順方向電荷」FCは、前記少なくとも1つの電流パルス・サイクルの間、基板に与えられる順方向パルスの電流(アンペア)に、前記順方向パルスの持続時間(ミリ秒)を乗算することによって定義される。
【0041】
本願明細書では、「逆方向電荷」RCは、前記少なくとも1つの電流パルス・サイクルの間、基板に与えられる逆方向パルスの電流(アンペア)に、前記逆方向パルスの持続時間(ミリ秒)を乗算することによって定義される。
【0042】
本願明細書では、「前記少なくとも1つの電流パルス・サイクルの間、基板に与えられる順方向電荷に対する逆方向電荷の割合」FRCFCは、基板に与えられる「逆方向電荷」RCおよび「順方向電荷」FCの比率として定義され、100を乗算し、「%」で与えられる。
FRCFC=RC/FC×100
【0043】
本発明による方法に従う「前記少なくとも1つの電流パルス・サイクルの間、基板に与えられる順方向電荷に対する逆方向電荷の割合」は、0.1から5%であり、好ましくは、0.5から4%であり、より好ましくは、1から3%である。
【0044】
本発明の一実施形態では、基板に与えられる電流は、1つの順方向電流パルスおよび1つの逆方向電流パルスからなる前記少なくとも1つの電流パルス・サイクルの前および/または後に、基板に与えられる直流(DCめっき条件)をさらに含む。本実施形態では、BMVの充填をさらに改良することができる。
【0045】
本発明の他の実施形態では、基板に与えられる電流は、1つの順方向電流パルスおよび1つの逆方向電流パルスからなる少なくとも1つのさらなる電流パルス・サイクルを含み、前記少なくとも1つのさらなる電流パルス・サイクルにおいて、前記基板に与えられる順方向電荷に対する前記逆方向電荷の割合は、5%超である。前記さらなる電流パルス・サイクルは、少なくとも1つの電流パルス・サイクルの前および/または後に適用可能であり、基板に与えられる順方向電荷に対する逆方向電流の割合は、0.1から5%である。本実施形態では、BMVの充填をさらに改良することができる。
【0046】
本発明のさらに他の実施形態では、基板に与えられる電流は、1つの順方向電流パルスおよび1つの逆方向電流パルスからなる少なくとも1つのさらなる電流パルス・サイクルおよび基板に与えられる直流(DCめっき条件)をさらに含み、前記少なくとも1つのさらなる電流パルス・サイクルの間、前記基板に与えられる前記逆方向電流の割合は、5%超である。
【0047】
不活性陽極および可溶性陽極の両方を、本発明による方法の陽極として用いることができる。例えば5A/dmのより高い電流密度を基板に与えるとき、可溶性陽極を不動態化する(passivate)ことができる。
【0048】
したがって、好ましくは、少なくとも1つの不活性陽極が、少なくとも1つの可溶性陽極の代わりに用いられる。好適な不活性陽極は、例えば、イリジウム酸化物および/または白金族金属元素またはその合金で被覆されているチタン陽極である。
【0049】
特に好ましくは、酸性水溶液の銅めっき浴において、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンからなる金属イオンレドックス系が存在する。この場合、0.1g/lから4.0g/l、好ましくは、0.5から3.0g/l、最も好ましくは、0.8から1.5g/lの第二鉄イオンが、めっき浴に存在する。めっき浴内の第一鉄イオンの濃度は、好ましくは、4から20g/lであり、より好ましくは、5から14g/lであり、最も好ましくは、6から8g/lである。
【0050】
第一鉄イオンが酸性の銅めっき浴成分に加えられるだけで、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンからなる金属イオンレドックス系も自動的に形成される。
【0051】
最も好ましくは、少なくとも1つの不活性陽極が、金属イオンレドックス系とともに、本発明による方法のための酸性水溶液の銅電解液において用いられる。前記組み合わせによって、本発明による銅めっき方法の所望の安定動作が可能となる。
【0052】
不活性陽極を使用する場合、銅イオンは、めっき装置に接続された別の容器(「銅イオン発生器」)内の第二鉄イオンの存在下で、酸化により金属銅を溶解することによって、酸性銅イオンの使用中に補充される。金属銅は、例えば、ペレット、ピースおよび球体の形で提供可能である。同時に、第二鉄イオンは、第一鉄イオンに還元される。銅イオンおよび第一鉄イオンは、めっき装置にポンプを用いて戻される。
【0053】
本発明による方法は、コンベヤーによる水平および(コンベヤーによる)垂直のめっき装置において動作可能である。
【0054】
本発明による電気銅めっき方法は、BMVの充填および矩形の断面形状を有するトレンチのめっきを同時に行うのに適している。
【実施例】
【0055】
全実施例にわたって、60g/lの銅イオン、80g/lの硫酸、4ml/lのブライトナー添加剤(有機硫黄化合物)、キャリア添加剤(ポリエチレングリコール)および40mg/lの塩化物イオンを含む浴貯蔵液を使用した。種々のレベラー添加剤を、前記貯蔵液にめっき実験の前に加えた。
【0056】
全実施例にわたって使用した基板(1)は、直径100μmおよび深さ90μmのBMVを有する強化エポキシ樹脂基層および幅50から200μmのトレンチ開口を有するパターンレジスト層であった。銅によって電気めっきされるべき基板(1)の全表面は、めっきベースとして銅を含むものであった。
【0057】
3つの異なるめっき条件が銅充填トレンチの形状に与える影響を調査した。
1.DC(直流めっき条件)
2.従来のRPP(逆パルスめっき)
3.本発明によるRPP
【0058】
実施例1(比較例)
6ml/lのLuviskol(R)Plus(ポリビニル−ε−カプロラクタム、BASF SEの製品)を、めっき浴貯蔵液に加えた。
【0059】
50から200μmの範囲の幅を有するトレンチに対して、銅めっきおよびBMV充填を、DCめっき条件(1.3A/dm、60分のめっき時間、25℃)で同時に行った。
【0060】
図4は、めっき後に基板から得られた断面の顕微鏡写真を示す。DCめっき条件を適用すると、トレンチは不所望の「スキー・スロープ形状」を有する。
【0061】
実施例2(比較例)
同一のトレンチ構造とともにBMVを、逆(電流)パルスめっき条件下で、実施例1において使用しためっき浴構成においてめっきした。パルス・シーケンスの各サイクルは、160ms間の1.3A/dmの単一の順方向パルスと、その後の0.2msの期間を有する35A/dmの単一の逆方向パルスと、からなるものであった。前記電流パルス・サイクルの間、基板に与えられる順方向電荷に対する逆方向電荷の割合は、3.4%であった。
【0062】
図5は、めっき後に基板から得られた断面の顕微鏡写真を示す。本発明による逆(電流)パルスめっき条件を適用すると、BMVの充填は十分であるが、トレンチは、不所望の「スキー・スロープ形状」を有する。
【0063】
実施例3(比較例)
4ml/lのポリエチレングリコール残基で官能化された合成的に製造されたアミノ酸を、めっき浴貯蔵液に加えた。この種のレベラー添加物は、US2011/0011746A1およびF. M. Veronese著の「Peptide and protein PEGylation: a review of problems and solutions」(Biomaterials 22 (2001) 405-417)に開示されている。
【0064】
50から200μmの幅を有するトレンチに対して、めっきおよびBMV充填を、DCめっき条件(5A/dm、33分のめっき時間、30℃)で同時に行った。
【0065】
図6は、めっき後に基板から得られた断面の顕微鏡写真を示す。DCめっき条件を適用すると、トレンチは所望の「ラウンド形状」を有する。したがって、使用されたレベラー添加剤は、本発明による電気銅めっき方法における適切なレベラー添加剤に従っている。
【0066】
実施例4(比較例)
同一のトレンチ構造のめっきおよび同一のBMVの充填を、実施例3において使用しためっき浴構成で、逆(電流)パルスめっき条件下で行った。パルス・シーケンスの各サイクルは、80ms間の5A/dmの単一の順方向パルスと、その後の1msの期間を有する60A/dmの単一の逆方向パルスと、からなるものであった。
【0067】
したがって、前記電流パルス・サイクルの間、基板に与えられる順方向電荷に対する逆方向電荷の割合は、各パルス・サイクル内で15.0%であり、与えられるRPPパラメータは、従来通りであるとみなされる。
【0068】
図7は、めっき後に基板から得られた断面の顕微鏡写真を示す。BMV充填は十分であるが、トレンチは不所望の「スキー・スロープ形状」を有する。
【0069】
実施例5(発明例)
同一のトレンチ構造のめっきおよび同一のBMVの充填を、実施例3および実施例4において使用しためっき浴構成で、本発明による逆(電流)パルスめっき条件下で行った。パルス・シーケンスの各サイクルは、80ms間の5A/dmの単一の順方向パルスと、その後の0.3msの期間を有する60A/dmの単一の逆方向パルスと、からなるものであった。前記電流パルス・サイクルの間、基板に与えられる順方向電荷に対する逆方向電荷の割合は、4.5%であった。
【0070】
図8は、めっき後に基板から得られた断面の顕微鏡写真を示す。本発明による逆(電流)パルスめっき条件を適用すると、BMV充填は十分であり、トレンチは所望の「矩形形状」を有する。
【0071】
実施例6(比較例)
6ml/lのウレイレンポリマーを、めっき浴貯蔵液にレベラー添加剤として加えた。前記ウレイレンポリマーの製造は、WO2011/029781A1(製造実施例12)に開示されている。
【0072】
50から200μmの幅を有するトレンチに対して、めっきおよびBMV充填を、DCめっき条件(5A/dm、33分のめっき時間、30℃)で同時に行った。
【0073】
図9は、めっき後に基板から得られた断面の顕微鏡写真を示す。DCめっき条件を適用すると、トレンチは、所望の「ラウンド形状」を有する。
【0074】
実施例7(発明例)
同一のトレンチ構造のめっきおよび同一のBMVの充填を、実施例6において使用しためっき浴構成(成分)で、本発明による逆(電流)パルスめっき条件下で行った。パルス・シーケンスの各サイクルは、160ms間の3.3A/dmの単一の順方向パルスと、その後の0.2msの期間を有する50A/dmの単一の逆方向パルスと、からなるものであった。前記電流パルス・サイクルの間、基板に与えられる順方向電荷に対する逆方向電荷の割合は、1.9%であった。
【0075】
図10は、めっき後に基板から得られた断面の顕微鏡写真を示す。本発明による逆パルスめっき条件を適用すると、BMV充填は十分であり、トレンチは所望の「矩形形状」を有する。
【0076】
実施例8(比較例)
同一のトレンチ構造のめっきおよび同一のBMVの充填を、実施例6において使用しためっき浴構成で、従来の逆(電流)パルスめっき条件下で行った。パルス・シーケンスの各サイクルは、100ms間の4.4A/dmの単一の順方向パルスと、その後の4msの期間を有する30A/dmの単一の逆方向パルスと、からなるものであった。前記電流パルス・サイクルの間、基板に与えられる順方向電荷に対する逆方向電荷の割合は、27%であった。
【0077】
図11は、めっき後に基板から得られた断面の顕微鏡写真を示す。BMV充填は十分ではなく、トレンチは不所望の「スキー・スロープ形状」を有する。
【0078】
表1には、実施例1〜8の条件および結果がまとめられる。
【0079】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11