特許第6472458号(P6472458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6472458半導体部品を覆う封止セメント材を有する半導体モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472458
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】半導体部品を覆う封止セメント材を有する半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20190207BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20190207BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20190207BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   H01L23/30 Z
   H01L25/04 C
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-550968(P2016-550968)
(86)(22)【出願日】2014年10月14日
(65)【公表番号】特表2016-535464(P2016-535464A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】EP2014072012
(87)【国際公開番号】WO2015067441
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2016年6月29日
(31)【優先権主張番号】102013112267.1
(32)【優先日】2013年11月7日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】アイゼレ ロナルド
【審査官】 平林 雅行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−340718(JP,A)
【文献】 特開2004−286491(JP,A)
【文献】 特表2008−502564(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0068474(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0328007(US,A1)
【文献】 特開平10−313134(JP,A)
【文献】 特開2013−225556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/28−23/31
H01L 23/34−23/36
H01L 23/373−23/427
H01L 23/44
H01L 23/467−23/48
H01L 25/00−25/07
H01L 25/10−25/11
H01L 25/16−25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体部品(20)を覆う、グロブトップとして提供される封止材(30)を有する半導体モジュール(10)であって、
前記封止材(30)は、基本的な生の材料である酸化マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム又はリン酸マグネシウムから生成されるセメントの硬化物からなることを特徴とする半導体モジュール(10)。
【請求項2】
前記封止材(30)は、少なくとも部分に前記半導体部品(20)に接続されるボンドワイヤ(40)を封止することを特徴とする請求項1に記載の半導体モジュール(10)。
【請求項3】
前記セメントは、骨材として、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウム及び/又は窒化シリコンをさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体モジュール(10)。
【請求項4】
前記セメントは、前記セメントに分散された繊維状構成要素をさらに含むことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の半導体モジュール(10)。
【請求項5】
前記封止材(30)に物理接続される少なくとも1つの冷却素子(80,80a,80b,80c)を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の半導体モジュール(10)。
【請求項6】
前記冷却素子(80,80a,80b,80c)は、空冷又は液冷冷却素子であることを特徴とする請求項に記載の半導体モジュール(10)。
【請求項7】
前記半導体モジュールは、パワーエレクトロニクスサブアセンブリであることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の半導体モジュール(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体を覆う封止材を有する半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
US7,034,660B2は、建築材料内での変化を示すパラメータを検出するために、コンクリート又は他のセメント含有材料に埋め込まれた無線センサを開示する。センサは、例えば、塩化物イオンの検出に適した電気機械センサでありうる。
【0003】
好ましくは、基板上の個々の半導体及び半導体サブアセンブリ(受動部品を含む)は、最近、一部の場合、二酸化ケイ素(SiO)のような有機充填材料を有する、エポキシ樹脂に基づく有機材によりもらたされる。例えば、US4,529,755は、ポリ機能性(poly−functional)エポキシ化合物、スチレンタイプのブロックコポリマー、エポキシ樹脂用の硬化剤及び無機フィラーを含むこの種の封止材を開示する。
【0004】
前記封止された部品及びサブアセンブリは、典型的には、集積されたパワーコンポーネントのための電気コネクタ及び冷却接続面を有する。硬化したエポキシ樹脂(強化されていない)は、典型的には、約60−80ppm/Kの熱膨張係数(CTE,coefficient of thermal expansion)を有する。基板(セラミック、金属及び有機コア回路基板)は、明らかに低い熱膨張係数(3−20ppm/K)を所持する。パワーエレクトロニクスの用途向けについては、高電力消費、かつ、ある程度、同様の高動作電圧、つまり絶縁要件の部品及びサブアセンブリに集中している。パワー電子部品及びサブアセンブリにおいて3−8ppm/KのCTEを有するAl、AlN又はSiからなるコアを有するセラミックス基板を主に使用することが慣習となっている。
【0005】
この文脈では、これらのサブアセンブリは、更に、有機物によって封止され、有機物は、弾性膨張及びモジュールの変形によるセラミック基板への不適応性を補償する必要がある。しかし、セラミック基板と封止材との不適応、及び機械的なせん断応力を確保することは、内部コンタクト、例えばボンドワイヤの剥離及び破壊を招く。
【0006】
低膨張率を示すフィラーで有機マトリックス材料を増やすことは、処理時の低い粘度及び危険な態様を招く。前記封止材は、高温で液化し、充填物がシュリンクホールに自由に出入りすることを確保するために高圧でツールシェルのキャビティにプレスされる。しかし、この処理は、充填物(シュリンクホール)の増加に比例してエラーが発生しやすく、高温(160℃−200℃)及び高圧(15−25MPa)により非常にエネルギーを消費する。
【0007】
最後に、有機マトリックスを有することの需要は、非常に低く、かつ通常、フィラー内容物の混合にもかかわらず、エポキシ樹脂の熱伝導率よりもわずかに高いのみである熱伝導率を生じる。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、熱応力に耐性がある半導体モジュール、特にパワーエレクトロニクスサブアセンブリを生成することを目的とする。
【0009】
前記目的は、請求項1の構成を有する半導体モジュールにより達成される。サブクレームは、本発明の有利な規定を反映する。
【0010】
本発明の内在する論理的根拠は、完全な無機物、半導体部品を封止するための金属フリー材料、として、セメントを用いることである。この文脈での注目点は、生じるために半導体と封止材料との間の適合された熱膨張(CTEは典型的には2.5−4ppm/K)にある。
【0011】
セメントは、酸化物材料であり、非有機及び非金属建築材料として、半導体を封止するための使用に有利である特性の組み合わせ、すなわち、高い電気絶縁率(20−100kV/mm)、相対的に良好な熱伝導率(1−2W/mK)及び低い熱膨張係数(2−10ppm/K)、を有する。セメントは、通常、天然の生の材料、つまり、石灰石、粘度及び泥灰土からなり、焼結性を向上させるために水晶砂及びイオン酸素含有基板を含みうる。本発明に好ましく用いられるセメントは、例えば、基本的な生の材料、すなわち、酸化マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム及びリン酸マグネシウムから有利に生成されうる。
【0012】
熱伝導率を増加させるため、パワー部品の無機封止材は、好ましくは、骨材として窒化アルミニウム及び/又は窒化ホウ素を含む。骨材としての酸化アルミニウム及び/又は酸化ケイ素は、また、(適用可能であれば、上記で特定された基板との組み合わせで)熱伝導率での有益な効果を有している。
【0013】
好ましくは、封止材は、封止された部品の境界面から離れる又は覆われずに表面に配置されるアルミニウム(Al)又は銅(Cu)からなる金属冷却素子への熱経路を確立するヒートブリッジである。化学結合により接着することが封止材にとって特に好ましい(つまり、特に良好な熱伝導率を有する物理接続)。したがって、基板ベースの冷却と封止材ベースの冷却とを組み合わせることにより、熱は複数の側に分散されうる。
【0014】
基板上の被覆されていない部品及び/又は被覆されていないサブアセンブリは、好ましくは、特にポリアクリレート分散からなる接着促進層(プライマー)を含みうる。前記分散は、(例えば、スプレーによる)薄い層としてサブアセンブリに適用され、封止される部品、及び封止材により覆われるその部分への基板の部品側の表面を覆う。
【0015】
セメントが典型的には配置された後に残留多孔性を有するため、水分耐性コーティングが提供されてもよい。この目的のために2つの戦略が適している:一方としては、恒久的にキャピラリーを密閉するために配置される低粘度保護剤でキャピラリーを充填する−特にケイ酸ナトリウム又はリチウムの水溶液がこの目的のために適している。又は、それを通じて全く又はわずかしか水分を通さない保護層でセメント表面を被覆する−特にエポキシ樹脂層(光沢塗装)を配置することは、この目的のために適している。
【0016】
半導体部品、基板及び封止との間の膨張差は、無機セメントの選択を通じて本発明に基づいて最小化され、これらの差は、共に排除されない。したがって、封止された体積内の温度勾配は、次に、セメント内の特に境界での半導体及び基板へのせん断引っ張りを生じる機械的な引っ張りを生じる。セメントは、圧縮応力に相対的に耐性があるが、引っ張り応力には敏感である。
【0017】
したがって、大きな体積への引っ張り応力を分配する骨材として生のセメント材に繊維を集積することが好ましく、よって、引っ張り応力耐性が増加する。総合すれば、これは、周期的な温度ストレスへの高い耐性につながる。セメントと同様に、適切な繊維は、電気的に非伝導性であり、セメントへの物理的な結合を生じすることができる。この目的のために、例えば、ガラス繊維、玄武岩繊維、ホウ素繊維、及びセラミック繊維のような無機繊維、例えば、炭化ケイ素繊維及び酸化アルミニウム繊維を用いることが習慣となっている。高融点有機繊維は、例えば、アラミド繊維のようなものと同様に用いられうる。
【0018】
物理的に結合するためのセメントの機能は、冷却素子へのセメント部を介したパワー散逸を受ける、半導体からの好ましい熱伝導を可能にする。これは、一方側又は−半導体から由来する−複数の側のいずれかでありうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明は、図面に示される特に好ましい例示的な実施形態に基づいてより詳細に示される。
図1図1は、その封止材がグロブトップとして提供される、第1の例示的な実施形態に係る本発明に係る半導体モジュールの概略的な図を示す。
図2図2は、機械‐電気接触リードを除く、封止材により完全に封止される、第2の例示的な実施形態に係る半導体モジュールの概略的な図を示す。
図3図3は、半導体の両側に配置される空冷のための冷却素子を有する第3の例示的な実施形態に係る半導体モジュールの概略的な図を示す。
図4図4は、半導体の両側に配置される水冷のための冷却素子を有する第4の例示的な実施形態に係る半導体モジュールの概略的な図を示す。
図5図5は、半導体の一方側に配置される空冷のための冷却素子、及び半導体の他方側に配置される水冷のための冷却素子を有する第5の例示的な実施形態に係る半導体モジュールの概略的な図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、その封止材がグロブトップ(glob−top)として提供される、第1の例示的な実施形態に係る本発明に係る半導体モジュールの概略的な図を示す。
【0021】
図1は、セメントからなる、本発明に係る、封止材により覆われる半導体部品20を有する、パワーエレクトロニクスのためのサブアセンブリとして設計されることが好ましい、半導体モジュール10を示す。好ましくは、半導体部品20に接触するボンドワイヤは、また、少なくとも部分的に、封止材により覆われる、及び/又は封止されるが、特に完全に覆われる、及び/又は封止されることが好ましい。
【0022】
この文脈では、既知の態様の半導体部品は、セラミックス基板に取り付けられ、次に、その上側が冷却素子80に接続される放熱板70の上側に加えられる。また、半導体モジュール10は、外側に向かって通る電気コンタクトのサポートとしてフレーム60を備える。
【0023】
第1の例示的な実施形態では、セメントからなる封止材30は、半導体部品20及びそのボンドワイヤ40を覆う及び/又は封止する液滴(グロブトップ)として単に提供される。この文脈では、半導体モジュール10の“グロブトップ”及び他の表面領域は、例えば、シリコーンゲルのような、絶縁材90により覆われる。
【0024】
図2は、電気及び熱接触面を除く、セメントからなる封止材により完全に封止される、フレームレス設計を有するための第2の例示的な実施形態に係る半導体モジュール10を示す。
【0025】
特に、以下の図面に示される例示的な実施形態についての開始点として、前記の改良は、よく適している。図3は、2つの側に提供される空冷を有するサブアセンブリを示し、ここで、上側冷却素子80aは、冷却素子に物理接触するセメントからなる無機封止材からなる熱ブリッジに物理接続され、下部冷却素子80bは、基板に物理接続される。
【0026】
示される冷却構造は、それぞれ単一部分であり、空冷又は水冷が乱流処理として通過しうるように冷却リブ又は冷却ピンに接続される。
【0027】
図4は、図3に示される改良に係る2つの側の水冷を有するパワーサブアセンブリを示し、ここで、図4に示される冷却構造は、単一部分で提供され、水が短いシーリング長で閉構造内を通過しうるような、内部導水チャネルが提供される。
【0028】
最後に、2つの側でのパワーサブアセンブリを示し、ここで、下部冷却素子80bは、単一部分として再び提供されるが、上部冷却素子80cは、複数部分として提供される。上部冷却素子として示される冷却構造は、例えば、半導体モジュール10の上側に亘って延びる複数の冷却板からなる、又は半導体モジュール10の表面に亘って分配される複数の冷却ピンからなる。
【0029】
本発明により提案されるような、半導体部品又は半導体サブアセンブリ、特にパワーエレクトロニクスサブアセンブリを封止するための封止材及び/又はマトリックスとしてセメントを使用することの利点は、1.2から1.6W/mKの優れた熱伝導率、及び約4.7ppm/Kの低熱膨張率(CTE)である。また、セメントは、ハロゲンフリーであり、金属と相溶性がある。半導体部品及び/又は半導体サブアセンブリの封止が大気条件下及び半導体モジュールの動作温度に対応する温度範囲内で処理されうるため、半導体モジュールは、変形しない。最後に、セメントは、また、回路基板表面(Cu,Ni/Au)にも接着しやすい。
図1
図2
図3
図4
図5