特許第6472461号(P6472461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472461
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】有機発光素子
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/26 20060101AFI20190207BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190207BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20190207BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20190207BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20190207BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   H05B33/26 Z
   H05B33/14 A
   H05B33/02
   H05B33/22 B
   H05B33/22 D
   H05B33/22 Z
   H01L27/32
   G09F9/30 365
【請求項の数】33
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-556723(P2016-556723)
(86)(22)【出願日】2015年3月13日
(65)【公表番号】特表2017-507465(P2017-507465A)
(43)【公表日】2017年3月16日
(86)【国際出願番号】KR2015002468
(87)【国際公開番号】WO2015137771
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2016年10月19日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0030456
(32)【優先日】2014年3月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ジュンヒュク
(72)【発明者】
【氏名】リー, イェオン ケウン
【審査官】 中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−196191(JP,A)
【文献】 特開2006−286393(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/136205(WO,A1)
【文献】 特表2011−517048(JP,A)
【文献】 特開2015−106452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50−51/56
H01L 27/32
H05B 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光素子であって、
第1電極、前記第1電極に対向して備えられた第2電極、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層、前記第1電極の補助電極、および前記第1電極と前記補助電極との間に備えられた短絡防止層を含み、
前記第1電極および前記補助電極は互いに離隔して備えられ、
前記短絡防止層は前記第1電極の少なくとも一部および前記補助電極の少なくとも一部に接し、
前記補助電極と前記第2電極の間に電圧が供給されるように構成されており、
前記短絡防止層は、有機発光素子を駆動するための電圧印加時に電流が流れる方向である正方向の電圧印加時の抵抗が正方向とは逆方向の電圧印加時の抵抗より大きく、
前記正方向の電圧印加時の前記短絡防止層の抵抗は300Ω以上3MΩ以下である有機発光素子。
【請求項2】
前記短絡防止層は、正方向の電圧印加時の抵抗が逆方向の電圧印加時の抵抗より2倍以上大きい、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記短絡防止層は、正方向の電圧印加時の抵抗が逆方向の電圧印加時の抵抗より5倍以上大きい、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記逆方向の電圧印加時の前記短絡防止層の抵抗は60Ω以上1.5MΩ以下である、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項5】
第1電極、前記第1電極に対向して備えられた第2電極、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層、前記第1電極の補助電極、および前記第1電極と前記補助電極との間に備えられた短絡防止層を含み、
前記第1電極および前記補助電極は互いに離隔して備えられ、
前記短絡防止層は前記第1電極の少なくとも一部および前記補助電極の少なくとも一部に接し、
前記補助電極と前記第2電極の間に電圧が供給されるように構成されており、
前記短絡防止層と前記第1電極の界面における前記短絡防止層と前記第1電極のエネルギー準位の差、および前記短絡防止層と前記補助電極の界面における前記短絡防止層と前記補助電極のエネルギー準位の差のうちいずれか1つは0.5eV以上であり、他の1つは0.5eV以下であり、
前記短絡防止層は、有機発光素子を駆動するための電圧印加時に電流が流れる方向である正方向の電圧印加時の抵抗が正方向とは逆方向の電圧印加時の抵抗より大きく、
前記正方向の電圧印加時の前記短絡防止層の抵抗は300Ω以上3MΩ以下である、有機発光素子。
【請求項6】
前記第1電極、または前記補助電極のエネルギー準位は4eV以上5.5eV以下である、請求項に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記第1電極はアノードであり、
前記短絡防止層と前記第1電極の界面における前記短絡防止層と前記第1電極のエネルギー準位の差は0.5eV以上であり、
前記短絡防止層と前記補助電極の界面における前記短絡防止層と前記補助電極のエネルギー準位の差は0.5eV以下である、請求項に記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記第1電極はカソードであり、
前記短絡防止層と前記第1電極の界面における前記短絡防止層と前記第1電極のエネルギー準位の差は0.5eV以下であり、
前記短絡防止層と前記補助電極の界面における前記短絡防止層と前記補助電極のエネルギー準位の差は0.5eV以上である、請求項に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記短絡防止層は、10−5S/cm以上10S/cm以下の電気伝導度を有する半導体物質を含む、請求項1またはに記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記半導体物質は、無機物、有機物および高分子からなる群から選択された1種以上を含む、請求項に記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記短絡防止層は、10−2S/cm以上の電気伝導度を有する金属または金属酸化物をさらに含む、請求項に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記短絡防止層は、前記第1電極および前記補助電極を電気的に接続する、請求項1またはに記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記短絡防止層は、10−5S/cm以上10S/cm以下の電気伝導度を有する半導体物質を含む単一層として備えられる、請求項1またはに記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記半導体物質は、正孔移動度および電子移動度の差が2倍以上の物質である、請求項13に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記第1電極に接する短絡防止層の領域および前記補助電極に接する短絡防止層の領域は互いに異なる種類のドーパントでドーピングされる、請求項13に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記第1電極に接する短絡防止層の領域および前記補助電極に接する短絡防止層の領域は互いに異なる濃度でドーピングされる、請求項13に記載の有機発光素子。
【請求項17】
前記短絡防止層は、10−5S/cm以上10S/cm以下の電気伝導度を有する半導体物質を含む第1層、および10−2S/cm以上の電気伝導度を有する金属または金属酸化物を含む第2層が接して備えられる、請求項1またはに記載の有機発光素子。
【請求項18】
前記短絡防止層の第1層の少なくとも一部は前記補助電極に接して備えられ、
前記短絡防止層の第2層の少なくとも一部は前記第1電極に接して備えられる、請求項17に記載の有機発光素子。
【請求項19】
前記第1電極は、互いに離隔して備えられた2以上の導電性ユニットを含む、請求項1またはに記載の有機発光素子。
【請求項20】
前記補助電極は前記2以上の導電性ユニットと離隔して配置され、
前記2以上の導電性ユニットは各々前記短絡防止層を介して前記補助電極と電気的に接続される、請求項19に記載の有機発光素子。
【請求項21】
前記補助電極は前記2以上の導電性ユニットと離隔して配置され、
前記補助電極は1以上の前記導電性ユニットを囲む網構造として備えられる、請求項19に記載の有機発光素子。
【請求項22】
前記隣接した導電性ユニット間の抵抗は600Ω以上6MΩ以下である、請求項19に記載の有機発光素子。
【請求項23】
前記各々の導電性ユニットと前記補助電極間の抵抗は、前記正方向の電圧印加時に300Ω以上3MΩ以下である、請求項19に記載の有機発光素子。
【請求項24】
前記各々の導電性ユニットと前記補助電極間の抵抗は、前記正方向とは逆方向の電圧印加時に150Ω以上1.5MΩ以下である、請求項19に記載の有機発光素子。
【請求項25】
前記各々の導電性ユニットは、前記正方向の電圧印加時、10mA以下の電流量に制御される、請求項19に記載の有機発光素子。
【請求項26】
前記補助電極は金属補助電極である、請求項1またはに記載の有機発光素子。
【請求項27】
前記有機物層は少なくとも1層以上の発光層を含み、正孔注入層、正孔輸送層、正孔遮断層、電荷発生層、電子遮断層、電子輸送層、および電子注入層からなる群から選択された1種または2種以上をさらに含む、請求項1またはに記載の有機発光素子。
【請求項28】
前記第1電極の有機物層が備えられる面と対向する面に備えられた基板をさらに含み、
前記基板と前記第1電極との間に備えられた内部光散乱層をさらに含む、請求項1またはに記載の有機発光素子。
【請求項29】
前記光散乱層は平坦層を含む、請求項28に記載の有機発光素子。
【請求項30】
前記第1電極の有機物層が備えられる面と対向する面に備えられた基板をさらに含み、
前記基板の第1電極が備えられる面と対向する面に光散乱層をさらに含む、請求項1またはに記載の有機発光素子。
【請求項31】
前記有機発光素子は、フレキシブル(flexible)有機発光素子である、請求項1またはに記載の有機発光素子。
【請求項32】
請求項1またはに記載の有機発光素子を含むディスプレイ装置。
【請求項33】
請求項1またはに記載の有機発光素子を含む照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は2014年3月14日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2014−0030456号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
本明細書は有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光現象とは、有機物質を用いて電気エネルギーを光エネルギーに転換させる現象をいう。すなわち、アノードとカソードとの間に適切な有機物層を位置させた時、2つの電極の間に電圧を印加すれば、陽極からは正孔が、カソードからは電子が前記有機物層に注入されるようになる。この注入された正孔と電子が結合した時にエキシトン(exciton)が形成され、このエキシトンが再び基底状態に落ちる時に光を生成する。
【0003】
アノードとカソードの間隔が小さいため、有機発光素子は短絡欠陥を有し易い。具体的には、ピンホール、亀裂、有機発光素子の構造での段(step)およびコーティングの粗度(roughness)などによってアノードとカソードが直接接触して短絡欠陥が発生しうるし、短絡欠陥が予想される領域の有機物層の厚さが次第に薄くなって短絡欠陥が発生しうる。これらの欠陥区域は電流が流れるようにする低抵抗経路を提供して、有機発光素子の発光領域に電流がほぼ流れないか、または極端な場合には全く流れないようにする。そのため、有機発光素子の発光出力が減少したり無くなったりする。マルチ画素ディスプレイ装置においては、短絡欠陥が光を放出しないかまたは平均光強度未満の光を放出する死んだ画素を生成させてディスプレイの品質を減少させることがある。照明または他の低解像度の用途では、短絡欠陥によって該当区域のうち相当部分が作動しないことがある。短絡欠陥の恐れのため、有機発光素子の製造は典型的に清浄室で行われる。しかし、いくら清浄な環境であるとしても短絡欠陥を無くすのに効果的ではない。多くの場合は、2つの電極間の間隔を増加させて短絡欠陥の数を減少させるために、有機層の厚さを、装置を作動させるのに実際に必要なものより多く増加させたりもする。このような方法は有機発光素子の製造に費用を追加させることになり、さらに、このような方法では短絡欠陥を完全に除去することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第10−2006−0130729号(2006.12.19公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、短絡欠陥を発生させる要因によって短絡欠陥が発生した場合にも正常範囲で作動可能な有機発光素子およびその製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の一実施状態は、第1電極、前記第1電極に対向して備えられた第2電極、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層、前記第1電極の補助電極、および前記第1電極と前記補助電極との間に備えられた短絡防止層を含み、
前記第1電極および前記補助電極は互いに離隔して備えられ、前記短絡防止層は前記第1電極の少なくとも一部および前記補助電極の少なくとも一部に接し、前記短絡防止層は正方向の電圧印加時の抵抗が逆方向の電圧印加時の抵抗より大きいものである有機発光素子を提供する。
【0007】
本明細書の一実施状態は、第1電極、前記第1電極に対向して備えられた第2電極、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層、前記第1電極の補助電極、および前記第1電極と前記補助電極との間に備えられた短絡防止層を含み、
前記第1電極および前記補助電極は互いに離隔して備えられ、前記短絡防止層は前記第1電極の少なくとも一部および前記補助電極の少なくとも一部に接し、前記短絡防止層と前記第1電極の界面における前記短絡防止層と前記第1電極のエネルギー準位の差、および前記短絡防止層と前記補助電極の界面における前記短絡防止層と前記補助電極のエネルギー準位の差のうちいずれか1つは0.5eV以上であり、他の1つは0.5eV以下である有機発光素子を提供する。
本明細書の一実施状態は、前記有機発光素子を含むディスプレイ装置を提供する。
本明細書の一実施状態は、前記有機発光素子を含む照明装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本明細書の一実施状態による有機発光素子は、短絡欠陥が発生した場合にも有機発光素子の機能を正常に維持することができる。具体的に、本明細書の一実施状態による有機発光素子は、短絡欠陥が発生しても、漏れ電流量を制御して、素子全体が作動しないことを防止することができる。
【0009】
また、本明細書の一実施状態による有機発光素子は、短絡発生領域の大きさが増加しても、漏れ電流量が大幅に増加することなく安定した作動が可能である。
なお、本明細書の一実施状態による有機発光素子は、非対称抵抗の短絡防止層を備えて、有機発光素子を駆動するための正方向の電圧印加時には高抵抗の短絡防止層によって短絡欠陥による漏れ電流を防止することができ、有機発光素子の後処理工程のための逆方向の電圧印加時には低抵抗の短絡防止層によって後処理工程が可能であるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本明細書の一実施状態による有機発光素子において、1つの導電性ユニットの平面図および断面図を示すものである。
図2】本明細書の一実施状態による前記第1電極、短絡防止層および補助電極が備えられた状態の断面を例示するものである。
図3】本明細書の実施例1および比較例1の短絡防止層において、正方向および逆方向の電圧印加時の電流値を示すグラフである。
図4】本明細書の実施例1および比較例1の短絡防止層において、正方向および逆方向の電圧印加時の抵抗値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本明細書についてより詳細に説明する。
本明細書の一実施状態は、第1電極、前記第1電極に対向して備えられた第2電極、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層、前記第1電極の補助電極、および前記第1電極と前記補助電極との間に備えられた短絡防止層を含み、
前記第1電極および前記補助電極は互いに離隔して備えられ、前記短絡防止層は前記第1電極の少なくとも一部および前記補助電極の少なくとも一部に接し、前記短絡防止層は正方向の電圧印加時の抵抗が逆方向の電圧印加時の抵抗より大きいものである有機発光素子を提供する。
【0012】
本明細書の一実施状態によれば、前記短絡防止層の抵抗は、前記短絡防止層と接する前記補助電極から前記短絡防止層と接する前記第1電極までの抵抗を意味することができる。具体的に、前記正方向の電圧印加時の短絡防止層の抵抗は、正方向の電圧印加時の前記補助電極と前記第1電極間の抵抗であってもよい。また、前記逆方向の電圧印加時の短絡防止層の抵抗は、逆方向の電圧印加時の前記補助電極と前記第1電極間の抵抗であってもよい。
【0013】
本明細書の一実施状態は、第1電極、前記第1電極に対向して備えられた第2電極、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層、前記第1電極の補助電極、および前記第1電極と前記補助電極との間に備えられた短絡防止層を含み、
前記第1電極および前記補助電極は互いに離隔して備えられ、前記短絡防止層は前記第1電極の少なくとも一部および前記補助電極の少なくとも一部に接し、前記短絡防止層と前記第1電極の界面における前記短絡防止層と前記第1電極のエネルギー準位の差、および前記短絡防止層と前記補助電極の界面における前記短絡防止層と前記補助電極のエネルギー準位の差のうちいずれか1つは0.5eV以上であり、他の1つは0.5eV以下である有機発光素子を提供する。
【0014】
前記エネルギー準位は、仕事関数(work function)の準位、伝導帯(conduction band)の準位、価電子帯(valence band)の準位、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位およびLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位などを通称する意味として用いられることができる。
【0015】
具体的に、前記エネルギー準位の対象物質が金属である場合、前記エネルギー準位は仕事関数の準位であってもよい。また、前記エネルギー準位の対象物質が無機物または無機半導体である場合、前記エネルギー準位は伝導帯の準位または価電子帯の準位であってもよい。また、前記エネルギー準位の対象物質が有機物または有機半導体である場合、HOMO準位またはLUMO準位であってもよい。
【0016】
本明細書の一実施状態によれば、前記短絡防止層は、前記第1電極および前記補助電極を電気的に接続することができる。
【0017】
前記短絡防止層は、有機発光素子の一部領域に短絡欠陥が発生する場合、前記短絡欠陥領域に電流が流れるようになって有機発光素子が作動しなくなることを防止する役割をする。
【0018】
短絡欠陥は、第2電極が直接第1電極に接触する場合に発生しうる。または、第1電極と第2電極との間に位置する有機物層の厚さの減少または変性などによって有機物層の機能を失って、第1電極と第2電極が接触する場合にも発生しうる。短絡欠陥が発生する場合、有機発光素子の電流は抵抗の低い短絡欠陥領域に流れるようになって有機発光素子が正常に作動しなくなる。短絡欠陥によって第1電極から第2電極に直接電流が流れる漏れ電流によって有機発光素子の電流は無欠陥区域を避けて流れる。これは有機発光素子の発光出力を減少させ、相当な場合に有機発光素子が作動できないことがある。また、広い面積の有機物に分散して流れていた電流が短絡発生地点に集中して流れるようになれば、局部的に高熱が発生して素子が壊れたり火災が発生したりする危険がある。
【0019】
しかし、本明細書の一実施状態による前記短絡防止層は短絡欠陥が発生する前には補助電極と第1電極との間に位置して電流移動通路の役割をし、前記短絡防止層による素子の作動電圧の上昇を最小化することができる。そして、短絡欠陥が発生した場合には、短絡発生地点に少量の電流だけが漏れるようにして、有機発光素子の効率の低下を防ぎ、素子が正常に作動できるようにする。
【0020】
すなわち、前記短絡防止層は、短絡欠陥の発生時、短絡欠陥領域に流れる電流の移動経路に適正な抵抗を付加して電流が短絡欠陥領域を通して抜け出ることを防ぐ役割をする。
また、前記短絡防止層はエージング工程の効率性を高める役割をする。具体的には、前記エージング工程は有機発光素子の後処理工程を意味することができる。
【0021】
前記エージング工程とは有機発光素子のエージング工程のうち1つであって、有機発光素子の製造過程中の一部で発生した短絡領域、すなわち、ショートされたアノードとカソードを電気的に遮断させ、不良処理された有機発光素子の画素を使用できるようにする工程を意味することができる。また、前記エージング工程をする場合、有機発光素子の駆動中、短絡が発生しうる領域を予め電気的に遮断させ、製品化された有機発光素子の不良率を下げることができる。すなわち、前記エージング工程を用いる場合、有機発光素子の安定性および信頼性を向上させることができる。
【0022】
前記エージング工程時、逆方向の電圧を印加する場合が発生しうる。前記有機発光素子に逆方向の電圧を印加する場合、抵抗の大きさに比例しただけの電圧降下が生じ、前記短絡防止層は低抵抗値によって逆方向に電流を円滑に流れるようにしてエージング工程の効率を高めることができる。
【0023】
仮に、前記短絡防止層が正方向の電圧印加時の抵抗と逆方向の電圧印加時の抵抗が同一である場合、後処理工程のための逆方向の電圧印加時、短絡防止層によって後処理工程の効果が低減するという問題がある。よって、本明細書の一実施状態による有機発光素子は、非対称抵抗の短絡防止層を備えて、有機発光素子を駆動するための正方向の電圧印加時には高抵抗の短絡防止層によって短絡欠陥による漏れ電流を防止することができ、有機発光素子の後処理工程のための逆方向の電圧印加時には低抵抗の短絡防止層によって後処理工程が可能であるという長所がある。
【0024】
前記「正方向の電圧印加」は、前記有機発光素子が発光できるように、前記有機発光素子のアノードからカソード方向に電流を流れるようにすることを意味する。
【0025】
前記「逆方向の電圧印加」は、前記有機発光素子のエージング工程のために、前記有機発光素子のカソードからアノード方向に電流を流れるようにすることを意味する。
【0026】
本明細書の一実施状態によれば、前記短絡防止層は、正方向の電圧印加時の抵抗が逆方向の電圧印加時の抵抗より2倍以上大きいものであってもよい。また、本明細書の一実施状態によれば、前記短絡防止層は、正方向の電圧印加時の抵抗が逆方向の電圧印加時の抵抗より5倍以上大きいものであってもよい。具体的に、本明細書の一実施状態によれば、前記短絡防止層は、正方向の電圧印加時の抵抗が逆方向の電圧印加時の抵抗より10倍以上大きいものであってもよい。
【0027】
本明細書の一実施状態によれば、前記正方向の電圧印加時の前記短絡防止層の抵抗は300Ω以上3MΩ以下であってもよい。
【0028】
また、本明細書の一実施状態によれば、前記逆方向の電圧印加時の前記短絡防止層の抵抗は60Ω以上1.5MΩ以下であってもよい。
【0029】
本明細書の一実施状態による有機発光素子において、前記正方向の電圧印加時の前記短絡防止層の抵抗は300Ω以上3MΩ以下であり、前記逆方向の電圧印加時の前記短絡防止層の抵抗は150Ω以上1.5MΩ以下であってもよい。
【0030】
また、本明細書の一実施状態による有機発光素子において、前記正方向の電圧印加時の前記短絡防止層の抵抗は300Ω以上3MΩ以下であり、前記逆方向の電圧印加時の前記短絡防止層の抵抗は60Ω以上600kΩ以下であってもよい。
【0031】
前記短絡防止層が前記抵抗範囲である場合、前記有機発光素子が短絡欠陥の発生時に短絡欠陥領域に流れる電流量を制御して有機発光素子が正常な作動をするようにすることができ、エージング工程時の高効率を確保することができる。
【0032】
本明細書の一実施状態によれば、前記短絡防止層は、前記第1電極に接する領域の抵抗値と前記補助電極に接する領域の抵抗値が互いに異なってもよい。具体的に、前記短絡防止層の前記第1電極に接する領域の抵抗値と前記短絡防止層の前記補助電極に接する領域の抵抗値の差は300Ω以上3MΩ以下であってもよい。
【0033】
本明細書の一実施状態によれば、前記短絡防止層は、前記第1電極に接する領域の抵抗値から前記補助電極に接する領域の抵抗値に漸次的に上昇または減少するものであってもよい。
【0034】
本明細書の一実施状態によれば、前記短絡防止層は、前記第1電極に接する領域の抵抗値が前記補助電極に接する領域の抵抗値より大きくてもよい。この場合、前記第1電極はアノードであってもよい。
【0035】
本明細書の一実施状態によれば、前記短絡防止層は、前記第1電極に接する領域の抵抗値が前記補助電極に接する領域の抵抗値より小さくてもよい。この場合、前記第1電極はカソードであってもよい。
【0036】
前記短絡防止層において前記第1電極に接する領域とは、補助電極より第1電極に近い短絡防止層の領域を意味する。また、前記短絡防止層において前記補助電極に接する領域とは、第1電極より補助電極に近い短絡防止層の領域を意味する。
【0037】
本明細書の一実施状態によれば、正方向の電圧印加時の前記短絡防止層の抵抗値は前記有機発光素子の閾値電圧での抵抗値であってもよい。前記閾値抵抗とは、有機発光素子が発光できるように印加される最小の電圧を意味することができる。また、本明細書の一実施状態によれば、前記逆方向の電圧印加時の前記短絡防止層の抵抗値は、前記有機発光素子の閾値電圧と絶対値は等しく負数値である電圧での抵抗値であってもよい。
【0038】
本明細書の一実施状態によれば、前記正方向の電圧印加時の前記短絡防止層の抵抗値は5V電圧での抵抗値であってもよい。また、本明細書の一実施状態によれば、前記逆方向の電圧印加時の前記短絡防止層の抵抗値は−5V電圧での抵抗値であってもよい。
【0039】
本明細書の一実施状態によれば、前記第1電極、および/または前記補助電極のエネルギーレベルは4eV以上5.5eV以下であってもよい。
【0040】
本明細書の一実施状態によれば、前記第1電極はアノードであり、前記短絡防止層と前記第1電極の界面における前記短絡防止層と前記第1電極のエネルギーレベルの差は0.5eV以上であり、前記短絡防止層と前記補助電極の界面における前記短絡防止層と前記補助電極のエネルギーレベルの差は0.5eV以下であってもよい。
【0041】
本明細書の一実施状態によれば、前記第1電極はカソードであり、前記短絡防止層と前記第1電極の界面における前記短絡防止層と前記第1電極のエネルギーレベルの差は0.5eV以下であり、前記短絡防止層と前記補助電極の界面における前記短絡防止層と前記補助電極のエネルギーレベルの差は0.5eV以上であってもよい。
【0042】
本明細書の一実施状態によれば、前記補助電極と前記短絡防止層の界面における前記補助電極と前記短絡防止層のエネルギー準位の差は0.5eV以上または0.5eV以下であってもよい。
【0043】
前記短絡防止層は、補助電極に接する面の仕事関数値と第1電極に接する仕事関数値の差によって、正方向の電圧印加時の抵抗が逆方向の電圧印加時の抵抗より高くすることができる。
【0044】
さらに、前記範囲内の仕事関数範囲である場合、前記有機発光素子が短絡欠陥の発生時に短絡欠陥領域に流れる電流量を制御して有機発光素子が正常な作動をするようにすることができ、エージング工程時の高効率を確保することができる。
【0045】
本明細書の一実施状態によれば、前記短絡防止層は10−5S/cm以上10S/cm以下の電気伝導度を有する半導体物質を含むことができる。
本明細書の一実施状態によれば、前記短絡防止層は前記半導体物質からなる単一層として備えられることができる。
【0046】
前記単一層とは、前記短絡防止層が1つの層で形成されたものを意味することができる。また、前記単一層とは、前記短絡防止層が半導体物質を含む1つの単位体を意味することができる。
【0047】
本明細書の一実施状態によれば、前記半導体物質は正孔移動度および電子移動度の差が2倍以上の物質であってもよい。
【0048】
本明細書の一実施状態によれば、前記第1電極に接する短絡防止層の界面領域、および前記補助電極に接する短絡防止層の界面領域は各々異なるエネルギー準位を有するように処理をして、前述した短絡防止層の役割を果たすようにすることができる。
【0049】
前記第1電極に接する短絡防止層の界面領域とは、前記補助電極より第1電極に近い短絡防止層の領域を意味する。また、前記補助電極に接する短絡防止層の界面領域とは、前記第1電極より補助電極に近い短絡防止層の領域を意味する。
【0050】
具体的に、本明細書の一実施状態によれば、前記第1電極に接する半導体物質の領域および/または前記補助電極に接する半導体物質の領域を表面処理して互いに異なるエネルギー準位を有するようにすることができる。具体的に、本明細書の一実施状態によれば、前記表面処理の方法としてプラズマ処理を利用することができる。また、いずれか1つの領域の表面だけを表面処理して互いに異なるエネルギー準位を有するようにすることができる。
【0051】
または、本明細書の一実施状態によれば、前記第1電極に接する短絡防止層の領域および前記補助電極に接する短絡防止層の領域は互いに異なる種類のドーパントでドーピングされたものであってもよい。
【0052】
また、本明細書の一実施状態によれば、前記第1電極に接する短絡防止層の領域および前記補助電極に接する短絡防止層の領域は互いに異なる濃度でドーピングされたものであってもよい。
【0053】
本明細書の一実施状態によれば、前記半導体物質は、無機物、有機物および高分子からなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0054】
本明細書の一実施状態によれば、前記無機物は、Ti酸化物、Zn酸化物、In酸化物、Sn酸化物、W酸化物、Nb酸化物、Mo酸化物、Mg酸化物、Zr酸化物、Sr酸化物、Yr酸化物、La酸化物、V酸化物、Al酸化物、Y酸化物、Sc酸化物、Sm酸化物、Ga酸化物、SrTi酸化物、Snフッ化物、Sn酸化物、Zn硫化物、Cd硫化物、CdTe、GaAsおよびそれらの複合物からなる群から選択された1以上を含むことができる。
【0055】
本明細書の一実施状態によれば、前記有機物は、ペンタセン、ペンタセン誘導体、アントラセン、アントラセン誘導体、チオフェン、チオフェン誘導体、ペリレン、ペリレン誘導体、spiro−MeOTAD(2,2’,7’−tetrakis−(N,N−di−p−methoxyphenyl−amine)−9,9’spirobifluorene)、TBP(tertiary butyl pyridine)、Li−TFSi(Lithium Bis(Trifluoro methanesulfonyl)Imide)およびそれらの混合物からなる群から選択された1以上を含むことができる。
【0056】
本明細書の一実施状態によれば、前記高分子は、P3HT(poly[3−hexylthiophene])、MDMO−PPV(poly[2−methoxy−5−(3’,7’−dimethyloctyloxyl)]−1,4−phenylene vinylene)、MEH−PPV(poly[2−methoxy−5−(2’’−ethylhexyloxy)−p−phenylene vinylene])、P3OT(poly(3−octyl thiophene))、P3DT(poly(3−decyl thiophene))、P3DDT(poly(3−dodecyl−11−thiophene)、PPV(poly(pphenylene vinylene))、TFB(poly(9,9’−dioctylfluorene−co−N−(4−butylphenyl)diphenyl amine)、PCPDTBT(Poly[2,1,3−benzothiadiazole−4,7−d:diyl[4,4−bis(2−ethylhexyl−4Hcyclopenta[2,1−b:3,4−b’]dithiophene−2,6−diyl]]、Si−PCPDTBT(poly[(4,4’−bis(2−ethylhexyl)dithieno[3,2−b:2’,3’−d]silole)−2,6−diyl−alt−(2,1,3−benzothiadiazole)−4,7−diyl])、PBDTTPD(poly((4,8−diethylhexyloxyl)benzo([1,2−b:4,5−b’]dithiophene)−2,6−diyl)−alt−((5−octylthieno[3,4−c]pyrrole−4,6−dione)−1,3−diyl))、PFDTBT(poly[2,7−(9−(2−ethylhexyl)−9−hexyl−fluorene)−alt−5,5−(4’,7,−di−2−thienyl−2’,1’,3’−benzothiadiazole)])、PFO−DBT(poly[2,7−.9,9−(dioctyl−fluorene)−alt−5,5−(4’,7’−di−2−.thienyl−2’,1’,3’−benzothiadiazole)])、PSiFDTBT(poly[(2,7−dioctylsilafluorene)−2,7−diyl−alt−(4,7−bis(2−thienyl)−2,1,3−benzothiadiazole)−5,5’−diyl])、PSBTBT(poly[(4,4’−bis(2−ethylhexyl)dithieno[3,2−b:2’,3’−d]silole)−2,6−diyl−alt−(2,1,3−benzothiadiazole)−4,7−diyl])、PCDTBT(Poly[[9−(1−octylnonyl)−9Hcarbazole−2,7−diyl]−2,5−thiophenediyl−2,1,3−benzothiadiazole−4,7−diyl−2,5−thiophenediyl])、PFB(poly(9,9’−dioctylfluorene−co−bis(N,N’−(4,butylphenyl))bis(N,N’−phenyl−1,4−phenylene)diamine)、F8BT(poly(9,9’−dioctylfluorene−cobenzothiadiazole)、PEDOT(poly(3,4−ethylenedioxythiophene))、PEDOT:PSS poly(3,4−ethylenedioxythiophene)poly(styrenesulfonate)、PTAA(poly(triarylamine))、Poly(4−butylphenyl−diphenyl−amine)およびその共重合体からなる群から選択された1以上を含むことができる。
【0057】
本明細書の一実施状態によれば、前記短絡防止層は、10−2S/cm以上の電気伝導度を有する金属および金属酸化物をさらに含むことができる。
【0058】
本明細書の一実施状態によれば、前記金属または金属酸化物は、2.7eV以上5.4eV以下の電気伝導度を有する金属または金属酸化物であってもよい。
【0059】
本明細書の一実施状態によれば、前記金属または金属酸化物は、Pt、Pd、Au、Ag、Cu、Ni、Zn、V、Ru、Rh、Co、Ir、W、Mo、Ti、Zn、In、Sn、Nb、Mg、Zr、Sr、Yr、La、V、Al、Y、Sc、Sm、Gaおよびそれらの酸化物、および前記酸化物の複合物からなる群から選択された1以上を含むことができる。
【0060】
本明細書の一実施状態によれば、前記短絡防止層は、前記半導体物質を含む第1層、および前記金属または金属酸化物を含む第2層が接して備えられることができる。具体的に、前記短絡防止層は、10−5S/cm以上10S/cm以下の電気伝導度を有する半導体物質を含む第1層、および10−2S/cm以上の電気伝導度を有する金属または金属酸化物を含む第2層が接して備えられるものであってもよい。
【0061】
前記2層構造の短絡防止層を用いて、前記第1電極に接する短絡防止層領域のエネルギー準位と前記補助電極に接する短絡防止層領域のエネルギー準位を互いに異なるように調節することができる。このように調節することによって、前記短絡防止層を正方向の電圧印加時の抵抗が逆方向の電圧印加時の抵抗より2倍以上大きいように調節することができる。
【0062】
本明細書の一実施状態によれば、前記短絡防止層の第1層の少なくとも一部は前記補助電極に接して備えられ、前記短絡防止層の第2層の少なくとも一部は前記第1電極に接して備えられることができる。この場合、前記第1電極はアノードであり、前記補助電極は金属補助電極であってもよい。
【0063】
本明細書の一実施状態によれば、前記第1電極がカソードであり、前記補助電極が金属補助電極である場合、前記短絡防止層は前記半導体物質からなる1つの層として備えられることができる。この場合、前記金属補助電極が前記短絡防止層の第2層の役割をするため、前記短絡防止層は正方向の電圧印加時の抵抗が逆方向の電圧印加時の抵抗より大きくなる。
【0064】
本明細書の一実施状態によれば、前記第1電極は互いに離隔して備えられた2以上の導電性ユニットを含むことができる。
【0065】
本明細書の一実施状態によれば、前記各々の導電性ユニットは互いに離隔して備えられたパターンで形成されることができる。前記パターンは閉鎖図形の形状を有してもよく、具体的には三角形、四角形、六角形などの多角形または無定形の形状であってもよい。
【0066】
前記導電性ユニットは前記第1電極を意味することができる。具体的に、前記導電性ユニットは基板上に被覆されている第1電極の最小単位であってもよい。さらに、前記各々の導電性ユニットは有機発光素子の各々のピクセルに含まれることができる。また、前記各々の導電性ユニットは発光層から放出される光が外部に放出される領域となることができる。
【0067】
前記ピクセルは有機発光素子の1つの画素領域であってもよく、発光領域の最小単位となることができる。
【0068】
本明細書の一実施状態によれば、前記補助電極は前記2以上の導電性ユニットと離隔して配置され、前記2以上の導電性ユニットは各々前記短絡防止層を介して前記補助電極と電気的に接続されることができる。
【0069】
具体的に、本明細書の一実施状態によれば、前記第1電極が互いに離隔した2以上の導電性ユニットを含む場合、前記短絡防止層は各々の前記導電性ユニットの少なくとも一部に物理的に接して備えられることができる。
【0070】
前記各々の導電性ユニットの少なくとも一部に前記短絡防止層が接して備えられる場合、いずれか1つの導電性ユニットを含む領域に短絡欠陥が発生しても、短絡防止層によって全ての作動電流が短絡欠陥部位に流れることを防止することができる。すなわち、短絡欠陥に伴った漏れ電流量が無制限に増加しないように制御する役割をする。よって、短絡欠陥のない残りの導電性ユニットを含む領域が正常に作動することができる。
【0071】
本明細書の前記短絡防止層は前記第1電極と前記補助電極との間に備えられ、前記第1電極と前記補助電極は互いに物理的に接していなくてもよい。本明細書の一実施状態による前記第1電極、短絡防止層および補助電極は色々なデザインで形成されることができる。それに関する具体的な例示は図2に示す。具体的に、図2には基板上に備えられた第1電極の一領域に接して備えられた短絡防止層および第1電極と離隔して備えられた補助電極の断面を例示した。図2の第1電極はパターニングされていない第1電極であってもよい。または、図2の第1電極は2以上の導電性ユニットでパターニングされた第1電極でのいずれか1つの導電性ユニットを意味することができる。
【0072】
本明細書の一実施状態によれば、前記補助電極は前記2以上の導電性ユニットと離隔して配置され、前記補助電極は1以上の前記導電性ユニットを囲む網構造として備えられることができる。
【0073】
短絡防止層が備えられて、短絡欠陥のある有機発光素子が正常に作動する場合にも、短絡欠陥領域の周辺は電圧降下(IR drop)現象によって相対的に発光強度が小さくなって暗くなる現象が発生しうる。前記補助電極が網構造として備えられる場合、短絡欠陥による電圧降下にもかかわらず、漏れ電流を効果的に周囲に流れるようにすることができる。よって、前記補助電極が網構造として備えられる場合、短絡欠陥領域の周囲が暗くなる現象を緩和することができる。
【0074】
本明細書の一実施状態によれば、前記隣接した導電性ユニット間の抵抗は600Ω以上6MΩ以下であってもよい。
【0075】
前記「隣接」とは、2以上の導電性ユニットにおいて、導電性ユニット間に最も近く位置することを意味することができる。
【0076】
本明細書の一実施状態によれば、前記各々の導電性ユニットと前記補助電極間の抵抗は、正方向の電圧印加時に300Ω以上3MΩ以下であってもよい。
【0077】
本明細書の一実施状態によれば、前記各々の導電性ユニットと前記補助電極間の抵抗は、逆方向の電圧印加時に150Ω以上1.5MΩ以下であってもよい。
【0078】
本明細書の一実施状態によれば、前記短絡防止層による前記有機発光素子の駆動電圧の上昇分は、前記短絡防止層がない場合の駆動電圧に比べて1%以上5%以下であってもよい。
【0079】
本明細書の一実施状態によれば、前記各々の導電性ユニットは、正方向の電圧印加時、10mA以下の電流量に制御されるものであってもよい。
【0080】
前記短絡防止層により、前記各々の導電性ユニットに流れる電流量を制御することができる。具体的に、前記短絡防止層は、いずれか1つの導電性ユニット領域に発生した短絡欠陥領域に流れる漏れ電流量を10mA以下に制御することができる。
【0081】
また、前記短絡防止層は、エージング工程のための逆方向の電圧印加時、20mA以上の瞬間電流を流れるようにすることができる。
【0082】
本明細書の一実施状態によれば、前記漏れ電流量は、有機発光素子の作動電圧が3V〜15Vであり、前記短絡防止層による駆動電圧の上昇分が1%〜5%である場合、有機発光素子の一領域で発生する漏れ電流量であってもよい。
【0083】
本明細書の一実施例によれば、前記第1電極は透明電極であってもよい。
【0084】
前記第1電極が透明電極である場合、前記第1電極は、酸化スズインジウム(ITO)または酸化亜鉛インジウム(IZO)などのような導電性酸化物であってもよい。さらに、前記第1電極は半透明電極であってもよい。前記第1電極が半透明電極である場合、Ag、Au、Mg、Caまたはこれらの合金のような半透明金属から製造されることができる。半透明金属が第1電極として用いられる場合、前記有機発光素子は微細空洞構造を有してもよい。
【0085】
本明細書の一実施状態によれば、前記補助電極は金属材質からなってもよい。すなわち、前記補助電極は金属補助電極であってもよい。
【0086】
前記補助電極は一般的に全ての金属を用いることができる。具体的に伝導度の良いアルミニウム、銅および/または銀を含むことができる。前記補助電極は透明電極との付着力およびフォト工程での安定性のためにアルミニウムを用いる場合、モリブデン/アルミニウム/モリブデン層を用いることもできる。
【0087】
本明細書の一実施状態によれば、前記有機発光素子は、前記第1電極の有機物層が備えられる面と対向する面に備えられた基板をさらに含むことができる。
【0088】
前記基板は、透明性、表面平滑性、取り扱い容易性および防水性に優れた基板を用いることができる。具体的に、ガラス基板、薄膜ガラス基板または透明プラスチック基板を用いることができる。前記プラスチック基板は、PET(polyethylene terephthalate)、PEN(Polyethylene naphthalate)、PEEK(Polyether ether ketone)およびPI(Polyimide)などのフィルムが単層または複層の形態で含まれることができる。また、前記基板は、基板そのものに光散乱機能が含まれているものであってもよい。但し、前記基板はそれらに限定されず、有機発光素子に通常用いられる基板を用いることができる。
本明細書の一実施状態によれば、前記第1電極はアノードであり、前記第2電極はカソードであってもよい。また、前記第1電極はカソードであり、前記第2電極はアノードであってもよい。
【0089】
前記アノードとしては、通常、有機物層への正孔注入が円滑になるように仕事関数の大きい物質が好ましい。本発明に用いることができるアノード物質の具体的な例としてはバナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO:Sbのような金属と酸化物の組み合わせ;ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0090】
前記アノード材料はアノードにのみ限定されるものではなく、カソードの材料として用いられることができる。
【0091】
前記カソードとしては、通常、有機物層への電子注入が容易になるように仕事関数の小さい物質が好ましい。カソード物質の具体的な例としてはマグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛のような金属またはこれらの合金;およびLiF/AlまたはLiO/Alのような多層構造の物質などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0092】
前記カソードの材料はカソードにのみ限定されるものではなく、アノードの材料として用いられることができる。
【0093】
本明細書の一実施状態によれば、前記有機物層は少なくとも1層以上の発光層を含み、正孔注入層;正孔輸送層;正孔遮断層;電荷発生層;電子遮断層;電子輸送層;および電子注入層からなる群から選択された1種または2種以上をさらに含むことができる。
【0094】
前記電荷発生層(Charge Generating layer)は、電圧をかけると正孔と電子が発生する層をいう。
【0095】
本明細書による前記正孔輸送層物質としては、アノードや正孔注入層から正孔の輸送を受けて発光層に移せる物質として、正孔に対する移動性の大きい物質が好適である。具体的な例としてはアリールアミン系の有機物、導電性高分子、および共役部分と非共役部分が共に存在するブロック共重合体などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0096】
本明細書による前記発光層物質としては、正孔輸送層と電子輸送層から正孔と電子の輸送を各々受けて結合させることによって可視光線領域の光を出せる物質として、蛍光や燐光に対する量子効率の良い物質が好ましい。具体的な例としては8−ヒドロキシ−キノリンアルミニウム錯体(Alq);カルバゾール系の化合物;二量体化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10−ヒドロキシベンゾキノリン−金属化合物;ベンゾオキサゾール、ベンズチアゾールおよびベンズイミダゾール系の化合物;ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)系の高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン;およびルブレンなどが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0097】
本明細書による前記電子輸送層物質としては、カソードから電子の注入を円滑に受けて発光層に移せる物質として、電子に対する移動性の大きい物質が好適である。具体的な例としては8−ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alqを含む錯体;有機ラジカル化合物;およびヒドロキシフラボン−金属錯体などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0098】
本明細書の一実施状態によれば、前記有機発光素子は封止層で密閉されていてもよい。
【0099】
前記封止層は透明な樹脂層で形成されることができる。前記封止層は前記有機発光素子を酸素および汚染物質から保護する役割をし、前記有機発光素子の発光を阻害しないように透明な材質であってもよい。前記透明は60%以上光を透過することを意味することができる。具体的には、75%以上光を透過することを意味することができる。
【0100】
本明細書の一実施状態によれば、前記有機発光素子は、色温度2,000K以上12,000K以下の白色光を発光することができる。
【0101】
図1は、本明細書の一実施状態による有機発光素子において、1つの導電性ユニットの平面図および断面図を示すものである。具体的に、図1は、基板1上に備えられた第1電極2の1つの導電性ユニットを示すものである。さらに、図1において、短絡防止層は第1層(3−1)および第2層(3−2)からなり、半導体物質からなる第1層(3−1)は補助電極4に接し、金属または金属酸化物からなる第2層(3−2)は第1電極2に接して備えられた有機発光素子を示すものである。
【0102】
本明細書の一実施例によれば、前記有機発光素子は光散乱層を含むことができる。
【0103】
本明細書の一実施状態によれば、前記第1電極の有機物層が備えられる面と対向する面に備えられた基板をさらに含み、前記基板と前記第1電極との間に備えられた内部光散乱層をさらに含むことができる。
【0104】
本明細書の一実施状態によれば、前記光散乱層は平坦層を含むことができる。本明細書の一実施状態によれば、前記平坦層は前記第1電極と前記光散乱層との間に備えられることができる。
【0105】
本明細書の一実施状態によれば、前記第1電極の有機物層が備えられる面と対向する面に備えられた基板をさらに含み、前記基板の第1電極が備えられる面と対向する面に光散乱層をさらに含むことができる。
【0106】
本明細書の一実施例によれば、前記光散乱層は、光散乱を誘導して、前記有機発光素子の光散乱効率を向上できる構造であれば特に制限されない。具体的に、本明細書の一実施例によれば、前記光散乱層は、バインダー内に散乱粒子が分散した構造、凹凸を有したフィルム、および/またはヘイズ(hazeness)を有するフィルムであってもよい。
【0107】
本明細書の一実施例によれば、前記光散乱層は、基板上にスピンコーティング、バーコーティング、スリットコーティングなどの方法によって直接形成されるか、フィルム形態に製作して付着する方式によって形成されてもよい。
【0108】
本明細書の一実施例によれば、前記有機発光素子はフレキシブル(flexible)有機発光素子であってもよい。この場合、前記基板はフレキシブル材料を含むことができる。具体的に、前記基板は曲がれる薄膜形態のガラス、プラスチック基板またはフィルム形態の基板であってもよい。
【0109】
前記プラスチック基板の材料は特に限定されないが、一般的にPET(polyethylene terephthalate)、PEN(Polyethylene naphthalate)、PEEK(Polyether ether ketone)およびPI(Polyimide)などのフィルムを単層または複層の形態で含むものであってもよい。
【0110】
本明細書は前記有機発光素子を含むディスプレイ装置を提供する。前記ディスプレイ装置において、前記有機発光素子は画素またはバックライトの役割をする。その他、ディスプレイ装置の構成は当技術分野で周知のものが適用される。
【0111】
本明細書は前記有機発光素子を含む照明装置を提供する。前記照明装置において、前記有機発光素子は発光部の役割をする。その他、照明装置に必要な構成は当技術分野で周知のものが適用される。
【0112】
以下、本明細書を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。但し、本明細書による実施例は色々な他の形態に変形されてもよく、本明細書の範囲が下記にて詳述する実施例に限定されるものではない。本明細書の実施例は当業界で平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【0113】
[実施例1]−正方向−逆方向の非対称抵抗の短絡防止層の製造
ガラス基板上に第1電極としてアノードを形成し、前記第1電極から離隔するように補助電極としてAlを真空熱蒸着方法を用いて500nm厚さで蒸着した。前記補助電極の形成時、厚さ0.05mmのインバー(inbar)材質のシャドーマスクをガラス基板に付着して補助電極の模様を形成した後、Alを蒸着した。
【0114】
次に、ZnOを用いて短絡防止層の第1層を形成し、Cuを用いて短絡防止層の第2層を形成して、基板上に第1電極、短絡防止層および補助電極を形成した。短絡防止層の第1層の形成時、補助電極が形成されているガラス基板上にZnOフィルムを100nm厚さで蒸着し、シャドーマスクを用いてパターンを形成した。この時、真空は1mTorrであり、200WのRF powerを有するArプラズマを用いてZnOターゲットをスパッタした。短絡防止層の第2層の形成時、短絡防止層の第1層上にCuを真空熱蒸着方法を用いて100nm厚さで蒸着した。
【0115】
最上部に位置したCuと第1電極間には接触抵抗を無視できるため、Cu層と第1電極の電位は同じであると仮定できる。それに基づいて補助電極(Al)とCu間の電圧−電流特性を測定した。
【0116】
[比較例1]−正方向−逆方向の同一抵抗(対称抵抗)の短絡防止層の製造
短絡防止層の第2層をAlで形成したことを除いては、前記実施例1と同様の方法により基板上に第1電極、短絡防止層および補助電極を形成した。
【0117】
最上部に位置したAlと第1電極間には接触抵抗を無視できるため、Al層と第1電極の電位は同じであると仮定できる。それに基づいて補助電極(Al)とAl間の電圧−電流特性を測定した。
【0118】
図3は、実施例1および比較例1による補助電極と短絡防止層の第2層間の電圧−電流特性を示すものである。
【0119】
図4は、図3の電圧−電流特性を測定した後、正方向の電圧を印加した時と逆方向の電圧を印加した時の抵抗差を示すものである。
【0120】
図3および図4の結果から、本明細書の一実施状態による短絡防止層は、正方向の電圧を印加する場合の抵抗値が逆方向の電圧を印加する場合の抵抗値に比べて2倍以上大きいことが分かる。
【0121】
具体的に、実施例による有機発光素子は、定電圧の印加時に電圧が上昇するに伴い、短絡防止層によって電流が過度に流れることを防止することが分かる。さらに、実施例による有機発光素子は、後処理工程のための逆方向の電圧印加時には逆方向電圧の大きさが増加するに伴って逆方向電流も比例して上昇するため、後処理工程の効率低下を最小化することができる。
【0122】
それに対し、前記比較例による有機発光素子の場合、正方向の電圧印加時の抵抗と逆方向の印加時の抵抗が均一に低い短絡防止層を備えて、定電圧の印加時の電圧上昇に伴い、短絡防止層による過度な電流の流れを制御できないことが分かる。
【0123】
さらに、正方向の電圧印加時の抵抗と逆方向の印加時の抵抗が均一に高い短絡防止層を備えた有機発光素子の場合、後処理工程のための逆方向の電圧印加時に高い短絡防止層の抵抗によって後処理工程の効率が低下することを予想できる。
【符号の説明】
【0124】
1 ・・・基板
2 ・・・第1電極
3 ・・・短絡防止層
3−1 ・・・短絡防止層の第1層
3−2 ・・・短絡防止層の第2層
4 ・・・補助電極
図1
図2
図3
図4