【文献】
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 2003年,Vol.53,p.1051-1057
【文献】
agarase [Paenibacillus sp. SSG-1],GenBank,GenBank: AML39432.1,ACCESSION: AML39432,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/1000477991, 検索日2018年3月26日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
β-アガラーゼの発現ベクターであって、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12及び配列番号:13から成る群から選択される配列を含むヌクレオチド配列を含む、発現ベクター。
配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19及び配列番号:20から成る群から選択される配列を有する、請求項18に記載の発現ベクター。
【背景技術】
【0002】
寒天は、紅藻類(例えばゲリジウム属の種(Gelidium spp.)、グラシラリア属の種(Gracilaria spp.)、ポルフィラ属の種(Porphyra spp.)など)の細胞壁から抽出される親水性多糖類であり、その主要成分はアガロース及びアガロペクチンである。アガロースは、α-1,3及びβ-1,4グリコシド結合を有する中性多糖類であり、ゲルを形成することができ、少なくとも100kDaの分子量を有する。アガロペクチンはゲルを形成することができず、最大で20kDaの分子量を有する。アガロペクチンはアガロースと同様な組成を有するが、その3,6-アンヒドロ-α-L-ガラクトースのいくつかのヒドロキシル基はメトキシ、スルフォキシ又はピルビン酸基に置換されている。
寒天を加水分解できるヒドロラーゼはアガラーゼと呼ばれ、その加水分解部位にしたがってα-アガラーゼ(EC 3.2.1.158)及びβ-アガラーゼ(EC 3.2.1.81)として分類される。α-アガラーゼは、アガロース及びアガロペクチンのα-1,3グリコシド結合で加水分解し、その還元末端に3,6-アンヒドロ-α-L-ガラクトース基を有するアガロ-オリゴ糖を生じる。β-アガラーゼは、アガロース及びアガロペクチンのβ-1,4グリコシド結合で加水分解し、その還元末端にD-ガラクトース基を有するネオアガロ-オリゴ糖を生じる。
【0003】
アガラーゼには多くの用途がある。好適例として、アガラーゼはアガロースゲルからDNAを回収するために分子生物学研究で用いることができる。アガラーゼは軟骨細胞を支持する寒天基質として軟骨組織の操作で用いられ、それによって軟骨細胞の精製を容易にし、コラーゲン含有量を増加させ、軟骨組織の培養を改善することができる。アガラーゼはアガロ-オリゴ糖及びネオアガロ-オリゴ糖の調製に用いることができる。アガラーゼはDNAの形質転換及び細胞融合のために藻類のプロトプラストの調製に用いることができる。アガラーゼは藻類の多糖類の加水分解に用いられ、その加水分解生成物に基づいて藻類の多糖類の構造を推測することができる。アガラーゼは海洋動物飼育の飼料として利用される藻類単細胞の調製に用いることができる。
さらにまた、現在の研究は、寒天又は藻類多糖類粗抽出物の加水分解によって得られるオリゴ糖は、いくつかの生理学的及び生物学的活性(例えば抗酸化作用、免疫調節、抗菌、チロシナーゼ抑制、保湿、プレバイオティクスとして利用される、血清総コレステロールを低下させるなど)を提示することを証明した。オリゴ糖はまた、化粧品、健康食品、及び製薬工業で広く利用される、新世代の高価値機能性オリゴ糖でもありうる。アガラーゼ生成能力を有することが立証された微生物がいくつか存在するが、それにもかかわらず、当該公知の微生物によるアガラーゼの生成は、工業的大量生産にとって不利益な多くの困難及び欠陥(例えば不十分な生産、不安定な生産、使用細菌に対する安全性の懸念、高い生産コストなど)に直面している。
【0004】
上記を考慮して、当分野の研究者らは、酸加水分解法を用いて寒天又は藻類多糖類粗抽出物を加水分解して必要なオリゴ糖を得ようと考えた。しかしながら、通常的な酸加水分解法ではアガロ-オリゴ糖混合物を得ることはできるが、均一な重合度を有する生成物を得ることはできない。酸加水分解法と比較して、酵素加水分解はいくつかの能力を有し、それによって酸加水分解法よりも理想的である。前記能力には以下が含まれる:所望の重合化を有するオリゴ糖を得るために特定タイプのグリコシド結合を切断する酵素選択性、分解条件の管理の容易さ、酵素反応で要求される温度は酸加水分解法の温度よりも低くしたがってエネルギー消費が少ないこと、酸加水分解法と比較して操作が容易であること(酸塩基の中和及び脱塩のようなプロセスが要求されない)、化学薬剤が不要であり、したがって操作はより安全であり環境汚染の可能性が低いこと、並びにアガロ-オリゴ糖及びネオアガロ-オリゴ糖を入手できること。
要約すれば、寒天又は藻類多糖類粗抽出物のアガラーゼ加水分解から得られるオリゴ糖の工業的利用を促進するために、当該分野でより多くの選択肢を提供する新規なアガラーゼが希求されている。さらにまた、商業化を促進するために前述のオリゴ糖生成コストを削減できるように、より低コストで操作できるアガラーゼ生成方法が希求されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記で説明したように、微生物によるアガラーゼの異種生産は当分野で公知であるけれども、常套的な生産はなお多くの困難に直面している。その上、当該分野は所望のタンパク質の発現ツールとして公知の原核細胞発現系を有しているけれども、特に大量生産の観点からは、全ての種類のタンパク質が原核細胞発現系を用いることによって発現できるわけではないこともまた認識されている。所望のタンパク質の発現に影響を与える因子には、遺伝子のコドン使用頻度、mRNAの安定性、所望のタンパク質そのものの安定性、選択される発現系、発現系の生産条件などが含まれる。所望のタンパク質をコードする遺伝子が異種発現に不適切である場合、原核細胞発現系による所望のタンパク質の大量生産の成功はほぼ不可能である。所望遺伝子に対する遺伝子の操作又は培養技術を改善する発酵の操作により、所望遺伝子の生産を順調に高めることができ、したがって所望タンパク質の商業化のためにより多くの力を生み出すことができよう。
パエニバシルス・アガレキセデンス(Paenibacillus agarexedens)は、科学者Miehlmannによって1972年に牧草地の土壌から単離された細菌の1種である。本発明の開示前には、当該細菌のアガラーゼをコードする遺伝子に関する報告は全く存在しなかった。しかしながら、本発明は、当該細菌から特定のヌクレオチドセグメントを単離し、前記から新規なアガラーゼを入手したものであり、当該分野にアガラーゼの新規のオプションを提供しうる。
【0012】
本発明の態様は、配列番号:01に示される配列を含む、パエニバシルス・アガレキセデンスから誘導されたβ-アガラーゼを提供する。前記配列番号:01は、1811のアミノ酸を含む本発明のアミノ酸配列を示す。前記配列番号:01はパエニバシルス・アガレキセデンスのゲノムのヌクレオチドセグメントに対応するが、遺伝子配列とは一致しないことは注目に値する。アミノ酸とコドンとの関係にしたがって、当業者は、前記配列番号:01をコードする対応するヌクレオチド配列を推察できる。好ましい実施態様では、前記β-アガラーゼは配列番号:08に示される配列からコードされる。
本発明の前述の態様では、本発明は遺伝子操作ツールを採用して、前記アガラーゼの正常な活性を破壊することなく、配列番号:01のC’末端からそのアミノ酸を欠損させて原核細胞発現系での前記アガラーゼの異種生産を改善する。
【0013】
また別の実施態様では、本発明の遺伝子操作研究によって作製された組換えβ-アガラーゼは、配列番号:06で示されるアミノ酸配列を少なくとも含む。別の代替実施態様では、本発明の遺伝子操作研究によって作製された組換えβ-アガラーゼは、前記配列番号:01の少なくともNo.1からNo.875のアミノ酸を順番通りに含む。前記“順番通りに含む”とは、前記β-アガラーゼが、それらアミノ酸を含むだけでなく、それらアミノ酸が配列番号:01と一致する順番でそれらを含むが、ただし前記β-アガラーゼは配列番号:01の全長は含まないことを意味する。前記“全長”は、配列番号:01に含まれる全アミノ酸及びその順番を指す。前記“第一番目からNo.875のアミノ酸”は、N末端から数えて第一のアミノ酸から875番目のアミノ酸を指す。
【0014】
本発明の前述の態様では、具体的な実施態様01は、配列番号:01に示される配列を順番通りに含むβ-アガラーゼを提供する。配列番号:01に示される前記配列は配列番号:08から翻訳されうる。
本発明の前述の態様では、具体的な実施態様02は、配列番号:01に示される配列のNo.1からNo.1380のアミノ酸(すなわち配列番号:02)を順番通りに含むβ-アガラーゼを提供する。配列番号:02に示される前記配列は配列番号:09から翻訳されうる。
本発明の前述の態様では、具体的な実施態様03は、配列番号:01に示される配列のNo.1からNo.1275のアミノ酸(すなわち配列番号:03)を順番通りに含むβ-アガラーゼを提供する。配列番号:03に示される前記配列は配列番号:10から翻訳されうる。
本発明の前述の態様では、具体的な実施態様04は、配列番号:01に示される配列のNo.1からNo.1096のアミノ酸(すなわち配列番号:04)を順番通りに含むβ-アガラーゼを提供する。配列番号:04に示される前記配列は配列番号:11から翻訳されうる。
本発明の前述の態様では、具体的な実施態様05は、配列番号:01に示される配列のNo.1からNo.975のアミノ酸(すなわち配列番号:05)を順番通りに含むβ-アガラーゼを提供する。配列番号:05に示される前記配列は配列番号:12から翻訳されうる。
本発明の前述の態様では、具体的な実施態様06は、配列番号:01に示される配列のNo.1からNo.875のアミノ酸(すなわち配列番号:06)を順番通りに含むβ-アガラーゼを提供する。配列番号:05に示される前記配列は配列番号:13から翻訳されうる。
【0015】
本発明の別の態様はアガロースを消化するための組成物を提供する。前記組成物を工業的に用い、アガロースの加水分解生成物(例えばネオアガロテトラオース)を得ることができる。また別の実施態様では、前記組成物はアガラーゼを含み、前記アガラーゼは、配列番号:01の少なくともNo.1からNo.875のアミノ酸を順番通りに含む。好ましい実施態様では、前記組成物は前記アガラーゼを0.1から10U/mLの濃度で含み、ここで前記U/mLは前記組成物の総体積を基準にする。
別の実施態様では、前記組成物はアガラーゼを含み、前記アガラーゼは、配列番号:01、配列番号:02、配列番号:03、配列番号:04、配列番号:05及び配列番号:06から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0016】
好ましい実施態様では、前記組成物は1から2mMの塩、50から200mMの緩衝剤又はそれらの組み合わせをさらに含み、ここで前記mMは前記組成物の総体積を基準にする。本発明の研究にしたがえば、前記塩は、前記アガラーゼの安定化及びその活性の改善に有利である。また別に、前記塩にはKCl、ZnSO
4、FeSO
4、BaCl
2、NaCl、SrCl
2、CoCl
2、MgSO
4、MnCl
2、CaCl
2、AlCl
3又はそれらの組み合わせが含まれるが、ただしこれらに限定されない。当業者には、前記塩がその解離状態で存在し得ることも(前記塩は金属イオン及び非金属イオンとなる)、又は解離状態及び非解離状態の両方で存在し得ることも容易に理解できる。前記緩衝剤はまた前記アガラーゼの活性を安定化させるために有利である。また別に、前記緩衝剤にはクエン酸緩衝溶液又はリン酸緩衝溶液が含まれるが、ただしこれらに限定されない。好ましくは、前記クエン酸緩衝溶液は5から6のpH値を有する。好ましくは、前記リン酸緩衝溶液は6から7のpH値を有する。
【0017】
本発明の別の態様はネオアガロオリゴ糖を生成する方法を提供する。本方法は、以下の工程、(A)アガロースを含むサンプルを提供する工程及び(B)前記サンプルを組成物と接触させる工程を含む。前記サンプルは、アガロース、低融点アガロース、寒天、海草多糖類粗抽出物、又はそれらの組み合わせであり得る。前記“接触させる又は接触”は、前記サンプル及び前記組成物をある環境下で混合することによって達成できる。
また別の実施態様では、前記方法で得られる前記生成物は少なくとも40重量パーセントのネオアガロテトラオースを含み、ここで前記重量パーセントは前記生成物の総重量を基準にする。好ましい実施態様では、前記生成物は実質的にネオアガロビオースを含まない。
好ましい実施態様では、前記工程(B)の前記接触は、前記サンプル及び前記組成物をある環境下で混合することによって達成できる。好ましくは、前記接触は40℃から60℃で実施される。好ましくは、前記接触はpH5からpH7で実施される。好ましい実施態様では、前記接触は1から24時間実施される。
【0018】
本発明の別の態様では、本発明はβ-アガラーゼの発現ベクターを提供する。前記発現ベクターは、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12及び配列番号:13から成る群から選択される配列を含むヌクレオチド配列を含む。前記発現ベクターは、原核細胞発現系での本発明のβ-アガラーゼの異種発現のために用いられる。したがって、好ましくは、前記発現ベクターはさらに調節エレメントを含み、この場合、前記調節エレメントは用いられる原核細胞発現系によって認識されうる。また別の実施態様では、前記調節エレメントは少なくともプロモーター及びリボソーム結合部位を含み、好ましくは、前記調節エレメントはさらにオペレーター、エンハンサー配列又はそれらの組み合わせを含むことができる。
好ましい実施態様では、前記発現ベクターは、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19及び配列番号:20から成る群から選択される配列を有する。
【0019】
“異種発現”又は同様な用語は、前記β-アガラーゼの天然に存存する供給源ではない微生物での前記β-アガラーゼの発現を指す。好適例として、前記β-アガラーゼの天然に存在する供給源はP.アガレキセデンスである。したがって、大腸菌(E. coli)発現系における前記β-アガラーゼの発現は、本発明で定義する“異種発現”である。上記で説明したように、発現系の生産条件は所望のタンパク質の生産量に影響を与え、したがって生産コストに影響を及ぼすであろう。生産条件の要の値を入手できるなら、所望のタンパク質は、用いられる発現系で効率的かつ大量に発現されうる。本発明の好ましい実施態様では、膨大な量の試験後に、大腸菌発現系での本β-アガラーゼの異種発現のために好ましい温度は15から37℃であるという結果を本発明は得た。当該温度範囲で発現されたβ-アガラーゼはより良好な可溶性を有し、したがって当該条件は商業的に必要な大量生産に有利である。
【0020】
試験1:本アガラーゼをコードする遺伝子のクローニング及び本発明の発現ベクターの確立
本実験では、P.アガレキセデンスの全ゲノムから特定の配列(1811アミノ酸の配列番号:01で示されるアミノ酸配列を有し、その開始コドンを除いて5433ヌクレオチドの配列番号:08で示されるヌクレオチド配列を有する)を選択し、タンパク質アラインメント分析によってアガロース消化能力を有するタンパク質(すなわちアガラーゼ)をコードし得ることが予測された。本発明の開示前には、前述の配列を開示した報告、又は当該配列がアガラーゼとしての生理学的能力を有する可能性について開示した報告は全く存在しなかった。さらにまた、前記配列は、本発明の出願時点において当業界で公知のアガラーゼ遺伝子配列と顕著な類似性をもたない。原核細胞発現系で所望のアガラーゼを大量にかつ安定的に発現させるために、本発明は、遺伝子操作技術を用いることによって前記配列を発現する発現ベクターをさらに確立させた。
【0021】
細菌及び培地
P.アガレキセデンスBCRC17346をアガラーゼ遺伝子の研究対象として食品工業研究開発院(Food Industry Research and Development Institute)から購入した。大腸菌ECOS 9-5(Yeastern, 台湾)をDNAクローニングの宿主細胞として選択した。P.アガレキセデンスの培養のために0.1%の尿素を含む栄養ブロス(BD Difco, 米国)を用いた。さらに固形培地の調製が必要な場合には、1.5%(w/v)寒天を添加した。大腸菌の培養のために、Lurai-Bertani(LB)培地(BD Difco, 米国)(必要により抗生物質及び1.5%の寒天を含むことができる)を用いた。
【0022】
ゲノムDNAの抽出:
BCRC17346のコロニーを採取し、0.1%尿素を含む栄養ブロスに接種した。このブロスを180rpmで揺らし30℃で24時間培養した。DNA精製キットを用いて細菌からゲノムDNAを抽出した。まず初めに、4mLのブロスをチューブに導入し、5分間遠心分離した(5,870xg)。上清を廃棄し、ペレットを収集した。その後、200μLの溶液A(10mMトリス-HCl(pH8.0)、10mM EDTA、50 mM NaCl、20%(w/v)シュクロース、10mg/mLリゾチーム)によってペレットを再懸濁させた。この工程の目的は細菌の細胞壁を溶解させることであった。続いて、20μLのプロテイナーゼK(10mg/mL)及び200μLの抽出試薬を添加し、56℃で3時間反応のために静置した。この間、5分毎に混合物を上下逆さまにして少し振盪した。その後で、200μLの結合溶液を添加し、70℃で10分間置いた。続いて、200μLの無水アルコールをチューブに添加し、よく混合した。その後、その中の全ての液体をスピンカラムに移した。スピンカラムをコレクションチューブに適切に配置し、チューブを2分間遠心分離した(17,970xg)。溶出液を廃棄した。続いて、300μLの結合溶液をスピンカラムに添加し、このススピンカラムをさらに2分間遠心分離(17,970xg)した。溶出液を再び廃棄した。700μLの洗浄溶液をスピンカラムに加えた。2分間の遠心分離後に、溶出液を廃棄した。洗浄溶液の工程は1回繰り返した。最後に遠心分離(17,970xg)を5分間実施し、一切の残留アルコールを除去した。その後、スピンカラムを無菌的なチューブに適切に配置し、適量の滅菌水を導入してゲノムDNAを溶出させた。
【0023】
本アガラーゼDNAフラグメントのクローニング
P.アガレキセデンスのゲノムDNAをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の実施のための鋳型として用い、本アガラーゼDNAフラグメントを増幅させた。以下のプライマーセットをPCRで用いた。
【0025】
PCR混合物(50μL)は以下を含んでいた:1xHiFi緩衝液、200μMのdNTP(dATP、dTTP、dGTP及びdCTP)、1μMの増幅プライマー、100ngのP.アガレキセデンスのゲノムDNA、及び1UのVELOVITY
TM DNAポリメラーゼ(BIOLINE, 米国)。PCR条件は以下のように設定した:98℃で5分(1工程);98℃で30秒、55℃で30秒、72℃で3分(35サイクル);72℃で7分(1工程)。
PCR反応後にDNA電気泳動を実施して、予想サイズのDNAフラグメントの存在を立証した。続いて、PCR生成物を回収するために、PCR-M
TMクリーンアップシステムキット(GeneMark, 台湾)を用い、その製品マニュアルにしたがった。その後、アガラーゼ遺伝子のクローニングはCloneJET PCRクローニングキット(Thermo Scientific, 米国)を用いることによって実施した。クローニング手順は、当該キットのマニュアルを参照して実施した。前記連結混合物で大腸菌ECOS
TM9-5を形質転換した。形質転換の詳細は当該製品の指示書を参照するか、又は当業界の標準的実験プロトコルを改変することができる。
形質転換細菌をアンピシリン(100μg/mL)含有LB固形培地に接種した。コロニー形成後に、コロニーPCRを実施し形質転換株を選別した。まず初めに、PCR混合物(100μL)は以下を含んでいた:1xTaq反応緩衝液、200μMのdNTP(dATP、dTTP、dGTP及びdCTP)、1μMの増幅プライマー、及び2.5UのDreamTaq DNAポリメラーゼ(Thermo, 米国)。PCR混合物をPCRチューブに分注した(10μL/チューブ)。PCR反応のために、爪楊枝でコロニーをPCRチューブに採取した。PCR条件は以下のように設定した:95℃で5分(1工程);95℃で30秒、55℃で30秒、72℃で6分(25サイクル);72℃で7分(1工程)。DNA電気泳動を実施して予想サイズのDNAフラグメントの存在を立証した。選別した形質転換株のプラスミド(挿入DNAの保持を確認)をDNAシーケンシングのために抽出した(Tri-I Biotech, Inc.)。所望のアガラーゼDNAフラグメントを保持することがDNA配列によって確認されたプラスミドはpJET-PBAGA-2-DS-DSと称された;当該アガラーゼDNAフラグメントはパエニバシルス・アガレキセデンスゲノムのヌクレオチド配列の特定のフラグメントであったが、その遺伝子ではなかった。
【0026】
本発現ベクターの確立
これらの実験は本アガラーゼの発現ベクターを確立するために実施した。さらにまた、本発明は、上記で得たpJET-PBAGA-2-DS-DSのアガラーゼDNAフラグメントを基にして遺伝子操作技術によってアガラーゼ遺伝子の多様なフラグメントを確立することを意図した。これらの実験の目的は、アガラーゼの活性及び大腸菌発現系におけるその異種発現の収量が、そのC’アミノ酸で特定の長さが欠損したときに影響を受けるか否かを試験することであった。これらの実験で7つの発現ベクターを確立した。それらは以下である:pET-AgaB-2-775、pET-AgaB-2-875、pET-AgaB-2-975、pET-AgaB-2-1096、pET-AgaB-2-1275、pET-AgaB-2-1380、及びpET-AgaB-2-1811。詳細は以下のパラグラフに記載されている。
【0027】
(1)プライマーセット:
(そのN’末端から数えて)アガラーゼの1番目から775番目のアミノ酸をコードするDNA配列に特異的に設計されたプライマー:
【0028】
(そのN’末端から数えて)アガラーゼの1番目から875番目のアミノ酸をコードするDNA配列に特異的に設計されたプライマー:
【0029】
(そのN’末端から数えて)アガラーゼの1番目から975番目のアミノ酸をコードするDNA配列に特異的に設計されたプライマー:
【0030】
(そのN’末端から数えて)アガラーゼの1番目から1096番目のアミノ酸をコードするDNA配列に特異的に設計されたプライマー:
【0031】
(そのN’末端から数えて)アガラーゼの1番目から1275番目のアミノ酸をコードするDNA配列に特異的に設計されたプライマー:
【0032】
(そのN’末端から数えて)アガラーゼの1番目から1380番目のアミノ酸をコードするDNA配列に特異的に設計されたプライマー:
【0033】
(そのN’末端から数えて)アガラーゼの1番目から1811番目のアミノ酸をコードするDNA配列に特異的に設計されたプライマー:
【0034】
(2)PCR混合物(50μL):
前述の7つの発現ベクターの確立のために、2つの異なるPCR混合物を調製した。
PCR混合物1は以下の成分を含んでいた:1xGDP-HiFi PCR緩衝液B、200μMのdNTP(dATP、dTTP、dGTP及びdCTP)、1μMの増幅プライマー、100ngのpJET-PBAGA-2-DS及び1UのGDP-HiFi DNポリメラーゼ。
PCR混合物2は以下の成分を含んでいた:1-HiFi PCR緩衝液B、200μMのdNTP(dATP、dTTP、dGTP及びdCTP)、1μMの増幅プライマー、100ngのpJET-PBAGA-2-DS及び1UのVELOVITY
TM DNAポリメラーゼ。
【0035】
(3)PCR条件:
2つの異なるPCR条件プログラムを前述の7つの発現ベクターの確立のために設定した。
条件プログラム1:96℃で2分(1工程);94℃で30秒、60℃で30秒、68℃で90秒(35サイクル);68℃で5分(1工程)。
条件プログラム2:98℃で5分(1工程);98℃で30秒、55℃で30秒、72℃で3分(35サイクル);72℃で7分(1工程)。
【0036】
(4)発現ベクターの確立:
前記pET-AgaB-2-775、pET-AgaB-2-875、pET-AgaB-2-975、pET-AgaB-2-1096、pET-AgaB-2-1275、pET-AgaB-2-1380、及びpET-AgaB-2-1811のアガロース遺伝子の多様なDNAフラグメントを、前述のPCR条件下で前述のプライマー及びPCR混合物を用いてPCR反応によって調製した。実験設計は下記の表1に示す。
【0038】
PCR反応後にDNA電気泳動を実施して、予想サイズのDNAフラグメントの存在を立証した。続いて、PCR生成物を回収するために、PCR-M
TMクリーンアップシステムキット(GeneMark, 台湾)を用い、その製品マニュアルにしたがった。その後、PCR生成物をNdeI及びXhoIによって切断し、得られたDNAフラグメントをpET-29a(+)(以後pET-29aと呼ぶ;Merck Millipore, 米国)に連結した(前記pET-29a(+)もまた同じ制限酵素で前もって切断された)。続いて、前記連結生成物で大腸菌ECOS 9-5を形質転換した。その後、形質転換株を選別するためにコロニーPCRを実施した。DNA電気泳動を実施して、予想サイズのDNAフラグメントの存在を立証した。所望の挿入DNAを保持することを立証した形質転換株のプラスミドをDNAシーケンシングのために抽出した。所望のアガラーゼ遺伝子を保持することをDNAシーケンシングによって確認したプラスミドはそれぞれ以下のように称された:pET-AgaB-2-775(配列番号:21)、pET-AgaB-2-875(配列番号:20)、pET-AgaB-2-975(配列番号:19)、pET-AgaB-2-1096(配列番号:18)、pET-AgaB-2-1275(配列番号:17)、pET-AgaB-2-1380(配列番号:16)、及びpET-AgaB-2-1811(配列番号:15)。上記の各発現ベクターに含まれる個別のフラグメントは、
図1に示すようにそれぞれゲノム上に対応する位置を有する。
【0039】
試験2:本発明の組換えアガラーゼの誘導性発現及びその検出
培地プレートを用いた組換えアガラーゼの発現の観察
本発明の発現ベクターで大腸菌BL21(DE3)を形質転換した。単一コロニーを無菌的爪楊枝で採取し、カナマイシン(最終濃度:30μg/mL)及びイソプロピルβ-D-1チオガラクトピラノシド(IPTG;最終濃度:1mM)を含む固形培地プレートに接種した。この培養プレートを30℃で48時間培養した。続いて、10mLのヨード液(ヨウ素18g/L、ヨウ化カリウム36g/L)でプレートを満たした。10分間振盪した後、ヨード液を廃棄し、10mLのNaCl(1M)を添加して染色液を洗い流した。その後、透明な輪で取り囲まれたコロニーはアガラーゼを発現できるコロニーであった。
図2に示した結果を参照されたい。発現ベクターpET-AgaB-2-775のグループを除いて、本発現ベクターの他の全ての実験グループによって発現されたアガラーゼは活性を示し、それらの間に明白な相違はなかった。発現ベクターpET-AgaB-2-775のグループが透明な輪をもたなかった理由は、形質転換株がアガラーゼを発現できなかったか、又は発現されたアガラーゼが活性をもたなかったためであるかもしれない。
【0040】
タンパク質電気泳動による組換えアガラーゼの発現の観察
単一コロニーを無菌的な爪楊枝で採取し、カナマイシン(最終濃度:30μg/mL)を含む5mLのLB培養メジウムに接種した。前記培養メジウムを37℃で培養し、180rpmで一晩振盪した。続いて100μLの培養ブロスを10mLの新しいLB培養メジウム(カナマイシンを含む(最終濃度:30μg/mL))に添加した。前記培養メジウムを、そのOD
600が約0.4から0.6に達するまで37℃で培養し、180rpmで振盪した。その後、0.1mMのIPTGを個別温度で添加し、組換えタンパク質の発現を誘導した。4時間及び24時間の誘導後、遠心分離(20,630xg、5分間、4℃)のために2mLのブロスをそれぞれ収集しペレットを得た。ペレットに含まれるタンパク質をそれらの可溶性に基づいて分離した。続いて、タンパク質電気泳動を実施して発現されたアガラーゼの可溶性を観察した。
図3はこの実験の結果を示す。データによれば、本発現ベクターによって発現されるアガラーゼは可溶性を示した。
図2に示すデータと合わせれば、これらのデータは、培養プレート活性試験ではpET-AgaB-2-775のグループで透明な輪が観察されなかった理由は、この発現ベクターによって発現されたアガロースは活性をもたない可能性があることによることを示唆した。
【0041】
本アガロースの活性試験
単一コロニーを無菌的な爪楊枝で採取し、カナマイシン(最終濃度:30μg/mL)を含む5mLのLB培養メジウムに接種した。前記培養メジウムを37℃で培養し、180rpmで一晩振盪した。続いて100μLの培養ブロスを10mLの新しいLB培養メジウム(カナマイシン(最終濃度:30μg/mL)を含む)に添加した。前記培養メジウムを、そのOD
600が約0.4から0.6に達するまで37℃で培養し、180rpmで振盪した。その後、0.1mMのIPTGを個別温度で添加し、組換えタンパク質の発現を誘導した。誘導は4時間実施した。続いて1mLのブロスを収集し、その濃度を2.0のOD
600に調整した。その後、ブロスを遠心分離し(20,630xg、5分間、4℃)、ペレットを得た。ペレットを溶解緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、500mM NaCl及びpH7.4)に再懸濁し、その中の細菌を破壊した。もう1回遠心分離(20,630xg、5分間、4℃)を実施した後、上清(可溶性細胞内タンパク質を含む)をその酵素活性のために収集した。
酵素活性試験は以下のように実施した。850μLの0.24%(w/v)の低融点アガロース溶液(アガラーゼの基質)を100μLの0.5Mリン酸緩衝溶液(pH6)と良く混合し、完全に溶解するまで加熱した。続いて、この混合物を40℃で10分間置いた。前述の上清の50μLを当該酵素反応基質に添加し、40℃で10分間反応させた。反応後、1mLのDNS溶液(1%の3,5-ジニトロサリチル酸、30%の酒石酸カリウムナトリウム四水和物、1.6% NaOH)を直ちに添加し、100℃で5分間加熱した。反応物を冷却後、1mLの脱イオン水を添加し、前記混合物の100μLを96ウェルプレートに移した。前記混合物の540nmでの吸収をELISAリーダーで検出した。多様な濃度のD-ガラクトースについてDNS比色反応を実施し、還元糖の標準曲線を作成した。標準曲線にしたがって、本アガラーゼによる酵素反応から生成された還元糖の量を上記の540nmにおける吸収を基準に計算できる。1活性単位(U)は、1分当たり1μモルのガラクトースを生成するために必要な問題の酵素の量と定義される。
1ミリリットルの培養メジウムの酵素活性(U/mL)は
図4に示されている。これらの結果は、本発現ベクターpET-AgaB-2-775によって発現されるアガラーゼは活性を示すことができないことを証明した。換言すると、本アガラーゼの最初のN’末端
875アミノ酸はその活性に必須である。
【0042】
試験3:本組換えアガラーゼの精製及びその特性の分析
組換えアガラーゼの誘導性発現及び精製
単一コロニーを無菌的な爪楊枝で採取し、カナマイシン(最終濃度:30μg/mL)を含む12mLのLB培養メジウムに接種した。前記培養メジウムを37℃で培養し、180rpmで一晩振盪した。続いてこの培養ブロスの10mLを1Lの新しいLB培養メジウム(カナマイシン(最終濃度:30μg/mL)を含む)に添加した。前記培養メジウムを、そのOD
600が約0.4から0.6に達するまで37℃で培養し、180rpmで振盪した。その後、0.1mMのIPTGを個別温度(18℃、25℃、30℃、37℃)で添加し、組換えタンパク質の発現を誘導した。24時間誘導後、ブロスを遠心分離して(10,000xg、10分間、4℃)ペレットを収集した。ペレットを10mLの溶解緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、500mM NaCl及びpH7.4)に再懸濁し、その中の細菌を音波発生装置によって破壊した。続いてもう1回遠心分離を実施し上清を収集した。この上清を0.22μmフィルターでろ過した。
その後、タンパク質精製のために金属イオン固定アフィニティークロマトグラフィーを実施し、組換えタンパク質のC’末端Hisタグがニッケルイオン又はコバルトイオンと配位共有結合を形成する性質を利用した。組換えアガラーゼの精製手順は、5mLのHiTrap
TM Niエクセルカラム(GE Healthcare, Sweden)を据え付けたタンパク質液体クロマトグラフィー系AKTAプライムプラス(GE Healthcare, Sweden)を用いて実施した。まず初めに、HiTrap
TM Niエクセルカラムを25mLの溶解緩衝液で平衡させ、さらに上記で得られた上清をカラムに導入した。全サンプルを導入した後、100mLの洗浄緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、500mM NaCl、30mMイミダゾール(pH7.4))を導入して、非特異的結合タンパク質を洗い流した。最後に、150mLの溶出緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、500mM NaCl、250mMイミダゾール(pH7.4))を導入して、樹脂に結合したアガラーゼを溶出させた。最後の工程は、高濃度イミダゾールと樹脂上の組換えアガラーゼとの結合競合を利用した(それによりアガラーゼを樹脂から溶出させる)。遠心分離(2,600xg、4℃)のために、前記精製アガラーゼ溶液をAmiconウルトラ-15ウルトラセル-30K遠心分離チューブ(Merck Millipore, 米国)に適切な体積で配置し、続いて4℃で保存した。
【0043】
多様な温度で本発明の発現ベクターによって得られた組換えアガラーゼは下記の表2に示されている。大腸菌BL21(DE3)(pET-AgaB-2-875)では、可溶性アガラーゼの最大生産は18℃で24時間誘導によって達成された。大腸菌BL21(DE3)(pET-AgaB-2-975)では、可溶性アガラーゼの最大生産は18℃で24時間誘導によって達成された。大腸菌BL21(DE3)(pET-AgaB-2-1096)では、可溶性アガラーゼの最大生産は18℃で24時間誘導によって達成された。大腸菌BL21(DE3)( pET-AgaB-2-1275)では、可溶性アガラーゼの最大生産は18℃で24時間誘導によって達成された。大腸菌BL21(DE3)(pET-AgaB-2-1380)では、可溶性アガラーゼの最大生産は18℃で24時間誘導によって達成された。大腸菌BL21(DE3)(pET-AgaB-2-1811)では、可溶性アガラーゼの最大生産は18℃で24時間誘導によって達成された。前述の結果は、より低い温度又はより長時間の誘導が、本発明の可溶性アガラーゼ欠損変異の生産の増加に有利であることを示した。それ以外に、当該結果はまた、C’末端欠損変異は組換えタンパク質の生産を高めるために具合が良いことを示した。
【0044】
表2:本発明の発現ベクターを用いたアガラーゼの生産
【0045】
本組換えアガラーゼの特性についての試験
(1)好ましい触媒温度:
0.24%(w/v)の低融点アガロース溶液(850μL)を0.5Mのリン酸緩衝溶液(100μL)と混合して混合物を生成した。前記混合物を加熱して、その中の基質を溶解させた。続いて、混合物を種々の温度(30から80℃)に10分間置いた。その後、当該混合物を含む各チューブに50μLのアガラーゼ溶液(0.1U)を添加し、前記混合物を種々の温度(20から80℃)に置き10分間反応させた。その後のDNS比色反応及び酵素活性単位の計算は上記で説明したように実施した。前述の反応で検出された最高の酵素活性単位を100%と定義した(それらの中でもっとも好ましい温度で得られる酵素活性である)。続いて、他の温度で得られた、最高酵素活性に対する相対的酵素活性を計算した。本実験の結果(
図5)によれば、本発明の各アガラーゼの好ましい触媒温度は40から50℃であった(AgaB-2-875、AgaB-2-975、AgaB-2-1096、AgaB-2-1275、AgaB-2-1380及びAgaB-2-1811の好ましい触媒温度はそれぞれ40℃、45℃、45℃、50℃、50℃及び45℃であった)。
【0046】
(2)好ましい触媒pH値:
0.24%(w/v)の低融点アガロース溶液(850μL)を、それぞれ100μLの以下の溶液と混合して混合物を生成した;0.5Mのクエン酸緩衝溶液(pH3−6)、リン酸緩衝溶液(pH6−8)、及びグリシン-NaOH緩衝溶液(pH9−10)。前記混合物を加熱して、その中の基質を溶解させ、種々のpH値の反応基質を調製した。各々950μLの反応基質を、上記で得た当該酵素の好ましい触媒温度に10分間置いた。続いて、50μLのアガラーゼ溶液(0.1U)を添加し、好ましい触媒温度でさらに10分間反応させた。その後のDNS比色反応及び酵素活性単位の計算は上記で説明したように実施した。前述の反応で検出された最高の酵素活性単位を100%と定義した(最も好ましい触媒pH値で得られる酵素活性である)。続いて、他のpH値で得られた、最高酵素活性に対する相対的酵素活性を計算した。本実験結果は、本発明の各アガラーゼの好ましいpH値は6であることを示している。
【0047】
(3)酵素の反応速度分析:
多様な濃度(0.24〜3.53%(w/v))の低融点アガラーゼ850μLをそれぞれ100μLのリン酸緩衝溶液(0.5M)と混合して混合物を生成した。前記混合物を加熱して、その中の基質を溶解させ、上記で得た当該酵素の好ましい触媒温度に10分間置いた。その後、50μLのアガラーゼ溶液(0.1U)を添加し、好ましい触媒温度で10分間反応させた。その後のDNS比色反応及び酵素活性単位の計算は上記で説明したように実施した。基質濃度対酵素反応速度図を作成して、基質飽和曲線を入手できる。それを基にして、飽和濃度値(ミハエリス定数、Km)及び最大反応速度(Vmax)を、ラインウィーバー-バークプロット(二重逆数プロット)を用いて計算できる。続いて、Vmax値を用いることによって代謝回転数(Kcat)及び触媒効率(Kcat/Km)を計算できる。
本実験の結果は下記の表3に示されている。先のパラグラフで示した以前の実験は、C’末端欠損変異は生産増加に有益であることを示した。本実験はさらに、C’末端欠損変異は触媒効率(Kcat/Km)を低下させる可能性があることを立証した。それにもかかわらず、本組換えアガラーゼは商業化のために十分な触媒効率を有した。特にAgaB-2-1275及びAgaB-2-1811は他のものよりも良好な触媒効率を示した。
【0049】
(4)本アガラーゼの活性に対する金属イオンの影響:
20mMの金属イオン溶液(100μL)、0.27%(w/v)のアガロース溶液(750μL)、及び0.5Mのリン酸緩衝溶液(pH6)(100μL)を均等に混合し、その中の基質が完全に溶解するまで加熱した。続いて、前記混合物を好ましい触媒温度に10分間置いた。その後、50μLのアガラーゼ溶液(0.1U)を添加し、混合物を好ましい触媒温度に置き、さらに10分間反応させた。その後のDNS比色反応及び酵素活性単位の計算は上記で説明したように実施した。相対的酵素活性の比較は、本発明の組換えアガラーゼの加水分解能に対する種々の金属塩の影響を示した。下記の表4は本実験の結果を示す。金属塩(金属イオン)は本アガラーゼ(AgaB-2-1275及びAgaB-2-1811)の活性を高めた。MnCl
2は、本アガラーゼの活性を少なくとも2倍増加させることができた。
【0050】
表4:アガラーゼの活性に対する金属イオンの影響
【0051】
(5)本アガラーゼの適切な基質の分析:
これらの実験は本アガラーゼが加水分解できる基質を検査するために実施された。0.24%(w/v)のアガロース溶液、低融点アガロース溶液、寒天溶液、アルギン酸ナトリウム溶液、カラギーナン溶液、可溶性デンプン溶液、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液の850μLをそれぞれ100μLのPBS(pH6、0.5M)と混合し、その中の全ての基質が完全に溶解するまで加熱した。前記混合物を好ましい触媒温度に10分間置いた。続いて、50μLのアガラーゼ溶液(0.1U)を当該基質混合物に添加し、混合物を好ましい触媒温度に置き、さらに10分間反応させた。その後のDNS比色反応及び酵素活性単位の計算は上記で説明したように実施した。実験結果(
図7)は、本組換えアガラーゼは低融点アガロースに対して最高の加水分解活性を有し、さらにアガロース及び寒天に対してもまた加水分解活性を有することを示した。しかしながら、本アガラーゼはアルギン酸ナトリウム、カラギーナン、可溶性デンプン及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを加水分解できなかった。
【0052】
(6)本アガラーゼの加水分解生成物の検査:
これらの実験は、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いてアガラーゼの加水分解生成物を検査するために実施された。1.18%(w/v)の低融点アガロース溶液(850μL)をそれぞれ100μLのPBS(pH6、0.5M)と混合し、その中の全ての基質が完全に溶解するまで加熱した。前記混合物を40℃に10分間置いた。続いて、50μLのアガラーゼ溶液(2U/mL)を当該基質混合物に添加し、混合物を40℃に置きさらに10分間反応させた。その後で、反応後の混合物を遠心分離し(15,000rpm、4℃、10分)、0.22μmのフィルターメンブレンでろ過し、-20℃で保存した。8μLの本アガラーゼ加水分解生成物、2μLのネオアガロビオース溶液(10μg/μL)、2μLのネオアガロテトラオース溶液(10μg/μL)、及び2μLのネオアガロヘキソース溶液(10μg/μL)を、シリカゲル60薄層クロマトグラフィー(TLC)プレート(Merck Millipore, 米国)にドット添加した。当該シートにドット添加したサンプルが乾燥した後、デベロップタンクに入ったデベロップ緩衝液(1-ブタノール50%、酢酸25%、脱イオン水25%)に前記フィルムを斜めに挿入した。デベロップ完了後にTLCプレートを取り出して乾燥させ、続いて0.1Mのフタル酸アニリン溶液(Sigma-Aldrich, 米国)をプレート上にスプレーした。乾燥後、プレートを加熱し、検査サンプルの色及びRf値(保持系数値)を提示し、さらに標準サンプルを計算した。アガラーゼの加水分解生成物はRf値から同定した。結果は、本アガラーゼの主要な加水分解生成物はネオアガロテトラオース(生成物の少なくとも40重量%を占める)であることを示した。当該加水分解生成物はまた、ネオアガロヘキソース及び少なくとも6糖単位を含むオリゴ糖を含んでいた。当該生成物が実質的にネオアガロビオースを含まないことは注目に値する。