特許第6472503号(P6472503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6472503大型でターボチャージ付きの圧縮点火2行程内燃機関向けの燃料弁、これを用いた内燃機関、およびその機関の動作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472503
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】大型でターボチャージ付きの圧縮点火2行程内燃機関向けの燃料弁、これを用いた内燃機関、およびその機関の動作方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 43/04 20060101AFI20190207BHJP
   F02M 47/00 20060101ALI20190207BHJP
   F02M 61/16 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   F02M43/04
   F02M47/00 A
   F02M61/16 U
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-231809(P2017-231809)
(22)【出願日】2017年12月1日
(65)【公開番号】特開2018-91334(P2018-91334A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2018年4月13日
(31)【優先権主張番号】PA201670955
(32)【優先日】2016年12月1日
(33)【優先権主張国】DK
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516330468
【氏名又は名称】マン ディーゼル アンド ターボ フィリアル ア マン ディーゼル アンド ターボ エスイー チュスクラン
【氏名又は名称原語表記】MAN Diesel & Turbo,filial af MAN Diesel & Turbo SE,Tyskland
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン フルト
(72)【発明者】
【氏名】モーデン クール
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン シェホルム
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−176473(JP,A)
【文献】 実開昭61−084166(JP,U)
【文献】 特開平06−159182(JP,A)
【文献】 実開昭63−65855(JP,U)
【文献】 特開2016−27263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 43/04,47/00−47/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型で低速運転式のターボチャージ付き2行程圧縮点火式内燃機関の燃焼室内へ液体燃料を噴射する燃料弁(50)であって、
後端および前端を有する細長い弁ハウジング(52)と、
基部(46)から閉じた先端部(59)まで延びる細長いノズル本体、前記基部(46)から前記閉じた先端部(59)まで延びる主ボア(55)、および前記主ボア(55)に連結された複数の噴口(56)を備えるノズル(54)であって、
前記細長い弁ハウジング(52)の前記前端に配置され、前記基部(46)が前記前端に連結される、ノズル(54)と、
加圧液体燃料源(60)に連結するための前記細長い弁ハウジング(52)内の燃料入口ポート(53)と、
前記細長い弁ハウジング(52)内の長手方向ニードル・ボア(64)内に、前記ニードル・ボア(64)との間に隙間をあけて摺動可能に受け取られた軸方向に変位可能な弁ニードル(61)であって、閉位置および開位置を有し、前記閉位置で弁座(69)に位置し、前記開位置で前記弁座(69)から揚程を有し、前記閉位置の方へ付勢されており、
前記弁座(69)が、前記細長い弁ハウジング(52)内で前記弁ハウジング(52)内の燃料室(58)と前記細長い弁ハウジング(52)の前記前端内の出口ポート(68)との間に配置され、
前記出口ポート(68)が、前記ノズル(54)内の前記主ボア(55)に直接連結し、
前記燃料室(58)が、前記燃料入口ポート(53)に連結され、
前記隙間が、前記ニードル・ボア(64)の一方の端部で前記燃料室(58)へ開いている、軸方向に変位可能な弁ニードル(61)と、
加圧潤滑油源(57)に連結するための潤滑油入口ポート(70)と、
前記ニードル・ボア(64)の長さに沿って第1の位置(P1)で前記潤滑油入口ポート(70)を前記隙間に連結する潤滑油供給導管(47)と、
加圧点火液源(65)に連結するための点火液入口ポート(67)と
を備える燃料弁(50)において、
前記点火液入口ポート(67)から前記弁座(69)または前記ニードル・ボア(64)の前記長さに沿って前記第1の位置(P1)より前記燃料室(58)に近い第2の位置(P2)で前記隙間まで延びる点火液導管(66)とを有することを特徴とする燃料弁。
【請求項2】
前記弁ニードル(61)が前記弁座(69)に位置するとき、前記弁座(69)への前記点火液導管(66)の開口が、前記弁ニードル(61)によって閉鎖される、請求項に記載の燃料弁。
【請求項3】
前記主ボア(55)が、前記基部(46)へ開いている、請求項1又は2に記載の燃料弁。
【請求項4】
前記加圧点火液源(65)が、前記加圧液体燃料源(60)の圧力より高い圧力を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の燃料弁。
【請求項5】
加圧作動流体源(97)に連結するための前記細長い弁ハウジング(52)内の作動液ポート(78)と、
前記弁ハウジング(52)内の第1のボア(81)内に受け取られたポンプ・ピストン(80)であって、前記ポンプ・ピストン(80)の一方の側の前記第1のボア(81)内にポンプ室(82)を有するポンプ・ピストン(80)と、
前記弁ハウジング(52)内の第2のボア(84)内に受け取られた作動ピストン(83)であって、前記作動ピストン(83)の一方の側の前記第2のボア(84)内に作動室(85)を有する作動ピストン(83)とをさらに備え、
前記ポンプ・ピストン(80)が、前記作動ピストン(83)とともに動くように前記作動ピストン(83)に連結され、
前記作動室(85)が、前記作動液ポート(78)に流体連結され、
前記ポンプ室(82)が、前記燃料室(58)に連結された出口及び前記ポンプ室(82)から前記燃料入口ポート(53)への流れを防止する、前記細長い弁ハウジング(52)内の逆止め弁(74)を介して、前記燃料入口ポート(53)に連結された入口を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の燃料弁。
【請求項6】
前記燃料室(58)が、前記弁ニードル(61)を取り囲み、前記弁座(69)へ開いており、前記弁座(69)が、前記燃料室(58)と前記出口ポート(68)との間に配置される、請求項1からのいずれか一項に記載の燃料弁。
【請求項7】
前記弁ニードル(61)が、前記燃料室(58)内の圧力が所定の閾値を超過すると、前記付勢に逆らって前記閉位置から前記開位置へ動くように構成される、請求項1からのいずれか一項に記載の燃料弁。
【請求項8】
冷却液入口ポートおよび冷却液出口ポートと、前記燃料弁(50)、特に前記燃料弁(50)のうち前記前端に最も近い部分を冷却する冷却液流路(44)とをさらに備える、請求項1からのいずれか一項に記載の燃料弁。
【請求項9】
前記細長い弁ハウジング(52)が、後部部分(35)に連結された前部部分(33)を備え、前記軸方向に変位可能な弁ニードル(61)が、前記前部部分(33)内に配置され、前記弁ニードル(61)と組み合わさる長手方向ボア(64)が、前記前部部分(33)内に形成され、前記第1のボア(81)及び前記第2のボア(84)前記後部部分(35)内に形成される、請求項に記載の燃料弁。
【請求項10】
前記ポンプ・ピストン(80)を前記第1のボア内で封止するように前記潤滑油入口ポート(70)を前記第1のボア(81)に連結する導管(30)をさらに備える、請求項に記載の燃料弁。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の燃料弁(50)を備える、大型で低速運転式のターボチャージ付き2行程圧縮点火式内燃機関。
【請求項12】
制御圧力Pfを有する加圧液体燃料源(60)と、制御圧力Psを有する加圧潤滑油源(57)と、制御圧力Pifを有する加圧点火液源(65)とをさらに備える、請求項11に記載の機関。
【請求項13】
PsがPfより高く、PifがPfより高い、請求項12に記載の機関。
【請求項14】
前記ノズル(54)内の前記主ボア(55)内へ前記液体燃料が入る際に前記液体燃料を点火するように構成される、請求項11から13のいずれか一項に記載の機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特に点火するのが困難または不確実な液体燃料により動作する燃料供給システムを有する、大型でターボチャージ付きの2行程圧縮点火内燃機関の燃焼室内へ燃料を噴射する燃料弁、および大型の2行程圧縮点火内燃機関の燃焼室内へ、液体燃料、特に点火するのが困難または不確実な液体燃料を噴射する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロスヘッドタイプの大型で低速のターボチャージ付き2行程圧縮点火式機関は、典型的には、大型の船の推進システム内で、または発電所内の原動機として使用される。これらの機関は、重油により動作することが非常に多い。
【0003】
最近、大型でターボチャージ付きの2行程圧縮点火式機関は、ガス、メタノール、石炭スラリー、水と油の混合物、石油コークスなどの代替タイプの燃料を取り扱うことが可能であることが求められている。
【0004】
水と油の混合物など、これらの代替燃料のいくつかには、コストおよび排出量を低減させる可能性がある。
【0005】
しかし、大型で低速ユニフローのターボチャージ付き2行程内燃機関内で水の混合物を使用することには問題が伴う。
【0006】
それらの問題の1つは、燃焼室内へ噴射した際にこれらの燃料が圧縮点火しようとする性質および予測可能性であり、この性質と予測可能性はどちらも、圧縮点火された機関内で制御下に置くために不可欠である。したがって、既存の大型で低速ユニフローのターボチャージ付き2行程内燃機関では、適切にタイミングがとれた燃料の確実な点火を保証するために、点火するのが困難または不確実な燃料の噴射と同時に、油または他の点火液のパイロット噴射が使用される。この問題は、たとえば燃料油と水の混合物など、点火するのが難しいいくつかのタイプの燃料に見られる。
【0007】
大型で低速ユニフローのターボチャージ付き2行程内燃機関は、典型的には、大型の外航貨物船の推進に使用され、したがって信頼性が最も重要である。代替燃料によるこれらの機関の動作は、依然として比較的最近の開発であり、ガスによる動作の信頼性はまだ、従来燃料のレベルに到達していない。したがって、既存の大型で低速の2行程ディーゼル機関はすべて、たとえば気体燃料などの代替燃料で動作する燃料システムと、燃料油で動作する燃料システムとを有する2重燃料機関であり、したがって燃料油で走行するときしか全出力で動作することができない。
【0008】
これらの機関の燃焼室は直径が大きいため、典型的には、1つのシリンダにつき3つの燃料噴射弁を備えており、これら3つの燃料噴射弁は、中心排気弁の周りに約120°の角度で分離されている。したがって、2重燃料システムの場合、1つのシリンダにつき3つの代替燃料弁と、3つの従来燃料油弁とが存在し、したがってシリンダの上部カバーは、比較的密集した場所になっている。
【0009】
既存の2重燃料機関において、燃料油弁は、気体燃料による動作中にパイロット油噴射を提供するために使用されてきた。これらの燃料油弁は、燃料油で機関を全負荷で動作させるためだけに必要とされる量の燃料油を送達することが可能になるように寸法設定される。しかし、パイロット噴射で噴射される油の量は、排出量の所望の低減を得るために、可能な限り小さくするべきである。全負荷での動作に必要な大きい量を送達することもできるフルサイズの燃料噴射システムによるそのようなわずかな量の投与量は、甚大な技術的問題をもたらし、実際には実現するのが非常に困難であり、したがって既存の機関において、パイロット油の投与量は、1回の燃料噴射事象につき、特に中程度から低負荷で所望される量より多い量となっている。小さいパイロット量を取り扱うことができる追加の小型の噴射システムの代替は、かなり複雑であり、コストがかかる。さらに、追加の小型のパイロット油噴射弁により、シリンダの上部カバーがさらに密集することになる。
【0010】
EP3070321は、大型でターボチャージ付きの2行程自己点火式内燃機関の燃焼室内へ低引火点液体燃料を噴射する燃料弁を開示している。この燃料弁は、噴口を有するノズルを有する細長い燃料弁ハウジングと、加圧液体燃料源に連結するための細長い燃料弁ハウジング内の燃料入口ポートと、細長い燃料弁ハウジング内の作動液ポートと、細長い弁ハウジング内の長手方向ボア内に摺動可能に受け取られた軸方向に変位可能な弁ニードルであって、弁ニードルが弁座に位置する閉位置および弁ニードルが弁座から揚程を有する開位置を有し、閉位置の方へ付勢される弁ニードルと、弁ニードルを取り囲み、弁座へ開いている燃料室と、第1のボア内に受け取られたポンプ・ピストンであって、ポンプ・ピストンの一方の側の第1のボア内にポンプ室を有するポンプ・ピストンと、第2のボア内に受け取られた作動ピストンであって、作動ピストンの一方の側の第2のボア内に作動室を有し、ポンプ・ピストンが、作動ピストンとともに動くように作動ピストンに連結され、作動室(85)が、作動液ポートに連結され、ポンプ室が、燃料室に連結された出口および燃料入口ポートに連結された入口を有する、作動ピストンと、封止液入口ポートと、ポンプ・ピストンを第1のボア内で封止するように封止液入口ポートを第1のボアに連結する導管とを有する。
【0011】
概して、いくつかの理由のため、点火液の別個のパイロット噴射により動作することは望ましくない。MCR負荷の3%を下回ると、確実な噴射器動作を得るのが困難になることが分かっている。第2に、シリンダの外で行われるあらゆる外部点火は、少なくとも最小量の燃料を必要とし、パイロット噴射の長期的な機能は、それ以上検証されていない。摩耗した燃料ポンプは、パイロット噴射機能を劣化させる可能性があることが予期される。加えて、急速パイロット噴射プロファイルにより、燃料システムの摩耗が増大する可能性があることも予期される。
【0012】
また、これらの燃料のいくつかは引火点が低く、安全上の問題をもたらす。知られている燃料弁の構造では、ニードルの設計のため、弁ニードルのシャフトとシャフトが案内されるボアとの間で常に漏れが生じる。したがって、封止の目的と潤滑の目的の両方のため、シャフトとボアとの間の隙間に、加圧封止液「封止油」の供給が適用される。漏れを最小に抑えるために、この隙間は、非常に狭い公差で可能な限り小さく抑えられており、そのような小さい隙間は、シャフトとボアとの間の潤滑を必要とする。
【0013】
2つの流体が混合した場合、封止油と燃料の分離は困難であり、したがってシステム内でエラーが生じる。潤滑油システム内で燃料を検出すると、機関が停止し、根本的原因を問題解決するのは困難であることが多い。
【0014】
別の安全に関連する問題は、機関が低引火点燃料で動作していないとき、たとえば機関が動作していないとき、または別のタイプの燃料で動作する2重燃料機関であるとき、低引火点燃料が燃料弁および燃料弁につながる管材内に残ることが認められないという船級協会による要件である。したがって、燃料弁および燃料弁につながる管材または配管をパージするために準備しておく必要がある。
【0015】
これらの低引火点燃料の別の難題は、潤滑特性が比較的乏しいことであり、潤滑液を塗布しなければ、可動部分間の非常に小さい隙間で使用することはできない。
【発明の概要】
【0016】
この背景に基づき、本出願の目的は、上述した問題を克服しまたは少なくとも低減させる大型でターボチャージ付きの圧縮点火2行程内燃機関向けの燃料弁を提供することである。
【0017】
この目的は、一態様によれば、大型で低速運転式のターボチャージ付き2行程圧縮点火式内燃機関の燃焼室内へ液体燃料を噴射する燃料弁を提供することによって実現され、この燃料弁は、後端および前端を有する細長い弁ハウジングと、基部から閉じた先端部まで延びる細長いノズル本体、基部から閉じた先端部まで延びる主ボア、および主ボアに連結された複数の噴口を備えるノズルであって、細長い弁ハウジングの前端に配置され、基部が前端に連結される、ノズルと、加圧液体燃料源に連結するための細長い燃料弁ハウジング内の燃料入口ポートと、細長い弁ハウジング内の長手方向ニードル・ボア内に、弁ニードルとニードル・ボアとの間に隙間をあけて摺動可能に受け取られた軸方向に変位可能な弁ニードルであって、閉位置および開位置を有し、閉位置で弁座に位置し、開位置で弁座から揚程を有し、閉位置の方へ付勢され、弁座が、細長い弁ハウジング内で弁ハウジング内の燃料室と細長い弁ハウジングの前端内の出口ポートとの間に配置され、出口ポートが、ノズル内の主ボアに直接連結し、燃料室が、燃料入口ポートに連結され、隙間が、ニードル・ボアの一方の端部で燃料室へ開いている、軸方向に変位可能な弁ニードルと、加圧潤滑油源に連結するための潤滑油入口ポートと、ニードル・ボアの長さに沿って第1の位置で潤滑油入口ポートを隙間に連結する潤滑油供給導管と、加圧点火液源に連結するための点火液入口ポートと、ニードル・ボアの長さに沿って第1の位置より燃料室に近い第2の位置で点火液入口ポートから燃料室または隙間まで延びる点火液導管とを備える。
【0018】
点火するのが困難な液体燃料を噴射する燃料噴射弁のノズル内へ点火液を供給する利点は、別個のパイロット弁を介した外部のパイロット噴射なしで機関が動作できることである。その代わりに、点火は、点火するのが困難な液体燃料を噴射する燃料弁のノズル内で行われる。点火液は、ノズル内の燃焼室内で点火し、最初の炎は燃焼室から保護されており、噴射事象に続いてまたは噴射事象と同時に液体燃料を点火する確率がより高くなる。これにより、点火液の消費を著しく低減させることが可能になる。試験では、MCR負荷の1%を大きく下回るレベルが可能であることが示された。
【0019】
たとえば潤滑油システムとは別個に、点火液の独立した供給を提供することによって、点火液の投与量をより正確かつ確実に制御することができ、点火液のタイプを容易に変更することができる。上流の隙間および供給圧力を変動させることによって、封止油システムの作用を損なうことなく、点火液量の完全な制御が得られる。点火液は、システム油に制限されなくなる。たとえば、ディーゼル油またはDME(ジメチル・エーテル)などのより容易に点火される液体を使用することができる。
【0020】
第1の態様の第1の可能な実装形態では、点火液導管は、弁座に隣接する位置で、点火液入口ポートから燃料室まで延びる。
【0021】
第1の態様の第2の可能な実装形態では、点火液導管は、点火液入口ポートから弁座まで延びる。
【0022】
第1の態様の第3の可能な実装形態では、弁ニードルが弁座に位置するとき、弁座への点火液導管は、弁ニードルによって閉鎖される。
【0023】
第1の態様の第4の可能な実装形態では、主ボアは、基部へ開いている。
【0024】
第1の態様の第5の可能な実装形態では、点火液源は、液体燃料源の圧力より高い圧力を有する。
【0025】
第1の態様の第6の可能な実装形態では、燃料弁は、加圧作動流体源に連結するための細長い燃料弁ハウジング内の作動液ポートと、弁ハウジング内の第1のボア内に受け取られたポンプ・ピストンであって、ポンプ・ピストンの一方の側の第1のボア内にポンプ室を有するポンプ・ピストンと、弁ハウジング内の第2のボア内に受け取られた作動ピストンであって、作動ピストンの一方の側の第2のボア内に作動室を有する作動ピストンとをさらに備え、ポンプ・ピストンは、作動ピストンとともに動くように作動ピストンに連結され、作動室は、作動液ポートに流体連結され、ポンプ室は、ポンプ室から燃料入口ポートへの流れを防止する細長い燃料弁ハウジング内の逆止め弁を介して、燃料室に連結された出口および燃料入口ポートに連結された入口を有する。
【0026】
第1の態様の第7の可能な実装形態では、燃料室は、弁ニードルを取り囲み、弁座へ開いており、弁座は、燃料室と出口ポートとの間に配置される。
【0027】
第1の態様の第8の可能な実装形態では、弁ニードルは、燃料室内の圧力が所定の閾値を超過すると、付勢に逆らって閉位置から開位置へ動くように構成される。
【0028】
第1の態様の第9の可能な実装形態では、燃料弁は、冷却液入口ポートおよび冷却液出口ポートと、燃料噴射弁、特に燃料弁のうち前端に最も近い部分を冷却する冷却液流路とをさらに備える。
【0029】
第1の態様の第10の可能な実装形態では、細長い弁ハウジングは、後部部分に連結された前部部分を備え、軸方向に変位可能な弁ニードルは、前部部分内に配置され、第1のボア、第2のボア、および整合する長手方向ボアは、後部部分内に形成される。
【0030】
第1の態様の第11の可能な実装形態では、燃料弁は、ポンプ・ピストンを第1のボア内で封止するように封止液入口ポートを第1のボアに連結する導管をさらに備える。
【0031】
第2の態様によれば、第1の態様によるその任意の可能な実装形態の燃料弁を備える、大型で低速運転式のターボチャージ付き2行程圧縮点火式内燃機関が提供される。
【0032】
第2の態様の第1の可能な実装形態では、機関は、制御圧力Pfを有する加圧燃料源と、制御圧力Psを有する加圧潤滑油源と、制御圧力Pifを有する加圧点火液源とをさらに備える。
【0033】
第2の態様の第1の可能な実装形態では、PsはPfより高く、PifはPfより高い。
【0034】
第2の態様の第1の可能な実装形態では、機関は、ノズル内の主ボア内へ燃料が入る際に燃料を点火するように構成される。
【0035】
第3の態様によれば、大型で低速のターボチャージ付き2行程圧縮点火内燃機関を動作させる方法が提供され、この方法は、加圧液体燃料を第1の高圧で機関の燃料弁へ供給し、燃料弁が、後端および前端を有する細長い弁ハウジングを有し、燃料弁が、ノズルの内部を機関のシリンダ内の燃焼室に連結する複数の噴口を有する中空ノズルを有し、ノズルが、基部および細長いノズル本体を備え、ノズルが、その基部で細長い弁ハウジングの前端に連結され、ノズルが、閉じた先端部を有し、噴口が先端部に近接して配置され、点火液を第2の高圧で燃料弁へ供給し、第2の高圧が、第1の高圧より高く、中空ノズルの上で弁座と協働する変位可能な弁ニードルにより液体燃料の噴射を制御し、弁座の上に燃料室が配置され、燃料室を液体燃料で加圧し、軸方向に変位可能な弁ニードルが弁座に位置する期間中、連続する点火液流を燃料室へ送達し、点火液が弁座の上に蓄積することを可能にし、軸方向に変位可能な弁ニードルを弁座から持ち上げ、それによって蓄積した点火液を液体燃料の直前に中空噴射ノズルに入れることによって、液体燃料噴射事象を開始し、または、軸方向に変位可能な弁ニードルが揚程を有するとき、厳密な投与量の点火液を弁座へ送達し、軸方向に変位可能な弁ニードルを弁座から持ち上げ、それによって蓄積した点火液を液体燃料と同時に中空噴射ノズルに入れることによって、液体燃料噴射事象を開始する。
【0036】
第3の態様の第1の可能な実装形態では、液体燃料は、点火液の助けを借りてノズル内で点火する。
【0037】
第3の態様の第1の可能な実装形態では、ノズルは、機関サイクル全体にわたって300℃を上回るように保たれる。
【0038】
本開示による燃料弁および機関のさらなる目的、特徴、利点、および特性は、詳細な説明から明らかになる。
【0039】
本説明の以下の詳細部分では、本発明について、図面に示す例示的な実施形態を参照して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】例示的な実施形態による大型の2行程ディーゼル機関の正面図である。
図2図1の大型の2行程機関の側面図である。
図3図1による大型の2行程機関の図である。
図4図1の機関の低燃料システムの1つの燃料弁に対する例示的な実施形態の図である。
図5】シリンダの上部部分の図1の機関の燃料システムの例示的な実施形態の断面図である。
図6】例示的な実施形態に対する図1〜3による機関を使用するための燃料弁の立面図である。
図7図7は、図6に示す燃料噴射弁の断面図である。図7aは、図7の第1の実施形態の拡大詳細図である。図7bは、図7の第2の実施形態の拡大詳細図である。図7cは、図7の第3の実施形態の拡大詳細図である。図7dは、図7の第4の実施形態の拡大詳細図である。
図8図6に示す低引火点燃料噴射弁の異なる断面図である。
図9図9は、図6に示す低引火点燃料噴射弁の別の異なる断面図である。9Aは、図9の拡大詳細図である。
図10図6に示す低引火点燃料噴射弁の別の異なる断面図である。
図11図6に示す低引火点燃料噴射弁の別の異なる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下の詳細な説明では、圧縮点火式内燃機関について、例示的な実施形態における大型で低速のターボチャージ付き2行程内燃(ディーゼル)機関を参照して説明する。図1図2、および図3は、大型で低速のターボチャージ付き2行程ディーゼル機関を、クランクシャフト42およびクロスヘッド43とともに示す。図3は、大型で低速のターボチャージ付き2行程ディーゼル機関の図を、その吸気および排気システムとともに示す。この例示的な実施形態では、機関は、一列になった4つのシリンダ1を有する。大型で低速のターボチャージ付き2行程ディーゼル機関は、典型的には、一列になった4〜14個のシリンダを有し、これらのシリンダは、機関フレーム13によって保持される。この機関は、たとえば、外航船における主機関として、または発電所内の発電機を動作させるための定置機関として、使用することができる。この機関の総出力は、たとえば、1,000〜110,000kWの範囲とすることができる。
【0042】
機関は、この例示的な実施形態では、2行程ユニフロータイプのディーゼル(圧縮点火式)機関であり、シリンダ1の下部領域に位置する掃気ポート19と、シリンダ1の上部に位置する中心排気弁4とを有する。掃気は、個々のシリンダ1の掃気レシーバ2から掃気ポート19へ送られる。シリンダ1内のピストン41は、掃気を圧縮し、シリンダ・カバー(以下でさらに詳細に説明する)内の燃料噴射弁(以下でさらに詳細に説明する)から燃料が噴射され、燃焼が継続し、排気ガスが生成される。排気弁4が開放されると、排気ガスは、シリンダ1に付随する排気ダクトを通って排気ガス・レシーバ3内へ流れ、第1の排気導管18を通ってターボチャージャ5のタービン6へ進み、ターボチャージャ5から第2の排気導管を通って流れ、エコノマイザ28を介して出口29から大気中へ流れ出る。シャフトにより、タービン6は圧縮器9を駆動する。圧縮器9には、空気入口10を介して新鮮な空気が供給される。圧縮器9は、加圧された掃気を掃気導管11へ送達する。掃気導管11は、掃気レシーバ2につながっている。
【0043】
導管11内の掃気は、掃気を冷却するための中間冷却器12を通る。例示的な実施形態では、掃気は約200℃で圧縮器を出て、中間冷却器によって36〜80℃の温度まで冷却される。
【0044】
冷却された掃気は、電気モータ17によって駆動される補助ブロワ16を介して進む。補助ブロワ16は、ターボチャージャ5の圧縮器9が掃気レシーバ2にとって十分な圧力を送達していないとき、すなわち機関の低負荷状態または部分負荷条件にあるとき、掃気流を加圧する。機関負荷がより高い場合、ターボチャージャ圧縮器9は、十分な圧縮掃気を送達し、このとき補助ブロワ16は、逆止め弁15を介して迂回される。
【0045】
図4は、液体燃料弁50の図であり、液体燃料弁50は、液体燃料源60(たとえば油と水の燃料など、またはたとえばメタノールなどの低引火点燃料)、冷却液(油)源63、潤滑液源57、点火流体源65、制御弁96を介する作動液(油)源97、パージ制御弁98、作動液制御弁98に連結している。
【0046】
導管62は、加圧液体燃料源60から液体燃料弁50のハウジング内の入口ポートにつながる。導管62は、2重壁の導管とすることができ、たとえば、同心円状の管またはシリンダ・カバー48などの固体の阻止材料内の管によって形成することができる。燃料弁50を引火点燃料からパージすることが可能になるように、燃料弁50を液体燃料源60から取り外すことを可能にするために、ウィンドウ弁61を導管62内に設けることができる。ウィンドウ弁61は、好ましくは、電子制御ユニットによって電子的に動作および制御される。電子制御弁96は、噴射事象を制御し、パージ制御弁98は、逆止め弁が閉じるのを防止することによってパージを制御する。
【0047】
図5は、例示的な実施形態による複数のシリンダ1のうちの1つの上部を示す。シリンダ1の上部カバー48は、燃料弁50のノズルからシリンダ1内のピストン41の上の燃焼室内へ液体燃料を噴射する複数(典型的には2つまたは3つ)の燃料弁50を備える。この例示的な実施形態では、機関は、1つのシリンダにつき3つの液体燃料弁50を有するが、燃焼室のサイズに応じて、単一または2つの燃料弁50でも十分となりうることを理解されたい。排気弁4は、上部カバー内の中心に配置され、液体燃料弁50は、シリンダ壁により近い。
【0048】
一実施形態(図示せず)では、燃料油による機関の動作のために、2つまたは3つの追加の燃料油弁を上部カバー48内に設けることができる。燃料油弁は、よく知られているように、高圧燃料油源に連結される。
【0049】
ノズルおよび燃焼室に最も近い燃料弁50の前方部分は、一実施形態では、冷却油などの冷却液を使用して冷却され、そのためにシステム油(潤滑油)を使用することができる。本明細書では、燃料弁50の本体は、冷却液入口ポートおよび冷却液出口ポートと、燃料弁50の本体の前方部分を通る入口ポートと出口ポートとの間の流路(図示せず)とを備える。冷却液入口ポートは、導管を介して、システム油などの加圧冷却液源63に連結され、冷却液出口ポートは、導管を介して、冷却液のリザーバに連結される。
【0050】
燃料弁50の本体はまた、燃料弁50の開放および閉鎖を制御するための作動液ポートを備える。制御ポートは、導管を介して加圧作動液源97に連結される。電子的に制御される制御弁96、好ましくは比例弁が、燃料弁50の開放および閉鎖を制御し、すなわち噴射事象を制御するように、導管内で加圧作動液源97と作動液ポートとの間に配置される。
【0051】
燃料弁50の本体はまた、圧力Pifの加圧点火液源65から点火液を受け取るための点火液入口ポートを備える。
【0052】
機関は、機関の動作を制御する電子制御ユニット(図示せず)を備える。信号線により、電子制御ユニットが電子制御弁96および98ならびにウィンドウ弁61に接続される。
【0053】
電子制御ユニットは、液体燃料弁50の噴射事象のタイミングを正確にとり、液体燃料の投与量(1回の噴射事象につき噴射される体積)を燃料弁50により制御するように構成される。電子制御ユニットは、一実施形態では、噴射曲線の形状を制御(レート・シェーピング)するように構成される。なぜなら燃料弁は、そのような曲線に適応することが可能であるためである。
【0054】
低引火点燃料による構成では、電子制御ユニットは、燃料噴射事象の開始前に供給導管62が加圧された低引火点液体燃料で充填されることを確実にするように、ウィンドウ弁61を開放および閉鎖する。ウィンドウ弁61は、燃料弁50を低引火点燃料からパージする必要があるとき、電子制御ユニットによって閉鎖される。
【0055】
図6は、燃料弁50の斜視図であり、燃料弁50は、その細長い弁ハウジング52と、細長い弁ハウジング52の前端に取り付けられたノズル54と、潤滑液入口ポート70と、パージを制御する制御ポート36とを有する。ノズル54は、ノズル54中に径方向および軸方向に分散された複数の噴口56を備える。
【0056】
図7図8図9図10、および図11は、圧縮点火式内燃機関の燃焼室41内へ液体燃料を噴射するための燃料弁50の断面図を示す。燃料弁50は、細長い弁ハウジング52を有し、細長い弁ハウジング52は、最後端と、その前端に取り付けられたノズル54とを有する。ノズル54は別個の物体であり、ノズル54の基部46が、弁ハウジング52の前端に取り付けられている。弁ハウジング52の最後端は、(パージ)制御ポート36、作動液ポート78、点火液ポート67、およびガス漏れ検出ポート(図示せず)を含む複数のポートを備える。最後端は、燃料弁50がシリンダ・カバー48内に取り付けられたときにシリンダ・カバー48から突出するヘッドを形成するように広がっている。本実施形態では、燃料弁50は、中心排気弁4の周りに配置され、すなわちシリンダ・ライナの壁に比較的近接して配置される。燃料噴射弁50の細長い弁ハウジング52および他の構成要素、ならびにノズルは、一実施形態では、たとえば工具鋼およびステンレス鋼などの鋼から作られる。
【0057】
中空ノズル54は、ノズル54内の主ボア55に連結された噴口56を備え、噴口56は、径方向に分散され、また好ましくは実際にノズル54中に分散される。噴口56は、軸方向では、閉じた先端部59に近接しており、噴口56の径方向の分布は、本実施形態では、約50°の比較的狭い範囲にわたっている。噴口56の径方向の向きは、噴口56がシリンダ・ライナの壁から離れる方へ誘導されるようになっている。さらに、噴口56は、掃気ポートの傾斜した構成によって引き起こされる燃焼室内の掃気の旋回の方向とほぼ同じ方向に誘導される(この旋回は、ユニフロータイプの大型でターボチャージ付きの2行程内燃機関のよく知られている特徴である)。
【0058】
ノズル54の先端部59は閉鎖されており、すなわち下向きの噴口46は存在しない。ノズル54は、その基部46で弁ハウジング52の前端に連結されており、ノズル54の主ボアは、弁ハウジング52の前端内で出口開口68の方へ開いている。出口開口68を形成する軸方向のボアと燃料室58との間の遷移部に、弁座69が配置される。
【0059】
長手方向ボア64と細長い弁ハウジング52との間の狭い隙間内に、軸方向に変位可能な弁ニードル61が摺動可能に受け取られる。軸方向に変位可能な弁ニードル61と長手方向ボアとの間の潤滑は非常に重要である。本明細書では、導管(チャネル)47を介して、長手方向ボア64と弁ニードルとの間の隙間に、加圧潤滑液が送達される。チャネル47は、弁ニードル61と軸方向ボアとの間の隙間を潤滑油入口ポート70に連結し、潤滑油入口ポート70は、圧力Psで加圧された加圧潤滑油源57に連結することができる。潤滑油は、低引火点燃料で動作するとき、弁ニードル61と軸方向ボアとの間の隙間内への燃料の漏れを防止する。さらに、潤滑油は、弁ニードル61と軸方向ボア64との間の潤滑を提供する。一実施形態では、潤滑油源57の圧力は、少なくとも液体燃料源の供給圧力を上回るが、ポンプ・ピストン80との第1のボア81との間の隙間内の全体の流れがポンプ室82に向かう方向に向いている限り、噴射事象中のポンプ室82内の最大圧力を大きく下回ることができる。
【0060】
弁ニードル61は、閉位置および開位置を有する。弁ニードル61は、弁座69に整合するような形状の円錐形部を備える。閉位置において、弁ニードルの円錐形部は弁座69に位置する。円錐形部は、開位置で弁座69から揚程を有し、弁ニードル61は、予圧をかけた巻きばね38によって、閉位置の方へ弾性的に付勢される。予圧をかけた巻きばね38は、弁ニードル61に作用し、円錐形部が弁座69に位置する閉位置の方へ、弁ニードル61を付勢する。
【0061】
巻きばね38は、細長い燃料弁ハウジング52内のばね室88内に受け取られた巻線ばねである。ばね室88を通って、冷却油が流れる。巻きばね38の一方の端部は、ばね室88の端部に係合し、巻きばね38の他方の端部は、弁ニードル61上の広がった区画またはフランジに係合し、それによって弁ニードルを弁座69の方へ弾性的に付勢する。
【0062】
細長い弁ハウジング52は、低燃料供給導管62を介して加圧液体燃料源60に連結するための燃料入口ポート53を備える。燃料入口ポート53は、導管51および逆止め弁74を介して弁ハウジング52内のポンプ室82に連結する。逆止め弁74(吸引弁)は、弁ハウジング52内に設けられる。逆止め弁74は、液体燃料が導管51を通ってポンプ室82へ流れることができるが、逆方向には流れることができないことを確実にする。
【0063】
細長い燃料弁ハウジング52内の第1のボア81内には、ポンプ・ピストン80が摺動可能かつ封止式に配置され、第1のボア81内には、ポンプ・ピストン80の一方の側にポンプ室82が位置する。弁ハウジング52内の第2のボア84内には、作動ピストン83が摺動可能かつ封止式に配置され、第2のボア84内には、作動ピストン83の一方の側に作動室85が位置する。ポンプ・ピストン80は、作動ピストン83とともに動くように作動ピストン83に連結され、すなわちポンプ・ピストン80および作動ピストン83は、それぞれのボア81、84とともに摺動することができる。本実施形態では、ポンプ・ピストン80および作動ピストン83は、単体として実行されるが、ポンプ・ピストン80および作動ピストン83は、相互連結された別個の物体とすることもできることに留意されたい。
【0064】
作動室85は、作動液ポート78に流体連結される。電子制御弁96は、作動液ポート78、それによって作動室85に出入りする加圧作動液を制御する。
【0065】
噴射事象の初めに、電子制御ユニットは、作動液が作動室85に入るのを可能にするように電子制御弁96に命令する。作動室85内の加圧作動液は、作動ピストン83に作用し、それによってポンプ・ピストン80をポンプ室82内へ付勢する力を生じさせる。それによって、ポンプ室82内の液体燃料の圧力が増大する。一実施形態では、作動ピストン83の直径は、ポンプ・ピストン80の直径より大きく、したがってポンプ室82内の圧力は、それに対応して作動室85内の圧力より高くなり、作動ピストン83およびポンプ・ピストン80の組合せは、増圧器として作用する。
【0066】
1つまたは複数のチャネル(導管)57が、ポンプ室82を燃料室58に流体連結し、それによって燃料室の底部に位置する弁座69に流体連結する。弁座69は、弁ニードル61を取り囲む燃料室58に面している。弁ニードル61は、揚程を得るためにはノズル54から離れる方へ動き、揚程を低減させるためにはノズル54に向かう方へ動くように構成される。その開位置において、弁ニードル61は、弁座69から揚程を有し、それによって液体燃料がポンプ室82から燃料室58へ進み、弁座69を通り、出口ポート68を介してノズル54内の主ボア55へ流れることを可能にする。低引火点の液体は、噴口56を介して主ボア55を出る。
【0067】
弁ニードル61は、ポンプ室82内の液体燃料の圧力が巻きばね38の力を超過すると揚程を得る。したがって、弁ニードル61は、ポンプ室82内(および燃料室58内)の燃料の圧力が所定の閾値を超過するとばね38の付勢に逆らって開くように構成される。燃料内の圧力は、ポンプ・ピストン80がポンプ室82内の低引火点液体燃料に作用することによって引き起こされる。
【0068】
弁ニードル61は、円錐形部が弁座69の方へ動くとノズル54の方へ動くように付勢されるように構成される。これは、ポンプ・ピストン80がポンプ室82内の燃料に作用しなくなり、液体燃料内の圧力が減少し、弁ニードル61にかかる巻きばね38の閉鎖力が、弁ニードル61にかかる低引火点液体燃料の開放力より大きくなるときに生じる。
【0069】
電子制御ユニットは、噴射事象を終了するとき、作動室85をタンクに連結するように電子制御弁96に命令する。ポンプ室82は、加圧液体燃料源60に連結され、逆止め弁74を介して流れ込む低引火点液体燃料の供給圧力は、図7に示す位置に到達するまで、作動ピストン83を作動室85内へ付勢し、ポンプ室82は、液体燃料で完全に充填され、したがって燃料弁50は、次の噴射事象に対する準備ができた状態になる。図8は、噴射事象の終了近くのポンプ・ピストン80および作動ピストン83の位置を示し、ポンプ室82の大部分は液体燃料が空の状態になっている。
【0070】
液体燃料の噴射事象は、起動タイミングの長さおよびポンプ・ピストン80の行程の長さ(レート・シェーピング)によって、電子制御ユニットECUによって制御される。1つの噴射事象で噴射される燃料の量は、ポンプ・ピストン80の行程の長さによって決まる。したがって、電子制御ユニットからの信号を受けて、作動室85内で作動液圧力が上昇する。
【0071】
噴射事象の終わりに、電子制御弁96は、作動室85からの圧力を取り除き、ポンプ室82内の加圧液体燃料の力により、作動ピストン83は第2のボア85の端部に当たるまで第2のボア85内に押し戻され、ポンプ室82は、液体燃料で完全に充填され、燃料弁50は、次の噴射事象に対する準備ができた状態になる。
【0072】
一実施形態(図示せず)では、燃料弁50は、2つの異なる直径を有するプランジャの増圧器の形態を備え、したがって高い潤滑圧力を提供することが最も必要とされるときにちょうど潤滑圧力が高くなることを確実にするように、燃料噴射事象中の潤滑油圧力を上昇させるために、プランジャのうち制御弁96に連結されたポートを有する小室に面する大きい直径部分と、プランジャのうち導管(チャネル)51および47に連結されたポートの小室に面するより大きい直径部分とを有する。
【0073】
燃料弁50は、加圧潤滑油源に連結するための潤滑油入口ポート70と、ポンプ・ピストン80を第1のボア81内で封止して潤滑にするように潤滑油入口ポート70から第1のボア81まで延びる導管30とを備える。一実施形態では、潤滑油源57の圧力は、噴射事象中のポンプ室82内の最大圧力と少なくともほとんど同じ高さである。
【0074】
一実施形態では、燃料弁50は、燃料弁50をパージするためにポンプ室82から燃料入口ポート53に向かう流れを選択的に可能にする手段を備える。ポンプ室82から燃料入口ポート53に向かう流れを選択的に可能にする手段は、逆止め弁74(吸引弁)の逆止め機能を選択的に無効にする手段を備える。
【0075】
弁ニードル61は、燃料室58内の圧力が所定の閾値を超過したとき、巻きばね38の付勢に逆らって閉位置から開位置へ動くように構成される。
【0076】
細長い弁ハウジング52は、一実施形態では、冷却液入口ポート45および冷却液出口ポート32と、燃料噴射弁50、特に燃料弁50のうち前端に最も近い部分、たとえばノズルおよび燃焼室からの熱に最も近い部分を冷却する冷却液流路44とを備える。冷却液は、一実施形態では、機関からのシステム潤滑油である。一実施形態では、冷却液流路は、巻きばね38が受け取られるばね室88を含む。
【0077】
一実施形態では、細長い弁ハウジング52は、後部部分35に連結された前部部分33を備える。軸方向に変位可能な弁ニードル61は、前部部分33内に配置され、第1のボア81、第2のボア84、および整合する長手方向ボアが、後部部分35内に形成される。
【0078】
燃料弁50は、一実施形態では、長手方向ニードル・ボア64内で弁ニードル61を封止する長手方向ニードル・ボア64の長さに沿って位置P1で封止および潤滑液入口ポート70から長手方向ニードル・ボア64へ延びる導管47を備える。封止油は、位置P1から隙間を通って、上方へ巻きばねを取り囲む小室まで流れ、また下方へ燃料室58に向かって流れる。点火液のうち作動室85へ流れる部分は、冷却油と混合する。これは、冷却油に実質的な影響を与えない。
【0079】
第1の実施形態では、点火液のうち燃料室58へ流れる部分は、点火液入口ポート67から弁ハウジング52を通って位置P1より位置P2で燃料室58に近い隙間へ延びる点火液導管66によって隙間へ供給される点火液の圧力に接触する。点火液入口ポート67は、加圧点火液源65に連結される。封止油の圧力は、点火液の圧力より高いため、封止油は、点火液が封止油システム内へ逆流して漏れるのを防止する。
【0080】
図7aに示すように、点火液導管66を介して隙間へ送達される点火流体は、隙間の軸方向の長さに沿って燃料室58まで移動し、燃料室58の底部、すなわち弁座69のすぐ上に蓄積し、軸方向に可動の弁ニードル61は、弁座69に位置する。
【0081】
隙間の寸法は、軸方向に可動の弁部材61が弁座69に位置する機関サイクルの時間内に燃料室58の底部に適当な量の点火液が収集されるように厳密に制御および選択される。点火液の適当な量は、確実で安定した点火をもたらすのに十分な量であり、たとえば機関サイズおよび負荷に応じて、たとえば0.1mg〜200mgの範囲内とすることができる。隙間の寸法は、たとえば粘性などの点火液の特性に関連して、点火液源が、液体燃料源の圧力を上回る差である圧力を有するとき、適当な大きさの点火液の一定の流れが実現されるように選択される。
【0082】
電子制御ユニットからの信号により、燃料室58からの液体燃料圧力が上昇し、弁ニードル61は、弁座69から持ち上げられ、その閉位置から開位置へ動く。燃料室58(図7a)の底部に蓄積された点火液は、まずノズル54内の主ボア55に入り、それに液体燃料が続き、すなわち液体燃料が点火液を前方へ押して主ボア55に入れる。したがって、燃料室58内に蓄積された点火液は、液体燃料の直前にノズル54内の主ボア55に入る。燃料弁50の開放の直前、主ボア55は、燃焼室内の掃気の圧縮のため、圧縮された高温空気および残留している未燃焼燃料の混合物で充填されている(噴口56は、燃焼室から主ボア55内への空気の流れを可能にする)。したがって、燃料弁50の開放直後、高温の圧縮空気、点火液、および液体燃料が、主ボア55内に存在する。これは、すでに中空ノズル54内にある液体燃料の点火をもたらす。
【0083】
噴射事象の終わりに、電子制御ユニットは、作動室85からの圧力を除去し、巻きばね38の力により、弁ニードル61が弁座69に戻る。
【0084】
上述した第1の例示的な実施形態に本質的に同一である第2の例示的な実施形態によれば、点火液は、隙間ではなく弁座69へ送達される。この実施形態について、図7bを参照して示す。点火液導管66は、弁座69へ開いている。弁ニードル61の円錐形の先端部の開き角度は、円錐形の弁座69の開き角度よりわずかに鋭く、したがって弁ニードルの先端部と弁座69との間の間隙は狭い。この狭い間隙により、弁ニードル61がその弁座69に位置する間に、点火液49が燃料室58内で弁座69およびその真上に蓄積することが可能になる。
【0085】
上述した実施形態に本質的に同一である第3の例示的な実施形態によれば、点火液は、燃料室58へ送達される。この実施形態について、図7cを参照して示す。点火液導管66は、好ましくは弁座69の真上またはその付近で、燃料室58へ開いている。弁ニードル61がその弁座69に位置する間に、点火液49が、弁座69の上で燃料室58内に蓄積する。
【0086】
上述した実施形態に本質的に同一である第4の例示的な実施形態によれば、点火液は、弁座69へ送達される。この実施形態について、図7dを参照して示す。点火液導管66は、弁座69へ開いている。弁ニードル61の円錐形の先端部の開き角度は、円錐形の弁座69の開き角度に実質上同一であり、したがって弁ニードル61は、弁ニードル61が弁座69に位置するとき、弁座への点火液導管66の開口を閉鎖する。点火液は、弁ニードルが揚程を有するとき、弁座69へ開いている点火液導管66を通って弁座69へ送達される。この実施形態では、適当な量の点火液の送達は、短い期間で行われる必要があり、したがって点火液の供給圧力および/または点火液供給導管66の断面積が、上述した実施形態に比べて増大する。
【0087】
液体燃料の噴射は、中空ノズル54の上で弁座69と協働する変位可能な弁ニードル61により制御される。燃料室58は、液体燃料で加圧される。第1、第2、および第3の実施形態によれば、弁ニードル61が弁座69に位置する期間中、小さい連続する点火液流は燃料室58へ送達され、点火液49は弁座69の上に蓄積する(図7a、7b、および7cによる実施形態)。燃料噴射事象は、軸方向に可動の弁ニードル61を弁座69から持ち上げ、それによって蓄積した点火液49を液体燃料の直前に中空噴射ノズル54内の主ボア55に入れることによって開始される。次いで液体燃料は、点火液の助けを借りてノズル54内で点火する。
【0088】
図7dの実施形態の場合、点火液は、弁ニードル61が揚程を有するとき、弁座69へ送達され、したがって液体燃料および点火液は、噴射ノズル45内の主ボアへ同時に送達される。
【0089】
機関は、他の点火機器を使用することなく、点火液の助けを借りて、噴射された液体燃料を圧縮点火するように構成される。
【0090】
機関は、ノズル54内の主ボアに入ると液体燃料を点火するように構成される。
【0091】
一実施形態では、ノズル54は、機関サイクル全体にわたって300℃を上回るように保たれる。一実施形態では、中空ノズル54内の温度は、圧縮行程の終わりで約600℃である。
【0092】
一実施形態では、燃料弁50は、燃料弁50のパージのためのポンプ室82から燃料入口ポート53への流れを選択的に可能にするようにポンプ室82と燃料入口ポート53との間で流体連結する専用の制御弁を備える。この制御弁は、好ましくは、制御信号に応答して開放および閉鎖される。この実施形態では、逆止め弁74の逆止め機能を選択的に無効にする手段を提供する必要はない。
【0093】
一実施形態では、潤滑油源は制御圧力Psを有し、液体燃料源は制御圧力Pfを有し、PsはPfより高い。この実施形態では、制御圧力Psは、ポンプ行程中のポンプ室82内の最大圧力より低くすることができる。この場合、ポンプ行程中のPs、隙間のサイズ、およびポンプ室82内の最大圧力は、低引火点液体燃料が隙間に入り、ポンプ・ピストン80の長さのすべてではなく一部分に沿って潤滑液に取って代わる場合、相互依存して選択され、封止液は、別のポンプ行程が行われる前に、低引火点燃料を一切残さず、隙間内の実質上すべての低引火点燃料に取って代わり、したがって、低引火点燃料が潤滑油システム自体に入ることはない。
【0094】
特許請求の範囲で使用する「備える」という用語は、他の要素またはステップを排除しない。複数であり得ることが明記されていない構成が複数であり得ることを排除しない。電子制御ユニットは、特許請求の範囲に記載するいくつかの手段の機能を満たすことができる。
【0095】
特許請求の範囲で使用される参照符号は、範囲を限定すると解釈されるものではない。
【0096】
本発明について、例示の目的で詳細に説明したが、そのような詳細は、その目的のためだけであり、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明に変更を加えることができることが理解される。
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