(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472543
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】複合型コンピュータ数値制御加工機、及びその加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/34 20140101AFI20190207BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20190207BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20190207BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20190207BHJP
B23P 23/04 20060101ALI20190207BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20190207BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20190207BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20190207BHJP
B33Y 30/00 20150101ALN20190207BHJP
【FI】
B23K26/34
B23K26/03
B23K26/00 M
B23K31/00 B
B23P23/04
B23Q17/24 A
B23Q17/00 A
B23Q3/155 H
!B33Y30/00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-559745(P2017-559745)
(86)(22)【出願日】2015年3月17日
(65)【公表番号】特表2018-512285(P2018-512285A)
(43)【公表日】2018年5月17日
(86)【国際出願番号】CN2015074365
(87)【国際公開番号】WO2016138676
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2017年8月9日
(31)【優先権主張番号】201510092502.6
(32)【優先日】2015年3月2日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515306378
【氏名又は名称】東台精機股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TONGTAI MACHINE & TOOL CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 馨寶
(72)【発明者】
【氏名】高 懐恩
(72)【発明者】
【氏名】劉 宗欣
(72)【発明者】
【氏名】蔡 宗憲
(72)【発明者】
【氏名】陳 廷彰
(72)【発明者】
【氏名】厳 瑞雄
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/013247(WO,A1)
【文献】
特開平8−206859(JP,A)
【文献】
特開2005−14027(JP,A)
【文献】
特開平11−114741(JP,A)
【文献】
特開2005−238253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
B23K 31/00
B23P 23/04
B23Q 3/155
B23Q 17/00
B23Q 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法であって、
少なくとも1つの切削工具ヘッド、レーザクラッディング工具ヘッド、レーザ表面熱処理工具ヘッド、及びコンピュータ数値制御部を含み、前記切削工具ヘッド、前記レーザクラッディング工具ヘッド、及び前記レーザ表面熱処理工具ヘッドが、前記複合型コンピュータ数値制御加工機の工具ホルダに交互に入れ替え可能に設置され、前記レーザクラッディング工具ヘッドは温度センサー及びカメラレンズを含む複合型コンピュータ数値制御加工機の提供と、
前記切削工具ヘッドを用いて、加工物の少なくとも1つの加工表面に対して切削加工を行う第1切削作業と、
前記レーザクラッディング工具ヘッドを用いて、前記加工表面に対してクラッディング加工を行い、同時にまず、前記温度センサーにて前記加工表面に対し溶融池温度を測定し、測定した溶融池温度を前記コンピュータ数値制御部に提供し、溶融池温度が所定温度に達していない場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を向上させる一方、溶融池温度が前記所定温度を超えた場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を低下させ、さらに前記カメラレンズにて前記加工表面に対して溶融池の明るさ及び外形を測定し、測定した溶融池の明るさ及び外形を前記コンピュータ数値制御部に提供し、溶融池の明るさ及び外形が所定状態に達していない場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を向上させる一方、溶融池の明るさ及び外形が前記所定状態を超えた場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を低下させるクラッディング作業と、
前記切削工具ヘッドを用いて、前記クラッディングされた加工表面に対して切削加工を行う第2切削作業と、
前記レーザ表面熱処理工具ヘッドを用いて、前記加工表面に対して表面熱処理を行う表面熱処理作業と、
を含むことを特徴とする複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法。
【請求項2】
前記複合型コンピュータ数値制御加工機は、前記クラッディングされた加工表面に対して完成度を検出する接触型又は非接触型の検出工具ヘッドをさらに含み、前記クラッディング加工表面の完成度が十分となっている場合に、次の作業に進む一方、前記クラッディング加工表面の完成度が不十分である場合に、前記クラッディング作業を再度行うことを特徴とする請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法であって、
少なくとも1つの切削工具ヘッド、レーザクラッディング工具ヘッド、及びコンピュータ数値制御部を含み、前記切削工具ヘッド及び前記レーザクラッディング工具ヘッドが、交互に入れ替え可能に前記複合型コンピュータ数値制御加工機の工具ホルダに設置され、前記レーザクラッディング工具ヘッドは温度センサー及びカメラレンズを含む複合型コンピュータ数値制御加工機の提供と、
前記切削工具ヘッドを用いて、加工物の少なくとも1つの加工表面に対して切削加工を行う切削作業と、
前記レーザクラッディング工具ヘッドを用いて、前記加工表面に対してクラッディング加工を行い、同時にまず、前記温度センサーにて前記加工表面に対し溶融池温度を測定し、測定した溶融池温度を前記コンピュータ数値制御部に提供し、溶融池温度が所定温度に達していない場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を向上させる一方、溶融池温度が前記所定温度を超えた場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を低下させ、さらに前記カメラレンズにて前記加工表面に対して溶融池の明るさ及び外形を測定し、測定した溶融池の明るさ及び外形を前記コンピュータ数値制御部に提供し、溶融池の明るさ及び外形が所定状態に達していない場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を向上させる一方、溶融池の明るさ及び外形が前記所定状態を超えた場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を低下させるクラッディング作業と、
を含むことを特徴とする複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法。
【請求項4】
前記複合型コンピュータ数値制御加工機は、接触型又は非接触型の検出工具ヘッドをさらに含み、該検出工具ヘッドが前記クラッディングされた加工表面に対して完成度を検出し、前記クラッディング加工表面の完成度が十分となっている場合に、次の作業に進む一方、前記クラッディング加工表面の完成度が不十分である場合に、前記クラッディング作業を再度行うことを特徴とする請求項3に記載の加工方法。
【請求項5】
前記複合型コンピュータ数値制御加工機は、レーザ表面熱処理工具ヘッドをさらに含み、該レーザ表面熱処理工具ヘッドは、前記クラッディング作業の後に、前記クラッディングされた加工表面に対して表面熱処理作業を行うことを特徴とする請求項3に記載の加工方法。
【請求項6】
複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法であって、
少なくとも1つの切削工具ヘッド、レーザクラッディング工具ヘッド、レーザ表面熱処理工具ヘッド、及びコンピュータ数値制御部を含み、前記切削工具ヘッド、前記レーザクラッディング工具ヘッド、及び前記レーザ表面熱処理工具ヘッドが、前記複合型コンピュータ数値制御加工機の工具ホルダに交替可能に設置される複合型コンピュータ数値制御加工機を提供し、前記切削工具ヘッドが加工物の少なくとも1つの加工表面に対して切削加工を行い、前記レーザクラッディング工具ヘッドが前記加工表面をクラッディングし、前記レーザ表面熱処理工具ヘッドが前記加工表面に対して表面熱処理を行い、
前記レーザクラッディング工具ヘッドは温度センサー及びカメラレンズを含み、クラッディング作業を行う際に、前記レーザクラッディング工具ヘッドを用いて、前記加工表面に対してクラッディング加工を行い、前記温度センサーにて前記加工表面に対し溶融池温度を測定し、前記カメラレンズにて前記加工表面に対して溶融池の明るさ及び外形を測定し、測定した溶融池温度と測定した溶融池の明るさ及び外形を前記コンピュータ数値制御部に提供して、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を調整し、
まず、前記温度センサーにて前記加工表面に対して溶融池温度を測定し、溶融池温度が所定温度に達していない場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を向上させる一方、溶融池温度が前記所定温度を超えた場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を低下させ、さらに、前記カメラレンズにて前記加工表面に対して溶融池の明るさ及び外形を測定し、溶融池の明るさ及び外形が所定状態に達していない場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を向上させる一方、溶融池の明るさ及び外形が前記所定状態を超えた場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を低下させ、
前記複合型コンピュータ数値制御加工機は、接触型又は非接触型の検出工具ヘッドをさらに含み、該検出工具ヘッドが前記クラッディングされた加工表面に対して完成度を検出し、前記クラッディング加工表面の完成度が十分となっている場合に、次の作業に進む一方、前記クラッディング加工表面の完成度が不十分である場合に、前記クラッディング作業を再度行うことを特徴とする複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ数値制御加工機、及びその加工方法に関し、特に、レーザクラッディング工具ヘッドとレーザ表面熱処理工具ヘッドを有する複合型コンピュータ数値制御加工機、及びその加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンピュータ数値制御加工機は、異なる切削工具ヘッドを交換することにより、様々な切削加工を行うことができる。しかし、切削加工しかできないため、溶接(又は補修溶接)、又は熱処理作業を必要とする時に、他の機械を使用しなければならないので、加工操作のステップおよび処理時間が大幅に増加する。
【0003】
特に、レーザクラッディングやレーザ表面熱処理のようなレーザを用いた加工方法では、特別なレーザ加工機を使用しなければならない。そのため、レーザ加工機を加工プロセス全体で使用する必要がある場合には、加工される加工物を、異なる機械の間で移動、固定、加工、さらに取り外し、移動、固定、加工する必要がある。このような加工プロセスは、加工操作のステップおよび処理時間を大幅に増加させる。
【0004】
上記の欠点を克服するために、改良された複合型コンピュータ数値制御加工機及びその加工方法を提供することにより、従来技術の問題を解決する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、加工物を異なる機械の間で移動させることなく、単一の機械により一回で加工物の切削とレーザクラッディング及び/又はレーザ表面熱処理作業を完成することができるため、加工操作のステップと加工時間を大幅に低減できる複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法を提供することを主目的とする。
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法を提供する。前記加工方法は、少なくとも1つの切削工具ヘッド、レーザクラッディング工具ヘッド、レーザ表面熱処理工具ヘッド、及びコンピュータ数値制御部を含み、前記切削工具ヘッド、前記レーザクラッディング工具ヘッド、及び前記レーザ表面熱処理工具ヘッドが、前記複合型コンピュータ数値制御加工機の工具ホルダに交互に入れ替え可能に設置される複合型コンピュータ数値制御加工機の提供と、前記切削工具ヘッドを用いて、加工物の少なくとも1つの加工表面に対して切削加工を行う第1切削作業と、前記レーザクラッディング工具ヘッドを用いて、前記加工表面に対してクラッディング加工を行うクラッディング作業と、前記切削工具ヘッドを用いて、前記クラッディングされた加工表面に対して切削加工を行う第2切削作業と、前記レーザ表面熱処理工具ヘッドを用いて、前記加工表面に対して表面熱処理を行う表面熱処理作業と、を含む。
【0007】
本発明の一実施例において、前記レーザクラッディング工具ヘッドは、温度センサー、及びカメラレンズをさらに含み、前記クラッディング作業を行う際に、まず、前記温度センサーにて前記加工表面に対し溶融池温度を測定し、測定した溶融池温度を前記コンピュータ数値制御部に提供し、溶融池温度が所定温度に達していない場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を向上させる一方、溶融池温度が前記所定温度を超えた場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を低下させ、さらに前記カメラレンズにて前記加工表面に対して溶融池の明るさ及び外形を測定し、測定した溶融池の明るさ及び外形を前記コンピュータ数値制御部に提供し、溶融池の明るさ及び外形が所定状態に達していない場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を向上させる一方、溶融池の明るさ及び外形が前記所定状態を超えた場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を低下させる。
【0008】
本発明の一実施例において、前記レーザ表面熱処理工具ヘッドは、温度センサーをさらに含み、前記表面熱処理作業を行う際に、前記温度センサーにて前記加工表面に対して温度を測定し、測定した加工表面の温度を前記コンピュータ数値制御部に提供し、加工表面の温度が所定温度に達していない場合に、前記レーザ表面熱処理工具ヘッドの電力を向上させる一方、加工表面の温度が前記所定温度を超えた場合に、前記レーザ表面熱処理工具ヘッドの電力を低下させる。
【0009】
本発明の一実施例において、前記複合型コンピュータ数値制御加工機は、前記クラッディングされた加工表面に対して完成度を検出する接触型又は非接触型の検出工具ヘッドをさらに含み、前記クラッディング加工表面の完成度が十分となっている場合に、次の作業に進む一方、前記クラッディング加工表面の完成度が不十分である場合に、前記クラッディング作業を再度行う。
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法を提供する。該複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法は、少なくとも1つの切削工具ヘッド、レーザクラッディング工具ヘッド、及びコンピュータ数値制御部を含み、前記切削工具ヘッド及び前記レーザクラッディング工具ヘッドが、交互に入れ替え可能に前記複合型コンピュータ数値制御加工機の工具ホルダに設置される複合型コンピュータ数値制御加工機の提供と、前記切削工具ヘッドを用いて、加工物の少なくとも1つの加工表面に対して切削加工を行う切削作業と、前記レーザクラッディング工具ヘッドを用いて、前記加工表面に対してクラッディング加工を行うクラッディング作業と、を含み、前記レーザクラッディング工具ヘッドは、温度センサー及びカメラレンズを含み、前記クラッディング作業を行う際に、まず、前記温度センサーにて前記加工表面に対して溶融池の温度を測定し、測定した溶融池温度を前記コンピュータ数値制御部に提供し、溶融池温度が第1所定温度に達していない場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を向上させる一方、溶融池温度が前記第1所定温度を超えた場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を低下させ、さらに前記カメラレンズにて前記加工表面に対して溶融池の明るさ及び外形を測定し、測定した溶融池の明るさ及び外形を前記コンピュータ数値制御部に提供し、溶融池の明るさ及び外形が所定状態に達していない場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を向上させる一方、溶融池の明るさ及び外形が前記所定状態を超えた場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を低下させる。
【0011】
本発明の一実施例において、前記複合型コンピュータ数値制御加工機は、接触型又は非接触型の検出工具ヘッドをさらに含み、該検出工具ヘッドが前記クラッディングされた加工表面に対して完成度を検出し、前記クラッディング加工表面の完成度が十分となっている場合に、次の作業に進む一方、前記クラッディング加工表面の完成度が不十分である場合に、前記クラッディング作業を再度行う。
【0012】
本発明の一実施例において、前記複合型コンピュータ数値制御加工機は、レーザ表面熱処理工具ヘッドをさらに含み、該レーザ表面熱処理工具ヘッドは、前記クラッディング作業の後に、前記クラッディングされた加工表面に対して表面熱処理作業を行う。
【0013】
本発明の一実施例において、前記レーザ表面熱処理工具ヘッドは、温度センサーをさらに含み、前記表面熱処理作業を行う際に、前記温度センサーにて前記加工表面に対して温度を測定し、測定した加工表面の温度を前記コンピュータ数値制御部に提供し、加工表面的温度が第2所定温度に達していない場合に、前記レーザ表面熱処理工具ヘッドの電力を向上させる一方、加工表面の温度が前記第2所定温度を超えた場合に、前記レーザ表面熱処理工具ヘッドの電力を低下させる。
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明は、複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法をさらに提供する。前記加工方法は、少なくとも1つの切削工具ヘッド、レーザ表面熱処理工具ヘッド、及びコンピュータ数値制御部を含み、前記切削工具ヘッド、及び前記レーザ表面熱処理工具ヘッドが、交互に入れ替え可能に前記複合型コンピュータ数値制御加工機の工具ホルダに設置される複合型コンピュータ数値制御加工機の提供と、前記切削工具ヘッドを用いて、加工物の少なくとも1つの加工表面に対して切削加工を行う切削作業と、前記レーザ表面熱処理工具ヘッドを用いて、前記加工表面に対して表面熱処理を行う表面熱処理作業と、を含む。
【0015】
本発明の一実施例において、前記レーザ表面熱処理工具ヘッドは、温度センサーをさらに含み、前記表面熱処理作業を行う際に、前記温度センサーにて前記加工表面に対して温度を測定し、測定した加工表面の温度を前記コンピュータ数値制御部に提供し、加工表面の温度が所定温度に達していない場合に、前記レーザ表面熱処理工具ヘッドの電力を向上させる一方、加工表面の温度が前記所定温度を超えた場合に、前記レーザ表面熱処理工具ヘッドの電力を低下させる。
【0016】
本発明は、加工物を異なる機械の間で移動させることなく、単一の機械により一回で加工物の切削とレーザクラッディング及び/又はレーザ表面熱処理作業を完成することができるため、加工操作のステップと加工時間を大幅に低減できる複合型コンピュータ数値制御加工機を提供することを別の目的とする。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明は、複合型コンピュータ数値制御加工機を提供する。少なくとも1つの切削工具ヘッド、レーザクラッディング工具ヘッド、レーザ表面熱処理工具ヘッド、及びコンピュータ数値制御部を含み、前記切削工具ヘッド、前記レーザクラッディング工具ヘッド、及び前記レーザ表面熱処理工具ヘッドが、前記複合型コンピュータ数値制御加工機の工具ホルダに交替可能に設置され、前記切削工具ヘッドが加工物の少なくとも1つの加工表面に対して切削加工を行い、前記レーザクラッディング工具ヘッドが前記加工表面をクラッディングし、前記レーザ表面熱処理工具ヘッドが前記加工表面に対して表面熱処理を行う。
【0018】
本発明の一実施例において、前記レーザクラッディング工具ヘッドは、温度センサー及びカメラレンズをさらに含み、前記クラッディング作業を行う際に、まず、前記温度センサーにて前記加工表面に対して溶融池温度を測定し、測定した溶融池温度を前記コンピュータ数値制御部に提供し、溶融池温度が所定温度に達していない場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を向上させる一方、溶融池温度が前記所定温度を超えた場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を低下させ、さらに、前記カメラレンズにて前記加工表面に対して溶融池の明るさ及び外形を測定し、測定した溶融池の明るさ及び外形を前記コンピュータ数値制御部に提供し、溶融池の明るさ及び外形が所定状態に達していない場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を向上させる一方、溶融池の明るさ及び外形が前記所定状態を超えた場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッドの電力を低下させる。
【0019】
本発明の一実施例において、前記レーザ表面熱処理工具ヘッドは、温度センサーをさらに含み、前記表面熱処理作業を行う際に、前記温度センサーにて前記加工表面に対して温度を測定し、測定した加工表面の温度を前記コンピュータ数値制御部に提供し、加工表面の温度が所定温度に達していない場合に、前記レーザ表面熱処理工具ヘッドの電力を向上させる一方、加工表面の温度が前記所定温度を超えた場合に、前記レーザ表面熱処理工具ヘッドの電力を低下させる。
【0020】
本発明の一実施例において、前記複合型コンピュータ数値制御加工機は、接触型又は非接触型の検出工具ヘッドをさらに含み、該検出工具ヘッドが前記クラッディングされた加工表面に対して完成度を検出し、前記クラッディング加工表面の完成度が十分となっている場合に、次の作業に進む一方、前記クラッディング加工表面の完成度が不十分である場合に、前記クラッディング作業を再度行う。
【0021】
以上より、本発明の複合型コンピュータ数値制御加工機、及びその加工方法を使用することにより、加工物を異なる機械の間で移動させることなく、単一の機械により一回で加工物の切削とレーザクラッディング及び/又はレーザ表面熱処理作業を完成することができるため、加工操作のステップと加工時間を大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施例の複合型コンピュータ数値制御加工機の構造模式図である。
【
図2】本発明の第1実施例の複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法のフロー図である。
【
図3A-3B】本発明の第1実施例の加工表面に対して溶融池の明るさ及び外形を測定する模式図である。
【
図4】本発明の第2実施例の複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法のフロー図である。
【
図5】本発明の第3実施例の複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の上記目的、特徴及び利点を分かりやすくするために、以下、本発明の好ましい実施例及び図面を参照しながら、詳しく説明する。本発明でいう方向用語、例えば「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「内」、「外」、「側面」等は、図面における方向に過ぎない。よって、用いられる方向用語は、本発明を説明及び理解するためのもので、本発明を制限しない。
【0024】
本発明でいうコンピュータ数値制御(CNC、 Computer Numerical Control)加工機は、単一の加工軸方向又は複数の加工軸方向を有するCNC加工機であって、複数の加工具ヘッドを収納するための少なくとも1つの工具庫を有するもの、例えば、五軸のフライス/旋盤CNC加工機であってもよいが、本発明は制限されない。以下、本発明の複合型(Hybrid)のコンピュータ数値制御(CNC)加工機の構造及びその加工方法を詳しく説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1実施例の複合型コンピュータ数値制御加工機の構造模式図である。
図2は、本発明の第1実施例の複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法のフロー図である。本発明の複合型コンピュータ数値制御加工機100は、少なくとも1つの切削工具ヘッド10、レーザクラッディング工具ヘッド20、レーザ表面熱処理工具ヘッド30、及びコンピュータ数値制御部40を含み、前記切削工具ヘッド10、前記レーザクラッディング工具ヘッド20、及び前記レーザ表面熱処理工具ヘッド30が前記複合型コンピュータ数値制御加工機100の工具ホルダ50に交互に入れ替え可能に設置され、前記切削工具ヘッド10が加工物200の少なくとも1つの加工表面に対して切削加工を行い、前記レーザクラッディング工具ヘッド20が前記加工表面をクラッディングし、前記レーザ表面熱処理工具ヘッド30が前記加工表面に対して表面熱処理を行う。
【0026】
詳しくは、前記切削工具ヘッド10は、フライス又は旋盤加工工具であってもよく、減法的金属加工方式に属する。前記レーザクラッディング工具ヘッド20は、レーザクラッディング(Laser Cladding) という金属加工方式を採用し、加法的金属加工方式に属し、積層製造により1層ずつ材料を増加することにより加法的プロセスの製造を行い、レーザで金属粉末を熔融することにより、材料をスタックし、金型及び航空機ブレードの直接製造、及び、欠損修復に適用される。前記レーザ表面熱処理工具ヘッド30は、レーザを加工表面に照射させることにより局所の金属加工表面に対して金属熱処理を行い、レーザによる表面改質技術により表面熱処理を行って、機械部品の表面硬度又は品質調整を効果的に向上させるため、部品の表面熱処理に使用されて表面硬度を向上させ、かつ摩耗を低減させることができる。
【0027】
前記レーザクラッディング工具ヘッド20及び前記レーザ表面熱処理工具ヘッド30は、それぞれホース(図示せず)を介して外部の少なくとも1つのレーザ光源(図示せず)内に接続される。レーザービーム及び作業に必要な材料を前記レーザクラッディング工具ヘッド20及び前記レーザ表面熱処理工具ヘッド30に伝送するように、前記ホース内に光ファイバアセンブリが設けられる。
【0028】
図1、
図2に示すように、本発明の第1実施例の複合型コンピュータ数値制御加工機100の加工方法は、主に以下のステップを含む。
S11:複合型コンピュータ数値制御加工機100を提供する。該加工機100は、含少なくとも1つの切削工具ヘッド10、レーザクラッディング工具ヘッド20、レーザ表面熱処理工具ヘッド30、及びコンピュータ数値制御部40を含み、前記切削工具ヘッド10、前記レーザクラッディング工具ヘッド20、及び前記レーザ表面熱処理工具ヘッド30が前記複合型コンピュータ数値制御加工機100の工具ホルダ50に交互に入れ替え可能に設置される。
S12:第1切削作業を行う。前記切削工具ヘッド10を用いて加工物200の少なくとも1つの加工表面に対して切削加工を行う。
S13:クラッディング作業を行う。前記レーザクラッディング工具ヘッド20を用いて前記加工表面をクラッディングする。
S14:第2切削作業を行う。前記切削工具ヘッド10を用いて前記クラッディングされた加工表面に対して切削加工を行う。
S15:表面熱処理作業を行う。前記レーザ表面熱処理工具ヘッド30を用いて前記加工表面に対して表面熱処理を行う。
【0029】
好ましくは、前記レーザクラッディング工具ヘッド20は、温度センサー21及びカメラレンズ22をさらに含む。前記クラッディング作業S13は、熔融池温度測定ステップS131、及び溶融池の明るさ/外形測定ステップS132をさらに含む。前記クラッディング作業S13を行う際に、まず、前記温度センサー21にて前記加工表面に対して溶融池温度を測定し、測定した溶融池温度を前記コンピュータ数値制御部40に提供し、溶融池温度が所定温度を達していない場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッド20の電力を向上させる一方、溶融池温度が前記所定温度を超えた場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッド20の電力を低下させ、さらに、前記カメラレンズ22にて前記加工表面に対して溶融池の明るさ及び外形を測定し、測定した溶融池の明るさ及び外形を前記コンピュータ数値制御部40に提供し、溶融池の明るさ及び外形が所定状態(
図3Aに示すように、前記カメラレンズ22により観察した溶融池の外形210であり、破線が所定の溶融池サイズを表す。)に達していない場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッド20の電力を向上させる一方、溶融池の明るさ及び外形が前記所定状態(
図3Bに示すように、前記カメラレンズ22により観察した溶融池の外形220であり、破線が所定の溶融池サイズを表す。)を超えた場合に、前記レーザクラッディング工具ヘッド20の電力を低減させる。
【0030】
好ましくは、前記複合型コンピュータ数値制御加工機は、接触型又は非接触型的検出工具ヘッド60をさらに含む。前記クラッディング作業S13は、接触型又は非接触型検出作業S133をさらに含む。前記クラッディング加工表面の完成度が十分となっている場合に、次の作業に進む一方、前記クラッディング加工表面の完成度が不十分である場合に、前記クラッディング作業(ステップS134)を再度行う。
【0031】
好ましくは、前記レーザ表面熱処理工具ヘッド30は、温度センサー31をさらに含む。前記表面熱処理作業S15は、さらに加工表面温度測定ステップS151をさらに含む。前記表面熱処理作業S15を行う際に、前記温度センサー31にて前記加工表面に対して温度測定を行い、測定した加工表面の温度を前記コンピュータ数値制御部40に提供し、加工表面の温度が所定温度を達していない場合に、前記レーザ表面熱処理工具ヘッド30の電力を向上させる一方、加工表面の温度が前記所定温度を超えた場合に、前記レーザ表面熱処理工具ヘッド30の電力を低減させる。
【0032】
以上より、本発明の第1実施例の複合型コンピュータ数値制御加工機100は、前記切削工具ヘッド10、前記レーザクラッディング工具ヘッド20、及び前記レーザ表面熱処理工具ヘッド30を同時に含むため、交互に入れ替え可能に加工操作を行うことができる。例えば、金型の局所の破損を修復する際に、まず、S12の第1切削作業で破損したところを切削して平坦化し、さらに、S13のクラッディング作業で金型の体積を補充し、次に、S14の第2切削作業で金型の修復を完成し、S15の表面熱処理作業で局所の表面熱処理を行う。前記加工方法により、加工物を異なる機械の間で移動させることなく、単一の機械により一回で金型の修復を完成することができるため、加工操作のステップと加工時間を大幅に低減できる。
【0033】
また、本発明の第1実施例の複合型コンピュータ数値制御加工機100の前記レーザクラッディング工具ヘッド20は、温度センサー21及びカメラレンズ22を同時に含むため、クラッディング作業の際に溶融池温度、明るさ及び外形を測定し、前記コンピュータ数値制御部40に提供し、フィードバック制御を行うことができるため、加工物の加工効率及び品質をさらに向上させることができる。
【0034】
図4は、本発明の第2実施例の複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法のフロー図である。
図4に示すように、本発明の第2実施例の複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法は、主に以下のステップを含む。
【0035】
S21:複合型コンピュータ数値制御加工機100を提供する。該加工機100は、少なくとも1つの切削工具ヘッド10、レーザクラッディング工具ヘッド20、及びコンピュータ数値制御部40を含み、前記切削工具ヘッド10及び前記レーザクラッディング工具ヘッド20が前記複合型コンピュータ数値制御加工機100の工具ホルダ50に交互に入れ替え可能に設置される。
S22:切削作業を行う。前記切削工具ヘッド10を用いて加工物200の少なくとも1つの加工表面に対して切削加工を行う。
S23:クラッディング作業を行う。前記レーザクラッディング工具ヘッド20を用いて前記加工表面をクラッディングする。
【0036】
前記加工方法により、加工物を異なる機械の間で移動させることなく、単一の機械により一回で加工物の切削とレーザクラッディングを完成することができるため、加工操作のステップと加工時間を大幅に低減できる。また、必要に応じて、加工効率及び品質を効果的に向上させるように、本発明の第1実施例の加工方法における他のステップを追加してもよい。
【0037】
図5は、本発明の第3実施例の複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法のフロー図である。
図5に示すように、本発明の第3実施例の複合型コンピュータ数値制御加工機の加工方法は、主に以下のステップを含む。
S31:複合型コンピュータ数値制御加工機100を提供する。該加工機100は、少なくとも1つの切削工具ヘッド10、レーザ表面熱処理工具ヘッド30、及びコンピュータ数値制御部40を含み、前記切削工具ヘッド10及び前記レーザ表面熱処理工具ヘッド30が前記複合型コンピュータ数値制御加工機100の工具ホルダ50に交互に入れ替え可能に設置される。
S32:切削作業を行う。前記切削工具ヘッド10を用いて加工物200の少なくとも1つの加工表面に対して切削加工を行う。
S33:表面熱処理作業を行う。前記レーザ表面熱処理工具ヘッド30を用いて前記加工表面に対して表面熱処理を行う。
【0038】
前記加工方法により、加工物を異なる機械の間で移動させることなく、単一の機械により一回で加工物の切削とレーザクラッディングを完成することができるため、加工操作のステップと加工時間を大幅に低減できる。また、必要に応じて、加工効率及び品質を効果的に向上させるように、本発明の第1実施例の加工方法における他のステップを追加してもよい。
【0039】
上記の複合型コンピュータ数値制御加工機100及びその加工方法により、加工物を異なる機械の間で移動させることなく、単一の機械により一回で加工物の切削とレーザクラッディング及び/又はレーザ表面熱処理作業を完成することができるため、加工操作のステップと加工時間を大幅に低減できる。
【0040】
本発明は上述した実施例により説明されたが、これらの実施例は本発明を実施するための例に過ぎない。開示された実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲、趣旨を脱出しない修正及び均等設置は、すべて本発明の範囲に含まれる。