(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<共重合体>
本発明に係る共重合体(以下、「共重合体」ともいう。)は、防汚塗料組成物に含有される樹脂として好適であり、防汚塗料組成物のバインダ樹脂(ビヒクル)として用いることができる。
本発明に係る共重合体及びそれを含む防汚塗料組成物によれば、消耗速度が長期間にわたって安定している防汚塗膜を形成することができる。さらに、本発明に係る共重合体及びそれを含む防汚塗料組成物によれば、長期間にわたって高い防汚性能を維持できる防汚塗膜を形成することができる。
さらに、本発明に係る共重合体によれば、貯蔵安定性の高い防汚塗料組成物を提供することができる。
以下、塗膜(防汚塗膜)に関し、消耗速度が長期間にわたって安定するという性質を塗膜消耗速度の「長期安定性」ともいい、長期間にわたって高い防汚性能を示すという性質を塗膜の「長期防汚性」ともいう。
【0010】
共重合体は、上記式(1)で表されるシリコン原子含有基を有する重合性単量体(a)に由来する構成単位(A)、及び、重合性単量体(a)と共重合可能な重合性単量体(b)に由来する構成単位(B)を含み、通常は構成単位(A)及び構成単位(B)からなる。
【0011】
〔1〕構成単位(A)
構成単位(A)は、上記式(1)で表されるシリコン原子含有基を有する重合性単量体(a)に由来する構成単位である。
共重合体は、構成単位(A)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
重合性単量体(a)としては、例えば、上記式(2)で表されるラジカル重合性の単量体が挙げられる。
【0012】
式(1)及び式(2)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、炭素数1以上6以下の炭化水素基である。
式(2)で表される単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸トリメチルシリル、(メタ)アクリル酸トリエチルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−プロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリiso−プロピルシリル、(メタ)アクリル酸ジiso−プロピルsec−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジiso−プロピルiso−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジiso−プロピルtert−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジiso−プロピルヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸ジiso−プロピルフェニルシリル、(メタ)アクリル酸iso−プロピルジsec−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸iso−プロピルジiso−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸iso−プロピルジtert−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸iso−プロピルジフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジフェニルヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸トリsec−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリiso−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリtert−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルジフェニルシリル、(メタ)アクリル酸トリフェニルシリル、(メタ)アクリル酸トリシクロヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシルベンジルシリル、(メタ)アクリル酸ジiso−プロピルシクロヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸iso−プロピルジシクロヘキシルシリル等が挙げられる。
式(2)で表される単量体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、メタクリル及びアクリルから選択される少なくとも1種を表す。
【0013】
塗膜消耗速度の長期安定性、塗膜の長期防汚性又は塗料の貯蔵安定性の観点から、式(1)及び式(2)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、好ましくは炭素数1以上6以下のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1以上4以下のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数3又は4のアルキル基である。
同様の観点から、式(1)及び式(2)において、好ましくは、R
1、R
2及びR
3のうち少なくとも1つは炭素数3のアルキル基であり、より好ましくは、R
1、R
2及びR
3のうち少なくとも1つはiso−プロピル基であり、さらに好ましくは、R
1、R
2及びR
3のうち少なくとも2つはiso−プロピル基であり、なおさらに好ましくは、R
1、R
2及びR
3のすべてがiso−プロピル基である。
同様の観点から、上記式(2)で表される単量体は、好ましくは、(メタ)アクリル酸トリn−プロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリiso−プロピルシリル、(メタ)アクリル酸ジiso−プロピルsec−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジiso−プロピルiso−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジiso−プロピルtert−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸iso−プロピルジsec−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸iso−プロピルジiso−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸iso−プロピルジtert−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリsec−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリiso−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリtert−ブチルシリルであり、より好ましくは、(メタ)アクリル酸トリn−プロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリiso−プロピルシリル、(メタ)アクリル酸ジiso−プロピルsec−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジiso−プロピルiso−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジiso−プロピルtert−ブチルシリルであり、さらに好ましくは、(メタ)アクリル酸トリiso−プロピルシリル、(メタ)アクリル酸ジiso−プロピルsec−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジiso−プロピルiso−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジiso−プロピルtert−ブチルシリルである。
【0014】
重合性単量体(a)は、式(2)で表される単量体以外の単量体であってもよい。
式(2)で表される単量体以外の単量体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。式(2)で表される単量体とこれ以外の単量体とを併用してもよい。重合性単量体(a)は、好ましくは、式(2)で表される単量体を含む。
【0015】
式(2)で表される単量体以外の単量体としては、例えば、式(1)で表されるシリコン原子含有基を有するマレイン酸ジエステル等が挙げられる。このマレイン酸ジエステルが有する式(1)で表されるシリコン原子含有基におけるR
1、R
2及びR
3についても、式(1)に関する上述の記載が引用される。
【0016】
上記マレイン酸ジエステルとしては、例えば、マレイン酸ビス(トリiso−プロピルシリル)、マレイン酸トリiso−プロピルシリルメチル、マレイン酸トリiso−プロピルシリルエチル、マレイン酸トリiso−プロピルシリルn−ブチル、マレイン酸トリiso−プロピルシリルsec−ブチル、マレイン酸トリiso−プロピルシリルiso−ブチル、マレイン酸トリiso−プロピルシリルtert−ブチル、マレイン酸トリiso−プロピルシリルn−ペンチル、マレイン酸トリiso−プロピルシリルiso−ペンチル(マレイン酸トリiso−プロピルシリルiso−アミル)、マレイン酸トリiso−プロピルシリルシクロヘキシル等が挙げられる。
【0017】
共重合体における構成単位(A)の含有量は、共重合体100質量%中、通常40質量%以上であり、好ましくは50質量%以上である。構成単位(A)の含有量が40質量%未満であると、塗膜消耗速度が過度に小さくなり、塗膜の防汚性能が不十分となる。
共重合体における構成単位(A)の含有量は、共重合体100質量%中、通常80質量%以下であり、好ましくは65質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下である。構成単位(A)の含有量が80質量%を超えると、塗膜消耗速度の長期安定性が得られない。また、構成単位(A)の含有量が80質量%を超えることは、共重合体の調製にかかるコスト面でも不利である。
【0018】
〔2〕構成単位(B)
構成単位(B)は、重合性単量体(a)と共重合可能な重合性単量体(b)に由来する構成単位である。重合性単量体(a)と共重合可能な重合性単量体とは、具体的には、ラジカル重合性の不飽和結合(例えば二重結合)を有する単量体である。
共重合体は、構成単位(B)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0019】
共重合体における構成単位(B)の含有量は、共重合体100質量%中、通常20質量%以上であり、好ましくは35質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上である。構成単位(B)の含有量が20質量%未満であると、塗膜消耗速度の長期安定性が得られない。また、構成単位(B)の含有量が20質量%未満であることは、共重合体の調製にかかるコスト面でも不利である。
共重合体における構成単位(B)の含有量は、共重合体100質量%中、通常60質量%以下であり、好ましくは50質量%以下である。構成単位(B)の含有量が60質量%を超えると、塗膜消耗速度が過度に小さくなり、塗膜の防汚性能が不十分となる。
【0020】
重合性単量体(b)としては、例えば、遊離カルボキシル基を有する単量体(b−1)〔以下、「単量体(b−1)」ともいう。〕、エステル部にアルコキシ基及び/又はオキシアルキレン鎖を含む単量体(b−2)〔以下、「単量体(b−2)」ともいう。〕、並びに、単量体(b−1)及び単量体(b−2)以外のその他の単量体(b−3)〔以下、「単量体(b−3)」ともいう。〕が挙げられる。
単量体(b−1)〜(b−3)は、それぞれ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。単量体(b−1)〜(b−3)から選択される2種以上を併用してもよい。
【0021】
〔2−1〕単量体(b−1)
共重合体は、遊離カルボキシル基を有する単量体(b−1)に由来する構成単位を含むことが好ましい。すなわち、共重合体は、遊離カルボキシル基を有することが好ましい。遊離カルボキシル基とは、カルボキシレートアニオン(すなわち、カルボン酸塩)を形成していないカルボキシル基(−COOH)を意味する。共重合体が遊離カルボキシル基を有しているか否かは、赤外線吸収スペクトルを測定することにより確認することができる。
【0022】
共重合体が遊離カルボキシル基を有すること(遊離カルボキシル基を有する単量体(b−1)に由来する構成単位を含むこと)は、塗膜消耗速度の長期安定性に有利である。これは、必ずしも明確ではないが、遊離カルボキシル基が、近接する共重合体のエステル部(式(1)で表されるシリルエステル部位)の加水分解反応における自己触媒として機能し、当該加水分解反応の速度を増大させる、遊離カルボキシル基の隣接基効果によるものであると推測される。共重合体に、あらかじめエステル化されていない遊離カルボキシル基を導入しておくことにより、塗膜の水中への浸漬初期から隣接基効果によるシリルエステル部位の加水分解反応を行わせることにより、塗膜を長期間浸漬させたときの塗膜消耗速度が、当該期間にわたって均一化されるものと推測される。
塗膜消耗速度の長期安定性を向上させることは、長期防汚性を高めるうえで有利であり、塗膜に求められる防汚性能の発揮期間を考慮した塗膜設計(塗膜の厚みなど)を容易にするうえでも有利である。
【0023】
単量体(b−1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、桂皮酸、クロトン酸等の不飽和一塩基酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、それらのモノアルキルエステル等の不飽和二塩基酸及びそのモノアルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルのマレイン酸付加物、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルのフタル酸付加物、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルのコハク酸付加物等の不飽和一塩基酸ヒドロキシアルキルエステルの二塩基酸付加物等が挙げられる。
塗膜消耗速度の長期安定性の観点から、単量体(b−1)は、好ましくは、(メタ)アクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸であり、より好ましくは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸であり、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0024】
塗膜消耗速度の長期安定性の観点から、共重合体における単量体(b−1)に由来する構成単位の含有量は、共重合体100質量%中、好ましくは0.02質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上である。
共重合体における単量体(b−1)に由来する構成単位の含有量は、共重合体100質量%中、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは2.5質量%以下である。単量体(b−1)に由来する構成単位の含有量が8質量%を超えると、共重合体を含む防汚塗料組成物の貯蔵安定性が低下し、貯蔵中に増粘したり、ゲル化したりする傾向にある。
【0025】
塗膜消耗速度の長期安定性の観点から、単量体(b−1)に由来する構成単位を含む共重合体は、遊離カルボキシル基に由来する酸価が、好ましくは0.1KOHmg/g以上であり、より好ましくは0.3KOHmg/g以上である。
単量体(b−1)に由来する構成単位を含む共重合体は、遊離カルボキシル基に由来する酸価が、好ましくは60KOHmg/g以下であり、30KOHmg/g以下であり、さらに好ましくは20KOHmg/g以下である。遊離カルボキシル基に由来する酸価が60KOHmg/gを超えると、共重合体を含む防汚塗料組成物の貯蔵安定性が低下し、貯蔵中に増粘したり、ゲル化したりする傾向にある。
共重合体における遊離カルボキシル基に由来する酸価は、JIS K 0070に従う、フェノールフタレインを指示薬とする中和滴定法によって測定される。
【0026】
〔2−2〕単量体(b−2)
共重合体は、エステル部にアルコキシ基及び/又はオキシアルキレン鎖を含む単量体(b−2)に由来する構成単位を含むことが好ましい。共重合体が単量体(b−2)に由来する構成単位を含むことにより、塗膜消耗速度を適度に高めることができる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1以上6以下のアルコキシ基が挙げられる。
オキシアルキレン鎖は、−O−(CH
2)
n−で表され、式中のnは、例えば、1以上18以下の整数である。
【0027】
単量体(b−2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール〔−OC
2H
4−の繰り返し数は例えば2〜9〕等が挙げられる。
【0028】
塗膜消耗速度を適度に高める観点から、共重合体における単量体(b−2)に由来する構成単位の含有量は、共重合体100質量%中、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2.5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。なお、塗膜消耗速度を高めることを意図して、構成単位(A)の含有量を過度に大きくすると、塗膜消耗速度の長期安定性が得られなくなる。
共重合体における単量体(b−2)に由来する構成単位の含有量は、共重合体100質量%中、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下である。単量体(b−2)に由来する構成単位の含有量が40質量%を超えると、塗膜消耗速度が過度に上昇し、長期防汚性が低下し得る。
【0029】
〔2−3〕単量体(b−3)
単量体(b−3)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等のエステル部の炭素数が1以上20以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエステル部の炭素数が1以上20以下の水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸環状炭化水素エステル;クロトン酸エステル、マレイン酸ジエステル、イタコン酸ジエステル等の(メタ)アクリル酸エステル以外の重合性不飽和エステル;ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸等の遊離カルボキシル基以外の酸性基を有する重合性単量体;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−又はp−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルトルエン、2価金属ジ(メタ)アクリレート(2価金属は銅や亜鉛であることができる。)、2価金属原子含有ビニル系単量体(2価金属原子は銅原子や亜鉛原子であることができる。)等の他の重合性ビニル化合物 等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおいて、エステル部の炭素数は、好ましくは1以上8以下であり、より好ましくは1以上6以下である。
【0030】
共重合体における単量体(b−3)に由来する構成単位の含有量は、構成単位(B)の含有量が上述のとおりとなるように調整される。単量体(b−3)に由来する構成単位の含有量は、通常20質量%以上55質量%以下であり、好ましくは25質量%以上50質量%以下である。
【0031】
〔3〕共重合体及びその調製
共重合体は、塗膜消耗速度の長期安定性の観点から、遊離カルボキシル基に由来する酸価が、好ましくは0.1KOHmg/g以上であり、より好ましくは0.3KOHmg/g以上である。
共重合体は、遊離カルボキシル基に由来する酸価が、好ましくは60KOHmg/g以下であり、30KOHmg/g以下であり、さらに好ましくは20KOHmg/g以下である。遊離カルボキシル基に由来する酸価が60KOHmg/gを超えると、共重合体を含む防汚塗料組成物の貯蔵安定性が低下し、貯蔵中に増粘したり、ゲル化したりする傾向にある。
共重合体における遊離カルボキシル基に由来する酸価は、JIS K 0070に従う、フェノールフタレインを指示薬とする中和滴定法によって測定される。
【0032】
共重合体は、塗膜消耗速度の長期安定性の観点から、遊離カルボキシル基に由来する酸価が上記範囲内であり、かつ、遊離カルボキシル基を有する単量体(b−1)に由来する構成単位を含むことが好ましく、遊離カルボキシル基に由来する酸価が上記範囲内であり、かつ、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含むことがより好ましい。
共重合体が上記範囲内の遊離カルボキシル基に由来する酸価を有し、かつ(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含む場合において、共重合体における(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の含有量は、塗膜消耗速度の長期安定性の観点から、共重合体100質量%中、好ましくは0.02質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上である。また、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の含有量は、共重合体100質量%中、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは2.5質量%以下である。(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の含有量が8質量%を超えると、共重合体を含む防汚塗料組成物の貯蔵安定性が低下し、貯蔵中に増粘したり、ゲル化したりする傾向にある。
【0033】
塗膜消耗速度の長期安定性の観点、さらには塗膜の長期防汚性等の観点から好ましい共重合体の具体的態様は、例えば次のとおりである。
a)共重合体100質量%中、構成単位(A)40質量%以上80質量%以下と構成単位(B)20質量%以上60質量%以下とを含み、遊離カルボキシル基に由来する酸価が0.1KOHmg/g以上60KOHmg/g以下である共重合体。
この共重合体において、上記酸価は、好ましくは0.1KOHmg/g以上30KOHmg/g以下であり、より好ましくは0.3KOHmg/g以上20KOHmg/g以下である。
b)共重合体100質量%中、構成単位(A)50質量%以上65質量%以下と構成単位(B)35質量%以上50質量%以下とを含み、遊離カルボキシル基に由来する酸価が0.1KOHmg/g以上30KOHmg/g以下である共重合体。
c)共重合体100質量%中、(メタ)アクリル酸トリiso−プロピルシリルに由来する構成単位40質量%以上80質量%以下と構成単位(B)20質量%以上60質量%以下とを含み、遊離カルボキシル基に由来する酸価が0.1KOHmg/g以上60KOHmg/g以下である共重合体。
この共重合体において、上記酸価は、好ましくは0.1KOHmg/g以上30KOHmg/g以下であり、より好ましくは0.3KOHmg/g以上20KOHmg/g以下である。
d)共重合体100質量%中、(メタ)アクリル酸トリiso−プロピルシリルに由来する構成単位50質量%以上65質量%以下と構成単位(B)35質量%以上50質量%以下とを含み、遊離カルボキシル基に由来する酸価が0.1KOHmg/g以上30KOHmg/g以下である共重合体。
この共重合体において、上記酸価は、好ましくは0.3KOHmg/g以上20KOHmg/g以下である。
e)共重合体100質量%中、(メタ)アクリル酸トリiso−プロピルシリルに由来する構成単位40質量%以上80質量%以下と、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位0.02質量%以上8質量%以下と、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位以外の構成単位(B)12質量%以上59.98質量%以下とを含む共重合体。
この共重合体において、遊離カルボキシル基に由来する酸価は、好ましくは0.1KOHmg/g以上60KOHmg/g以下であり、より好ましくは0.1KOHmg/g以上30KOHmg/g以下であり、さらに好ましくは0.3KOHmg/g以上20KOHmg/g以下である。
f)共重合体100質量%中、(メタ)アクリル酸トリiso−プロピルシリルに由来する構成単位50質量%以上65質量%以下と、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位0.02質量%以上5質量%以下と、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位以外の構成単位(B)30質量%以上49.98質量%以下とを含む共重合体。
この共重合体において、遊離カルボキシル基に由来する酸価は、好ましくは0.1KOHmg/g以上60KOHmg/g以下であり、より好ましくは0.1KOHmg/g以上30KOHmg/g以下であり、さらに好ましくは0.3KOHmg/g以上20KOHmg/g以下である。
g)共重合体100質量%中、(メタ)アクリル酸トリiso−プロピルシリルに由来する構成単位50質量%以上65質量%以下と、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位0.05質量%以上2.5質量%以下と、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位以外の構成単位(B)32.5質量%以上49.95質量%以下とを含む共重合体。
この共重合体において、遊離カルボキシル基に由来する酸価は、好ましくは0.1KOHmg/g以上60KOHmg/g以下であり、より好ましくは0.1KOHmg/g以上30KOHmg/g以下であり、さらに好ましくは0.3KOHmg/g以上20KOHmg/g以下である。
【0034】
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常2000以上300000以下であり、好ましくは5000以上100000以下であり、より好ましくは10000以上80000以下である。共重合体のMwが2000以上であると、これを含む防汚塗料組成物から塗膜を形成したときに防汚性能を発現できる傾向にあり、Mwが300000以下であると、共重合体を防汚塗料組成物中に均一に分散させやすい傾向にある。ここでいう重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0035】
共重合体は、ラジカル重合反応によって調製することができる。例えば、共重合体は、単量体組成物をラジカル重合開始剤の存在下に加熱反応させることによって調製することができる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ラウリルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。
重合方法は、有機溶剤中で行う溶液重合法のほか、乳化重合法、懸濁重合法等を採用できるが、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸n−ブチル等の有機溶剤を用いる溶液重合方法が、共重合体の生産性や性能の観点から有利である。
ラジカル重合反応によって調製される共重合体は、通常、ランダム共重合体である。
共重合体は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位を50質量%以上、さらには60質量%以上、なおさらには70質量%以上、特には80質量%以上含む(メタ)アクリル系共重合体であることが好ましい。(メタ)アクリル系単量体とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等をいう。
【0036】
<防汚塗料組成物>
本発明に係る防汚塗料組成物(以下、「防汚塗料組成物」ともいう。)は、上記本発明に係る共重合体を含むものである。好ましくは、防汚塗料組成物は、防汚剤をさらに含む。
本発明に係る防汚塗料組成物によれば、上記共重合体を含むため、優れた貯蔵安定性を示すことができる。
【0037】
防汚塗料組成物における共重合体の含有量は、防汚塗料組成物に含有される固形分100質量%中、例えば30質量%以上97質量%以下であり、好ましくは35質量%以上95質量%以下である。共重合体の含有量が30質量%未満である場合、塗膜の防汚性能が不十分となり得る。共重合体の含有量が97質量%を超える場合、塗膜の可撓性が低下して塗膜にクラックが生じやすくなる。
防汚塗料組成物に含有される固形分とは、防汚塗料組成物に含まれる溶剤以外の成分の合計をいう。
【0038】
防汚塗料組成物は、防汚剤を含むことが好ましい。
防汚剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、無機化合物、金属を含む有機化合物及び金属を含まない有機化合物等を挙げることができる。
【0039】
防汚剤の具体例を挙げれば、例えば、亜酸化銅;マンガニーズエチレンビスジチオカーバメート;ジンクジメチルジチオカーバメート;2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン;2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル;N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素;ジンクエチレンビスジチオカーバーメート;ロダン銅(チオシアン酸第一銅);4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(4,5,−ジクロロ−2−n−オクチル−3(2H)イソチアゾロン);N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド;N,N’−ジメチル−N’−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド;2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩(ジンクピリチオン)及び銅塩(銅ピリチオン)等の金属塩;テトラメチルチウラムジサルファイド;2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド;2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン;3−ヨード−2−プロピルブチルカーバーメート;ジヨードメチルパラトリスルホン;フェニル(ビスピリジル)ビスマスジクロライド;2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール;トリフェニルボロンピリジン塩;ステアリルアミン−トリフェニルボロン;ラウリルアミン−トリフェニルボロン;ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート;1,1−ジクロロ−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−1−フルオロ−N−フェニルメタンスルフェンアミド;1,1−ジクロロ−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−1−フルオロ−N−(4−メチルフェニル)メタンスルフェンアミド;N’−(3,4−ジクロロフェニル)−N,N’−ジメチル尿素;N’−tert−ブチル−N−シクロプロピル−6−(メチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン;及び、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル等を挙げることができる。
防汚剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
防汚剤の含有量は、共重合体100質量部に対して、通常1質量部以上200質量部以下であり、好ましくは5質量部以上150質量部以下である。
防汚剤の含有量が過度に小さいと、塗膜が防汚性能を発揮できない傾向にある。防汚剤の含有量が過度に大きいと、塗膜にクラック、剥離等の欠陥が生じることがある。
【0041】
防汚塗料組成物は、防汚剤以外の他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、本発明に係る共重合体以外の他のバインダ樹脂、塗膜消耗調整剤、顔料、可塑剤、溶剤、水結合剤、タレ止め剤、色分かれ防止剤、沈降防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、粘度調整剤、レベリング剤、分散剤(コロイダルシリカ等)等が挙げられる。
【0042】
本発明に係る共重合体以外の他のバインダ樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂(例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル)、ロジン、水添ロジン、ジンクロジネート、塩素化パラフィン、塩素化ポリオレフィン、ポリビニルエチルエーテル、ポリプロピレンセバケート、アルキド樹脂、部分水添ターフェニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエーテルポリオール、ポリエステル樹脂、塩化ビニル系樹脂、クマロン樹脂等が挙げられる。
他のバインダ樹脂は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。他のバインダ樹脂を塗膜消耗調整剤として使用してもよい。
【0043】
塗膜消耗調整剤としては、例えば、他のバインダ樹脂の例として挙げたもののほか、ワセリン、流動パラフィン、ワックス、油脂、脂肪酸、シリコーンオイル等が挙げられる。
塗膜消耗調整剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
顔料としては、例えば、沈降性バリウム、タルク、クレー、白亜、シリカホワイト、アルミナホワイト、ベントナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸、ケイ酸塩、酸化アルミニウム水和物、硫酸カルシウム等の体質顔料;酸化チタン、酸化ジルコン、塩基性硫酸鉛、酸化スズ、カーボンブラック、白鉛、黒鉛、硫化亜鉛、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化クロム、黄色ニッケルチタン、黄色クロムチタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、アゾ系赤・黄色顔料、クロムイエロー、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、ウルトラマリンブルー、キナクリドン等の着色顔料等が挙げられる。
顔料は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジメチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル系可塑剤;アジピン酸イソブチル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールアルキルエステル等のグリコールエステル系可塑剤;トリクレジルリン酸(トリクレジルホスフェート)、トリアリールリン酸(トリアリールホスフェート)、トリクロロエチルリン酸等のリン酸エステル系可塑剤;エポキシ大豆油、エポキシステアリン酸オクチル等のエポキシ系可塑剤;ジオクチルすずラウリレート、ジブチルすずラウリレート等の有機すず系可塑剤;トリメリット酸トリオクチル、トリアセチレン等を挙げることができる。
可塑剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロペンタン、オクタン、ヘプタン、シクロヘキサン、ホワイトスピリット等の炭化水素類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ベンジル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;n−ブタノール、プロピルアルコール等のアルコール類等が挙げられる。
溶剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
防汚塗料組成物は、例えば、共重合体又はこれを含有する樹脂組成物(例えば、共重合体溶液)に、必要に応じて他の成分を添加し、ボールミル、ペブルミル、ロールミル、サンドグラインドミル、ディスパー等の混合機を用いて混合することによって調製することができる。
【0048】
防汚塗膜は、防汚塗料組成物を、常法に従って被塗物の表面に塗布した後、必要に応じて常温下又は加熱下で溶剤を揮散除去することによって形成することができる。
防汚塗膜の厚みは、例えば50μm以上500μm以下であり、好ましくは100μm以上400μm以下である。
防汚塗料組成物の塗布方法としては特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り、ローラー、静電塗装、電着塗装等の方法が挙げられる。
被塗物としては、特に限定されず、例えば、船舶;養殖を始めとする各種漁網及びその他の漁具;港湾施設;オイルフェンス;発電所等の取水設備;冷却用導水管等の配管;橋梁;浮標;工業用水系施設;海底基地等の水中構造物等が挙げられる。
本発明の防汚塗料組成物を用いて形成された防汚塗膜は、長期安定性及び長期防汚性に優れたものとなり得る。
被塗物の塗装表面は、必要に応じて前処理されたものであってもよく、また、被塗物上に形成された防錆塗料(防食塗料)等の他の塗料からなる下塗り塗膜上に、本発明の防汚塗料組成物からなる防汚塗膜を形成して複合塗膜としてもよい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
<実施例1:共重合体の調製>
温度計、冷却管、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、温度制御機を備えた4つ口フラスコに、溶剤としてのキシレン 80gを加え、95±3℃に保った。そこに、表1に示される量(表1に示されるモノマーの配合量の単位は「g」である。)の表1に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 1.2gからなる混合液を、滴下ロートに加えて4時間にわたり滴下し、その後4時間保温した後、キシレン20gを加えて冷却し、共重合体1を含む共重合体溶液1を得た。
【0051】
共重合体溶液1の固形分、並びに、共重合体1の重量平均分子量Mw及び酸価を測定した。また、共重合体1について、赤外線吸収スペクトルを測定し、遊離カルボキシル基の有無を確認した。結果を表1に示す。測定方法は次のとおりとした。他の実施例及び比較例で調製した共重合体溶液及び共重合体についても同じ測定方法を用いた。
【0052】
(共重合体溶液の固形分)
共重合体溶液のW1(g)を105℃で3時間加熱して得られる固体(共重合体)の質量W2(g)を測定し、下記式:
共重合体溶液の固形分=W2/W1(質量%)
に基づいて固形分を求めた。
【0053】
(共重合体の重量平均分子量Mw)
共重合体の重量平均分子量Mwは、GPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。測定条件は次のとおりとした。
装置:東ソー社製「HLC−8220GPC」
カラム:TSKgel SuperHZM−M ×2本
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:35℃
検出器:RI
【0054】
(共重合体の酸価)
共重合体溶液1質量部をテトラヒドロフラン10質量部で希釈した後、この希釈液をマグネットスターラで攪拌しながら655質量部のヘキサンに加えることによって固体を析出させた。この固体を減圧乾燥して測定サンプルを得た。この測定サンプルについて、JIS K 0070に従う、フェノールフタレインを指示薬とする中和滴定法によって酸価を測定した。
【0055】
(遊離カルボキシル基の有無の確認)
酸価の測定で用いたものと同じ測定サンプルについて、下記の測定条件にて赤外線吸収スペクトルを測定し(KBr法)、遊離カルボキシル基に特徴的な吸収ピークである1625cm
−1の吸収ピークが存在するか否かによって、遊離カルボキシル基の有無を確認した。下記の表において、遊離カルボキシル基を確認できた場合をA、確認できなかった場合をBとした。
装置:日本分光株式会社製「IRF−5200」
測定温度:室温
【0056】
<実施例2:共重合体の調製>
表1に示される量の表1に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としての2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル) 1.5gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体2を含む共重合体溶液2を得た。
【0057】
<実施例3:共重合体の調製>
表1に示される量の表1に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 1.5gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体3を含む共重合体溶液3を得た。
【0058】
<実施例4:共重合体の調製>
表1に示される量の表1に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 1.5gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体4を含む共重合体溶液4を得た。
【0059】
<実施例5:共重合体の調製>
表1に示される量の表1に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 1.2gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体5を含む共重合体溶液5を得た。
【0060】
<実施例6:共重合体の調製>
表1に示される量の表1に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 1.2gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体6を含む共重合体溶液6を得た。
【0061】
<実施例7:共重合体の調製>
表1に示される量の表1に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 0.9gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体7を含む共重合体溶液7を得た。
【0062】
<実施例8:共重合体の調製>
表1に示される量の表1に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としての2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル) 1.2gからなる混合液を用いたこと、及び重合反応の温度を100±3℃としたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体8を含む共重合体溶液8を得た。
【0063】
<実施例9:共重合体の調製>
表1に示される量の表1に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 1.2gからなる混合液を用いたこと、及び重合反応の温度を100±3℃としたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体9を含む共重合体溶液9を得た。
【0064】
<実施例10:共重合体の調製>
表1に示される量の表1に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 1.2gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体10を含む共重合体溶液10を得た。
【0065】
<実施例11:共重合体の調製>
表1に示される量の表1に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としての2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル) 1.5gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体11を含む共重合体溶液11を得た。
【0066】
<実施例12:共重合体の調製>
表1に示される量の表1に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 1.0gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体12を含む共重合体溶液12を得た。
【0067】
<実施例13:共重合体の調製>
表1に示される量の表1に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としての2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル) 1.2gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体13を含む共重合体溶液13を得た。
【0068】
<実施例14:共重合体の調製>
表2に示される量の表2に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 1.2gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体14を含む共重合体溶液14を得た。
【0069】
<実施例15:共重合体の調製>
表2に示される量の表2に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 1.2gからなる混合液を用いたこと、及び重合反応の温度を90±3℃としたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体15を含む共重合体溶液15を得た。
【0070】
<実施例16:共重合体の調製>
表2に示される量の表2に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 1.2gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体16を含む共重合体溶液16を得た。
【0071】
<実施例17:共重合体の調製>
表2に示される量の表2に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としての2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル) 1.5gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体17を含む共重合体溶液17を得た。
【0072】
<実施例18:共重合体の調製>
表2に示される量の表2に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 1.0gからなる混合液を用いたこと、及び重合反応の温度を90±4℃としたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体18を含む共重合体溶液18を得た。
【0073】
<実施例19:共重合体の調製>
表2に示される量の表2に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 1.1gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体19を含む共重合体溶液19を得た。
【0074】
<実施例20:共重合体の調製>
表2に示される量の表2に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としての2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル) 1.1gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体20を含む共重合体溶液20を得た。
【0075】
<実施例21:共重合体の調製>
表2に示される量の表2に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としての2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル) 1.1gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体21を含む共重合体溶液21を得た。
【0076】
<実施例22:共重合体の調製>
表2に示される量の表2に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 1.0gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体22を含む共重合体溶液22を得た。
【0077】
<実施例23:共重合体の調製>
表2に示される量の表2に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 1.0gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体23を含む共重合体溶液23を得た。
【0078】
<実施例24:共重合体の調製>
表2に示される量の表2に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 1.1gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体24を含む共重合体溶液24を得た。
【0079】
<実施例25:共重合体の調製>
温度計、冷却管、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、デカンター、温度制御機を備えた4つ口フラスコに、溶剤としてのキシレン 100g、共重合体溶液9 100g、水添ロジン(酸価:155KOHmg/g) 4.2g、酢酸銅一水和物 2.3gを加え、還流下で水及び酢酸を除去しながら7時間反応させた。反応終了後にキシレンを加え、共重合体の濃度が約50質量%になるように調整して、共重合体25を含む共重合体溶液25を得た。
【0080】
<比較例1:共重合体の調製>
最初にフラスコに加える溶剤としてキシレン 80gの代わりにキシレン 70gを用いたこと、表3に示される量の表3に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 0.9gからなる混合液を用いたこと、重合反応の温度を90±3℃としたこと、及び反応終了後に加えるキシレンの量を30gとしたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体H1を含む共重合体溶液H1を得た。
【0081】
<比較例2:共重合体の調製>
表3に示される量の表3に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としての2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル) 1.2gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体H2を含む共重合体溶液H2を得た。
【0082】
<比較例3:共重合体の調製>
表3に示される量の表3に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としての2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル) 1.2gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体H3を含む共重合体溶液H3を得た。
【0083】
<比較例4:共重合体の調製>
表3に示される量の表3に示されるモノマー及びラジカル重合開始剤としての2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル) 1.2gからなる混合液を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、共重合体H4を含む共重合体溶液H4を得た。
【0084】
<比較例5:共重合体の調製>
水添ロジン(酸価:155KOHmg/g)の使用量を8.4gとし、酢酸銅一水和物の使用量を4.6gとしたこと以外は実施例25と同様にして、共重合体H5を含む共重合体溶液H5を得た。
【0085】
実施例1と同様にして、実施例2〜25及び比較例1〜5の共重合体溶液の固形分、並びに、共重合体の重量平均分子量Mw及び酸価を測定するとともに、共重合体について、遊離カルボキシル基の有無を確認した。結果を表1〜表3に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
表1〜表3に示される略称の詳細は下記のとおりである。
(1)MMA:メタクリル酸メチル
(2)EA:アクリル酸エチル
(3)n−BA:アクリル酸n−ブチル
(4)t−BA:アクリル酸tert−ブチル
(5)i−BA:アクリル酸iso−ブチル
(6)TIPSA:アクリル酸トリiso−プロピルシリル
(7)TIPSMA:メタクリル酸トリiso−プロピルシリル
(8)TIPSIAM:マレイン酸iso−イソプロピルシリルiso−アミル
(9)DIPPSM:メタクリル酸ジiso−プロピルフェニルシリル
(10)DIPIBSM:メタクリル酸ジiso−プロピルiso−ブチル
(11)AA:アクリル酸
(12)MAA:メタクリル酸
(13)MA:マレイン酸
(14)ST:スチレン
(15)M−90G:メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル(オキシエチレン鎖の繰り返し数=9)
(16)M−40G:メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル(オキシエチレン鎖の繰り返し数=4)
(17)MEA:アクリル酸2−メトキシエチル
(18)MEMA:メタクリル酸2−メトキシエチル
【0090】
<実施例26〜55、比較例6〜11>
(1)防汚塗料組成物の調製
表4〜表6の配合処方(質量部)に従い、実施例1〜25及び比較例1〜5で得られた共重合体溶液のいずれか、並びに表4〜表6に示すその他の成分を、ディスパー(2000rpm)を用いて混合・分散させることにより、防汚塗料組成物を調製した。表4〜表6に記載される各配合成分の量(質量部)は、固形分換算量である。
【0091】
(2)塗膜の消耗速度の評価
得られた防汚塗料組成物を、あらかじめ防錆塗料が塗布されたブラスト板に乾燥膜厚が300μmとなるように塗布し、2昼夜室内に放置することにより乾燥させて、防汚塗膜を有する試験板を得た。この試験板を直径750mm、長さ1200mmの円筒側面に貼り付け、海水中、周速15ノットで昼夜連続回転させ、試験板の塗膜消耗量(塗膜厚みの累積減少量[μm])の経時変化を測定する塗膜消耗試験を行った。
表4〜表6における「1年目」の欄に記載の数値Xは、試験開始から12か月経過時までの間に減少した塗膜厚み[μm]を12で割った値であり、この期間(1年目)における1月あたりの塗膜厚みの減少量を意味する。
表4〜表6における「2年目」の欄に記載の数値Yは、試験開始後12か月経過時から24か月経過時までの間に減少した塗膜厚み[μm]を12で割った値であり、この期間(2年目)における1月あたりの塗膜厚みの減少量を意味する。
表4〜表6における「3年目」の欄に記載の数値Zは、試験開始後24か月経過時から36か月経過時までの間に減少した塗膜厚み[μm]を12で割った値であり、この期間(2年目)における1月あたりの塗膜厚みの減少量を意味する。
ZをYで割った値(Z/Y)を併せて表4〜表6に示す。
【0092】
(3)塗膜の防汚性の評価
得られた防汚塗料組成物を、あらかじめ防錆塗料が塗布されたブラスト板に乾燥膜厚が300μmとなるように塗布し、7日間室温で乾燥させて、防汚塗膜を有する試験板を得た。得られた試験板を兵庫県赤穂市相生湾の筏に浸漬する生物付着試験を行い、塗膜の防汚性を評価した。結果を表4〜6に示す。
表中の年数は筏浸漬期間を示す。表中の数値は、生物付着面積の塗膜面積に占める割合(%)を示す。
【0093】
(4)防汚塗料組成物の貯蔵安定性の評価
200ccの塗料缶に180ccの防汚塗料組成物を入れ、40℃で3か月間貯蔵する貯蔵安定性試験を行った。ストーマー粘度計を用いて、貯蔵前後の防汚塗料組成物の25℃における粘度(単位:KU)の差を測定した。結果を表4〜表6に示す。
【0094】
【表4】
【0095】
【表5】
【0096】
【表6】
【0097】
表4〜表6に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
(1)亜酸化銅:NCテック(株)製「NC−301」
(2)防汚剤A:ZPT(ジンクピリチオン)(アーチケミカル社製「ジンクオマジン」)
(3)防汚剤B:CuPT(銅ピリチオン)(アーチケミカル社製「カッパーオマジン」)
(4)コロイダルシリカ:(日産化学工業社製「スノーテックス20」)
(5)ベンガラ:戸田工業(株)製「トダカラーKN−R」
(6)亜鉛華:堺化学工業(株)製「酸化亜鉛2種」
(7)ポリビニルエチルエーテル:(BASF JAPAN(株)製「ルトナール A25」)
(8)塩素化パラフィン:(東ソー(株)製「トヨパラックス A50」)
(9)ロジン:(荒川化学工業(株)製「WWロジン」)
(10)ジンクロジネート:上記のWWロジン400gに亜鉛華48g、キシレン200gを加え、加熱還流下で水を21gとキシレンを115g除去して合成
は、それぞれ独立して、炭素数1以上6以下の炭化水素基である。]で表されるシリコン原子含有基を有する重合性単量体(a)に由来する構成単位(A)と、重合性単量体(a)と共重合可能な重合性単量体(b)に由来する構成単位(B)とを含む共重合体であって、構成単位(A)の含有量が共重合体100質量%中40質量%以上80質量%以下であり、構成単位(B)の含有量が共重合体100質量%中20質量%以上60質量%以下であり、遊離カルボキシル基に由来する酸価が0.1KOHmg/g以上60KOHmg/g以下である共重合体、並びにそれを含む防汚塗料組成物が提供される。