(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記傾斜端面部には前記中空部と連通し、前記吸引口部を形成する端面側開口部が形成され、前記傾斜端面部と嵌合する前記円環部には、前記端面開口部よりも小さい径を有する破砕開口部が形成されることを特徴とする請求項1記載の内視鏡手術用吸引鉗子。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨に逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0023】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子100の全体構成を説明する概略断面図であり、
図2は、内視鏡手術用吸引鉗子100による吸引動作を説明する動作説明図であり、
図3は、内視鏡手術用吸引鉗子100の一端側に設けられた吸引口部104の構成を説明する部分拡大図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子100は、中空部106を有するロッド状に形成された本体部101と、本体部101の長手方向端部から略垂直方向に延在して形成され、施術者の人差し指を挿通させる指挿通部102aを備えた第1の操作ハンドル部102と、第1の操作ハンドル部102に設けられた軸支部102bに回動自在に軸支され、施術者の親指を挿通させる指挿通部103aを備えた第2の操作ハンドル部103と、第1の操作ハンドル部102が設けられた本体部101の長手方向反対側端部(先端部)に形成され、出血した血液や組織から漏れ出た体液等の液体を吸引する吸引口部104と、吸引口部104を構成する後述の血餅破砕部105に対して第2の操作ハンドル部103の操作伝達力を伝達する操作ワイヤ部107とを備える。
【0025】
第2の操作ハンドル103は軸支部102bを中心に第1の操作ハンドル102に対して
図1中矢印X方向に回動(開閉)可能となるように構成されている。第2の操作ハンドル103の先端側には操作ワイヤ部107が接続部107aを介して接続されており、第1の操作ハンドル部102に対する第2の操作ハンドル部103の回動動作に伴い操作ワイヤ部107が
図1中矢印Y方向に駆動することで、後述する破砕接続部105fを介して接続された破砕本体部105cを
図3中Z方向に開閉させることができる。
【0026】
また、第2の操作ハンドル部103の背部分には、吸引口部104、中空部106を通じて吸引した血液や体液等の液体を貯留するための貯留部110が設けられている。貯留部110は、第2の操作ハンドル部103の背部分に直接固定された貯留蓋部110aと当該貯留蓋部110aの内壁に形成された係合部110cと被係合部110dとの係合を介して固定された貯留本体部110bとを備える。貯留本体部110bは、貯留蓋部110aに対して着脱自在となるように構成されている。
【0027】
貯留蓋部110aの天面部分には、中空部106から連続して形成された中空部側接続管109と連通する中空部側開口部110eと、後述する吸引器からの吸引管と接続される吸引管側接続管111と連通する吸引管側開口部110fとがそれぞれ形成されている。そして、中空部側開口部110eと吸引管側開口部110fとの間の天面部分には、当該中空部側開口部110eの開放・閉塞が可能となるように切替え手段としての開閉スイッチ114が設けられている。
図2(a)で示す状態では、当該開閉スイッチ114は“開”状態となっているため、吸引器からの吸引ラインが接続状態となり、吸引器の吸引力による吸引が可能となる。一方、
図2(a)で示す状態から、第1のスイッチ片114aを図中矢印T方向に倒し、
図2(b)に示す“閉”状態とすると、第2のスイッチ片114bが中空部側開口部110eを塞ぐことになるため、吸引器からの吸引ラインが遮断状態となり、吸引器の吸引力による吸引を停止することができる。
【0028】
ところで、貯留本体部110b内部の貯留空間にはガーゼ等の液体吸収材113が収容される。貯留本体部110b内部に液体吸収材113を備えることにより、貯留空間の汚染を最小限に抑えるとともに、吸引器への吸引液体の浸入を防止することができる。なお、本実施形態に係る貯留本体部110bは貯留蓋部110aに対して着脱自在となるように構成されているため、液体吸収材113の交換を容易に行うことができる。
【0029】
次に、内視鏡手術用吸引鉗子100の長手方向先端部である吸引口部104について
図1及び
図3を中心に説明する。
図3に示すように、吸引口部104は、本体部101の長手方向先端側の所定位置から端面にかけて、本体部101の回転軸に対して平行な面である平面部を有する台座部101cと、当該台座部101cの端部近傍から本体部101の外周面にかけての断面形状が楕円、すなわち、本体部101の外観を観察したときに、その全体形状が略斜切円柱体となるように形成された傾斜端面部101bとを備える。傾斜端面部101bには、中空部106と連通する端面側開口部101aが形成されており、当該端面側開口部101aを介して出血した血液や組織から漏れ出た体液等の液体が本体部101の中空部106に導入される。
【0030】
また、吸引口部104には、術中に組織を摘み上げるといった組織の取り回し動作を行う把持部を兼ねるとともに、血餅(血液が時間経過とともに血の塊、柔らかいゼリー状となったもの)を破砕する血餅破砕部105が設けられている。血餅破砕部105は、台座部101cの平面部と略同面積を有し、第2の操作ハンドル部103の回動動作に伴い破砕回動部105dを回動中心として
図3中Z方向に開閉する破砕本体部105cを備える。ところで、
図1に示すように破砕本体部105cの一端側には破砕接続部105fを有する破砕回動片105eが延在して形成されている。破砕回動片105eには、破砕接続部105fが移動可能となるように長穴が形成されている。破砕接続部105fが当該長穴に対して移動可能となるように構成することで、第2の操作ハンドル部103の回動動作、すなわち操作ワイヤ部107の駆動に伴い、破砕本体部105cは破砕回動部105dを回動中心として
図3中Z方向に開閉することができる。
【0031】
再び
図3に戻り、破砕本体部105cの他端側には傾斜端面部101bと略同形状の破砕円環部105bが形成されている。破砕円環部105bには、端面側開口部101aよりもその面積が僅かに小さくなるように破砕開口部105aが形成されている。このように、端面側開口部101aの開口径と破砕開口部105aの開口径との間に面積差を設けることにより、吸引時に吸引口部104に血餅が付着し、一時的に吸引口部104が塞がれたとしても、破砕本体部105cの開閉動作に伴い、付着した血餅を破砕して再吸引することができる。前述したように、血餅破砕部105の破砕円環部105bと傾斜端面部101bとは、血餅の破砕に使用しない際は、破砕本体部105cの開閉動作に伴い、組織の取り回し動作が可能な把持部として機能する。
【0032】
ここで、血餅破砕部105による血餅の破砕動作について説明する。例えば、
図4(a)に示す、破砕本体部105cが台座部101cに対して閉じた吸引状態において、血餅BCが付着し、吸引口部104(破砕開口部105a)が塞がれたとものとする。この状態から、血餅BCを破砕円環部105bと傾斜端面部101bとで挟みこむように破砕本体部105cを開閉させる(
図4(b))。すると、
図4(c)に示すように、血餅BCは血餅BC1と血餅BC2とに、血餅BC2は血餅BC3に(
図4(d)、(e))、といったように徐々に細分化され、全ての血餅BCが吸引されることにより、吸引口部104は
図4(f)に示すような元の吸引可能な状態に戻すことができる。
【0033】
ところで、
図5(a)に示すように、腹腔、胸腔等の体腔内は、体液が蒸発することによりミストmが発生する。このとき、例えば、
図5(b)に示すように、血管BVや当該血管BVから延びる細血管(毛細血管等)BV1から出血すると、ミストは血液混じりの状態(m’)となる。本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子100は、吸引管側接続管111と吸引器からの吸引管との接続を解除し、コードレス状態で使用しても体腔内に存在するミストmや血液混じりのミストm’を吸引することも可能である。
【0034】
すなわち、一般的な内視鏡手術では、
図6に示すように、気腹装置より体壁AWに装着されたポート200を介して供給管601から二酸化炭素(CO
2)が+10〜15mmHgの圧力をもって体腔AC内に絶えず供給されており、体腔内ACは、体腔外の圧力を760mmHg(大気圧)と考えると760mmHg+10〜15mmHgの圧力(気腹圧又は気胸圧)が維持されている。したがって、本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子100をポート201を介して体腔内ACに挿入するだけで、吸引器を用いて強制吸引せずとも、体腔外との差圧によりミストmや血液混じりのミストm’を排気することができる。そして、排気されたミストmや血液混じりのミストm’は、貯留本体部110b内部の貯留空間に設けられたガーゼ等の液体吸収材113により吸収されるため、これらのミストが術者に直接吹きかかることを防止することができる。また、第1のスイッチ片114aを “閉”状態とすることで、体腔内圧力を所定の圧力に維持することも可能である。なお、
図5(c)に示すように、細血管BV1等から出血し、体腔内に溜まった血液BDも本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子100によれば、吸引可能であることは無論である。
【0035】
また、
図1及び
図7に示されるように、本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子100の本体部101には照明部116が設けられている。照明部116は、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子116aと、集光レンズ等を備え、発光素子116aからの光を中空部106に導光する導光部116bと、乾電池等を備え、発光素子116aに駆動電力を供給する電源部116cと、発光素子116aによる発光のオン・オフを切替える切替えスイッチ116dとを備える。このように、本体部101に対して照明部116を備えることにより、中空部106に液体が存在しない状態で、吸引口部104を介して外部に光L1を照射することが可能であるため、術野を明るく照らすことができる。なお、照明部116は、必要に応じて本体部101からの取り外しが可能となるように構成してもよい。
【0036】
さらにまた、
図8(a)に示すように、本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子100は、操作ワイヤ部107の一端側端部であるワイヤ接続端子108に図示せぬ電気凝固装置本体からの通電コード115を接続し、止血箇所(例えば、細血管BV1や組織)を通電凝固することで止血することができる。すなわち、操作ワイヤ部107、血餅破砕部105、及び傾斜端面部101b等を導電性の材質で構成し、
図8(b)に示すように、止血箇所(細血管BV1)を破砕円環部105bと傾斜端面部101bとで摘んだ状態で通電し、当該止血箇所を炭化(細血管BV2)させることで止血する。
【0037】
図9は、本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子100を実際に内視鏡手術に使用する際の様子を説明する模式図である。
【0038】
内視鏡手術用吸引鉗子100はポート201を介して体腔AC内に挿入されている。同じくポート200を介して気腹装置600の送気ライン602に接続された供給管601が、ポート202を介して腹腔鏡500が体腔AC内にそれぞれ挿入されている。
【0039】
術中においては、前述したように、気腹装置600から二酸化炭素(CO
2)が+10〜15mmHgの圧力をもって供給されている。そして、術者は腹腔鏡500を介して図示せぬモニタ等の外部表示装置に写し出された術野を確認しながら手術を進める。
【0040】
内視鏡手術用吸引鉗子100には、吸引管112を介して吸引器300が接続されている。前述したように、本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子100は、長手方向先端部に出血した血液や組織から漏れ出た体液等の液体を吸引する吸引口部104が形成されている。そして、吸引口部104には、血餅破砕部105が設けられており、当該血餅破砕部105は、通常の鉗子と同様に組織を把持し、摘まみ上げたりすることが可能となるように構成されている。したがって、本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子100によれば、把持の目的で組織の取り回しを行いながらも、血管や組織から血液や体液等が漏れ出た場合、専用の吸引管に差し替えることなく、吸引器300の吸引力により、血液や体液等の液体を吸引口部104を介して迅速に吸引することができる。
【0041】
さらに、血液が凝固した血餅が吸引口部104に付着し、当該吸引口部104が塞がれたとしても、破砕本体部105cの開閉動作に伴い、血餅を破砕し細分化して吸引することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子100は、吸引管側接続管111と吸引器300からの吸引管112との接続を解除し、コードレス状態で使用しても、体腔内外の差圧に基づき体腔内に存在するミストmや血液混じりのミストm’を吸引することも可能である。
【0043】
また、
図9に示すように、内視鏡手術用吸引鉗子100には、通電コード115を介して電気凝固装置400が接続されている。なお、患者には通電コード402を介して対極板401が装着されている。
【0044】
そして、操作ワイヤ部107、血餅破砕部105、及び傾斜端面部101b等を導電性の材質で構成することにより、止血箇所を破砕円環部105bと傾斜端面部101bとで摘んだ状態で通電し、当該止血箇所を炭化(細血管BV2)させることで止血することも可能である。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子によれば、術中に出血や体液等が漏れ出た場合においても、専用の吸引管を挿入し直す必要が無く、血液や体液等の液体を迅速に吸引することができ、結果的に手術時間が長くなることを防ぐことができる。
【0046】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、本発明に係る内視鏡手術用吸引鉗子において吸引口部における吸引を遮断する吸引遮断機構を備えた構成について説明する。ここで、
図10は本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子の本体部先端側構造を説明する図である、
図11は本実施形態に係る吸引遮断機構を説明する図であり、
図12は、本実施形態に係る吸引遮断機構の作動状態を説明する図であり、
図13及び
図14は本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子の本体部先端側構造の他の形態を説明する図である。また、
図15は従来型の吸引管構造を説明する図である。
【0047】
例えば、
図15に示すような、本体部901、中空部902、及び吸引口部905からなる従来型の吸引管構造では、血液等の液体を吸引する場合に、吸引口部905である先端A部分に吸引圧力がかかることになる。
【0048】
このとき、血液が液体状態であるときは、
図15(1)に示すように、先端A部分で詰まることなく、図中矢印方向に血液は吸引されることになるが、血液が凝固してゼリー状となった血餅等の固体物を吸引した場合には、
図15(2)に示すように、先端A部分(吸引口部905)に固体物が詰まってしまうことがあった。この場合、吸引管を一度体外に引き出して吸引口部905に詰まった固体物を取り除く必要があり、不便であった。
【0049】
これに対して本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子は、血餅等の固体物を吸引してしまった場合においても、吸引口部における吸引を遮断することで、吸引口部から固体物を容易に離間させることが可能な吸引遮断機構を備えることを特徴としている。以下にその構成について説明する。
【0050】
図10は、本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子700の本体部先端側構造を説明する図であり、(1)は把持片部703が本体部701に対して閉じた状態(閉状態)を説明する図であり、(2)は把持片部703が本体部701に対して開いた状態(開状態)を説明する図である。なお、本体部701の長手方向反対側端部から略垂直方向に延在して形成され、施術者が操作する第1の操作ハンドル部、第2の操作ハンドル部等の構成は第1の実施形態と同様に構成することが出来るため、ここでの説明は省略する。
【0051】
図10(1)に示されるように、内視鏡手術用吸引鉗子700は、中空部702を有し、回動支点701bを軸支点として本体部701に対して回動自在に形成された把持片部703と、本体部701の先端部に形成された吸引口部705とを備える。把持片部703は、
図10(1)及び(2)に示すように、本体部701に対して閉状態のときに、当該本体部701と一体となって円筒状の中空部702を形成するように中空の半円筒形状として構成される。
【0052】
図11は、内視鏡手術用吸引鉗子700における吸引遮断機構800の構成を説明する図である。(1)は把持片部703が本体部701に対して閉状態であるときの構成を説明する図であり、(2)は(1)におけるC−C’断面図である、(3)は把持片部703が本体部701に対して開状態であるときの構成を説明する図である。
図11(1)〜(3)に示すように、本実施形態に係る吸引遮断機構800は、本体部701と、把持片部703と、操作ワイヤ部704とを備える。
【0053】
把持片部703は、本体部701から延在して構成された把持片支持部701aにおいて回動支点部701bが軸支点となるように軸支されていると共に、
図11(1)及び(2)に示されるように、中空部702の中心軸方向に向かって延在する操作ワイヤ接続部703aが設けられている。把持片部703は操作ワイヤ接続部703aにおける連結部703bを介して操作ワイヤ部704と接続されている。第1の実施形態において説明したように、第1の操作ハンドルに対する第2の操作ハンドルの回動動作に伴い操作ワイヤ部704が
図11(3)矢印Y方向に駆動することで、連結部703b、操作ワイヤ接続部703aを介して接続された把持片部703は同図中p方向への回動が可能となる。これにより、把持片部703は本体部701に対して開いた状態である開状態と閉じた状態である閉状態との両状態の間を遷移することができる。
【0054】
ところで、本体部701に対して把持片部703が閉状態である場合における両部材の間隙Dは
図11(2)に示すように0.15mm以下とすることが好ましい。間隙Dが0.15mm以下であれば、液体の表面張力により当該間隙が塞がれるため、吸引口部705における吸引に支障をきたすことはない。
【0055】
次に、
図12を用いて吸引遮断機構800の作動状態について説明する。
図12(1)に示すように、吸引遮断機構800を備えた内視鏡手術用吸引鉗子700を用いた吸引動作時において、固体物として血餅BCを吸引した場合、施術者は第1の操作ハンドルに対する第2の操作ハンドルの回動動作を行う。第2の操作ハンドルの回動動作に伴う操作ワイヤ部704の駆動によって、把持片部703は本体部701に対して開状態となる(
図12(2))。その結果、吸引口部705(先端A部分)における吸引圧力が遮断され、把持片部703の回動位置であるB部分に吸引圧力がかかる位置が移動することになる。これにより吸引口部705における血餅BCに対する吸引が解除されるため、血餅BCを吸引口部705から容易に離間させることができる。
【0056】
なお、術中における吸引動作において、生体内の脆弱な組織を誤って吸引してしまうことがある。この場合、吸引口部に組織が詰まることで組織の挫滅、出血の危険性があった。血餅BCの誤吸引動作と同様に、本実施形態に係る吸引遮断機構800を備えた内視鏡手術用吸引鉗子700によれば、脆弱な組織を誤って吸引してしまった場合においても、当該組織を吸引口部705から素早く且つ容易に離間させることができるため、より組織の挫滅や出血のリスクを低減させることができる。
【0057】
ところで、
図10乃至
図12を用いた説明では、本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子700として本体部701の先端部分(端部)に吸引口部705を備える形態について説明した。本実施形態では、本体部701における吸引口部705の配設位置は当該本体部701の先端部分に限定されるものではなく、例えば、術式、手術環境、施術者の癖といった要因を考慮し、種々の変形例を考えることができる。
【0058】
図13は、本体部711の側面部に吸引口部715を備えた内視鏡手術用吸引鉗子710の構成を説明する図である。(1)は把持片部713が本体部711に対して閉状態であるときの構成を説明する図であり、(2)は把持片部713が本体部711に対して開状態であるときの構成を説明する図である。
【0059】
図13(1)に示されるように、内視鏡手術用吸引鉗子710は、中空部712を有し、回動支点711bを軸支点として本体部711に対して回動自在に形成された把持片部713と、本体部711の先端側側面部に形成された吸引口部715とを備える。吸引口部715は、
図13(1)及び(2)に示すように、本体部711に対して把持片部713が閉状態とのきに、中空部712と連通する円形の吸引口部715が形成されるように、本体部711の側面部711c及び把持片部713の側面部713cのそれぞれに半円形状の開口部として形成されている。
【0060】
図13に示す形態では、図正面方向から見て手前側の側面部に吸引口部715が形成された例について示されている。この形態では、施術者が内視鏡手術用吸引鉗子710を右手に持って操作する場合、当該吸引口部715は施術者に対してスコープ越しに正対する位置となるため、施術者は術中、当該吸引口部715を観察しながら吸引動作、把持部を用いた組織の取り回し動作を行うことが可能となる。これにより施術者はより安全に手術を行うことができると共に、もし血餅BCや脆弱な組織等を誤って吸引したとしても吸引口部715から素早く且つ容易に離間させることができるため、組織の挫滅や出血のリスクをさらに低減させることができる。なお、施術者が内視鏡手術用吸引鉗子710を左手に持って操作する場合には、
図13正面方向から見て奥側の側面部に吸引口715を設ければよく、また、図正面方向から見て手前側、奥側の両側面部に吸引口部を設ける形態としてもかまわない。
【0061】
図14は、本体部721の底面部に吸引口部725を備えた内視鏡手術用吸引鉗子720の構成を説明する図である。(1)は把持片部723が本体部721に対して閉状態であるときの構成を説明する図であり、(2)は把持片部723が本体部721に対して開状態であるときの構成を説明する図である。
【0062】
図14(1)に示されるように、内視鏡手術用吸引鉗子720は、中空部722を有し、回動支点721bを軸支点として本体部721に対して回動自在に形成された把持片部723と、本体部721の先端側の底面部721dに形成された吸引口部725とを備える。吸引口部725は、
図14(1)及び(2)に示すように、本体部721に対する把持片部723の閉状態、開状態に関係なく、中空部722と連通する円形の開口部として形成されている。
【0063】
これまで説明した形態とは異なり、
図14に示す形態では、吸引口部725は把持片部723とは独立して本体部721の底面部721dのみに形成されている。内視鏡手術用吸引鉗子700、710については、本体部に対して把持片部が閉状態とのきに、中空部と連通する円形の吸引口部が形成されるように本体部及び把持片部のそれぞれがある程度の精度をもって製造される必要があった。これに対して、
図14に示す形態では、吸引口部725は本体部721の底面部721dのみに形成される構成であるため、内視鏡手術用吸引鉗子700、710よりも低精度での製造が可能である。よって、
図14に示す形態によれば、製造コストを抑えながらも、内視鏡手術用吸引鉗子700、710と同等の効果を得ることが可能な内視鏡手術用吸引鉗子720を提供することができる。
【0064】
以上のように、本実施形態に係る内視鏡手術用吸引鉗子によれば、第1の実施形態と同様に、術中に出血や体液等が漏れ出た場合においても、専用の吸引管を挿入し直す必要が無く、血液や体液等の液体を迅速に吸引することができ、結果的に手術時間が長くなることを防ぐことができる。