(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パラメータ保管部は、各プロセス機器の前記配管系関連項目と前記故障年数とに基づいて生存時間解析を行って前記故障年数に与える前記配管系関連項目の影響を評価し、前記パラメータを演算する請求項1に記載のリスク評価装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のリスク評価手段では、個々のプロセス機器の故障発生確率を演算するのに、RBIにおける一般的な手法を用いており、蒸気プラントにおける配管系に設けられるプロセス機器の特性を考慮したものとまではなっていない。
【0005】
そこで、蒸気プラントにおける配管系に設けられるプロセス機器の特性を考慮した故障発生確率の演算が行えるリスク評価装置、リスク評価方法、及び、リスク評価プログラムの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るリスク評価装置は、
蒸気プラントにおける配管系に設けられるプロセス機器の故障発生確率を演算するリスク評価装置であって、
対象とする対象プロセス機器についての、時間経過に対する故障発生確率の変化を示す対象故障曲線を演算する対象故障曲線演算部と、
演算された前記対象故障曲線に基づき、前記対象プロセス機器の故障発生確率を演算する故障発生確率演算部と、を備え、
前記対象故障曲線演算部は、
演算用データとして、多数のプロセス機器に関し、当該プロセス機器が設けられる配管系に関連する項目である配管系関連項目と、故障するまでの年数である故障年数と、をプロセス機器ごとに記憶してある記憶部の前記演算用データに基づき、前記対象故障曲線の演算のための、前記配管系関連項目に関連する1又は複数のパラメータを演算して保管するパラメータ保管部と、
前記対象プロセス機器についての前記配管系関連項目
および前記対象プロセス機器自体に関連する項目である機器関連項目を取得する演算条件取得部と、
取得された前記対象プロセス機器についての前記配管系関連項目と前記パラメータ保管部に保管されたパラメータとに基づき、前記対象故障曲線を導出する演算用パラメータを取得するパラメータ取得部と、
前記機器関連項目と対応する補正方法を保管する補正方法保管部と、
取得された前記機器関連項目に対応する前記補正方法に基づき、前記パラメータ取得部が取得した前記演算用パラメータを補正するパラメータ補正部と、
前記パラメータ補正部による補正後の前記演算用パラメータに基づき、前記対象故障曲線を演算する故障曲線演算部と、
を備える。
【0007】
この構成によれば、多数のプロセス機器に関するデータを用いて演算したパラメータに基づく故障発生曲線から故障発生確率を求め、上記構成では、プロセス機器がどのように用いられるかに直結し、故障発生確率に大きな影響を与える配管系関連項目に関連するパラメータを演算するので、プロセス機器の特性に則した故障発生確率を得ることができる。そして、プロセス機器に関するあらゆる情報を用いるのでなく、プロセス機器自体の事情に関わりのない配管系に関連する客観的な項目を用いるので、同種のデータを集めやすく、パラメータを演算するときの精度も効果的に高めることができる。
また、この構成によれば、プロセス機器に関する客観的な配管系関連項目に基づき求めたパラメータを、さらに、主観的なプロセス機器自体に関連する機器関連項目で補正するので、パラメータの精度を効果的に高めることができる。
【0008】
以下、本開示に係る監視装置の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本開示の範囲が限定される訳ではない。
【0009】
1つの態様として、前記パラメータ保管部は、各プロセス機器の前記配管系関連項目と前記故障年数とに基づいて生存時間解析を行って前記故障年数に与える前記配管系関連項目の影響を評価し、前記パラメータを演算すると好適である。
【0010】
この構成によれば、いわゆる生存時間解析を行うことで、プロセス機器が故障に至るまでに配管系関連項目が与える影響度を好適に評価でき、精度高くパラメータを用いることができる。
【0011】
1つの態様として、前記配管系関連項目が、当該配管系の利用形態に関する項目を含むと好適である。
【0012】
この構成によれば、配管系に設けられるプロセス機器にとって、配管系の利用形態はプロセス機器に加わる負荷の程度に大きく影響を与える要素であるので、配管系関連項目としてその利用形態を考慮することで、精度高くパラメータを用いることができる。
【0015】
1つの態様として、前記機器関連項目が、前記対象プロセス機器に対して設けられた付加的構成に関する項目を含むと好適である。
【0016】
1つの態様として、前記機器関連項目が、前記配管系に対する前記対象プロセス機器の設置状態と性能の一方又は双方に関する項目を含むと好適である。
【0017】
プロセス機器に対して設けられた付加的構成やプロセス機器の設置状態の適否や性能は、プロセス機器の故障に対する耐久性に大きく影響を与えるため、これらの構成によれば、これらを考慮してパラメータを補正するので、パラメータの精度を効果的に高めることができる。
【0018】
1つの態様として、前記演算条件取得部は、前記対象プロセス機器について実行された作業に関する項目である作業関連項目も取得するものであり、前記対象故障曲線演算部は、前記作業関連項目に基づき、前記故障曲線演算部で演算された前記対象故障曲線を補正する故障曲線補正部を備え、前記故障発生確率演算部は、前記故障曲線補正部により補正された前記対象故障曲線に基づき、前記対象プロセス機器の故障発生確率を演算すると好適である。
【0019】
プロセス機器について実行された作業は、プロセス機器の故障に対する耐久性に大きく影響を与えるため、この構成によれば、これを考慮して故障曲線を補正するので、故障曲線の精度を効果的に高めることができる。
【0020】
プロセス機器に対して設けられた付加的構成やプロセス機器の設置状態の適否や性能、プロセス機器について実行された作業は、プロセス機器の故障に対する耐久性に大きく影響を与えるため、これらの構成によれば、これらを考慮してパラメータを補正するので、パラメータの精度を効果的に高めることができる。
【0021】
1つの態様として、前記対象故障曲線演算部は、前記対象プロセス機器について、故障の種類ごとに対象故障曲線を演算し、前記故障発生確率演算部は、演算された各対象故障曲線に基づき、故障ごとに前記対象プロセス機器の故障発生確率を演算すると好適である。
【0022】
この構成によれば、故障の種類ごとに故障発生確率を演算するので、リスク評価をより的確に行うことができる。
【0023】
本開示に係るリスク評価方法は、
蒸気プラントにおける配管系に設けられるプロセス機器の故障発生確率の演算をコンピュータに実行させるリスク評価方法であって、
対象とする対象プロセス機器についての、時間経過に対する故障発生確率の変化を示す対象故障曲線を演算する対象故障曲線演算工程と、
演算された前記対象故障曲線に基づき、前記対象プロセス機器の故障発生確率を演算する故障発生確率演算工程と、を有し、
前記対象故障曲線演算工程は、
演算用データとして、多数のプロセス機器に関し、当該プロセス機器が設けられる配管系に関連する項目である配管系関連項目と、故障するまでの年数である故障年数と、をプロセス機器ごとに記憶してある記憶部の前記演算用データに基づき、前記対象故障曲線の演算のための、前記配管系関連項目に関連する1又は複数のパラメータを演算して保管するパラメータ保管工程と、
前記対象プロセス機器についての前記配管系関連項目
および前記対象プロセス機器自体に関連する項目である機器関連項目を取得する演算条件取得工程と、
取得された前記対象プロセス機器についての前記配管系関連項目と前記パラメータ保管工程で保管されたパラメータとに基づき、前記対象故障曲線を導出する演算用パラメータを取得するパラメータ取得工程と、
前記機器関連項目と対応する補正方法を保管する補正方法保管工程と、
取得された前記機器関連項目に対応する前記補正方法に基づき、前記パラメータ取得工程において取得した前記演算用パラメータを補正するパラメータ補正工程と、
前記パラメータ補正工程による補正後の前記演算用パラメータに基づき、前記対象故障曲線を演算する故障曲線演算工程と、
を備える。
【0024】
本開示に係るリスク評価プログラムは、
蒸気プラントにおける配管系に設けられるプロセス機器の故障発生確率の演算をコンピュータに実行させるリスク評価プログラムであって、
前記コンピュータに、
対象とする対象プロセス機器についての、時間経過に対する故障発生確率の変化を示す対象故障曲線を演算する対象故障曲線演算機能と、
演算された前記対象故障曲線に基づき、前記対象プロセス機器の故障発生確率を演算する故障発生確率演算機能と、を実現させ、
前記対象故障曲線演算機能では、
演算用データとして、多数のプロセス機器に関し、当該プロセス機器が設けられる配管系に関連する項目である配管系関連項目と、故障するまでの年数である故障年数と、をプロセス機器ごとに記憶してある記憶部の前記演算用データに基づき、前記対象故障曲線の演算のための、前記配管系関連項目に関連する1又は複数のパラメータを演算して保管するパラメータ保管機能と、
前記対象プロセス機器についての前記配管系関連項目
および前記対象プロセス機器自体に関連する項目である機器関連項目を取得する演算条件取得機能と、
取得された前記対象プロセス機器についての前記配管系関連項目と前記パラメータ保管
機能によって保管されたパラメータとに基づき、前記対象故障曲線を導出する演算用パラメータを取得するパラメータ取得機能と、
前記機器関連項目と対応する補正方法を保管する補正方法保管機能と、
取得された前記機器関連項目に対応する前記補正方法に基づき、前記パラメータ取得機能によって取得した前記演算用パラメータを補正するパラメータ補正機能と、
前記パラメータ補正機能による補正後の前記演算用パラメータに基づき、前記対象故障曲線を演算する故障曲線演算機能と、
を
前記コンピュータに実現させる。
【0025】
これらの構成によれば、上記したリスク評価装置と同様の作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示に係るリスク評価装置、リスク評価方法、及び、リスク評価プログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、石油化学プラントや火力発電プラント等の蒸気を利用する蒸気プラント2を監視するプラント監視システムに、本実施形態に係るリスク評価装置を組み込んだ例について説明する。まず、
図1に示すように、本実施形態に係るプラント監視システムでは、監視サーバ3が監視対象とする種々の蒸気プラント2からのデータをネットワーク5を介して収集し、収集したデータを外部のデータベースサーバ4に蓄積的に記憶する。そして、監視サーバ3は、定期的に、又は、ユーザや管理者からの指示に応じて、収集したデータやデータベースサーバ4に記憶したデータに基づき分析や判定を行うようになっており、その結果をPCやスマートフォン等のユーザ端末1に送信したり、ユーザ端末1を介してユーザが監視サーバ3にアクセスすることで、ユーザに蒸気プラント2の状態が示されるようになっている。また、分析や判定の結果はデータベースサーバ4に記憶させて、さらなる分析や判定に供されるようになっている。なお、本実施形態において「配管系」とは、例えば、蒸気トラップ、蒸気配管及び各種バルブ等から構成される蒸気システム全体を含む概念である。また、このような蒸気システム全体を重要なアセットの一つとして捉えると、本実施形態にかかるリスク評価装置、リスク評価方法、及び、リスク評価プログラムは、アセットマネジメント手法の一つとして適用可能である。
【0028】
監視サーバ3に収集されるデータの一例について説明すると、監視装置21が、蒸気プラント2の各構成要素群22から、それぞれの構成要素群22を構成する各構成要素に備え付けたセンサや可搬式の検査器による検査により得たセンサデータ(圧力、電流値、振動、超音波、温度、機器の回転数等)や各構成要素に生じたイベント(運転開始や停止、故障の発生及びその種類、修理や機器の交換等のメンテナンス等)に関するイベントデータ等を収集し、収集したデータを定期的に又は連続的に監視サーバ3側に送信するようになっている。蒸気プラント2の構成要素としては、タービン、コンプレッサ、熱交換器等の蒸気を利用する蒸気利用機器、蒸気利用機器に蒸気を輸送する輸送管や蒸気利用機器から生じたドレンを排出するドレン管等の配管系、配管系に設けられる蒸気トラップ、制御バルブ、ポンプ、フィルタ、セパレータ等のプロセス機器等が挙げられる。そして、これらに関するデータ(上記したセンサデータやイベントデータ等)が監視装置21に収集されて、各構成要素に付された識別情報や時刻とともに各データが監視サーバ3に定期的に送信される。
【0029】
つまり、監視サーバ3には、監視対象とする蒸気プラント2ごとに、蒸気プラント2の各構成要素について、センサ値の推移や、運転中であるかどうか、いつ故障に至ったか、どの種の故障が生じたか、いつメンテナンスが行われたかのデータが収集される。そして、収集したこれらのデータがデータベースサーバ4に蓄積的に記憶されることで、蒸気プラント2における歴代の各構成要素について、センサ値の推移や、生じた故障の種類、故障するまでの年数、メンテナンスの有無や時期、回数といった情報がデータベースサーバ4に格納されることになる。
【0030】
より詳しくは、データベースサーバ4は、各構成要素の識別情報と対応付けてこれらのデータ、各構成要素が設けられる配管系に関連する情報(後述する配管系関連項目に相当)、各構成要素の型式(蒸気トラップでいえば、フロートタイプや、メカニカルタイプ、サーモスタティックタイプ、サーモダイナミックタイプなど)や性能、設置年数、構成要素に対して設けられている付加的構成など構成要素自体に関連する情報(後述する機器関連項目に相当)、プロセス機器について実行された作業に関連する情報(後述する作業関連項目に相当)を蓄積的に記憶する。また、
図9に示すような同じ配管222A(又は222B)に設けられる蒸気トラップ223A〜223C(又は223D〜223F)どうしなど配管系と当該配管系に設けられる複数のプロセス機器とからなるプロセス機器群(
図9の224Aや224B)や、蒸気利用機器221及びこれに接続される配管222A,222Bに設けられる蒸気トラップ223A〜223Fとからなる構成要素群22など蒸気利用機器と蒸気利用機器に関連する複数のプロセス機器群からなる蒸気利用機器群など、互いに関連する機器群についてはひとまとめにして取り扱う必要がある。そのため、データベースサーバ4では、個々の構成要素のみならず、プロセス機器群や蒸気利用機器群等の機器群ごとに識別情報を付与し、識別情報とともにプロセス機器群や蒸気利用機器群を構成する各構成要素の識別情報、対象とする機器群を構成する各構成要素の互いの配置関係なども記憶している。そして、このように収集されるデータの量は膨大であるので、本実施形態では、このようなデータを記憶するのに監視サーバ3の外部のデータベースサーバ4を用いている。なお、データベースサーバ4の形態は特に限定されず、監視サーバ3と有線又は無線を介して接続されるサーバ装置を用いたり、クラウド環境上のクラウドサーバを用いてもよい。
【0031】
そして、本実施形態では、監視サーバ3が、蒸気プラント2のみならず、データベースサーバ4に蓄積された歴代の各構成要素のデータを利用して、対象の蒸気プラント2について内在するリスクを評価できるようになっている。具体的には、リスク評価として、評価対象とする機器群に関する情報をユーザから受け付け、取得した機器群に関する故障発生確率と故障が生じたときの影響度を演算して、RBIの評価手法として用いられる故障発生確率及び故障が生じたときの影響度を2軸に設定したリスクマトリクス上に演算した故障発生確率及び影響度をプロットしてユーザに提供するようになっている。そして、ユーザはかかるリスクマトリクスから評価対象とする構成要素に内在するリスクを知ることができ、蒸気プラント2に対するリスク評価を行う。以下、監視サーバ3の備える構成のうち、かかるリスク評価を行うための構成について説明する。
【0032】
まず、監視サーバ3は、一般的なサーバ装置であり、ネットワーク5を介した通信を行うための通信インターフェースや、サーバ装置との間で直接的なデータの入出力を行うための入出力装置、サーバ装置の各部の制御を行うCPU、種々のデータやプログラムを保存する大容量の記憶装置であるHDD、実行するプログラム等を一時保存するメモリ等の一般的なハードウェア構成を備えている。そして、本実施形態では、HDDに、後述する処理を行うためのリスク評価プログラムが格納されており、メモリに一時保存されたリスク評価プログラムがCPUに実行されることにより、監視サーバ3の各部が、
図2〜6に示す機能部を備えたリスク評価装置として機能するようになっている。
【0033】
具体的には、本実施形態では、リスク評価プログラムが実行されることにより、監視サーバ3が、ユーザからの要求を受け付けるとともに評価結果をユーザに送信する入出力処理部31、対象とする機器群の故障発生確率を演算する故障発生確率演算処理部32、対象とする機器群の影響度を演算する影響度演算処理部37、及び、演算された故障発生確率及び影響度に基づきユーザに提供する画像データを生成する表示画像演算処理部38の機能部を備えたリスク評価装置として構成される(
図2)。以下、各機能部について説明する。
【0034】
まず、入出力処理部31はリスク評価装置におけるインターフェースとして機能する。具体的には、ユーザからの要求を受け付け、要求に応じた処理を行わせるための指示とともに、受け付けた要求に含まれる、各機能部での処理に必要な情報を各機能部に提供し、また、表示画像演算処理部38で生成された画像データをユーザに対して出力するようになっている。ユーザからの要求に含まれる情報としては、評価対象とする機器群の識別情報や対象とする機器群についての付加的情報、故障発生確率の演算を求める時点(現時点のみか、将来にわたる数年分かなど)、いかなるリスクマトリクスを表示させるかに関する情報が挙げられる。
【0035】
故障発生確率演算処理部32は、
図2に示すように、対象の機器群(蒸気利用機器群等)に含まれる各プロセス機器の故障発生確率を演算するプロセス機器演算部33と、プロセス機器演算部33で演算された各プロセス機器の故障発生確率に基づき、対象の機器群に含まれる各プロセス機器群の故障発生確率を演算するプロセス機器群演算部34と、対象の機器群に含まれる蒸気利用機器の故障発生確率を演算する蒸気利用機器演算部35と、プロセス機器群演算部34で演算された各プロセス機器群の故障発生確率や蒸気利用機器演算部35で演算された故障発生確率に基づき、対象の機器群の故障発生確率を演算する演算対象機器群演算部36と、を備えている。
【0036】
プロセス機器演算部33は、
図3に示すように、対象とする対象プロセス機器についての、時間経過に対する故障発生確率の変化を示す対象故障曲線を演算する対象故障曲線演算部331と、演算された対象故障曲線に基づき、対象プロセス機器の故障発生確率を演算する故障発生確率演算部339と、を備えており、プロセス機器ごとに、予め定めたモデルと、そのモデルにおけるパラメータであって個々のプロセス機器に応じて求めたパラメータと、に基づき故障曲線を演算して、かかる故障曲線に基づき故障発生確率を演算するようになっている。
【0037】
対象故障曲線演算部331は、対象故障曲線を演算するため、パラメータ保管部332と、演算条件取得部333と、パラメータ取得部334と、補正方法保管部335と、パラメータ補正部336と、故障曲線演算部337と、故障曲線補正部338と、を備えており、演算対象とする個々のプロセス機器に応じたパラメータを求めて、これに基づき対象の故障曲線を演算するようになっている。
【0038】
パラメータ保管部332は、データベースサーバ4の演算用データに基づき、対象故障曲線の演算のためのパラメータを演算して保管するものである。より詳しくは、プロセス機器の各型式について、当該プロセス機器が設けられる配管系に関連する項目である配管系関連項目に関連する1又は複数のパラメータを演算して保管するものである。そして、そのために、パラメータ保管部332は、パラメータを演算するパラメータ演算部332aと演算したパラメータを格納するパラメータ格納部332bとを備えている。
【0039】
パラメータ演算部332aは、パラメータの演算のため、まず、データベースサーバ4からデータを取得する。上記したように、データベースサーバ4は、蒸気プラント2ごとの各構成要素の情報を収集して保管することにより、多数のプロセス機器に関する様々な情報を記憶したものとなっており、パラメータ演算部332aでの演算に用いる演算用データとして、多数のプロセス機器に関し、型式と、当該プロセス機器が設けられる配管系に関連する項目である配管系関連項目と、故障するまでの年数である故障年数と、をプロセス機器ごとに記憶したものとなっている。本実施形態では、設置関連項目として、当該配管系の利用形態に関する項目を用いており、具体的には、利用形態として、配管系の用途(蒸気使用機器に蒸気を輸送するものか、蒸気使用機器で発生したドレンを排出するものか、トレースで用いられるのか等)、流れる蒸気の圧力の大きさ、径のサイズ、蒸気の流れ方(蒸気が断続的に流れるかどうか、流量の時間変化はあるか等)などの項目を用いている。また、故障年数については故障の種類ごとに分類されており、パラメータ演算部332aは、故障の種類ごとに、型式、配管系関連項目、及び、故障年数を取得するようになっている。
【0040】
そして、パラメータ演算部332aはデータベースサーバ4から上記の演算用データを取得し、型式ごとに、各故障の種類について、各配管系関連項目が故障年数に与える影響の程度を評価して、配管系関連項目ごとに影響の程度を数値化してパラメータを求める。例えば、配管系関連項目のうち、配管系の用途や蒸気の流れ方については、用途や流れ方ごとに対応するパラメータを求め、流れる蒸気の圧力の大きさや径のサイズについては、その大きさやサイズについて大中小等の複数段のレベルを設定し、レベルごとに対応するパラメータを求める。なお、パラメータの演算方法は、演算用データに基づき、種々の統計的手法を用いて求めることができ、例えば、統計分類アルゴリズム、回帰分析、生存時間解析等が挙げられる。そして、本実施形態では、パラメータ演算部332aは、パラメータを算出するのに、一例として生存時間解析を用い、演算用データにおける各プロセス機器の配管系関連項目と故障年数とに基づいて、各配管系関連項目を共変量として生存時間解析を行って、故障年数に与える配管系関連項目の影響を評価し、パラメータを演算する。生存時間解析に用いるモデルとしては、例えば、比例ハザードモデルやワイブル分布モデル等、種々のモデルが挙げられる。
【0041】
パラメータ格納部332bには、パラメータ演算部332aで求めた各配管系関連項目に応じたパラメータが、故障曲線の演算のためのパラメータとして型式・故障の種類ごとに格納される。つまり、パラメータ格納部332bには、各型式について、故障の種類ごとに、各配管系関連項目に対応する1又は複数のパラメータが格納された状態となっている。
【0042】
演算条件取得部333は、対象プロセス機器についての型式、配管系関連項目、後述する機器関連項目、及び、後述する作業関連項目を取得するものである。本実施形態では、演算条件取得部333は、入出力処理部31から対象とする機器群についての識別情報を取得し、データベースサーバ4から、この識別情報に対応する機器群に含まれる各プロセス機器の型式や配管系関連項目、後述する機器関連項目及び作業関連項目を取得するようになっている。また、演算条件取得部333は、データベースサーバ4から、各プロセス機器の設置年数を取得するとともに、入出力処理部31から対象故障発生確率を演算させる時点に関する演算時点情報(現時点の故障発生確率を演算するか、現時点から将来にわたる複数年分の故障発生確率を演算するかなど)を取得するようになっている。その他、演算条件取得部333は、入出力処理部31に対して故障発生確率を求める故障の種類が指示されている場合は、演算すべき故障の種類も取得する。
【0043】
パラメータ取得部334は、取得された対象プロセス機器についての型式及び配管系関連項目とパラメータ保管部332に保管されたパラメータとに基づき、対象故障曲線を導出する演算用パラメータを取得する。これにより、対象とするプロセス機器に応じたパラメータが得られる。なお、パラメータ取得部334は、演算条件取得部333が演算すべき故障の種類も取得しているときは、取得した故障の種類についての演算用パラメータを取得し、演算条件取得部333が故障の種類を取得していないときは、各故障の種類の全てについて、それぞれ演算用パラメータを取得する。また、パラメータ取得部334は、パラメータ保管部332から配管系関連項目と対応するパラメータを演算用パラメータとして取得するのみでもよいし、取得したパラメータから演算用パラメータを算出するようにしてもよい。
【0044】
補正方法保管部335は、プロセス機器自体に関連する機器関連項目及びプロセス機器について実行された作業に関する作業関連項目と対応する補正方法を保管するものである。つまり、パラメータ取得部334で取得したパラメータは配管系関連項目に基づくもので、個々のプロセス機器の性能(容量など)や、個々のプロセス機器に対して設けられている付加的構成(センサ、保護カバー、用いられている素材など)など、個々のプロセス機器の実情を反映したものとはなっていない。そこで、パラメータ保管部332に保管されたパラメータやこのパラメータに基づき演算された故障曲線を、対象とするプロセス機器の個別的事情である機器関連項目や作業関連項目に応じて補正するために、補正方法保管部335により、各機器関連項目及び各作業関連項目と対応する補正方法を保管する。
【0045】
機器関連項目としては、対象プロセス機器に対して設けられた付加的構成に関する項目(センサ、保護カバー、自動的に補修作業の機器の有無、用いられている素材など)、プロセス機器の設置状態・性能に関する項目(周囲の環境、ウォーターハンマーが起きやすい場所であるか、誤った取り付け方がなされていないか、容量等)が挙げられ、作業関連項目としては、補修作業が行われたか否か、いつ補修作業が行われたか、補修作業の種類、行った補修作業の効果の程度などが挙げられる。そして、上記のように、演算条件取得部333は、対象とする各プロセス機器についての各機器関連項目及び各作業関連項目を取得するようになっている。また、補正方法は特に限定されないが、例えば、各機器関連項目に対応する値で演算用パラメータを乗算、除算など適当な演算方法で補正したり、作業が行われた時点を起点として予め定めた演算手順にしたがって故障曲線を補正することが挙げられる。
【0046】
パラメータ補正部336は、取得された機器関連項目に対応する補正方法を補正方法保管部335から取得し、取得した補正方法に基づき、パラメータ取得部334が取得した演算用パラメータを補正する。つまり、プロセス機器に関するいわば客観的な配管系関連項目に基づき求めた演算用パラメータを、さらに、いわば主観的なプロセス機器自体に関連する機器関連項目で補正するので、個々のプロセス機器の実情に即した演算用パラメータを得ることができる。なお、
図8に、パラメータ補正部336により演算用パラメータが補正されなかった場合とされた場合との一例を示す。
【0047】
故障曲線演算部337は、予め定めた故障曲線算出用のモデルと補正後の演算用パラメータとに基づき、例えば
図7に示すような対象故障曲線を演算する。なお、用いるモデルとしては、正規分布やポアソン分布、ワイブル分布等に基づく適当な累積確率分布モデルを用いることができる。なお、故障曲線演算部337は、故障の種類ごとに故障発生確率を演算する場合、対象プロセス機器について、故障の種類ごとに対象故障曲線を演算するようになっている。
【0048】
故障曲線補正部338は、プロセス機器について実行された作業に関する項目である作業関連項目に基づき、故障曲線演算部337で演算された対象故障曲線を補正するものである。具体的には、補修作業が行われていた場合、取得された作業関連項目に対応する補正方法を補正方法保管部335から取得し、取得した補正方法に基づき、故障曲線演算部337で演算された対象故障曲線を補正する。
【0049】
故障発生確率演算部339は、故障曲線演算部337で演算された対象故障曲線又は故障曲線補正部338で補正された対象故障曲線と、演算条件取得部333の取得した演算時点情報と、に基づき、各プロセス機器について故障発生確率を演算する。例えば、故障発生確率演算部339は、現時点の故障発生確率を演算するとき、対象とするプロセス機器の設置年数に対応する故障発生確率を対象故障曲線から求める(
図7参照)。また、故障発生確率演算部339は、現時点から将来にわたる複数年分の故障発生確率を演算するときは、対象とするプロセス機器の設置年数を基準として、その1年後、2年後などの各年に対応する故障発生確率を対象故障曲線から求める。なお、故障発生確率演算部339は、故障の種類ごとに故障発生確率を演算する場合、対象プロセス機器について、演算された各対象故障曲線に基づき、故障の種類ごとに故障発生確率を演算するようになっている。
【0050】
以上のように、プロセス機器演算部33では、
(1)データベースサーバ4の演算用データに基づき、対象故障曲線の演算のための、配管系関連項目に関連する1又は複数のパラメータを演算して保管するパラメータ保管工程と、
(2)対象プロセス機器についての型式、配管系関連項目、機器関連項目、作業関連項目を取得する演算条件取得工程と、
(3)取得された対象プロセス機器についての配管系関連項目とパラメータ保管工程で保管されたパラメータとに基づき、対象故障曲線を導出する演算用パラメータを取得するパラメータ取得工程と、
(4)取得された機器関連項目に対応する補正方法に基づき、演算用パラメータを補正するパラメータ補正工程と、
(5)演算用パラメータに基づき、対象故障曲線を演算する故障曲線演算工程と、
(6)取得された作業関連項目に基づき、対象故障曲線を演算する故障曲線補正工程と、
(7)演算された対象故障曲線に基づき、対象プロセス機器の故障発生確率を演算する故障発生確率演算工程と、
が行われて対象とする各プロセス機器に関する故障発生確率が演算される。
【0051】
プロセス機器群演算部34は、一の配管系と、当該配管系に設けられる複数のプロセス機器とからなるプロセス機器群の故障発生確率を演算するもので、本実施形態では、プロセス機器演算部33で演算された各プロセス機器の故障発生確率に基づき、プロセス機器群の故障発生確率を演算するようになっている。そして、そのために、プロセス機器群演算部34は、演算方法記憶部341と、個別確率取得部342と、配置関係取得部343と、故障発生確率演算部344とを備えている(
図4)。
【0052】
演算方法記憶部341は、プロセス機器群を構成する各プロセス機器間の配置関係に応じた故障発生確率の演算方法を記憶するものである。本実施形態では、演算方法記憶部341は、演算方法として、各プロセス機器が並列の関係にあるときの並列演算方法と各プロセス機器が直列の関係にあるときの直列演算方法とを記憶している。例えば、本実施形態では、並列演算方法として、並列の関係にある各プロセス機器の故障発生確率を掛け合わせてプロセス機器群の故障発生確率を演算し、直列演算方法として、直列の関係にある各プロセス機器の故障発生確率のうちで最大のものをプロセス機器群の故障発生確率として求めるようになっている。
【0053】
個別確率取得部342は、対象とする対象プロセス機器群におけるプロセス機器(対象プロセス機器)のそれぞれについての故障発生確率(個別確率)を取得するものであり、本実施形態では、プロセス機器演算部33で演算された各プロセス機器の故障発生確率を個別確率として取得する。
【0054】
配置関係取得部343は、対象プロセス機器群における各対象プロセス機器の互いの配置関係である対象配置関係を取得するものである。本実施形態では、配置関係取得部343は、入出力処理部31から対象とする機器群についての識別情報を取得し、データベースサーバ4から、この識別情報に対応する機器群に含まれる各プロセス機器群の識別情報、各プロセス機器群を構成する各プロセス機器の識別情報、各プロセス機器群における各プロセス機器の配置関係を取得するようになっている。つまり、配置関係取得部343は、個別確率取得部342が故障発生確率を取得したプロセス機器のうち、どのプロセス機器が同じプロセス機器群に属するのか、同じプロセス機器群に属するプロセス機器が互いにどのような配置関係にあるのかを取得するようになっている。
【0055】
故障発生確率演算部344は、配置関係取得部343で取得された対象配置関係に対応する演算方法に基づき、取得した各個別確率を用いて対象プロセス機器群の故障発生確率を演算するものである。例えば、対象プロセス機器群に属するプロセス機器が並列の関係にある場合には、個別確率を掛け合わせたものを対象プロセス機器群の故障発生確率として演算し、対象プロセス機器群に属するプロセス機器が直列の関係にある場合には、個別確率のうち最大のものを対象プロセス機器群の故障発生確率として演算する。例えば、個別確率がP
1,P
2,P
3であるとき、並列演算方法によれば、故障発生確率P=(P
1×P
2×P
3)となり、直列演算方法によれば、故障発生確率P=max(P
1,P
2,P
3)となる。
【0056】
なお、
図9に示すように、プロセス機器群によっては、並列の配置関係にある一群のプロセス機器(以下、並列機器群と称する。例えば
図9に示す蒸気トラップ223Dと蒸気トラップ223Eとからなる群)が存在し、この並列機器群に含まれない他の対象プロセス機器(例えば、
図9に示す蒸気トラップ223F)があるときや、並列機器群が複数あるときには、上記した並列演算方法と直列演算方法との一方のみでは故障発生確率を演算できない。そこで、本実施形態では、このような複雑関係(並列演算方法と直列演算方法を組み合わせて故障発生確率を演算する必要がある関係)があるとき、配置関係取得部343は、対象配置関係として、まず、1又は複数の並列機器群を特定し、並列機器群を一単位として、並列機器群のそれぞれ又は並列機器群と他の対象プロセス機器とを直列機器群として特定する。そして、故障発生確率演算部344は、複雑関係が存在するとき、並列演算方法に基づき、各並列機器群について、並列機器群を構成する対象プロセス機器の各個別確率を用いて、並列機器群についての故障発生確率を演算し、直列演算方法に基づき、並列機器群のそれぞれの故障発生確率又は1若しくは複数の並列機器群の故障発生確率と他の対象プロセス機器の個別確率を用いて、直列機器群の故障確率を演算することで、対象故障発生確率を演算するようになっている。
【0057】
例えば、
図9におけるプロセス機器群224Bに対しては、配置関係取得部343は、対象配置関係として、まず、蒸気トラップ223D及び蒸気トラップ223Eを並列機器群として特定し、この並列機器群と蒸気トラップ223Fとを直列機器群として特定する。そして、蒸気トラップ223D〜223Fの故障発生確率をそれぞれP
D,P
E,P
Fとすると、故障発生確率演算部344は、蒸気トラップ223D及び蒸気トラップ223Eからなる並列機器群について、この並列機器群の故障発生確率P
DEをP
DE=(P
D×P
E)により求める。さらに、故障発生確率演算部344は、蒸気トラップ223D及び蒸気トラップ223Eの並列機器群と蒸気トラップFとからなる直列機器群の故障発生確率P
DEFをP
DEF=max((P
D×P
E),P
F)により求め、これをプロセス機器群224Bの故障発生確率として演算する。なお、並列機器群が複数あるときには、故障発生確率演算部344は、各並列機器群についての故障発生確率を求め、求めた各並列機器群の故障発生確率と並列機器群に属さない対象プロセス機器があるときはその個別確率とに基づき直列演算方法を適用して故障発生確率を得る。
【0058】
また、
図9のプロセス機器群224Aのように、並列機器群(蒸気トラップ223A〜223C)が存在し、その並列機器群の中に互いに直列の配置関係にある一群の対象プロセス機器(蒸気トラップ223B,223C。以下、サブ直列機器群と称する)が1又は複数存在するときにも、並列演算方法と直列演算方法との一方のみでは故障発生確率を演算できない。そこで、本実施形態では、対象配置関係取得部343は、対象とするプロセス機器群に並列機器群及びサブ直列機器群が存在するとき、対象配置関係として、並列機器群とサブ直列機器群とを特定する。そして、故障発生確率演算部344は、並列機器群及びサブ直列機器群が存在するとき、まず直列演算方法に基づき、サブ直列機器群を構成する対象プロセス機器の各個別確率を用いて、1又は複数のサブ直列機器群についての故障発生確率を演算する。そして、並列演算方法に基づき、1又は複数のサブ直列機器群についての故障発生確率や、サブ直列機器群に属さない対象プロセス機器があるときはその個別確率を用いて、並列機器群についての故障発生確率を演算する。
【0059】
例えば、
図9のプロセス機器群224Aに対しては、対象配置関係取得部343は、対象配置関係として、蒸気トラップ223A〜223Cを並列機器群と特定し、さらに蒸気トラップ223B,223Cをサブ直列機器群と特定する。そして、蒸気トラップ223A〜223Cの故障発生確率をそれぞれP
A,P
B,P
Cとすると、故障発生確率演算部344は、蒸気トラップ223B及び蒸気トラップ223Cからなるサブ直列機器群について、サブ直列機器群の故障発生確率P
BCをP
BC=max(P
B,P
C)により求める。さらに、故障発生確率演算部344は、蒸気トラップ223A〜223Cからなる並列機器群の故障発生確率P
ABCをP
ABC=(P
A×max(P
B,P
C))により求め、これをプロセス機器群224Aの故障発生確率として演算する。なお、並列機器群における並列関係にある配管のそれぞれにサブ直列機器群が存在するときは、故障発生確率演算部344は、各サブ直列機器群の故障発生確率を求めたのち、サブ直列機器群を一単位として並列演算方法に基づき並列機器群の故障発生確率を求める。
【0060】
また、並列機器群が存在しても、並列機器群を構成するプロセス機器の一方の性能(容量等)が、適用される蒸気利用機器に対する関係で要求される性能を満たしていない場合(例えば、蒸気利用機器から排出されるドレンの量に比べて蒸気トラップの容量が不十分である場合など)には、現実には並列の関係にあっても、実質的には並列なものとして機能しないことになる。そこで、対象配置関係取得部343は、並列機器群が存在するとき、並列機器群を構成する対象プロセス機器の性能が要求される性能を満たしているかを判定し、少なくとも並列の関係にある一方側の全ての対象プロセス機器の性能が要求される性能を満たしていないときは、対象配置関係として、並列機器群を構成する対象プロセス機器が直列の関係にあると特定する。
【0061】
例えば、
図9におけるプロセス機器群224Bにおいて、蒸気トラップ223D及び蒸気トラップ223Eからなる並列機器群について、蒸気トラップ223D及び蒸気トラップ223Eの一方が蒸気利用機器221に対する関係で要求される性能を満たしていない場合、対象配置関係取得部343は、蒸気トラップ223D及び蒸気トラップ223Eからなる並列機器群を直列の関係にあると特定する。この場合、プロセス機器群224Bにおける蒸気トラップ223D〜223Fが全て直列の関係にあると扱われ、故障発生確率演算部344は、プロセス機器群224Bの故障発生確率P
DEF=max(P
D,P
E,P
F)により求める。また、
図9におけるプロセス機器群224Aにおいて、蒸気トラップ223A〜223Cのうち、蒸気トラップ223B又は蒸気トラップ223Cの性能のみが要求される性能を満たしていない場合には、対象配置関係取得部343は、蒸気トラップ223A〜223Cが並列の関係にあると特定するが、蒸気トラップ223B及び蒸気トラップ223Cの双方の性能又は蒸気トラップ223Aの性能が要求される性能を満たしていない場合、プロセス機器群224Aにおける蒸気トラップ223A〜223Cが全て直列の関係にあると扱われ、故障発生確率演算部344は、プロセス機器群224Aの故障発生確率P
ABC=max(P
A,P
B,P
C)により求める。
【0062】
以上のように、プロセス機器群演算部34では、
(1)プロセス機器群を構成する各プロセス機器間の配置関係に応じた故障発生確率の演算方法を記憶する演算方法記憶工程と、
(2)対象とする対象プロセス機器群におけるプロセス機器である対象プロセス機器のそれぞれについて故障発生確率である個別確率を取得する個別確率取得工程と、
(3)対象プロセス機器群における各対象プロセス機器の互いの配置関係である対象配置関係を取得する配置関係取得工程と、
(4)対象配置関係に対応する演算方法に基づき、取得した各個別確率を用いて対象プロセス機器群の故障発生確率である対象故障発生確率を演算する故障発生確率演算工程と、
が行われて、対象とする各プロセス機器群に関する故障発生確率が演算される。
【0063】
蒸気利用機器演算部35は、対象とする機器群に含まれる蒸気利用機器の故障発生確率を演算するもので、本実施形態では、そのために、対象とする対象蒸気利用機器についての、時間経過に対する故障発生確率の変化を示す対象故障曲線を演算する対象故障曲線演算部351と、算出された対象故障曲線に基づき、対象蒸気利用機器の故障発生確率を演算する故障発生確率演算部357と、を備えている(
図5)。
【0064】
対象故障曲線演算部351は、対象故障曲線を演算するため、演算条件取得部352と、パラメータ取得部353と、補正方法保管部354と、パラメータ補正部355と、故障曲線演算部356と、を備え、演算対象とする蒸気利用機器に応じたパラメータを求めて、これに基づき対象の故障曲線を演算するようになっている。
【0065】
演算条件取得部352は、対象とする蒸気利用機器の種類、蒸気利用機器の使用状態に関連する補正項目、蒸気利用機器の設置年数、故障発生確率を演算させる時点に関する演算時点情報(現時点の故障発生確率を演算するか、現時点から将来にわたる複数年分の故障発生確率を演算するかなど)を取得するものである。本実施形態では、演算条件取得部352は、入出力処理部31から対象とする機器群についての識別情報及び演算時点情報を取得し、データベースサーバ4から、この識別情報に対応する機器群に含まれる蒸気利用機器の識別情報と、この識別情報に対応する蒸気利用機器の種類、補正項目、設置年数を取得するようになっている。その他、演算条件取得部352は、入出力処理部31に対して故障発生確率を求める故障の種類が指示されている場合は、演算すべき故障の種類も取得する。
【0066】
パラメータ取得部353は、蒸気利用機器の種類ごとに対象故障曲線の演算のためのパラメータを記憶してあるデータベース6から、対象の蒸気利用機器に対応する演算用パラメータを取得するものである。例えば、データベース6としては、上記したパラメータ保管部332のようにデータベースサーバ4で収集したデータに基づき算出したパラメータを保管するものを用いてもよいし、蒸気利用機器に関する故障曲線を演算するためのパラメータが保管されたデータベースとして一般に公開されているものを用いてもよい。本実施形態では、パラメータ取得部353は、演算条件取得部352で取得された蒸気利用機器の種類に対応する演算用パラメータをデータベース6から取得するようになっている。また、パラメータ取得部353は、演算条件取得部352が演算すべき故障の種類も取得しているときは、取得した故障の種類についての演算用パラメータを取得し、演算条件取得部352が故障の種類を取得していないときは、各故障の種類の全てについて、それぞれ演算用パラメータを取得する。
【0067】
補正方法保管部354は、蒸気利用機器の種類ごとに、当該蒸気利用機器の各補正項目とこれに対応する補正方法とを保管するものである。本実施形態では、補正項目として、蒸気利用機器に対して設けられた付加的構成に関する項目(蒸気セパレータ等の付加的構成の有無や関連付けられたプロセス機器の数など)、蒸気利用機器の設置状態・使用状態・性能に関する項目(使用状態が性能を超えたものでないか、ウォーターハンマーが起きやすい場所であるか、使用頻度や時間)、蒸気利用機器について実行された作業に関する項目(補修作業が行われたか否か、いつ補修作業が行われたか、補修作業の種類、行った補修作業の効果の程度など)が採用されている。また、補正方法は特に限定されないが、例えば、各補正項目に対応する値で演算用パラメータを乗算、除算など適当な演算方法で補正することが挙げられる。
【0068】
パラメータ補正部355は、取得された補正項目に対応する補正方法に基づき、演算用パラメータを補正する。パラメータ補正部355によれば、蒸気利用機器に関する演算用パラメータを、さらに、蒸気利用機器の実情に応じた補正関連項目に基づき補正するので、個々のプロセス機器の実情に即した演算用パラメータを得ることができる。
【0069】
故障曲線演算部356は、予め定めた故障曲線算出用のモデルと補正後の演算用パラメータとに基づき、対象故障曲線を演算する。なお、用いるモデルとしては、特に限定されないが、故障曲線演算部337と同様のものを用いればよい。また、故障曲線演算部356は、故障の種類ごとに故障発生確率を演算する場合、蒸気利用機器について、故障の種類ごとに対象故障曲線を演算するようになっている。なお、故障曲線補正部338のように、蒸気利用機器について実行された作業に関する項目に基づき、演算された対象故障曲線を補正するようにしてもよい。
【0070】
故障発生確率演算部357は、演算した対象故障曲線と、演算条件取得部352の取得した演算時点情報と、に基づき、蒸気利用機器について故障発生確率を演算する。故障発生確率演算部357は、故障発生確率演算部339と同様にして故障発生確率を演算するので説明は省略する。
【0071】
以上のように、蒸気利用機器演算部35では、
(1)対象蒸気利用機器についての型式や補正項目等を取得する演算条件取得工程と、
(2)データベース6から、対象蒸気利用機器に対応する演算用パラメータを取得するパラメータ取得工程と、
(3)取得された補正項目に対応する補正方法に基づき、演算用パラメータを補正するパラメータ補正工程と、
(4)演算用パラメータに基づき、対象故障曲線を演算する故障曲線演算工程と、
(5)演算された対象故障曲線に基づき、対象プロセス機器の故障発生確率を演算する故障発生確率演算工程と、
が行われて対象とする蒸気利用機器に関する故障発生確率が演算される。
【0072】
演算対象機器群演算部(蒸気利用機器群演算部に相当)36は、蒸気を利用する蒸気利用機器と、蒸気利用機器に関連する複数のプロセス機器群と、を含む一群の蒸気利用機器群等の対象の機器群(演算対象機器群)の故障発生確率を演算するために、プロセス機器群の故障発生確率を取得するプロセス機器群取得部361と、蒸気利用機器の故障発生確率を取得する蒸気利用機器取得部362と、取得した各プロセス機器群の故障発生確率と蒸気利用機器の故障発生確率とを用いて演算対象機器群の故障発生確率を演算する故障発生確率演算部363と、を備えている(
図6)。
【0073】
プロセス機器群取得部361は、プロセス機器群演算部34の故障発生確率演算部344で演算された、対象とする機器群を構成する各プロセス機器群の故障発生確率を取得する。なお、プロセス機器群取得部361は、各プロセス機器群の故障発生確率とともに識別情報や演算した故障発生確率がどの時点のものかを取得するようになっており、複数の機器群の故障発生確率や複数の時点の故障発生確率を演算する場合に、各プロセス機器群がどの演算対象機器群に属するのかや各故障発生確率がいつの時点のものかを識別できるようになっている。
【0074】
蒸気利用機器取得部362は、蒸気利用機器演算部35の故障発生確率演算部357により演算された故障発生確率を取得する。そして、蒸気利用機器取得部362は、プロセス機器群取得部361と同様に、蒸気利用機器の故障発生確率とともに識別情報や演算した故障発生確率がどの時点のものかを取得するようになっている。
【0075】
故障発生確率演算部363は、取得した各プロセス機器群の故障発生確率と蒸気利用機器の故障発生確率とを用いて演算対象機器群の故障発生確率を演算する。なお、故障発生確率演算部363は、演算対象機器群が蒸気利用機器を含まないトレース用途に用いられる機器群である場合には、プロセス機器群の故障発生確率のみを用いて演算対象機器群の故障発生確率を演算する。演算方法としては、各プロセス機器群の故障発生確率と蒸気利用機器の故障発生確率とを単純に掛け合わせたりしてもよく、プロセス機器群演算部34と同様にしてそれぞれの配置関係を考慮した演算方法を定めて、配置関係に応じた演算方法で故障発生確率を求めるようにしてもよく、また、演算対象機器群における個別的事情に関する項目を用いて求めた故障発生確率を補正するようにしてもよい。また、複数の演算対象機器群の故障発生確率や複数の時点の故障発生確率を演算する場合には、同じ演算対象機器群に属するプロセス機器群及び蒸気利用機器を識別情報から特定して同じ演算対象機器群に属するプロセス機器群及び蒸気利用機器の故障発生確率から各演算対象機器群の故障発生確率を求めたり、同じ時点の故障発生確率どうしを組み合わせて故障発生確率を求めればよい。
【0076】
以上のように、故障発生確率演算処理部32では、各プロセス機器、各プロセス機器群、各蒸気利用機器、及び、各演算対象機器群についての故障発生確率が求められ、入出力処理部31からの指示に応じて、各プロセス機器、各プロセス機器群、各蒸気利用機器、及び、各演算対象機器群の故障発生確率が、識別情報や故障の種類、いつの時点の故障発生確率であるかの情報とともに、表示画像演算処理部38に送られる。
【0077】
影響度演算処理部37は、演算対象機器群又は各構成要素の影響度を演算するものであり、演算条件取得部371と、影響度保管部372と、影響度取得部373と、影響度演算部374と、を備えている。
【0078】
演算条件取得部371は、演算対象機器群を構成する各プロセス機器や蒸気利用機器の種類や型式を取得するものである。本実施形態では、演算条件取得部371は、入出力処理部31から対象とする機器群についての識別情報を取得し、データベースサーバ4から、この識別情報に対応する機器群に含まれる各プロセス機器や蒸気利用機器の識別情報と、この識別情報に対応する各プロセス機器や蒸気利用機器の種類や型式を取得するようになっている。その他、演算条件取得部371は、入出力処理部31に対して故障発生確率を求める故障の種類が指示されている場合は、演算すべき故障の種類も取得する。また、影響度取得部373が影響度を取得するための判定項目(故障による被害を軽減又は回避できる装置構成の有無など)を定めている場合は、演算条件取得部371は、その判定項目についても各プロセス機器や蒸気利用機器について取得する。
【0079】
影響度保管部372は、各プロセス機器や蒸気利用機器の種類や型式、故障の種類ごとに対応する影響度を保管するものである。また、各プロセス機器や蒸気利用機器の種類や型式ごとに、所定の判定項目に基づき影響度を分類して保管し、判定項目の有無に応じて異なる値の影響度を保管するようにしてもよい。
【0080】
影響度取得部373は、影響度保管部372から、演算条件取得部371が取得した各プロセス機器や蒸気利用機器の種類や型式に対応する影響度を取得するものである。また、演算条件取得部371が判定項目も併せて取得している場合には、影響度取得部373は、各プロセス機器や蒸気利用機器の種類や型式とその判定項目に対応する影響度を影響度保管部372から取得する。なお、影響度取得部373は、演算条件取得部371が演算すべき故障の種類も取得しているときは、取得した故障の種類についての影響度を取得し、演算条件取得部371が故障の種類を取得していないときは、各故障の種類の全てについて、それぞれ演算用パラメータを取得する。
【0081】
影響度演算部374は、影響度取得部373で取得された各プロセス機器や蒸気利用機器の影響度を、所定の演算方法で組み合わせて、プロセス機器群や演算対象機器群の影響度を演算する。演算方法としては、単に加算するのみでもよいし、予め定めたモデルに従って演算するようにしてもよい。
【0082】
以上のように、影響度演算処理部37では、各プロセス機器、各プロセス機器群、各蒸気利用機器、及び、各演算対象機器群についての影響度が求められ、入出力処理部31からの指示に応じて、各プロセス機器、各プロセス機器群、各蒸気利用機器、及び、各演算対象機器群の影響度が、識別情報や故障の種類とともに、表示画像演算処理部38に送られる。
【0083】
表示画像演算処理部38は、対象とする機器群や構成要素についての故障発生確率を取得する故障発生確率取得部381と、対象とする機器群や構成要素に対応する影響度を取得する影響度取得部382と、画像データの表示形態を切替可能なモード切替部383と、画像データを生成する画像データ生成部384と、を備えており、故障発生確率及び故障が生じたときの影響度を2軸に設定したリスクマトリクス上に、故障発生確率取得部381の取得した故障発生確率と影響度取得部382の取得した影響度との組(即ちリスク)をプロットしたプロット図を表示する画像データを生成するものである。
【0084】
まず、モード切替部383について説明すると、モード切替部383は、生成する画像データの表示形態が異なる複数のモードに画像データ生成部384を切り替えるものである。モード切替部383が設定可能なモードとしては、演算対象機器群単位でプロットしたプロット図を表示する表示データを生成する演算対象機器群単位モード、プロセス機器群単位でプロットしたプロット図を表示する表示データを生成するプロセス機器群単位モード、及び、機器群を構成する各構成単位でプロットしたプロット図を表示する表示データを生成する構成単位モードの表示対象に関する3つのモード、これら3つのモードに対するオプションとして、経時的なリスクの変化をプロットしたプロット図を表示する表示データを生成する経時的変化表示モードや、プロット図と合わせて改善項目を表示し、選択された改善項目を実施した場合の改善後のリスクをプロットしたプロット図を表示する表示データを生成する改善効果表示モード、表示させるプロット図上にリスク把握のための基準線を重ねたプロット図を表示する基準線表示モードがある。そして、モード切替部383は、入出力処理部31からの指示に応じて画像データ生成部384のモードを切り替えるようになっている。
【0085】
故障発生確率取得部381は、故障発生確率演算処理部32で演算された各プロセス機器、各プロセス機器群、各蒸気利用機器、及び、各演算対象機器群の故障発生確率のうち必要な故障発生確率を取得する。具体的には、演算対象機器群単位モードにあるときは、各演算対象機器群の故障発生確率(全体故障発生確率と称する)を取得し、プロセス機器群単位モードにあるときは、全体故障発生確率に加えて又はこれに代えて各プロセス機器群の故障発生確率(中間故障発生確率と称する)を取得し、構成単位モードにあるときは、全体故障発生確率や中間故障発生確率に加えて又はこれに代えて演算対象機器群を構成する各構成(各プロセス機器や各蒸気利用機器)のそれぞれに関する故障発生確率(個別故障発生確率と称する)を取得する。
【0086】
また、故障発生確率取得部381は、経時的変化表示モードにあるときは、対象とする機器群や各構成要素について、現時点からの故障発生確率の経時的な変化を示すデータ群(複数時点の故障発生確率)を取得するようになっている。つまり、改善効果表示モードにあるときは、故障発生確率取得部381は、演算対象機器群単位モードでは、演算対象機器群全体に関するデータ群である全体データ群(全体故障発生確率の経時的な変化を示すデータ群)を取得し、プロセス機器群単位モードでは、全体データ群に加えて又はこれに代えて各プロセス機器群に関するデータ群である中間データ群(各中間故障発生確率の経時的な変化を示すデータ群)を取得し、全体データ群や中間データ群に加えて又はこれに代えて演算対象機器群を構成する各構成(各プロセス機器や蒸気利用機器)のそれぞれに関するデータ群である個別データ群(各個別故障発生確率の経時的な変化を示すデータ群)を取得するようになっている。なお、データ群として取得する故障発生確率はそれぞれいつの時点の故障発生確率かの情報と対応付けられている。
【0087】
そして、故障発生確率取得部381は、入出力処理部31からの指示に応じて、故障の種類ごとに各プロセス機器、各プロセス機器群、各蒸気利用機器、及び、各演算対象機器群の故障発生確率(又は上記したデータ群)を取得するようになっている。
【0088】
影響度取得部382は、影響度演算処理部37で演算された各プロセス機器、各プロセス機器群、各蒸気利用機器、及び、各演算対象機器群の影響度のうち必要な影響度を取得する。影響度取得部382は、故障発生確率取得部381と同様に、演算対象機器群単位モードにあるときは、各演算対象機器群の影響度(全体影響度と称する)を取得し、プロセス機器群単位モードにあるときは、全体影響度に加えて又はこれに代えて各プロセス機器群の影響度(中間影響度と称する)を取得し、構成単位モードにあるときは、全体影響度や中間影響度に加えて又はこれに代えて演算対象機器群を構成する各構成(各プロセス機器や各蒸気利用機器)のそれぞれに関する影響度(個別影響度と称する)を取得する。
【0089】
また、影響度取得部382は、入出力処理部31からの指示に応じて、故障の種類ごとに各プロセス機器、各プロセス機器群、各蒸気利用機器、及び、各演算対象機器群の影響度を取得するようになっている。
【0090】
なお、故障発生確率取得部381及び影響度取得部382は、故障発生確率(及びデータ群)や影響度とともに、対応する各プロセス機器、各プロセス機器群、各蒸気利用機器、及び、各演算対象機器群に関する識別情報や故障の種類を取得し、画像データ生成部384が、同じ識別情報及び故障の種類の故障発生確率と影響度との組を作成できるようになっている。
【0091】
画像データ生成部384は、
図10〜13に示すような、リスクマトリクス上に、取得した故障発生確率と影響度との組をプロットしたプロット図を表示する画像データを生成する。具体的には、画像データ生成部384は、演算対象機器群単位モードにあるときは、リスクマトリクス上に、取得した全体故障発生確率と全体影響度との組をプロットしたプロット図を表示する画像データを生成し(
図10,12参照)、プロセス機器群単位モードにあるときは、リスクマトリクス上に、取得した全体故障発生確率と全体影響度との組とともに又はこれに代えて、取得した中間故障発生確率と中間影響度との組をプロットしたプロット図を表示する画像データを生成し、プロセス機器群単位モードにあるときは、リスクマトリクス上に、取得した全体故障発生確率と全体影響度との組や中間故障発生確率と中間影響度との組とともに又はこれに代えて、取得した個別故障発生確率と個別影響度との各組をプロットしたプロット図を表示する画像データを生成する(
図11,13参照)。
【0092】
そして、画像データ生成部384は、経時的変化表示モードにあるとき、リスクマトリクス上に、演算対象機器群単位モードか、プロセス機器群単位モードか、又は、構成単位モードかに応じて、取得したデータ群(全体データ群、中間データ群、及び、個別データ群)を構成する各故障発生確率について、取得した前記影響度との組をプロットしたプロット図を表示する画像データを生成する。例えば、画像データ生成部384は、演算対象機器群単位モードにあるとき、
図10に示すような、リスクマトリクス上に、取得した全体データ群を構成する各故障発生確率について、全体影響度との組をプロットしたプロット図を表示する画像データを生成する。また、画像データ生成部384は、構成単位モードにあるとき、
図11に示すような、リスクマトリクス上に、取得した個別データ群ごとに、当該個別データ群を構成する各故障発生確率について、全体データ群と全体影響度との組のプロットとともに又はこれに代えて、当該個別データ群に対応する前記個別影響度との組をプロットしたプロット図を表示する画像データを生成する。
【0093】
以上のように、表示画像演算処理部38では、経時的変化表示モードにあるとき、
(1)演算対象機器群について、現時点からの故障発生確率の経時的な変化を示すデータ群を取得する故障発生確率取得工程と、
(2)演算対象機器群に対応する影響度を取得する影響度取得工程と、
(3)リスクマトリクス上に、取得したデータ群を構成する各故障発生確率について、取得した影響度との組をプロットしたプロット図を表示する画像データを生成する画像データ生成工程と、
が行われて、リスクの経時的変化がユーザに対して表示されるようになっている。
【0094】
画像データ生成部384は、改善効果表示モードにあるときは、
図12,13に示すような演算対象機器群に対する改善項目を示す欄をプロット図とともに表示する画像データを生成する。そして、本実施形態では、改善項目は、プロセス機器に関する上記した機器関連項目や作業関連項目、蒸気利用機器に関する補正項目に対応したものとなっており、ユーザが改善項目を1又は複数選択したときには、選択した改善項目(即ち、これに対応する機器関連項目、作業関連項目、補正項目)を入出力処理部31が取得するようになっている(つまり、入出力処理部31が改善項目を取得する改善項目取得部として機能する)。
【0095】
そして、入出力処理部31が改善項目を取得したとき、取得した改善項目に対応する機器関連項目、作業関連項目、補正項目が故障発生確率演算処理部32(演算条件取得部333,352)に取得され、パラメータ補正部336,355や故障曲線補正部338が、対象とするプロセス機器や蒸気利用機器が取得した機器関連項目、作業関連項目、補正項目を有するものとして演算用パラメータや故障曲線を新たに補正する。そして、故障発生確率演算処理部32は、補正した演算用パラメータや故障曲線に基づき、各プロセス機器、各プロセス機器群、各蒸気利用機器、及び、各演算対象機器群について新たに故障発生確率を演算し、これを改善項目が実施されたときの機器群(各プロセス機器、各プロセス機器群、各蒸気利用機器、及び、各演算対象機器群)の故障発生確率である改善後故障発生確率として、故障発生確率取得部381に送る。
【0096】
故障発生確率取得部381は、送られた改善後故障発生確率を取得し、画像データ生成部384は、取得された改善後故障発生確率に基づき、リスクマトリクス上に、表示中の故障発生確率と影響度との組とともに、又は、これに代えて、取得した改善後故障発生確率と影響度との組をプロットしたプロット図を表示する画像データを生成する。
【0097】
以上のように、表示画像演算処理部38では、改善効果表示モードにあるとき、
(1)演算対象機器群についての故障発生確率を取得する故障発生確率取得工程と、
(2)演算対象機器群に対応する影響度を取得する影響度取得工程と、
(3)リスクマトリクス上に、取得した故障発生確率と影響度との組をプロットしたプロット図を表示する画像データを生成する画像データ生成工程と、
(4)演算対象機器群に対する改善項目を取得する改善項目取得工程と、
(5)改善項目取得工程において改善項目を取得したとき、改善項目が実施されたときの機器群の故障発生確率である改善後故障発生確率を取得し、リスクマトリクス上に、取得した故障発生確率と影響度との組とともに、又は、これに代えて、取得した改善後故障発生確率と影響度との組をプロットしたプロット図を表示する画像データを生成する改善後画像データ生成工程と、
が行われて、改善前後のリスクの変化がユーザに対して表示されるようになっている。
【0098】
また、画像データ生成部384は、故障の種類ごとにプロットを行う場合、
図10,12に示すような、故障の種類(モレ、ツマリ)ごとに、リスクマトリクス上に、取得した故障発生確率(経時的変化表示モードにあるときは、取得したデータ群を構成する各故障発生確率)と対応する影響度との組をプロットしたプロット図を表示する画像データを生成する。
【0099】
その他、基準線表示モードにあるとき、画像データ生成部384は、
図10〜13に示すように、表示させるプロット図上にリスク把握のための基準線7を重ねたプロット図を表示する画像データを生成するようになっている。これにより、指標となる基準線7とともにプロット図が表示されて、例えば、基準線7より上側の領域は高リスクであり、基準線7より下側の領域は高リスクではないものとして視覚的に認識できるなど、リスクを評価しやすくなる。
【0100】
以上のように、リスク評価装置として機能する監視サーバ3では、ユーザ端末1からの指示に応じて、対応する各プロセス機器、各プロセス機器群、各蒸気利用機器、及び、各演算対象機器群についての故障発生確率や影響度が演算され、演算された故障発生確率及び影響度の組を、演算対象とするプロセス機器、プロセス機器群、蒸気利用機器、演算対象機器群のリスクとしてプロット図上に表示させるようになっている。そして、本実施形態の監視サーバ3(つまり、リスク評価装置、リスク評価方法、及び、リスク評価プログラム)によれば、以下の利点がある。
【0101】
まず、プロセス機器の故障発生確率を演算するとき、多数のプロセス機器に関するデータを用いて演算したパラメータに基づく故障発生曲線から故障発生確率を求めるようになっており、特に、プロセス機器がどのように用いられるかに直結し、故障発生確率に大きな影響を与える配管系関連項目に関連するパラメータを演算するので、プロセス機器の特性に則した故障発生確率を得ることができるようになっている。そして、プロセス機器に関するあらゆる情報を用いるのでなく、プロセス機器自体の事情に関わりのない配管系に関連する客観的な項目を用いるので、同種のデータを集めやすく、パラメータを演算するときの精度も高められる。また、プロセス機器に関する客観的な配管系関連項目に基づき求めたパラメータを、さらに、主観的なプロセス機器自体に関連する機器関連項目や作業関連項目で補正するので、パラメータの精度を効果的に高めることができ、精度高く故障発生確率を演算できる。
【0102】
また、故障発生確率演算処理部32では、個々のプロセス機器の故障発生確率のみならず、予め定めた演算方法により、プロセス機器群や蒸気利用機器群といった複数の機器からなる一まとまりの構成についての故障発生確率が求められるようになっている。これにより、個別の機器だけでなく、一まとまりの機器群(アセット)についてのリスク評価を行うことができる。
【0103】
表示画像演算処理部38では、対象とする機器群(アセット)についてリスクマトリクス上においてリスクの経時的変化を示すことができるようになっている。これにより、ユーザが将来にわたるリスク評価をすることができる。また、機器群単位でのプロットと構成単位でのプロットとの形態でプロット図を切り替えて表示することが可能になっており、機器群単位でプロットするときは、機器群全体でみてどのようなリスクが将来にわたり存在するかを評価でき、構成単位でプロットするときは、個々の構成についてのリスクを評価できる。そして、機器群全体のリスクの経時的変化とともに個々の構成についてのリスクの経時的変化が示されれば、機器群全体のリスクの経時的変化に、機器群におけるどの構成が特に寄与しているかといった情報を知ることも可能になる。
【0104】
表示画像演算処理部38では、改善前後のリスクの変化がユーザに対して示されるようになっており、ユーザが改善の必要性を判断できるようになる。また、機器群単位でのプロットと構成単位でのプロットとの形態でプロット図を切り替えて表示することが可能になっており、個々の構成についての設備改善の効果を示すことができるので、個々の構成に内在するリスクの大小をより好適に評価できる。
【0105】
〔その他の実施形態〕
最後に、本開示に係るリスク評価装置、リスク評価方法、及び、リスク評価プログラムのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0106】
(1)上記の実施形態では、演算条件取得部333,352,371や配置関係取得部343が入出力処理部31から識別情報を取得し、これに対応する演算条件をデータベースサーバ4から取得する構成を例に説明した。しかし、本開示の実施形態はこれに限定されず、例えば、入出力処理部31から演算条件を直接取得するようにしてもよい。
【0107】
(2)上記の実施形態では、プロセス機器演算部33や蒸気利用機器演算部35が、パラメータ補正部336,355や故障曲線補正部338により演算用パラメータや故障曲線を補正する構成を例に説明した。しかし、本開示の実施形態はこれに限定されず、パラメータ取得部334が取得した演算用パラメータを補正することなく故障曲線を演算してもよく、演算後の故障曲線を補正しなくてもよい。
【0108】
(3)上記の実施形態では、故障発生確率演算処理部32が、各プロセス機器、各プロセス機器群、各蒸気利用機器、及び、各演算対象機器群の故障発生確率を演算可能な構成を例に説明した。しかし、本開示の実施形態はこれに限定されず、故障発生確率演算処理部32は各プロセス機器、各プロセス機器群、各蒸気利用機器、及び、各演算対象機器群の一部のみを演算するものであってもよい。
【0109】
(4)上記の実施形態では、プロセス機器群演算部34が、プロセス機器演算部33で演算された故障発生確率に基づきプロセス機器群の故障発生確率を演算する構成を例に説明した。しかし、本開示の実施形態はこれに限定されず、ユーザから直接入力されたものや、予めデータベースに記憶された値など、プロセス機器群演算部34は、種々の構成からプロセス機器の故障発生確率を取得してもよい。同様に、演算対象機器群演算部36や、故障発生確率取得部381も種々の構成から必要な故障発生確率を取得してもよいし、影響度取得部382も種々の構成から必要な影響度を取得してもよい。
【0110】
(5)上記した補正関連機器項目、作業関連項目、補正項目はあくまでも例示であり、目的に応じて適宜変更可能である。
【0111】
(6)上記の実施形態では、プロセス機器群演算部34で説明した演算方法はあくまでも例示であり、目的に応じて適宜変更可能である。
【0112】
(7)上記の実施形態では、画像データ生成部384を、演算対象機器群単位モード、プロセス機器群単位モード、構成単位モード、経時的変化表示モード、改善効果表示モード、基準線表示モードに設定可能である構成を例に説明した。しかし、本開示の実施形態はこれに限定されず、一部のモードのみに設定可能なものであってもよい。
【0113】
(8)上記の実施形態では、リスク評価プログラムにより、監視サーバ3を、故障発生確率演算処理部32、影響度演算処理部37、及び、表示画像演算処理部38を有するものとして構成した例に説明した。しかし、本開示の実施形態はこれに限定されない。例えば、ユーザ端末1が表示画像演算処理部38を備えるようにして、監視サーバ3から故障発生確率や影響度を取得するようにするなど、ユーザ端末1に上記したリスク評価プログラム又はその一部を格納させて、ユーザ端末1に故障発生確率演算処理部32、影響度演算処理部37、及び、表示画像演算処理部38の全部又は一部を備えさせるようにしてもよい。
【0114】
(9)上記の実施形態では、監視サーバ3が、外部のデータベースサーバ4から必要なデータを取得する構成を例に説明した。しかし、本開示の実施形態はこれに限定されず、監視サーバ3の記憶部に必要なデータを記憶させるようにしてもよい。
【0115】
(10)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本開示の範囲に含まれる。
リスク評価装置は、多数のプロセス機器に関し、当該プロセス機器が設けられる配管系に関連する項目である配管系関連項目と、故障するまでの年数である故障年数と、をプロセス機器ごとに記憶してある記憶部(4)の演算用データに基づき、対象故障曲線の演算のための、配管系関連項目に関連する1又は複数のパラメータを演算して保管するパラメータ保管部(332)と、対象プロセス機器についての配管系関連項目を取得する演算条件取得部(333)と、取得された対象プロセス機器についての配管系関連項目と保管されたパラメータとに基づき、対象故障曲線を導出する演算用パラメータを取得するパラメータ取得部(334)と、演算用パラメータに基づき、対象故障曲線を演算する故障曲線演算部(337)と、を備える。