(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の塗料組成物は、ビヒクル成分としての、後述する特定のシリコン原子含有樹脂と、消泡剤とを含む。消泡剤の含有量は、シリコン原子含有樹脂100質量部に対して、0.7質量部以上24質量部以下である。
【0023】
本発明の塗料組成物は、消泡剤を所定量含んでおり、かつ、特定のシリコン原子含有樹脂を含んでいるため、良好な消泡性を示すことができる。「消泡性」とは、塗料組成物によって形成された塗膜中の気泡を低減できる性質を意味する。
一般に、塗料組成物は、これをある期間保管した後においても良好な消泡性を示すことが好ましい。本発明の塗料組成物は、ある期間保管した後においても良好な消泡性を示すことができる。
【0024】
本発明は、特定のシリコン原子含有樹脂と特定の量の消泡剤との組み合わせが、優れた消泡性に加えて、塗膜の優れた低摩擦性能及び下地に対する塗膜の優れた密着性の両方をもたらすという、意外な知見に基づいている。すなわち、本発明は、ビヒクル成分として特定のシリコン原子含有樹脂を用いる場合において、適切量の消泡剤を組み合わせることによって、消泡剤の使用によって通常得られる消泡性だけでなく、塗膜の低摩擦性能及び下地に対する塗膜の密着性をも向上させることができるという、意外な知見に基づいている。
【0025】
また、本発明の塗料組成物は、特定のシリコン原子含有樹脂をビヒクル成分として含むため、防汚性を示す塗膜を形成することができる。したがって、本発明の塗料組成物は、船舶の表面や水中構造物の表面又は内表面を防汚するための防汚塗料組成物として好適に用いることができる。
水中構造物としては、養殖用魚網等の各種漁網及びその他の漁具;港湾施設;オイルフェンス;発電所等の取水設備;冷却用導水管等の配管;橋梁;浮標;工業用水系施設;海底基地等が挙げられる。
本発明の塗料組成物は、特定のシリコン原子含有樹脂をビヒクル成分として含むため、長期間にわたって良好な防汚性を示す塗膜を形成することができる。
【0026】
<シリコン原子含有樹脂>
本発明の防汚塗料組成物に含まれるシリコン原子含有樹脂は、構成単位(A)を含む。
構成単位(A)は、上記式(I)で表される基、上記式(II)で表される基、上記式(III)で表される基及び上記式(IV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種のシリコン原子含有基を有する単量体(a)から誘導される構成単位である。
【0027】
(1)シリコン原子含有基
単量体(a)が有するシリコン原子含有基は、上記式(I)で表される基、上記式(II)で表される基、上記式(III)で表される基及び上記式(IV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種である。
式(I)中、a及びbは、それぞれ独立して、2〜5のいずれかの整数を表し、mは0〜50のいずれかの整数を表し、nは3〜80のいずれかの整数を表す。R
1〜R
5は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を表す。
【0028】
式(II)中、c及びdは、それぞれ独立して、2〜5のいずれかの整数を表し、pは0〜50のいずれかの整数を表す。R
6、R
7及びR
8は、それぞれ独立して、アルキル基、R
a又はR
bを表す。
R
aにおいて、xは0〜20のいずれかの整数を表す。R
23〜R
27は、同一又は異なって、アルキル基を表す。
R
bにおいて、yは1〜20のいずれかの整数を表す。R
28及びR
29は、同一又は異なって、アルキル基を表す。
【0029】
式(III)中、e、f、g及びhは、それぞれ独立して、2〜5のいずれかの整数を表し、q及びsは、それぞれ独立して、0〜50のいずれかの整数を表し、rは3〜80のいずれかの整数を表す。R
9〜R
12は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を表す。
【0030】
式(IV)中、i、j、k及びlは、それぞれ独立して、2〜5のいずれかの整数を表し、t及びuは、それぞれ独立して、0〜50のいずれかの整数を表し、v及びwは、それぞれ独立して、0〜20のいずれかの整数を表す。R
13〜R
22は、同一又は異なって、アルキル基を表す。
【0031】
a〜n、p〜y及びR
1〜R
29については、後で詳述する。
【0032】
シリコン原子含有樹脂は、上記式(I)で表される基、上記式(II)で表される基、上記式(III)で表される基及び上記式(IV)で表される基からなる群より選択される2種以上のシリコン原子含有基を有していてもよい。この場合、上記式(I)で表される基を2種以上、上記式(II)で表される基を2種以上、上記式(III)で表される基を2種以上、及び/又は、上記式(IV)で表される基を2種以上有していてもよい。
【0033】
シリコン原子含有樹脂の好ましい一例は、シリコン原子含有基を有する(メタ)アクリル系樹脂である。
「(メタ)アクリル」とは、メタクリル及びアクリルの少なくともいずれか一方を表す。
【0034】
(2)単量体(a)
単量体(a)は、上記式(I’)で表される単量体(a1)、上記式(II’)で表される単量体(a2)、上記式(III’)で表される単量体(a3)及び上記式(IV’)で表される単量体(a4)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。このような単量体(a)を含む単量体組成物の重合により、単量体(a1)、単量体(a2)、単量体(a3)及び単量体(a4)からなる群より選択される単量体(a)から誘導される構成単位(A)を含む(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。このシリコン原子含有樹脂は、上記式(I)で表される基、上記式(II)で表される基、上記式(III)で表される基及び上記式(IV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種のシリコン原子含有基を有する。
シリコン原子含有樹脂は、単量体(a)から誘導される構成単位(A)を2種以上含んでいてもよい。
【0035】
式(I’)中、R
31は水素原子又はメチル基を表し、a、b、m、n及びR
1〜R
5は前記と同じ意味を表す。
式(II’)中、R
32は水素原子又はメチル基を表し、c、d、p及びR
6〜R
8は前記と同じ意味を表す。
式(III’)中、R
33及びR
34は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、e、f、g、h、q、r、s及びR
9〜R
12は前記と同じ意味を表す。
式(IV’)中、R
35及びR
36は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、i、j、k、l、t、u、v、w及びR
13〜R
22は前記と同じ意味を表す。
【0036】
上記式(I’)で表される単量体(a1)、上記式(II’)で表される単量体(a2)、上記式(III’)で表される単量体(a3)及び上記式(IV’)で表される単量体(a4)は、それぞれ、上記式(I)で表される基、上記式(II)で表される基、上記式(III)で表される基及び上記式(IV)で表される基を有するシリコン原子含有重合性単量体である。
【0037】
単量体(a1)は、上記式(I’)で表される。単量体(a)として単量体(a1)を用いることにより、上記式(I)で表されるシリコン原子含有基を側鎖に有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。
シリコン原子含有樹脂は、2種以上の単量体(a1)から誘導される構成単位を含んでいてもよい。
【0038】
単量体(a)としては、分子量が400以上2500以下であるものが用いられる。このことは、シリコン原子含有樹脂が所定のシリコン原子含有基を有すること、及び塗料組成物に消泡剤を所定量含有させることを前提として、低摩擦性能に優れるとともに下地に対する密着性に優れる塗膜を形成できる塗料組成物を提供するうえで有利となり、あるいはさらに消泡性に優れる塗料組成物を提供するうえでも有利となり得る。
分子量が400以上2500以下である単量体(a)を用いた塗料組成物と、分子量が400以上2500以下ではない単量体を用いた塗料組成物とを対比したとき、前者は、低摩擦性能、下地に対する密着性及び消泡性のいずれか1以上、2以上又はすべてにおいて、後者より優れたものとなり得る。
単量体(a)の分子量は、好ましくは800以上1500以下である。
単量体(a)は、単量体(a)に属する2種以上の単量体の混合物であってもよく、この場合、上記分子量はそれらの平均分子量であってもよい。
【0039】
式(I’)〔式(I)についても同様。〕中のaは、好ましくは2又は3である。
bは、好ましくは2又は3である。
mは、塗膜の耐水性、下地に対する密着性等の観点から、好ましくは0以上25以下であり、より好ましくは0以上20以下である。mは、3以上又は5以上であってもよく、10以下又は8以下であってもよい。
nは、塗膜の防汚性及び一般的な有機溶剤への溶解性の観点から、好ましくは5以上50以下であり、より好ましくは8以上40以下であり、20以下又は10以下であってもよい。
R
1〜R
5における置換フェニル基及び置換フェノキシ基が有する置換基は、例えば、アルキル基、ハロゲン原子である。
R
1〜R
5は、好ましくはアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基である。
【0040】
単量体(a1)としては、例えば、JNC(株)製の「FM−0711」(商品名)、信越化学工業(株)製の「X−22−174BX」、「X−22−174ASX」、「X−22−2404」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0041】
単量体(a2)は、上記式(II’)で表される。単量体(a)として単量体(a2)を用いることにより、上記式(II)で表されるシリコン原子含有基を側鎖に有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。
シリコン原子含有樹脂は、2種以上の単量体(a2)から誘導される構成単位を含んでいてもよい。
【0042】
式(II’)〔式(II)についても同様。〕中のcは、好ましくは2又は3である。
dは、好ましくは2又は3である。
pは、塗膜の耐水性、下地に対する密着性等の観点から、好ましくは0以上25以下であり、より好ましくは0以上20以下である。pは、3以上又は5以上であってもよく、10以下又は8以下であってもよい。
x及びyは、一般的な有機溶剤への溶解性の観点から、それぞれ、好ましくは0以上10以下であり、より好ましくは0以上5以下である。
R
6〜R
8及びR
23〜R
29におけるアルキル基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基である。
R
6〜R
8は、いずれもアルキル基であることが好ましい。
【0043】
単量体(a2)としては、例えば、JNC(株)製の「TM−0701」(商品名)等が挙げられる。
【0044】
単量体(a3)は、上記式(III’)で表される。単量体(a)として単量体(a3)を用いることにより、上記式(III)で表されるシリコン原子含有基(このシリコン原子含有基は、ポリマー主鎖間を架橋する架橋基である。)を有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。
シリコン原子含有樹脂は、2種以上の単量体(a3)から誘導される構成単位を含んでいてもよい。
【0045】
式(III’)〔式(III)についても同様。〕中のe及びhは、それぞれ、好ましくは2又は3である。
f及びgは、それぞれ、好ましくは2又は3である。
q及びsは、塗膜の耐水性、下地に対する密着性等の観点から、それぞれ、好ましくは0以上30以下であり、より好ましくは0以上25以下であり、さらに好ましくは0以上20以下である。q及びsは、それぞれ、3以上又は5以上であってもよく、10以下又は8以下であってもよい。
rは、塗膜の防汚性、一般的な有機溶剤への溶解性等の観点から、好ましくは5以上50以下であり、より好ましくは8以上40以下であり、20以下又は10以下であってもよい。
R
9〜R
12における置換フェニル基及び置換フェノキシ基が有する置換基は、例えば、アルキル基、ハロゲン原子である。
R
9〜R
12は、好ましくはアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基である。
【0046】
単量体(a3)としては、例えば、JNC(株)製の「FM−7711」(商品名)、信越化学工業(株)製の「X−22−164A」、「X−22−164AS」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0047】
単量体(a4)は、上記式(IV’)で表される。単量体(a)として単量体(a4)を用いることにより、上記式(IV)で表されるシリコン原子含有基(このシリコン原子含有基は、ポリマー主鎖間を架橋する架橋基である。)を有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。
シリコン原子含有樹脂は、2種以上の単量体(a4)から誘導される構成単位を含んでいてもよい。
【0048】
式(IV’)〔式(IV)についても同様。〕中のi及びlは、それぞれ、好ましくは2又は3である。
j及びkは、それぞれ、好ましくは2又は3である。
t及びuは、塗膜の耐水性、下地に対する密着性等の観点から、それぞれ、好ましくは0以上30以下であり、より好ましくは0以上25以下であり、さらに好ましくは0以上20以下である。q及びsは、それぞれ、3以上又は5以上であってもよく、10以下又は8以下であってもよい。
v及びwは、塗膜の防汚性、一般的な有機溶剤への溶解性等の観点から、好ましくは0以上10以下であり、より好ましくは0以上5以下であり、1以上3以下であってもよい。
R
13〜R
22におけるアルキル基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基である。
【0049】
単量体(a4)としては、例えば、以前に日本ユニカー(株)から販売されていた商品が挙げられる。日本ユニカー(株)におけるシリコーン事業は、2004年に東レ・ダウコーニング株式会社に譲渡されており、現在では、当該譲渡先から相当品を入手可能である。
【0050】
a〜n、p〜y及びR
1〜R
29は、以上の記述を参照しつつ、単量体(a)の分子量が400以上2500以下となるように適切に選択される。
【0051】
シリコン原子含有樹脂は、防汚性、低摩擦性能及び/又は下地に対する優れた密着性等の観点から、単量体(a1)、単量体(a2)、単量体(a3)及び単量体(a4)から選択される単量体(a)から誘導される構成単位を2種以上含んでいてもよい。
中でも、好ましい実施形態の1つとして、片末端(メタ)アクリル変性シリコン原子含有重合性単量体〔単量体(a1)及び/又は単量体(a2)〕と、両末端(メタ)アクリル変性シリコン原子含有重合性単量体〔単量体(a3)及び/又は単量体(a4)〕とを併用する形態を挙げることができる。
【0052】
単量体(a)から誘導される構成単位(A)の含有量は、防汚性、低摩擦性能及び/又は下地に対する優れた密着性等の観点から、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、好ましくは5質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上70質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上60質量%以下である。
構成単位(A)の含有量が5質量%以上であることにより、防汚剤を別途に含有させない場合においても十分な防汚性を示す塗料組成物となり得る。構成単位(A)の含有量が80質量%以下であることは、防汚性と低摩擦性能と下地に対する密着性とを総合的に高めるうえで有利となる。
【0053】
(3)単量体(b)
シリコン原子含有樹脂は、上記式(V)で表される基及び上記式(VI)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子含有基を有する単量体(b)から誘導される構成単位(B)をさらに有していてもよい。シリコン原子含有樹脂が、構成単位(A)に加えて構成単位(B)をさらに有することにより、塗膜の防汚性、低摩擦性能及び/又は下地に対する密着性をさらに向上させ得る。
シリコン原子含有樹脂は、上記式(V)で表される基及び上記式(VI)で表される基の双方を有していてもよい。
【0054】
単量体(b)は、上記式(V’)で表される単量体(b1)及び上記式(VI’)で表される単量体(b2)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。このような単量体(b)を含む単量体組成物の重合により、単量体(b1)及び単量体(b2)からなる群より選択される単量体(b)から誘導される構成単位(B)を含む(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。このシリコン原子含有樹脂は、上記式(V)で表される基及び上記式(VI)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子含有基を有する。
シリコン原子含有樹脂は、単量体(b)から誘導される構成単位(B)を2種以上含んでいてもよい。
【0055】
式(V’)〔式(V)についても同様。〕及び式(VI’)〔式(VI)についても同様。〕中の2価の金属原子Mとしては、Mg、Zn、Cu等を挙げることができ、好ましくはZn又はCuである。
式(V’)〔式(V)についても同様。〕中のR
30は、好ましくは有機酸残基である。
【0056】
単量体(b1)は、上記式(V’)で表される。単量体(b)として単量体(b1)を用いることにより、上記式(V)で表される金属原子含有基をさらに有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。
R
30において、有機酸残基を形成する有機酸としては、例えば、酢酸、モノクロル酢酸、モノフルオロ酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、バーサチック酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、クレソチン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸、リシノール酸、リシノエライジン酸、ブラシジン酸、エルカ酸、α−ナフトエ酸、β−ナフトエ酸、安息香酸、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、キノリンカルボン酸、ニトロ安息香酸、ニトロナフタレンカルボン酸、プルビン酸等の一塩基有機酸が挙げられる。
中でも、有機酸残基が脂肪酸残基であると、長期にわたってクラックや剥離のない塗膜を維持することができる傾向にあり好ましい。特に、単量体(b1)として、可塑性の高いオレイン酸亜鉛(メタ)アクリレート又はバーサチック酸亜鉛(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0057】
また、他の好ましい有機酸として、芳香族有機酸以外の一塩基環状有機酸が挙げられる。一塩基環状有機酸としては、例えば、ナフテン酸等のシクロアルキル基を有する有機酸、三環式樹脂酸等の樹脂酸、及びこれらの塩が挙げられる。
三環式樹脂酸としては、例えば、ジテルペン系炭化水素骨格を有する一塩基酸が挙げられる。ジテルペン系炭化水素骨格を有する一塩基酸としては、例えば、アビエタン、ピマラン、イソピマラン、ラブダン骨格を有する化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、水添アビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、レボピマル酸、デキストロピマル酸、サンダラコピマル酸、及びこれらの塩等が挙げられる。中でも、塗膜の防汚性等の観点から、アビエチン酸、水添アビエチン酸、及びこれらの塩が好ましい。
【0058】
一塩基環状有機酸は、高度に精製されたものである必要はなく、例えば、松脂、松の樹脂酸等を使用することもできる。このようなものとしては、例えば、ロジン類、水添ロジン類、不均化ロジン類、ナフテン酸等が挙げられる。ロジン類とは、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等である。ロジン類、水添ロジン類及び不均化ロジン類は、廉価で入手しやすく、取り扱い性に優れ、長期防汚性を発現させやすい点で好ましい。
【0059】
一塩基環状有機酸の酸価は、好ましくは100mgKOH/g以上220mgKOH/g以下であり、より好ましくは120mgKOH/g以上190mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは140mgKOH/g以上185mgKOH/g以下である。
R
30を形成する一塩基環状有機酸として、上記範囲内の酸価を有するものを使用すると、塗膜の良好な防汚性をより長期間維持できる傾向にある。
単量体(b1)が有する有機酸残基は、1種の有機酸から形成されていてもよく、2種以上の有機酸から形成されていてもよい。
【0060】
R
30として有機酸残基を有する単量体(b1)の製造方法としては、例えば、無機金属化合物と、(メタ)アクリル酸のようなカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と、非重合性有機酸(上記の有機酸残基を構成する有機酸)とを、アルコール系化合物を含有する有機溶剤中で反応させる方法が挙げられる。
単量体(b1)から誘導される構成単位(B)は、(メタ)アクリル酸のようなカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体を含む単量体組成物を重合させることにより得られる樹脂と、金属化合物と、非重合性有機酸(上記の有機酸残基を構成する有機酸)とを反応させる方法によっても形成することができる。
【0061】
単量体(b2)は、上記式(VI’)で表される。単量体(b)として単量体(b2)を用いることにより、上記式(VI)で表される金属原子含有基(この金属原子含有基は、ポリマー主鎖間を架橋する架橋基である。)をさらに有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。
単量体(b2)としては、例えば、アクリル酸マグネシウム[(CH
2=CHCOO)
2Mg]、メタクリル酸マグネシウム[(CH
2=C(CH
3)COO)
2Mg]、アクリル酸亜鉛[(CH
2=CHCOO)
2Zn]、メタクリル酸亜鉛[(CH
2=C(CH
3)COO)
2Zn]、アクリル酸銅[(CH
2=CHCOO)
2Cu]、メタクリル酸銅[(CH
2=C(CH
3)COO)
2Cu]等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を必要に応じて適宜選択して用いることができる。
【0062】
単量体(b2)の製造方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸のような重合性不飽和有機酸と、金属化合物とをアルコール系化合物を含有する有機溶剤中で水とともに反応させる方法が挙げられる。この場合、反応物中の水の含有量を0.01質量%以上30質量%以下に調整することが好ましい。
【0063】
シリコン原子含有樹脂は、単量体(b1)から誘導される構成単位及び単量体(b2)から誘導される構成単位の双方を含んでいてもよい。
【0064】
シリコン原子含有樹脂が構成単位(B)を含む場合、構成単位(B)の含有量は、防汚性向上、低摩擦性能及び/又は下地に対する密着性向上等の観点から、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、好ましくは2質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは4質量%以上25質量%以下であり、さらに好ましくは6質量%以上20質量%以下である。
構成単位(B)の含有量が2質量%以上であることにより、塗膜の防汚性、低摩擦性能及び/又は下地に対する密着性をさらに向上させ得る。構成単位(B)の含有量が30質量%以下であることは、防汚性と低摩擦性能と下地に対する密着性とを総合的に高めるうえで有利となる。
【0065】
シリコン原子含有樹脂が構成単位(B)を含む場合、シリコン原子含有樹脂において、構成単位(A)と構成単位(B)との合計含有量に対する構成単位(B)の含有量の比〔(B)/{(A)+(B)}〕は、百分率で、好ましくは10質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以上40質量%以下である。このことは、防汚性と低摩擦性能と下地に対する密着性とを総合的に高めるうえで有利となる。
【0066】
(4)単量体(c)
シリコン原子含有樹脂は、上記式(VII)で表される基を有する単量体(c)から誘導される構成単位(C)をさらに有していてもよい。シリコン原子含有樹脂が構成単位(A)に加えて構成単位(C)をさらに有することにより、塗膜の防汚性をさらに向上させ得る。
【0067】
単量体(c)は、上記式(VII’)で表される単量体(c1)であることが好ましい。単量体(c1)を含む単量体組成物の重合により、単量体(c1)から誘導される構成単位(C)を含む(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。このシリコン原子含有樹脂は、上記式(VII)で表される基を有する。
シリコン原子含有樹脂は、単量体(c)から誘導される構成単位(C)を2種以上含んでいてもよい。
【0068】
式(VII’)〔式(VII)についても同様。〕中のR
40、R
41及びR
42は、同一又は異なって、炭素数1〜20の炭化水素残基(1価の炭化水素基)を表す。シリコン原子含有樹脂は、上記式(VII)で表される基を2種以上有していてもよい。
炭素数1〜20の炭化水素残基としては、例えば、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基等の炭素数が20以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基;
シクロヘキシル基、置換シクロヘキシル基等の置換基を有していてもよい環状アルキル基;
アリール基、置換アリール基等の置換基を有していてもよいアリール基
が挙げられる。
置換基を有していてもよい環状アルキル基としては、ハロゲン、炭素数18程度までのアルキル基、アシル基、ニトロ基又はアミノ基等で置換された環状アルキル基が挙げられる。
置換基を有していてもよいアリール基としては、ハロゲン、炭素数18程度までのアルキル基、アシル基、ニトロ基又はアミノ基等で置換されたアリール基が挙げられる。
中でも、塗膜の良好な防汚性を長期間安定して維持することができることから、R
40、R
41及びR
42の1以上がiso−プロピル基であることが好ましく、R
40、R
41及びR
42のすべてがiso−プロピル基であることがより好ましい。
【0069】
シリコン原子含有樹脂が構成単位(C)を含む場合、構成単位(C)の含有量は、防汚性向上等の観点から、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、好ましくは2質量%以上55質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上45質量%以下である。
構成単位(C)の含有量が2質量%以上であることにより、塗膜の防汚性をさらに向上させ得る。構成単位(C)の含有量が55質量%以下であることは、防汚性と低摩擦性能と下地に対する密着性とを総合的に高めるうえで有利となる。
【0070】
シリコン原子含有樹脂が構成単位(C)を含む場合、シリコン原子含有樹脂において、構成単位(A)と構成単位(C)との合計含有量に対する構成単位(C)の含有量の比〔(C)/{(A)+(C)}〕は、百分率で、好ましくは10質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上80質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以上70質量%以下である。このことは、防汚性と低摩擦性能と下地に対する密着性とを総合的に高めるうえで有利となる。
【0071】
(5)その他の単量体(d)
シリコン原子含有樹脂は、単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)以外のその他の単量体(d)から誘導される構成単位(D)を含んでいてもよい。
単量体(d)としては、単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)と共重合可能な不飽和単量体である限り特に限定されず、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エチルヘキサオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、o−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル系単量体;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、γ−ブチロラクトン又はε−カプロラクトン等との付加物;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の二量体又は三量体;
グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基を複数有する(メタ)アクリル系単量体;
ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等の第一級又は第二級アミノ基含有ビニル単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の第三級アミノ基含有ビニル単量体;
ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環族系塩基性単量体;
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のその他のビニル系単量体
が挙げられる。
【0072】
単量体(d)から誘導される構成単位(D)の含有量は、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、通常0.1質量%以上95質量%以下であり、好ましくは5質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上70質量%以下である。
構成単位(D)の含有量が0.1質量%以上であることにより、得られる塗料組成物の諸特性のバランスを整えることが可能となる。構成単位(D)の含有量が95質量%以下であることにより、防汚剤を別途に含有させない場合においても十分な防汚性を示す塗料組成物となり得る。
【0073】
(6)シリコン原子含有樹脂の製造方法
シリコン原子含有樹脂の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、上記した単量体を混合した単量体組成物をラジカル開始剤の存在下に60〜180℃の反応温度で5〜14時間反応させることによって製造することができる。重合反応の条件は適宜調整してよい。
【0074】
ラジカル開始剤としては、例えば、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ラウリルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルパーオキ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。
重合方法としては、有機溶剤中で行う溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。シリコン原子含有樹脂の製造効率等の観点から、好ましくは溶液重合法である。
有機溶剤としては、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸n−ブチル等の一般の有機溶剤が挙げられる。
【0075】
単量体(b2)を使用する場合、塗料組成物のハイソリッド化や製造効率の向上、及び重合時のカレットの生成抑制のために、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、単量体(b)との相溶性の観点から、メルカプタン以外の連鎖移動剤が好ましく、スチレンダイマー等が好ましい。
【0076】
シリコン原子含有樹脂の数平均分子量は、通常1000以上100000以下であり、好ましくは3000以上50000以下であり、より好ましくは5000以上30000である。
シリコン原子含有樹脂の数平均分子量が1000以上であると、塗料組成物から形成される塗膜が防汚性を発現できる傾向にある。シリコン原子含有樹脂の数平均分子量が100000以下であると、シリコン原子含有樹脂が塗料組成物に均一に分散しやすい傾向にある。
シリコン原子含有樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトクロマトグラフィ(GPC)により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0077】
<塗料組成物>
本発明の塗料組成物は、ビヒクル成分としての上記シリコン原子含有樹脂と、消泡剤とを含む。
【0078】
(1)シリコン原子含有樹脂の含有量
塗料組成物におけるシリコン原子含有樹脂の含有量は、塗料組成物に含有される固形分中、好ましくは30質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは40質量%以上90質量%以下であり、85質量%以下であってもよい。
シリコン原子含有樹脂の含有量が30質量%未満であると、下地に対する塗膜の密着性、塗膜の低摩擦性能及び塗膜の防汚性が低下する傾向にある。
塗料組成物に含有される固形分とは、塗料組成物に含まれる溶剤以外の成分の合計をいう。
【0079】
(2)消泡剤
本発明の塗料組成物は、消泡剤を含む。塗料組成物は、消泡剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
消泡剤とは、形成されようとする泡の表面を不均一にし、泡の形成を抑える作用を有する剤、又は、形成された泡の表面を局部的に薄くし、泡を破る作用を有する剤である。
【0080】
消泡剤の含有量は、シリコン原子含有樹脂100質量部に対して、0.7質量部以上24質量部以下であり、下地に対する塗膜の密着性の観点から、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは16質量部以下であり、さらに好ましくは14質量部以下であり、特に好ましくは12質量部以下である。
消泡剤の含有量は、消泡性の観点及び/又は塗膜の低摩擦性能の観点から、シリコン原子含有樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは2質量部以上であり、さらに好ましくは3質量部以上であり、特に好ましくは4質量部以上である。消泡剤の含有量は、消泡性の観点及び/又は塗膜の低摩擦性能の観点から、シリコン原子含有樹脂100質量部に対して、5質量部以上又は10質量部以上であることも好ましい。
【0081】
消泡剤としては、シリコン系消泡剤、非シリコン系消泡剤が挙げられる。
シリコン系消泡剤は、界面活性を有するポリシロキサン又はその変性物を含む消泡剤であり、非シリコン系消泡剤は、シリコン系消泡剤以外の消泡剤(ポリシロキサン又はその変性物を含まない消泡剤)である。
【0082】
非シリコン系消泡剤としては、高級アルコール系、高級アルコール誘導体系、脂肪酸系、脂肪酸誘導体系、パラフィン系、(メタ)アクリル重合体系、ミネラルオイル系等が挙げられる。
シリコン系消泡剤としては、オイル型、コンパウンド型、自己乳化型、エマルジョン型等のタイプが挙げられる。
【0083】
塗料組成物の消泡性(特に、ある期間保管した後の消泡性)、塗膜の低摩擦性能及び/又は下地に対する塗膜の密着性の観点から、消泡剤は、シリコン系消泡剤を含むことが好ましく、シリコン系消泡剤のみを含むことがより好ましい。中でも、消泡剤は、塗料組成物の消泡性(特に、ある期間保管した後の消泡性)、塗膜の低摩擦性能及び/又は下地に対する塗膜の密着性の観点から、フッ素変性シリコン系消泡剤を含むことが好ましく、フッ素変性シリコン系消泡剤のみを含むことがより好ましい。フッ素変性シリコン系消泡剤とは、フッ素変性されたポリシロキサンを含む消泡剤である。
【0084】
消泡剤として、市販品が用いられてもよい。
非シリコン系消泡剤の市販品としては、例えば、BYK社製の「BYK−030」等のミネラルオイル系消泡剤;楠本化成株式会社製の「ディスパロンOX68」、BYK社製の「BYK−1790」等のポリマー系消泡剤等が挙げられる。
フッ素変性シリコン系消泡剤以外のシリコン系消泡剤の市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製の「KF−96」、BYK社製の「BYK−081」等のシリコーンオイル系消泡剤等が挙げられる。
フッ素変性シリコン系消泡剤の市販品としては、例えば、BYK社製の「BYK−063」、信越化学工業株式会社製の「FA−630」等のフロロシリコーンオイル系消泡剤等が挙げられる。
【0085】
(3)熱可塑性樹脂・可塑剤
塗料組成物は、熱可塑性樹脂及び/又は可塑剤を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂及び/又は可塑剤を含有させることにより、塗膜の耐クラック性を向上させることができる。また、塗膜のポリッシングレート(研磨速度)を適度な速度に制御することが可能になるため、塗膜の長期防汚性の点においても有利である。
【0086】
熱可塑性樹脂としては、例えば、塩素化パラフィン;塩化ゴム、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン;ポリビニルエーテル;ポリプロピレンセバケート;部分水添ターフェニル;ポリ酢酸ビニル;(メタ)アクリル酸メチル系共重合体、(メタ)アクリル酸エチル系共重合体、(メタ)アクリル酸プロピル系共重合体、(メタ)アクリル酸ブチル系共重合体、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル系共重合体等のポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ポリエーテルポリオール;アルキド樹脂;ポリエステル樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、塩化ビニル−イソブチルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル−イソプロピルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル−エチルビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;シリコンオイル;油脂及びその精製物;ワセリン;流動パラフィン;ロジン、水添ロジン、ナフテン酸、脂肪酸及びこれらの2価金属塩が挙げられる。
上記油脂及びその精製物の例を挙げれば、例えば、ワックス(蜜蝋等の動物由来のワックス、植物由来のワックス等を含む。)等の常温で固体の油脂や、ひまし油等の常温で液体の油脂等である。
【0087】
熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記の中でも、塩素化パラフィン、ポリビニルエーテル、ポリエーテルポリオール、ロジン、塩化ビニル−イソブチルビニルエーテル共重合体が好ましく、特に、塩素化パラフィン、ポリビニルエーテル、ロジン及び塩化ビニル−イソブチルビニルエーテル共重合体は、塗膜の可塑性及び塗膜消耗量の調整に好適であることから、より好ましい。
【0088】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジメチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル系可塑剤;アジピン酸イソブチル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールアルキルエステル等のグリコールエステル系可塑剤;トリクレジルリン酸(トリクレジルホスフェート)、トリアリールリン酸(トリアリールホスフェート)、トリクロロエチルリン酸等のリン酸エステル系可塑剤;エポキシ大豆油、エポキシステアリン酸オクチル等のエポキシ系可塑剤;ジオクチルすずラウリレート、ジブチルすずラウリレート等の有機すず系可塑剤;トリメリット酸トリオクチル、トリアセチレンが挙げられる。
可塑剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記の中でも、ジオクチルフタレート(DOP)、ジメチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル系可塑剤、及びトリクレジルリン酸(トリクレジルホスフェート)、トリアリールリン酸(トリアリールホスフェート)、トリクロロエチルリン酸等のリン酸エステル系可塑剤は、シリコン原子含有樹脂及び熱可塑性樹脂との相溶性に特に優れており、塗膜全体にわたって均質的に耐クラック性を向上させることができることから、好ましい。
【0089】
塗料組成物における熱可塑性樹脂及び/又は可塑剤の合計含有量は、シリコン原子含有樹脂100質量部に対して、好ましくは3質量部以上100質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上50質量部以下であり、さらに好ましくは5質量部以上30質量部以下である。
熱可塑性樹脂及び/又は可塑剤の合計含有量がシリコン原子含有樹脂100質量部に対して3質量部未満であると、熱可塑性樹脂及び/又は可塑剤の添加による耐クラック性の改善効果が認められない傾向にあり、また、熱可塑性樹脂及び/又は可塑剤の添加による塗膜の長期防汚性改善効果が認められない傾向にある。
熱可塑性樹脂及び/又は可塑剤の合計含有量がシリコン原子含有樹脂100質量部に対して100質量部を超えると、下地に対する塗膜の密着性が低下したり、塗膜の防汚性が低下したりする傾向にある。
【0090】
(4)防汚剤
本発明の塗料組成物より得られる塗膜は、シリコン原子含有樹脂が示す自己研磨性に基づく防汚効果により、良好な防汚性を発揮し得る。
しかし、塗膜の防汚性をさらに高めるために、あるいは、防汚性の長期持続性をより高めるために、必要に応じて、塗料組成物に防汚剤を含有させてもよい。
防汚剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、無機化合物、金属を含む有機化合物、及び金属を含まない有機化合物等が挙げられる。
【0091】
防汚剤としては、例えば、酸化亜鉛;亜酸化銅;マンガニーズエチレンビスジチオカーバメート;ジンクジメチルジチオカーバメート;2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン;2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル;N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素;ジンクエチレンビスジチオカーバーメート;ロダン銅(チオシアン酸第一銅);4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(4,5,−ジクロロ−2−n−オクチル−3(2H)イソチアゾロン);N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド;N,N’−ジメチル−N’−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド;2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩(ジンクピリチオン)又は銅塩(銅ピリチオン)等の金属塩;テトラメチルチウラムジサルファイド;2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド;2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン;3−ヨード−2−プロピルブチルカーバーメート;ジヨードメチルパラトリスルホン;フェニル(ビスピリジル)ビスマスジクロライド;2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール;トリフェニルボロンピリジン塩;ステアリルアミン−トリフェニルボロン;ラウリルアミン−トリフェニルボロン;ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート;1,1−ジクロロ−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−1−フルオロ−N−フェニルメタンスルフェンアミド;1,1−ジクロロ−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−1−フルオロ−N−(4−メチルフェニル)メタンスルフェンアミド;N’−(3,4−ジクロロフェニル)−N,N’−ジメチル尿素;N’−tert−ブチル−N−シクロプロピル−6−(メチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン;4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルが挙げられる。
防汚剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0092】
塗料組成物における防汚剤の含有量は、シリコン原子含有樹脂100質量部に対して、好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは20質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0093】
(5)その他の成分
塗料組成物は、上述の成分以外のその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、顔料、水結合剤、ダレ止め剤、色分かれ防止剤、沈降防止剤、塗膜消耗調整剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、粘度調整剤、レベリング剤、顔料分散剤等の添加剤、及び溶剤等が挙げられる。
【0094】
顔料としては、例えば、
沈降性バリウム、タルク、クレー、白亜、シリカホワイト、アルミナホワイト、ベントナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸、ケイ酸塩、酸化アルミニウム水和物、硫酸カルシウム等の体質顔料;
酸化チタン、酸化ジルコン、塩基性硫酸鉛、酸化スズ、カーボンブラック、白鉛、黒鉛、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化クロム、黄色ニッケルチタン、黄色クロムチタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄(弁柄)、黒色酸化鉄、アゾ系赤・黄色顔料、クロムイエロー、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、ウルトラマリンブルー、キナクリドン等の着色顔料
等が挙げられる。
顔料は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0095】
溶剤としては、例えば、
トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロペンタン、オクタン、ヘプタン、シクロヘキサン、ホワイトスピリット等の炭化水素類;
ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルセロソルブ等のエーテル類;
酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ベンジル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;
エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;
n−ブタノール、プロピルアルコール等のアルコール
等が挙げられる。
溶剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0096】
(6)塗料組成物の調製
本発明の塗料組成物は、例えば、シリコン原子含有樹脂又はこれを含有する樹脂組成物(例えば、シリコン原子含有樹脂を含む溶液又は分散液)に、消泡剤、並びに必要に応じて、顔料及び溶剤等のその他の成分を添加し、ボールミル、ペブルミル、ロールミル、サンドグラインドミル、高速ディスパー等の混合機を用いて混合することにより、調製することができる。
【0097】
<塗膜及び複合塗膜>
本発明の塗膜は、上記塗料組成物を、常法に従って被塗物の表面に塗布した後、必要に応じて常温下又は加熱下で溶剤を揮散除去することによって形成することができる。
塗料組成物の塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り、ローラー、静電塗装、電着塗装等の従来公知の方法が挙げられる。
被塗物としては、例えば、船舶、水中構造物が挙げられる。水中構造物としては、養殖用魚網等の各種漁網及びその他の漁具;港湾施設;オイルフェンス;発電所等の取水設備;冷却用導水管等の配管;橋梁;浮標;工業用水系施設;海底基地等が挙げられる。
本発明の塗料組成物を用いて形成された塗膜は、防汚性、低摩擦性能及び下地に対する密着性に優れ得る。
【0098】
上記被塗物の塗装表面は、必要に応じて前処理されたものであってもよく、また、被塗物上に形成された防錆塗料(防食塗料)等の他の塗料からなる下塗り塗膜上に、本発明の塗料組成物からなる塗膜を形成して複合塗膜としてもよい。
【0099】
本発明の塗料組成物によれば、ビヒクルであるシリコン原子含有樹脂自体が良好な防汚性を示し得るため、別途に配合される防汚剤をなくすか、又はその配合量を低減することが可能である。したがって、本発明の塗料組成物によれば、クリヤーな(透明性の高い)防汚塗膜を形成することが可能である。
防汚剤として主に亜酸化銅を多量に含む従来の防汚塗料組成物から形成される防汚塗膜は、含有される亜酸化銅に起因して、通常赤味がかった色相を有しており、塗膜の色相が限定されていたが、本発明によれば、得られる塗膜の透明性を利用して種々の応用が可能となる。なお、クリヤーな塗膜を形成する場合、本発明の塗料組成物は、着色顔料を含まないことが好ましい。
【0100】
例えば、防錆塗料等からなる下塗り塗膜と当該下塗り塗膜上に形成された本発明の塗膜とを有する複合塗膜において、本発明の塗膜をクリヤーな防汚塗膜とし、防錆塗料として各種色相のものを用いることにより、防汚性を有しつつ、複合塗膜形成表面が従来にない色相を有する水中構造物等の被塗物を提供することができる。
また、防錆塗料等からなる下塗り塗膜とクリヤーな防汚塗膜との間に、各種色相を有する塗料からなる中塗り塗膜を形成することによっても、従来にない色相を有する被塗物を提供することができる。
【0101】
中塗り塗膜を形成する塗料としては、例えば、防汚塗料、エポキシ樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料、(メタ)アクリル樹脂系塗料、塩化ゴム系塗料、アルキッド樹脂系塗料、シリコン樹脂系塗料、フッ素樹脂系塗料等の各種塗料を用いることができる。
中塗り塗膜を形成する防汚塗料は、本発明に係る塗料組成物であってもよいし、比較的多量の防汚剤を含む従来の防汚塗料組成物等の他の防汚塗料組成物であってもよい。
中塗り塗膜は、下塗り塗膜の表面全体に形成されてもよいし、表面の一部に形成されてもよい。中塗り塗膜及び下塗り塗膜は、使用に供された旧い塗膜であってもよい。この場合、本発明の塗膜は、旧塗膜の補修用として用いられてもよい。
また、防錆塗料等からなる下塗り塗膜とクリヤーな防汚塗膜との間の中塗り塗膜を、例えば、各種色相の文字状、模様状、図柄状、絵柄状等に形成すれば、被塗物に様々な意匠性を付与することができる。
【0102】
下塗り塗膜とクリヤーな防汚塗膜との間に介在される塗料からなる中塗り塗膜の代わりに、文字状、模様状、図柄状、絵柄状等の形状を有する各種色相のフィルムやシール部材を介在させることによっても被塗物に様々な意匠性を付与することができる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0104】
(製造例S1:シリコン原子含有樹脂を含む樹脂組成物S1の調製)
攪拌機、冷却機、温度制御装置、窒素導入管、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、キシレン60質量部を加え100℃に保った。そこへ、表1の配合(質量部)に従ったモノマー及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1質量部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後30分間保温した。
その後、キシレン40質量部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2質量部からなる混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後1.5時間保温することにより、ワニスAを得た。
得られたワニスA中の固形分は50.1質量%であり、粘度は18ポイズであった。
ワニスAに含まれるシリコン原子含有樹脂の数平均分子量(GPC、ポリスチレン換算、以下同じ)は12000であった。
以下の実施例では、このワニスAをそのまま「樹脂組成物S1」として用いた。
【0105】
(製造例S2:シリコン原子含有樹脂を含む樹脂組成物S2の調製)
上記製造例S1と同様の反応容器に、キシロール60質量部を加え100℃に保った。そこへ、表1の配合(質量部)に従ったモノマー及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1質量部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後30分間保温した。
その後、キシレン40質量部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2質量部からなる混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後1.5時間保温することにより、ワニスBを得た。
得られたワニスB中の固形分は50.3質量%であり、粘度は23ポイズであった。
ワニスBに含まれるシリコン原子含有樹脂の数平均分子量は13000であった。
以下の実施例では、このワニスBをそのまま「樹脂組成物S2」として用いた。
【0106】
(製造例S3:シリコン原子含有樹脂を含む樹脂組成物S3の調製)
上記製造例S1と同様の反応容器に、キシロール60質量部を加え100℃に保った。そこへ、表1の配合(質量部)に従ったモノマー及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1質量部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後30分間保温した。
その後、キシレン40質量部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2質量部からなる混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後1.5時間保温することにより、ワニスCを得た。
得られたワニスC中の固形分は49.8質量%であり、粘度は10ポイズであった。
ワニスCに含まれるシリコン原子含有樹脂の数平均分子量は11000であった。
以下の実施例では、このワニスCをそのまま「樹脂組成物S3」として用いた。
【0107】
(製造例S4:シリコン原子含有樹脂を含む樹脂組成物S4の調製)
上記製造例S1と同様の反応容器に、キシロール60質量部を加え100℃に保った。そこへ、表1の配合(質量部)に従ったモノマー及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1質量部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後30分間保温した。
その後、キシレン40質量部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2質量部からなる混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後1時間保温することにより、ワニスDを得た。
得られたワニスD中の固形分は49.2質量%であり、粘度は7ポイズであった。
ワニスDに含まれるシリコン原子含有樹脂の数平均分子量は10500であった。
以下の実施例では、このワニスDをそのまま「樹脂組成物S4」として用いた。
【0108】
(製造例S5:シリコン原子含有樹脂を含む樹脂組成物S5の調製)
上記製造例S1と同様の反応容器に、キシロール64質量部及びn−ブタノール16質量部を加え110℃に保った。そこへ、表1の配合(質量部)に従ったモノマー及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2質量部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後1時間保温した。
その後、キシロール20質量部を追加し、ワニスEを得た。得られたワニスE中の固形分は49.5質量%であり、粘度は6ポイズであった。ワニスEに含まれる樹脂の数平均分子量は8000であり、酸価は101mgKOH/gであった。
ついで、同様の反応容器に、ワニスE 100質量部、酢酸亜鉛19.6質量部、ナフテン酸(NA−165、酸価165mgKOH/g、大和油脂工業社製)30.3質量部及びキシレン60質量部を加えてリフラックス温度まで昇温し、留出する酢酸、水及び溶剤の混合液を除去しつつ、同量のキシロール/n−ブタノール混合液を補充しながら、反応を18時間継続した。反応の終点は、留出した溶剤中の酢酸量を定量することにより決定した。反応液を冷却後、n−ブタノール及びキシレンを加えて、固形分が50.8質量%の「樹脂組成物S5」を得た。
【0109】
(製造例S6:シリコン原子含有樹脂を含む樹脂組成物S6の調製)
上記製造例S1と同様の反応容器に、キシロール40質量部及びn−ブタノール40質量部を加え110℃に保った。そこへ、表1の配合(質量部)に従ったモノマー及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2質量部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後1時間保温した。
その後、キシレン10質量部、n−ブタノール10質量部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2質量部からなる混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後1時間保温することにより、ワニスFを得た。得られたワニスF中の固形分は50.0質量%であり、粘度は9ポイズであった。ワニスFに含まれる樹脂の数平均分子量は8000であり、酸価は130mgKOH/gであった。
ついで、同様の反応容器に、ワニスF 100質量部、酢酸亜鉛25.4質量部、WWロジン(酸価160mgKOH/g)40.6質量部及びキシレン60質量部を加えたこと以外は、上記製造例S5と同様にして反応を行い、固形分が48.7質量%の「樹脂組成物S6」を得た。
【0110】
(製造例S7:シリコン原子含有樹脂を含む樹脂組成物S7の調製)
上記製造例S1と同様の反応容器に、キシロール56質量部及びn−ブタノール14質量部を加え105℃に保った。そこへ、表1の配合(質量部)に従ったモノマー及びアゾビスイソブチロニトリル2質量部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後1時間保温することにより、ワニスGを得た。
得られたワニスG中の固形分は50.3質量%であり、粘度は11ポイズであった。ワニスGに含まれる樹脂の数平均分子量は9000であり、酸価は50mgKOH/gであった。
ついで、同様の反応容器に、ワニスG 100質量部、酢酸銅9.3質量部、ナフテン酸(NA−200、酸価200mgKOH/g、大和油脂工業社製)12.5質量部及びキシレン60質量部を加えたこと以外は、上記製造例S5と同様にして反応を行い、固形分が51.5質量%の「樹脂組成物S7」を得た。
【0111】
(製造例S8:シリコン原子含有樹脂を含む樹脂組成物S8の調製)
上記製造例S1と同様の反応容器に、キシロール56質量部及びn−ブタノール14質量部を加え105℃に保った。そこへ、表1の配合(質量部)に従ったモノマー及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2質量部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後30分間保温した。
その後、キシレン24質量部、n−ブタノール6質量部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2質量部からなる混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後1.5時間保温することにより、ワニスHを得た。得られたワニスH中の固形分は50.8質量%であり、粘度は9ポイズであった。ワニスHに含まれる樹脂の数平均分子量は8500であり、酸価は70mgKOH/gであった。
ついで、同様の反応容器に、ワニスH 100質量部、酢酸銅12.9質量部、水素添加ロジン(ハイペールCH、酸価160mgKOH/g、荒川化学工業社製)21.9質量部及びキシレン60質量部を加えたこと以外は、上記製造例S5と同様にして反応を行い、固形分が52.5質量%の「樹脂組成物S8」を得た。
【0112】
(製造例T1:樹脂組成物T1の調製)
上記製造例S1と同様の反応容器に、キシロール60質量部を加え100℃に保った。そこへ、表1の配合(質量部)に従ったモノマー及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1質量部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後1時間保温した。
その後、キシレン20質量部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2質量部からなる混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後1時間保温し、その後キシロールを20質量部加えることにより、ワニスIを得た。
得られたワニスI中の固形分は49.7質量%であり、粘度は13ポイズであった。
ワニスIに含まれる樹脂の数平均分子量は11000であった。
以下の比較例では、このワニスIをそのまま「樹脂組成物T1」として用いた。
【0113】
(製造例T2:樹脂組成物T2の調製)
上記製造例S1と同様の反応容器に、キシロール60質量部を加え100℃に保った。そこへ、表1の配合(質量部)に従ったモノマー及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1質量部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後1時間保温した。
その後、キシレン20質量部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2質量部からなる混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後1.5時間保温しその後キシロールを20質量部加えることにより、ワニスJを得た。
得られたワニスJ中の固形分は50.5質量%であり、粘度は11ポイズであった。
ワニスJに含まれる樹脂の数平均分子量は10000であった。
以下の比較例では、このワニスJをそのまま「樹脂組成物T2」として用いた。
【0114】
(製造例T3:樹脂組成物T3の調製)
上記製造例S1と同様の反応容器に、キシロール64質量部及びn−ブタノール16質量部を加え110℃に保った。そこへ、表1の配合(質量部)に従ったモノマー及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2質量部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後30分間保温した。
その後、キシレン16質量部、n−ブタノール4質量部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2質量部からなる混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後1時間保温することにより、ワニスKを得た。得られたワニスK中の固形分は51.0質量%であり、粘度は6ポイズであった。ワニスKに含まれる樹脂の数平均分子量は7500で酸価は101mgKOH/gであった。
ついで、同様の反応容器に、ワニスK 100質量部、酢酸亜鉛19.6質量部、ナフテン酸(NA−165、酸価165mgKOH/g、大和油脂工業社製)30.3質量部及びキシレン60質量部を加えてリフラックス温度まで昇温し、留出する酢酸、水及び溶剤の混合液を除去しつつ、同量のキシロール/n−ブタノール混合液を補充しながら、反応を18時間継続した。反応の終点は、留出した溶剤中の酢酸量を定量することにより決定した。反応液を冷却後、n−ブタノール及びキシレンを加えて、固形分が52.3質量%の「樹脂組成物T3」を得た。
【0115】
(製造例T4:樹脂組成物T4の調製)
上記製造例S1と同様の反応容器に、キシロール35質量部及びn−ブタノール35質量部を加え100℃に保った。そこへ、表1の配合(質量部)に従ったモノマー及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2質量部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後30分間保温した。
その後、キシレン15質量部、n−ブタノール15質量部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2質量部からなる混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後1.5時間保温することにより、ワニスLを得た。得られたワニスL中の固形分は50.2質量%であり、粘度は11ポイズであった。ワニスLに含まれる樹脂の数平均分子量は9500であり、酸価は70mgKOH/gであった。
ついで、同様の反応容器に、ワニスL 100質量部、酢酸銅12.9質量部、水素添加ロジン(ハイペールCH、酸価160mgKOH/g、荒川化学工業社製)21.9質量部及びキシレン60質量部を加えたこと以外は、上記製造例S5と同様にして反応を行い、固形分が52.2質量%の「樹脂組成物T4」を得た。
【0116】
表1に、ワニスA〜Lの調製に用いたモノマーの使用量(仕込み量)、ワニスの固形分及び粘度をまとめた。粘度は、ガードナー泡粘度計(JIS K−5600に準ずる)を用いて25℃で測定した。
【0117】
【表1】
【0118】
表1に示される商品名及び略号は下記のとおりである。表1の(c’)とは、単量体(c)を形成するモノマーを意味する。
【0119】
(1)FM−0711(分子量:1000、商品名、JNC(株)品):式(I’)を満たす単量体(a1)であり、m=0、b=3、R
1〜R
5及びR
31がメチル基である単量体である。
(2)X−22−174BX(分子量:2300、商品名、信越化学工業(株)品):式(I’)を満たす単量体(a1)であり、m=0、R
1〜R
5及びR
31がメチル基である単量体である。
(3)FM−0721(分子量:5000、商品名、JNC(株)品):式(I’)において、m=0、b=3、R
1〜R
5及びR
31がメチル基である単量体である。
(4)X−22−2426(分子量:12000、商品名、信越化学工業(株)品):式(I’)において、m=0、R
1〜R
5及びR
31がメチル基である単量体である。
(5)TM−0701(分子量:423、商品名、JNC(株)品):式(II’)を満たす単量体(a2)であり、p=0、d=3、R
6〜R
8及びR
32がメチル基である単量体である。
(6)FM−7711(分子量:1000、商品名、JNC(株)品):式(III’)を満たす単量体(a3)であり、q及びs=0、f及びg=3、R
9〜R
12、R
33及びR
34がメチル基である単量体である。
(7)X−22−164A(分子量:1720、商品名、信越化学工業(株)品):式(III’)を満たす単量体(a3)であり、q及びs=0、f及びg=3、R
9〜R
12、R
33及びR
34がメチル基である単量体である。
(8)X−22−164E(分子量:7800、商品名、信越化学工業(株)品):式(III’)において、q及びs=0、f及びg=3、R
9〜R
12、R
33及びR
34がメチル基である単量体である。
(9)シリコン含有モノマーA:(分子量:1150、このモノマーは、「F2−312−01」という商品名で日本ユニカー(株)より販売されていたものである):式(IV’)を満たす単量体(a4)であり、t及びu=0、j及びk=3、v及びw=3、R
13〜R
22、R
35及びR
36がメチル基である単量体である。
(10)TIPSA:アクリル酸トリイソプロピルシリル
(11)AA:アクリル酸
(12)MMA:メタクリル酸メチル
(13)EA:アクリル酸エチル
(14)EHMA:メタクリル酸2−エチルヘキシル
(15)CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
(16)M−90G:メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル(NKエステルM−90G、新中村化学社製)
【0120】
<実施例1〜21、比較例1〜12>
表2又は表3の配合(質量部)に従い、製造例S1〜S8及びT1〜T4で得られた樹脂組成物S1〜S8及びT1〜T4のいずれか、並びに表2又は表3に示すその他の成分を使用して、高速ディスパーにて混合することにより、防汚塗料組成物を調製した。
表2及び表3において、「消泡剤/樹脂100部」とは、樹脂組成物に含まれる樹脂(シリコン原子含有樹脂)100質量部に対する消泡剤の含有量(質量部)を意味する。
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
表2及び表3に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
(1)弁柄(赤色酸化鉄):戸田工業(株)製「トダカラーKN−R」
(2)熱可塑性樹脂:塩素化パラフィン(東ソー(株)製「トヨパラックス A50」)
(3)消泡剤1(シリコン系、フッ素変性されていない):信越化学工業株式会社製「KF−96」
(4)消泡剤2(フッ素変性シリコン系):BYK社製「BYK−063」
(5)消泡剤3(非シリコン系):BYK社製「BYK−1790」
【0124】
得られた上記防汚塗料組成物、及びそれから形成される防汚塗膜について、下記評価方法に従って消泡性、低摩擦性能及び下地に対する密着性を評価した。評価結果を表4及び5に示す。
【0125】
(1)塗料組成物の消泡性
(1−1)初期の消泡性
得られた防汚塗料組成物を均一に攪拌した後、寸法が200mm×300mm×0.3mm(厚)のブリキ板の表面に、中毛ローラーで150μm〜200μmの膜厚で塗装し室温で30分間乾燥させた後の塗膜外観を、下記の評価基準に従って評価した。評価がA〜Cであれば実用レベルであるといえる。
[評価基準]
A:塗膜10cm
2あたり、泡沫の残存個数が0個。
B:塗膜10cm
2あたり、泡沫の残存個数が1個。
C:塗膜10cm
2あたり、泡沫の残存個数が2個。
D:塗膜10cm
2あたり、泡沫の残存個数が3個以上5個以下。
E:塗膜10cm
2あたり、泡沫の残存個数が6個以上。
【0126】
(1−2)保管後の消泡性
得られた防汚塗料組成物を40℃で1ヶ月間保管した後に、上記(1−1)と同じ評価試験を実施した。評価がA〜Cであれば実用レベルであるといえる。
【0127】
(2)塗膜の低摩擦性能
直径10cm、高さ10cmの塩化ビニル製円筒ドラムに、得られた防汚塗料組成物を塗布し、乾燥させて塗膜を形成した後、海水中で回転させ(周速度換算で約15ノット)、トルクメーターにより摩擦抵抗を測定した。
バフ処理によって鏡面仕上げした平滑な塩化ビニル製円筒ドラムの摩擦抵抗を標準として測定し、それぞれの摩擦抵抗の増減を表4及び表5に示した。海水浸漬直後(初期)、及び、1ヶ月浸漬後の摩擦抵抗を評価した。表4及び表5に示される「摩擦抵抗係数」とは、以下の式により算出される値である。
「摩擦抵抗係数」=[(各防汚塗料組成物を塗布したときの摩擦抵抗)−(標準摩擦抵抗)]/(標準摩擦抵抗)×100(%)
船舶の航行におけるエネルギー消費原単位(単位生産額当たりのエネルギー消費を意味し、当該原単位が大きくなると、所謂、燃費が悪くなる。)は、航行抵抗に比例する。したがって、摩擦抵抗係数が小さいほど、エネルギー消費原単位の削減を得ることができる。船舶の航行は、長期間に及ぶことがあるので、摩擦抵抗係数は、初期だけでなく、1ヶ月浸漬後においても小さいことが好ましい。
【0128】
(3)下地に対する塗膜の密着性
得られた防汚塗料組成物を、あらかじめ防錆塗料が塗布されたブラスト板に乾燥膜厚が150μmとなるように塗布し、2昼夜室内に放置することにより乾燥させて、防汚塗膜を有する塗膜板を得た。
防汚塗膜を有する塗膜板を滅菌濾過海水中に3ヶ月間浸漬した後、1昼夜室内に放置することにより乾燥させて、試験用塗膜板を得た。ついで、その塗膜表面に、該塗膜の形成に用いたのと同じ防汚塗料組成物を乾燥膜厚が150μmとなるように塗布し、2昼夜室内に放置することにより乾燥させて、試験板Aを得た。
また、上記試験用塗膜板上に、乾燥膜厚が125μmとなるように防錆塗料を塗布し、1昼夜室内に放置することにより乾燥させて、試験板Bを得た。
【0129】
試験板A及び試験板Bについて、JIS K 5600.5.6に準拠して碁盤目付着試験を行った(隙間間隔3mm、マス目数25)。表4及び表5中の数値は、試験結果を下記の評価基準で評点化したものである。評価点数が8以上であれば実用レベルであるといえる。
[評価基準]
評価点数10:切り傷1本ごとが、細くて両側が滑らかで、切り傷の交点と正方形の一目一目に剥がれがない。
評価点数8:切り傷の交点にわずかな剥がれがあって、正方形の一目一目に剥がれがなく、欠損部の面積が全正方形面積の5%以下。
評価点数6:切り傷の両側と交点とに剥がれがあって、欠損部の面積が全正方形面積の5%より大きく15%以下。
評価点数4:切り傷による剥がれの幅が広く、欠損部の面積が全正方形面積の15%より大きく35%以下。
評価点数2:切り傷による剥がれの幅は4点よりも広く、欠損部の面積が全正方形面積の35より大きく65%以下。
評価点数0:剥がれの面積が、前正方形面積の65%より大きい。
【0130】
【表4】
【0131】
【表5】
【0132】
<実施例22>
下記の成分を高速ディスパーにて混合することにより、防汚塗料組成物を調製し、上記評価方法に従って消泡性、低摩擦性能及び下地に対する密着性を評価した。評価結果はいずれも、実施例1の防汚塗料組成物と同等であった。
樹脂組成物S1 73.2質量部
酸化チタン(デュポン(株)製「TI−PURE R−900」)
1.2質量部
アゾ系赤顔料(富士色素(株)製「FUJI FAST RED 2305A」)
2.1質量部
熱可塑性樹脂(ポリビニルエーテル、BASF JAPAN(株)製「ルトナール A25」)
4.2質量部
消泡剤2(フッ素変性シリコン系、BYK社製「BYK−063」)
1.8質量部
ダレ止め剤(楠本化成株式会社製「ディスパロンA600−20X」)
5.5質量部
キシレン 10.0質量部
ブチルセロソルブ 2.0質量部
【0133】
<実施例23>
下記の成分を高速ディスパーにて混合することにより、防汚塗料組成物を調製し、上記評価方法に従って消泡性、低摩擦性能及び下地に対する密着性を評価した。評価結果はいずれも、実施例2の防汚塗料組成物と同等であった。
樹脂組成物S2 68.6質量部
酸化チタン(デュポン(株)製「TI−PURE R−900」)
2.0質量部
フタロシアニンブルー(山陽色素(株)製「CYANINE BLUE G−105」)
3.0質量部
熱可塑性樹脂(塩素化パラフィン、東ソー(株)製「トヨパラックス A50」)
4.1質量部
消泡剤2(フッ素変性シリコン系、BYK社製「BYK−063」)
1.6質量部
ダレ止め剤(楠本化成株式会社製「ディスパロンA600−20X」)
5.5質量部
キシレン 13.2質量部
ブチルセロソルブ 2.0質量部
【0134】
<実施例24>
下記の成分を高速ディスパーにて混合することにより、防汚塗料組成物を調製し、上記評価方法に従って消泡性、低摩擦性能及び下地に対する密着性を評価した。評価結果はいずれも、実施例3の防汚塗料組成物と同等であった。
樹脂組成物S3 69.5質量部
酸化チタン(デュポン(株)製「TI−PURE R−900」)
1.5質量部
弁柄(戸田工業(株)製「トダカラーKN−R」)
5.0質量部
熱可塑性樹脂(塩素化パラフィン、東ソー(株)製「トヨパラックス A50」)
4.0質量部
消泡剤2(フッ素変性シリコン系、BYK社製「BYK−063」)
1.5質量部
ダレ止め剤(楠本化成株式会社製「ディスパロンA600−20X」)
5.5質量部
キシレン 11.0質量部
ブチルセロソルブ 2.0質量部
シリコン原子含有樹脂と消泡剤とを含む塗料組成物であって、シリコン原子含有樹脂は下記式(I)で表される基、下記式(II)で表される基、下記式(III)で表される基及び下記式(IV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種のシリコン原子含有基を有する単量体(a)から誘導される構成単位(A)を含み、単量体(a)は分子量が400以上2500以下であり、消泡剤の含有量はシリコン原子含有樹脂100質量部に対して0.7質量部以上24質量部以下である塗料組成物、それから形成される塗膜、並びに、該塗膜を有する水中構造物及び船舶が提供される。