特許第6472597号(P6472597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6472597可変多孔性の血管内インプラント及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472597
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】可変多孔性の血管内インプラント及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20190207BHJP
【FI】
   A61F2/07
【請求項の数】25
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-47324(P2014-47324)
(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2014-171898(P2014-171898A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2017年2月14日
(31)【優先権主張番号】13/795,127
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ファン・エイ・ロレンツォ
【審査官】 石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−538185(JP,A)
【文献】 特開平09−285548(JP,A)
【文献】 特表2009−513289(JP,A)
【文献】 特表2005−514106(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0139802(US,A1)
【文献】 特開2005−110779(JP,A)
【文献】 特開2011−131086(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0054589(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管閉塞性デバイスであって、
複数の編組フィラメントから形成される管状部材であって、前記編組フィラメントが、前記編組フィラメントによって画定されるメッシュ開口部を備えたメッシュパターンを有する外側表面を画定し、前記管状部材が、前記管状部材の第1長さ部分に沿って第1多孔性領域を有し、かつ前記管状部材の第2長さ部分に沿って第2多孔性領域を有し、
前記第1多孔性領域における選択された数の前記編組フィラメントが、前記第1多孔性領域における残りの前記編組フィラメントと比較して平らな形状を有し、かつ前記管状部材の前記第2長さ部分に沿った前記第2多孔性領域における前記編組フィラメントと比較して平らな形状を有し、前記第1多孔性領域の多孔性が、前記第2多孔性領域の多孔性より小さく、前記管状部材が、その長さにわたって一定のピック数を有する、管状部材を含む、血管閉塞性デバイス。
【請求項2】
編組角度が、前記管状部材全体にわたって実質的に同様である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記管状部材が血管内ステントである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記血管内ステントが、半径方向に圧縮可能である、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1長さ部分が、前記管状部材の遠位端より近位側で、かつ前記管状部材の近位端より遠位側にある、前記管状部材の中間部分に位置する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第2長さ部分が、前記管状部材の前記遠位端に隣接している、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第2長さ部分が、前記管状部材の前記近位端に隣接している、請求項5に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1多孔性領域が、ある長さ、幅、及び厚さを有する平らな断面形状を有するフィラメントを含み、平らな断面形状を有する前記第1多孔性領域における前記フィラメントの前記幅は、前記厚さよりも大きく、かつ前記長さよりも小さい、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
らな形状を有する前記フィラメントが、楕円の断面形状を有している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1多孔性領域の前記フィラメントが、平らな断面形状のフィラメントと、円形断面形状のフィラメントとを含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第2多孔性領域の前記フィラメントが、円形断面形状を有する、請求項8に記載のデバイス。
【請求項12】
前記管状部材の前記第1長さ部分が、5mm〜25mmの範囲の距離にわたって延在する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
平らな断面形状を有する前記フィラメントの前記幅が、0.025mm(0.001インチ)〜1.27mm(0.05インチ)の範囲である、請求項8に記載のデバイス。
【請求項14】
平らな断面形状を有する前記フィラメントの前記厚さが、0.0076mm(0.0003インチ)〜0.254mm(0.010インチ)の範囲である、請求項8に記載のデバイス。
【請求項15】
円形断面形状を有する前記フィラメントが、0.0127mm(0.0005インチ)〜0.254mm(0.0100インチ)の範囲内の直径を有する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項16】
前記メッシュ開口部が、多角形形状を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第1多孔性領域の前記メッシュ開口部が、前記第2多孔性領域の前記メッシュ開口部よりも小さい、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記第1多孔性領域の前記メッシュ開口部が、10μm〜500μmの範囲の内接円直径を有する、請求項16に記載のデバイス。
【請求項19】
前記第2多孔性領域の前記メッシュ開口部が、400μm〜1000μmの範囲内の内接円直径を有する、請求項16に記載のデバイス。
【請求項20】
前記管状部材を形成するフィラメント数が、8〜288の範囲である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
前記管状部材を形成するフィラメント数が、8、16、32、48、64、72、96、120、144、192、及び288からなる群から選択される、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の血管閉塞性デバイスの製造方法であって、
それぞれが円形断面形状を有するフィラメントの供給を有する、複数の供給スプールを用意することと、
前記供給スプールの前記フィラメントを対応する回収スプールに向かって前進させることと、
前記回収スプールの少なくともいくつかが、円形断面形状と平らな断面形状とを備えたフィラメントを有するように、前記供給スプールと前記回収スプールとの間で、選択された間隔で、選択された数の前記フィラメントを、その選択された領域において、変形することと、
前記フィラメントによって画定された外側表面を備え、第1の低多孔性の領域と第2の高多孔性の領域とを備えた長さを有する管状部材を形成するために、フィラメント編組装置において前記回収スプール内の前記フィラメントを利用することと、を含む、方法。
【請求項23】
複数の血管内ステントを形成するために前記管状部材を切断する工程を更に含み、各前記ステントが、平らな断面形状を有するフィラメントの存在によって特徴付けられる第1の低多孔性の第1長さ領域を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記血管内ステントがそれぞれ、円形断面形状を有するフィラメントの存在によって特徴付けられる第2の高多孔性の第2長さ領域を少なくとも1つ有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記回収スプールのすべてが、平らな断面形状を備えたフィラメントを有している、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般に血管内インプラントに関し、より具体的には、血管ステントなどの閉塞性デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
動脈瘤及びその他の動静脈奇形などの血管障害及び欠陥は、例えば脳底のウィリス環にあるような大きな動脈の接合部で起こることが多い。動脈瘤が発達すると、典型的に血管壁から突出した嚢状動脈瘤として形成され、これは頸部とドーム部を有する。あるいは、動脈瘤は紡錘状奇形として形成され、罹患血管の断面が膨らむ。
【0003】
動脈瘤が発達すると、動脈内部の弾性板がその頸部の底で消失し、中膜が薄くなり、結合組織が平滑筋細胞に取って代わる。動脈瘤が継続的に血管血圧と血流に晒されているうちに、動脈瘤は血管壁から外側に向かって成長し、その嚢又は紡錘状部分が周囲の組織に接触して、周囲の組織に圧力をかける可能性がある。奇形が脳内で起こると、この圧力は、認知障害、視力喪失、及び神経麻痺などの重大な占拠性病変を引き起こすことがある。加えて、動脈瘤が血管血圧と血流に晒されているうちに、動脈瘤の壁(通常はドーム部)が弱くなり、これによって最終的に動脈瘤の断裂又は破裂が起こることがある。動脈瘤破裂はくも膜下出血の最も多い原因であり、この死亡率は約50%である。
【0004】
動脈瘤及びその他の奇形は、重篤な組織の近くにある場合や、その奇形へのアクセスが容易に得られない場合には、特に治療が困難である。これら両方の困難因子は、特に脳動脈瘤に当てはまる。脳動脈瘤の治療に外科的方法が開発されており、これには一般に、嚢状動脈瘤の頸部の周りにクリップを配置することによって、又は、紡錘状動脈瘤の紡錘部分の両端をクリップで留めることにより紡錘状動脈瘤を遮断し、かつ、植え込んだ血管移植によってその遮断された紡錘部分を血流が迂回して通るようにすることによって、動脈瘤への血流を止める工程が含まれる。頭部血管を包囲する脳組織が傷つきやすいこと、及びアクセスが限定的であることから、頭部血管構造の欠陥を外科的に治療することは困難であり、また危険を伴う。
【0005】
そのような外科的手順に代わる方法としては、ステント用デバイス又は塞栓性コイルなどの、マイクロカテーテル移植可能デバイスを血管内送達することが挙げられる。嚢状動脈瘤を治療するためのそのような一手順において、塞栓性コイル送達カテーテルの遠位端は、最初に、典型的には鼠径内の大腿動脈を通して患者の非頭部血管系の血管系内に挿入され、動脈瘤へと導かれる。次に、動脈瘤嚢を塞栓性材料(例えばプラチナコイル)で満たし、これが固体の血栓性凝塊を形成し、これが血管壁を血圧と血流から保護する。この治療方法は、動脈瘤への血流のみを閉塞し、血管の周辺部分は障害のない状態のままであるため、利点がある。しかしながら、これは紡錘状動脈瘤を治療することはできず、また動脈瘤の容積は永久的に維持されることになる。
【0006】
血管内インプラントの使用を含む別の技法では、マイクロカテーテルによって、塞栓性デバイスを管状ステント構造の形態で送達する。ステントは様々なフィラメント(例えば単数又は複数のワイヤ)から編まれ、織られ、又は巻き付けられたもの、金属のレーザー切断、あるいは様々なその他の方法で製造されたものであり得る。これらは自己拡張性であってよく、又は、バルーンなどの他のデバイスによって拡張させてもよい。多くのものが共通して有するのは、半径方向対称性、すなわち均一な多孔性であり、これは、血管の一部分、一側面、又は径方向扇形を、他のセクタとほぼ同じ多孔性で覆うことを意味する。この対称的構成、及びこれによる血管壁の被覆は、任意の所与の横断スライス又は横断面に沿って比較的均一である。
【0007】
この均一な構造は、そのようなステントが動脈瘤への血流を閉塞又は遮断するだけでなく、ステント全長にわたって血圧と血流を遮断してしまうため、これにより周囲の接合血管(例えば親血管から分岐する穿通枝血管など)などの流れを妨げることが多いことから、不利益であり得る。この種の血管に無差別的な閉塞性デバイスを使用すると、穿通枝血管の開口部(血管口)を遮断した場合に患者に、意図しない危害を引き起こし得る。
【0008】
動脈瘤に対する血流を差別的に遮断しながら、同時に、周辺の血管に対する血流を許容する選択的閉塞デバイスが開発されている。これらの差別的閉塞性デバイスを作製する試みでは、多層デバイスが使用されており、これは、血管内インプラントの長さに沿ってフィラメントの量が変化するか、又は、血管内インプラントの長さに沿ってインチ当たりのピック数を変えている。しかしながら一般に、これらのデバイスは、様々な多孔性領域を生成するために多層又はフィラメント数の変化を生み出すのが難しいため、製造上の困難とコスト増大に直面している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、親血管に連通する穿通枝血管への血流を遮断することなく、構造的に健全でかつ製造が容易な、親血管の動脈瘤又はその他の動静脈奇形の頸部又は紡錘部分を効果的に閉塞するデバイスのニーズが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
血管欠陥に対する血流及び血圧を効果的に閉塞し、同時に、隣接する血管構造に対する血流及び血圧を閉塞しない、血管閉塞性デバイスが提供される。この血管閉塞性デバイスは、その長さにわたって可変の多孔性領域を有する管状部材を含み得る。この管状部材は、その長さに沿って異なる断面形状を有する複数のフィラメントで形成することができ、これは、管状部材の長さに沿って可変多孔性領域に位置を割り出し得る。
【0011】
いくつかの実施形態において、血管閉塞性デバイスは、複数の編組フィラメントから形成された管状部材を含む。この編組フィラメントは、編組フィラメントによって画定されるメッシュ開口部を備えたメッシュパターンを有する外側表面を画定し得る。この管状部材は、管状部材の第1長さ部分に沿って第1多孔性領域と、管状部材の第2長さ部分に沿って第2多孔性領域とを有し得る。第1多孔性領域の多孔性は、第2多孔性領域の多孔性よりも小さくできる。第1多孔性領域は、第2多孔性領域のフィラメントとは異なる形状を有するフィラメントを含み得、この管状構造は、その長さ全体にわたって一定のピック数を有し得る。別の一実施形態において、この管状部材は、管状部材全体にわたって実質的に同様の編組角度を有し得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、この管状部材は血管内ステントであり、これは半径方向に圧縮可能である。第1長さ部分は、この管状部材の遠位端より近位側で、かつこの管状部材の近位端より遠位側にある、管状部材の中間部分にある。第2長さ部分は、管状部材の遠位端、及び/又は管状部材の近位端に隣接し得る。管状部材の第1長さ部分は、約5mm〜約25mmの範囲の距離にわたって延在し得る。第1多孔性領域は、ある長さ、幅、及び厚さを有する平らな断面形状を有するフィラメントを含み得る。この幅は、厚さよりも大きくてよく、かつ平らな断面形状を有する第1多孔性領域におけるフィラメントの長さよりも小さくてよい。平らな断面形状を有するフィラメントの幅は、約0.025mm(0.001インチ)〜約1.27mm(0.05インチ)の範囲である。平らな断面形状を有するフィラメントの厚さは、約0.0076mm(0.0003インチ)〜約0.254mm(0.010インチ)の範囲である。円形断面形状を有するフィラメントは、約0.0127mm(0.0005インチ)〜約0.254mm(0.0100インチ)の範囲内の直径を有し得る。
【0013】
第1多孔性領域のフィラメントは、専ら平らな断面形状のみであってよく、又は、平らな断面形状及び/又は円形断面形状のフィラメントの混合であってもよい。第2多孔性領域のフィラメントは、円形断面形状を有し得る。編組フィラメントで形成されたメッシュ開口部は、多角形形状を有し得、第1多孔性領域のメッシュ開口部は、第2多孔性領域のメッシュ開口部よりも小さくできる。第1多孔性領域のメッシュ開口部は、約10μm〜約500μmの範囲の内接円直径を有し得、第2多孔性領域のメッシュ開口部は、約400μm〜約1000μmの範囲内の内接円直径を有し得る。管状部材を形成するフィラメントの数は、約8〜約288の範囲であり得る。例えば、管状ステントを形成するフィラメントの数は、8、16、32、48、64、72、96、120、144、192、及び288からなる群から選択され得る。
【0014】
別の態様において、管状血管内インプラントの製造方法は、それぞれが円形断面形状を有するフィラメントの供給を有する、複数の供給スプールを用意することを含む。この方法に、各供給スプールのフィラメントを対応する回収スプールに向かって前進させることと、供給スプールと回収スプールとの間で、選択された間隔で、選択された数のフィラメントを、その選択された領域において、変形することと、を更に含む。このフィラメントは、回収スプールの少なくともいくつかが、円形断面形状と平らな断面形状とを備えたフィラメントを有するように、変形され得る。この方法により、編組フィラメントによって画定された外側表面を備えた管状部材を形成するために、フィラメント編組装置において回収スプール内のフィラメントを利用する。編組装置で使用される回収スプールすべてが、平らな断面形状を備えたフィラメントを有していてよく、あるいは、編組装置で使用される回収スプールの一部のみが、平らな断面形状を備えたフィラメントを有していてもよい。
【0015】
本方法により形成された管状部材は、第1の低多孔性領域と第2の高多孔性領域を備えた長さを有し得る。この方法は、複数の血管内ステントを形成するために管状部材を切断する工程を更に含み、各ステントが、平らな断面形状を有するフィラメントの存在によって特徴付けられる第1の低多孔性領域の第1長さ領域を有する。血管内ステントは、それぞれ円形断面形状を有するフィラメントの存在によって特徴付けられる第2の高多孔性領域の第2長さ領域を少なくとも1つ有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明は、以下の詳細な説明を付属の図面と併せ読むことでより完全な理解がなされるであろう。
図1】嚢状動脈瘤を有する血管内に移植された例示的な血管閉塞性デバイスの断面図である。
図2】紡錘状動脈瘤を有する血管内に移植された例示的な血管閉塞性デバイスの断面図である。
図3】例示的な血管閉塞性デバイスの部分断面図である。
図4図3のデバイスの一部を拡大した図である。
図5】例示的な血管閉塞性デバイスの別の一実施形態の部分断面図である。
図6】血管閉塞性デバイスを形成するのに使用するための例示的なフィラメントの平面図である。
図7図6の例示的なフィラメントのA−A断面における断面図である。
図8】例示的なフィラメントを形成するための例示的なシステムの模式図である。
図9】例示的な編組システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で開示されるデバイスの構造、機能、製造、及び使用の原理並びに方法の全体的な理解が与えられるよう、特定の例示的実施形態について以下に説明する。これらの実施形態の1つ以上の例を添付図面に示す。当業者であれば、本明細書に詳細に述べられ、添付の図面に示される装置及び方法は非限定的な例示的実施形態であり、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ定義されることは認識されるところであろう。1つの例示的な実施形態との関連において例示又は説明された特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような修正及び変形は、本発明の範囲に含まれることが意図される。
【0018】
更に、本開示においては、各実施形態の同様の参照符合を付した構成要素は同様の特徴を有するものであり、したがって特徴部の実施形態において、同様の参照符合を付したそれぞれの構成要素のそれぞれの特徴について必ずしも完全に説明することはしない。加えて、直線寸法又は円寸法が、開示されたシステム、デバイス、及び方法の説明で使用される限りにおいて、このような寸法は、このようなシステム、デバイス、及び方法と共に使用され得る形状のタイプを限定しようとするものではない。当業者であれば、任意の幾何学的形状についてこうした直線寸法及び円寸法に相当する寸法を容易に決定することが可能である点は認識されるところであろう。システム及びデバイス、並びにその構成成分の寸法及び形状は、少なくとも、そこでシステム及びデバイスが使用されるであろう被験者の解剖学的構造、それと共にシステム及びデバイスが使用されるであろう構成成分の寸法及び形状、並びにそこでシステム及びデバイスが使用されるであろう方法及び手順に基づくことができる。
【0019】
動脈瘤及びその他の動静脈奇形などの血管障害及び欠陥を治療するために、ステントなどの血管内インプラントを、その欠陥を含む血管長さにわたるように移植して、その欠陥に対する血圧及び血流を閉塞することができる。例えば、動脈瘤の部位にステントを送達し、動脈瘤壁に対する血圧及び血流を閉塞するような様相で位置決めすることができる。動脈瘤への血流を閉塞する(すなわち遮断又は妨害する)ことにより、動脈瘤破裂の危険性が低減される。しかしながら、血管欠陥の治療において、隣接する血管組織(穿通枝血管など)に対する血流及び血圧の不要な閉塞は回避することが重要である。
【0020】
本発明は、可変多孔性ステントなどの血管閉塞デバイスに関連し、このデバイスは、隣接する血管組織への血流を許容する一方で、血管欠陥への血流を閉塞するよう構成されている。このデバイスは、複数の編組フィラメントから形成される管状部材を利用する。以下に述べるように、この管状部材は、編組フィラメントで画定されたメッシュ開口部を備えたメッシュパターンを有する外側表面を含む。この管状部材は、部材の長さに沿って、異なる領域で多孔性が変化するように構築されている。例えば、管状部材は、管状部材の第1長さ部分に沿った第1多孔性領域と、管状部材の第2長さ部分に沿った第2多孔性領域とを有し得る。いくつかの実施形態において、この第1多孔性領域は管状部材の中央部分である。この第1多孔性領域には、第2多孔性領域におけるフィラメントとは異なる形状を有するフィラメントが含まれ得る。管状部材の長さに沿って選択された領域でフィラメントの形状を変化させることにより、所与の領域の多孔性を変化させながら、ステントの長さ全体にわたって一定のピック数を維持することができる。例えば、第1多孔性領域におけるフィラメントの断面形状は、第2多孔性領域におけるフィラメントの断面とは異なるように選択することができ、これによって、第2多孔性領域よりも第1多孔性領域のほうが多孔性が低くなるようにすることができる。このようにして、フィラメントの形状だけを変えることにより、管状部材の長さにわたって管状部材のその他の構造的特性をほぼ一定に維持しながら、第2多孔性領域に対して第1多孔性領域の多孔性を変えることが可能である。すなわち、フィラメント数、ピック数、編組角度、又は編組パターンは、第1多孔性領域と第2多孔性領域とで同じである。
【0021】
図1及び2は、可変多孔性ステント10が血管12内に配置されており、これにより、血管欠陥14への血流及び血圧を閉塞又は妨害しながら、同時に、隣接する血管組織(例えば穿通枝血管16)への血流及び血圧を実質的に妨害しないようにする実施形態を示す。血管12は、任意の血管構造であってよく、例えばウィリス環に見られるもののような頭部血管であり得る。図1に示すように、血管欠陥14は、頸部18及びドーム部20を有する嚢状動脈瘤であり得る。図2に示すように、血管欠陥14は、血管12の断面方向部分22が半径方向に膨らんだ紡錘状動脈瘤であり得る。図1の嚢状動脈瘤又は図2の紡錘状動脈瘤のいずれの治療においても、この血管閉塞性デバイスを、障害のある血管12の長さにわたって定置することにより、動脈瘤壁20、22に対する血流及び血圧を閉塞させる。
【0022】
図3は、本発明による、図1及び2の血管欠陥14の治療において使用される管状ステント10の一実施形態を示す。ステント10は、近位領域24、遠位領域26及び中央領域28を有し得、この中央領域28は、近位領域24と遠位領域26の中間である。図3に示す実施形態において、ステント10の領域28は、第2多孔性領域を表わす領域24及び26の多孔性とは異なる(すなわちより低い)多孔性を備えた第1多孔性領域を表わす。多孔性の相違は、下記に説明されるように、領域28におけるフィラメント30の断面形状を変えることによって達成される。ステント10は、望ましい管形状及びパターンに織られるか、編まれるか、又はその他の方法で形成された、ステント材料の1本以上のフィラメント30を有する編組ステントであり得る。
【0023】
図4は、ステント10の編組メッシュ構造を示す。上述のように、このステントは、メッシュを形成する交点(ピック32と呼ばれる)で交差するフィラメント30の編組で形成され得る。メッシュ密度は、編組中のフィラメント30間の間隔の度合の関数である。より密な間隔で配置されたフィラメント構造は、より疎な間隔のフィラメント構造よりも、高いメッシュ密度を有する。メッシュ密度の測定方法の1つは、材料のセンチメートル当たりピック数が13(インチ当たり32)に基づいて決定され得る。当業者には理解されるように、ピックは、フィラメントが交差する点である。
【0024】
多孔性は、流体がそこを通って通過することができる材料又は構造の傾向の測定値である。高い多孔性を備えた材料又は構造は、低い多孔性を備えた別の材料に比べ、その材料を通過する流量が大きい。ステントのような編組構造の多孔性は、メッシュ密度と、その構造を構成するフィラメント表面積、並びに、フィラメントの数、インチ当たりのピック数、及び、下記に述べられるように、フィラメント間の間隙表面積の関数であり得る。
【0025】
前述の通り、本発明により、フィラメント30の断面形状は、編組する前に、中央領域において選択的に変えることができ、これによってより低い多孔性領域を有するステント10を作製することができる。フィラメント30の断面形状を変えることによって、フィラメント30の間の間隙表面積を制御することができる。
【0026】
フィラメント間の間隙表面積は、フィラメント30間の開口空間内に内接円直径36(図4)を測定することによって決定することができる。三角形、正方形、又は菱形などの非円形については、内接円直径36は、その形状内に全体が収まる最大の円直径であり、すなわち、その形状の辺に接する円の直径である。ステント10の低多孔性領域は、約1μm〜約400μmの範囲、より具体的には約100μmの内接円直径36を有し得る。例えば、図1〜4に示されるステント10の第1多孔性領域28の内接円直径36は、約100μmであり得る。ステント10のより高い多孔性の領域、すなわち第2多孔性領域24、26は、約400μm超の内接円直径36を有し得る。例えば、図1〜4に示すステント10の第2多孔性領域26、24は、約400μm〜約〜約1000μmの範囲であり得る。
【0027】
内接円直径36を減少させ、これにより多孔性を減少させるために、フィラメント30の断面形状を変えて、ステント10の長さ方向に沿ってより低い多孔性領域に対応する選択されたフィラメント30長さ部分に沿って、フィラメント30の表面積を増加させることができる。例えば、略円形のフィラメント30は、ステント10の第1多孔性領域28(例えば中央領域)に対応するフィラメント30の一部分に沿って、平らにすることができる。図1〜4及び6に示すように、第1多孔性領域28は、略平らな断面形状(時に、リボン形状と呼ばれる)を有するフィラメント30で形成される。更に、ステント形成に使用されるフィラメントのより高い多孔性領域(すなわち、領域24及び26)は、実質的に円形の断面形状を有することができ、これは例えば、未改変又は自然な形状のフィラメントである。初期又は未改変の断面形状については、その形状がフィラメント断面形状の改変を可能にし、これにより、形状改変したフィラメントで形成されたステント領域の内接円直径36が、形状を改変していないフィラメントで形成された領域の内接円直径36よりも小さくできる限りにおいて、任意のものを利用することが可能であることが理解される。例としては、実質的に長方形、三角形、及び円形の断面形状を使用することができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、ステント10を形成するために編組されるフィラメント30の数は、ステント10の全長にわたって均一である。加えて、ステント10を形成するフィラメント30は、ステント10の全長にわたって連続的であり、すなわち、ステント10の第1多孔性領域28に見られるフィラメント30は、第2多孔性領域24、26に見られるフィラメント30と同じものである。上述のように、第1多孔性領域28と第2多孔性領域24、26におけるフィラメントの唯一の違いは、フィラメント30の断面形状である。
【0029】
図1〜4の実施形態において、第1すなわちより低い多孔性領域28は、改変された、すなわち実質的に平らな断面形状のみからなるフィラメントを使用して形成される。別の方法として、第1の低多孔性領域は、改変された(例えば平らな)断面形状を有するいくつかのフィラメントを、未改変形状(例えば円形)を有する他のフィラメントと一緒に用いて形成できることが、当業者には理解されよう。図5は、ステント10’の第1すなわちより低い多孔性領域28’を形成するのに使用されているフィラメントのいくつかのみが、改変された(例えば平らな)断面形状を有しているようなステントの一例を示す。図示されているように、ステント10’は、その長さにわたって未改変で実質的に一定の断面形状を有する第1フィラメントタイプ38と、その長さにわたって少なくとも2つの断面形状(改変された断面形状と未改変の断面形状)を有する第2フィラメントタイプ40とを有する。第1多孔性領域28’における改変フィラメント対未改変フィラメントの比は、そのステントに望まれる多孔性特性によって異なり得る。一般に、ステント10’の領域28’は、少なくとも多く、典型的にはより多くの、領域28’内において改変された断面形状を備えたフィラメントを有することになる。例えば、改変された形状を備えたフィラメントは、典型的に、領域28’における繊維の約50パーセント〜約99パーセントを構成する。より典型的には、領域28’における繊維の約60パーセント、約70パーセント、約80パーセント、又は約90パーセントが、改変された断面形状を有するものである。第1多孔性領域28’内で異なる断面形状のフィラメントを有するステント10’にもかかわらず、別の一実施形態において、フィラメント38、40の数はステント10’の全長にわたって均一であり、かつフィラメント38、40自体はステント10’の全長にわたって連続的であり、すなわち、ステントの中央部分28’に見られるフィラメントは、末端部分24’、26’に見られるフィラメント38、40と同じものである。
【0030】
図6は、編組ステント10を形成するのに使用される例示的なフィラメント30を示す。このフィラメントは、円形断面形状を有する第1部分42及び第2部分44を有し、これは未改変のフィラメント形状である。図6の中央部分46で示されている、フィラメント30のもう1つの領域は、改変された断面形状を有しており、すなわち、平らな、又は楕円形様の断面形状を有している。平らな断面46は、平らな部分46の中央を横切る幅48を有し、これは、隣接する円形断面部分42、44の直径52よりも広い。ステントがフィラメント30を使用して形成されると、部分46で編まれた領域は、部分42及び44で編まれた領域よりも小さい内接直径を有することになる。例として、幅48は、約0.025mm(0.001インチ)〜約1.27mm(0.05インチ)の範囲であり得る。図7は、図6の線A−Aに沿って見たときのフィラメント30の断面を示す。図示のように、平らな部分46は、厚さ50を有し、これは円形断面の直径52よりも小さい。厚さ50は、任意の望ましい厚さであり得、例えば厚さ50は、約0.0076mm(0.0003インチ)〜約0.254mm(0.010インチ)の範囲であり得る。フィラメントの円形断面部分の直径52は、任意の望ましい厚さであり得、例えば直径52は約0.0127mm(0.0005インチ)〜約0.254mm(0.0100インチ)の範囲であり得る。平らな中央部分46は、先細形状の末端54を有し得、これは図6に示すように、上から見たときに楕円形状をなしている。編組されたときに、フィラメント30の平らな中央部分46は、第1又は低多孔性領域を形成するステント10の領域周辺に位置を割り出すことができる。例えば、図3のステント10において、フィラメント30の平らな部分46は、ステントの中央領域を形成し、この領域は低多孔性領域28である。平らな中央部分46は、ステント中央の低多孔性領域を形成する長さを有し得、これは治療される欠陥14を覆うのに十分な長さであるが、隣接する血管組織への血流を不必要に閉塞してしまうほどの大きさではない。
【0031】
当業者は、所与の用途に適切と見なされるステントの寸法を容易に決定することができる。ステント10は、血管欠陥14にわたって広がるのに十分な寸法である長さを有し得る。例えば、ステント10の長さは約10mm〜約100mmの範囲であり得る。
【0032】
ステント10は、自己拡張性であってよく、半径方向に圧縮可能であり、これによってステント10は第1の、拘束された直径を有し、これは第2の、拘束されていない直径(ステントが自然の状態を呈する直径)よりも小さい。拘束されていない直径は、インプラントが行われる血管内よりも十分に大きくなるような寸法にされ、これにより安全に、かつ適正な位置を維持できるようにされる。一般に血管12の直径は約2mm〜約5mmの範囲であるため、ステント10の拘束されていない外径は、約2.5mm〜約5.5mmの範囲であり得るが、ステントは任意の望ましい直径を有し得る。緊縮された直径は、血管内送達用の寸法にすることができ、例えばこの拘束された直径は、約0.254mm(0.01インチ)〜約2.54mm(0.100インチ)の範囲であり得る。加えて、ステント10は、いったん拡張形態で血管構造内に定置されると、血管12に対する構造的支持を提供するよう構成することができる。配置と血流の助けとするため、ステント10の末端24、26は外に開いた形状にすることができる。
【0033】
自己拡張性ステントは、当該技術分野において既知の様々なフィラメント材料から構築することができる。この材料には、ステンレス鋼、コバルトクロム合金、ニッケル、チタン、ニチノール、及びポリマー材料が挙げられる。当該技術分野において既知のポリマーには、形状記憶ポリマー、シリコーン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオルトエステル、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリメチルアクリレート、ポリアミド、ナフタレンジカルボキシレン誘導体、絹、ポリテトラフルオロエチレン(polytetraflyouroethylenes)、及びポリ無水物が挙げられるがこれらに限定されない。フィラメント材料は、例えば金、プラチナ、イリジウム、又は他の既知の放射線不透過性材料で形成された内側コアを有することにより、生態吸収性又は放射線不透過性であってもよい。
【0034】
図1及び2に示される動脈瘤14のような欠陥を効果的に治療するため、ステント10は、管状ステント10の長さにわたって可変の多孔性を有し得る。例えば、このステントの第1多孔性領域28は、ステントの他の領域(例えば第2多孔性領域24、26)よりも低い多孔性であり得る。領域28は領域24と26の間に配置されて示されているが、低多孔性領域と高多孔性領域の他の配置も可能である。加えて、ステント10は複数の低多孔性領域を有し得る。例えば、ステント10は、遠位領域、近位領域、第1中央領域、第2中央領域、及び第3中央領域を有し、このそれぞれの領域が互いに異なる多孔性を有し得る(図示なし)。いかなる場合でも、低多孔性領域は、欠陥に対する血流を閉塞するのに十分な長さを有し得、例えば、低(第1)多孔性領域28の長さは、約5mm〜約25mmの範囲であり得る。図1〜3に示す実施形態において、中央領域28は、より低い多孔性を有し、これにより動脈瘤14の頸部18又は壁20、22に対する血流を閉塞するよう構成され、近位領域及び遠位領域24、26は、隣接する穿通枝血管16への実質的な閉塞なしに、血流と血圧を許容するよう構成される。
【0035】
ステント10は、ステント10の長さに沿って、実質的に一定のインチ当たりピック数を有し得る。例えば、領域24のインチ当たりピック数は、領域26のインチ当たりピック数と同じであり得、これは、領域28のインチ当たりピック数と同じである。例えば、このインチ当たりピック数は、7.9ピック/cm(20ピック/インチ)〜約98.4ピック/cm(250ピック/インチ)の範囲であり得る。
【0036】
上述のように、編組されたときに、ステント10を形成するフィラメント30は、交差して、多角形のメッシュ開口部を形成し得る。この多角形メッシュ開口部の大きさは、本明細書に記述される内接円直径によって測定することができる。ステント10は、第1内接円直径を有する第1領域(すなわち、第1又は低多孔性領域)と、第1内接円直径より大きい第2内接円を有する第2領域(すなわち第2又は高多孔性領域)を生じるように形成することができる。一般に、第1多孔性領域のメッシュ開口部は、約10μm〜約500μmの範囲の内接円直径を有し得、第2多孔性領域のメッシュ開口部は、約400μm〜約1000μmの範囲の内接円直径を有し得る。
【0037】
図8は、円形断面形状と平らな断面形状を交互に有するフィラメント30を製造するための、例示的な製造システム56を示す。供給スプール58が最初に提供される。この供給スプール58は、円形断面形状を有する供給フィラメント60が巻き付けられている。これは、上述の典型的なステントフィラメント材料で形成することができ、当該技術分野において既知である。供給スプール58からの供給フィラメント60は次に、加工されたフィラメント30を受け取るよう構成された回収スプール62に供給される。供給スプール58と回収スプール(collection spool)62の間で、供給フィラメント60はプレス装置又は型打装置64(例えば空気圧プレス)を通過するよう供給される。プレス装置64は、フィラメント60を改変する(例えば平らにする)手段を提供するダイセット66を有し得る。ダイセット66は、プレス装置64を通過する際に、円形供給フィラメント60を型打ちすることによって形成されるフィラメントの平らな部分46の厚さと長さを制御するよう調節することができる。プレス装置64は、フィラメント60の任意の直径でプレスするよう構成することができ、ダイの長さ、ダイ圧力、厚さを制御するダイシム、及びスプール速度は、加工されたフィラメント30の望ましい寸法を製造するために独立に制御及び校正することができる。プレス装置64を使用して、供給フィラメント60が設定間隔でプレスされ、円形断面形状42、44と平らな断面形状46を交互に有するフィラメント30が製造される。フィラメントが加工され、編組の準備ができた後、加工されたフィラメント30は回収スプール62に保管される。
【0038】
フィラメント30の編組には、フィラメント30の少なくとも2本の断片を組み合わせることが含まれ、これによってフィラメント30の経路がステント10の送達方向に対して実質的に斜め方向になり、管構造を形成する。一般に、編組ステントは多角形間隔表面形状を有し得、1/1交点繰り返しを有する菱形編組、2/2交点繰り返し有する正多角形編組、及び3/3交点繰り返しを有するハーキュレス編組を含み得る。加えて、三成分編組も使用することができる。三成分編組は、典型的にステントの長手方向又は軸方向に通ってフィラメントの動きを制限する、少なくとも1本のフィラメント断片を有する。加えて、格子状3次元編組構造、又は多層編組構造も、使用することができる。多層編組構造は、編組によって形成される構造として定義され、ここにおいてこの構造は複数の異なる別個の層を有する。
【0039】
図9は、例示的な編組装置68を示す。編組装置68は、スプール搭載機構70を有し得、編組マンドレル72には最初に、このスプール搭載機構70に配設されたスプール74に巻き付けられた望ましいフィラメントが取り付けられる。例えば、加工されたフィラメント30の回収スプール62が、この編組装置68に搭載され得る。編組装置68に使用される回収スプール62は、上述のように平らな断面形状を備えたフィラメント30、円形断面を備えたフィラメント60、及びこれら両方の組み合わせを有し得る。平らな断面形状を有する回収スプール62のみを利用する場合、結果として得られるステント10は、図1〜4に示されている形状のものになり得る。平らな断面形状を有する回収スプール62と、円形断面形状を有するスプールとを組み合わせて使用する場合、結果として得られるステント10’は、図5に示されている形状のものになり得る。回収スプール62は、回収スプール上のフィラメントの任意の平らな部分46が、結果として得られるステント28の望ましい低多孔性領域に対応するよう、編組装置68内に位置を割り出される。例えば、回収スプール62は、平らな部分46をインデクシングライン76に従って割り出すように位置を割り出すことができ、これにより、フィラメント30の平らな部分46が、ステントの端部分24、26の間にあるステントの中央領域28に対応するようにできる。編組されたステント10は、編組マンドレル72の遠位側で長さを切断することができる。
【0040】
あるいは、低多孔性領域は、高多孔性領域よりも、より多くのフィラメント、又はより多くのインチ当たりピック数を有し得る。しかしながら、フィラメントの断面形状のみを改変し、ステントの長さにわたってフィラメント数とインチ当たりピック数を一定に維持することによって、製造を単純化することができる。これは、編組プロセス中にフィラメント数又は編組パターンを変化させることによる編組プロセスの複雑化がないためである。よって、好ましい実施形態は、ステントの全長にわたって均一なフィラメント数及びインチ当たりピック数を有するものである。
【0041】
前述のように、メッシュ密度、よって多孔性は、編組角度にも依存し得る。一般に、編組角度は、編組ピックで交差するフィラメント間の角度として定義される。典型的に、3つの編組角度が関係する:編組装置上での構築中の編組角度、ステントが緊縮されていないときの編組角度、及びステントが緊縮されているときの編組角度である。構築中の編組角度は一般に、未緊縮及び緊縮状態の編組角度よりも大きい。編組構造は、編組構造の長手方向軸に対して約30°〜約150°の編組角度を有するよう形成される。
【0042】
ステント10を血管12内に展開する際、ステント10は血管12内に適合するよう半径方向に圧縮されるため、この編組角度は小さくなる。次に、ステント10が拘束位置から拘束されていない位置に移行すると、編組角度は拡大する。好ましくは、ステント10は、管状部材10全体が拘束されているとき又は拘束されていないときに、管状部材10の長さに沿って編組角度が均一になるように形成される。これによって、第1長さの編組角度は、第2長さの編組角度と同じになる。
【0043】
本発明には従来の低侵襲性及び開放手術器具における用途、並びにロボット支援手術における用途があることを当業者は認識するであろう。多くの場合において、記述では頭部血管構造、動脈瘤、及びこれらの治療用に校正されたステントが、例示的な送達位置及びインプラントとして用いられているが、これは例示目的に限られる。本明細書に記述されている方法及びデバイスは、実質的に任意の脈管構造、欠陥、及び脈管内インプラントに適用することができる。
【0044】
本明細書に開示されている装置はまた、1回の使用の後に廃棄されるように設計することができ、又は、複数回使用されるように設計することができる。しかしながら、いずれの場合も、デバイスは少なくとも1回の使用後、再使用のために再調整されることができる。再調整は、デバイスの分解工程と、これに続く洗浄工程と又は特定部品の交換工程と、及びその後の再組立工程との任意の組み合わせを含むことができる。詳細には、デバイスは分解可能であり、デバイスの任意の数の特定の部品又は部材を、任意の組み合わせで選択的に交換又は取り外すことができる。特定の部材の洗浄及び/又は交換に際し、デバイスを再調整施設において、あるいは外科手術の直前に手術チームによって再組み付けしてからその後の使用に供することができる。当業者であれば、デバイスの再調整に、分解、洗浄/交換、及び再組み付けのための様々な技術を利用できる点は認識されるであろう。このような技術の使用、及びその結果として得られる再調整されたデバイスは、すべて、本出願の範囲内にある。
【0045】
上記に述べた実施形態に基づく本発明の更なる特徴及び利点は、当業者には認識されるところであろう。したがって、本発明は、付属の特許請求の範囲によって示される場合を除いて、具体的に図示及び説明した内容によって限定されるものではない。本明細書に引用されるすべての刊行物及び文献は、それらの全容を本明細書に援用するものである。
【0046】
〔実施の態様〕
(1) 血管閉塞性デバイスであって、
複数の編組フィラメントから形成される管状部材であって、前記編組フィラメントが、前記編組フィラメントによって画定されるメッシュ開口部を備えたメッシュパターンを有する外側表面を画定し、前記管状部材が、前記管状部材の第1長さ部分に沿って第1多孔性領域を有し、かつ前記管状部材の第2長さ部分に沿って第2多孔性領域を有し、前記第1多孔性領域が、前記第2多孔性領域の前記フィラメントとは異なる形状を有するフィラメントを含み、前記第1多孔性領域の多孔性が、前記第2多孔性領域の多孔性より小さく、前記管状部材が、その長さにわたって一定のピック数を有する、管状部材を含む、血管閉塞性デバイス。
(2) 編組角度が、前記管状部材全体にわたって実質的に同様である、実施態様1に記載のデバイス。
(3) 前記管状部材が血管内ステントである、実施態様1に記載のデバイス。
(4) 前記血管内ステントが、半径方向に圧縮可能である、実施態様2に記載のデバイス。
(5) 前記第1長さが、前記管状部材の遠位端より近位側で、かつ前記管状部材の近位端より遠位側にある、前記管状部材の中間部分に位置する、実施態様1に記載のデバイス。
【0047】
(6) 前記第2長さ部分が、前記管状部材の前記遠位端に隣接している、実施態様5に記載のデバイス。
(7) 前記第2長さ部分が、前記管状部材の前記近位端に隣接している、実施態様5に記載のデバイス。
(8) 前記第1多孔性領域が、ある長さ、幅、及び厚さを有する平らな断面形状を有するフィラメントを含み、平らな断面形状を有する前記第1多孔性領域における前記フィラメントの前記幅は、前記厚さよりも大きく、かつ前記長さよりも小さい、実施態様1に記載のデバイス。
(9) 前記第1多孔性領域の前記フィラメントが、専ら平らな断面形状である、実施態様8に記載のデバイス。
(10) 前記第1多孔性領域の前記フィラメントが、平らな断面形状のフィラメントと、円形断面形状のフィラメントとを含む、実施態様8に記載のデバイス。
【0048】
(11) 前記第2多孔性領域の前記フィラメントが、円形断面形状を有する、実施態様8に記載のデバイス。
(12) 前記管状部材の前記第1長さ部分が、約5mm〜約25mmの範囲の距離にわたって延在する、実施態様1に記載のデバイス。
(13) 平らな断面形状を有する前記フィラメントの前記幅が、約0.025mm(0.001インチ)〜約1.27mm(0.05インチ)の範囲である、実施態様8に記載のデバイス。
(14) 平らな断面形状を有する前記フィラメントの前記厚さが、約0.0076mm(0.0003インチ)〜約0.254mm(0.010インチ)の範囲である、実施態様8に記載のデバイス。
(15) 円形断面形状を有する前記フィラメントが、約0.0127mm(0.0005インチ)〜約0.254mm(0.0100インチ)の範囲内の直径を有する、実施態様11に記載のデバイス。
【0049】
(16) 前記メッシュ開口部が、多角形形状を有する、実施態様1に記載のデバイス。
(17) 前記第1多孔性領域の前記メッシュ開口部が、前記第2多孔性領域の前記メッシュ開口部よりも小さい、実施態様1に記載のデバイス。
(18) 前記第1多孔性領域の前記メッシュ開口部が、約10μm〜約500μmの範囲の内接円直径を有する、実施態様16に記載のデバイス。
(19) 前記第2多孔性領域の前記メッシュ開口部が、約400μm〜約1000μmの範囲内の内接円直径を有する、実施態様16に記載のデバイス。
(20) 前記管状部材を形成するフィラメント数が、約8〜約288の範囲である、実施態様1に記載のデバイス。
【0050】
(21) 前記管状部材を形成するフィラメント数が、8、16、32、48、64、72、96、120、144、192、及び288からなる群から選択される、実施態様20に記載のデバイス。
(22) 管状血管内インプラントの製造方法であって、
それぞれが円形断面形状を有するフィラメントの供給を有する、複数の供給スプールを用意することと、
各供給スプールの前記フィラメントを対応する回収スプールに向かって前進させることと、
前記回収スプールの少なくともいくつかが、円形断面形状と平らな断面形状とを備えたフィラメントを有するように、前記供給スプールと前記回収スプールとの間で、選択された間隔で、選択された数の前記フィラメントを、その選択された領域において、変形することと、
前記編組フィラメントによって画定された外側表面を備え、第1の低多孔性の領域と第2の高多孔性の領域とを備えた長さを有する管状部材を形成するために、フィラメント編組装置において前記回収スプール内の前記フィラメントを利用することと、を含む、方法。
(23) 複数の血管内ステントを形成するために前記管状部材を切断する工程を更に含み、各ステントが、平らな断面形状を有するフィラメントの存在によって特徴付けられる第1の低多孔性の第1長さ領域を有する、実施態様22に記載の方法。
(24) 前記血管内ステントがそれぞれ、円形断面形状を有するフィラメントの存在によって特徴付けられる第2の高多孔性の第2長さ領域を少なくとも1つ有する、実施態様23に記載の方法。
(25) 前記回収スプールのすべてが、平らな断面形状を備えたフィラメントを有している、実施態様22に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9