(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
15/324−15/3296 15/46 −15/53
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
〈第1実施形態〉
図1は本実施形態に係るフォークリフト等の車両に設けられるステアリング装置を示す平面図であり、
図2は同じくステアリング装置を示す正面図である。
【0012】
車両は、車体に支持されるアクスルフレーム3と、アクスルフレーム3の左右両端部にキングピン4を介して回動自在に支持される左右のナックル5と、各ナックル5のスピンドル部(図示省略)に回転自在に支持される左右のハブ6と、を備える。各ハブ6には、左右の車輪(図示省略)が連結される。
【0013】
車両のステアリング装置は、左右のナックル5を駆動する両ロッド式の流体圧シリンダ10を備える。流体圧シリンダ10が左右のナックル5を回動させることにより、左右の車輪が同方向に操舵される。
【0014】
流体圧シリンダ10は、アクスルフレーム3に固定される筒状のシリンダ本体20と、シリンダ本体20を貫通してその両端から突出するロッド15と、を備える。
【0015】
ロッド15の両端部には左右のロッドブラケット15A、15Bが形成され、各ロッドブラケット15A、15Bは各タイロッド7を介して左右のナックル5に連結される。流体圧シリンダ10がロッド15を軸方向(左右方向)に移動することによって、左右のナックル5がキングピン4を中心にして左右同方向へ回動し、左右の車輪が同方向に操舵される。
【0016】
シリンダ本体20は、筒状のシリンダチューブ21と、シリンダチューブ21の両端部に結合される左右のシリンダブラケット22、23と、を備える。ロッド15の外周は、シリンダブラケット22、23に軸受(図示省略)を介して摺動自在に支持される。シリンダブラケット22、23は、アクスルフレーム3にボルト(図示省略)を介して締結される。こうして、シリンダ本体20はアクスルフレーム3の中央部に固定される。
【0017】
筒状のシリンダブラケット22、23は、それぞれの外周から上下方向に突出する対のフランジ部22A、23Aを有する。シリンダ本体20は、各フランジ部22A、23Aを貫通する2本のボルト25を介して締結される。ボルト25の両端には左右のナット26が螺合し、各ナット26がフランジ部22A、23Aに着座する。こうしてシリンダ本体20は各ボルト25及び各ナット26によって締結されることにより、シリンダチューブ21がシリンダブラケット22、23の間に挟持される。
【0018】
シリンダ本体20の内部には、左右の流体圧室12、13が形成される。流体圧室12、13は、シリンダ本体20とロッド15の間に形成され、ロッド15の中央部に設けられるピストン14によって仕切られる。
【0019】
流体圧室12、13は、シリンダブラケット22、23に接続される配管(図示省略)を通じて流体圧源(図示省略)に連通する。車輪の操舵時には、流体圧源から作動流体圧が流体圧室12、13に導かれ、作動流体圧を受けるピストン14がロッド15を軸方向(左右方向)に移動する。
【0020】
流体圧シリンダ10では、作動流体として作動油が用いられる。なお、流体圧シリンダ10では、作動流体として作動油ではなく、他の非圧縮性流体を用いてもよい。
【0021】
流体圧シリンダ10には、シリンダ本体20の両端から突出するロッド15を保護するロッド保護装置1が設けられる。以下、
図3を参照してロッド保護装置1の構成について説明する。
【0022】
図3は、ロッド保護装置1の一部を分解した状態を示す斜視図である。ロッド保護装置1は、シリンダ本体20の一端から突出するロッド15のまわりに第1ロッド室49(
図1、2、4参照)を形成する第1ダストブーツ30と、シリンダ本体20の他端から突出するロッド15のまわりに第2ロッド室69(
図1、2参照)を形成する第2ダストブーツ50と、第1ロッド室49と第2ロッド室69とを互いに連通する連通路70と、を備える。
【0023】
第1ダストブーツ30は、ロッド15のまわりを覆うことによって第1ロッド室49を密閉空間とする。筒状の第1ダストブーツ30は、ロッド15の端部に連結されるロッド側連結部31と、シリンダ本体20の端部に連結されるシリンダ側連結部32と、ロッド側連結部31とシリンダ側連結部32を伸縮自在に結ぶ伸縮部35と、を有する。
【0024】
伸縮部35は、ゴム等の弾性材によって形成される。第1ダストブーツ30の伸長状態では、伸縮部35がシリンダ側連結部32とロッド側連結部31の間でテーパ筒状に延びる(
図6A参照)。第1ダストブーツ30のニュートラル状態では、伸縮部35がシリンダ側連結部32の内側に入って畳まれる(
図6B参照)。第1ダストブーツ30の収縮状態では、ロッド側連結部31がシリンダ側連結部32の内側に入り込み、伸縮部35がシリンダ側連結部32とロッド側連結部31の間でテーパ筒状に延びる(
図6C参照)。こうして、第1ダストブーツ30は、シリンダ側連結部32、伸縮部35、及びロッド側連結部31が弾性変形して伸縮する。
【0025】
ロッド側連結部31は、ロッド15の端部に嵌合する形状をしており、ロッド15の端部外周に嵌合する筒状の筒部31Cと、ロッド15の端面に当接する円盤状の底部31Dと、底部31Dに開口してロッドブラケット15Aを突出させる開口部31Aと、を有する。
【0026】
ロッド側連結部31は、伸縮部35と一体で形成される。なお、これに限らず、第1ダストブーツ30は、ロッド側連結部31が伸縮部35と別体で形成される構成としてもよい。
【0027】
シリンダ側連結部32は、シリンダブラケット22の端部に嵌合する形状をしており、フランジ部22A、ナット26、及びボルト25の先端部を覆うフランジカバー部32Aと、連通路70が接続する第1接続部32Bと、を有する。
【0028】
シリンダ側連結部32は、伸縮部35と別体で形成され、伸縮部35より弾性率が低い樹脂等によって形成される。なお、これに限らず、第1ダストブーツ30は、シリンダ側連結部32が伸縮部35と一体で形成される構成としてもよい。
【0029】
第2ダストブーツ50は、ロッド15のまわりを覆うことによって第2ロッド室69を密閉空間とする。第2ダストブーツ50は、第1ダストブーツ30と左右対称の形状をしている。第2ダストブーツ50は、ロッド15の端部に連結されるロッド側連結部(図示省略)と、シリンダ本体20の端部に連結されるシリンダ側連結部52と、ロッド側連結部とシリンダ側連結部52を伸縮自在に結ぶ伸縮部55と、を有する。第2ダストブーツ50は、第1ダストブーツ30と同様に、シリンダ側連結部52、伸縮部55、及びロッド側連結部が弾性変形して伸縮する。
【0030】
第2ダストブーツ50のシリンダ側連結部52には、フランジ部23A、ナット26、ボルト25の先端部を覆うフランジカバー部52Aと、連通路70が接続する第2接続部52Bと、が形成される。
【0031】
連通路70は、第1ダストブーツ30と第2ダストブーツ50とに接続する管状のチューブ71によって形成される。チューブ71は、パイプ材を曲げて形成される。チューブ71は、シリンダ本体20に沿って延びるように配置され、一方の端部が第1ダストブーツ30の第1接続部32Bに接続され、他方の端部が第2ダストブーツ50の第2接続部52Bに接続される。
【0032】
こうして、チューブ71は、第1ダストブーツ30のシリンダ側連結部32と、第2ダストブーツ50のシリンダ側連結部52と、にわたって接続される。これにより、ロッド15の移動に伴って第1ダストブーツ30及び第2ダストブーツ50が伸縮しても、チューブ71の取り付け位置が変わらないため、チューブ71をパイプ材によって形成することができる。
【0033】
なお、チューブ71は、パイプ材に限らず、柔軟なホースによって形成してもよい。この場合には、チューブ71が接続される部位を第1ダストブーツ30のシリンダ側連結部32及び第2ダストブーツ50のシリンダ側連結部52に限定する必要はない。また、連通路70は、ボルト25に形成される貫通孔によって形成される構成としてもよい。また、連通路70は、シリンダ本体20に形成される通孔によって形成される構成としてもよい。
【0034】
ロッド保護装置1は、2本のチューブ71がシリンダ本体20の上下に設けられ、連通路70の流路断面積が確保される。なお、ロッド保護装置1は、これに限らず、1本または3本以上のチューブ71が設けられる構成としてもよい。チューブ71の太さ(内径)及び本数を任意に設定することにより、連通路70の流路面積が十分に確保される。
【0035】
次に、ロッド保護装置1の動作について説明する。
【0036】
車輪の操舵時にロッド15がシリンダ本体20に対して
図1、
図2において左方向に移動する際には、第2ダストブーツ50が収縮するとともに第1ダストブーツ30が伸長し、第2ロッド室69の空気が連通路70を通じて第1ロッド室49に吸引され、第2ダストブーツ50が収縮することが促される。一方、ロッド15がシリンダ本体20に対して
図1、
図2において右方向に移動する際には、第1ダストブーツ30が収縮するとともに第2ダストブーツ50が伸長し、第1ロッド室49の空気が連通路70を通じて第2ロッド室69に吸引され、第1ダストブーツ30が収縮することが促される。こうして第1ロッド室49と第2ロッド室69の間で空気が連通路70を通じて流れることにより、第1ロッド室49と第2ロッド室69の圧力変動が抑えられ、第1ダストブーツ30及び第2ダストブーツ50が円滑に伸縮する。
【0037】
そして、第1ロッド室49と第2ロッド室69の間で空気が連通路70を通じて流れることにより、従来装置のように第1ダストブーツ30及び第2ダストブーツ50に外気を出入りさせる空気抜き穴や間隙を設ける必要がなく、第1ロッド室49及び第2ロッド室69を密閉空間にすることが可能になる。これにより外気と共に塵埃や水等の異物が空気抜き穴を通じて第1ロッド室49と第2ロッド室69に出入りすることが回避される。
【0038】
次に、第1ダストブーツ30の構成について詳しく説明する。
【0039】
図4は、ニュートラル状態にある第1ダストブーツ30を示す断面図である。ニュートラル状態とは、第1ダストブーツ30が最伸長状態と最収縮状態の中間にあって伸長と収縮が可能となる状態である。
図1、2に示すように、流体圧シリンダ10のピストン14がシリンダ本体20の中央部(ニュートラル位置)に来たときに、第1ダストブーツ30及び第2ダストブーツ50がニュートラル状態になる。
【0040】
図4に示すように、第1ダストブーツ30のシリンダ側連結部32は、各フランジ部22Aに沿って延びる2つの隔壁部32Cを有する。隔壁部32Cは、ナット26、及びボルト25の先端部を収容する収容室37を仕切るとともに、第1ロッド室49に連通する凹部38を形成する。第1接続部32Bは凹部38に開口しており、第1接続部32Bに接続する連通路70は凹部38を介して第1ロッド室49に連通している。
【0041】
シリンダ側連結部32は、シリンダ本体20の端部22Bから延設される筒状のシリンダ延設筒部32Eを有する。第1ダストブーツ30の収縮時には、後述するように、第1ダストブーツ30のシリンダ延設筒部32Eとロッド15の間に形成される間隙に伸縮部35が入り込むようになっている。
【0042】
シリンダ側連結部32には、シリンダ延設筒部32Eの端部外周から環状に突出する凸部32Dが形成される。
【0043】
伸縮部35には、シリンダ側連結部32に結合される筒状の結合部35Aを有する。伸縮部35には、結合部35Aの内周に環状に窪む凹部35Bが形成される。伸縮部35は、その凹部35Bをシリンダ側連結部32の凸部32Dに係合させることにより、シリンダ側連結部32と着脱可能に結合される。なお、上述した構成に限らず、伸縮部35は、シリンダ側連結部32と接着等によって結合される構成としてもよい。
【0044】
第1ダストブーツ30のロッド側連結部31に嵌合するキャップ8が設けられる。有底円筒状のキャップ8は、ロッド側連結部31の筒部31C及び底部31Dを包囲する。これにより、ロッド側連結部31の変形が抑えられ、ロッド側連結部31がロッド15の端部から外れることが防止される。
【0045】
第1ダストブーツ30のロッド側連結部31には、開口部31Aに沿って突出する2本のリブ31Bが形成される。
【0046】
キャップ8の底部には開口部8Aが形成され、開口部8Aからロッドブラケット15A及び各リブ31Bが並んで突出する。こうして、キャップ8の開口部8Aとロッドブラケット15Aの間にロッド側連結部31の各リブ31Bが挟持されることにより、ロッド側連結部31の開口部31Aが拡がる変形が抑えられ、ロッド側連結部31がロッド15の端部から外れることが防止される。
【0047】
図5は、ニュートラル状態にある第1ダストブーツ30の伸縮部35を示す断面図である。
図5において、Oは第1ダストブーツ30の中心線である。
【0048】
伸縮部35は、シリンダ本体20の端部22Bから延設されるシリンダ延設筒部35Cと、ロッド15の端部から延設されるロッド延設筒部35Dと、シリンダ延設筒部35Cとロッド延設筒部35Dを結ぶベローズ筒部36と、を備える。
【0049】
シリンダ延設筒部35Cは、シリンダ本体20の端部22Bに結合されるシリンダ側連結部32のシリンダ延設筒部32Eから延設される筒状に形成される。
【0050】
ロッド延設筒部35Dは、ロッド15の端部に結合されるロッド側連結部31から連接して延びる筒状に形成される。
【0051】
ベローズ筒部36は、シリンダ延設筒部35Cからロッド延設筒部35Dへと縮径するように形成され、シリンダ延設筒部35Cの内側に入り込んで畳まれる形状を有する。
【0052】
ニュートラル状態にあるベローズ筒部36は、シリンダ延設筒部35Cから内側に折り返される筒状の内側折り返し筒部36Aと、ロッド延設筒部35Dから外側に折り返される筒状の外側折り返し筒部36Cと、内側折り返し筒部36Aと外側折り返し筒部36Cを結ぶ筒状の中継筒部36Bと、を有する。
【0053】
伸縮部35は、内側折り返し筒部36A及び外側折り返し筒部36Cの肉厚がシリンダ延設筒部35C、ロッド延設筒部35D、及び中継筒部36Bに比べて小さくなるように形成される。これにより、内側折り返し筒部36A及び外側折り返し筒部36Cの柔軟性がシリンダ延設筒部35C、ロッド延設筒部35D、及び中継筒部36Bに比べて高められる。
【0054】
伸縮部35の肉厚は、ベローズ筒部36からシリンダ延設筒部35Cにかけて大きく形成される。シリンダ延設筒部35Cは、ベローズ筒部36の内側折り返し筒部36Aから結合部35A(シリンダ延設筒部32E)にかけて肉厚が次第に大きくなるテーパ筒状に形成される。これにより、シリンダ延設筒部35Cの剛性が内側折り返し筒部36Aから離れるのにしたがって次第に高められる。
【0055】
伸縮部35の肉厚は、ベローズ筒部36からロッド延設筒部35Dにかけて大きく形成される。ロッド延設筒部35Dは、ベローズ筒部36の外側折り返し筒部36Cからロッド側連結部31にかけて肉厚が次第に大きくなるテーパ筒状に形成される。これにより、ロッド延設筒部35Dの剛性が内側折り返し筒部36Aから離れるのにしたがって次第に高められる。
【0056】
伸縮部35の肉厚は、内側折り返し筒部36Aから中継筒部36Bにかけて大きく形成されるとともに、外側折り返し筒部36Cから中継筒部36Bにかけて大きく形成される。中継筒部36Bは、内側折り返し筒部36A及び外側折り返し筒部36Cから中央部にかけて肉厚が次第に大きくなるテーパ筒状に形成される。
【0057】
このようにして、中継筒部36Bの剛性が内側折り返し筒部36A及び外側折り返し筒部36Cから離れるのにしたがって次第に高められる。なお、上述した構成に限らず、中継筒部36Bの剛性を内側折り返し筒部36A及び外側折り返し筒部36Cに比べて高める手段として、中継筒部36Bに環状の補強部材を設けてもよい。
【0058】
第1ダストブーツ30の製造時には、伸縮部35及びロッド側連結部31がゴム等の弾性材によって金型を用いて成形される。ベローズ筒部36は、
図5に示すニュートラル状態の形状に成形される。これにより、第1ダストブーツ30に外力がかからない自由状態では、ベローズ筒部36が
図5に示すニュートラル状態の形状になる。
【0059】
次に、第1ダストブーツ30の動作について説明する。
【0060】
図6Aは、第1ダストブーツ30の最伸長状態を示す断面図である。流体圧シリンダ10のロッド15の左端がシリンダ本体20から最も突出したストロークエンドにて、第1ダストブーツ30が最伸長状態になる。最伸長状態にあるベローズ筒部36は、テーパ筒状に延びている。このとき、内側折り返し筒部36Aは、シリンダ延設筒部35Cと中継筒部36Bの間で拡がり、テーパ筒状に延びている。外側折り返し筒部36Cは、中継筒部36Bとロッド延設筒部35Dの間で拡がり、テーパ筒状に延びている。
【0061】
図6Bは、第1ダストブーツ30のニュートラル状態を示す断面図である。第1ダストブーツ30が
図6Aに示す最伸長状態から収縮して
図6Bに示すニュートラル状態に移行する収縮時には、大きい肉厚を有して剛性が高いシリンダ延設筒部35C及びロッド延設筒部35Dが筒状に延びる状態を維持する。これにより、小さい肉厚を有して柔軟な内側折り返し筒部36Aがシリンダ延設筒部35Cの内側に折り返されることが円滑に行われる。同時に、小さい肉厚を有して柔軟な外側折り返し筒部36Cがロッド延設筒部35Dの外側に折り返されることが円滑に行われる。
【0062】
図6Bに示すように、ニュートラル状態にある第1ダストブーツ30のベローズ筒部36は、内側折り返し筒部36Aがシリンダ延設筒部35Cから内側に折り返されるともに、外側折り返し筒部36Cがロッド延設筒部35Dから外側に折り返されている。ベローズ筒部36は、大きい肉厚を有して剛性が高い中継筒部36Bによって外側折り返し筒部36C及び内側折り返し筒部36Aが折り畳まれる状態が保たれる。これにより、ダストブーツ30は、ニュートラル状態においてベローズ筒部36がシリンダ延設筒部35Cから大きくはみ出したり、部分的に膨らむことが抑えられ、ニュートラル状態からの伸長と収縮が円滑に行われる。
【0063】
図6Cは、第1ダストブーツ30の最収縮状態を示す断面図である。第1ダストブーツ30が収縮して
図6Bに示すニュートラル状態から
図6Cに示す最収縮状態に移行する収縮時には、第1ダストブーツ30に働く張力によって内側折り返し筒部36A及び外側折り返し筒部36Cが拡がり、シリンダ延設筒部35Cが内側に折り返されるとともに、ロッド延設筒部35Dが外側に折り返される。
【0064】
流体圧シリンダ10のロッド15の左端がシリンダ本体20に最も引き込まれたストロークエンドにて、第1ダストブーツ30が最収縮状態になり、タイロッド7の一部がシリンダ延設筒部35C及びシリンダ延設筒部32Eの内側に入り込んでいる。
図6Cに示すように、最収縮状態にある第1ダストブーツ30のベローズ筒部36は、内側折り返し筒部36A及び外側折り返し筒部36Cがテーパ筒状に拡がってシリンダ延設筒部35C及びシリンダ延設筒部32Eの内側に入り込んでいるため、ベローズ筒部36がタイロッド7に干渉することが防止される。
【0065】
第1ダストブーツ30が
図6Cに示す最収縮状態から伸長して
図6Bに示すニュートラル状態に移行する伸長時には、大きい肉厚を有して剛性が高いシリンダ延設筒部35C及びロッド延設筒部35Dが弾性復元力によって元の筒状に延びる状態に戻る。これにより、小さい肉厚を有して柔軟な内側折り返し筒部36Aがシリンダ延設筒部35Cの内側に折り返されることが円滑に行われる。同時に、小さい肉厚を有して柔軟な外側折り返し筒部36Cがロッド延設筒部35Dの外側に折り返されることが円滑に行われる。
【0066】
第1ダストブーツ30が
図6Bに示すニュートラル状態から伸長して
図6Aに示す最伸長状態に移行する伸長時には、第1ダストブーツ30に働く張力によって内側折り返し筒部36A及び外側折り返し筒部36Cが拡がる。
【0067】
一方、第2ダストブーツ50は、第1ダストブーツ30と左右対称の形状を有し、第1ダストブーツ30と同様に作動する。
【0068】
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。
【0069】
本実施形態によれば、ダストブーツ30は、ベローズ筒部36がシリンダ延設筒部35C及びシリンダ延設筒部32Eの内側に入って畳まれるため、ベローズ筒部36がシリンダ延設筒部35Cより外側に突出することが抑えられる。これにより、ダストブーツ30は従来の蛇腹部を有するものに比べて外形を小さくなり、流体圧シリンダ10のまわりに設けられるダストブーツ30の介装スペースを小さくすることができる(請求項1に対応する作用効果)。
【0070】
また、ダストブーツ30は、ベローズ筒部36がシリンダ延設筒部35Cから縮径して形成されるため、ベローズ筒部36がシリンダ延設筒部35Cの内側に入って畳まれることが円滑に行われるとともに、小型化が図れる。
【0071】
また、ダストブーツ30は、弾性材によって形成される伸縮部35と、伸縮部35と別体で形成されるシリンダ側連結部32と、を備え、シリンダ側連結部32にシリンダ本体20の端部22Bから延設される筒状のシリンダ延設筒部32Eが形成される。これにより、シリンダ延設筒部32Eを伸縮部35と異なる材質で形成して、シリンダ延設筒部32Eの剛性を十分に確保することができる。
【0072】
また、ダストブーツ30の肉厚は、ベローズ筒部36からシリンダ延設筒部35Cにかけて大きく形成される。これにより、ダストブーツ30は、ベローズ筒部36に比べてシリンダ延設筒部35Cの剛性が高められる。このため、ダストブーツ30の収縮時には、剛性が高いシリンダ延設筒部35Cの形状が維持されることにより、ベローズ筒部36がシリンダ延設筒部35Cの内側に入り込むことが促され、ダストブーツ30が円滑に収縮することができる(請求項2に対応する作用効果)。
【0073】
また、ダストブーツ30の肉厚は、ベローズ筒部36からロッド延設筒部35Dにかけて大きく形成される。これにより、ダストブーツ30は、ベローズ筒部36に比べてロッド延設筒部35Dの剛性が高められる。このため、ダストブーツ30の収縮時には、剛性が高いロッド延設筒部35Dの形状が維持されることにより、ベローズ筒部36がシリンダ延設筒部35Cの内側に入り込む変形が促され、ダストブーツ30が円滑に収縮することができる(請求項3に対応する作用効果)。
【0074】
また、ニュートラル状態にあるベローズ筒部36は、内側折り返し筒部36Aと外側折り返し筒部36Cを結ぶ筒状の中継筒部36Bを有する。ベローズ筒部36の肉厚は、内側折り返し筒部36Aから中継筒部36Bにかけて大きく形成されるとともに、外側折り返し筒部36Cから中継筒部36Bにかけて大きく形成される。これにより、ダストブーツ30は、内側折り返し筒部36A及び外側折り返し筒部36Cに対して中継筒部36Bの剛性が高められる。このため、ニュートラル状態にあるベローズ筒部36は、剛性が高い中継筒部36Bによって外側折り返し筒部36C及び内側折り返し筒部36Aが円滑に折り畳まれることにより、ベローズ筒部36が大きくはみ出したり、部分的に膨らむことが抑えられる(請求項4に対応する作用効果)。
【0075】
また、ベローズ筒部36は、伸長状態と収縮状態の中間にあって伸縮可能なニュートラル状態の形状に成形される。これにより、ダストブーツ30は、ベローズ筒部36の弾性復元力によってニュートラル状態の形状に戻ることが円滑に行われる(請求項5に対応する作用効果)。
【0076】
また、流体圧シリンダ10のロッド保護装置1は、シリンダ本体20の一端から突出するロッド15のまわりに第1ロッド室49を形成する第1ダストブーツ30と、シリンダ本体20の他端から突出するロッド15のまわりに第2ロッド室69を形成する第2ダストブーツ50と、第1ロッド室49と第2ロッド室69とを互いに連通する連通路70と、を備える。シリンダ本体20に対してロッド15が移動する際に、第1ダストブーツ30と第2ダストブーツ50の一方が収縮するとともに他方が伸長し、第1ロッド室49と第2ロッド室69の間で空気が連通路70を通じて流れる。これにより、第1ダストブーツ30、第2ダストブーツ50が収縮する際に、第1ロッド室49、第2ロッド室69の圧力上昇が抑えられ、第1ダストブーツ30、第2ダストブーツ50が円滑に伸縮することができる。そして、第1ロッド室49と第2ロッド室69に外気が出入りすることが回避され、ロッド15を塵埃等から保護することができる(請求項6に対応する作用効果)。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0078】
例えば、上記実施形態では、流体圧シリンダ10が操舵力を発生するステアリング装置を構成するものであるが、流体圧シリンダが操舵力を補助する例えばラックピニオン式のステアリング装置を構成するものであってもよい。
【0079】
本発明は、車両に搭載される流体圧シリンダのダストブーツとして好適であるが、車両以外に使用される流体圧シリンダのダストブーツにも適応できる。
【0080】
流体圧シリンダ10は、作動流体として作動油等の非圧縮性流体を用いるが、作動流体として空気等の圧縮性流体を用いるものであってもよい。