(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
なお、本実施形態において、「幅方向」とは、キャリーカート1の車輪軸21(後述)と平行な方向をいう。また、「奥行き方向」とは、メインフレーム11(後述)の長手方向と直交する方向をいう。更に、「高さ方向」とは、メインフレーム11の長手方向をいう。
【0014】
図1は、本実施形態におけるキャリーカート1の全体構成を示す斜視図である。
図2は、キャリーバッグ40を取り外したキャリーカート1の斜視図である。
本実施形態におけるキャリーカート1は、
図1に示すように、フレーム本体10と、車輪20と、ハンドル30と、キャリーバッグ40と、モータ駆動ボックス50(
図2参照)と、を備える。
【0015】
フレーム本体10は、キャリーバッグ40を支持する骨組み部分である。フレーム本体10は、
図2に示すように、メインフレーム11と、キャリア12と、スタンド13と、を備える。
【0016】
メインフレーム11は、キャリーバッグ40の背面を支持する部材であり、逆U字形に成形されたパイプ材により構成される。メインフレーム11の上部には、ハンドル30が取り付けられている。また、メインフレーム11の下部には、キャリア12、スタンド13、車輪20、及びモータ駆動ボックス50が設けられている。
【0017】
キャリア12は、キャリーバッグ40の底面を支持する部材であり、略U字形に成形されたパイプ材により構成される。
図1に示すように、キャリーバッグ40は、キャリア12に載置され、背面側がベルト(不図示)によりメインフレーム11に固定される。
【0018】
スタンド13は、キャリーカート1の下部を支持する部材であり、略U字形に成形されたパイプ材により構成される。使用者は、フレーム本体10(メインフレーム11)を垂直に起こし、スタンド13及び車輪20を共に路面に接触させることにより、キャリーカート1を垂直に立てた状態(以下、「停止状態」ともいう)にすることができる。また、使用者は、キャリーカート1が垂直に立てられた状態から、フレーム本体10のハンドル30を握り、進行方向に傾斜させながら引っ張ることにより、キャリーカート1を移動させることができる。以下、フレーム本体10が垂直に立てられた状態から進行方向に傾斜させることを、適宜に「キャリーカート1を傾斜させる」という。
【0019】
なお、キャリア12及びスタンド13は、折り畳み可能に構成されている。フレーム本体10からキャリーバッグ40を取り外した
図2の状態において、キャリア12及びスタンド13をメインフレーム11の側に折り畳むことにより(不図示)、フレーム本体10全体をコンパクトにすることができる。
【0020】
図1において、キャリーバッグ40は、物品を収納するためのソフトケースであり、メインフレーム11及びキャリア12(フレーム本体10)に取り付けられる。
【0021】
車輪20は、キャリーカート1が移動する際に回転する部品であり、メインフレーム11(フレーム本体10)の下部に設けられている。車輪20は、メインフレーム11の幅方向の左右にそれぞれ設けられている。2つの車輪20は、車輪軸21(後述)の両端に取り付けられている。
【0022】
ハンドル30は、使用者により支持される部品であり、メインフレーム11(フレーム本体10)の上部に設けられている。ハンドル30は、
図2に示すように、ハンドルカバー31、速度調整用スイッチ32、及び電源スイッチ33を備える。ハンドル30の構成については、後述する。
【0023】
モータ駆動ボックス50は、リニアホールIC350(後述)から出力される検出信号に応じた回転速度となるように車輪20を駆動する。モータ駆動ボックス50の構成については、後述する。
【0024】
次に、ハンドル30の構成について説明する。
図3は、ハンドル30の構成を示す分解斜視図である。
図3(a)は、速度調整用スイッチ32に作動力が加えられていない状態を示す。
図3(b)は、速度調整用スイッチ32に作動力が加えられた状態を示す。なお、
図3は、ハンドルカバー31の第2カバー312(
図2参照)を取り外し、第1カバー311の裏面側から見たときの分解斜視図である。なお、
図3では、主要な符号を(a)に記載する。
【0025】
ハンドルカバー31は、ハンドル30の全体を覆う部品である。ハンドルカバー31は、第1カバー311と、第2カバー312(
図2参照)と、を備える。第1カバー311及び第2カバー312は、メインフレーム11(フレーム本体10)の上部を間に挟んで、両側から挟みこむように取り付けられている。ハンドルカバー31の長手方向の両端部には、速度調整押板330(後述)を移動自在に保持する一対の押板ガイド313が設けられている。
【0026】
速度調整用スイッチ32は、固定板320と、速度調整押板330と、バネ340と、リニアホールIC350と、磁石360及び361と、を備える。このうち、固定板320、速度調整押板330及びバネ340は、本実施形態において、速度調整手段を構成する。
【0027】
固定板320は、後述する速度調整押板330を移動可能に支持する部品である。固定板320は、ピンガイド321と、IC保持片322と、を備える。ピンガイド321は、速度調整押板330のバネ保持ピン331(後述)が挿入される部分であり、2箇所に設けられている。IC保持片322は、リニアホールIC350(後述)を保持する部分であり、2つのピンガイド321の間に設けられている。
【0028】
固定板320は、メインフレーム11の上部に設けられた3箇所の孔部(符号省略)に、ピンガイド321及びIC保持片322がそれぞれ嵌め込まれることにより、メインフレーム11の上部に取り付けられる。
【0029】
速度調整押板330は、キャリーカート1の使用者が手を添えて握る部分である。速度調整押板330は、バネ保持ピン331と、係合片332と、磁石保持片333と、を備える。バネ保持ピン331は、バネ340が装着される部分である。バネ保持ピン331は、ピンガイド321(固定板320)と対向する位置に、2箇所設けられている。係合片332は、ハンドルカバー31の押板ガイド313と係合する部分である。
【0030】
速度調整押板330のバネ保持ピン331にバネ340を装着し、バネ保持ピン331の先端をピンガイド321(固定板320)に挿入する。そして、速度調整押板330の係合片332を押板ガイド313(第1カバー311)と係合させ、第1カバー311に第2カバー312を嵌め込むことにより、速度調整押板330をハンドルカバー31に取り付けることができる。
【0031】
速度調整押板330は、速度調整押板330に作動力が加えられていない状態では、バネ340の付勢力により固定板320と反対側に押され、固定板320から離れた位置に移動する。
図3(a)に示すように、速度調整押板330は、固定板320から最も離れた位置において、係合片332と押板ガイド313の端部とが当接する。この位置において、速度調整押板330が固定板320から離れる方向への移動が規制される。
【0032】
なお、作動力とは、キャリーカート1を移動するために、使用者の手から速度調整押板330に加えられる力である。使用者が速度調整押板330を握り、キャリーカート1を引っ張りながら移動させると、キャリーカート1に生じる負荷の大きさに応じた作動力が、使用者の手から速度調整押板330に加えられる。
【0033】
また、速度調整押板330は、速度調整押板330に作動力が加えられている状態では、バネ340の付勢力に抗して固定板320の側に接近する。使用者が速度調整押板330を握りながらキャリーカート1を移動させた場合、キャリーカート1に生じる負荷(荷物の重さ、坂道の斜度)が大きくなるに従い、速度調整押板330に加わる作動力が大きくなる。その速度調整押板330に加わる作動力が大きくなるに従い、速度調整押板330は、バネ340の付勢力に抗して更に固定板320の側に移動し、固定板320により接近する。
図3(b)に示すように、速度調整押板330が固定板320に接近して、バネ340が最も縮んだ状態になると、速度調整押板330の固定板320の側への移動が規制される。
【0034】
また、
図3に示すように、ハンドル30には、電源スイッチ33が設けられている(
図3では、スイッチ基板のみを図示)。電源スイッチ33は、後述する電源回路(
図6参照)を起動又は停止させるための部品であり、使用者により操作される。
【0035】
次に、速度調整用スイッチ32におけるリニアホールIC350及び磁石360の構成について説明する。リニアホールIC350及び磁石360は、本実施形態において、作動力検出手段を構成する。
【0036】
図4は、リニアホールIC350及び磁石360の構成を示す概略断面図である。
図4(a)は、速度調整用スイッチ32に作動力が加えられていない状態を示す。
図4(b)は、速度調整用スイッチ32に作動力が加えられた状態を示す。
【0037】
図4に示すように、IC保持片322(固定板320)の略L字形の先端部には、リニアホールIC350が保持されている。リニアホールIC350は、磁石361(後述)のN極からS極へ向かう磁界(リニアホールIC350の裏面側からマーク面351側へ通過する磁界)を検知し、その磁束密度の大きさに比例した電圧値の電気信号を、検出信号として出力する素子である。逆に、リニアホールIC350は、磁石360(後述)のN極からS極へ向かう磁界(リニアホールIC350のマーク面351側から裏面側へ通過する磁界)を検知しない。リニアホールIC350は、マーク面351と反対側の面が磁石361のN極側を向くように配置される。リニアホールIC350から出力された検出信号は、後述する制御回路554(
図8参照)へ送られる。
【0038】
一方、磁石保持片333(速度調整押板330)の略コ字形の先端部には、一対の磁石360,361がそれぞれ配置されている。磁石360,361は、磁界を発生する部材である。
図4に示すように、磁石360は、N極がリニアホールIC350のマーク面351に向くように配置されている。これによれば、リニアホールIC350が磁石360に接近すると、リニアホールIC350の裏面側からマーク面351側へ通過する磁界(磁石361のN極からS極へ向かう磁界)の磁束密度が小さくなるため、リニアホールIC350から出力される検出信号の電圧値は小さくなる。
【0039】
また、磁石361は、N極がリニアホールIC350のマーク面351と反対側の面に向くように配置されている。これによれば、リニアホールIC350が磁石361に接近すると、リニアホールIC350の裏面側からマーク面351側へ通過する磁界(磁石361のN極からS極へ向かう磁界)の磁束密度が大きくなるため、リニアホールIC350から出力される検出信号の電圧値は大きくなる。
【0040】
先に説明したように、速度調整押板330は、作動力が加えられていない状態(
図3(a)参照)では、固定板320から最も離れた位置に移動する。この場合、IC保持片322に保持されたリニアホールIC350は、
図4(a)に示すように、磁石361から最も離れた位置に移動するため、リニアホールIC350の裏面側からマーク面351側へ通過する磁石361の磁界の磁束密度は最も小さくなる。
【0041】
一方、速度調整押板330は、作動力が加えられている状態では、固定板320の側に接近する。速度調整押板330に加えられる作動力が増加するに従い、IC保持片322に保持されたリニアホールIC350が磁石361に接近するため、リニアホールIC350の裏面側からマーク面351側へ通過する磁界の磁束密度も次第に大きくなる。そして、速度調整押板330に加わる作動力が最大になると、
図4(b)に示すように、IC保持片322に保持されたリニアホールIC350は、磁石361に最も接近するため、リニアホールIC350の裏面側からマーク面351側へ通過する磁石361の磁界の磁束密度は最も大きくなる。
【0042】
従って、速度調整押板330に加わる作動力が小さくなるに従い、リニアホールIC350と磁石361との間が離間して、リニアホールIC350から出力される検出信号の電圧値は小さくなる。また、速度調整押板330に加わる作動力が大きくなるに従い、リニアホールIC350と磁石361との間が接近して、リニアホールIC350から出力される検出信号の電圧値は大きくなる。
【0043】
このように、速度調整押板330に加わる作動力の大きさに応じて、リニアホールIC350と磁石361との間が接近したり、離間したりすることにより、リニアホールIC350から出力される検出信号の電圧値が連続的に変化する。
【0044】
次に、モータ駆動ボックス50の構成について説明する。
図5は、モータ駆動ボックス50の構成を示す分解正面図である。なお、
図5は、後述するボックスカバー51の第1カバー511(
図2参照)を取り外し、第2カバー512の表面側から見たときの分解正面図である。
【0045】
モータ駆動ボックス50は、
図5に示すように、ボックスカバー51と、ギア機構52と、モータ53と、バッテリーパック54と、制御基板55と、傾斜スイッチ56(傾斜検出手段)と、を備える。
【0046】
ボックスカバー51は、モータ駆動ボックス50の全体を覆う部品である。ボックスカバー51は、第1カバー511(
図2参照)と、第2カバー512と、を備える。第1カバー511及び第2カバー512は、ギア機構52、モータ53、バッテリーパック54及び制御基板55を間に挟んで、両側から挟みこむように取り付けられている。
【0047】
ギア機構52は、モータ53(後述)で発生した回転出力の回転数を、複数の減速歯車により減速させる装置である。具体的には、ギア機構52は、モータ53で発生した高回転且つ低トルクの回転出力を、低回転且つ高トルクの回転出力に変換する。ギア機構52の出力側の歯車には、車輪軸21が連結されている。車輪軸21の両端には、車輪20が取り付けられている。
【0048】
モータ53は、車輪20を駆動するための回転出力を発生する装置である。本実施形態のモータ53は、直流モータにより構成される。モータ53で発生した回転出力は、ギア機構52の各歯車に順に伝達される間に、各歯車に設定された減速比に応じて減速され、車輪軸21を駆動する。モータ53において発生する回転出力の回転数は、モータドライブ回路552(後述)から供給される駆動信号により制御される。
【0049】
バッテリーパック54は、モータドライブ回路552等に直流の電力を出力する装置である。本実施形態のバッテリーパック54は、リチウムイオン充電池により構成される。なお、バッテリーパック54は、不図示の電源ジャックに接続された充電器(AC電源アダプタ)を介して充電される。
【0050】
傾斜スイッチ56は、フレーム本体10の傾斜を検出する部品である。ここで、傾斜スイッチ56の構成を、
図6を参照しながら説明する。
図6は、傾斜スイッチ56の構成を示す断面図である。
図6(a)は、キャリーカート1が垂直に立てられた状態(停止状態)での傾斜スイッチ56を示す。
図6(b)は、キャリーカート1を進行方向に傾斜させた状態での傾斜スイッチ56を示す。なお、
図6では、主要な符号を(a)に記載する。
図6に示すように、傾斜スイッチ56は、スイッチ本体561(磁石移動部)と、取付プレート562と、ホールIC563と、球形磁石564と、封止栓565と、を備える。
【0051】
スイッチ本体561は、球形磁石564を移動自在に保持する部品である。スイッチ本体561の側面には、取付プレート562が一体に設けられている。スイッチ本体561は、取付プレート562により制御基板55に取り付けられる。スイッチ本体561の内部には、球形磁石564が移動するための通路561aが形成されている。スイッチ本体561において、通路561aの長手方向における一方の端部には、側壁561bを介してホールIC563が設けられている。また、通路561aの長手方向における他方の端部には、封止栓565が設けられている。
【0052】
ホールIC563は、磁界検出面563aにおいて、球形磁石564(後述)の発生する磁界を検出する素子である。ホールIC563は、磁界の検出又は非検出に対応した電圧値の電気信号を、検出信号として出力する。例えば、ホールIC563は、磁界検出面563aにおいて磁界を検出した場合、対応する電圧値としてL(Low)レベルの検出信号を出力する。また、ホールIC563は、磁界検出面563aにおいて磁界を検出しない場合、対応する電圧値としてH(High)レベルの検出信号を出力する。ホールIC563から出力された検出信号は、後述する制御回路554(
図8参照)へ送られる。なお、ホールIC563(傾斜スイッチ56)から出力された検出信号に基づいて、制御回路554により実行される処理については後述する。
【0053】
球形磁石564は、磁界を発生する部材である。球形磁石564は、スイッチ本体561の通路561a内に、移動自在に収納されている。
【0054】
キャリーカート1が垂直に立てられた状態(停止状態)では、
図6(a)に示すように、スイッチ本体561の中心線(≒球形磁石564の中心線)A1が、水平基準線A0に対して角度θ1(+15°)傾斜する。この停止状態において、スイッチ本体561は、封止栓565に対してホールIC563側が下がるため、球形磁石564は、ホールIC563に最も接近した位置に移動する。その結果、ホールIC563からは、Lレベルの検出信号が出力される。なお、後述するように、角度θ1は、適宜に設定可能な角度である。
【0055】
一方、キャリーカート1を進行方向に傾斜させた状態では、
図6(b)に示すように、スイッチ本体561の中心線A1が、水平基準線A0に対して角度θ2(−5°)傾斜する。この状態において、スイッチ本体561は、封止栓565に対してホールIC563側が下がるため、球形磁石564は、ホールIC563に最も離間した位置に移動する。その結果、ホールIC563からは、Hレベルの検出信号が出力される。なお、後述するように、角度θ2は、適宜に設定可能な角度である。
【0056】
次に、傾斜スイッチ56の動作を、
図7を参照しながら説明する。
図7は、キャリーカート1の傾斜と球形磁石564との位置関係を示す説明図である。
図7(a)は、キャリーカート1が垂直に立てられた状態における球形磁石564の位置を示す。
図7(b)は、キャリーカート1を傾斜させた状態における球形磁石564の位置を示す。なお、
図7(a)、(b)には、モータ駆動ボックス50の拡大断面図を左側に示す。この拡大断面図は、
図5に示すA−A線の断面図に相当する。また、
図7に示す路面Gは、
図6の水平基準線A0と平行な水平面である。
【0057】
図7(a)に示すように、キャリーカート1が垂直に立てられた状態(停止状態)では、路面Gと直交する垂線B0と、フレーム本体10の中心線B1とが一致する。この停止状態において、スイッチ本体561は、水平基準線A0に対して角度θ1(+15°)傾斜する。この場合、球形磁石564は、ホールIC563に最も接近した位置に移動するため、ホールIC563からは、Lレベルの検出信号が出力される。
【0058】
一方、使用者がキャリーカート1を進行方向に傾斜させた場合に、
図7(b)に示すように、フレーム本体10の中心線B1が、垂線B0に対して角度θ3(20°)以上になると、スイッチ本体561は、水平基準線A0に対して角度θ2(−5°)傾斜する。この場合、球形磁石564は、ホールIC563に最も離間した位置に移動するため、ホールIC563からは、Hレベルの検出信号が出力される。
【0059】
次に、制御基板55の構成について、
図8を参照しながら説明する。
図8は、制御基板55の機能的な構成を示すブロック図である。
図8では、制御基板55の主要な構成についてのみ図示する。
【0060】
図8に示すように、制御基板55は、電源回路551と、モータドライブ回路552と、リニアホールIC入力回路553と、制御回路554と、傾斜スイッチ入力回路555と、を備える。
【0061】
電源回路551は、バッテリーパック54から出力された直流の電力を、制御回路554を介してモータドライブ回路552、リニアホールIC350等に供給する回路である。電源回路551には、電源スイッチ33が接続されている。使用者が電源スイッチ33をオン操作又はオフ操作することにより、電源回路551が起動又は停止する。
【0062】
モータドライブ回路552は、バッテリーパック54から制御回路554を介して供給された直流の電力に基づいて、モータ53に駆動信号を供給する回路である。モータドライブ回路552からモータ53に供給される駆動信号は、制御回路554からモータドライブ回路552へ出力される速度指示信号に応じて制御される。例えば、モータ53をPWM制御する場合、モータドライブ回路552は、制御回路554から出力される速度指示信号に応じて、モータ53に供給する駆動信号(パルス信号)のデューティ比を制御する。
【0063】
リニアホールIC入力回路553は、リニアホールICから出力されたアナログの検出信号をA/D変換して、制御回路554へ出力する。以下、リニアホールIC入力回路553を介して出力された検出信号を、適宜に「リニアホールIC350の検出信号」ともいう。
傾斜スイッチ入力回路555は、傾斜スイッチ56から出力される検出信号(Hレベル又はLレベル)をA/D変換して、制御回路554へ出力する。以下、傾斜スイッチ入力回路555を介して出力された検出信号を、適宜に「傾斜スイッチ56の検出信号」ともいう。
【0064】
制御回路554は、モータ駆動ボックス50の動作を統括的に制御する電子部品であり、マイクロコンピュータ及びその周辺回路により構成される。
制御回路554(駆動手段)は、モータ53における回転出力が、リニアホールIC350から出力された検出信号の電圧値に応じた回転数となるように、モータドライブ回路552に速度指示信号を出力する(以下、「モータ53の速度制御」ともいう)。
【0065】
具体的には、制御回路554は、リニアホールIC350から出力された検出信号の電圧値が大きくなるに従い、モータ53における回転出力の回転数が増加するように、モータドライブ回路552に速度指示信号を出力する。また、制御回路554は、リニアホールIC350の検出信号の電圧値が小さくなるに従い、モータ53における回転出力の回転数が減少するように、モータドライブ回路552に速度指示信号を出力する。
【0066】
なお、制御回路554には、速度調整押板330に作動力が加えられていない状態(
図4(a)参照)において、リニアホールIC350から出力された検出信号の電圧値(以下、「最小電圧値」ともいう)が記憶されている。制御回路554は、リニアホールIC350の検出信号の電圧値が最小電圧値以下の場合には、モータドライブ回路552に速度指示信号を出力しない。また、制御回路554は、リニアホールIC350の検出信号の電圧値が最小電圧値を超過する場合には、モータ53の回転出力が、リニアホールIC350の検出信号の電圧値に応じた回転数となるように、モータドライブ回路552に速度指示信号を出力する。
【0067】
また、制御回路554(制御手段)は、傾斜スイッチ56(ホールIC563)において、キャリーカート1の傾斜が検出された場合、即ち、キャリーカート1が傾斜することにより、傾斜スイッチ56から出力された検出信号がHレベルとなった場合に、上述したモータ53の速度制御を実行する。
【0068】
また、制御回路554は、傾斜スイッチ56において、キャリーカート1の傾斜が検出されない場合、即ち、キャリーカート1が垂直に立てられた状態(停止状態)となり、傾斜スイッチ56から出力された検出信号がLレベルとなった場合には、上述したモータ53の速度制御を実行しない。
【0069】
次に、制御回路554(制御基板55)において、モータ53の速度制御を実行する場合の処理手順について、
図9のフローチャートを参照しながら説明する。
図9に示すフローチャートの処理は、キャリーカート1の電源スイッチ33がオン操作されたときにスタートし、電源スイッチ33がオフ操作されるまでの間、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0070】
図9に示すステップS1において、制御回路554は、リニアホールIC350の検出信号の電圧値が最小電圧値を超過するか否かを判定する。ステップS1の判定がYESであれば、処理はステップS2へ移行する。また、ステップS1の判定がNOであれば、本フローチャートの処理を終了する。制御回路554は、リニアホールIC350の検出信号の電圧値が最小電圧値以下であれば、モータ53の速度制御を実行しない。
【0071】
ステップS2(ステップS1:YES)において、制御回路554は、傾斜スイッチ56の検出信号がHレベルか否かを判定する。ステップS2の判定がYESであれば、処理はステップS3へ移行する。また、ステップS2の判定がNOであれば、処理はステップS1へ戻る。制御回路554は、傾斜スイッチ56の検出信号がLレベルである場合、即ち、キャリーカート1の停止状態では、リニアホールIC350から出力された検出信号の電圧値が最小電圧値を超過しても、モータ53の速度制御を実行しない。
【0072】
ステップS3(ステップS2:YES)において、制御回路554は、モータ53の速度制御として、リニアホールIC350の検出信号の電圧値に応じた回転数となるように、モータドライブ回路552に速度指示信号を出力する。ステップS3におけるモータ53の速度制御は、ステップS1において、リニアホールIC350の検出信号の電圧値が最小電圧値以下となるまで連続して行われる。このように、制御回路554は、リニアホールIC350の検出信号の電圧値が最小電圧値を超過し、且つ傾斜スイッチ56の検出信号がHレベルである場合にのみ、モータ53の速度制御を実行する。
【0073】
本実施形態のキャリーカート1において、使用者が電源スイッチ33をオン操作すると、電源回路551から制御回路554等への電力の供給が開始される。この後、使用者が速度調整押板330を握り、キャリーカート1を進行方向に傾斜させながら移動させると、傾斜スイッチ56の検出信号がHレベルとなる。そのため、制御回路554からモータドライブ回路552に速度指示信号が出力され、モータ53が速度制御される。
【0074】
一方、使用者が速度調整押板330を握っていない状態では、
図3(a)に示すように、速度調整押板330は固定板320から最も離れた位置に移動した状態となる。この状態では、制御回路554からモータドライブ回路552に速度指示信号が出力されないため、モータ53は駆動されない。
【0075】
また、使用者が速度調整押板330を握り、速度調整押板330に作動力を加えた場合でも、キャリーカート1が停止状態であれば、傾斜スイッチ56の検出信号がLレベルとなる。この場合も、制御回路554からモータドライブ回路552に速度指示信号が出力されないため、モータ53は駆動されない。このように、キャリーカート1の停止状態では、使用者が速度調整押板330に作動力を加えても、モータ53が駆動されないため、使用者の意図しないタイミングでキャリーカート1が動き出すことがない。
【0076】
また、使用者が速度調整押板330を握り、速度調整押板330に作動力を加えた場合に、キャリーカート1が角度θ3以上(
図7(b)参照)に傾斜した状態であれば、傾斜スイッチ56の検出信号がHレベルとなる。この場合、制御回路554からモータドライブ回路552に速度指示信号が出力されるため、モータ53が駆動される。このように、キャリーカート1が進行方向に傾斜した状態では、使用者が速度調整押板330に作動力を加えることにより、キャリーカート1を移動させることができる。
【0077】
その後、キャリーカート1に生じる負荷(荷物の重さ、坂道の斜度)の大きさに応じて、速度調整押板330に加わる作動力が変化する。即ち、キャリーカート1に生じる負荷が大きくなるに従い、使用者の手から速度調整押板330に加わる作動力が大きくなる。また、キャリーカート1に生じる負荷が小さくなるに従い、使用者の手から速度調整押板330に加わる作動力が小さくなる。
【0078】
キャリーカート1において、速度調整押板330に加わる作動力が大きくなると、速度調整押板330は、バネ340の付勢力に抗して更に固定板320の側に移動し、固定板320により接近する。速度調整押板330が固定板320に接近すると、リニアホールIC350と磁石361とが相対的に接近して、リニアホールIC350から出力される検出信号の電圧値は大きくなる。制御回路554は、リニアホールIC350から出力された検出信号の電圧値が大きくなるに従い、モータ53における回転出力の回転数が増加するように、モータドライブ回路552に速度指示信号を出力する。そのため、キャリーカート1は、負荷が大きくなり、速度調整押板330に加わる作動力が大きくなるに従い、モータ53により駆動される車輪20の回転速度が速くなる。
【0079】
また、キャリーカート1の速度調整押板330に加わる作動力が小さくなると、速度調整押板330は、バネ340の付勢力により固定板320と反対側に押され、固定板320から離間する。速度調整押板330が固定板320から離間すると、リニアホールIC350と磁石361とが相対的に離間して、リニアホールIC350から出力される検出信号の電圧値は小さくなる。制御回路554は、リニアホールIC350から出力された検出信号の電圧値が小さくなるに従い、モータ53における回転出力の回転数が減少するように、モータドライブ回路552に速度指示信号を出力する。そのため、キャリーカート1は、負荷が小さくなり、速度調整押板330に加わる作動力が小さくなるに従い、モータ53により駆動される車輪20の回転速度が遅くなる。
【0080】
上述した本実施形態のキャリーカート1によれば、以下のような効果を奏する。
(1)キャリーカート1が垂直に立てられた状態(停止状態)では、傾斜スイッチ56の検出信号がLレベルとなるため、速度調整押板330に作動力が加えられても、制御回路554からモータドライブ回路552に速度指示信号が出力されることがない。これによれば、キャリーカート1の停止状態において、使用者が不用意に速度調整押板330に作動力を加えた場合、又は使用者がハンドル30に手を添えてキャリーカート1を持ち上げることにより、速度調整押板330に作動力を加えた場合でも、モータ53が駆動されないため、使用者の意図しないタイミングでキャリーカート1が動き出すことがない。そのため、使用者の意図しないタイミングでキャリーカート1が動き出すことにより、使用者の衣服等が車輪20へ巻き込まれることを抑制することができる。
【0081】
(2)また、キャリーカート1の移動中に、キャリーカート1が使用者よりも先に進んだ場合も、傾斜スイッチ56の検出信号がLレベルとなるため、速度調整押板330に作動力が加えられても、制御回路554からモータドライブ回路552に速度指示信号が出力されることがない。これによれば、キャリーカート1が使用者よりも先に進んでしまい、使用者がキャリーカート1を保持できなくなる不具合を抑制することができる。
【0082】
(3)キャリーカート1において、傾斜スイッチ56は、磁界の検出又は非検出に対応した検出信号を出力するホールIC563と、磁界を発生する球形磁石564と、磁石移動部としてのスイッチ本体561と、により構成される。これによれば、傾斜スイッチ56の構成を簡素化できるため、傾斜スイッチ56のコストを低減することができる。また、傾斜スイッチ56を小型化することができる。
【0083】
(4)傾斜スイッチ56の取り付け角度を変えることにより、モータ53の速度制御が実行される傾斜角度を任意に設定することができる。従って、キャリーカート1の製品仕様等に応じて、傾斜スイッチ56の取り付け角度を変えることにより、モータ53の速度制御が実行される傾斜角度を最適な角度に設定することができる。
【0084】
(5)傾斜スイッチ56には、球形磁石564が用いられる。そのため、キャリーカート1の傾斜に応じて、通路561a(スイッチ本体561)内をスムーズに移動させることができる。
【0085】
(6)キャリーカート1では、負荷の変化に応じて車輪20の回転速度が変化するようにモータ53が駆動される。そのため、負荷が連続的に変化する路面で使用しても、モータ53の駆動又は停止(動く又は止る)を繰り返すことがないので、キャリーカート1の動きが不自然になることがない。従って、本実施形態のキャリーカート1によれば、負荷の変化に応じて速度を適切に制御することができる。
【0086】
(7)キャリーカート1は、キャリーカート1を移動するための作動力に応じて、リニアホールIC350と磁石361とを相対的に接近又は離間させる機構を備える。これによれば、キャリーカート1を移動するための作動力が大きくなるに従い、リニアホールIC350と磁石361とが相対的に接近して、車輪20の回転速度が自動的に速くなる。そのため、使用者は、キャリーカート1に生じる負荷が大きくなるのに伴い、速度調整押板330に加わる作動力を自ら調節して強める必要がない。また、キャリーカート1を移動するための作動力が小さくなるに従い、リニアホールIC350と磁石361とが相対的に離間して、車輪20の回転速度が自動的に遅くなる。そのため、使用者は、キャリーカート1に生じる負荷が小さくなるのに伴い、速度調整押板330に加わる作動力を自ら調節して弱める必要がない。
【0087】
(8)先に説明した特許文献2のキャリーカート1は、ハンドル30に加わる負荷の大きさに応じてハンドル30が伸縮するため、ハンドル30を支持する使用者に不自然な感じを与えることが考えられる。しかし、本実施形態のキャリーカート1は、移動時にメインフレーム11が伸縮しないため、ハンドル30を支持する使用者に不自然な感じを与えることがない。
【0088】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
【0089】
本実施形態では、傾斜スイッチ56に球形磁石564を用いた例について説明した。これに限らず、通路561a(スイッチ本体561)の長手方向を移動可能であれば、どのような形状の磁石であってもよい。また、通路561a内に溝、レール等の案内部材を設けることにより、キャリーカート1の傾斜に応じて、球形磁石564をよりスムーズに移動させることができる。更に、通路561a内を単体の磁石が移動する構成に限らず、通路561a内を移動自在に配置された別部材に、磁石が取り付けられる構成としてもよい。
【0090】
本実施形態では、キャリーカート1の傾斜を検出する傾斜検出手段において、ホールICを用いた例について説明したが、これに限らず、他の近接センサを用いてもよい。
本実施形態では、リニアホールIC350を固定板320(IC保持片322)に保持し、磁石360,361を磁石保持片333(速度調整押板330)に保持する例について説明した。これに限らず、リニアホールIC350を磁石保持片333に保持し、磁石360,361を固定板320に保持するように構成してもよい。
【0091】
本実施形態では、キャリーカート1を移動するための作動力に応じた出力値の電気信号を出力する検出手段として、リニアホールICを用いた例について説明したが、他の近接センサを用いてもよい。
【0092】
本実施形態では、キャリーバッグ40をソフトケースとした例について説明した。これに限らず、キャリーバッグ40は、ハードケースであってもよい。また、キャリーカート1にキャリーバッグ40を装着する例に限らず、キャリーカート1のフレーム本体10に、物品を直接的に載置するような使用形態であってもよい。